2017年 連結業績
小野徳哉氏(以下、小野):小野でございます。本日は足下が悪い中、どうもありがとうございます。さっそくですが、平成30年3月期の決算説明をいたしたいと思います。
まず最初に、(2018年)3月期の業績概要です。これは、すでにご承知の方もいらっしゃると思いますが、2017年度通期で123億2,900万円ということで、2017年度の(期初)公表数値はもちろん、2016年度の通期(実績)も下回ってしまいました。前年比増減額で約5億円、前年比(増減率)で4パーセント、売上が減少しております。
それに伴いまして、営業利益も減少し、経常利益・当期純利益とも昨年を下回って、減収減益で決算を出していくことになりました。
売上高・営業利益に関しましては、(スライド下部の)「当事業年度について」というところに説明がありますが、前年同期比比べて医薬事業で約12パーセント減少、売上高で3.6億円(減)。あとは、化粧品です。リスブランを昨年(2017年)の第2四半期の初めに売却いたしましたので、その売却の差が7.7億円あったことも書いてあります。
しかし、私としましては、「今日水製薬が持っている3つの事業で、この分は十分まかなえる。もう少し上にいって、公表数値も達成できる」と最初は踏んでおりましたが、それの進捗が思うようにいかず、このような減収減益の決算になってしまいました。
診断薬 売上高・営業利益
それぞれの部門を詳しく説明してまいります。診断薬は、臨床検査と産業試薬を合わせた数字でございますが、(売上高は)2017年度は94億8,000万円ということで、前年同期比7.1パーセント増です。営業利益は、本来は売上高に伴って増えなければいけないんですが、試薬の値下げ等もございまして、この業界は価格競争が厳しいものですので、下がってしまいました。
もう1つの大きな原因としますと、海外の売上比率が若干、年々高くなっております。その分の営業利益が、ドメスティックや企業としてやっていた時分よりは、下がってきているということです。
売上構成比は、前年(2016年度)の69パーセントから日水製薬全体で76.9パーセントを占めるまで(になり)、現在の日水製薬は、診断薬が77パーセントを占める検査薬の会社へと、だんだん姿が変わってきております。
診断薬(臨床診断薬) 売上高・営業利益
その中で、臨床診断薬です。これは病院・臨床医療向けの検査でございますが、昨年(2017年度)の実績は59億円で、前年比で3.3パーセント伸びました。業界の平均が2パーセントぐらいの前年比の伸びだと思いますので、それよりは若干高いんですが、売上自身が60億円に至っていませんので、これは単純に前年の比率で見るわけにはいかないと思っております。
売上構成比に関しましては、診断薬全体ですと売上の左下(のグラフ)でございますが、ほぼ50パーセントを微生物関係の試薬が占めて、免疫関係が38パーセントぐらいという比率で、海外比率も13.1パーセント、国内が86.9パーセントでございます。
臨床に関しましては、微生物分野が33パーセント、免疫血清が52.9パーセントで、病院のビジネスに関しましては、免疫血清の売上が高いことになります。
同じように、診断薬の方が、病院向け・医療向けの海外比率も高い構成になっております。
診断薬(産業検査薬) 売上高・営業利益
続きまして、産業検査薬でございます。産業検査薬に関しましては、2017年度の売上が35億7,900万円で、前年比4億4,200万円増、14.1パーセントの増でございます。こちらに関しましては、先ほどとまるで逆で、微生物関係の売上が全体の76.9パーセントを占めて、(免疫)血清が少ないというビジネスモデルになっています。
我々は本業がもともと微生物関係のメーカーでございますので、微生物の売上比率が高いことから、営業利益率も、臨床に比べまして高い利益を確保できていると思います。
売上構成比率に関しましては、まもなく30パーセントになるということです。私としましては、2017年度に続きまして2018年度も、これ(産業検査薬)は日水製薬の一番伸びる成長ドライバーと、今年も考えております。
産業検査薬 業績ハイライト
産業検査薬の業績ハイライトに関しまして、産業がなんで伸びたんだということなんですけれども。
