2017年9月期第3四半期決算説明会
藤田晋氏:本日はお忙しい中、決算説明会にお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。当社の第3四半期のご説明をさせていただきます。
全体的には順行な感じで、トピックスが少ない四半期なので、僕も今日はあまり話すことがないなと思いながら来たのですが、ご説明をさせていただきます。
1. 四半期決算
まず全体としましては、今、大きく投資を続けているAbemaTVが2年目に入りまして、世界的にも珍しいビジネスモデルということで手探りでやってきたんですけれども、一定の手応えが出てきたかなという状況に入りつつあります。
メディア事業は、AbemaTVのウィークリーアクティブユーザー(WAU)が順調に拡大を続けています。広告事業、ゲーム事業は計画どおり、順調に推移している感じでございます。
1. 四半期決算 [連結売上高]
全体の売上高です。当社の第3四半期は、例年、だいたい3月にグンと数字が上がって、4~6月はどちらかというと落ち着いた期になるのですが、(連結売上高)895億円。YonYで17.3パーセント増で落ち着いております。
1. 四半期決算 [連結営業利益]
既存事業の営業利益は118億円。投資している分と相殺すると、65.8億円という数字となっております。
1. 四半期決算 [販売管理費]
販売管理費は、全体としては広告費、大きなテレビプロモーションがなかったこともあって、販管費が少し減ったかたちになっております。
1. 四半期決算 [連結役職員数]
役職員数は、毎年4月に新入社員が入ってきますので、370名増加の4,523人となっております。
1. 四半期決算 [損益計算書]
損益計算書は、前回の説明会でも申し上げたのですが、今、株式の60パーセントを保有して展開しているAbemaTVに大きく投資をしているのですが、そのマイナス分が連結納税の対象になっていないのですべて取り込み、一方で収益を大きく上げているCygamesの少数株主持分を引いたことなどが原因で、最終利益としては非常に厳しい時期が続いているタイミングなんですけれども、一部特別損失などもあり、当期純利益は3億8,000万円となっております。
ただ、決算上の数字の不利を解消すべく、一番最後(のスライド)に出てきますけれどもDOE(株主資本配当率)を5パーセント以上に保つという方針ですので、最終利益いかんによらず、配当性向を高く保つという方針にしております。
1. 四半期決算 [貸借対照表]
貸借対照表はこのようなかたちで、大きな変化はございません。
2. 2017年度 業績見通し
あと3ヶ月になった、今期の業績見通しです。
今期は売上高3,600億円、営業利益280億円という業績予想を出しておりまして、AbemaTVへの投資期と位置付けておりますが、進捗としては売上高、営業利益、経常利益はほぼ4分の3を終えていますので、四半期どおり順調に進捗しています。
2. 2017年度 業績見通し [連結業績の進捗]
当期純利益が大幅に遅れてはいるんですけれども、このあと特別利益が出る予測がされるものなどもありますので、現時点では修正はせず、このまま据え置いております。
2. 2017年度 業績見通し [事業別営業利益の進捗率]
事業別の営業利益の進捗率です。
広告事業が79パーセント、ゲーム事業が76パーセントということで、それぞれがほぼ計画どおり推移しているかたちでございます。
3. インターネット広告事業 [売上高(四半期)]
インターネット広告事業、ゲーム事業、メディア事業についてそれぞれご説明させていただきます。
インターネット広告事業は、先ほど申し上げたとおり3月に需要期を迎え、4~6月は落ち着きます。そういう意味では、毎年同じような動きをしているのですが、QonQでは若干下がりますが、YonYでは18.6パーセント増ということで、それなりに成長を続けております。
3. インターネット広告事業 [スマートフォン広告]
やはり成長を支えているのは、スマートフォン広告がずっと伸び続けていて、このクォーターもまた伸びたというかたちになっています。
3. インターネット広告事業 [強化分野]
その成長を牽引しているインフィード広告ですが、こちらのほうは成長が一服してきたかなという感じで、少し横ばっていると言ってもいいのではないかなと思います。
広告代理部門において、こういったプロダクトというのは常にトレンドが変わっていくので、それに合わせて商品を選択していくというかたちになります。
その中でも、強化分野である動画広告に関しては、やはり大きな伸びが続いておりまして、このクォーターもまた伸びました。
この動画広告のところが、我々も期待している成長分野であると思うんですけれども、体制としては当然サイバーエージェント本体やCyberZ(サイバーゼット)、CyberBull(サイバーブル)などの広告代理店だけではなく、メディア、アドテクノロジーの分野、実際の動画広告制作も含めて、網羅的に手を打っていますので、基本的にはワンストップでサービスが提供できる体制が用意されている状況になっております。
3. インターネット広告事業 [営業利益(四半期)]
広告部門の営業利益は、人員増が影響したことで、若干営業利益率が下がっていますが、これは一時的なものだと思います。
4. ゲーム事業 [売上高(四半期)]
