logmi Finance
logmi Finance
アネスト岩田株式会社6381

東証プライム

機械

目次

岩田仁氏(以下、岩田):アネスト岩田株式会社 取締役 常務執行役員 経営管理本部長 兼 経営企画部長の岩田です。みなさま、本日はお時間をいただき、誠にありがとうございます。当社は産業機械メーカーであり、みなさまにはあまり聞きなじみのない社名かもしれません。本日は当社の事業内容の詳細についてご説明します。

本日の説明内容は、スライドに記載の目次をご参照ください。

「アネスト岩田」を知っていますか?

岩田:アネスト岩田は産業機器メーカーです。みなさまが直接目にする機会は少ないかもしれませんが、さまざまな製品の製造工程で使用される産業機器を製造しています。

身近なところでは、自動車を塗装する際の塗装機器や食品の真空パック工程で必要な真空ポンプなどを製造しているメーカーです。後ほど、詳しくご説明します。

「アネスト岩田」について

岩田:当社の概要についてご説明します。当社は1926年に創業し、来年で創業100周年を迎えます。社是は「誠心(まことのこころ)」であり、社名の「アネスト」は「真摯であれ(EARNEST)」と「正直であれ(HONEST)」という言葉に由来する造語です。

2024年度の連結売上高は544億円、営業利益率は約11パーセント、海外売上比率は66.3パーセントで、22の国と地域に31の子会社を展開しています。従業員数は約1,900名で、その内訳は日本が約35パーセント、残りの約65パーセントが海外拠点に所属するグループ会社です。

当社の起源と現在の事業構成

岩田:当社は、創業翌年の1927年に国産初のスプレーガンを製造し、翌1928年に空気圧縮機(コンプレッサ)の製造を開始しました。

スプレーガンの使用には空気圧縮機が必要だったこともあり、創業直後から現在に至るまでこの2つのコア製品が事業の中核を形成し、環境対応に重点を置いた技術開発を継続してきました。例えば、塗装分野では環境に優しいといわれている、溶剤を使わない水性の塗料にも対応できる塗装機器の開発や、スプレーガンでの噴霧時に塗料の拡散を防ぐ塗装ブースの開発及び製造などが挙げられます。

空気圧縮機分野では、エンジンオイルのような潤滑油を使用しないオイルフリーの空気圧縮機や、省エネルギー性の高い空気圧縮機の開発を行い、現在に至っています。

事業構成

岩田:次に、事業の詳細についてご説明します。当社の事業は大きく2つに分かれます。エアエナジー事業では、空気圧縮機を主とする圧縮機及び真空ポンプを中心とした真空機器を扱っており、売上構成比は約62パーセントです。

コーティング事業では、スプレーガンや塗料供給ポンプなどの塗装機器及びライン設計から塗装をトータルで提供する塗装設備を事業として展開しており、売上構成比は約38パーセントとなっています。

コーティング事業:塗装のメリットを最大限に生かす塗装機器を提供

岩田:コーティング事業の主力製品であるスプレーガンは、自動車塗装をはじめ、家具や革製品など、幅広い分野の塗装に使用されており、非常に高度な塗装技術を提供しています。

コーティング事業:顧客が求める最適な「塗り」を提案

岩田:機器の販売だけではありません。当社のスプレーガンは、塗料だけでなく食液や油脂、機能性液体など各種素材を霧状に噴霧または塗布する技術も備わった機器になります。

さらにスライド右下に示されているように、自動車組み立てメーカー向けの塗装ロボットを活用した塗装ラインの設計など、塗装設備やシステムの一括提案といった事業も展開しています。

コーティング事業:環境意識向上に伴うビジネスチャンスの獲得

岩田:環境意識の高まりを受け、「塗装は環境に悪い」というイメージについての認識はありますが、当社は創業以来、環境対応に重視した技術開発を展開してきました。

具体的には、塗装ミストの飛散を抑制する低圧スプレーガンや、ミストを回収して飛散を防ぐ塗装ブースの開発・提供を通じて、環境負荷の低減に努めています。

また、環境負荷の高い有機溶剤系塗料から、特にヨーロッパなどの塗料メーカーが開発した有機溶剤を含まない水性塗料への移行に伴い、噴霧が非常に難しい水性塗料に対応可能な技術の開発も行っています。