1つは、食の安心・安全に向けた(迅速化対応を強化したことです。それに関わるものが)汚染物質(の高感度な迅速測定キットで)、これはキッコーマンバイオケミファから導入しています「ルミテスター®」ですが、その商品の売上が前年に比べまして、67パーセント伸びている。
もう1つは、再生医療に力を入れています。マイコプラズマ遺伝子検出キットの「MycoFinder」というキットなんですが、これが前年同期比で74パーセント伸びました。
海外における新規販路の拡大は、「コンパクトドライ」が中心なんですが、ATPふき取り検査キットと同じく、「コンパクトドライ」も中国の大手乳業メーカーに採用していただきました。今まで我々は、中国でほとんどビジネスをしませんでしたが、産業でも「コンパクトドライ」を中心に、売上が立ってきたということです。
もう1つは、新しい代理店としてASEAN諸国……とくに、ベトナム・フィリピンを中心とした東南アジアのASEANです。新規の代理店がかなり、昨年来ずっと契約数が多くなりました。今年はここの売上が、もっと伸びるだろうと思っています。
ASEAN諸国と言いますのは、みなさんもご承知のとおり、先進国に向けて食品の原料を生産している養殖とか、そういうものが盛んなところですので、我々としてはASEAN諸国のそういう一次加工のメーカーに向けて、「コンパクトドライ」を販売していきたいと考えています。
「コンパクトドライ」は、室温で保存できるのが最大のメリットでございますので、インフラが整っていないASEANのような国々でも、十分に活用していただけると考えております。
臨床診断薬 業績ハイライト
(6ページのご説明に移りまして)臨床に関しましては、抗菌薬です。抗酸菌の検査向けの機器で、我々は東ソー株式会社の「TRC Ready®-80」という自動遺伝子検査装置を取り扱っておりますが、これ(の売上高)が前年同期比147パーセント(増)で、かなり拡大しました。事実、我々が取り扱っている臨床関係の自動検査機では、昨年(2017年)設置台数が一番多かったのは、この「TRC Ready®-80」です。
(その要因として)1つは、結核菌が日本でまだ収束に至っていなくて、若年層の流行等もそのまま引き続き患者数が増えている状況で、今までの培養検査から結核向けは、自動機への予算が付きやすい状況になっています。各地の病院ならびに検査センターで、自動の抗酸菌検査向けの機器について予算を計上していただいています。
また、今まで病院で納品していた機械が第1世代のもので、我々の取り扱っているものと若干違います。
これはRNA(リボ核酸)の形質で、前のやつより感度が高い。ですので、その有用性を認めていただいて採用が多くなってきており、「今年も、これはもう少し入るんじゃないかな」ということで、私としては期待しています。
ならびに、偽膜性大腸炎の迅速診断キット「GDH/TOX」が、前年に比べまして83パーセント伸長しました。これはもともと、我々は国内で、海外のメーカーから納入して、市場を一時代築いていました。そのメーカーさんが他の海外メーカーに買収されて、我々は試薬を取り扱いできなくなりまして、自社で開発して上市してまいった商品で、市場をだいぶ取り返してきたと思っています。
もう1つは、「β-Dグルカン」です。いつも言っています、深在性真菌症の(検査)キットでございます。これも、前年同期比で25パーセントアップしました。これは一番最初、我々が導入した時点では、年間の売上が2億円ぐらいだったと思うんですが、現在は5億円ちょっと切るぐらいで、ほぼ倍増しているということです。
今後高齢者の方が増えてきますと、深在性真菌症の検査もその時点で多くなっていくと思いますので、この増加傾向が今後も続くと思います。
医薬事業 売上高・営業利益
戻りまして、医薬事業でございます。医薬事業に関しましては、2016年度は30億円の売上がございましたが、2017年度は26億円で、前年比で3億5,000万円ほど落としまして、売上比率構成比も会社全体で21.6パーセントと、下がってまいりました。
これに関しましては、みなさんご承知のとおり、我々が強い市場としましては、町の薬局さんで取り扱っています、直販という部分。ここが、我々医薬事業の主力です。(グラフの「直販」の)上の「医薬ソリューション」とは、その他ドラッグストアや、ドラッグストアから受注しています特注品などでビジネスをしている部門なんですが。
