会社概要

網野知博氏(以下、網野):株式会社ギックス代表取締役CEOの網野です。さっそく当社についてご紹介、ご説明を行います。当社は、2012年12月12日に設立しました。ちょうど今年が設立12年目ということで、まもなく12年目の12月12日を迎えるという会社です。

現在、従業員数は92名です。100名弱というところまできていますが、2022年3月末の上場時は31名でした。社員の規模でいうと、そこから約3倍となっています。

当社社員の多くは、データサイエンティストおよびエンジニアといった職種です。女性の比率も高く、4割強が女性社員です。

イメージどおりだと思いますが、基本的には理系の社員が多い会社です。スライド右上の円グラフでは、理系・文系・その他の内訳で理系比率を示しています。当社ではデザイン会社も持っているため、芸術系学部出身者などは、その他に分類しています。

沿革

網野:当社の沿革です。スライドの縦軸は擬似的な売上のイメージ、横軸は年表でお示ししています。

当社は12年前、当時日本アイ・ビー・エムにいた私が、同僚2名を引き連れて、3名で立ち上げた会社です。最初の3年ほどはスタートアップする気もなく、スモールビジネスや中小企業というかたちで細々と事業を行っていました。

最初のクライアントは、ビューカードというJR東日本の子会社でした。クレジットカードの仕事を3年半ほど手掛ける中で、データの利活用には汎用性がある、また、型にすることでもっと展開できるのではないか、という思いがありました。

2016年2月、SBIインベストメントから投資を受け、そこからスタートアップへと舵を切っていきました。

2018年の年末から2019年1月にかけて、JR西日本と業務提携を結び、また、そのタイミングでCVCからも投資をいただきました。そのあたりから成長軌道に乗り、2022年に上場しました。

JR西日本とは、上場後も非常に懇意にしてもらっています。スライド右上に「TRAILBLAZER」というロゴを載せていますが、こちらは2023年にJR西日本と共同で作った、デジタルコンサルティングファームのロゴです。このような会社を一緒に立ち上げるなどしています。

経営メンバー

網野:当社の経営メンバーです。現在の経営体制は、取締役5名となっています。常勤3名で非常勤・社外が2名です。女性比率が5分の2で4割、社外の比率も5分の2で4割となっており、そのような点では、取締役のポートフォリオはうまく組めていると考えています。

それぞれ近しいような業界出身ではありますが、それぞれの得意領域はかなり異なっており、良いポートフォリオを組めていると思っています。

業績推移

網野:業績推移です。まだ小さい売上ではありますが、これまでも年平均4割近くで成長してきました。今後も、年間売上高40パーセント成長を、1つのKPIとして掲げていきます。

PURPOSE

網野:ここからは、我々が何をやっている会社なのかについて触れていきます。「ギックスって、何の事業をやっている会社ですか?」と聞かれた時には、「データインフォームドをやっている会社です」とお答えしています。

当社はパーパス、社会的意義として、「あらゆる判断を、Data-Informedに。」を掲げています。スライドには細かい文字で詳細を記載していますが、世の中の判断をデータに基づいて論理的に考え、合理的に判断していきたい、という思想で動いている会社です。

データインフォームド=データを用いて思考する

網野:おそらく多くの方は、「データインフォームドって何?」という話になるかと思います。どちらかというと、データドリブンという言葉のほうが耳馴染みがあるかもしれません。

ただ、言葉尻を捕らえるつもりはないのですが、我々はあまりデータドリブンという言葉が好きではありません。特にビジネス判断の領域において、データに駆動されて自動で判断が進んでいくというのは、なかなかない世界かと考えています。

一方で、勘・経験・度胸、いわゆるKKDですが、我々は勘や経験そのものを否定していません。勘も経験も統計の一部だと捉えれば、合理的な経営判断だと思っています。

その勘と経験に、もっと高度に分析したデータを組み合わせて人間が判断したほうが、より良い判断や意思決定ができるのではないかという考えに基づいて推進しています。そのような思想が、データインフォームドです。

この手の横文字はテクノロジー名である場合が多いと思いますが、我々の「データインフォームド」については、行動様式そのものを指していると捉えていただければと思っています。

日根野健氏(以下、日根野):データを用いて経営判断をしていこうということですね。 

網野:おっしゃるとおりです。

日根野:実際にさまざまな会社と接する中で、データをまったく用いない例もありますか?

