2018年3月期第3四半期決算説明会
宮本敦子氏(以下、宮本):日本郵船の宮本です。それでは早速、2018年3月期の第3四半期決算について、ご説明申し上げます。まずこの3Qの業績については、海運市況の回復を実感できる好成績を上げることができたと考えてます。
2018年3月期第3四半期決算概要
昨年度はご存知のとおり、海運市況は史上最低水準まで落ち込みまして、当社も中間期で2,000億円規模の特別損失を計上した結果、ずいぶん大きな赤字を出す結果となってしまいました。しかし、その昨年度に比べますと今年度は、この3Qまでの9ヶ月の累計でも、前年同期比で大きな増収・増益によって黒字転換をしっかりとできました。
第3四半期決算 (サマリー)
4ページで数字をご覧ください。この3四半期の累計売上高は、前年同期比で15パーセント増の1兆6,306億円です。営業利益は、前年同期比で403億円増の248億円になっています。
経常利益は356億円上げることができまして、前年同期比で333億円の増益になっています。親会社株主に帰属する当期純利益は168億円。こちらは昨年、減損で2,600億円を超える赤字でありましたが、そこからは大きく改善をしています。
この3Qまでの決算における、特記事項、特殊要因を申し上げますと、コンテナ船事業の統合会社、ONE(Ocean Network Express社)が今年度、2017年7月に設立されました。その7月以降、2018年3月までのONEの収支が、私どもの持分法適用会社というかたちで、営業外損益に、今年度の2Qから反映されています。
この2017年度いっぱいは営業をしていませんので、費用だけが計上されてくるということになっています。
経常損益 前年同期比増減分析
(合計で)333億円の増益でしたが、悪化要因として、燃料油高が大きく上昇しているということが1つありまして、今期の9ヶ月平均が1トン当たり327ドル60セントです。これは前年同期に比べますと、93ドル58セントの上昇ということで、ほぼ4割程度、燃料費が上昇しています。これによって90億円ほど足を引っ張られていますが、それを補って余りあるかたちで、海運市況がよくなりました。
また、「海運市況変動等」のところに含まれていますが、積高も2017年は大変好調で、388億円の改善効果がありました。他もさまざまな要因がありますが、全体で330億円を超える増益になったというところです。
前年同期比較(セグメント別)
5ページでセグメント別の数字をご覧ください。一番右の列が前年同期との累計増減になっていまして、そのひとつ左の列がこの3Qまでの累計の数字になっています。今年の累計ベースでは、全部のセグメントで、しっかりと利益を確保できています。
また、増減で見ていただきますと、2つマイナスがついているところがあります。1つは不動産です。前年比で92億円の減益という数字になっていますが、これは昨年度の3Qで86億円の一次収益を計上していましたので、今期はそちらが抜けた分だけ、減益となっているということです。
基本的には、不動産は運賃安定型事業ということで、安定的な利益を出してくれている部門という認識です。また、もう1つのマイナスは物流事業ということで、前年度から44億円減益しています。
こちらは22億円の経常利益は確保していますが、遺憾ながら仕入れ運賃の高止まりなどの理由によって、現役を余儀なくされています。
通期業績予想(サマリー)
通期の数字は、前年度と比べますと、全段階損益で大きく増益、あるいは黒字転換しています。こちらを見ていただいてわかるとおり、営業利益段階では、先ほど申し上げたとおり、燃料価格が上昇していることによって、前回予想から若干下方修正しています。
経常利益については、4Qで持分法適用子会社で、一過性の費用追加計上がありまして、前回予想を下方修正しています。数字をご覧いただきますと、売上高は通期で2兆1,720億円の予想にしていまして、こちらは、前年比で2,482億円の増収を見込んでいます。
営業利益は、300億円を予想していまして、前年度は180億円の赤字でしたので、前年度と比べますと、480億円改善していますが、3ヶ月前の予想から比べますと、30億円の下方修正をしています。
また、経常利益段階では270億円を計上し、前年度と比べると260億円の改善になっていますが、前回予想から80億円の下方修正となっています。また、親会社株主に帰属する当期純利益については、通期で110億円を見込んでいまして、こちらは前回予想から据え置いています。