コーティング事業の強み

岩田:当社のコーティング事業の強みは、国産初のスプレーガンを開発・販売して以来、約100年の歴史で培った霧化技術にあります。特に高級レンジのスプレーガンにおいては、国内外で高いブランド認知とシェアを誇っています。ハンドスプレーガンの高級レンジでは、日本国内で約75パーセント、世界では20パーセントから30パーセントのシェアを獲得しており、世界ナンバー2のポジションに位置しています。

スライド下に記載されているエアーブラシは、模型などの塗装に使用されるペンタイプのスプレーガンで、3つのブランドを展開しており、トータルシェアとしては世界ナンバーワンのシェアを誇ります。

関本圭吾氏(以下、関本):IR Agents代表の関本です。冒頭でご配慮いただいたとおり、御社の製品は産業機械向けということで一般的に認知されづらい領域ですが、御社が国内で非常に高いシェアを占めている現状について教えていただきたいと思います。

コーティング事業については、他の競合企業も高度な霧化技術を有しているのか、それとも御社が一強の状況なのか、市場環境はどのようになっているのでしょうか?  

岩田:スプレーガンの市場では、当社同様に高級レンジを手掛けるメーカーのほか、中級・低級レンジを主力とする中国や台湾のメーカーが存在し、霧の細かさや均一性に大きく違いがあります。

先ほどからお話ししているシェアとは、高級レンジのシェアのことで、市場規模を金額ベースで見ると大きな割合を占めます。一方で、中級・低級レンジは台数ベースでは非常に多数を占めているという構造になっています。

関本:高級レンジのスプレーガン市場についてですが、霧化の細かさや塗料の使用量の削減といった観点が挙げられると思います。どのような商品が高機能とされるのでしょうか? 

岩田:例えば、高級車の塗装とトラックの塗装を比べると、塗装表面の見た目に違いがあることが一目でわかると思います。高級レンジのスプレーガンは、霧化の細かさや均一性など、品質に大きな違いが出ます。

関本:そのような意味で御社の高級レンジの商品は、霧化技術などにおいて非常に高く評価されているのですね。

岩田:おっしゃるとおりです。

エアエナジー事業:「世界初」を生み出した圧縮機で暮らしを支える

岩田:空気圧縮機及び真空ポンプの事業を統括するエアエナジー事業についてご説明します。

空気圧縮機とは、大気圧を約10倍から30倍に圧縮し、そのエネルギーを動力源として空圧機器などを駆動させる装置です。この原理を利用した簡単な工程には、タイヤの空気入れやごみなどを吹き飛ばすエアブローなどがあります。

空気圧はもの作りの工場において、水や電気と同様に非常に重要なインフラの1つとなっています。工作機械の駆動や加工時に発生する切りくずの除去など、工程のさまざまな場面で使用されています。

一方、身近な用途としては、歯科医院で使用されるドリルがあります。歯科用ドリルでは高速回転が重要であり、回転数を得るためには電動よりも圧縮空気を利用することで安定した高速回転が実現できるため、歯科医院でご利用いただいています。

最近では、バスの車体を傾けることで乗り降りを補助する昇降機能にも空気圧縮機が使用されており、海外の電動バスなどで当社の製品が採用されています。

エアエナジー事業:クリーンな圧縮空気を提供するオイルフリー式

岩田:当社は長年にわたり、オイルフリー式の空気圧縮機の開発に注力してきました。従来のオイル式に対し、オイルフリー式では圧縮空気に油分が含まれないため、非常にクリーンな空気を供給できます。

オイルフリー式の空気圧縮機は、先ほどお話しした歯科医院など、空気のクリーンさが求められる場面で高い需要が続いています。これは、フィルターで油分を除去するだけでは臭いやその他の問題を十分に排除できないためです。

エアエナジー事業:世界の研究施設などで活躍する真空ポンプ

岩田:真空ポンプについてご説明します。当社の真空ポンプは、半導体製造工程の中であれば検査工程などに適した製品を開発しています。

残念ながら半導体製造工程のプロセスガスを扱う工程向けではありませんが、検査装置や最先端技術の研究用途には多く採用されており、研究機関などで広く使用されています。

エアエナジー事業の強み

岩田:当社のエアエナジー事業の強みは、1991年に世界で初めてオイルフリー式のスクロール圧縮機を開発・販売したことであり、その後もこの技術の蓄積と進化を続けてきた点にあると考えています。

また、省エネルギー性に優れた制御技術を開発することで、オイルフリーかつ省エネルギー性能が高い圧縮機を提供しています。空気圧縮機には、小形から非常に大形まで幅広いジャンルがありますが、当社は特に小形圧縮機に強みがあります。

日本国内ではシェア第2位、世界で初めて開発・販売したオイルフリー式のスクロール圧縮機では、生産台数ベースで世界第1位のポジションを維持しており、他社に比べて一日の長があると考えています。

関本:エアエナジー事業の市場における競争環境に関しておうかがいします。オイルフリー式の圧縮機は御社だけが提供しているのでしょうか? それとも他社でも提供されているのでしょうか?  

