会社説明プレゼンテーション
司会者:それではみなさま、大変お待たせいたしました。この時間は、ヤマシンフィルタの強みや事業環境と未来像についてご説明させていただきます。
ふだんの生活ではなかなか触れていただく機会の少ない、私たちヤマシンフィルタなのですが。このようなイベントなどを通して、個人投資家のみなさまに徐々に社名を知っていただけるようになってきましたが、まだまだ事業内容を100パーセントご理解いただくところまでには至っていないと感じています。
と言うのも、ヤマシンフィルタが扱っているものは、「建設機械用フィルタの製造・販売」となっているんです。非常にニッチな業種ではあるのですが、その中でも、業界でトップシェアを頂戴しているんです。
そして何より、最近のトピックとしては、ヤマシンフィルタが開発いたしました「YAMASHIN Nano Filter」。パラダイムシフト……つまり、業界に革命を起こす可能性を秘めた新素材なんです。こちらの新素材で、総合フィルタメーカーへの飛躍を図ろうと目論んでいます。本日はみなさまに、そのような点のご説明もあるかもしれません。
司会者:それでは、お待たせいたしました。ヤマシンフィルタの登壇者をご紹介させていただきます。山崎社長と、ストックウェザー株式会社『兜町カタリスト』編集長の櫻井英明さまです。どうぞみなさま、拍手でお迎えくださいませ。
櫻井英明氏(以下、櫻井):社長、もう始めましょうか。
山崎敦彦氏(以下、山崎):はい、おはようございます。よろしくお願いします。
櫻井:朝からたくさんおいでいただきまして、ありがとうございます。
山崎:ありがとうございます。
櫻井:社長、着物を着ておられていて、お坊さんに見えるんですけど(笑)。
山崎:失礼しました。こんな頭をしてるんですけど、決してやくざ者じゃありませんのでご安心ください(笑)。
櫻井:ということで……社長、よろしくお願いします。
まず「ヤマシンフィルタ」って、社名にちゃんと製品名が入っていて、わかりやすいです。
山崎:フィルタ(と入っているから、わかりやすい?)。
櫻井:(ストレートに)「フィルタ」でしょう? 最近は(社名が)アルファベット3文字とか、わからない会社が多いですから、(それに比べて)わかりやすいということです。
櫻井:まずは、今日のラインナップです。ヤマシンフィルタについて、それから事業環境・業績見通し・株主還元、そして中期的な展望ということで、盛りだくさんでお話をしていただこうと思います。
山崎:よろしくお願いします。
ヤマシンフィルタの経営理念
櫻井:それではまず、ヤマシンフィルタ(について)。今社長が「フィルタ」とおっしゃいましたが、どのような事業をされているんでしょうか?
山崎:次のページをお願いします。私どもは、フィルタはフィルタなのですが、(その)フィルタにも「エアフィルタ」や「水のフィルタ」とかいろいろありますが、当社は建設機械用の「油圧フィルタ」を主体とした会社です。
櫻井:建設機械の中は、全部油圧で動くんですね?
山崎:そうです。作業機は、みんな油圧で動いています。
櫻井:その油が濁っちゃいけないから、ちゃんと濾過しなきゃいけない。
山崎:そうです。
櫻井:ということですが、ここに出ているのが経営理念。難しい字を使っていますね。
山崎:私は社長ですが、2代目でございまして。(当社は)先代の父が創業した会社なんです。その父が「仕濾過事」(ろかじにつかふる)という企業理念を考えました。父は大正生まれなもので、漢文になじみがあって、「フィルタビジネスで、社会のお役に立つ」という意味で、漢文風の「仕濾過事」という企業理念を書きました。
最近はヤマシンフィルタもグローバルになりまして、中国などに販売会社がございます。中国人スタッフにこの「仕濾過事」を見せまして、「君たち、この意味がわかるか?」と聞いたところ、中国人スタッフは「意味がまったくわからない」ということでございまして(笑)。まったくの和製中国語でございます。
櫻井:中国の人には通じないけれど、日本の人には通じる?
山崎:まったくの和製中国語ではありますが、せっかく先代の考えたことでもあるし、この理念はこのまま継続していこうと考えています。
櫻井:社長、成田空港に着いたアイドルみたいな感じで写真撮られてます(笑)。
山崎:失礼しました(笑)。
ヤマシンフィルタの特長
櫻井:次に、ヤマシンフィルタの特長。建機(建築機械)向け油圧フィルタを中核に、ニッチ・トップ・グローバルときています。大きく出ていますが、これがまさにヤマシンフィルタ(の特長ですか)?