4Qの前提として、為替レートは110円、燃料油価格は390ドルを見込んでいます。前回の予想では、こちら(燃料油価格は)350ドルで見ていましたので、今1トン当たり40ドル 、少し燃料費が上がっているというかたちです。
この通期予想、とくにこの4Qの数字だけご覧いただきますと、営業利益52億円に対しまして、経常損益がマイナス85億円の損失になっています。ここで、営業外で大きく損失を出しているということですが、これは何かと申し上げますと、先ほどお伝えしたONEの費用です。
今年の4月に営業を開始するまでの準備費用を、とくに4Qに計上するようなかたちで、もともと想定しております。今回、3ヶ月前の予想よりも、若干コストが増えるということが分かりましたので、その追加コスト分も加えています。
また、もう1点、営業外損失を生む要因となったのが、今期の海洋事業分野において……クヌッツェン・オフショア・タンカーズ社(Knutsen Offshore Tankers ASA)という会社がありますが、そちらが行っている一部のプロジェクトで若干、コストオーバーランが発生する可能性があるということで、ある程度の減損を想定したものとなっています。
以上の要因で、その分だけかなり営業外損失が膨らみ、4Qでは経常損失となっています。
ただ、営業利益はそのような特殊要因、一過性の費用がありますが、それでもなお、270億円の利益は残ると考えています。さらに当期純利益についても、110億円はなんとか維持できるだろうと、手応えを感じています。
その結果、今まで期末配当は未定にしていましたけれども、今回期末で……これは株式併合後ですが、1株あたり20円の配当を復活させようと考えています。
通期業績予想(セグメント別)
9ページをご覧ください。セグメント別の通期予想になっています。こちらも、2018年3月期の通期をご覧いただきますと、ざっと見て、年間を通して、すべてのセグメントで黒字を確保できると思っています。
特筆すべき点は、一番上の定期船事業です。4Qは81億円の経常損失と赤字予想ですが、これは先ほど申し上げたONEのコスト負担増と、後ほどで述べますけれども、4Qの積高を少し下方修正したこと、あとは燃料油価格の上昇などによる損失も含んでいます。
ただ一方で、それでも通期では90億円の黒字は確保できる見込みです。昨年1年間と比べまして、217億円の改善(予想)となっています。
航空運送事業は、通期で(経常利益)5億円。前年と比較すると21億円の減益となっています。こちらは昨年度、2017年3月期に一過性の収益がありましたが、それがなかったとすれば昨年度は赤字となっていました。それに比べますと、今年は実質的には増益になると思っています。
一方、物流事業は年間を通じて30億円の利益は確保できる見込みですが、昨年度から比べますと大きく減益ということで、ここは引き続き、苦戦が続いています。
不定期専用船部門では、通期で115億円の経常利益。昨年度と比べますと156億円増と、大きな増益を見込んでいます。やはり(増益に)一番大きく寄与するのは、ドライバルカー市況の回復だと考えています。
通期業績予想(セグメント別・前回今回予想比較)
10ページ目が、同じくセグメント別(の通期業績予想)なのですが、こちらは前回(2Q)予想と今回予想の比較をしています。3ヶ月前と比べて変わった箇所だけご説明いたします。一番右端の「前回予想差 通期」とあるところですが、先ほど申し上げた定期船事業は前回予想から45億円悪化していまして、これは主にONEの追加費用の負担増です。
物流事業はなかなか利益回復が遅れていまして、こちらは下方修正です。不定期専用船部門も15億円の下方修正をしていますが、こちらは海洋事業において減損の計上が見込まれていますので、その分を除けば、実質的には上振れをしていると考えていただいてよろしいかと思います。
ドライは引き続き好調です。タンカーは、マーケット的に若干、下振れをしているかなというところではあります。
それらについて、11ページ目以降でもう少し詳細に、セグメント別の状況としてご説明をいたします。
セグメント別状況 (一般貨物輸送事業)①
12ページをお開けください。こちら(定期船事業)は、コンテナ船を前提としていまして、上の表は輸送量、下の表が運賃推移となっています。上の表の輸送量ですが、3Q・4Qともに、下期を合わせても、前回予想から比べまして(今回想定は)下方修正をしています。
3Qについては、中国の環境規制がありまして、生産の調整や工場の閉鎖などがあった関係で、当初の想定よりも積荷が減少しています。
4Qについても、3ヶ月前の予想より若干下方修正しています。これはやはり、2018年の年頭から、また続々と超大型船が竣工していまして、とくに(4Q)上半期の竣工が大きいということで、下半期は需給が若干緩んでくると想定をしています。その結果、(4Q全体で)少し下方修正をしています。
