第98回 個人投資家向けIRセミナー
池谷保彦氏(以下、池谷):代表取締役社長の池谷です。メディアスホールディングス株式会社は、医療機器の販売を主に行っています。社名が「メディカル」の「メディ」でメディアスということなのですが、メディア関係の会社とよく間違えられます。先日も某企業と間違えられて、抗議の電話をいただきました。
ニッチな分野で仕事をしている会社のため、まずは映像をご覧いただき、ぜひ、どのような会社かご理解を深めていただければと思います。
目次
池谷:それでは、会社説明を始めます。本日は、企業概要、業界を取り巻く環境、業績の状況、今後の成長戦略、資本コストと株式に関する情報、社会貢献活動の順番でご説明いたします。
企業概要
池谷:企業概要です。当社は2009年7月に設立されました。資本金は2024年12月末現在で13億8,000万円、従業員は2024年12月末時点で2,589名となっています。決算期は6月末で、代表者は私、池谷保彦です。所在地は東京都千代田区で、日比谷にあります。
沿革
池谷:当社の沿革です。2009年7月に東京証券取引所ジャスダック市場に上場し、2016年9月に東証二部、そして翌年に東証一部、2022年2月に東証プライム市場に移行しています。
メディアスグループ
池谷:当社は14の事業会社から成り立っています。主に医療機器の販売会社です。その他に医療機器のメンテナンスや簡単な医療機器、例えば輸液を自動的に行う輸液ポンプや注射器の代わりをするシリンジポンプなどのレンタルを行っている会社、ソリューションサービスという病院にさまざまな新しいシステム等を提供する会社、そして介護機器を専門に扱う会社があります。
拠点展開
池谷:当社の拠点は、北海道から九州・福岡まであります。
事業概要
池谷:当社は、マスクや手袋など身近なものから、内視鏡などの先端医療機器まで取り扱っています。内視鏡は、以前は胃の検査によく使われていましたが、今は治療にも使用されます。患者の負担が非常に減るためほとんどの病院が内視鏡手術を行っており、内視鏡は当社の取扱いの中心となっています。
スライドの先端医療機器の中央の画像はMRIです。磁力を使って体の中を調べる機械です。MRIの検査を受けると「ガンガンガン」と大きな音がして少し怖い感じもしますが、体を傷つけることなく、体の内部を診察できる機械です。
その右側の画像は手術用ロボットの「ダヴィンチ」です。ロボットといっても、実際には人間がすべて操作しています。もともとは医師がいないようなへき地で手術を行うために開発されたのですが、現在は手術室において患者の横で使用することがほとんどです。
当初は、日本人は器用なためこのようなロボットは要らないのではないかといわれていました。しかし実際に開発され、器用な日本人がこの機械を使うとさらに精密な手術ができるとして、おそらく日本が世界で一番多く導入しているのではないかと思っています。
介護福祉事業では、ベッドや車椅子などのレンタル等を行っています。また、少し変わったものとして、救急車に積んでいる医療機器も扱っています。
【仕入れ】日本と世界の医療機器メーカーランキング
池谷:当社の仕入れ先です。スライド左側は海外の医療機器メーカーで、メドトロニック、アボット・ラボラトリーズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、シーメンスヘルシニアーズなど、世界的に有名な企業ばかりです。
国内の医療機器メーカーとしては富士フイルムメディカル、オリンパス、テルモ、キヤノンのようなメーカーから医療機器を仕入れて医療機関に提供する仕事を行っています。
関本圭吾氏(以下、関本):御社の取扱い品目数は100万点以上ととても多いです。例えば心臓、血管、脊椎など、御社が特に強い医療分野や、特に取引量が多い企業はあるのでしょうか?
