2024年12月期決算説明

長谷川直人氏(以下、長谷川):みなさま、こんにちは。本日はご多用中のところ、三菱鉛筆株式会社の2024年12月期決算説明会をご視聴いただき誠にありがとうございます。私は上席執行役員財務担当の長谷川です。どうぞよろしくお願いします。

本日の決算説明会は2部構成となっています。第1部は2024年12月期連結決算について、第2部は2025年から始まった新中期経営計画についてご説明します。

2024年12月期 連結決算 概略

2024年12月期連結決算の概要をご説明します。2024年12月期の売上高は、海外市場で堅調に推移したことや円安による押し上げ影響もあり、過去最高を更新することができました。

売上総利益は、原材料やエネルギーコストの高騰が依然として続いているものの、売上高伸長による販売差益の増加により前年比21.8パーセント増となりました。営業利益は、Lamy社の持分取得に関連する費用等の影響もあり、前年比2.9パーセント増となりました。

この結果、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益のすべてで過去最高を更新することができました。

具体的な数字についてご説明します。売上高は888億2,000万円、前年比で約140億円、18.7パーセントの増加となりました。平均為替レートは1ドル151円44銭で、前年に比べて10円89銭の円安となっています。

売上総利益は468億4,000万円、前年比で約83億円、21.8パーセントの増加となりました。売上総利益率は52.7パーセントで、前年と比べて1.3ポイントアップしています。販管費は346億5,000万円、前年比で約80億円、30.3パーセントの増加となりました。

この結果、営業利益は121億8,900万円、前年比で3億3,700万円、2.9パーセントの増加となりました。経常利益は129億5,200万円です。当期純利益は、特別利益に土地の売却益を計上している関係で112億7,200万円となり、前年比で約11億円、10.9パーセントの増加となりました。

連結業績推移 売上高

スライドのグラフは、2014年から2024年までの連結売上高の推移を示しています。2020年は551億8,000万円と、新型コロナウイルスの影響により売上がいったん下がりましたが、2021年は618億9,400万円になり、2022年はコロナ禍前の最高値である672億4,700万円を更新し、689億9,700万円となりました。

2023年はこれをさらに上回り748億100万円、2024年は888億2,000万円となりました。

連結売上高 地域別構成比

地域別の売上高構成比です。全体の売上高は、2023年の748億円から2024年の888億円へと18.7パーセント増加しています。

日本については、2023年12月期の比率46.5パーセント、金額約347億円から、2024年12月期は比率40.3パーセント、金額約357億円になりました。その結果、日本の売上高増加率は約3パーセントとなっています。

米国については、2023年12月期の比率13.4パーセント、金額約100億円から、2024年12月期は比率15.2パーセント、金額約135億円と増加しました。その結果、米国の売上高増加率は35パーセントとなっています。

アジアについては、2023年12月期の比率18.4パーセント、金額約137億円から、2024年12月期は比率17.3パーセント、金額約153億円となりました。その結果、アジアの売上高増加率は12パーセントとなっています。

欧州については、2023年12月期の比率15.4パーセント、金額約115億円から、2024年12月期は比率20.4パーセント、金額約181億円となりました。その結果、欧州の売上高増加率は58パーセントとなっています。

これらの結果、2024年12月期の売上高比率は、海外が59.7パーセント、国内が40.3パーセントと、海外が約6割を占めるようになりました。

連結売上高 製品別構成比

製品別の売上高構成比です。当社の主力であるボールペンについては、2023年12月期の比率45.6パーセント、金額約341億円から、2024年12月期は比率40.7パーセント、金額約361億円となりました。その結果、ボールペンの売上高は前年比で6パーセント増加しています。

シャープ・替芯については、2023年12月期の比率12パーセント、金額約90億円から、2024年12月期は比率12.7パーセント、金額約113億円となりました。その結果、シャープ・替え芯の売上高は前年比で25パーセント増加しています。

サインペンについては、2023年12月期の比率29.8パーセント、金額約223億円から、2024年12月期は比率30.4パーセント、金額約270億円となりました。その結果、サインペンの売上高は前年比で21パーセント増加しています。