網野:21世紀において、さすがにデータゼロということはないと思います。上場している会社であれば、経理的・財務的なものを含めて、何かしらのデータは使っています。ただし、それを高度に、徹底的に使い切れているかというと、そこまでではないと思っています。

これまでの経験則もあり、いわゆる勘・経験で問題なかったところもあるのだと思います。しかし昨今は、その変化も激しくなってきていますし、判断スピードも非常に求められるようになりました。

そういった時代に、今までのやり方にプラスして、もっと使えるものを使っていこうということで、データを使うという機運が高まっているのだと思います。

日根野:とは言え、データドリブンになりすぎない、データのみで判断しないということですね。

網野:データだけで判断せずに、勘も経験もちゃんと使おうということです。

日根野:そのような思考様式が、データインフォームドだということでしょうか?

網野:おっしゃるとおりです。

当社が提供する「データインフォームド」サービス

網野:我々が提供するデータインフォームドサービスについてご説明します。

データインフォームドを推進していく中で、3つのサービスの形態で展開していきます。1つ目は、データの利活用のコンサルティングを行うDIコンサルティング、2つ目は、仕組み作りを行うDIプラットフォーム、3つ目は、汎用性のあるところに関してソフトウェアを開発するDIプロダクトです。

この3つのサービスを展開するにあたって、ギックスとしてどのようなケイパビリティを持たなければいけないかというのが、スライドの外枠に書いてある4点になります。

1点目は戦略コンサルティング、2点目はデータ・サイエンス、3点目は大量データの基盤分析を行うシステムという意味でのデータ・エンジニアリング、4点目はソフトウェアを開発していく、というところでプロダクト開発と、このようなケイパビリティを持つことによって、3つのサービスを可能にしています。

個別課題解決サービス

網野:我々がどのようなサービスを行っているかについて、踏み込んでお話ししたいと思います。まずは「個別課題解決サービス」です。コンサルティングをして仕組みを作っていくサービスです。

おそらく多くの方が、データを使って何をするのだろうと思うと思いますが、エンタープライズのクライアントはそれぞれさまざまな課題を抱えています。

そのすべてをデータで解決できるとは思っていないのですが、データを使えば解決手段を作れるのではないかと思うものが多々転がっています。それに対して、本当に解決できるのかどうか試してみましょうというところから始めていくのが、我々ギックスのやり方です。

個別課題解決サービス① DIコンサルティング

網野:DIコンサルティングについてご説明します。当社では最初に、コンサルティングというかたちで、本当にそのデータを使って問題・課題が解決できるかどうかを試してもらうフェーズから入ります。

日根野:お客さまとのお付き合いは、コンサルティングから始まるというのが一般的ですか?

網野:そのとおりです。王道というかたちになります。コンサルティングに関しても、机上で「こんなデータの使い方ができるのでは?」という会社はたくさんあると思いますが、我々はクライアントの全件のデータを預かります。

日根野:具体的に、どのようなデータでしょうか? 

網野:例えば、冒頭でお話ししたビューカードであれば、顧客決済のデータ全件を預かります。

日根野:何もかも全部ですね。

網野:はい。全部預けてもらい、それを細かく分析することによって、お客さまのタイプや趣向などの顧客理解が進みます。その上で、入会を増やす、もしくは決済の利用額を増やすにはどうしたらいいのかというところへと考えが続いていきます。

その結果、データを使って意味がありそうだということになれば、社内で使えるような仕組みを作っていきます。このような流れが、我々の王道スタイルです。

日根野:クライアントの生のデータをもらい、クライアントが思いつかなかったような新たな切り口からコンサルティングしていくようなイメージでしょうか? 

網野:そうですね。ただ、クライアントには事業を行われている中での勘と経験がありますので、まったくのサムシング・ニューが生まれるということは、さすがに多くはありません。

漠然と思っていた「こういう使い方ができるようになるのでは」「こういうことが理解できるようになるのでは」というのを、実際にデータで明確にわかるようにし、それをうまく業務に織り込んでもらうかたちです。

個別課題解決サービス② DI プラットフォーム

網野:次に、DIプラットフォームについてご説明します。先ほどお話ししたように、いざデータが使えるとなった場合でも、当社が永遠にデータを分析代行するわけにはいきません。

データを自動で分析処理してアウトプットを出す、また、業務アプリケーションにつないでいくといった仕組みを作ることが、DIプラットフォームというサービスになります。

日根野:まずコンサルティングで、こうしたら良いデータが取れるのではないか、良い分析ができるのではないかというアイデアを出し、それを日常業務に落とし込むのが、このDIプラットフォームということですね?