山崎:まさにそうです。
櫻井:建機向けのフィルタを中心にしているということですね。それでは、これらのキーワードでご説明をいただきたいと思うのですが。まずは「ニッチ」です。
山崎:建設機械用の油圧フィルタですから、本当に限られた狭いマーケットでがんばっています。
櫻井:これは絵(スライドの背景)を見ると、建設機械が写っているのですが。これを動かすところに、油圧で動かしているわけですね? 建機を。
山崎:今ここに出ているのは、油圧ショベルです。よく道路工事などで使っていますが、とくにこの油圧ショベルは、前進後進も含めて、すべて油圧の力で動いています。ですから、いろいろなところにフィルタが入っています。
また、建設機械ですから、動いているうちに、あちこちからゴミを拾ってくるんです。そのゴミが、故障のほとんどの原因になります。そのようなゴミを濾過するのが、当社のフィルタの仕事となります。
櫻井:ところで、あらためてうかがいますが、なぜ建設機械の油圧の油は濾過しなければいけないのでしょうか?
山崎:建設機械ですから、まず、現場が作業現場です。ホコリがもうもうのところで動いているわけです。当然、ホコリを吸い込んできます。このホコリが油に溶け込むのが(濾過しなければいけない理由の)1つです。
それからもう1つは、機械ですから、鉄と鉄が直接触れあって動くことがあります。鉄と鉄が直接触れあえば、潤滑油が入ってはいるものの、どうしても摩耗して金属粉が出るんです。それをそのまま放っておくと、今度はもう1周(機械が)回ってきたときに(金属粉を)ガリッと噛み込むわけです。ゴミがゴミを生むことになりまして、どうしてもこのフィルタが必要になります。
櫻井:これは極端な場合、油がゴミだらけになると、機械が動かなくなってしまうこともある?
山崎:油圧システムで、心臓部分はポンプなんです。人体で言う心臓です。その心臓のポンプが壊れてしまうので、致命傷です。
櫻井:ということは、油を濾過しないと(機械の)寿命も短くなってしまうということですね?
山崎:はい。寿命もそうですし、突然パタッと動かなくなるということも起こり得ます。
ニッチ戦略
櫻井:わかりました。次は「トップ」……「ニッチ」(戦略)で「トップ」(シェア)。
トップシェア
櫻井:これは、シェアが70パーセントですか?
山崎:はい。国内シェア・グローバルシェアを含めて、だいたい60パーセントから70パーセントのシェアで、トップシェアを頂戴しています。
櫻井:「シェアを誇る」ということですが、社長……70パーセントは満足ですか?
山崎:いえ、私個人的には(満足していません)。「70パーセントでトップシェア」(と言うと)……みなさんは「いや、いいじゃないですか」とおっしゃるのですが、これは、油断しているとやられてしまうんです。
建設機械も車と一緒で、4年に1回モデルチェンジがあるんです。4年に1回のモデルチェンジで、(例えば)今までは他社さんを使っていた、でも「次のモデルからは、ヤマシンフィルタでいくぞ」と言われればとてもいいのですが、逆のこともあるわけです。
常にアグレッシブに攻めの格好でいかないと、やられるんです。
櫻井:守るんじゃなくて、常に攻めていないと、70パーセント(のシェア)が減ってしまうかもしれない?
山崎:攻撃は最大の防御。だから、いつも攻めている。この姿勢が大事だと考えています。
櫻井:それが、ずっと続いているということですね?
山崎:そうです。
グローバル展開
櫻井:そして、3つ目のポイントの「グローバル」ですが、建設機械は日本だけではないですね、世界中で動いています。
山崎:車と一緒で、世界中で建機は動いています。それに付いて回って、我々もグローバルに営業・生産拠点を展開しています。とくに、今は生産拠点として、日本の佐賀とフィリピンのセブに工場がございます。今までは、フィリピンのセブが主力工場、(日本の)佐賀が多品種少量品の工場という色分けでいきましたが、フィリピンがあまりにも生産比率が高くございまして、8~9割がセブなんです。
これは、セブに何かあったときには供給できなくなる危険性もありまして、去年(2017年)から中国・蘇州に生産(拠点)を分散して、蘇州でも生産を開始しました。そしてまた、今は準備中なのですが、来年(2019年)の年明けからは、アメリカ・イリノイ州での生産も開始する予定です。
櫻井:来年からは、アメリカでも生産をしていく?
