会社概要

長尾行造氏(以下、長尾):みなさま、こんにちは。本日はご多用の中、リーダー電子株式会社の決算説明会にご参集いただきまして、誠にありがとうございます。代表取締役社長の長尾です。よろしくお願いします。

本日、初めて参加される方もいらっしゃいますので、冒頭で会社概要を簡単にご説明します。

弊社は1954年に設立されて、今年71期目に入りました。本社は横浜の綱島にあり、最近は東急東横線から相鉄線に電車が乗り入れ、新しく新綱島という駅ができて、新横浜の隣の駅になりました。不動産まわりは非常に活況を呈しているような場所です。

会社の規模ですが、従業員数は単体で約70名です。また、イギリスに5年前に買収した会社もあり、連結としては140名前後の規模で事業を展開しています。

もともと、中学高校の理科の実験で使用する「オシロスコープ」という電気を計測する機械を作っていました。当時、東京の城南エリアにたくさんあった、東芝さまやNECさまといった電機メーカーに、電気機器を製造する製造ラインの機材として「オシロスコープ」を作って納めたところが会社のスタートです。

その後紆余曲折を経て、今日本国内で電機メーカーはそのような製品を作っていないこともあり、「オシロスコープ」の事業から撤退しました。今は主に、放送関係の計測器を中心にビジネスを展開しています。

波形モニターの役割

弊社の主力製品が「波形モニター」というもので、馴染みがない製品だと思いますが、最近盛り上がった、プロ野球のワールドシリーズや日本シリーズで使用されています。

スタジアムで、スポーツ中継をする時は何十台とカメラが入っているのですが、カメラはアナログ製品なので個体差があります。その個体差がある状態のまま番組を制作すると、1カメから2カメにカメラが切り替わる時に、明るさや芝生の緑の色などが変わって、カメラが切り替わるたびにチカチカと非常に見づらい絵になってしまいます。

それを厳密に調整するための機械が、弊社が主力とする「波形モニター」です。

波形モニターの役割

具体的にはこちらのスライドのようなイメージです。右側にある画面を見てもビデオエンジニアでないとなかなか理解できませんが、カメラを実際に使用するビデオエンジニアは右側の波形表示を見ればだいたいどのような絵なのかわかります。

上から1つ目の波形表示では、明るいと波が上がり、暗いと下がります。この波の高さを1台1台厳密に揃えることによってチカチカを抑えたり、または3つ目、4つ目のベクトル表示のように、赤や青の色味のブレを抑えることもできる機械です。

導入事例 スポーツ施設

したがって動画制作の場所、特にスポーツなどのライブでは非常に不可欠な製品になっており、サッカーワールドカップや野球のメジャーリーグ、今年ですとオリンピックなどのような場では、非常に大量の「波形モニター」が使われています。世界中の多くの動画制作の現場で弊社の製品が使われています。

販売拠点

弊社の営業拠点ですが、日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国、韓国などに現地法人を構えています。その他多くの拠点でもカバーすることによって、全世界あらゆるところで弊社の製品を販売することができるネットワークを用意しています。

事業概要: 世界シェア2位!

「波形モニター」は、今世界で作っている会社が、弊社とアメリカのTelestream(テレストリーム)社の2社しかありません。もともとTelestream社が世界のガリバー的存在です。我々は後発ですが、じわじわと市場を広げて彼らのシェアを獲得しています。

イギリスのPhabrix(ファブリックス)社を2019年に買収することにより、当時2番手だった弊社と3番手だったPhabrix社がグループになり、Telestream社に追いついていく状況になりました。

我々としては打倒Telestream社を掲げて、世界トップシェアを取り、立ち位置を逆転させることを足元の目標として進めています。

競合状況と当社グローバルシェア

スライドのグラフはシェアを示しています。日本ではほぼ独占に近いシェアを取っています。一方で、ヨーロッパ、アメリカなどでは後発であるということと、彼らのフランチャイズですので、ゼロからシェアを伸ばしてきています。