池谷:当社の場合は医療機器全般を取り扱っており、それが強みであると捉えています。それを土台に、心臓外科、整形外科においては専門の事業会社を設立しています。医療機器は分野が幅広いため、専門的な知識がないとドクターのニーズに応えられないということもあり、専業化して会社を分社化しています。
医療機器は分野が広く、専門的な知識がなければ医師のニーズに応えられないため、専業化、分社化しています。
関本:全体もカバーしつつ、専門性の高い分野も持っているのですね。
池谷:おっしゃるとおりです。
【販売】当社グループ医療機器売上高 顧客セグメント
池谷:スライドは当社グループの顧客セグメントを示しています。濃いオレンジ色の部分が国立病院や地方自治体が設置主体である県立・市立病院などの公的医療機関で、全体の半分を占めています。残りの半分は、私立の大学病院や民間の病院グループなどです。
公的医療機関の売上が非常に多く、与信的には安定した取引を行っています。
医療機器卸業界の商流(医療機器商社が果たす役割)
池谷:当社の機能です。医療機器の海外メーカー、インポーター、国内の企業から医療機械を仕入れ、地域の医療機関に届けるサービスを行っています。それに付随してメンテナンスやソリューションサービスを行うのが主な業務です。
当社グループのトータルソリューション
池谷:当社グループのトータルソリューションについてご説明します。当社は医療機関のさまざまなニーズにお応えできるように、医療機器の販売だけではなく、医療機関に必要な複数のソリューションツールを提供しています。
「Meccul(メッカル)」は、医療機器価格の分析システムです。当社の持つ2,000病院の医療材料価格のデータベースを使い、医療機器の選択に貢献しています。
「SURGELANE(サージレーン)」は、手術室運営支援プログラムです。手術室は、病院においてブラックボックスになっており、一番収入の多いところではあるものの効率化が進んでいないといわれています。そちらにITを導入し、ある特定の手術の平均時間やコストを示すことで、より効率的な手術が行えるよう支援するものです。
「SPD(エスピーディー)」は、業界独特のシステムです。これは富山の配置薬、置き薬、あるいは「オフィスグリコ」のようなものと一緒です。医療機関の各部署に必要と思われる材料を置いておき、そこから必要な物を取り出して使っていただきます。そして、使った物について我々が請求するというシステムです。
以前は、医療機関がそれぞれに在庫を持ち、必要なものを我々に注文していたのですが、このSPDシステムを導入することによって、師長や副師長が「何が足りないんだ」とか、用度課に「何々を買ってください」という手間がなくなりました。
また、医療機関の不要な在庫がなくなりました。医療材料には滅菌期限があり、その期限切れによって全体の5パーセントくらいを廃棄せざるを得ない状況があったのですが、我々が管理する在庫の中から必要なだけ発注するシステムによりそのようなものもなくなるため、大規模な医療機関はこのSPDシステムを活用しています。
これは、ある程度大規模な医療機関でなければ有効に活用できないのですが、300床以下の医療機関でも活用できるように簡易化したものが「STORE(ストア)」です。
「ASOURCE DATABASE(アソースデータベース)」は、当社が扱う100万点近い医療材料のデータベースです。
関本:スライドに「医師の働き方改革への対応」と記載があります。私は上場企業を1年くらい見てきて、医師の働き方改革がプラスに働くこともあれば、マイナスに働く要素もあると思います。医師の働き方改革は、御社にどのような影響があるのでしょうか?
池谷:医師の働き方改革は当社にとってもマイナスに働くと思いますし、医療の提供体制そのものを抜本的に変えていかなければ、今までどおりの医療サービスを提供し続けることはできないのではないかと考えています。
ソリューションビジネスでは、国家資格を持つ医師あるいは看護師が、国家資格がなくてもできる仕事を行わなくてもよくなるように、より専門的な業務に専念できるようにするためのツールを我々が提供できるように考えています。それによって働き方改革を進めることが可能になるのではないかという考えです。
関本:命を救う現場における働き方改革はなかなか難しいと、さまざまな医療に関わる会社からうかがっています。ぜひ御社のような企業から効率化に寄与していただきたいと思います。
池谷:本当に難しいと思うことがあります。目の前に医師の助けが必要な患者がいる時に、「時間ですから」と言えるのかは私も疑問です。
関本:なかなか難しいと思いますが、今後対応していかなければいけないところだろうと思います。
当社グループのトータルソリューション
池谷:スライドは、当社グループのトータルソリューションです。
人口推移と医療・介護費の将来見通し
池谷:業界を取り巻く環境についてご説明します。スライド左側は、日本の人口推移です。下の赤い斜線部分が高齢者の人口で、2040年くらいまでは高齢者は減らず、医療機器のマーケットはこれからも若干ですが伸びていきます。
スライド右側のグラフは、医療・介護費の将来のマーケットの進捗予想です。2040年までは段階的に伸びています。
医療機器の市場環境
池谷:医療機器のマーケット状況です。先ほどの医療と介護を合わせたマーケットと同様に2040年度までは段階的に伸びていきます。
医療機器のマーケット規模の年成長率は2パーセントから3パーセントとなっています。この背景として、2年に1回行われる診療報酬の改定の中で、中医協から指定される医療機器の販売価格、医療機関から見ると購入価格が、16年の間マイナス改定で価格が抑えられています。
それでも新しいデバイス、新しい医療機器が出ることによってマーケットが大きくなっていくと予想しています。ただし、購入価格が抑えられているため、日本で販売してもなかなか利益が出ないことから、海外の輸入品がなかなか日本の市場に入ってこないデバイスラグが少しずつ起きているのです。こちらも将来に向けての課題だと考えています。
市場における順位と今後の可能性
池谷:医療機器・用品の末端市場規模は3兆7,240億円と、4兆円弱のマーケットがあります。そこに約1,000社の医療機器の販売会社があります。1,000億円以上を販売する会社は7社で、まだそれぞれの地域においてそれぞれの医療機関にさまざまな医療機器のディーラーがいる状況です。
我々としては、販売価格が抑えられていることもあり、今後、医療機器の業界の再編が進むのではないかと考えています。その中で我々は今後もM&Aを行っていき、国内No.1の地位を維持していきたいと考えています。
関本:市場環境について、国内1位はすばらしいと思います。一方で、市場シェアでは10パーセントにも満たない状況です。そもそもなぜ100億円未満の会社は生き残れているのでしょうか?
