AGENDA

神山隆志氏:日神グループホールディングス代表取締役社長の神山です。本日はご多用の中、当社2025年3月期通期決算説明会をご視聴いただき、誠にありがとうございます。

本日のご説明内容は、ご覧の7点です。順を追ってご説明しますので、どうぞよろしくお願いします。

日神グループHDの概要

はじめに、当社のことを初めて知る方に向けて、エグゼクティブサマリーとして、当社グループの事業構成、特徴、中期経営計画で目指している姿など全体像についてご説明します。

当社グループは総合不動産・建設業として、建設事業・不動産管理事業・不動産事業の3事業の推進を通じ、不動産の川上から川下までのバリューチェーンを網羅するグループ体制となっています。

2025年3月期の業績におけるセグメント別の売上構成と利益構成は、スライド右側の円グラフをご覧ください。売上構成比が大きいのは建設事業、不動産事業の2つで、全体の約86パーセントを占めています。

その次に、不動産管理事業が13パーセント程度を占める構成となっています。

一方で、セグメント別の利益構成を見ると、建設事業が53パーセント、不動産事業が22パーセント、不動産管理事業が24パーセントという構成です。

事業内容について、それぞれ簡単にご説明します。建設事業は、創業100年以上の社歴を持つ多田建設が担っています。主にマンション建設において強みのある会社となっており、当社グループ内のマンション建設を請け負うほか、グループ外のマンション建設が全体の9割程度を占める構成となっています。現在、最も業績が好調で、利益率も改善傾向にあります。

不動産管理事業は、日神管財が担っています。自社で販売した不動産物件およびグループ外の不動産の管理事業を行います。管理事業そのものが継続性のあるストック収益になるほか、比較的営業コストがかからない構造になっているため、利益率も高いのが特徴です。ストック収益のさらなる積み上げ強化に取り組んでいます。

不動産事業は、関東地方の1都3県を中心に住宅不動産の開発・販売を行っています。日神不動産、日神不動産投資顧問、リコルドの3社が担っています。具体的には、分譲マンションの企画・開発・販売や、中古マンションの買取・リノベーション・再販事業、戸建販売の企画・販売、投資用不動産の証券化事業など幅広く手がけています。

中期経営計画(1/3):新中期経営計画の位置付け

昨年7月に発表した中期経営計画について簡単に概要をお伝えします。2030年3月期にグループ全体の売上高が1,000億円、営業利益が65億円との目標を掲げ、その中間地点として、2年後の2027年3月期に売上高880億円、営業利益50億円を目指しています。

中期経営計画(2/3)事業ポートフォリオの現状と目指す姿

収益性を上げるための具体的な事業ポートフォリオの現状と、目指す姿についてご説明します。

スライドの左側、前中期経営計画の事業ポートフォリオをご覧ください。横軸が営業利益率、縦軸が売上高成長率で、3つの事業をプロットしています。営業利益率は、水色の不動産管理事業が最も高く、建設事業が最も低い状態にあることがご確認いただけるかと思います。

中期経営計画の3年間で、このかたちをスライド右側のポートフォリオの状況になるように取り組んでいきます。

まず不動産管理事業が、営業利益率においても売上高成長率においても、最も高い状態になるようにします。また建設事業についても、売上高成長率、営業利益率の改善に取り組みます。不動産事業については、売上構成比率等は大きいものの、売上高成長率と営業利益率の面からは大きな変化はありません。

したがって、当社の中期経営計画の進捗を見る上では、建設事業の成長や利益率改善、不動産管理事業の成長に注目していただくことがポイントとなります。

中期経営計画(3/3)中期経営計画の現状と見通し

スライドは、中期経営計画を実現するための重要KPIと実行施策について整理したものです。建設事業においては特命案件比率、セグメント利益率向上、不動産管理事業においては管理物件数・管理戸数、自社投資用アパート開発、不動産事業においては投資用分譲物件比率、証券化事業の物件開発がポイントとなっていきます。

当社の事業状況や成長の姿を理解する上で、特にこのあたりについて注目いただくことで、中期経営計画に沿った進捗状況をご理解いただきやすくなります。

重要KPIへの取り組み状況の詳細については、後ほどご説明します。

2025年3月期 決算概要

通期決算の概要についてご説明します。2025年3月期の決算は、建設事業、不動産管理事業が成長したものの、不動産事業において、マンション開発の工期遅延に伴う引き渡し時期のずれが生じたことが要因となり、全体で減収減益となりました。