アメリカでは、弊社とPhabrix社のシェアは合計4割ほどですが、もう少し市場シェアを取っているかもしれません。

ヨーロッパのシェアは3割台だと思いますが、伸ばす余地がまだまだあります。

中国は今非常に市場が冷え込んでいますが、つい数年前まで中国の経済が元気だった頃はここが1番の成長市場でした。弊社とTelestream社でその伸びている市場を取り合っていて、今半々ぐらいのシェアで戦っています。

2025年3月期 第2四半期 決算総括

決算についてご説明します。今年4月にリリース予定の新製品の投入が遅延し、2製品がそれぞれ7月末、8月末の出荷になってしまいました。これによって買い控えが起こり、第2四半期まで売上が苦戦しています。

スライド中央のあたりに数字がありますが、売上高18億4,300万円で前期比16.8パーセントの減、経常利益もマイナス2億9,100万円となり、株主のみなさまに対してご迷惑をかける数字となっています。

地域別に見ますと、北米は買い控えにより、十分な数字が作れませんでした。昨日ちょうどアメリカ大統領選挙がありましたが、北米の景気も今年に入ってから徐々に弱含みになっており、上期では二重の足かせで苦労しています。

ヨーロッパは、2年前ぐらいまではインフレが非常に厳しく、なかなか設備投資に回らない状況でしたが、ここにきてだいぶ落ち着いてきたことでマーケットは非常に安定してきました。

日本は今なかなか厳しい状況にあります。我々の主要顧客である放送局も広告収入が伸び悩んでいるか、むしろ減少している中で、設備投資に対してかなり消極的になっています。弊社のシェアはほぼ独占状態ですが、需要がなかなか生まれてこないので、低位横ばい状態になっています。

中国に関しては本当に冷え切っており、まったくお金が流れていません。したがって、そもそも需要がない状況です。

真ん中の赤で囲ってあるインド・中東はこれから伸びてくるマーケットです。ここは将来大きくなると思っていますので、まずは積極的に足場を固めることでシェアを優先して案件を取りにいっていますが、ここがしっかり今、根づきつつある状況です。

B/Sに関しては、売上高の下に青で財務と書いてありますが、自己資本比率は75.1パーセントです。弊社は基本的にこれまで無借金で経営していますので、足元の業績が厳しい状況だったとしても、財務的には盤石な環境が整っています。

2025年3月期 第2四半期 決算概要

具体的な数字の中身をもう少しご説明します。スライドの真ん中にある2025年3月期の実績ですが、売上が18億4,300万円で、前期比16.8パーセントの減でした。営業利益はマイナス2億3,900万円、経常利益はマイナス2億9,100万円でした。

経常利益の赤で囲われている為替差損についてご説明します。買収したPhabrix社ですが、さまざまな経緯があり、リーダー電子本体がPhabrixを買収するかたちではなくて、グループからすると孫会社の位置づけで、販社であるリーダー・ヨーロッパという会社が買収しました。

まずは、買収のお金をリーダー電子本社からリーダー・ヨーロッパにポンド建てで貸し付けて、そのポンドでPhabrix社を買収しました。

したがって、リーダー電子本社とリーダー・ヨーロッパの間に550万ポンドの債権があることにより、為替でブレが生じています。

2024年3月期は円安に大きく振れる傾向でしたので、その債権の円建ての価値が膨れ上がり為替差益が出ました。一方で当第2四半期では、足元はまた円安傾向ですが、期初の160円前後と比較すると9月末時点で円が140円程度まで円高に振れてきたこともあり、為替差損が発生している状況です。

しかし、あくまでもグループ内の貸借に関わる為替なので、キャッシュに影響を及ぼすようなものではまったくありません。

2025年3月期 第2四半期 決算期初計画比

スライドは今期の期初計画との比較です。期初の業績見通しですと、上期は売上21億円、営業利益で5,000万円という計画でした。これに対して、当初4月にリリース予定の主力製品が7月、8月にずれ込んだことによる買い控えによって売上高が減少しました。

主力製品が買い控えられたことにより、それ以外の製品で売上を確保するために粗利を犠牲にしてでも数字を取りにいく局面もあり、営業利益の減少は売上高の減少幅を上回っています。その結果、営業利益はマイナス2億3,900万円になりました。

四半期業績推移(売上高)