医薬事業がちょっと厳しいのは、この町の薬局さんの直販のところで、売上が伸びていかないということです。ただ、ここで売上が落ちる割には、営業利益が差し迫って落ちていないことが考えられると思います。
外的な要因で考えますと、ドラッグストアにどんどん変わっていますし、町の薬局さん自身が高齢化に伴いまして、廃業しています。我々自身は、新しい薬局さんを中に勧誘していっていますが、昨年(2017年度)はそれが計画に至っていないのが、売上が伸びない1つの要因でございます。
もう1つ、今取り組んでいるものは、我々が主力としています商品の5品目です。他の商品……他のメーカーと差別ができないような商品は、もう取り扱わないで、同じ金額で取り扱っていただくのでしたら、日水製薬固有の商品を取り扱っていただきたいということで、取扱の品目数も、医薬直販でかなり絞っているということです。売上自身も減っていますが、でもその分、我々としては営業利益は、そこそこ確保できているのかなと、逆の意味で考えています。
医薬事業 業績ハイライト
ここ(スライドの上から2番目の項目)で今、その部分を説明しています。我々の主力であります「日水清心丸」という丸剤なんですけれども、値上げしました。従来は3,000円だったものを3,300円ということで、10パーセント値上げしました。一昨年(2016年)、それの駆け込み需要に伴って、売上がすごく伸びて、昨年(2017年)はその分の在庫消化に各薬局さんが走った結果、「日水清心丸」自身の売上が17パーセント減って、それ単品だけで、1億2,000円減ってしまったんです。
ただ、準主力品と言いますか、「コンクレバン・ゴールド」とかも減ったのですが、それ以外の「日水清心丸」「コンクレバン®」「新ガロール錠」という、我々が直販で主力にしています商品に関しましては、「日水清心丸」以外の売上は伸びました。
とくに「コンクレバン®」に関しましては、昨年は(誕生)50周年キャンペーンということで、かなり一生懸命拡売に走った結果、「コンクレバン®」その他については伸びました。しかし、主力品に関しましては、この「日水清心丸」の値上げに伴う一昨年の売上が増えたことによって、ちょっと減ってしまったのが、医薬事業の主な減少の原因となります。ロングセラー「コンクレバン®」50周年記念キャンペーンで5パーセント、2,000万円ほどでございますが、売上が増えています。
化粧品事業 売上高・営業利益
化粧品事業に関しましては、一昨年(2016年、売上高が)9億5,400万円あったのが、昨年(2017年)は途中で千趣会さまに全株売却したものですので、1億8,400万円ということで、ここで売上が7億円ほどなくなっています。
研究開発関連 業績ハイライト
じゃあ、昨年(2017年)のそういう営業のビジネスの環境下、それ以外の研究開発等で何をやっていたのかということなんですが、「(戦略的投資・)オープンイノベーションを加速する」という目標を立ててやっています。
とくにその中でも、再生医療等のベンチャー企業への出資・共同研究をずっと続けています。この慶應義塾大学の2つのベンチャーに関しましては、それぞれ5,000万円の出資と1億円の出資ということで、共同研究をずっと組んでいたんですが、それ以外に、このベンチャーそのものに出資をいたしました。
株式会社AdipoSeedsは、「皮下脂肪組織から人工血小板を創製する(培養技術の研究)」ということで、今は輸血に頼っています血小板を、皮下脂肪組織から作りましょうという、そういうビジネスに発展させようと思っています。
株式会社サリバテックに関しては、「唾液を使用したがん簡易検査」ということです。通常、がんの検診・診断に関しましては、血液を使うものなんですが、唾液の方が採取しやすいですし、簡易検査に関しましては、「採血するのが、病院・医療機関じゃなきゃだめ」という制約があります。「唾液を用いる方が、いろいろな検診に関して有用なんじゃないか」ということで、株式会社サリバテック側から、最初は共同研究の申し出あったんですけれども、今は一緒にやっていきましょうということで、始めています。