網野:そのとおりです。仕組みとして、社会実装していくところです。

日根野:こちらも伴走するようなイメージでしょうか? 仕組みを作ったらいったんそこで仕事としては終わりなのか、それともその後の運用支援なども行うのでしょうか?

網野:いったんは仕組みを作って納めて終わるのですが、追加で改修のようなこともありますし、新しいデータが発生するケースもあります。

そのような点では、完全に切れるということはなく、いろいろと機能やデータを追加していくという業務は継続されます。

事例① AI整備見積りシステム(トヨタモビリティパーツ様)

網野:具体的な事例を挙げてご説明していきます。まず、AI整備見積りシステムです。トヨタモビリティパーツはトヨタ自動車の子会社で、ディーラーへ自動車関連部品を卸す会社です。こちらの会社と一緒に作ったサービスです。

現在、日本では労働人口がどんどん減っています。メカニックの方々もやはり減ってきており、それによって業務負担が増えているところがあります。

特に車検や法定点検の際には、メカニックが車をすべてチェックし、どの部品を交換しなければいけないかといった整備の要否について、1時間程度の時間をかけて確認しています。

そこを効率化できないかというところで、自動車ディーラー・自動車整備工場向けの、AIによる車の部品交換・整備予測を支援するシステムを開発しました。

具体的には、過去の整備履歴の何十万件というデータを学習させ、この年式のこの型式で走行距離がこの程度の車であれば、部品の交換や整備の必要がある、もしくはないなど、スコアで計算させて、それをメカニックに伝えるというシステムです。

日根野:これはすごいですね。整備工場に、そのような端末があるということですか? 

網野:裏側で計算した結果を、ディーラーの仕組みにつないでいるというかたちです。

日根野:メカニックは、それを見てある程度予測して整備に取りかかるということですか?

網野:おっしゃるとおりです。

事例① AI 整備見積りシステム (トヨタモビリティパーツ様)(続き)

網野:AI整備見積りシステムの診断書について、イメージをスライドに掲載しています。スライド左側がお客さま用で、右側がメカニックやアドバイザー用です。

メカニックは右側のような診断書を見ながら、換える必要がある、もしくはないというスコアが明確であれば、簡単な確認、判断で済みます。ただ曖昧なもの、換えたほうがいいかどうかわからないというスコアのものもありますので、そこは入念に見て確認していきます。

そうすることによって、人によるばらつきも減ってきますし、自分が時間をかけて整備しなくてはいけない箇所に時間を適切に使えるようになり、結果的にトータルでかかる時間が半分ぐらいになります。

これがまさにAI活用によるメリットです。クライアントの要望で「AI」が付くサービス名となっていますが、ここでのAIが、我々が言うところのDI、データインフォームドです。

メカニックに高度なデータをインフォームド、つまり付与付帯して判断していただき、判断は人間が行います。高度なデータを提供するため、判断の質も上がるし、スピードも上がるという考え方です。

日根野:メカニックからすると、今までよりも短い時間で、より効果的な整備ができるということにもなるわけですね。

網野:そのとおりです。今、実際にトヨタカローラ新大阪(現・トヨタモビリティ新大阪)などでご利用いただいており、「今後もいろんな全国のディーラーに広げていきたいね」というご意見も出ています。ぜひ、みなさまにも入れてみていただきたいです。

日根野:これは、トヨタモビリティパーツにとってもメリットはありますか? メカニックにもメリットがあることはわかったのですが、トヨタモビリティパーツ側にもありますか?