四半期ごとの業績の推移です。最初にご覧いただきたいのが一番右側の第4四半期です。第1四半期、第2四半期、第3四半期に比べて、過去2年間も第4四半期で売上が大きく伸びています。

放送局向けの設備を商品として扱い、主要顧客は放送局であることから、日本に限らず世界的に年度の予算の中で動いていきます。したがって、期中よりは期末に駆け込みでまとめて納めるケースが非常に多いので、どうしても下期偏重の売上構成になっています。

また、比較的粗利率の高い製品です。我々の目安は粗利率60パーセント台後半と高いので、損益分岐点を越えるまでは厳しいのですが、それを越えてからは売上が増えるとそのぶん利益が非常に出やすい傾向があります。

上期は売上も利益も厳しい数字が続き、期末に駆け込みで売上と利益が大きく伸びて、最終的に当初の計画どおりに着地するビジネスモデルになっています。

したがって、今期は第1四半期と第2四半期で出遅れており、2024年3月期との比較でも下回っていますが、下期偏重ですので、今期に関してはその遅れていた新製品が第3四半期以降の業績への寄与でリカバリーできるとご理解ください。

四半期業績推移(営業利益)

営業利益についてご説明します。スライド下半分の第1四半期、第2四半期、第3四半期の累計営業利益は、過去2年間も第4四半期に営業利益が大きく伸びています。

2023年3月期はずっと赤字で推移していますが、これはちょうど2年前、半導体をはじめとした部材が不足し、本当に半導体がなく、またその他さまざまな部材が新型コロナウイルスの影響で作れない中、我々も製品が作れない状況にありました。

その結果、お客さまの需要に対して十分に応えることができず、年度を通して赤字が続いていたのですが、それでも第4四半期に売上が伸びて営業赤字が減っていきました。

2024年3月期の営業利益は、第1四半期、第2四半期、第3四半期と5,000万円から1億円前後で推移しており、第4四半期に売上が大きく伸びて、2億1,600万円の営業利益で着地しています。

今期もおそらくこのような動きになるため、営業利益は第2四半期まで赤字ですが、ここからリカバリーして通期の業績見通しである2億5,000万円に向けて、盤石の事業展開をしているところです。

セグメント情報

商品別売上高と地域別売上高のセグメント情報についてご説明します。スライドのグラフ右側は地域別売上高で、中央の赤は北米・中南米です。前期7億5,800万円に対して買い控えにより一番大きく沈み、今期は5億6,200万円にとどまっています。

最下部の日本は、前期7億8,900万円に対して今期7億2,500万円で、日本も買い控えの影響はありましたが、微減で踏みとどまっている状況です。

灰色は中国で、昔は中国はアメリカよりも売上が多く、2022年3月期までは海外では一番稼いでいる拠点だったのですが、それ以降中国の景気が大きく冷え込んだことにより、非常に厳しい数字となっています。

ヨーロッパは、過去2年間は3億5,000万円ほどだったところ、今期は4億円を超えています。これは、今年のパリオリンピックによる需要と、それに伴いヨーロッパにおける設備投資が進んだためしっかり結果が出ました。

青のその他は、東南アジアや中東です。この第2四半期までは7,300万円と低いのですが、今後大きな案件なども期待できるため、ここは伸びてくると見ています。

スライド左側の商品別の売上高についてご説明します。我々は、波形モニターを中心とした、放送関係の設備機器をビデオ関連機器と呼んでいます。もう1つ、電波関連機器という事業領域もあり、こちらは今は国内専用の製品のため、会社におけるマグニチュードは、相対的に小さいものです。

その他は、修理や校正といったものになります。このビデオ関連機器は、2023年3月期、2024年3月期と比較すると、2025年3月期は16億3,800万円で、前期に比べて大きく低下しています。

電波関連機器は、特注もあったりするためかなり波があります。2024年3月期はその特注があり数字が伸びました。2025年3月期は1億700万円で、2年前の2023年3月期との比較では伸びています。

財務情報

財務情報についてご説明します。無借金経営のため、自己資本比率は約75パーセントという高い状況です。流動資産の現預金は12億4,300万円で、ビジネスを展開する上では十分なキャッシュがあります。