岩田:スクロールというのは、空気を圧縮する構造の1つで、当社はスクロール方式のオイルフリー圧縮機構に強みがあります。他社でも異なる方式でオイルフリー式圧縮機を提供していますが、スクロール方式のオイルフリー圧縮機を提供しているのは、日本では当社と国内のもう1社のみです。一部にはコピーメーカーも出てきていますが、グローバル市場でも当社が非常に高いシェアを有しています。

関本:少し難しい質問になるかもしれませんが、御社のスクロール方式と他社が採用している方式では、価格や性能面で違いがあるのでしょうか? 

岩田:空気圧縮機はサイズ展開が非常に幅広いのですが、当社のスクロール方式は小形圧縮機において優位性があります。他社の圧縮機構の多くは中形・大形に適した機構であるため、それぞれですみ分けができていると考えています。

関本:だからこそ、小形圧縮機のシェアが日本で2位、小形オイルフリースクロール圧縮機では生産台数が世界一なのですね。

岩田:おっしゃるとおりです。

関本:このエアエナジー事業の市場自体は、比較的安定しているのでしょうか? それとも成長市場と捉えられるのでしょうか? 

岩田:グローバルで見ると成長市場だと考えています。年平均成長率は約7パーセントで、先進国と新興国でけっこうな違いがあります。例えば、中国から製造拠点の移転が進んでいるインドでは成長率が17パーセント程度となっています。

関本:インドでは、例えば真空包装などは、人口増加に伴って自然と市場が拡大すると考えてよいのでしょうか? 

岩田:当社にとっては工場の増加が需要拡大の主な追い風になっています。現在「Make in India」政策により、日本企業を含む多くのメーカーによるインドへの製造拠点の移転・拡大が進んでおり、こうした工場向けの需要が高いことが、成長率の高さの要因であると考えています。

長期ビジョン「Vision2035」実現までの道筋

岩田:2025年度から開始している新たな中期経営計画について、その内容をご説明します。これまで当社は、既存事業であるコーティング事業とエアエナジー事業の2軸で、既存事業の深化とグローバル展開を通じ、平面的な成長を遂げてきました。

2025年度に発表した中期経営計画では、10年後の2035年度に、現在の約2倍となる売上高1,000億円を目指すという目標を掲げています。この目標の達成に向けて、第1次から第3次まで段階的に中期経営計画を策定し、バックキャストの手法でブラッシュアップしていく方針です。

また、これまでどおり「既存事業の深化」と「グローバル拡張」を継続しつつ、新市場・新事業・新技術といった「新たな領域」への挑戦を通じて、成長を加速させることを基本方針としています。

成長戦略・事業戦略目標の全体感

岩田:スライドは成長戦略のイメージ図です。大きく3層に分かれており、一番下の「オーガニックグロース」では、既存の2事業によるオーガニックな成長を目指しています。次の層の「M&Aの実施」では、既存事業の周辺領域への拡大を、M&Aを活用して進めるものです。また、当社の技術的な強みを活かした新規事業への参入も、M&Aを活用しながら取り組んでいく考えです。

一番上の「新規事業開拓」は、既存事業の周辺領域にとどまらず、他社との共創を含めた柔軟な対応で、新たな領域を開拓していく方針です。

既存事業におけるポートフォリオ構想と成長投資方針

岩田:スライドは、横軸が事業収益性、縦軸が市場成長性を示しており、現在の当社の既存事業をどのように活用し、新たなチャレンジをしていくのかという事業ポートフォリオです。

スライド右下に示されているエアエナジー事業のオイル式圧縮機やコーティング事業のハンドスプレーガンは、市場成長性は高くないものの安定的に収益を得られる製品群です。

これらの収益に加え、右上に位置するオイルフリー式圧縮機や真空ポンプ、アフターサービス、カスタマイズ製品といった市場のご要望に応えた製品による収益を活用し、研究開発や新規事業への投資を進めていく構想です。