鉛筆については、2023年12月期の比率5.2パーセント、金額約39億円から、2024年12月期は比率4.2パーセント、金額約37億円となりました。その結果、売上高は前年比で5パーセント程度減少しています。

その他については、2023年12月期の比率7.4パーセント、金額約55億円から、2024年12月期は比率12パーセント、金額約106億円となり、売上高は前年比で94パーセント増加しました。こちらは、Lamy社の取り込みにより万年筆の比率が増加し、万年筆がその他に入っていることによるものです。

連結売上高総利益率

連結売上高総利益率の推移です。スライドのグラフ一番左側の2020年は49.5パーセントでした。2021年は49.5パーセントと変わらずですが、2022年に一度少し下がり、その後2023年に51.4パーセント、2024年には52.7パーセントとなっています。

連結売上高営業利益率・経常利益率

連結営業利益率・経常利益率の推移です。2020年にコロナ禍で営業利益率が10パーセントまで落ちましたが、2021年は12.1パーセントまで上がり、2022年は13.4パーセント、2023年は15.8パーセントまで上昇しています。

2024年は、Lamy社の持分取得に関連する費用等の影響により営業利益率が若干下がり、13.7パーセントとなりました。

連結キャッシュ・フロー

連結キャッシュ・フローについてご説明します。期首の現金及び現金同等物は558億5,600万円でした。

こちらに営業キャッシュ・フロー64億6,700万円を加え、投資キャッシュ・フローとして約279億円のキャッシュを支出しました。内訳は、Lamy社の取得が約211億円、投資不動産の購入が約60億円などです。

財務キャッシュ・フローは、自己株取得が約15億円、配当が約25億円、合わせて約40億円のキャッシュアウトとなりました。しかし、約80億円を借り入れたため、結果として40億円程度のプラスとなっています。

この結果、期末の現金及び現金同等物は395億8,700万円と、期首に比べて162億6,800万円の減少となりました。

1株当たり純資産 / 株価純資産倍率

1株当たり純資産とPBRについてご説明します。2020年12月末の株価は1,376円、1株当たり純資産は1,605円、PBRは0.86倍でした。2021年12月末の株価は1,211円で、PBRは0.71倍に下がりました。

2022年12月末の株価は1,432円、1株当たり純資産は1,875円、PBRは0.76倍に上がりました。2023年12月末の株価は2,086円まで上がり、1株当たり純資産は2,110円、PBRは0.99倍となりました。

2024年12月末は、株価が2,302円、1株当たり純資産が2,320円まで上がり、結果としてPBRは0.99倍となりました。引き続き、PBR1倍以上を目指した活動を継続していきます。

配当金

配当金についてご説明します。当社は累進配当を基本方針とし、22年連続の累進配当を予定しています。また、2023年12月期は土地の売却により特別利益が計上され、その特別利益の約3分の1を2023年から10年間にわたり、1年につき2円の特別配当を実施することをリリースしています。

2024年12月期の期末配当は、前回予想の1株当たり23円からさらに2円増配して25円、年間で46円とする予定です。2025年は年間48円を予定しています。

目次

「ありたい姿2036」に向けた新「中期経営計画2025-2027」について、大きく3つに分けてご説明します。

1つ目は、「ありたい姿2036」と「中期経営計画2022-2024」の振り返りです。2つ目は、「中期経営計画2025-2027」の概略です。3つ目は、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてです。

ありたい姿2036と中期経営計画2022-2024

「ありたい姿2036」と前中期経営計画の振り返りです。当社は、創業150年を迎える2036年を目標とした長期ビジョン「ありたい姿2036」を策定し、2022年2月に当社として初めて外部発表を行いました。

これまで当社が提供してきた価値は、単なる「書く・描く」ための筆記具(ツール)ではなく、お客さまの個性の発露に貢献するものであると再定義しました。

今後も、これまでの高付加価値筆記具の提供に加え、多くの人が生まれながらに持つ個性や創造性を解き放つ表現体験そのものを提供していくことを経営方針として掲げ、ありたい姿を描いていきます。

創業150年のありたい姿として「世界一の表現革新カンパニー」を掲げ、2036年の数値目標には売上高1,500億円、営業利益225億円、営業利益率15パーセントを設定しました。ここからバックキャストするかたちで、「中期経営計画2022-2024」を策定しています。