ただ一方で、通期の輸送量はアジア・北米航路では昨年度比15パーセントの増量、アジア・欧州航路においては昨年度比30パーセント強の増量となっていますので、当社独自でもかなりがんばっているとは思っています。
運賃については、今回は前回予想とほぼ同じような数字となっています。通常、4Qはスラックシーズン(閑散期)ですので、若干(運賃が)下がることも想定されますが、今のところ貨物事業においては、荷況はまったく悪くないということです。
とくに今年は2月の中旬にチャイニーズニューイヤーがありますので、チャイニーズニューイヤー前の駆け込み需要なども、まだこれから期待できると思っています。今週(2018年1月29日週)頭のSCFI(上海コンテナフレイトインデックス)も前週に比べて、上がっています。スポット運賃も若干上がっていますので、地合いは決して悪くないと考えています。
セグメント別状況 (一般貨物輸送事業)②
続きまして、13ページは航空運送事業(NCA)の諸元になっています。航空運送事業については、自動車関連、半導体関連などの貨物が大変活発に動いています。その結果、Yield(運賃)も上昇していまして、本来であればもう少し収支がよくなってもいいかなと思っていましたが、一方では、やはり燃料単価もかなり上昇しています。
一番下のMOPSを見ていただけばわかるとおり、上期から下期で(燃料単価が)12ドル増加していますので、運賃の上昇を相殺するかたちで、通期の予想は前回と据え置きにしています。ただ我々は、2018年も引き続き、航空運送事業の活況を予想しているところです。
セグメント別状況 (一般貨物輸送事業)③
14ページ、物流事業になります。こちらのページには、郵船ロジスティクスの取扱ボリュームを記載しています。
郵船ロジスティクスは、当社の完全子会社化に向けた公開買付けを昨年の10月末に発表いたしまして、こちらが無事終了しています。もともと一部上場企業であった郵船ロジスティクスですが、この1月29日に上場廃止となり、完全子会社化が成立するというかたちになっています。
事業の内容については、今期は海上事業、あるいは航空運送事業において、ボリューム的にはどちらも前年度を上回ることができました。しかし、キャリア事業が好調なのとは裏腹に、フォワーディング事業では、やはり仕入れ値が上がっている、あるいは高止まりしているということで、彼ら(郵船ロジスティクス)の収益性がシュリンクをしてます。こちらが利益が伸びない一番の要因となっています。
また、コントラクト事業においては、一部の地域、具体的にはアメリカと言われていますが、こちらの内陸輸送で取扱量が減少する、あるいはアメリカ国内の景気がいいために、人件費が高くなってきているという要因により、こちらも収益性の足を引っ張るかたちとなっています。
そうは言っても一方で、さまざまな対策を取っています。例えば、最近ではインドネシアの倉庫でハラル認証(イスラム法適合の認証)を取得したり、またM&Aを通じて新しいコールドチェーン(低温流通)ビジネスをマレーシアで開始したり、サービスの拡充に積極的に取り組んでいます。
セグメント別状況 (不定期専用船事業) ①
続いて15ページ。こちらでは、ドライバルカーとタンカーの市況動向について、ご説明いたします。3Qを見ていただきますと、Cape(5TC)サイズ(の傭船料)が(1日当たり)23,300ドル超えということで、やはり大型のドライバルカーが大変好調でした。4Qはいつも年間で一番マーケットが下がる時期ですけれども、当社は3Qの好調を持続して4Q(の予想)も14,000ドルと置いています。
Panamax以下、中型・小型バルカーについては3Qもほぼ当初の想定どおり、4Qの数字も前回予想とそれほど大きく変えていません。一方で、大型タンカーのVLCCは、新造船の竣工量が多いということで市況の低迷が続いています。4Qの予想を25,000ドルと置いていますが、今なかなか回復が遅れ気味で、こちらの数字(の達成は)は難しいかなという状況です。
しかしながら、このドライバルカー・タンカー部門は、いずれも市況全般は引き続き、緩やかな回復基調にあると考えています。また、先物運賃市場の推移を見ましても、2018年は年間を通して底堅いのではないかと判断しています。
セグメント別状況 (不定期専用船事業) ②