山崎:アメリカ・中国・フィリピン・日本。この4ヶ所で生産を始めるのが、来年のイメージです。
櫻井:それはやっぱり、ニーズが高いから、アメリカの工場も作らなければいけないということですよね?
山崎:はい。大きいマーケットというと、アメリカと中国になります。今まではフィリピンですから、工賃が安かったんです。つまり、安いところで作って売っていくビジネスモデルだったのですが、次からはお客さんの近くでフレキシブルに対応するビジネスモデルもやっていこうということで、米中で工場生産を始めます。
櫻井:あとは、開発拠点が神奈川県の新杉田にあります。これも後で、いろいろな楽しいお話が出てくるかと思っています。
補給品需要
櫻井:補給品需要です。ヤマシンフィルタさんの売上・ビジネスモデルについておうかがいするということですが、売れ行きとしては、新車と中古車の交換用のどちらが多いんですか?
山崎:この円グラフを見ていただくと、補給が約55パーセント、ラインが約45パーセントで、6対4~5対5の半分半分ぐらいの比率です。
ライン用は、建設機械メーカーさんが生産ラインで建機を作っていくときに、部品として組み込んでいくものです。その機械が、マーケットに出ていって稼働します。時間で交換するので、(例えば)500時間動いたら交換、1,000時間動いたら交換でございます。(これが)補給用のフィルタです。
この両方のマーケットがあるのですが、景気がいいときには、建機メーカーさんは機械をたくさん作るんです。ですから、ライン用のフィルタの売上が上がるんです。ところが、景気が悪くなると、急に建機メーカーさんも生産を絞るわけです。そうすると、ライン用のフィルタの売上はグッと落ちるんです。
一方で補給用は、どこの国もそうですが、景気が悪くなると、公共投資をやるわけです。橋を作ったり、道路を作ったりします。そうすると、機械が動きます。動くと(稼働時間に応じて)補給用のフィルタが出るということでして、比較的ヤマシンフィルタは、好況・不況に打たれ強い体質を持っていると言えると思います。
櫻井:どちらに転んでもいいビジネスモデル?
山崎:はい。ご承知のとおりで、利益率は、補給用の方が若干高くございまして。
櫻井:本当ですか?
山崎:はい、ライン用と比べると。
櫻井:補給用の方が高いと思われます? 「新車の方が高いだろう」と思う人、いませんか? (会場を見て)いないですね、社長。
山崎:これはみなさん、ご承知のとおりでして。
櫻井:補給用の方が(利益率は)高いということですね。
山崎:毎度言っているのですが、たまたま家電量販店に行ったときに、ドイツの有名な電気カミソリが3,500円で売っていたんです。普通は1万円ぐらいするのですが、3,500円でシェーバーが売っていたんです。「これは安い」と思って、すぐ買いに行きました。
だけど、ときどき網刃が壊れるんです。網刃を予備に1つ買っておきたい。「網刃はいくらか?」と言ったら、「3,000円です」。本体は3,500円です。「そんな馬鹿な話があるのか?」と僕は思いましたが、うちはそのようなあこぎなことはしていません。
櫻井:真っ当な値段で売っていますと。
山崎:真っ当な値段で売っています。でも、補給の方が、若干利益率がいいです。
事業環境 ①油圧ショベル新車需要
櫻井:2つ目のポイントの、ヤマシンフィルタの事業環境・業績見通し・株主還元について、お話をうかがっていきたいと思います。
(まずは)事業環境。油圧ショベルの新車の需要は、相変わらず世界的に拡大と見ていいんですか?
山崎:はい、今は拡大の時期にあります。リーマンショック後もずっとやっていたのですが、2015~2016年に、非常にマーケットが冷え込みました。2016年の後半から、急に中国から(成長が)始まりまして、急激に世界的に(新車需要が)立ち上がりました。
今年(2018年)の3月……去年(2018年3月期)の実績からいくと、世界中で対前年を下回ったところは1ヶ所もない。グローバルで、いい環境が続いています。たぶん、この状況は今年(2019年3月期)も続くと考えています。
櫻井:社長は、2年前の2016年のちょうど今頃に、中国行って帰ってこられて、「(中国の需要が)戻ってきた」とおっしゃっていたじゃないですか。(それは)そのまま続いていると見ていいんですか?