2024年は2回ほど上方修正しており、売上高780億円、営業利益125億円、営業利益率16パーセントを目指して活動してきました。

中期経営計画2022-2024

「中期経営計画2022-2024」の基本方針は「uni re-design」です。「ありたい姿の実現に向けて、視点や考え方を変えて、業務のやり方を再構築してのぞむ」ことをコンセプトに定め、スタートしました。

重点方針には「筆記具事業のグローバル化」「新規事業をグロースステージへ」「サステナブルな体制構築」の3つを掲げ、活動してきました。

中期経営計画2022-2024 振り返り

「中期経営計画2022-2024」の振り返りです。グローバルな視点や考え方を持った活動に加え、想定よりも大幅な円安の追い風を受けて、特に海外筆記具事業において大きな成長を達成しました。また、今後のさらなる成長に向け、Lamy社の連結子会社化も実現しました。

一方で非筆記具事業については、各種活動は行ったものの、当初の売上目標には若干の未達となりました。

利益面では、グローバル市場での利益率向上や為替の影響もあり、おおむね予定どおりの結果となりました。

海外筆記具事業は、POSCAおよび北米・欧州市場において売上を拡大することができました。また、Lamy社の連結子会社化を実現し、売上を押し上げました。

国内筆記具事業は、厳しい市況の中でもシェアを伸ばし、売上を増加することができました。

非筆記具事業のうち化粧品事業は、日本のODM・OEM市場でシェアを伸ばし、売上が増加しました。産業資材事業は、市場変化により一部のテーマの売上が減少しています。

これらを踏まえ、2036年に向けた課題として「Lamy社の企業価値向上とグループ内シナジーの創出」「非筆記具事業のスケールアップ」「開示要求への対応とIR/PRの質向上」「ありたい姿・企業理念の社内浸透とグループ・グローバル経営の促進」などが浮かんできました。

当社を取り巻く外部環境変化

当社を取り巻く外部環境の変化についてご説明します。1つ目は、人口動態の変化です。先進国は少子高齢化に伴い、従来型の筆記需要が減少しています。一方で、高齢者の増加により、新しい筆記需要の可能性が出てきています。新興国では、人口増加と経済成長が進行中です。各国で出生率が高くなっており、教育市場が拡大してきています。

2つ目は、デジタル技術の進化です。デバイスの進化においては、タブレットなどが教育ツールとして浸透し、書く需要がデジタルツールに置き換わっています。AIの進展においては、音声認識機能が高度化し、メモなどの書く需要がデジタルに移行しており、筆記機会そのものが減少しています。

3つ目は、価値観の多様化です。持続可能性への関心としては、エコフレンドリーな需要が増加し、使い捨て商品の回避傾向が強まり、リサイクル素材への関心が高まってきています。個性やスタイルの重視としては、自分に合った製品やサービスの登場による多様化が進んでいます。

4つ目は、筆記具業界の競争激化です。収縮している市場の中で、製品の品質やコスト競争がグローバルに激化しているほか、新興企業の参入も要因となっています。そして、業界内でブランド再編やM&Aなどの資本提携が活発化してきています。

このような中で、2036年に向けた課題としては「新興国への本格市場を開始する」「教育や仕事用途以外の『書く・描く』需要の創造」「サプライチェーン強化により競争力を高める」というものがあります。

ありたい姿2036実現に向けた事業領域と成長ストーリー

「ありたい姿2036」の実現に向けた、課題に対する成長ストーリーについてご説明します。成長ストーリー①については、ロングセラーブランドの価値向上を継続し、引き続きお客さまから支持される製品を提供することで収益を確保します。加えて、これまで培ってきた筆記具技術の進化と活用、新しい用途提案を加えた新ブランドの立上げを継続し、新しい需要を創造していきます。また、サプライチェーンの最適化により、市場変化への対応力向上、コスト低減と環境負荷低減を両立し、競争力を高めます。業務提携やM&Aを含むさまざまなパートナーシップを通じて、筆記具の提供価値を拡大し、新たなビジネスチャンスを追求します。