売上高は762億3,500万円、営業利益は34億4,700万円、経常利益は30億6,900万円、当期純利益は20億5,700万円となりました。

セグメント別売上高は、建設事業が368億4,400万円、不動産管理事業が108億1,900万円、不動産事業が285億5,400万円となりました。

2025年3月期 決算概要の定性要因

2025年3月期の事業環境と各セグメントへの外部環境の影響についてご説明します。この1年間は、首都圏全体での新築分譲マンション販売戸数が1973年の調査開始以来最少の販売数になるなど、不動産業界全体としてマンション販売が低迷しました。その主な要因は3つ挙げられます。

1つ目は建設資材の高騰です。インフレの影響で資材価格が上昇し、建設コストが上昇したことに伴い、採算の合う物件開発が以前よりも難しくなりました。

2つ目は、人件費の高騰です。人手不足などにより人件費が上昇しており、マンション建設コストの上昇につながっています。1つ目同様に、採算性の観点からマンション開発への投資判断が難しくなっています。

3つ目は、働き方改革関連法の影響です。バリューチェーン全体で末端の下請け業者に至るまで、残業時間の上限などを設け厳しく管理されるようになったことから、以前よりも不動産物件開発の工期スケジュールは長くなっています。

このため、予定していた時期の販売に間に合わないなど、販売開始時期がずれ込む傾向にあります。

こうした外部環境の状況から、建設事業は単価の向上や粗利率の改善など恩恵を受ける一方で、不動産事業については販売可能な物件数が目標の時期までに揃わないなど、販売戸数の減少につながりました。

不動産管理事業については、不動産事業における販売計画のずれ込みの影響を受け、当初計画よりも管理戸数の積み上げが弱くなる結果となりました。

2025年3月期 決算予想に対する着地状況

通期業績予想に対する達成状況についてのご説明です。スライド上のグラフをご覧ください。売上高は通期予想に対して93.0パーセント、営業利益は93.2パーセント、経常利益は90.3パーセント、当期純利益は93.5パーセントとなり、すべての項目で計画未達となりました。

業績達成に向け、それぞれのセグメントで努力を重ねてきましたが、業界を取り巻く構造的な問題をカバーしきることができませんでした。投資家のみなさまの期待に応えることができず、申し訳ございません。

2025年3月期 半期売上推移とセグメント別売上の状況

半期の業績推移のご説明です。スライドのグラフは、2021年3月期以降の上期・下期の売上高の推移を表しています。2025年3月期の下期は、建設事業は伸びたものの、不動産事業の販売時期の遅延に伴い、全体の売上高は前年同期比で5.9パーセントの減少となりました。

セグメント利益は、スライド右側の表の下段をご覧ください。建設事業が20億4,700万円、前年同期比で約2.5倍と大きく成長しました。不動産管理事業が9億5,100万円、不動産事業は8億6,000万円と前年同期比で大きく減少しました。

2025年3月期 BSサマリ

BSの状況についてです。不動産事業における完成時期のずれの影響から、販売用不動産の在庫が上昇しています。そのため、一時的に負債比率が上がっていますが、それでも自己資本比率は51パーセント以上となっており、健全な財務体質となっています。

不動産事業を成長させ、規模のあるかたちで展開するためには、不動産開発に対する先行投資など、先行投資に耐えられる資金力・財務基盤が重要です。

先行投資の規模を増やしていくためにも、自己資本比率と自己資本の積み増しは重要と考えており、資本コストや株主還元とのバランスを考えながら、安定的な財務基盤となるよう努めています。

事業の特徴・ビジネスモデル

各事業の特徴と状況について、それぞれご説明します。まずは建設事業です。建設業界の市場環境としては、2024年以降の働き方改革関連法の問題により、工期の長期化や人件費等のコスト増加が、業界全体の構造として発生しています。

具体的には、建設に携わる人材の不足、労働人口の高齢化、長時間労働の常態化といった業界独自の課題があったところに対し、政府の施策として残業上限の設定、時間外労働賃金の増加、インボイス制度の3つが加わりました。

外部委託先のサプライチェーンに幅広く徹底される流れから、これまでは突貫工事で一気に建築可能だった工期が、この問題により、以前より長期化しています。またそれに伴って、建設業界が新たな案件を受注できないキャパシティの問題が発生しています。

これに対して当社グループの多田建設は、創業以来100年以上培ったノウハウと、マンション建設に特化した効率性を兼ね備えており、マンション建設の受注を継続的にいただいています。

マンションに特化している点について少し詳しくご説明します。建築物の中の部屋の区画割りがオフィスに比べると細かくなり、その分、水回りの設計や必要となる部材の量が増えます。

マンション独特の設計ノウハウや、規模の経済で必要材料をボリュームディスカウントすることができるなどの、特徴があります。

このように建設業界においては、構造的なキャパシティの限界から、需要は強い状況にあり、その中でも多田建設はマンション建設に特化したポジショニングで、実績と信頼を積み重ねてきており、採算性を重視した案件獲得がしやすい状況にあります。