第一次中期経営計画における経営指標

岩田:2025年度から2027年度にかけての第一次中期経営計画の概要です。売上高、営業利益、営業利益率、ROE、EPSをKGI指標として設定しています。2024年度実績は売上高544億円、営業利益率10.7パーセント、ROE9.4パーセント、EPS108.2円でした。

3年後の2027年度には、売上高620億円、営業利益率10パーセント、ROE11.0パーセント、EPS132円を目標としています。営業利益率が一時的に低下しますが、これは成長投資に資金を充てるためです。

第一次中期経営計画(3カ年)の全体像

岩田:この第一次中期経営計画では、3つの戦略を掲げています。事業戦略については、これまでお話しした内容が主なポイントとなりますが、昨今はESG関連や非財務系の指標にも非常に関心が集まっています。そのため、これらについても積極的に取り組んでいこうと考えています。

当社は海外子会社が多いため、これらのガバナンス強化や専門人材の獲得・登用、環境規制への多様な取組み、例えばCO2の排出削減なども進めていきます。

また、資本政策としてROE11パーセントを目標に掲げ、資本効率の向上を目指していく方針です。株主還元については、後ほど詳しくお話ししますが、第一次中期経営計画中のDOEを7パーセントから7.5パーセントとすることをお約束し、株主のみなさまへの還元を進めていく方針です。

創業100周年を迎えるにあたって

岩田:冒頭で、来年度が当社の創立100周年にあたるとお話ししました。100年も続く会社ということで、一部にやや保守的な企業風土があると分析しています。このため、インターナルブランディングを推進し、新たな経営戦略の遂行に資する体質への転換を目指して、さまざまな活動を開始したところです。

事業環境の理解と取組み方針

岩田:事業環境の理解と取組みの方針についてお話しします。グローバル経済の状況に関しては、みなさまもお気づきのとおり、ASEAN及びインドの経済成長が非常に高い水準となっています。

一方で、トランプ政権の影響もあり、グローバル全体が保護主義、保護貿易主義に向かっていることから、このような状況への対応を進めていかなければいけません。

したがって、当社としては、各エリアの特性や状況を考慮しながら、新製品の開発やサプライチェーンの再構築を進める必要があります。そこで、地産地消の考え方を取り入れながら、バリューチェーンを再構築していく予定です。

技術分野においては、当社が属する大きな2つの市場で、先端産業が先導する技術革新がさまざまに進んでいます。例えば、自動車産業ではEV化や自動運転化、自動車のフィルムコーティングなど、新しい技術が次々と登場しています。

このような変化に対応するため、当社の塗装技術を活用するとともに、新しい技術を駆使して同様の価値を提供できるよう取り組んでいます。

また、当社だけでは対応しきれない部分もあるため、他社との業務提携や協業、さらにはM&Aを通じて新技術や開発人材を獲得していきたいと考えています。

環境規制の強化においては、脱炭素社会の実現に向けて、ヨーロッパを起点としたさまざまな活動が進んでいます。これに対応するため、エネルギー効率の高い製品を投入していきます。

また、先ほども触れたように、塗料の中には依然として溶剤を含むものが多く存在しています。そのため、溶剤を可能な限り使わずに済む塗料を噴霧できる機器の開発をはじめ、新製品の投入にも取り組んでいきます。

第一次中期経営計画における注力領域

岩田:スライドは、第一次中期経営計画で、どのような点に注力して事業を成長させていくのかをイメージ図にしたものです。横軸は商品やビジネスモデル、縦軸は市場を示しています。一番左下は既存の商品や既存のお客さまを対象とし、これまでさまざまな取組みを行ってきました。

これを横軸方向にも縦軸方向にも広げていきたいと考えています。具体的には、当社が現在持っている商品の周辺領域の商品を提供できるようにしたり、サービスの領域を特に広げていったり、そして縦軸では新たなエリアに注力したりしていきたいと考えています。

さらに、斜め右上に進むにつれて、新たなバリューチェーンの変革・拡大を目指し、川上や川下にも調整を進めていきたいと考えています。

エリア別の売上計画

岩田:2028年3月期には、売上高620億円を目指しています。スライドの図には、それをイメージした「どこのエリアで、どれくらい売上を伸ばしていこうか」ということが示されています。年平均成長率が最も高いのは、インド・ASEANを含む「その他」のエリアです。先ほどお話ししたインド市場は年平均成長率が約17パーセントと高いため、ここで売上を伸ばしていきたいと考えています。