外部環境認識と事業方針

通期の計画についてご説明します。まず我々の大きな事業計画についてお伝えすると、今の主力である放送関連機器やビデオ関連のビジネスで、世界でトップシェアのTelestream社からシェアを奪い、上回ることを目指しています。

一番大事なのは、先ほどもお伝えしたとおり、放送局の設備を導入するのはだいたいどこの国でも入札というかたちになります。そこでRFPという発注書を入札する側が作るのですが、今はトップシェアがTelestream社であるため、Telestream社の製品をベースとして作られています。もしシェアが逆転すると、今度は我々の製品をベースとしたRFPが作られるようになり、入札において圧倒的に有利になります。そのために我々はトップシェアを目指しています。

各地域については、その中でも北米・欧州はマーケットとしてまだまだ大きく、我々のシェアは低いため、まずはここにおけるシェアをしっかりと伸ばして、Telestream社とシェアを逆転させることを今一番重視して戦っています。

2025年3月期通期業績計画

通期の業績についてご説明します。スライドの表の青枠で囲った箇所は、期初に出した数字です。46億5,000万円の売上に対して、営業利益2億5,000万円としています。

上期の決算では厳しい数字になりましたが、この通期の計画については、今日も修正していません。我々としてはこの計画を達成できると考えて進めています。

昨年度と比較すると、売上は2.3パーセントの増、営業利益は15.5パーセントの増を目指しています。とはいえこの上期は、売上が厳しく出遅れたこともあり、我々としては販管費を徹底的に削ることにより、着実に利益が出る体制を作っています。

赤字で書かれているとおり、広告宣伝費などを抜本的に見直せば我々の中ではすべてリカバリーしきれると思っているのですが、もしリカバリーが今期の中で若干取り逃しがあったとしてもきちんと営業利益が出せるように、コストコントロールにもしっかり取り組んでいます。

【戦略製品】LV5600W / LV7600W / LT4670

我々の具体的な取り組み、成果についてご紹介します。「LV5600W」「LV7600W」は出荷が遅れた戦略製品です。

新型コロナウイルスが1つのきっかけで、特にアメリカで動画の制作プロセスというのが大きく変わりました。例えばドジャー・スタジアムで大谷翔平選手の動画を作る場合、コロナ禍前だと、制作スタッフがみんな揃ってドジャー・スタジアムまで行き、その場で動画を作って放送波に流せる動画にしてから流すというかたちでした。

しかし新型コロナウイルスにより人の移動ができなくなり、またアメリカの場合は国土が広いため移動に非常にコストがかかるということもあり、できるだけリモートにする動きが広まりました。アメリカでは今、ドジャー・スタジアムで動画を作る際は、スタジアムに行く人間を最小限にし、それ以降のプロセスを極力、例えばワシントンの本局などで行うことに積極的に取り組んでいます。

そのため、リモートでしっかりシステムを動かせるようにできなければならず、インターネットの技術を使って、リモートでそのカメラを監視や調整することが求められてきます。ここに書かれている「Web-RTC」はそのような機能となります。

したがってこの「W」という製品は、アメリカのリモートプロダクションという機能にマッチした製品として開発したものです。このリリースが遅れたことにより、この製品に対する北米のお客さまの期待に、上期は応えられませんでした。

こちらについては、日本の第2四半期から3ヶ月の期ずれがあり、北米については第3四半期からとなりますが、実際に数字として貢献できるような状況になっているため、これが今後大きく業績を引っ張っていく製品になると思われます。

スライド右端の「シンクジェネレーターLT4670」についてご説明します。放送業界というのは事故が起こってはならず、放送事故が起こると日本は一番厳しいのですが、世界的にも非常に大きなトラブルとなるので、事故がないようにすべての系統を二重で流しています。

二重で流しておいて、万が一何かあった時にA回線からB回線のほうに瞬時に切り替えられるようにしておくために、その2つのシステムは常に同期を取っておかなければいけません。その同期を取るためのシステムが、この「シンクジェネレーター」になります。

この点も、リモートプロダクションがベースとなります。インターネットの技術を搭載したものが必要となってくるため、この需要にしっかり応えられる新製品として、2024年4月にリリースしました。今アメリカでは、この2つを戦略的に非常に重要な商品として、これから本格的に製品を展開する予定です。