もう1つは、これは潰瘍性大腸炎ということで、(安倍)総理もこれでたぶん、一時期体調を崩されたと思いますけれども。ヨーロッパで売っていましたブルマンというメーカーの治療薬が、海外では標準的な治療法として使用されています。その販売を、持田製薬株式会社さんが今年(2018年)行うと思うんですが、我々は持田製薬株式会社さん・三洋化成工業株式会社さんと一緒に、ブルマンの簡易診断薬の独占販売権の契約をいたしました。
これの発売に関しましては、今厚労省に申請中でございますので、約1年後の販売を目指しています。ただ、今年の秋に「カルプロテクチン簡易診断薬」ではなくて、潰瘍性大腸炎の治療薬の血中や、血中濃度がどうなっているんだという研究用試薬として、それをまず最初に出します。
簡易診断薬の場合は、これから新たに「あなたは潰瘍性大腸炎じゃないですか?」という診断を付けるものです。現在難病指定されています潰瘍性大腸炎につきましては、その治療薬の研究(によって)、薬物濃度を把握することが、治療のすごく大事な部分になりますので。
ただ、日本ではそれが、診断薬として認められていません。ですので、我々としては、お客さまのニーズの高い潰瘍性大腸炎の病態を把握する補助薬として、まず血中薬物の検査薬と言いますか、研究用試薬を、今年発売いたします。
2018年 業績予測(連結)
そういうこともありまして、2018年度の売上高は通期で130億円で、前年比で6億7,100万円ほど増やします。前年比増減率で、プラス5.4パーセント。営業利益は15億5,000万円、経常利益は15億7,000万円、当期純利益は11億円ということで、来年は増収増益を予測しています。
利益分配等に関する方針
利益分配等に関する方針としまして、ずっと我々はこれを継続していますが、配当性向といたしまして、30パーセントをめどに配当しています。ただ、利益剰余金に関しましても上がりますので、配当の金額は維持して、一時的に配当性向が上がっていくことは考えられますが、必要な部分に関しましては、投資等が必要でありましても、配当性向を今後も30パーセントをめどにして、配当していくつもりでございます。
経営方針
引き続きまして、成長戦略です。経営方針としましては、「持続的成長する企業」ということに関しまして、変わりなく今後も進めていきたいと思っています。
中期経営計画(2016〜2018)の位置づけ
何度もお見せしています、中期経営計画でございます。今は第3ステージ(3rd)で、ちょうど2018年度が最終年でございます。成長事業への積極的投資を加速させて、新サービスを創出して、M&A事業提携を進めていって。
その結果として、売上が伸びていかなきゃいけないんですが。本来は2017年度、こういったかたち(スライドの右肩上がりの矢印)で売上が伸びなきゃいけなかったんですけれども、下がってしまったという。見通しが甘かったことを反省しています。
既存事業の利益体制を強化し、その利益を投資を行うということは変わっていません。(そのために)何をしていくのか? 将来性・拡張性・収益性のある部分に関しまして、我々は投資を行っていくことを考えています。
サスティナブルな企業を目指して
それでは、具体的に何をしていくのかということですけれども。これはホームページに詳しく記載していますが、「サスティナブルな企業を目指して」。日本水産グループ自身が、サスティナブルな経営を目指しています。我々もニッスイグループの一員でございますので、サスティナブルな企業を目指しています。
(そのために必要なことの)1つ目は、長期的な成長を目指すこと。これは、企業として当たり前のことだと思います。
2つ目は、オープンイノベーションを通じて、新たなビジネスを生み出していくこと。
3つ目は、既存の製品にオンラインで付加価値を付けて、グローバルにサービスを提供していくことを考えています。
以前は、既存の製品に付加価値を付けて、国内でサービスを提供していくことだったと思うんですが。臨床にしても産業にしても、今は、商品・人々の移動が国内・海外関係なしに、全世界的に物品・サービスが移動している状況で、国内に限定していくことはどうしても難しいだろうということで、今後は我々も海外に出ていかなければいけないと考えています。
SDGs 持続可能な開発目標への取り組み
サスティナブルな企業を目指して、この3つのことを会社の目的として、国連が提唱してる開発目標に沿って、企業価値や社会的な価値の向上を目指し、今後も活動を続けていくことを考えています。