網野:この仕組みそのものによって、トヨタモビリティパーツ側の業務がすぐに楽になるということはありません。別の側面として、ディーラーは、そこまで裏が大きいわけではなく、倉庫も大きいわけではないため、置ける部品はだいたい200SKUぐらいと決まっています。

日根野:わずかですね。

網野:そうすると、在庫管理の精度がそこまで高くない状態だと、例えば「今日車検で整備したいのだけれど、部品がないから持ってきてほしい」などと言われた場合、営業の業務とは本来違う仕事なのに、営業担当が物流代行のようなかたちですぐ荷物を届けるという、よくある事態がけっこう発生してしまうことになります。

そのような在庫管理のマネジメントの場で、当社の仕組みを入れていただくと、突発事故対応の部品などは無理にしても、法定点検系の部品は、あらかじめ入庫される車もわかっているため、事前の準備が可能となります。

日根野:いつ、どの型式の車の部品が必要かわかるのですね。

網野:おっしゃるとおりです。だいたいご予約いただくことのほうが多いため、ある程度需要が読め、置いておく部品の数も最適化できます。そうすると、在庫の最適化に向けて、今後アドバイスもできるようになってきます。その先にはさらに、自分たちの倉庫の置き方も変わってきて、物流のあり方も変わってくることになります。

これはいわゆるデマンドチェーンのお話で、やはり一番需要があるところから、予測精度が高くなってくると、後ろ側のサプライチェーン全体にメリットが出てくるようになります。

日根野:おもしろいお話ですね。

網野:壮大な構想です。

事例②|レベニューマネジメント高度化伴走支援 (エアージャパン様)

網野:もう1つ、最近発表した事例ですが、エアージャパンという、全日空(ANA)のグループ企業が新しく立ち上げたLCC向けサービスがあります。

LCCは一般的に「安かろう悪かろう」というイメージがあると思いますが、この度、値段が安くてシートピッチが比較的広いという新しいタイプのLCCが作られました。今バンコク、タイ、シンガポールと、韓国の仁川(インチョン)に飛んでいます。

作ったばかりのエアラインであるため、売れ方と価格をつけるにあたって、いわゆるレベニューマネジメントがまだ完璧にできているわけではないのですが、まずそのレベニューマネジメントの仕組み作りを、データの読み取り方も含めて、一緒に行っています。

日根野:このレベニューマネジメントについて、もう少し詳しく教えていただけますか? 

網野:飛行機は、基本的には、空席のまま飛んでしまったら、価値ある在庫がなくなってしまうというタイプのもので、その席を極力埋めたいというニーズが常にあります。

日根野:収入をできるだけ増やすということですね。

網野:そうですね。逆に早く埋まっていく時は、値上げして売上を多く取りたいというニーズが生まれます。そこの管理をレベニューマネジメントと一般的に言います。空席状況を見ながら値づけを考えていくことです。

日根野:それは、ホテルなどにも通じますね。

網野:おっしゃるとおりです。レベニューマネジメントを行う典型的な例が、ホテルの予約や、最近では、野球場の試合のチケット購入も同様の仕組みとなっています。

日根野:いろいろな場面で使われていそうですね。

網野:レベニューマネジメントについて、機械で完全にそのプライシングを決めるというツールが世の中にもありますが、立ち上げたばかりの会社ですし、あまり大幅な価格の上げ下げをしたくないというニーズもあります。

そのため、プライシングを最後に人間が判断していき、値付けや、席の埋まり方をコントロールしていくところを、伴走型でご支援しています。

日根野:コンサルティングだけではなく、プラットフォームの運営を行っていくということですね。

事例②|レベニューマネジメント高度化伴走支援 (エアージャパン様)(続き)

網野:エアージャパンの場合は1歩踏み込んで、レベシェア型、あるいはレベニューシェア型といわれる成果報酬型で行っています。

日根野:ギックスさんにとって、ということですか?

網野:そのとおりです。クライアントの売上が上がったら我々の取り分が増えるというか、増えたら我々はやっといただけるという、かなり踏み込んだかたちで展開しています。

日根野:これはかなり自信がないとできない取り組みですね。

網野:このように取り組ませていただいているのが、このエアージャパンの事例です。

共通課題解決サービス|DIプロダクト

網野:3つ目のサービスの、DIプロダクトについてご説明します。我々は「マイグル」という、アプリケーション、ソフトウェアを提供しています。

マイグル(ミッションクリア型コミュニケーションツール)の狙い

網野:この「マイグル」は、もともと我々がデータ分析を行っていく中で、顧客データの分析はもうさんざん取り組んできたため、どのような方がどのような商品を「買いそうなのか」という、予測計算ができるようになっています。いわゆるレコメンドとかでもよく使われる機能です。

当然ながら、「このような商品を買ってくれたら、今後のLTV、将来の価値が上がりそうだ」というようなところまで、裏の計算としてはできるようになってきています。

日根野:これは、eコマースのサイトのようなものをイメージしたらよいですか? 