一方、アメリカについては、まだ十分に当社商品が浸透していない部分があるため、ここで成長を果たそうという大きな目標を掲げています。

日本や中国については、これまで一定の売上規模を維持してきましたが、特に中国では現在、内需が縮小している部分もあるため、強気には捉えず、比較的コンサバティブな目標を設定しています。

各エリア特性を踏まえた現地化戦略

岩田:インド市場において、現在取り組んでいる内容を少しご紹介します。

インド市場では、さまざまな工場が新たに進出しています。「当社の強みは小形の空気圧縮機である」というお話をしましたが、2018年に中国の中形圧縮機に強みを持つメーカーを買収しました。

この中国のメーカーでは給油式の中形圧縮機を製造していますが、その製品をインドでノックダウン生産するために工場を新設しました。現在、組立ラインが完成しており、今後ここでの生産量を大幅に拡大する計画です。

インドでノックダウン生産を行う理由について、もともと政治的にはインドと中国はあまり関係が良いわけではありませんが、経済的には大きな問題はなく取引は続けられています。

一方で、インドには「Make in India」政策があり、部品の2割から5割程度をインド製にしなければ、少なくとも政府系や国営の機関には納入できないという制約があります。

そのため、コアとなる圧縮機本体部分は中国製を使用し、その他の部品をインドで調達し、できるだけインド製を活用することで、「Make in India」政策にも対応できるよう、活動を進めています。

完成したこちらの工場では、今年の春頃からラインの稼働を開始し、現在は小形圧縮機の生産を一定量から始めています。この冬には、中形圧縮機の組立も開始できる見込みです。

また、塗装設備については、当社のパートナー企業がインド国内のTier 1に相当するマザーサン・グループと合弁会社を設立しており、このパートナーの力も借りながら、塗装設備の案件獲得を進めていく予定です。

アメリカ通商政策の影響について

岩田:アメリカ通商政策の影響については、当社は幸いにも、4月からしっかりと値上げができていることもあり、現時点では利益面での影響は大きくありません。

技術力・開発力の強化

岩田:技術力・開発力の強化として、本社内に最新鋭の工作機械や3Dプリンターなどを導入する新たな試作棟「IWATA Technology Park」を建設しました。この施設は、昨年秋頃から段階的に稼働を開始しています。これにより試作スピードを向上させ、新製品を次々と市場に投入していきたいと考えています。

関本:中期経営計画について質問です。こちらのスライドには新製品や技術について記載されていますが、原価率の改善が非常に重要かと思います。こちらの状況について教えてください。 

岩田:現在、試作棟は完成しており、工作機械などの設備がようやく揃いつつあります。稼働までに時間を要しているのは、工作機械導入までのリードタイムが非常に長期化しており、1年から1年半ほど待たないといけない状況だったためです。したがって、現在ようやく稼働が始まったところです。

関本:中期経営計画の開始から半年ほどが経過した現在、計画の進捗状況について、御社としてどのように捉えていますか? 

岩田:既存事業の周辺領域や開発施設、インドの組立工場などは順調に推移しているかと思います。一方、M&Aに関しては、タイミングやさまざまな要因が影響し、現時点では計画どおりには進んでいない部分もあります。

ただし、多くの案件があり、活動は継続しているため、いずれタイミングや相手側の状況が合致することで、成功を収めることができるのではないかと考えています。

関本:確かにM&Aについては、相手側もいらっしゃいますからね。

岩田:おっしゃるとおりです。

M&A・新規事業開拓

岩田:M&Aについては、タイミングや相手側の事情などが関係し、この7年間で実現には至っていません。しかし、水面下ではロングリストやショートリストを作成し、さまざまな会社と協議を進めています。

また、新たなビジネスモデルへの挑戦として、神奈川県の寒川町で「オートテックベース湘南」を立ち上げました。これまで当社は塗装機器の製造を中心に行っていましたが、その機器を活用したサービス提供や、塗装作業、自動車補修といった川下の領域にもチャレンジする取組みを開始しています。