成長ストーリー②は、エリアの拡大を柱としています。新興国市場への展開を強化し、これまで以上にたくさんの人々の表現体験に貢献したいと考えています。また、海外の製造拠点を活用し、新興国ユーザーの価格や品質ニーズに合致した製品を提供します。加えて、現地パートナーとの協業やローカライズ製品を通じて、市場シェアを拡大していきます。

成長ストーリー③では、筆記具事業で培ったコア技術を進化させ、他業界の社会課題解決に寄与し、豊かな社会実現に貢献していきたいと考えています。また、異業種からの知識や技術を学び、自社にフィードバックする役割を担い、グループ全体の進化を牽引します。新しい技術の開発と特許取得を通じて、筆記具業界における技術リーダーシップを維持・拡大します。

成長ストーリー④は、提供方法の拡大を柱としています。筆記そのものの時間のみならず、書く前の思考プロセスや書いた後の発信活動なども事業領域に取り込み、全体的な体験を通じて生活の質向上に貢献します。「書く・描く」による効能を活かした新たなビジネスモデルを作り、新しい収益源を創出します。デジタルとアナログの融合を進め、ユーザーの筆記体験をより一層豊かにしていきたいと考えています。

中期経営計画2025-2027の位置づけ・基本方針・重点方針

「ありたい姿2036」に向けて、2025年から始まった新中期経営計画についてご説明します。「中期経営計画2022-2024」の基本方針は「uni re-design」でした。そこでの活動コンセプトは「ありたい姿の実現に向けて、視点や考え方を変えて、業務のやり方を再構築してのぞむプランニングの段階」です。

新「中期経営計画2025-2027」では、基本方針を「uni Advance」としました。ここでの活動コンセプトは、「『uni re-design』で推し進めてきた新たな企画や活動を土台に、それらをさらに発展・加速させ、企業変容とイノベーション創出を実現及び具体化する」と定めています。

具体的には、成長ストーリー①②と、これらを支える経営基盤から成り立っています。成長ストーリー①は、筆記具事業の成長継続と多角化推進です。付加価値筆記具に加えて、主体的に新しい需要を生み出します。そして、グローバルサプライチェーンの最適化を行います。

成長ストーリー②は、非筆記具事業の規模拡大と、グループのありたい姿の実現の牽引です。事業の柱化と社会貢献を両立し、異業種競争を通じたイノベーション創出と知識・スキルの獲得を推進します。

これらを支える経営基盤として、ステークホルダーと連携しながら経営基盤を強化していきます。ステークホルダーとのリレーションシップを促進し、中長期の成長を支える経営基盤を強化していきます。

筆記具事業の成長継続と多角化推進

成長ストーリー①「筆記具事業の成長継続と多角化推進」について、詳しくご説明します。当社は「uniball」「JETSTREAM」「POSCA」をグローバルフォーカスブランドと定め、これらの価値向上と商品拡売、用途開発を通じた新たな需要の創造を目指していきます。スライド右側に示したとおり、「uniball ZENTO」は北米市場でのデビューを経て、日本をはじめとする世界中の人々に提供していきます。

筆記具事業の成長継続と多角化推進

Lamy社の企業価値向上とuniとのシナジー創出についてご説明します。Lamy社は、1930年にドイツで創業された会社です。世界80ヶ国以上で販売しており、技術・製造・素材で最高レベルの品質を持った製品を生み出しています。グローバルなuniの販売網を活かして、Lamy社の商品拡売を目指していきたい考えです。

「LAMY」ブランドとuniテクノロジーとの融合については、「LAMY」とuniの初コラボレーション商品として、「LAMY」の代表的な商品である「LAMY safari(ラミーサファリ)」に「JETSTREAM」のインクを搭載した商品の展開を開始しました。

筆記具事業の成長継続と多角化推進

インドへの進出についてです。UNI LINC INDIA PRIVATE LIMITEDを軸に、インド・東南アジアの普及価格帯への参入を推進していきます。

インドの富裕層は、2025年はわずか4.1パーセントですが、2030年には10.8パーセント、2040年には29.1パーセントもの人が仲間入りすると予想されています。この富裕層に向けて、当社のグローバルブランド製品の拡売を継続していきたいと考えています。