続いて、ゲーム事業です。ゲーム事業は少し横ばいになっています。最近当たった『バンドリ! ガールズバンドパーティー』が大きく伸びて、既存(タイトル)が下がったように見えるんですけれども、7月のラップがかなり好調で数字が良いので、既存(タイトル)が下がってきているわけではなく、一時的なものであると思います。
全体としては、新しいタイトルも混ざっておりますし、下落傾向ということはまったくないんですけれども、グングン伸びそうかと言われると、そういう状況でもないという手応えでして、この後準備されているタイトルのヒットに期待したいと思います。
4. ゲーム事業 [営業利益(四半期)]
営業利益は、68億円という結果となっております。
4. ゲーム事業 [セールスランキング]
こちらが主力タイトル(7本)の伸びで、2017年分の売上は、『バンドリ! ガールズバンドパーティー』が新たなヒットタイトルとして加わったことが大きいということです。
4. ゲーム事業 [新規タイトル]
今後の新規タイトルです。上にある2タイトルは8月1日、8月7日に出ますので、間もなくリリースを迎えます。
下の『プリンセスコネクト! Re:Dive』と『LOST ORDER』と書いている2本は、Cygamesがかなりの年月と費用をかけて仕上げているものでして、『プリンセスコネクト! Re:Dive』は一応9月末を予定していて、『LOST ORDER』は12月末までに出したいと思います。
まだズレる可能性はあるんですけれども、そのように準備しています。このあたりが当たってくると、新たな収益として加わるということでございます。
5. メディア事業 [売上高(四半期)/営業利益(四半期)]
メディア事業は、マッチングサービスが収益貢献しはじめたことで、売上が伸びはじめています。
営業利益もAbemaTVに大きく投資している最中ではありますが、順調に推移していると言っていいと思います。
5. メディア事業 [既存事業]
マッチングサービスが伸びていると申し上げましたけれども、柱となっているのは「タップル誕生」というサービスでございます。
現在会員数が230万人まで伸びて、国内同業種の中では「Pairs」に続いて第2位の位置であります。
大きく離されているわけではないんですけれども、非常に健闘しているサービスになっています。
Amebaブログを中心としたAmebaアプリのほうも、最近ここ発信のニュースが世間を賑わすことが増えていますけれども、このグラフを見ていただくとわかるとおり、さまざまなサービス改善というか、スマートフォン対応をやった結果、またグングン伸びてきているという現象が起きています。
5. メディア事業 [AbemaTV]
続いて「AbemaTV」です。ダウンロード数自体は最近あまり発表していないんですけれども、順調に拡大を続けて、1,900万ダウンロードを突破して、間もなく2,000万という数字になっています。
とくにサービスの特性上、スポーツにしても、そのスポーツが好きな人がダウンロードしたり、タレントにしても、そのタレントを見たい人がダウンロードしていくこともあるので、とくに大きなプロモーションをせずとも、粛々と伸びていくというサービスになっております。
この4-6月の非常にホットなトピックスとしては、ゴールデンウィーク最終日に放送した「亀田興毅に勝ったら1,000万円」という企画が当たりまして、これが1,420万という過去最高視聴数となりました。
これが世の中に出たことによって、AbemaTV自体の番組制作体制、非常にとんがった企画をやっているということにも注目が集まってきて、我々の社内でも「トンガリスト会議」といって、コンテンツ自体がとんがっているものを作っていこうと。
そこから生まれたものではあるのですけれども、ここが伸びたことで、AbemaTVの番組にも注目が集まるようになってきたという良い変化がありました。
亀田興毅が過去最高を記録したんですけれども、それまでは過去最高の次(の最高視聴数)が、大晦日の特番だったのですが、それを抜いた番組が藤井聡太四段の連勝記録の日でございました。
まさか将棋がこんなに見られるとは思わず、「将棋ch」を始めたんですけれども、開設と同時に、最年少プロにもなった藤井聡太四段の特番を組んで、七戦目に羽生(義治)三冠と対戦して、藤井聡太さんが勝ったこともあって、非常に話題を呼んで、一気に立ち上がったという現象が起きました。
5.メディア事業 [AbemaTV] MAUの推移/WAUの推移
こちらがMAUの推移です。MAU(マンスリーアクティブユーザー)で言うと、間もなく1,000万というところに差しかかってきております。
前回、「我々はパイオニアで、自分たちとの格闘で、この事業を成立させることを目指す」と言ってきましたけれども、確実にベースアップしていると。
もちろん亀田興毅さんの企画が当たるとか、藤井聡太四段が出てくるとか、1発のコンテンツの力は強いんですけれども、やはり積み重なって(ユーザーが)滞在しないと意味がないので、そういう意味では、このグラフを見てもわかるとおり、多少のアップダウンはあれど、着々と右肩上がりに拡大していると思います。
5.メディア事業 [AbemaTV] 動画サービスMAU比較
次のグラフは、ヴァリユーズという会社が提供している(分析サービス「VALUES eMark+」をグラフ化した)もので、各動画サービスのMAUを比較したものです。