株主還元策

岩田:最後に、株主還元方針についてお話しします。当社は2025年度から還元指標をDOEに変更しました。以前とは異なり、配当金額が比較的ぶれないようにするため、DOEという指標を採用し、これを7パーセントから7.5パーセントに設定しています。

また、今中期経営計画期間の3年間については、累進的な増配を行い、自己株式の取得についても30億円から35億円の規模を計画しています。これは、直近7年間でM&Aを実施できなかったこともあり、現金が積み上がった結果、株主のみなさまに還元することを目指した方針です。

以上のことから、今中期経営計画期間の3年間ではDOEを7パーセントから7.5パーセントと設定し、自己株式の取得を30億円から35億円規模と掲げています。ぜひご期待いただきつつ見守っていただければと思います。

ご説明は以上です。

質疑応答:今後のグローバル展開について

荒井沙織氏(以下、荒井):「グローバルで展開していきたい地域についてのお話がありましたが、反対に『ここは検討したけれども見込みがなかった』というエリアがありましたら教えてください」というご質問です。

岩田:そのような意味では、アフリカも次の成長市場のエリアだと思っています。しかしながら、当社のリソース不足もあり、現時点ではあまりうまくいっていない部分があります。

当社の海外子会社は南アフリカにもありますが、依然として売上があまり芳しくない状況です。また、本社側のサポートも十分ではないため、今後はそのような地域でも市場の拡大、グローバル展開を進める必要があると考えています。ただし、足元の3年間についてはインド市場に集中して取組みたいと考えています。

荒井:今後もその南アフリカの子会社は引き続き運営されるのでしょうか? 

岩田:はい、運営していきます。

質疑応答:新興国市場での戦略と製品展開について

荒井:「新興国でも後発メーカーや競合は少ないのでしょうか? そこでの優位性はどのようなところだと分析されていますか?」というご質問です。

岩田:新興国では、中国など価格的な優位性を持つ企業が多く存在しています。当社としては、先ほどのスプレーガンのお話にも関連しますが、高付加価値の製品を提供することを主眼に置いています。

もう1つ申し上げると、スプレーガンは比較的ブランドが浸透していますが、当社の空気圧縮機の世界シェアは2パーセントほどしかありません。そのため、当社の得意分野であるニッチな市場やアプリケーションを狙い、そこで収益を上げていきたいと考えています。

質疑応答:市場ごとの利益率や成長性の違いについて

関本:「成長市場への注力として、EV電池市場や機能性液体塗布などが示されています。例えば、市場ごとで利益率の違いや成長性の違いはあるのでしょうか? その場合、どのような部分が一番の成長軸になるのでしょうか?」というご質問です。

岩田:例えば、EV市場では、製品群として「塗布」と呼ばれるスプレーガンの技術を活用したアプリケーションや製造工程があります。また、その手前の工程では、真空ポンプや必要な箇所の空気圧力をさらに高める、ブースター圧縮機と呼ばれる製品を使い分けることもあります。

このような製品をうまく活用することで、お客さまの課題に対応し、売上の成長につなげることができると思います。したがって、当社もさらなる開発に取組む必要はありますが、一定の収益を得る可能性はあると考えています。また、そこで得られた知見をグローバルに横展開することで、初期投資の回収も可能になるのではないかと思います。

質疑応答:製品のカスタマイズ性について

関本:製品については型番やラインナップが豊富なのでしょうか? それとも業界やお客さまごとにチューンナップされたものが多いのでしょうか? どのようなカスタマイズ性になっているのか教えてください。

岩田:お客さま一人ひとりに対して、若干のカスタマイズはありますが、基本的にはEV市場向けなど、市場単位では仕様が大きく変わらないので、市場ごとの塊で開発を進めています。その中で、お客さまの要望が少しずつ異なってくるため、当社の製品群やパートナー企業の技術力を活用しながら、お客さまの課題を解決していければと考えています。

質疑応答:株主構成の変化と自社株買いの検討について

関本:「金融機関が御社株をかなり保有していると思います。今後、株主構成が変わる可能性や自社株買いの検討についてはどのようにお考えでしょうか?」というご質問です。 

岩田:自社株買いについては、この3年間で30億円から35億円の枠を設けて実施する予定です。金融機関の内訳として、生命保険会社の保有が一定の割合を占めていますが、世間で言われる政策保有株については、かなり減少させてきました。基本的には、その政策保有株をこの3年間でも縮減する方針で考えています。

その後の金融機関の対応については、次のステップで検討することになると考えています。

関本:それでは、いわゆる政策持ち合いというよりは、金融機関が御社に投資している目的の方が大きいということですか? 