専門性やローカライズを大事にすると意外と生き残っていくのか、それとも少子化や高齢化があるため統合しないと生き残れず、M&Aを中心に再編が進んでいくような業界環境なのでしょうか? M&Aを中心としたシェアアップの観点で補足をお願いします。
池谷:もともと我々の業界は戦後に大きく伸びてきたのですが、その中で一番大きなイベントだったのがディスポーザブルで、いわゆる使い捨ての医療機器がどんどん普及してきました。
それまでは、例えば注射器もガラス製のものを繰り返し使っていました。それでは衛生面で非常に問題があるとして、どんどんプラスチック製の使い捨てのものに変わっていきました。それに伴い、この業界が大きく伸びてきたのです。
その時に、それぞれの地方において企業が病院とある程度の関係を作りました。病院としても、信頼できるところから仕入れておかないと、いざという時に物が届くかどうかわからないこともあります。そのように非常に属人的な関係の中でこの業界が成り立ってきて、今の1,000社というかたちになっているのではないかと思います。
ただし、今後は、医療機関の経営が厳しい中で、より安価で安全な医療材料を仕入れたいという要望が強くなってきます。また、特に輸入品を中心に、これから日本におけるマーケットがシュリンクすることもあり、1,000社に販売するよりもっと限られたところで効率的に販売したいというメーカーのニーズも出てくるため、今後は寡占化が進んでいくと考えています。
売上高推移
池谷:業績の状況です。当社の業績は右肩上がりに成長しています。スライドで色が変わっている3年前から会計基準が変わり、収益認識基準を適用しています。
当社はSPDを中心に代理人取引に該当する売上が400億円ほどあり、会計基準の適用によってその分の売上高が減少し、現在2,800億円ぐらいの売上になっています。
2025年6月期 中間決算状況
池谷:中間決算の状況です。売上高は前期比112.6パーセントの1,427億円、営業利益は前期比110.3パーセントの7億5,100万円、経常利益は9億8,300万円です。中間純利益は前期比80.5パーセントの4億600万円と若干減っています。
2025年6月期 通期業績見通し
池谷:今期の通期での見通しとしては、売上高は2,800億円を予定しています。営業利益は14億円、経常利益は20億円、当期純利益は12億8,000万円の計画です。
収益構造 季節性
池谷:当社の特徴として、得意先の半分が公立病院で、当社の第3四半期にあたる年度末にどうしても売上が集中する傾向があります。そして、第4四半期の4月から6月に売上が落ちるという季節性があるのです。
中期経営計画(2025年~2027年)
池谷:今後の成長戦略です。2027年6月期は、売上高3,200億円、経常利益24億2,000万円をめざしています。
関本:経常利益における年率10パーセントアップに関して、具体的な戦略があれば教えてください。実額として伸ばすのはもちろん、利益率についても改善のポテンシャルなどが考えられるのかと思います。
池谷:当社としては従来、マーケットシェアを中心に営業拡大しようと経営してきました。しかし今、物価が非常に上がっていることと、今後、初任給が上がっていくことも含めて、マーケットを中心としたシェアの拡大よりも利益の拡大に軸足を移した経営をしようと考えています。
当然、効率化も同時に進めていきます。人件費はなかなか手をつけにくい部分ですが、物流の効率化と、それ以外のコンピューターシステムを活用した効率化を進めることによって、2027年には経常利益24億円、毎年10パーセントのアップを考えています。
関本:売上高、シェアについては一定の拡大ができたとのことですが、市場としてはまだシェアを全部取っているわけでなく、中小のところから寡占化が進んでいくだろうというお話でした。その中でM&Aによる規模拡大などがありますが、経営の軸足として収益性改善にもしっかり取り組んでいくという認識でいいですか?