具体的な取り組みとして、今行っていることに関しまして、何個か挙げたんですが。オープンイノベーションに関しましては、研究機関・バイオベンチャーとの共同出資や研究を、今後も続けてまいります。
衛生管理に関しましては、unicefやWHOでの生活インフラ調査での実績を踏まえ、今後この分野での活動を、もっと増やしていこうと思ってます。あとは、森林地帯による除染への取り組み。これは、東日本大震災の放射能の汚染物質が、住宅地とか庭では、土を取り除いてけっこう除染されてると思いますが、森林地帯とか人が立ち入らないようなところで、除染進んでるのかということについて、我々にそういうデバイスがあるんでしたら、「一緒にやりましょうよ」ということで、教え合ったところとは組むようにしています。
それと、「麻痺性貝毒簡易検査への取り組み」ということなんですが。これは何回かお伝えしてるんで、聞かれたこともあると思いますけども、日本は二枚貝の麻痺性貝毒の検査で、先進国で唯一、「マウスユニット」という、ハツカネズミが15分間で何匹死ぬかということが、検査法になってます。
我々は海外にもグループ会社がいっぱいあるんですけども、「そんな検査をしてるのは、野蛮だね」というのが、たまに飲み会の席から出るんですが。我々は、そういう海外にもグループ会社がある関係上、「麻痺性貝毒(の検査で)日本だけマウスユニットを使っていていいのか?」ということで、研究所等と一緒に共同研究で、麻痺性貝毒の簡易検査キットを今開発しています。ほぼ、ものはできあがりましたので、今年度は本当にそれで使えるかということを、各方面でヒアリングしていきたいと思ってます。
それと、「災害時の感染症の拡大防止に向けた簡易測定の研究」ということで、これもunicefやWHOで外の壁がありますけど。我々の「コンパクトドライ」を使って生活インフラの調査を行ってますが、災害時における感染症の拡大……例えば、いろんな避難所に避難するときに、水やトイレの問題でウィルスの問題は、ある面で致し方ない部分もありますけど、それ以外の微生物の感染症(の問題)。
そういう非常時に拡大を防ぐためには、どういうことに気をつけたほうがいいのかという(ことに)気づかせる簡易測定の研究が、必要だと思います。私自身も、故郷が東北でございますので、帰省したときに同級生から「そういう検査、ないの?」ということを、よく言われたりするもので。たまたま海外でやったものを、国内で災害時における簡易測定に応用できるんじゃないかということで、そういう研究を続けていこうと思ってます。
そういうこれらの持続可能なことをしまして、会社の理念であります「私たちは人々の健康と幸せを実現する企業を目指します」を具体的にやっていますということを、示せればいいなと思ってます。
オープンイノベーションの推進
オープンイノベーションの推進に関しましては、研究開発費と設備投資に関しまして、10億円をめどにやっていきましょうということを会社の中で号令かけています。研究開発に関しましては、2017年度は7億7,200万円ということで下がってしまいました。これは、本来は研究開発費として考えていた部分が、直接投資といいますか、ベンチャー企業への融資等に変わりまして、研究開発費としては若干下がってしまったのが、原因の1つでございます。
設備投資に関しましても、これは老朽化施設の設備を新しくしていこうと思ったんですが、アウトソーシングと自社に設備を入れるのとで、「どっちが、将来的に良いんだろうか」ということを、常に設備投資のときに考えた結果、昨年は「アウトソーシングしたほうが、応用性が広い」ということがありましたので、原料について自社にプラントを製造せずに、アウトソーシングした結果、若干設備投資の部分が少なくなってしまいました。
人件費に関しましては、昨年は研究を含め、化粧品のリスブランの社員たちを千趣会さまに売却して、人数がかなり減ったのですが、専門分野の人材の獲得等を行った結果、少なくはなっていますけども、2015年とほぼ同程度の人件費になって進むことができました。
事業ポートフォリオ再構築
事業ポートフォリオの再構築としましては、診断薬に関しては(既存の)臨床診断薬と産業検査薬と、新規ビジネス。医薬に関しましては、チェーンストアの主力であります、健康未来創造研究会を拡大していくというのを、メインに行っていこうと思います。