➢【戦略製品】「LPX500」

もう1つ、「LPX500」という製品をご紹介します。これはUKのPhabrix社が開発したモデルで、1番の特徴は、サイズが非常にコンパクトなところです。

我々がPhabrixという会社を買収した理由でもありますが、単に同業として波形モニターを作っている会社を水平統合しただけでなく、彼らは技術的にコンパクトに物を作るのが非常に得意な会社です。その技術を利用して作ったのがコンパクトな波形モニター「LPX500」です。

コンパクトであることの重要性としては、中継車にはたくさんの機器が入っているためスペースが非常に狭く、中継車を実際に使っているお客さまから奥行きをさらに短くしてほしいというニーズがあり、その期待に応えて作っています。

また、今まではLeaderとPhabrixという別々のブランドだったのですが、今後はこれを1つのブランドにするということで今回、「LeaderPhabrix」という新しいブランドを立ち上げ、その新ブランド第1号として開発したものになります。

スライドに記載の「IBC2024にてBest of Showを受賞」とは、ちょうど9月にオランダのアムステルダムでIBCというヨーロッパで最大の放送機器の展示会があり、そこで「LPX500」が「Best of Show」を受賞し、大いに評判になっています。

「LPX500」もアメリカやヨーロッパを中心に展開する戦略商品で、このように業界の中でも大きな話題を呼んでいる製品も作っています。

【戦略製品】SFR-Fit

これまで放送関連のハードウェアについてお伝えしましたが、みなさまご存じのように放送という市場自体は、日本に限らず世界的にも今後縮小していくことが避けられない業界です。

2021年、日本でも、広告収入において放送局業界よりもネット業界が上回ったことがあったのですが、アメリカでそれが起こったのはおそらく2018年でした。

この傾向は今後もさらに広がっていくと予想されるため、まず足元については、Telestream社に対してシェアを逆転し、デファクトスタンダードを獲得して、売上や利益を伸ばしていくことになります。中長期的な観点でお伝えすると、ここもいずれシュリンクしていくことが避けられないと考えており、我々は同時に新たな事業開発にも取り組んでいます。

その1つが、スライドに掲載している「SFR-Fit」です。これはまったく毛色の違う製品です。

背景からご説明すると、我々は昔家電メーカー向けの検査装置をメインのビジネスにしていたことをお伝えしましたが、その一番最後にヒットさせたのが、当時非常に大きなマーケットを持っていたDVDやブルーレイという光学系のディスクを読み取る光ピックアップという検査装置で、我々は日本の市場をほぼ独占していました。

要するに、レンズを検査する機能や技術で、光ピックアップというものは市場から大きくなくなってしまったのですが、我々としてはその技術をどこかに使えないかということで、いろいろと模索してきた中で車の世界にたどり着きました。

今、車の世界では、カメラの搭載が非常に増えています。自動運転や衝突安全性などの観点から、人間が使うようなカメラを搭載した車も増えてきました。また、スライドの最下部に赤で記載したとおり、今年の11月から日本においてバックカメラシステムの装着が義務付けられます。

現在は日本だけでなく、世界的にこのような傾向があり、自動車メーカーがカメラの搭載に取り組んでいかなければいけない状況です。一方で、自動車メーカーからするとカメラというのは本業ではなく、馴染みのない領域でした。技術の蓄積がないところに、我々が一緒になって、カメラに関連するビジネスをお手伝いしているところです。

完成車メーカーがモジュールとしてカメラを搭載する際の、カメラの性能評価において、我々の製品が役立っています。この「SFR-Fit」は非常におもしろい製品です。魚眼カメラという360度の広角で撮影できるカメラがありますが、映像自体が非常に歪んでいます。「SFR-Fit」は、そのような魚眼カメラの性能を測定できる製品です。これは世の中にまったくないもので、現在は我々の「SFR-Fit」でしか測定できません。

例えば180度しか撮れないカメラであれば2つ必要なところ、360度撮れれば1つで済むということで、自動車メーカーからするとモジュールが少なく、安く済みます。一方で、これまで魚眼カメラの性能が評価できなかったことによって、映像に映ったものが本当に避けなければいけない障害物なのか、それともノイズやゴミなのか、判別の精度が評価できていませんでした。