上位中間層は、2025年は18.9パーセントですが、2030年には28.9パーセント、2040年は4割以上の人が入ると見込まれています。この中間層には、現地ニーズに合わせた戦略商品を製造・販売していきたいと考えています。

インドのグジャラート州でLINC社と合弁し、新たな工場を設立します。LINC社はインドにおける当社の代理店で、当社が13パーセント程度出資しています。

筆記具事業の成長継続と多角化推進

製造拠点を有効活用し、グローバルサプライチェーンの効率化および最適化を目指していきます。ドイツのLamy社がグループに入ったことと、インドで合弁の製造拠点を作ることにより、世界で5ヶ国の製造拠点を持つことになります。

これらの製造拠点を有効活用し、グローバルサプライチェーンの効率化および最適化を目指していきたいと考えています。

非筆記具事業の規模拡大とグループのありたい姿実現を牽引

成長ストーリー②「非筆記具事業の規模拡大とグループのありたい姿実現を牽引」について、詳しくご説明します。非筆記具事業の代表である化粧品事業は、アイメイク製品のODM・OEM供給により、美の多様性の促進に貢献していきます。また、事業展開をよりグローバルに拡大していきたいと考えています。

化粧品には、筆記具で培ったコア技術が多く採用されています。化粧品事業の注力領域であるアイメイク製品において、地域や文化に合わせたマーケティング展開を戦略として進めていきたいと考えています。

非筆記具事業の規模拡大とグループのありたい姿実現を牽引

もう1つの柱である産業資材事業では、鉛筆やシャープ替芯・インク開発などの最先端筆記具技術を活用し、「スマート社会」の実現に貢献していきたいと考えています。筆記具で培ったコア技術を応用して産業資材事業を展開するだけでなく、2次電池材料の領域にも注力していきます。

新たな試みとしては、米国投資ファンドのE12 Ventureと連携しています。E12 Ventureとは、三井物産とMorado社が運営する、アメリカ・シリコンバレーのベンチャー投資ファンドです。現在は当社メンバーがシリコンバレーに駐在し、事業拡大に向けて協業できるスタートアップを探索しています。

非筆記具事業の規模拡大とグループのありたい姿実現を牽引

筆記具の役割である「書く・描く」ことに加え、筆記体験による新しい価値を創造し、新たな事業を生み出していく試みも行っています。代表的なものとして、IoTペンの開発の着手があります。

また、手書きによる睡眠の質向上に関する研究にも着手しています。寝る前に日記を書かない人、寝る前にアプリで日記を書く人、寝る前に手書きで日記を書く人の3つのグループで睡眠の深さを調べたところ、日記をつけることで「N3(深睡眠)」という一番眠りの深い部分の割合が高くなる傾向があることが確認されました。

これにより、手書きによる睡眠の質向上があらためて証明されたと感じています。当社は、手で書くことの重要性をさらに発展させていきたいと考えています。

経営基盤強化に向けた取り組み

2つの成長ストーリーを支える経営基盤の取り組みについてご説明します。サステナビリティ体制、コーポレートブランドuniの強化、技術基盤の強化などに取り組んでいきます。IT投資も欠かせません。

人的資本の投資については、ダイバーシティ&インクルージョンの推進により、新価値創造を促進するグローバル企業へ変身していきます。人財マネジメントにより、人的資本の可視化を通じたグループ経営を推進していきます。

また、決算説明会を含めて、投資家との対話を強化していきます。投資家との対話による企業価値向上を目指し、定性・定量情報ともに一層の開示の充実を図っていきます。

経営基盤①:人的資本の強化

人的資本の強化についてご説明します。人的資本経営を推進し、自律した社員の育成、社員の能力を引き出し適材適所へ配置、多様性あふれる企業文化の醸成により、経済価値と社会的価値を創出するグローバル企業へ進化していきたいと考えています。

経営基盤②:技術基盤の強化

技術基盤の強化についてご説明します。当社が持つコア技術をさらに進化させ、当社事業の技術基盤を構築します。この基盤により、中長期的に新たな事業開発や新製品開発などを推進していきたいと考えています。