具体的にどういうことをやるんだということについて、ここからが、今日お話ししたいことなんですが。
診断薬と産業検査薬で、それぞれ既存の事業があります。臨床診断薬に関しましては、先ほど申し上げた自社製品と東ソーの「AIA®」シリーズや「TRC」、あとbioMérieuxの「VIDAS®」等、取り扱える商品の拡売を続けていくことを目指しています。
産業検査薬は、自社製品・島津(製作所)の商品を使って新たな市場転換をしていくということは、これまでと同じです。新しいことを始めているのは、このへん(スライドの青枠部分)のところなんですけども。
1つは、新戦略としまして、同業他社との協業と受託サービスを、もう少し展開していきましょうということです。その他、海外展開と新規事業開発を、今後も進めてまいります。
既存事業領域の拡売
既存事業の分野(の拡売)ですが、「ライサス」に関しましては、目標は25台設置。東ソーの「TRC」は15台ということで、(国内の前年売上高比)率としては少ないんですけども(予算としては)52億7,000万円ほど考えていきたいと思ってます。
「コンパクトドライ」に関しましては、新規項目「L.monocytogenes(LM)」や乳酸菌への対応。その他、国際認証を追加して、海外の方もなるべく使いやすい商品ラインナップを目指してまいります。
もう1つは常温保存培地ということで、冷所に保存しなくて済む培地なんですが。「ガンマ線減菌SCD寒天培地」で、これは(日本)薬局方に準拠した生培地なんですけども、3重包装した培地を昨年(2017年)設備導入していますので、今年度(2018年)は、これを一気に拡大していこうと思ってます。
「MycoFinder」に関しましては、日局では7菌種だけでいいんですが、欧米ではプラス3菌種で10菌種のデータがなければ販売できませんので、それに対応させました。
他社の導入品として、食中毒・その他の自動生菌数測定装置等を今年度は他社から導入していって、海外含め産業検査薬に関しましては、臨床(診断薬分野)よりでかい、17.5パーセントの売上増を目指していきます。
オープンイノベーション①
オープンイノベーションについては、これはあまり具体的なことが言えないんですが、自社で製造してる製品を、今は我々自身が診断薬・産業の30名の営業を中心に販売しています。ただ、これをやっぱり我々だけですと、30名・30名(ずつ)、60名ぐらいの営業ですべてまかなえない、(営業に)行っていないところもあるということで、自社製品の販売を同業他社の方に委託しようと思ってます。
また、他社製品を我々の培地、その他の免疫関係の抗体製造等、自社に強い部分がありますので、そこに関しましては、他から依頼があったものにつきましては、製造をキャパシティいっぱいまで受託しようと思ってます。
従来は、国内のメーカーの場合ですと、自社独自でということは、相当目に見えて多かったと思うんですが、国内のメーカー(で見ると)、私どもはすごく小さいですし、大きいメーカーさん(のように)いけるとか……シスメックスさんとかがございますが、我々はそういうメーカーさんのようにいきませんので、我々は他のメーカーさんと共有しつつ、やっていけたらいいなと思ってます。
もう1つ、受託サービスとしまして、我々の特注品をけっこう承ってますが、それをもっと増やしていくためには、例えば再生医療。企業がもっている組織や、大学の研究のドクターがもたれているような細胞に関しまして、どういう培地成分が一番発育・成長に必要なのかというのを解析して、それに一番フィットした培地を、特注受託しております。ただ、そのサービスは、今はただのサービスということで事業化してませんので、そういうものを少し事業化していって、今年は特注やOEMの受託へつなげていくことを考えたいなと思っております。
オープンイノベーション②
もう1つは、海外展開です。臨床診断薬に関しましては、「ライサス®」製品を今年(2018年)中国でライセンス供与して、ノックダウン生産を始めようとしております。国内で売っておりました、先ほどの「GDX/TOX」は、一昨年(2016年)より86パーセントぐらい伸びた商品なんですが。この商品は、性能もさることながら、今市場に出ている数ある商品よりも、操作がすごく簡単です。その簡易性を活かして、海外で販売していこうと思ってます。