網野:我々の場合は、リアルな世界が得意ですので、会員券やポイントカードのようなもので購買データが溜まっていくタイプだと考えていただければ、より近いです。

そのような方法で顧客理解を進めて、今までは、分析して「この人にこれを使ってもらいたい」とか「あそこ行ってもらいたい」とわかっても、直接DMで郵送するかメールで配信するという方法しかなかったのですが、それだと反応がいまいち得られないため、もう少しゲーミフィケーション的に何かできないかという発想で作ったのが、「マイグル」です。

「このようなお客さまに、このようなお店に行っていただきたい」という指示を、スタンプラリー風のUIにして、「あなたのミッションです」と伝えることで、行動を促します。

そこで行っていただくとスタンプが押印されて、達成するとポイントがつくとか、何かもらえるとか、そのようなところで分析した結果を用いながら、行動を促すために、ゲーミフィケーション的な要素を入れて作っていったのが「マイグル」というサービスです。

日根野:例えばショッピングセンターの中で移動してもらうようなイメージですか? 

網野:ショッピングセンターや大規模な商業施設に行った時に、例えば日根野さんが会員になっていて、アプリなどをお持ちであれば、「日根野さんにおすすめのテナントはこれです」と、おすすめというよりは、「これをクリアしていってください」というかたちで、促します。

日根野:「この店舗行ってみて」みたいなミッションが与えられるかたちなのですね。

網野:それをクリアしていただくと、消費者も楽しいですし、当然、館、商業施設からすると買いまわりしていただけるので、商業的にもおいしい、というのを実現するというツールです。

日根野:子どもなどがすごく必死に取り組みそうですね。

網野:このサービスは、最初、商業施設のテナントの回遊から始まりました。そこから、グループ企業などは複数の館、複数の施設をお持ちですので、そのような館間といいますか、複数施設の買いまわりというかたちにまで拡大しました。

その後に、「これは結局、観光地の観光回遊でも一緒ではないだろうか?」と気づいて、今は自治体を含めた、エリアの観光回遊という分野でも、これが使われたりしています。

日根野:例えば決められたスポットに行ったら、スタンプか、ビーコンのような何かがありますか? 

網野:例えばGPSを連動してQRで読んでいただくとか、そのようなこともできます。今までは、データを分析するところまでしか手掛けてこなかったのですが、行動を促す部分に着目して、クライアントが結果をいっそう売上につなげていくための実行手段として、「マイグル」を作りました。

実際に分析してクライアントに動いていただいて、結果としてさらにデータが溜まるため、それを見てまた改善してというループが回るようになってきています。

日根野:商業施設や観光を促進したい自治体などが、かなり興味を持ちそうですね。

事例③|リアルタイムリコメンド基盤(JR西日本様)

網野:おかげさまで、ものすごく受注が入っています。1つの事例としては、JR西日本で、この「マイグル」をけっこう使っていただいていて、年間80ぐらいのイベントを「マイグル」を使って開催していただいています。

さらにその先の取り組みとして、今まではデータに基づいて何かをおすすめすると言っても、適切なタイミングが難しかったのですが、今は例えばアプリのデータ、新幹線の予約データ、乗降履歴のデータなどを使って、タイミングを合わせてオファーを出していくという仕組みを考えており、共同で作っています。

日根野:実は私、「WESTERアプリ」を使っています。駅などに着いたら通知が来て、その駅の近くのお店などを紹介されますね。

網野:「WESTERアプリ」の右下のタブに「おトクにGO!」というコーナーがありますが、あれが全部「マイグル」です。ぜひ視聴者のみなさまも「WESTERアプリ」をダウンロードして、使っていただければと思います。