山崎:中国の国営の建機メーカーさんがございまして、ここは情報が速いんです。中国の国営の建機メーカーさんが、最初に増産に踏み切りました。日本のメーカーさんは、さらにその3ヶ月遅れです。さらに3ヶ月遅れてアメリカの建機メーカーさん(の増産があったの)で。
まず中国マーケットでは、中国の国営企業をチェックする。これがポイントです。今度減産になるときも、たぶんそうだと思うんです。まず中国メーカーさんが減産に踏み切ったら、要注意だと思います。
櫻井:確か、SUNNYというところですね。
山崎:最近は新聞などで、「中国マーケットに、ちょっと陰りが出てきているのではないか」というお話もありますが、中国の現場に行って話を聞いている限りでは、伸び率が鈍化して、去年より悪くなりました。
櫻井:(鈍化しているとは言っても)前年比ではプラスですからね。
山崎:台数そのものは増えているのが、現状です。
事業環境 ②事業環境 米国住宅着工件数
櫻井:もう1つは、アメリカです。「ニーズがあるから、今度(イリノイ州に)工場も作る」ということだったのですが。アメリカの住宅着工件数も、伸びてきていますよね?
山崎:はい、このグラフのとおりでございます。まず、「住宅着工件数」とは、建設機械の先行指標になっています。この着工件数が増えていると、建機もマーケットも増えていくということです。2016年・2017年と順調に増えて、今年の2018年度も堅調に増えていっていると。ですから、アメリカのマーケットは、着実に伸びているということだと思います。
櫻井:「トランプさん、よくやっている」という感じですか?
山崎:はい。トランプさん、最初はメキシコとの間に……。
櫻井:「壁を作る」とか言っていましたよ。
山崎:「壁を作る」とかおっしゃっていましたが、現実にはできていません。ただ、空港や道路などの整備には、お金を使っている感じがします。
櫻井:まだまだ、これが続くということですね。
山崎:はい。みなさんもアメリカに行かれるとわかると思いますが、あちこちで道路工事をやっていますよ。渋滞で、けっこう(道路が)埋まっている。これは、確実に(整備にお金をかけて)やっていると思います。
2019年3月期 通期業績予想
櫻井:なるほど。次に、業績予想です。今期(2019年3月期)も増収増益の見通しということですが、好調の背景はどのあたりにあるとお考えですか?
山崎:今申し上げたとおり、アメリカのマーケット、そして中国のマーケット。この2大マーケットが牽引することによって、アジアのマーケットも引っ張られていき、ヨーロッパのマーケットも引っ張られるということでございます。グローバルで悪いところは、今のところはないという状況です。
櫻井:ここに「PAC18」と書いてありますが、儲かっていても、コスト削減はすると?
山崎:売上はマーケットの状況によって上がっていきますが、利益は、やはり人件費も毎年上がりますから、黙っていたら圧縮されていくのですが。そこは、やはり努力です。「PAC18」という活動をやっていまして、原価低減・販管費の経費節減を徹底してやっています。
株主還元
櫻井:さて、株主還元です。配当も増配ですね。
山崎:はい。第1四半期の(決算)発表を(2018年)5月にいたしました。そのときに、いわゆるコンセンサスとの数字とヤマシンフィルタの利益率が、現実的に悪かった。それで、急に株価ががんと落ちたことがありました。
櫻井:はい、ありました。
山崎:これは第1四半期の達成率が悪かったのであって、年間を通して見れば、必ず達成する作戦ですので、ここはご安心いただきたいと思います。
それを踏まえて、今回は(1株当たり)5円の配当をしていきたいと思います。5円とは、去年(2017年)の年末に株式を5分割いたしました。ですから、去年のベースで言えば、5×5=25円の配当になると。(2018年3月期の)18円が……。
櫻井:(2019年3月期は)25円?
山崎:25円で、増配というかたちになります。
櫻井:5分割していただいて、買いやすくなって良かったんですよ(笑)。
山崎:はい。ぜひお買い上げいただきたいと思います!
櫻井:あと、株主優待はどうですか?
山崎:株主優待は、従来QUOカードをやっています。これは引き続きやっていくのですが、近々QUOカードだけではなくて……ヤマシンフィルタは横浜の会社なものですから、もっと横浜らしい株主還元を織り込んでやっていきたいということで、もうちょっと多様化した株主還元も、今後は考えていこうとしています。
櫻井:横浜らしい?