このため、受注単価の上昇や付加価値の向上による粗利率の向上が見込みやすい状況にあり、今後数年かけて、売上高成長と利益率の改善を図る方針です。

建設事業セグメント業績

建設事業セグメントの業績についてです。建設事業セグメントは、前年下期対比で減収増益となりました。

スライド左側のグラフ推移をご覧ください。こちらは、建設事業の売上高と利益率の推移を表しています。売上高は前年下期対比で9.2パーセントの減収となりましたが、セグメント利益率については5.8パーセントまで改善しました。2025年3月期は、上期の利益率が5.3パーセント、下期の利益率が5.8パーセントと改善傾向にあります。

続いて、スライド右の表をご覧ください。特にご注目いただきたいのは、売上総利益とセグメント利益の改善です。売上高は368億4,400万円、セグメント利益は20億4,700万円となり、セグメント利益は前年対比で2.5倍以上に成長しました。

前年までは、インフレによるコスト高騰と人件費上昇を吸収しきれず、粗利率が低下していましたが、コスト見通しを考慮した上で、採算性の高い案件から受注する方針としており、利益率が改善される傾向が出てきています。

一方で、売上高が減収となっているのは、働き方改革関連法の影響や人手不足の問題により、工事進捗が想定より進まなかったことが主な要因となります。

主要KPIの推移:受注残高の推移

主要KPIとして、受注残高の推移をご説明します。受注残高は前年同期比で9パーセント増加していますが、受注金額が増えているというより、工事進捗の速度低下に伴い、残高が上昇している状況です。

先ほどもお話ししたとおり、粗利の高い案件の受注残高が積み上がっていますので、今後も同じ程度のペースで売上高と利益率が期待できる状況です。

建設事業の中期経営計画進捗状況

建設事業における中期経営計画の進捗状況についてご説明します。営業利益率向上のため、各施策について概ね計画どおりに推進しており、中期経営計画初年度は順調な状況となっています。

人的資本に関しては、資格取得支援の研修の拡大など、短期的な業績には影響ありませんが、中長期の成長の源泉として投資を進めており、一定の手応えを感じられる状況となっています。

建設事業トピックス

建設事業におけるトピックスのご紹介です。過去に受注金額20億円台の大型案件の受注強化を行いましたが、大型であるが故に、工事期間中の資材高騰や人件費高騰など外部環境の悪化により、利益率低下を招きました。その反省から、適切な工期で進められる案件規模にターゲットを絞り、受注を進めてきました。

その結果、掲載している3件の物件は、いずれも案件規模として10億円台の工事規模となっており、期間中の外部環境の変化をできるだけ小さくすることに成功しました。その結果として、利益率の高い、お客さまにとっても満足度の高い不動産開発を実現できました。

事業の特徴・ビジネスモデル

不動産管理事業についてご説明します。不動産管理事業は、グループ内の不動産事業セグメントから年間約400から500件の管理戸数増加を取り込みながら、グループ外の管理案件の獲得も進めており、管理戸数の積み上げを図ることで、ストック収益の拡大を図っています。

また、独自の不動産開発・販売も行っています。こちらは比較的規模の小さな1棟当たり12部屋程度のアパートを開発しており、販売後の賃貸管理事業のストック収益につなげています。

ストックとしての積み上がりは大きくないものの、不動産販売による一時的な収益が大きくなるため、売上・利益の推移を見る上では、ストック収益の成長と不動産販売の割合を分けて見ていただくことで、適切に成長性をご確認いただけます。

また、不動産管理事業においては7つの事業を展開しており、それぞれのシナジーを活かしながら、幅広い収益機会の創出と、最終的にはストック収益の拡大に向けて取り組んでいます。

不動産管理事業セグメント業績

不動産管理事業のセグメント業績についてご説明します。スライド左側のグラフをご覧ください。不動産管理事業における売上高と利益率の推移を表していますが、前年下期対比で7.6パーセントの減収となり、利益率についても低下しています。これは販売を予定していた1棟物件の販売開始が遅延し、2026年3月期にずれ込んだことによるものです。

スライド右の表をご覧ください。売上高は108億1,900万円、粗利は27億7,500万円、セグメント利益は9億5,100万円となりました。

主要KPIの推移:管理戸数の推移

ストック収益の状況をご確認いただけるのが、こちらのスライドです。主要KPIとして、管理戸数の推移を表しています。管理戸数は着実に積み上がっています。本来予定していた当社グループの不動産販売の物件数が期ずれとなるなど、厳しい環境の中、グループ外の管理物件の戸数を積み上げることで、管理戸数の積み上げに努めました。