事例④大手クライアントの自社アプリへの組み込み

網野:基本的には、この「マイグル」の戦略は、今ちょうど触れていただいた「WESTERアプリ」や、西日本では商業施設の「WESPO」や、観光の「tabiwa」というアプリにつながっていて、見えないところで裏側に使われているというビジネスモデルを描いています。

そのほか、JR東海の「TOKAI STATION POINT」というサービスでも使用されています。さらにLINEのミニアプリとして「マイグル」も連携して実装できており、自社のアプリをお持ちではないクライアントが、LINEを用いて「マイグル」を使えるようになっています。自治体などもこのケースが多いです。

事例⑤|子育て支援スタンプラリー(三井不動産様、UDCKタウンマネジメント様)

網野:自治体の事例として、三井不動産と、柏市の柏の葉というエリアで組んで、この「マイグル」を使って子育てを支援するという取り組みも行っています。パパやママがよりその行政の施設や提供しているサービスを知って、使っていただき、コミュニティを形成していただくというところに、ゲーミフィケーション的な要素でお使いいただいています。

事例⑥ JAZZ TOMO ♪ (平和不動産様、 Jazzy Business Consulting 様)

網野:同じようにLINEを使った事例で、ジャズのミュージシャンとファンがつながるというコンセプトで、ライブ会場に行ったらスタンプがつくし、ミュージシャンの方のQRを読み込むとスタンプがつくというようなサービスが展開されています。

そのようなかたちで、わりとこのゲーミフィケーション的要素を使って、どのような行動を消費者にしてもらえれば、もっとファン化できるのか、もっとお金を使っていただけるのか、というところを考えながら活用していくというのが、この「マイグル」のツールです。

日根野:これは「マイグル」という1つのプロダクトがあって、それをいろいろな業態に当てはめて、利用の都度課金していくようなイメージですか?

網野:おっしゃるとおりです。

事例⑦|マイグル採用実績

網野:そのほかにも、「マイグル」は、スライドでご覧のような商業施設で、いろいろと使っていただいています。

提供する「データインフォームド」サービスの概要

網野:このように、データ利活用のコンサルティングであるとか仕組み作り、「マイグル」というプロダクトなどをうまく組み合わせながらサービス提供しているのが、我々の会社です。

中長期の売上高成長・ターゲット

網野:成長戦略についてお話しします。冒頭でも触れたように、我々は、年間の売上高成長率40パーセントを目指して経営しています。

40パーセントということは、2年でほぼ倍になります。前期の着地が20億円強だったので、今期2025年6月期は28億円から29億円、来期は40億円というスピード感で成長していこうと考えています。

今まではコンサルティングや、システム開発のプラットフォームサービスが多かったのですが、そのあたりを、いわゆる稼働型から、「マイグル」を典型例とするようなソフトウェア型あるいはストック型へビジネスモデルを加えていくかたちで、事業を伸ばしていこうと思っています。

中長期成長を見据えた取り組み 組織変更

網野:そのようにビジネスモデルをプラスアルファさせていくことに備えて、この7月から、組織変更を行い、スライドのとおり、いくつか組織を作っています。

1つ目の「DI変革 Division」は、比較的大きめのディールをクライアントと話しながら、進めていけるような部隊です。

2つ目の「ゾクセイ研究所」は、当社が今までも非常に得意としていた顧客データについて、その顧客データ分析を、どんどんアセットとして作っていこうという方針で、立ち上げた研究所です。

3つ目ですが、これまで何度も触れたように、ギックスはデータを分析していく会社で、データが作られてからでないとサービスが始まらないというビジネスモデルでした。

その中で通常、使っていくデータの上流部分には、また違うアプリケーションが存在しており、そこのアプリケーションがうまくデータを出せないなどの理由で、データ利活用が進んでいかないという状況があることを、強く感じていました。そのため、我々としては、上流側のシステムにもタッピングしに行こうという方針で作った組織が「Legacy Modernization Division」です。

4つ目は、創業経営者の田中が今年秋から取締役を降り、執行役員として現場で腕を振るっていこうとしています。いろいろとできる素材が増えてきたため、それらを横ぐしで束ねながらサービス化させていこう、マネタイズを考えていこう、といった肝いりで戦略統括室を作りました。このようなところを加えながら、事業を拡大させていこうとしています。