経営指標の現状と目標・改善に向けた取り組み

資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応についてご説明します。当社は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に、積極的な取り組みを継続中です。ROE8パーセント以上、PBR1倍以上を目標に掲げ、恒常的に目標達成できるように企業価値向上を目指していきます。

2023年と2024年のROEは8パーセントを超えましたが、2025年の予測は7.4パーセントとなっています。こちらを8パーセントまで引き上げていきたいと考えています。

企業価値向上に向けた具体的な取り組みとしては、事業拡大の推進、成長・基盤投資の実行、株主還元とIRの充実の3つに注力していきます。

持続的な企業価値向上に向けた成長・基盤投資の実行

キャッシュアロケーションの考え方についてご説明します。当社は、今後3年間で320億円以上の営業キャッシュ・フローを生み出せると考えています。この320億円は、研究開発に3年間で90億円の支出を継続した後のキャッシュ・フローです。

このキャッシュを、成長投資・基盤投資・株主還元にバランスよく配分したいと考えています。成長投資としては、新製品開発、戦略的海外拠点整備、生産最適化、ブランド投資、M&Aが挙げられます。基盤投資としては、人的資本投資、グローバルブランド投資、ESG、IT・インフラへの投資があります。

長期・安定した株主還元の継続

配当についてです。当社は、長期かつ安定した株主還元の継続を柱にしており、基本方針は累進配当です。実績として22年連続の累進配当を予定しており、機動的な自社株買いも実施中です。

2024年度の期末配当は25円で年間46円、2025年度の年間配当は48円を予定しています。これに加え、必要に応じて随時自社株買いを図っていく所存です。

以上をもちまして、2024年12月期決算および新中期経営計画についてのご説明を終わります。当社は今後も「世界一の表現革新カンパニー」を目指して努力する所存です。みなさまにおかれましては、引き続きご支援のほどよろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。

質疑応答:Lamy社の売上高について

司会者:「売上高のうち、Lamy社の分はいくらになるのでしょうか?」というご質問です。

長谷川:Lamy社の売上は4月から取り込んでいますので、9ヶ月分が計上されています。当社の方針として、グループ内各社の数値への回答は控えていますが、地域別売上高が参考になるかと思います。Lamy社の売上は欧州が中心となっております。

質疑応答:Lamy社とのシナジー創出について

司会者:「今後、Lamy社とどのようにシナジーを生み出していくのでしょうか?」というご質問です。

長谷川:Lamy社とのシナジー創出については、大きく2つ挙げています。1つは販売面で、当社はグローバルな販売網を持っています。特に日本では非常に強い販売網を持っており、この販売網を使ってLamy社の商品拡売をしていきたいと考えています。Lamy社の持つ商品力・ブランドと、三菱鉛筆の持つ販売網をコラボレーションし、シナジーの創出を目指します。

もう1つは技術面で、Lamy社の持つブランドと当社の技術を融合します。現在は、Lamy社の代表商品である「LAMY safari」に「JETSTREAM」のインクを搭載した商品の展開を開始しています。

販売と技術の両面で、Lamy社と三菱鉛筆とのシナジーを創出していきたいと考えています。

質疑応答:為替感応度について

司会者:「為替感応度について、どのように見ていますか?」というご質問です。

長谷川:為替感応度はあくまでも当社内部のシミュレーションの結果であり、正確な数字が出ているわけではありません。現行では、ドルに対する1円の円安による売上高の影響は、2億5,000万円から2億6,000万円程度のプラスとなると考えています。

しかし、円安は材料やエネルギーなどのコスト上昇を招くため、全体として1円の円安による為替感応度は5,000万円から1億円程度の営業利益プラスとみています。

質疑応答:「JETSTREAM」「POSCA」の売上高と拡大見込みについて

司会者:「『JETSTREAM』と『POSCA』について、2024年12月期の売上高はどれくらいでしょうか? また、2027年12月期に向けてどれくらいの拡大を目指しているか教えてください」というご質問です。

長谷川:当社の主力商品である「JETSTREAM」と「POSCA」に関して、ご質問いただきありがとうございます。特に「POSCA」については、ここ数年の伸びが非常に高いです。個々の売上高について数値でお答えすることは控えていますが、製品別売上高が参考になるかと思います。

