事業環境(情報サービス産業)
小林裕明氏:NCS&A株式会社執行役員常務経営戦略室長の小林です。よろしくお願いします。私からは、2025年3月期中間期の決算概要をご報告します。
まずは事業環境です。コロナ禍で先送りとなった投資の再開、人流の回復による設備投資の拡大などにより、企業のIT投資は増加傾向にあります。また、労働者不足を背景とし、業務効率化に向けたIT活用の重要性が中堅・中小企業でも高まってきています。
さらに、経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」を背景に、古い基幹業務システムを刷新する動きが活性化しています。
NCS&Aは
当社についてご紹介します。1961年に大阪市で創業し、グループ全体の従業員数は1,244名です。職種の比率は技術職、事務職、営業職で8対1対1、地区別勤務者の比率は大阪、名古屋、東京で5対1対4になります。
お客さまは約1,800社、パートナー企業は約200社です。従業員の有給取得日数は年平均17.9日で、残業時間は月平均12.1時間まで削減できています。営業利益率は9.1パーセント、ROEは13.4パーセントという結果です。
NCS&A 中間ハイライト
中間ハイライトです。業績進捗は売上51パーセント、営業利益49パーセントと順調に推移しました。自治体事業である、確定申告及び給付金システム、ガバメントクラウド対応などが堅調に推移したほか、2024年7月より、従業員持株会向け譲渡制限付株式インセンティブ制度を導入しています。
また、2024年7月より導入したフェムテックサービスに対して「更年期プログラム」を追加しました。さらに、サステナビリティへの取り組みも推進しています。こちらは後ほどご説明します。
2025年3月期 中間期 経営成績
2025年3月期中間期の経営成績です。売上高はマイグレーション事業が堅調に推移し、97億6,800万円となりました。営業利益は、新卒を70名ほど採用したことで販管費が若干増加し、前年同期から横ばいの8億9,100万円となっています。
経常利益は9億1,300万円、当期純利益は5億6,900万円という結果です。
売上高(売上区分別)の状況
売上区分別の状況です。売上高を大きく4つに分け、その進捗具合を図っているものになります。
1つ目は、自社製品によるソリューションです。2つ目は、システムインテグレーションです。こちらでは、システムの提案、開発・導入、24時間365日対応の保守までをワンストップサービスで提供しています。お客さまの要望により、スクラッチで開発する場合もあれば、他社のパッケージを提案する場合もあります。
3つ目の機器・パッケージは、いわゆるPCやサーバー単体での販売を示しています。4つ目の受託開発は、大手メーカーからの開発の請負委託などを表しています。
当社は、自社製品によるソリューションの強化を継続的に進めています。その結果、2025年3月期中間期は、その割合を約26パーセントまで伸ばすことができました。
自社製品・サービスのご紹介
自社ソリューションについて抜粋してご紹介します。スライド最上部の「REVERSE PLANET」は、情報システムの資産を可視化する製品です。最下部の「Ccms」は、信用情報機関への接続サービスになります。
自社製品・サービスのご紹介
スライド最上部の「Guras」は、家賃債務保証の基幹システムです。このような自社ソリューションによるものを、1つの売上区分で集計しています。
営業利益の変動要因(前年同期比)
営業利益の変動要因です。先ほどのご説明と若干重複しますが、今期は新卒採用を68名採用し、研修費等が増加しています。この結果、営業利益は前年同期比でほぼ横ばいとなりました。
受注・売上・受注残の状況
受注・売上・受注残の状況です。スライドのグラフはそれぞれの四半期推移を示しており、下の棒グラフは左側が受注高、右側が売上高となります。上の折れ線グラフは、実線が期末受注残、点線が継続売上を含めたみなし期末受注残を示しています。
ご覧のとおり、2025年3月期上期の受注は100億6,900万円となりました。期末受注残は前期末比で約3億円増加し、52億9,000万円となっています。
資産・負債・純資産の状況
資産・負債・純資産の状況です。スライドの棒グラフは、左側が2024年3月末、右側が2024年9月末を示しています。
資産合計は185億1,300万円となり、前期より6億9,800万円減少しています。これは主に現金及び預金の減少によるものです。負債合計は60億7,000万円となり、前期より8億8,700万円減少しています。これは賞与引当金によるものです。
純資産合計は124億4,300万円で、前期より1億8,900万円増加しています。これは主に利益剰余金の増加によるものです。この結果、自己資本比率は67.2パーセントとなっています。
売上高・営業利益・営業利益率
辻󠄀隆博氏(以下、辻󠄀):代表取締役社長の辻󠄀です。本日は当社決算説明会にお時間を割いていただき、ありがとうございます。私からは、今年度の重点施策についてご説明します。
スライドのグラフは、売上高・営業利益・営業利益率の2017年度以降の推移を示しています。2018年度から業績を大きく回復させ、途中の2020年度はコロナ禍で前年度を若干下回りましたが、その後は右肩上がりで業績を伸ばしています。