岩田:おっしゃるとおりです。

質疑応答:中国市場における地政学的リスクと今後の展望について

関本:「特に今年においては、米中の問題や中国のリスク、また日中関係において緊張のようなものが取り沙汰されています。このような地政学的リスクが想定されているのかという点について、言及可能な範囲でお願いします」というご質問です。

岩田:日中関係については、まだ十分に読み切れていない部分があります。お客さまにアポイントを取って訪問できる場合もありますし、「いやちょっと、今はやめておこう」というお客さまがいらっしゃるのも事実です。そのため、このことがビジネスにどのような影響を与えるかについては、まだ不透明な状況です。

一方、中国市場については、この3年間から4年間はあまり良好とは言えない状況です。いろいろな取組みを続けてきたことで、当社としては底を打ったのではないかと考えています。したがって、今後は少しずつ中国市場を盛り上げていきたいと思います。

質疑応答:「Make in India」の戦略とサプライチェーン見直しについて

関本:「『Make in India』対応として、現地組立工場を新設されたというお話でしたが、同じような展開を他の地域でもすることは可能なのでしょうか? この工場を新設されたことによってさらに成長させることはできるのでしょうか?」というご質問です。 

岩田:先ほど、地政学的リスクや保護貿易主義についてお話ししました。また、それに伴い、サプライチェーンを見直す必要があるともお伝えしました。現在、その見直しを進めようとしており、「どこで何をどれだけ作るのか」、また、今までは日本や中国など、ある一定のところで作っていたものを「どのように分配していくのか」に関しては、検討を始めた段階です。

今も特定の地域で集中的に生産するものがある一方で、現地仕様に合わせる必要のあるものもあります。結果として、比較的地産地消のかたちになっていますが、すべてがそうではありません。この点の再編を、今後3年間で進めていきたいと考えています。

関本:奇しくも地政学的リスクのようでもありますね。

岩田氏からのご挨拶

岩田:最後にお話ししたように、株主還元等の方針について、2025年度から変更を加えています。今中期経営計画期間の3年間については、DOEを重視し、累進配当を実施すること、さらに自己株式の取得枠を設けることを方針としています。

このような取組みを進めていきますので、引き続き、当社の活動を見守り、ご支援いただければ幸いです。何卒よろしくお願いします。本日はありがとうございました。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:M&Aの計画はありますか?

回答:M&Aに関しては、当社グループの持続的成長を実現する重要な戦略の1つとして位置付けており、現在も複数の企業へのアプローチを行っています。資料29ページのターゲットを中心に積極的に検討を進めていますが、具体的な案件については、適切な時期に適時開示にてご報告しますので、今しばらくお待ちいただけると幸いです。

<質問2>

質問:EV・電池市場や機能性液体塗布など成長市場への注力が示されていますが、最も高い利益率を見込める用途・市場分野はどこでしょうか?

回答:高い利益率を得るためには、お客さまに付加価値を認めていただく必要があります。

そういった意味では、汎用品よりもお客さまの求める仕様に基づいて製作するカスタマイズ製品の方が利益率も高くなります。また、用途・市場としては、今後もEV市場の拡大とともに成長が期待できるバッテリーケースへの機能材の塗布などが高い利益率を見込める分野として候補に挙がると考えます。引き続き、こうした成長市場における高付加価値製品に注力していきます。

<質問3>

質問:中期経営計画後はDOEの方針は継続しますか?

回答:現在の中期経営計画期間中は、株主還元の強化や安定性の向上という観点からDOEを採用していますが、計画終了時点での財務状況、成長投資の必要性、株主のみなさまのご期待なども総合的に勘案した上で、最適な株主還元方針を改めて検討していきます。

<質問4>

質問:真空ポンプについては研究施設・先端分野での実績が紹介されていますが、今後は量産用途(産業用途)への拡大余地をどのように見ていますか?

回答:既存の製品群だけでは量産用途へ拡大は難しいと考えています。研究施設や先端分野で当社製品は一定の評価をいただいていますが、量産用途では求められる仕様が異なってきます。そこで今後は、パートナーとの共創により、新たな機構や出力のポンプを開発することで、量産用途への拡大を検討していきたいと考えています。

facebookxhatenaBookmark