もう1つは管理血清なんですけれども、我々はご承知のとおり、生化学や免疫関係の汎用試薬は持っていません。ただ、管理血清に関しましてはアメリカやヨーロッパ、そして日本を中心に、国際ハーモナイゼーションもやっていこうという動きがあります。なおかつ、日本適合性認定協会から、試薬を持っているメーカーさんじゃなくて、「コントロールは第三者的立場の方々が協議するのが望ましい」ということを、ISOの規格上言われております。そういうことを活かして、また我々がもっている事業を活かして、管理血清を海外に輸出していきたいなと思っています。
産業(検査薬)に関しましては、先ほどの(ご説明の)とおり「コンパクトドライ®」の新製品を増やしていきますし、これ(「@BactLAB」)は今日(2018年5月23日)日経新聞さんで掲載していただきました、「コンパクトドライ®」用の簡易同定・コロニーカウントクラウドサービスなんですが、これを展開して、全世界の「コンパクトドライ®」の売上を増やしていきたいと思ってます。
そのほか、「MycoFinder」の引き続きの拡大と、水の大腸菌の検査なんですが、「EC Blue」というキットを、「コンパクトドライ®」と一緒に販売していく。これが、大雑把に言った、今年度の海外展開でございます。
新規事業開発①
もう1つは新規事業としまして、先週の金曜日にお知らせいたしましたが、セルジェンテック株式会社に投資を行っております。そのほか株式会社AbipoSeeds、株式会社サリバテックは、先ほどのご説明のとおりでございます。
簡易デバイス開発につきましては、(1つは)発展途上国向け、もう1つは療養向けです。サリバテックで、今は唾液(を使用したかたち)のがん検診をだいたいやってますが、いろいろ患者さんから検査するという(ことで)、今後難しい状況が日本国内では考えられると思いますので、そういう療養向けの簡易デバイス開発を、今後行っていけたらと考えてます。
もう1つは、アーリーステージ(基礎・前臨床)のオープンイノベーションプログラムとして、我々から研究費を出すことを、(2018年)7月をめどに公募することを考えてます。我々はこういうことも一緒にやっていきたいというのが、メーカーの要望である程度、「こちらの方向(でやりたい)」という方向性はきますが、「(具体的に)どういう人が良いんだ」とか「何に将来性があるんだ」ということに関しましては、外部の人の知見を活かして、その提供先を決定していただこうかなと考えています。
新規事業開発②
(ご説明が)先走ってしまいましたが、国内で50名〜100名程度の研究者・施設を対象として、年間では数千万円のレベルになると思いますが、基礎・前臨床のアーリーステージの研究テーマを発掘や情報収集をしていこうと考えてます。
海外展開を行っていく結果、先ほどのまとめになりますが、「ライサス® ANY」が中国に展開しています。
「MycoFinder」は、今年(2018年)ヨーロッパで発売していきます。
同じく「GDH/TOX」もヨーロッパで販売していきます。
「コンパクトドライ®」「EC Blue」に関しては、東南アジアが中心になりますが、現在力を入れておりますのが、アメリカ、南米、オセアニアにも昨年(2017年、発売して)いきましたし、今年度(2018年)はアフリカと南アフリカにも発売することが決定いたしました。
その中でも(「コンパクトドライ®」の)重点地域としましては、東南アジアなどです。
もう1つは、アメリカの代理店さんで、我々の「コンパクトドライ®」向けに自社で別のコロニーカウンターを開発しました。アメリカにそれを使って拡大するということについては、彼らと提携の方法等を考えていますので、ここも重点地域にしております。
市場拡大(未知領域)への取り組み
もう1つは、クラウドシステムを全世界でつなげて地域格差をなくしていくことができれば、「コンパクトドライ®」を世界中のお客さんに提供できるのではないかと考えます。これ(「BactLAB」)が、Amazonクラウドを活用した「コンパクトドライ®」のAIモバイルサービスです。
これ(スライド下部)は、何度かお話ししていると思いますが、簡単な食品企業の流れです。1つの大きい会社さんのグループの中で、原料生産地……これは、先ほど東南アジアと言いましたが(ほかにも)アフリカ・南アフリカとあると思います。こういうところは発展途上国が多いですし、インフラ窮乏地帯です。