山崎:はい。
櫻井:個人的には、どうでしょう。(崎陽軒の)シウマイとか、(洋菓子の)「ありあけのハーバー」とか、そのようなものですか?(笑)。
山崎:はい、ベイスターズのチケットとか。
櫻井:ベイスターズのチケット。いろいろ考えておられると。
山崎:はい、考えています。
はじめに…
櫻井:3点目に、中期的な展望についてうかがっていきたいと思います。なんだか、格好いい言葉が出てきましたね。「屋根を直すとしたら、よく晴れた日に限る」(J.F.ケネディ)。
山崎:(スライドの背景の)このコインの銅像みたいな絵ですが、これはかつてのJ.F.ケネディ大統領の絵なんです。ケネディさんが言ったことは、「屋根を直すんだったら、晴れた日にしろ」と、このようなことでございまして。
今のヤマシンフィルタは、幸い、グローバルマーケットの状況が非常にいい状況にあります。ですから、業績もいいんです。「今のこのいいうちに、打てる手を打つべきだ」というところを言っています。
櫻井:それで、そのとおりにやっていくと?
山崎:やっていきます。
櫻井:そして、今はそのような手を打つタイミングだということですね。
山崎:そうです!
成長に向けた取り組み
櫻井:成長に向けた取り組みです。「事業ポートフォリオの拡大」あるいは「筋肉質な企業体質の構築」。これらを柱にしていくと考えていいんでしょうか?
山崎:はい。まずヤマシンフィルタは、売上の90パーセントが建設機械用のフィルタなんです。ですから、建機がいいときは(業績が)いいんです。建機が悪くなったら落ちるんです。これって、健全ではないですよね。
ですから、今「晴れている」うちに……建機の業界がいいうちに、次の柱を立てておきたい。これはなんとしても、今やらなければいけないことだと思います。
櫻井:「建機」の業界が「天気」のいいときに、手を打つと?
山崎:はい、そうです(笑)。
櫻井:しゃれにもならないですが(笑)。
(一同笑)
櫻井:次に、事業ポートフォリオはどんな感じですか? 新たな成長の柱を作っていくということですね?
山崎:そうです。建機以外の柱を作ることが、大事なポイントだと思います。
櫻井:あと、筋肉質な企業体質(の構築)は、先ほどの「PAC18」でも(コスト低減を)実行しているということですね。
山崎:はい、そうです。
ヤマシンフィルタの素材革命
櫻井:さて、そのような中で、「(ヤマシンフィルタの)素材革命」という素晴らしい言葉が出てきました。「高度で確かな技術基盤が新たな素材革命を起こした」。やはりヤマシンフィルタさんのこだわりは、素材にあるということですか?
山崎:はい。我々はフィルタメーカなのですが、グローバルなフィルタメーカを見ると、だいたいみなさんは濾材を購入してきているんです。しかし、ヤマシンフィルタは、自分たちで濾材を作っているんです。自分たちで、濾材から開発する。これが、当社の大きな特長になります。
昔(創業期)は濾布、布で濾過していました。それから(黎明期は)濾紙、紙でやりました。今(発展期)は、ガラス繊維でフィルタの濾材を作っています。
次の世代(革新期)は、ガラス繊維よりもさらに細くて、さらに細かいゴミが取れるようになる「ナノファイバー」という新素材を、去年(2017年)開発いたしました。これを使って、新しいフィルタを作っていきたいと考えています。
櫻井:今は日本の素材が、化学を含めて見直されてきていますよね。ここが日本の強い分野、御社の強い分野と考えていいのでしょうか?