右端は今年度上期の実績です。上期の営業利益は8億9,000万円、営業利益率は9.1パーセントとなっています。2025年3月期の通期では、売上高は190億円、営業利益は18億円を見込んでいます。現在、ほぼ計画どおりに進捗しています。
「2025年の崖」を背景にDXが進む
ITを取り巻く環境についてご説明します。経産省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」を背景に、多くの企業がDXを進めています。ご存じのとおり、DXはデジタル技術を活用・浸透させ、人々の生活をより良いものに変化させようという取り組みです。
企業のITにおいては、「レガシー」と呼ばれる古いコンピューターシステムを使い続けることが足かせとなり、なかなかDXが進んでいない現状があります。これは企業がITに投資していないのではなく、レガシーシステムの維持と保守にお金をかけているためです。
現在は、古いコンピューターシステムにお金を使うのではなく、新しくオープンで柔軟なコンピューターシステムに作り変えることが推奨されています。実際に、当社で進行中のプロジェクトのほとんどがDX関連の仕事となっています。
主力ソリューションの推進 <REVERSE PLANET>
DXを進める上で、当社の主力ソリューションである「REVERSE PLANET」という可視化ツールを提案しています。これは「レガシー」と呼ばれる、古く膨大なコンピューターシステムを可視化するものです。
例えば、プログラムを修正する時は、まずSEと呼ばれるコンピューター技術者がどこを修正するべきなのか、1ヶ所それとも複数にまたがるのかなどを調査します。当然、この作業は手作業のため時間がかかります。
また、熟練のSEの経験と勘による作業になるため、システムが膨大であればあるほど調査漏れが発生し、さらに手元に残っているドキュメントも、おそらく現状と乖離しているような状態がほとんどです。
このような技術者の悩みを解決するのが、当社のシステム資産可視化ツール「REVERSE PLANET」です。銀行、生命保険、証券といった金融中心の大手企業にお使いいただいているソリューションとなっています。
主力ソリューションの推進 <AirsNeo>
当社はDXの構築方法として、マイグレーションをご提案しています。マイグレーションとは、「移動、移住、移転」という意味の単語で、現在使用しているシステムを新しい環境に移行することを意味しています。
システムの再構築には、これまでと同程度の金額や時間、手間、気を使いますが、使用中の古いシステムが安定稼働しているのであれば、論理ロジックを変えずに新しい環境へと移行することを勧めています。一から作り上げるよりも比較的早く、安く、そして安全に移行することができるためです。
この移行サービスが「AirsNeo」です。まず、現在使用しているコンピューターシステムの棚卸を行います。その後、移行の実現性を探るために移行性分析を行ってから、移行ツールを設計・開発し、実際に変換して実装するサービスとなっています。
スライド右上にあるように、当社のこれまでのマイグレーション実績は20社以上となっています。主に金融を中心としていますが、このうち3つほどが現在進行中です。
主力ソリューションの強化 <AirsNeo RPG to Java>
2023年6月に「AirsNeo RPG to Java」をリリースしました。これは、IBMiの「AS/400」というコンピューター機器をお使いのユーザーに向けて開発したDXツールです。
IBMiの「AS/400」というコンピューター機器をお使いのユーザーの大半は、IBMi独自のプログラム言語である「RPG」を使ってシステムを作り上げています。これは比較的簡単に作ることができる反面、RPGで作られたプログラム資産の存在自体が、他のシステム環境に乗り換えることを難しくしているという現状があります。
「AirsNeo RPG to Java」は、RPGで作られたプログラムを、メーカーを問わず一般的に普及している「Java」という言語に変換するためのツールです。スライドの絵は、RPGをJavaに変換する姿を描いています。本ツールにより、必要に応じてRPGをJavaに変換して使用することを提案しています。
主力ソリューションの推進 <統合情報表示基盤 ScopNeo>
DXからは離れますが、統合情報表示基盤「ScopNeo」は、企業の中でコンピューター関連の保守を担っている方に向けた商品です。企業内のコンピューター機器をはじめ、ハード、ネットワーク、セキュリティなどのさまざまなITの稼働状況を、一括して監視するソリューションとなっています。
すべての企業にITの専門家がいるわけではありませんので、このようなサービスがあったら助かるという要望を受け開発しました。
中期経営計画(2024-2026)の要綱
今年度から始まっている中期経営計画についてご説明します。スライド上から2段目には、中期経営計画の位置づけを記載しました。
収益基盤の安定を維持し、システム開発一辺倒の会社から、サービス事業へと転換を図っていきます。加えて、手前味噌ではありますが、当社は「技術のNCS&A」と自負していますので、開発を通じた技術力向上と主力ソリューションの強化を両立させます。