続きまして、16ページの自動車船です。実は、3Qの積高は昨年同期に比べて9パーセント伸びているのですが、主に伸びたのはアジアから北米向け、あるいは欧州向けです。中近東やアフリカなどの資源国向けは引き続き、なかなか回復して来ないということで、自動車船のトレードインバランス、行きと帰りの荷物が均衡していないということです。このトレードインバランスがむしろ拡大してしまう方向にあり、ここを改善していかないと厳しいというところです。
Ocean Network Express 統合作業の進捗状況(1/3)
資料の最後にONEの進捗が書いてあります。これ邦船3社(日本郵船・商船三井・川崎汽船の資料)で同じものが記載されていると思いますが、少し説明をいたしますと、進捗は基本的には大変順調です。
Ocean Network Express 統合作業の進捗状況(2/3)
今年に入ってから1月18日には最後まで(課題として)残っていた南アフリカでの独禁法がクリアになりました。また、1月26日には、グローバルでのサービススケジュールの発表もいたしました。今後は2月に入りますと、4月以降の船積みのブッキングが開始され、4月1日以降のフルオペレーションに繋げるというかたちです。
総括しますと、2016年が「パーフェクトストーム」と呼ばれた史上最悪の市況でしたが、2017年は「曇りのち晴れ」の「曇り」の1年ということで「我慢の1年だよ」と言っていましたが、その中でも薄日が差してくるような日もありました。
2018年は、これから晴れ間が広がってくると思っていますが、この4Qに関しては一過性の費用発生などによって、若干通り雨の予報もあり、収支は下方修正で(予測を)出しました。しかし、全体の基調としては着実に回復・改善に向かっていると考えています。経営の最重要課題であった復配も今回、発表いたしました。
あと(課題として)残っていることは、ONEのスムーズなフル稼働、さらには完全子会社化した郵船ロジスティクスの中長期経営計画「TRANSFORM 2025」の完遂に向けて、当社がいかにフルにサポートし、また一緒に手を携えてシナジー効果を発揮していくか、という2つにあるのかなと思っています。以上です。
質疑応答:下方修正と市況について
質問者1:日経のヨサと申します。よろしくお願いします。少し繰り返しになり恐縮なのですが、下方修正ということを踏まえれば、「4Qの業績は少し弱いのかな」と一見して思いますが、お話を伺う限りでは、3Qまで続いてきた市況の回復に乗って、「実態としては悪くない」「回復基調が続いている」ということでよろしいでしょうか?
宮本:はい。もともと4Qは、コンテナにしてもドライバルカーにしても、マーケットが緩む時期で、2年前にはその4Qの間にどん底まで市況が落ち込んだわけですが、今、足元を見てみますと、そこまで(市況が)落ちることは少し想定しにくいような、かなりいい状況になってきているということは実感できています。
質疑応答:通期予想の下方修正の要因
質問者2:通期予想の利益面の下方修正に関して、営業損益で30億円、経常損益で80億円ですよね?
宮本:はい。
質問者2:これに関しての理由は、営業の方は……。
宮本:燃料費の高騰などです。
質問者2:燃料費の高騰で(1トン当たり)390ドルと見ているということでしたが、先ほどの350ドルというのは、前回の説明会における4Qの見立てということでしょうか?
宮本:はい、そうです。
質問者2:それは今後の燃油の動向によっては、さらに損失が出る可能性はあるのでしょうか?
宮本:はい。さらなる悪化(の可能性)、それは若干はあると思います。
質問者2:それから、経常損益の70億円という一過性費用はONEによるものですか?
宮本:ONEだけではないのですが、半分以上がONE、残りが海洋事業のプロジェクトにおけるコストオーバーランの部分になります。
質問者2:合わせてということですか?
宮本:はい。合わせてです。
質疑応答:今後の見通しと燃油高について
質問者3:時事通信社、トヨダと申します。今後の見通しとして、やはり燃油高というのは重し要因になっていくのかどうか、その点について教えていただきたいです。
宮本:そうですね。マーケットが今のままですと、たしかに燃料費が上がってくると収益性が落ちる可能性はあります。ですが今、市況が上がり基調にありますので、燃料費が上がった分も、ある程度は運賃に上乗せすることも可能かなと考えています。
また、燃油サーチャージというものがありまして、これが燃料費が上がる局面で、少し遅れてサーチャージが上がっていきます。(燃料費)上がりはじめたときは、少し収支がやられ気味になりますが、一転して、時間が経つと、燃油サーチャージでけっこうな部分を回収できますので、それほど下振れがひどくなることはないと思います。
質問者3:ありがとうございました。