我々が開発した「SFR-Fit」というシステムを使うことによって、そこがきちんと評価できます。これによって完成車メーカーも、魚眼カメラの搭載にあたって、「これくらい正確に判別できるカメラをモジュールで納めてください」と言えるようになりました。今、車メーカーと一緒にデファクトスタンダード化に取り組んでおり、できあがった納品基準をサプライヤーに展開していくかたちで、ビジネスを伸ばしています。

今はまだ人手が不足しているため日本国内でしか行っていないのですが、将来的には海外に展開したいと考えています。さらにカメラということで言えば、例えば内視鏡などにも使われるものがありますので、積極的に横展開していこうと思っています。このようなかたちで、さまざまな新規市況を取り込みながら、波形モニターなどの放送関連機器で稼いだ収益をこちらに投資して、将来的により企業価値が上げられるような取り組みを進めています。

【戦略製品】LF995

電波関連商品について、具体的にどのようなものを作っているかご紹介します。

聞き慣れない製品かと思いますが、この「LF995」は電界強度計といいます。引っ越しなどをした時に電気の工事業者がやってきて、地上波やBSがきちんと受信できているか、どの程度の強さで受信できているのかチェックしますが、そのチェックの際に使用する機械です。

したがって、電気工事の事業者からすると、これは必須の製品です。製品自体は以前からありましたが、この4月、「LF995」にリニューアルしました。これは我々からすると非常に画期的で、マーケットを大きく動かす製品に育てていこうと構想しています。今までは単に計測するだけで、工事事業者がその都度、結果を報告書に手で書き起こす必要があり、非常に手間かかっていました。これをクラウドと連携することで自動的に報告書を作ったり、データベース化したりできるようになっています。

さらに、今までは地上波、CS、BSといったテレビに関する波だけを計測していたのですが、構造をモジュール化することで今後さまざまな波を計測できるようにしていこうとしています。例えば5GやWi-Fiなど、非接触の充電器は全部波なのですが、将来的にはこのようなものを計測できる製品を増やして、日本国内だけでなくグローバルに戦えるように、大きく伸ばしていこうと考えている次第です。

株主還元

続いて、株主還元です。弊社はこれまで、基本的に配当性向25パーセントを1つの目安として配当してきました。2024年3月期は創業70周年ということもあり、当初の配当10円に記念配当5円を上乗せして15円としたため、配当性向が57パーセントと大きく跳ねています。

また、今期は25パーセントの自社株買いを行いました。それによって市場に流通している株式が減ったこともあり、同じ配当性向でも、これまで10円だったものを15円で配当できるようになっています。

したがって今期は、この15円という配当をベースに、業績の伸び次第でどこまで増やせるかと考えています。来期以降に関しても、自社株買いをしたことで市場の流通株が減っていますので、15円をベースに、25パーセントの配当性向の中で、さらに業績を伸ばして配当を増やしていこうと考えています。

R&D指針 更に積極的な投資を実施

最後に、研究開発の考え方です。まずは放送関連機器でトップシェアを取るために、必要な製品開発を進めています。一方で新製品は、業態転換に必要なイメージングデバイス、「SFR-Fit」などもありますし、波形モニターの機能自体も今後ソフトウェアあるいはソリューションというかたちでソフトウェア化していくことを考えています。このように、既存の製品開発と新規事業の研究開発が同時に進んでいる状況です。

現状は上場企業として利益を出すという責務を果たしつつ、将来的な企業価値向上をできるだけ早く実現するために、積極的に研究開発投資をしています。

2年前に出した中期経営計画では、2024年度、2025年度は回収時期ということで研究開発費を抑える計画だったのですが、足元では積極的に研究開発に投資しています。できるだけ早く業態転換し、新規事業の収益の柱を作った上でより大きな利益を上げ、株価の向上や増配によってより大きな還元を目指していきたいと考えています。

質疑応答:アメリカにおけるシェアについて

司会者:「アメリカにおけるシェアがTelestream社に肉薄してきているのではないかと期待していますが、直近ではどのぐらいまで伸びているのでしょうか?」というご質問です。

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