製品別構成比で見ると、ボールペンは2023年度が45.6パーセント、2024年度が40.7パーセントとなっており、金額に換算すると300億円強です。ボールペンの中でも「JETSTREAM」は重要な柱となっています。

「POSCA」を含むサインペンは、2023年度は29.8パーセントで金額換算すると約223億円、2024年度は30.4パーセントで約270億円です。このうちのかなりの部分が「POSCA」の売上によるものです。

「JETSTREAM」「POSCA」の個別の数値をお答えできないのですが、こちらのボールペンとサインペンの状況で推察していただければと思います。

2027年12月期に向けては、同じくらいの成長速度を目指すものの、伸び率は若干落ちると思います。特に「POSCA」は、この5年ほどで大きく伸ばしていますが、ここに来て同業他社の競合製品が出回り、競争も厳しくなってきました。

加えて、多くの人に製品が行き渡ってきましたので、伸び率も以前より鈍化しています。そのため、今までと同じぐらいのスピードや伸び率は予定していませんが、それでも確かな伸びを目指していきたいと思っています。

また「JETSTREAM」についても、伸び率はそれほど多くありませんが、毎年前年実績を上回ることができています。2027年12月期に向けても、前年を確実に超えることを目標に活動していきたいと考えています。

質疑応答:各生産拠点における生産品目の位置づけについて

司会者:「中期経営計画の成長ストーリー①『グローバルサプライチェーンの最適化』について、各生産拠点における生産品目の、現在および将来の位置づけを教えてください。特に、人口動態の変化にさらされる日本とドイツ拠点の生産品目について、今後どのようにすると考えていますか?」というご質問です。

長谷川:当社は日本と、中国の上海と深圳、ベトナムのハノイに工場があります。そして、新たにドイツのLamy社が仲間入りしたため、ドイツにも生産拠点を有します。また、インドにも新たに工場を建てますので、5つの国で最適なサプライチェーンを目指していきたいと思っています。

日本では、主に山形工場でボールペンと鉛筆、群馬工場でサインペンを作っています。これらの基本的な枠組みは、将来も変えるつもりはありません。中国の深圳と上海でも、ボールペンの一部とシャープペンを作っており、コストダウンに努めています。

ベトナムのハノイでは、サインペンと鉛筆の芯を作っています。ドイツではLamy社の製品を作ります。インドはこれから考えていきますが、中心はボールペンになる予定です。現地の中間層に合わせた商品を作っていきたいと考えています。

将来に向けた最適化については、現時点で具体的に「何年先にどこで何を作るか」を決めているわけではありません。人口動態や売れ行き、さまざまな環境変化、カントリーリスクなどの問題を総合的に勘案しながら、これらの製造拠点を有効活用し、グローバルサプライチェーンの効率化を目指していきたいと考えています。

グローバルサプライチェーンの効率化についてご説明します。当社は製造から販売までの全部をグループ内で行っているため、サプライチェーンが非常に長くなっています。中国や日本、ベトナムで作った商品を日本から輸出し、アメリカやヨーロッパで売るとなると、原材料の仕入れからアメリカのお客さまに販売するまでの期間が長くなります。長くなっているグローバルサプライチェーンを効率化することで、企業価値がさらに向上すると考えています。

質疑応答:「LAMY」に続くブランド取得や既存ブランドの拡大について

司会者:「筆記具事業の成長において、『LAMY』に続くブランド取得は検討していますか? それとも、『LAMY』を含めた既存ブランドの拡大を優先させるのでしょうか?」というご質問です。

長谷川:将来に向けたことですので、現時点で明確なことはお伝えできませんが、引き続き筆記具は当社の主力事業です。「LAMY」に続くブランド取得については、必要あるいは良いブランドが手に入れば行いますが、現時点で具体的な計画はありません。

当面は、当社の3大グローバルフォーカスブランドである「JETSTREAM」「uniball」「POSCA」にフォーカスを当てて伸ばすと同時に、ドイツの「LAMY」ブランドを売っていくことになるかと思います。