日本のようにチルド輸送ができてないし、チルドの保冷も管理できているかどうかわかりません。そういうところでも出てきたものに対して、次の半製品加工工場に輸出した時に、「この工場では、(生産地から)持ち込まれた原料によって、汚染が広がるのではないよ」(と確認するために)ここで出荷検査(出荷検査1)をやって、その検査(によって、状態)を確認することができていけば、いいんじゃないか(と考えています)。
そのバリエーションがずっと続いていけば、1つのものとして、インフラの一番最初の発展途上国の養殖業者の方が、「我々が検査するから、その分値引きしてくれ」という安い価格の連鎖になり、「このぐらい汚染されてない製品なんだぞ」という(ことを示すことになり)逆に出荷検査を行うことによって、自分たちの原料に付加価値を付けていくことができれば、ある程度高い値段のものが流通できるんじゃないかと(考えています)。
もう1つは、これを1つのメーカーが管理している場合、どこか……日本の東京でも良いですし、アメリカでも良いですし、ロンドンでもフランスでも良いですから、そういうところの全部のインフラを管理していますQC・QA(品質管理・品質保証)の責任者が、それぞれのところで検査してもらったものを(さらに)画像で検査して、「ここの原料は、次の加工工場に出してオッケーだ」ということが(確認)できれば、それぞれのところに大きい検査(工程など)を構えることがないですし、現地の人でそれに十分対応できるような、そういう1つの企業体としてのQC・QAのコントロールができるんじゃないかということを、考えてます。そのために、今回Amazonクラウドを使ったAIモバイルサービスを開発しました。
「コンパクトドライ®」の場合は、コロニーが立体なので、「別に、AIじゃなくても良いでしょ」という話はあるんです。ただ、コロニーだけカウントすれば良いと。ただ、我々の場合、いろんな品種に対応していて、コロニーの形態等で判別することが必要になってきますので、今回(のAIモバイルサービスで)は形・色・重なりも判定できるように学習させたAIを用いて、モバイルサービスを展開していきます。
今後、このモバイルサービスに関しまして、今の形態等がわかるようになれば、応用が可能となると思いますので、まず最初は「コンパクトドライ®」を用いたこういうインフラで、1つのQC・QAのコントロールができることを目指していきます。
もっと発展途上国だったら……例えば、単独の業者さんだったらただ聞いてもらえば、いちいち100とかコロニーを数えるよりも、「コロニーが何個です」というのを送ってすぐカウントして、それを無料でやってもらえば、発展途上国の方々にも喜ばれるんじゃないかなと考えてます。
我々だけが良ければいいということではないと、よく社員に話してることなんですけれども。我々の「コンパクトドライ®」って、海外に営業マンが3人しかいない。それも、国内から出張で行ってる社員たちがほとんどで。ただ、「コンパクトドライ®」は、全世界で100ヶ国以上のお客さんに使ってもらっています。
(だから)我々で商品を宣伝するのではなくて、例えばYouTubeとかそういうところで「こういうものがある」と拡散していただいてるお客さんもいらっしゃいますし、「こういうものがあるんだって」と言われて、代理店の紹介を受けて使っている方もいらっしゃいますし、我々のホームページを見て使っている方もいらっしゃいます。
何が言いたいのかというと、(営業マンではなく)商品自身が自分でPRして、どんどん市場を広げていった商品でございます。そういう流れを、このAmazonクラウドを用いた「@BactLAB」によって、その使い方がいいようになれば、そういうセルフ販売と言いますか、それを拡大することができるんじゃないかなと、私としては期待しております。
今のところ、まだここの南アフリカやフランス領のところには、代理店をまだ記載できておりませんが、来年、1年後(2019年)にはもう少し代理店の数を増やして、この図をみなさまにお見せできるように、1年間がんばっていきたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。以上でございます。