不動産管理事業の中期経営計画進捗状況

不動産管理事業の中期経営計画に対する進捗状況についてです。不動産業界の外部環境として、建築需要の逼迫に伴うコスト上昇や開発遅延の影響を受けて、業界全体でマンション販売は落ち込む状況となっており、その影響を受けて、管理戸数の積み上げについても、計画に対してビハインドとなっています。

ただし、基本的な利益率に影響があるというわけではありませんが、マンション完成時期がずれ込むことによる時間軸の長期化が発生しています。

今後も、グループ内案件の積み上げや、グループ外における管理戸数の積み上げを通じて、安定的な収益基盤の拡大を目指していきます。

不動産事業セグメント業績

不動産事業についてご説明します。まず、不動産事業のセグメント業績についてです。不動産事業は、市場全体で供給不足の状況となっており、当社グループも厳しい結果となりました。

これは、建設業界における人手不足と働き方改革関連法により、工期遅延が生じていることが大きな要因であり、完成後のマンションの売れ行きは悪くありません。

スライド左側のグラフをご覧ください。不動産事業における売上高と利益率の推移を表していますが、前年下期対比で14.6パーセントの減収となり、セグメント利益率についても6.3パーセントと減少しました。

ただし、マンション需要そのものが悪化している状況ではないため、今期にずれ込んでいる販売予定マンションが完成すれば、販売は進む見通しで考えています。

主要KPIの推移:販売戸数と未完成在庫数の推移

不動産事業における主要KPIとして、販売戸数の推移と未完成在庫の推移をご説明します。スライド左側が販売戸数の推移で、右側が未完成在庫の推移を表しています。販売戸数については、昨年の下期と比較して大きく減少しました。一方で、未完成在庫が積み上がっている状況です。

今後、完成し、分譲販売が進むことで、将来の収益となります。

不動産事業の中期経営計画進捗状況

不動産事業の中期経営計画進捗状況についてご説明します。スライドの表を見ていただくとわかるとおり、一部三角が目立つ状況となっています。

業界全体で、建設コストの上昇や建設スケジュールの長期化の影響を受けていることが、主な要因です。

業界を取り巻く構造的な問題ですが、当社グループには建設会社もあり、グループ全体での強みを活かすことで、中期経営計画の達成に向けて進めていきます。

不動産事業セグメントトピックス

不動産事業セグメントのトピックスです。すでに完成しているものや、来年の完成に向けて、マンションの分譲販売を開始したものなどを紹介しています。関東の1都3県を中心に、需要の高いマンションを展開しています。

配当性向50%を目安に、株主還元を引き続き強化

株主還元についてのご説明です。当社では、株主還元の強化のため、配当性向50パーセントを目安に、引き上げる方針を打ち出しています。2025年3月期は、記念配当を含めて23円と、当初予定どおりの配当としました。2026年3月期は、前年に対して、また期初予想に対して減配にならないことを優先的に判断し、23円の配当予想としています。

計画サマリー

業績見通しについてです。今期は、売上高840億円、前期比10.2パーセント増、営業利益38億円、前期比10.2パーセント増、当期純利益23億円、前期比11.8パーセント増を見込んでいます。

売上高と営業利益の推移

売上高と営業利益率の推移です。売上高は840億円と、直近3年で最高の売上高を目指しています。また、営業利益率は、2025年3月期並みの4.5パーセントを見込んでいます。

業績達成に向けて注力するポイント

業績達成に向けて注力するポイントや業績予想の前提条件についてご説明します。2025年3月期は業績予想に対して未達で終わりましたが、2026年3月期についてはこれまでの反省を活かし、業績達成に向けてセグメントごとの対策を強化しています。

まず、好調な建設事業については、引き続き利益率の高い案件の選別を進めることや、工程管理の合理化を進めることで、完成工事高を適切にコントロールしていきます。

不動産管理事業については、2025年3月期に販売する予定だった自社物件の販売を見込んでいます。このため、不動産管理事業における売上高と利益額は、増加見込みとなります。

最後に、不動産事業です。こちらも本来は2025年3月期に販売予定であった物件が、今期にずれ込むことで、販売数に一定のプラス効果がありますが、これまで3月に完成予定となるスケジュールが多かったことを反省し、完成見込み時期を分散し、期ずれが起きないように、販売計画に余裕を持たせた開発計画を立てています。

したがって、2025年3月期のような、販売時期のずれ込みに伴う業績未達という事態が発生しにくい対策を進めていきます。

以上で、2025年3月期決算の説明を終了します。今後も、さらなる企業価値向上に向けて取り組んでいきますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いします。ありがとうございました。