AbemaTVは開始3ヶ月で一番MAUが大きくなりまして、そのまま独走しているという数字になっています。
5.メディア事業 [AbemaTV] 他社動画サービスとの比較
ただ、それは当たり前と言えば当たり前なんですけど、AbemaTV以外はほとんどが有料サービスで、かつオンデマンドサービスが多い分、このマッピングを見ていただけるとわかるとおり、競合らしい競合がいないという状況になっています。
我々が広告を中心としたモデルで成立させられるかどうかというのは一種の賭けでもあり、それに対して冒頭に、「一定の手応えを得られるようになってきた」と申し上げた次第でございます。
5.メディア事業 [競合優位性]
今後とも競合がいなくて、マイペースで投資していられるのかというところは、私も非常に神経を尖らせながらやってきていて、簡単には真似できないと自負しているのですが、まずこれをやってみて非常によくわかったことは、テレビ局と組まないと同じような事業はできないということです。
とくにニュースコンテンツの動画はほぼテレビ局独占ですし、主力のスポーツはほとんど(コンテンツが)テレビ局に集まってくるようになっています。
なので、まずはテレビ局と組み、テレビ局1社ではなかなか難しい、ネットサービスの非常に高いユーザビリティで作って、運用することが必要です。そういう意味では、ネット企業で、クオリティが高いものを作れる技術力と運営体制を持っていないといけません。
なおかつ、この期だけでもここに200億円の赤字を出すと散々公言しているくらいですから、200億円の赤字を許容できる体質がないと無理です。
それらをふまえると、同じことをできる会社は限られるというか、ほぼ見当たらないのではないかということで、この後は何とか自分たちの力で事業を成立させていきたいと考えております。
5.メディア事業[4Q以降の施策①]
今後の施策をいくつかご紹介させていただきます。コンテンツ制作の基本的な方針は大きく分けて2つです。
視聴習慣につながるようなサービス。例えば、毎日昼12時に毎日「けやきヒル'sNEWS」というニュース番組をやっているのですが、「AbemaTVは12時台にニュースをやっている」とか、毎晩深夜に「The NIGHT」という番組をやっているのですが、「毎晩『オールナイトニッポン』のようなコンテンツを毎晩やっている」とか。
将棋もそうなんですけど、「藤井四段の対談を毎晩やっている」とわかると、そのことを想起してアプリを開くので、視聴習慣がつくようなレギュラー番組を行うか。
または企画自体が非常に尖っていて、それを視るためにわざわざAbemaTVを開きたいというような番組を行うか。
この2点のいずれかを基準として番組を制作しております。
あとは再三言っているとおり、AbemaTVはテレビの前に座って視ていない若年層をターゲティングしていますので、若年層が視そうなものを考えて作っています。
5.メディア事業[4Q以降の施策②]
機能についても、今、一番力を入れてやっているのは、「Abemaビデオ」が始まって、機能は開始以来どんどんよくなっているんですけど、これを仕上げていくというところを強化しているのと、10月からデータ通信を節約できるモードができますので、これを搭載していきます。
5.メディア事業[今後のAbemaTV]
今後のAbemaTVとしては、2018年も引き続き投資フェーズであることは変わりないのですが、売上を大きく伸ばし、コンテンツも若干増やしたいという考え方でやろうと思っております。
先ほど言ったとおり、自分たちがマイペースで投資できるようになりましたし、競合がいないということで、どの程度の投資が必要かというのは、かなり直前で変更しながら決めたい、経営の柔軟性をもたせてほしいと考えておりますので、ユーザーの動向や市場環境の状況などを見ながら、無理をせず、過不足のない投資をやっていこうと考えております。
開発やユーザーインターフェースといったサービスのクオリティは、先行して強化してきたので、一定のレベルになっていると思っています。
当然改善を積み重ねていきますけれども、今後はコンテンツを強化して、(ユーザーが)視たいと思える番組を増やしていくという考え方をしております。
1,000万WAUというのは、ここでだいたいビジネスモデルが成立するだろうと言っていますけれども、もう半分近くまできているので、このペースでやりきろうと考えております。
総括
最後に総括をさせていただきます。
ずっと変わらないのですけれども、AbemaTVを中心としたメディア事業を中長期的な柱にしていこうと考えておりますので、その方針をやりぬくということです。
一方で、広告事業、ゲーム事業は順調に推移しておりますので、ここをしっかりと崩れないように、油断しないようにやりながら、メディア事業を育てるという方針でございます。
やはりずっと自分たちで作って育ててきたものですから、自分たちが作る先行投資フェーズが定期的に現れますが、いま現在はAbemaTVに投資をし、将来の柱に育てる最中であるというフェーズでございます。
「DOE5パーセント以上を目安とする」という経営指標は、先行投資フェーズに投資家の方に迷惑をかけてしまうという長年の悩みを解決するのに、DOEという指標が非常にいいと判断して取り入れたんですけれども、最終利益がうまく出ないフェーズでも配当性向を落とさないという考え方でやっていく。もしくは、自社株買いをしてでもキープしていくという考え方でございます。
私からの説明は以上です。