山崎:はい。このナノファイバーは、東京工大の研究室からスタートした技術なんです。この技術を基礎とした量産に向けての応用特許……これは、自分たちでパテントを出願しています。これを使って、次の時代に備えていきたいと考えています。
櫻井:つまり、やはり高度で確かな技術基盤が、ヤマシンフィルタの強みだ。
山崎:はい。これなんです、これ。
櫻井:さっきから、「これは何かな、サンタクロースのひげかな」と思っていたのですが(笑)。
山崎:綿なのですが、これは1本1本の繊維がナノファイバーでできていまして。ナノファイバーの繊維(はどのようなものか)というと……クモの巣があるじゃないですか。クモの巣の横糸よりも細いものが、これの素材なんです。
櫻井:社長……これ、なんか綿あめみたいになりますよ(笑)。
山崎:(笑)。これは、なんせ綿の細かいものですから、保温性能がいいんです。ですから、例えば保冷バッグや、ダウンジャケットの羽毛の代わりにこれを入れると、軽くて温かいと。
(手のひらを見て)くっつくんですね、こうやって(笑)。
櫻井:くっつくんですよ(笑)。綿あめみたいですね。
山崎:はい(笑)。
櫻井:軽い、温かい、何も通さない。
山崎:そうです。また、いろいろな特性も持たすことができまして、人工的にできるので、これは将来的にとても有望な素材だと思っています。これを使って、まずは(当社が)得意とする、建機用の油圧フィルタをやっていきたいと思っています。
新素材が建機用フィルタにもたらす変化
櫻井:これは、やはり新製品というか、高度な製品ですから……値段も高く売れるのではないかと思うのですが、いかがでしょう?(笑)。
山崎:従来の建機用の油圧フィルタにこのナノファイバーを使うと、大きさはそのまま一緒なんです。でも、ゴミの捕獲量は3倍になるんです。すなわち、今まで500時間で交換していたフィルタが1,500時間持ち、1,000時間使っていたフィルタが3,000時間持つと。
普通は(もっと早いタイミングで交換しないと)目詰まりしてくるからだめなのですが、これを使うと濾過精度(が上がり)……濾過するゴミの大きさは一緒、そして通過抵抗も一緒。でも、ライフだけは3倍に伸びる。非常にマジック的な濾材ができます。
櫻井:素材革命、パラダイムシフトということですね。
山崎:建機用の交換用のフィルタで、去年(2017年)の売上が約60億~70億円ありました。ライフが3倍ですから、「売値も3倍で、建機メーカさんに持っていこう」と、営業にはハッパをかけているのですが、建機メーカさんもなかなか……。
櫻井:手強い?
山崎:手強いところがありまして。「ライフは3倍? でも、値段は1.5倍ね」とか、なかなか厳しいことを言われていて、安直には伸びないのですが。それでも、売上は確実に伸びます!
櫻井:要するに、建機メーカさんに必要だということですね?
山崎:はい、絶対に必要です。向こう3年のうちに、グローバルスタンダードを(持っていきたい)……今は1,000時間での交換がスタンダードですが、向こう3年のうちに、3,000時間交換をスタンダードに持っていきたいです。
新素材をさらに活かすセンサー開発
櫻井:「素材革命」ということですが、社長。新しいところは、これ(「YAMASHIN Nano Filter」)だけではないんですよね?
山崎:はい。3,000時間(での交換を強み)にこれを持っていき、いきなり「3倍のライフだ」と言うと、やはりユーザーさん……とくに建機メーカの開発のみなさんは、「本当に大丈夫かよ?」と心配されるわけです。
そこで、目詰まりセンサーです。「もう目詰まりしてきましたよ」というセンサーを付けましょうということで、これも開発しました。
センサーがセンシングしたとき、あるいは3,000時間でフィルタ交換ということで、これ(「YAMASHIN Nano Filter」)とセットでセンサーも売れていきます。さらに、目詰まりセンサーと同時に、清浄度センサー(「SWIFTROCK™」)です。今、どのような油が流れているかという……。
櫻井:きれいかどうかを見極める(センサー)?
山崎:「どれだけきれいな油が流れているか」という清浄度センサーも、今はセットで販売しています。そうすると、故障予知ができるようになってきます。新しいフィルタで、故障予知をする。これが、次の時代の建機のフィルタとなります。
櫻井:そうすると、既存ビジネスにさらに優位性を持たせることが、これでできるだろうと?
山崎:はい。競争力を持たせて差別化することと、大幅に利益率を上げることを、両方実現できると思います。
総合フィルタメーカへ 飛躍を図る
櫻井:社長、ここに出ているのですが……建設機械は入り口で、応用編がいろいろあるということですよね?