2026年6月期に向けて

網野:スライドはあくまでイメージ図ですが、前期は20億円だった売上高が2年後には40億円になる中、今まで全体の85パーセントを占めていた稼働ビジネスを4分の1程度に減少させます。また、「マイグル」のソフトウェアとは別に、エアージャパンの成果報酬型のような、いわゆるストック型の取り組みも展開しています。

トヨタモビリティパーツとの取り組みも、まずはコンサルティングや仕組み作りから始めています。これがディーラーに広がっていけば、1件あたりいくらで契約される、というかたちでさらに広がっていきます。

このようなものをストック型と呼んでおり、このようなものの売上を増やしポートフォリオが変わっていることで売上40億円を目指しています。

配当についての考え方

網野:最後に配当方針ですが、我々は変わった配当方針を行っています。もともと、我々は利益が出る体質の会社として上場したため、当時は「営業利益を出しながら成長します」と宣言していました。

実際は、規模が大きくなっていく過程やストック型ビジネスなどを考えていく中で、どうしても先行投資が必要になってきました。

利益率を維持したまま売上を成長させていくことはなかなか難しく、ではどちらを優先させるかというと、まずは売上成長を一番重要視しようと判断しました。そのため、結果的に「当面は営業利益を出しません」という方針に変更しました。

しかし、もともと「利益も出します」と言っていたものの途中から方針を変えて、このまま株式を持っていてくださいというのも、虫のいい話だと思います。

Amazonであればそのように言うと思いますが、我々はAmazonではなくまだ小さな会社にすぎないため、その間はきちんと配当を出します。

魅力的な配当利回りがどのくらいかというと、5パーセント程度ではないでしょうか。だからこそ営業利益を重視しない間は、上場時の売出価格に対して5パーセント利回り相当の配当をお支払いしようという考え方のもと、現在の配当としました。

日根野:現時点で計算すると、配当利回り6パーセントになります。かなり高いですが、将来的にさらに業績が拡大すれば配当も増えていくのでしょうか?

網野:現時点で言えるのは、5パーセントというパーセンテージよりも、金額固定で配当する、ということです。当面は53.5円を維持すると宣言しています。

例えば2年維持した際、2年後に予定どおり業績が伸びて利益も出るようになっていれば、結果的に株価が上がっているため、利回りは下がっているのではないかと思います。

正直に言えば、その時にも配当利回り5パーセントを維持するのかどうかはまだわかりません。しかし、現時点では、どちらかというと時価総額が上がればキャピタルゲイン、いわゆる含み益を得ていただくかたちです。

日根野:おそらく、株主のみなさまは株価が上がると喜ばれますね。

網野:そうですね。したがって、その時まで高い配当利回りを続けるかどうかは宣言できませんが、53.5円は維持し続ける予定です。

日根野:一方で、経営陣は配当金を受け取らないのですね。

網野:我々は成長を目指していく中で、2年から3年という時間が欲しいわけです。その期間中、待っていただく株主さまには、資本コストもかかるだろうと考え、我々は5パーセント相当の利回りとなる53.5円を支払います。

ただし、当然ながら創業経営者3名は待つこともできますし、自分で理解して決めていることでもあります。そのため、特段待っていただくための金額を払う必要はないだろうと私自身は思っていますし、他の2名も思っています。

日根野:創業経営者の3名は、配当金を辞退されたということですね。そのぐらい将来の見通しに自信があるということですか?

網野:そのとおりです。

網野:このように、ギックスはデータインフォームドを進めている会社です。最初は「データインフォームドって何?」と思われただろうと思いますが、いくつかの事例を踏まえて、「データをこのように使って判断し、高度化できそうなのか」というイメージを持っていただければ幸いです。

今後もデータ利活用、いわゆるデータインフォームドを世の中に進めていく中で、ギックス自体も成長していきたいと思っています。また、我々とお付き合いいただくクライアントの方々も成長していくことで、結果的に日本経済の活性化などにつながっていければと思っていますので、ご支援をよろしくお願いします。

▶参考記事:グロース企業なのに配当利回り5%!?ギックスが配当方針を変更した理由

質疑応答:コンサルティング人材を育てるまでの期間や費用について

日根野:コンサルティングは非常に高度だろうと思っているのですが、「人材育成において、一人前になるまでにはどのくらいの時間や費用がかかるのでしょうか?」というご質問です。

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