池谷:そのとおりです。シェアの拡大に関しては、今後はM&Aを中心に進めていこうと考えています。
戦略1~顧客価値の最大化~
池谷:当社グループの価値の最大化についてです。まず、「今までに培ったノウハウと情報ネットワークの活用」「各種ソリューションツールの提供」です。いろいろなITを使ったソリューションツールを持っている販売会社は、当社グループだけだと考えています。
そして、「急性期医療を提供する医療機関への営業強化」です。今後、病院はますます急性期を担当する病院とそれ以外の慢性期を担当する病院に分かれていきます。その中で医療機器を一番よく使う急性期医療を扱う病院へ特化することを考えています。
「低侵襲手術分野への注力」については、今、ほとんどの手術が内視鏡を使った低侵襲の手術に切り替わっています。そのため、この医療機械・材料に注力していく予定です。
次に「プライベートブランド商品の製品拡充」です。当社はコロナ禍で、マスク、手袋などを中国をはじめ東南アジアから直接取り寄せていました。これがずいぶん役に立ち、マスクなどが本当に足りなかった時でも、病院に供給できたのです。こちらにますます力を入れていきたいと考えています。
最後に「各地域におけるBCP対応が可能な体制を構築」です。特に日本の場合は地震が一番多いと思いますが、自然災害だけでなくコロナ禍のようなパンデミックの時にも、安定的に医療材料を提供できる体制を構築したいと考えています。
戦略2~M&A・グループ管理体制
池谷:続いて、M&Aおよびアライアンスの推進です。これはかねて当社の大きな経営方針になっており、今後、医療環境が厳しくなる中でさらにM&Aを推進するチャンスが増えるのではないかと思います。
また、グループ経営管理体制の強化を進めます。「委員会等の組織横断的な取組み」「人事交流を通じてグループ内の連携を強化」「IT・物流等の業務インフラの整備」については先ほどお伝えしたとおりです。
そして「管理業務の集約による効率化」「働き方改革に向けた業務環境の改善」「PMI(M&A後の統合プロセス)の推進」を大きな柱に掲げています。
関本:M&A、アライアンスをしていきたい具体的な領域や分野はありますか?
池谷:現在は、基本的には横のM&Aで、国内では網羅的に医療材料を提供できるような体制を作ることを第一と考えています。それがある程度実行できれば、今度は垂直関係の特に仕入先のM&Aについても考えていく予定です。
資本コストや株価を意識した経営:現状分析
池谷:資本コストと株式に関する情報です。スライドに記載しているのは過去のROEとPBRの推移です。現在、PBRは約1倍のところを動いています。ROEはここのところ設備投資が続いたため少し下がっていますが、今後は上げていく予定です。
資本コストや株価を意識した経営:今後の方針
池谷:収益性の改善として、営業のシェア・地域・売上の拡大よりも、収益を重視した経営を行っていきたいと思っています。
また、バランスシートの最適化を行っていきます。現状がアンバランスというわけではありませんが、今後環境が厳しくなっていく中では少し筋肉質な体質にしていきたいと考えています。
配当性向と方針
池谷:配当性向と方針です。今期の配当性向は30パーセント以上で、前期は21円だったところ今期は19円の配当を予想しています。
株主優待
池谷:株主優待制度です。100株以上をお持ちの株主さまには1,000円相当のQUOカード、もしくは社会貢献として国境なき医師団への寄付を行います。また、500株以上をお持ちの株主さまには6,000円相当のQUOカード、もしくは国境なき医師団への寄付という優待を行っています。
社会貢献活動
池谷:社会貢献活動です。当社は、国連WFP「レッドカップキャンペーン」を行っています。当社のプライベートブランドである「ASOURCE SELECT」という商品の売上の一部を国連のWFPに寄付しており、現在1,100万円弱を寄付しています。
株主優待の中にもあったように、社員からの国境なき医師団への寄付額に会社からも同額を上乗せして寄付しています。今のところ合計380万円ぐらいの寄付をしています。
メディメッセージ
池谷:2007年から「メディメッセージ」を開催しています。医師や看護師がふだんどのようなことしているのかはわかりにくいものです。医療を担う後継者を育成していかなければいけないという医師や看護師からの希望もあり、病院でどのようなことをしているのかを子どもたちに知ってもらうイベントを開催しています。
よく病院祭のようなかたちで行われているものがありますが、それを大きくしたものです。地域の医師、看護師、検査技師や放射線技師など、いろいろな方の協力を得て進めています。
質疑応答:医療機器販売における強みについて
荒井沙織氏(以下、荒井):「医療機器販売先の確保と新規開拓について、御社の強みを教えてください」というご質問です。
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