山崎:これは細かいゴミを取るだけではなくて、(先ほど)申しましたように、熱も保温する。それから、吸音したり光をカットしたり、いろいろな特性があります。このような新しい、マーケットに挑戦していきたいと思います。
櫻井:「医療・バイオ材」や「エレクトロニクス材」とか、いろいろな新分野にどんどん広がる夢があるということですね。
山崎:はい。
YAMASHIN Nano Filterの事業領域
櫻井:そして、どのような分野(に「YAMASHIN Nano Filter」を展開していくか)。先ほど(のスライドにも)出ていましたが、もうちょっと細かくいくと、総合フィルタメーカとしては、どのようなところにいくのかということです。
山崎:まず、油圧だけではなくて、これは、みなさんもすぐイメージされるように、エアフィルタとして使えます。エアフィルタとして(使ったり)、あるいは空気清浄機の中にこれを入れる。さらに、電荷を持たせるとイオンも取るということです。実はエアフィルタも、さる大手の電機メーカさんから何社か引き合いを頂戴して、今は開発に入っています。
それから、温度(の断熱が可能)です。(例えば)保温バッグです。スーパーで冷凍食品などを買いに行くときに、これを使うと、冷凍食品が溶けないというメリットがあります。これを株主総会でお配りしたのですが、とても評判が良かったんです。今日もアンケートにお答えいただくと、この保冷バッグを差し上げるということですので、ぜひみなさんにもお持ち帰りいただき、成果を確認していただきたいと思います。
櫻井:農業でも使えるんですか? 断熱シートとか?
山崎:そうです。ビニールハウスで(使うことができます)。昼間は、太陽が当たっているからいいんです。夜になったときに、これでシートを作ってカバーをすると、保温性能がある。そうすると、普通は(保温のために)燃料を焚くのですが、燃料代が節約できます。実績では30パーセントが節約できるということで、たぶん農水省からも話が出ることがあります。これも、非常に有望なマーケットだと思います。
櫻井:あと社長、意外な使い道が(防音で)……飛行機のトイレで、外に音が漏れてほしくない女性は、たくさんいるらしいですよね。
山崎:はい、防音材です。音をカットするので、これを建材とか……今引き合いをもらっているのは、「航空機の内装材に、これを使えないか?」というお話を頂戴しました。そうすると、トイレや屋根の音をカットできることがあって、これにも今は挑戦しているところです。
櫻井:思う存分、トイレに行けるようになるということですね(笑)。
山崎:(笑)。「現実的に、どれが一番売上につながるんだ?」というのは、まだわかりません。でも、現実にはもう(保冷)バッグがあるし、農業用シートもできています。近い将来、これ(防音材など)が現実になっていくと思います。
櫻井:そうすると、建設機械の油圧フィルタだけではなくて、いろいろな分野を持った、ここに出ている「総合フィルタメーカ」に進んでいくということで?
山崎:「フィルタ」と言うと(イメージされるのが)ゴミを取るものもフィルタですが、熱をカットする、音を取る。これらも、ある意味ではフィルタです。機能的なフィルタです。次の時代は、このような機能的なフィルタをやっていきたいと思っています。
本日のまとめ
櫻井:非常によくわかりました。社長、最後にまとめなのですが。
ヤマシンフィルタは、「ニッチ」「トップ」「グローバル」で、確かな技術基盤を大事にする企業。そして、今までお話しいただいた、「新素材でポートフォリオを拡大して、総合フィルタメーカへ飛躍を図る」ということで、間違いないですか?
山崎:はい。ここ数年はグローバルマーケットがいいから、たぶんこの調子でいきます。「晴れ」は続きます。晴れているうちに、次の時代を担う新素材、新しいフィルタを開発して、次の柱を立てていく。これが、当社の基本的な戦略です。
櫻井:たくさん人がいますので、社長から、一言メッセージください。
山崎:今申しましたように、(2019年3月期)第1四半期の決算発表をしてから、急に株価が落ちました。これは「原価改善が進んでいない」という理由なのですが、そのようなことはありません。対前年で比べれば、利益率も改善しています。期末にいけば、予定どおりの原価改善・利益率で着地します。
今は、ある意味では買い時だということです。「ヤマシンフィルタの株を、いつ買うんだ?」「今でしょ!」。これを、大きな声で言いたいと思います(笑)。
櫻井:ありがとうございました(笑)。
みなさん、ヤマシンフィルタのことが、よくわかりましたでしょうか? 「ニッチ」「トップ」「グローバル」「新素材」です。「YAMASHIN Nano Filter」の、大きな可能性。今日はぜひ、これらを覚えて帰っていただければと思います。ありがとうございました。
山崎:ありがとうございました。よろしくお願いします。
櫻井:社長、ありがとうございました。
(会場拍手)