そのほか、スライドにはさまざまな数値目標を記載していますが、非財務目標の右端にあるように、オンライン専門職の導入を検討しています。こちらは、親の介護や子どもの教育のために会社を辞める必要がないように、社員のキャリアを大事にしてもらいたいと考えた制度です。
中期経営計画~基本方針を支える戦略投資
中期経営計画の基本方針は、大きく4点あります。
1点目は、既存事業の強化です。既存事業を強化させることで持続的な成長を目指します。
2点目は、新規事業の創出です。将来に向けた持続的な成長基盤の獲得に向け、2020年度から開始した社内スタートアップ制度をバージョンアップし、今年からは信頼できる相手と互いにリスクをとった協業ビジネスへ発展させていきます。こちらでは、すでに2つのフェーズが走っています。
3点目は、人への投資です。背景にはダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンがあります。当社はD&Iに取り組んでいますが、エクイティを確保しながらDE&Iを進めていきます。
4点目は、当社を応援してくださる株主の方々への利益還元です。当社がさらに成長して社会に貢献することで、株主のみなさまに喜んでもらおうと考えています。前年度は50万株の自社株式を取得しました。今年度の配当金は、配当性向45パーセント以上と公表しています。
健康経営優良法人2024に認定
2023年度に健康経営宣言を行いましたが、今年度も引き続き「健康経営優良法人」に認定されました。
当社は、社員の健康は個人の問題ではなく、会社の成長のために必須であると捉えています。社員一人ひとりが心身ともに健康で、個々の力を最大限に発揮できるよう、働く環境の改善に取り組んでいます。過去5年間の中期経営計画は、この健康経営の考え方に基づいて策定しています。
その結果、この5年間の業績は、途中でコロナ禍の影響を受けたものの、その影響を最小限に抑えて過去最高益を更新してきました。現在始まっている中期経営計画においても、引き続き健康経営に取り組んでいきたいと考えています。
人材への積極投資
中期経営計画の基本方針の1つに「人への投資」があります。スライドでは、人材に積極投資することで財務価値を向上させ、成果として社会価値を創出し、それが当社の価値の源泉に還流するという絵を描いています。
スライド左側から2番目が「人材への投資」です。人材に投資することで、多様な個性を尊重する文化を作り上げ、社員が安心して意見を発信できるような会社にしていきます。会社が多様な働き方を社員に提供し、柔軟で働きやすい環境を作り上げることで、社員が働き方を選べるようになり、個々の能力を最大限に発揮してもらおうと考えています。
加えて、手厚い教育制度を実施します。学歴や学位に関係なくIT未経験者を採用し、一人前となるまで育成することで、社員の技術力を向上させていきます。その結果、財務価値が向上し、社会価値が創出されます。そして、これらの成果が当社の価値の源泉に還流していくような絵を描いています。
社会貢献活動およびサステナビリティ
社会貢献とサステナビリティについてです。2024年度上期の男性育休取得率は75パーセントでしたが、男女ともに100パーセントの取得率を目指します。
新卒採用については、2025年4月の入社予定者は65名、キャリア採用は7名を予定しています。全体の目標として、80名の採用を継続して行っていきたいと考えています。
2020年度下期から社内スタートアップ制度を始めており、2024年度上期までの採用累計件数は92件となりました。今年度からは、信頼できる相手と互いにリスクをとった協業ビジネスへ発展させようと考えています。
コンプライアンス遵守も徹底しています。今年は、パワーハラスメント教育を135名の管理職に実施しました。さらに、11月1日を「コンプライアンスの日」に制定し、全社研修も実施しています。
環境保全活動についても継続しています。加えて、社会貢献活動への参加も継続していきたいと考えています。
Well-beingとDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を支える環境
当社のWell-beingとダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを支える環境についてです。会社は社員に多様な働き方を提供し、社員が働き方を選べるような会社であり続けるため、働く環境の改善に日々取り組んでいます。
実家の両親の介護や子どもの教育のために会社を辞めることのないように、オンライン専門職の導入を検討しているほか、テレワークと出社のハイブリッド勤務も継続しています。現在のテレワーク率は18パーセントほどです。
また、育児や介護をサポートするため、7時15分から11時の間で柔軟に出社時間を選択できる制度や、1時間単位の有給取得制度を実施しています。会社支給のiPhoneから勤怠入力をすることも可能です。
さらに、社員の有給取得を促進するため、有給休暇取得促進日を設定しています。今年度は10日間設定して社員のほぼ全員が有給を取得しましたが、生産性は落ちていません。
中期経営計画の変遷と目標
スライドには、これまでの中期経営計画の振り返りと2026年度までの目標を記載しており、2017年度からの売上高・営業利益・営業利益率の推移をグラフで示しています。繰り返しになりますが、2018年度から業績を回復させ、2020年度はコロナ禍により若干前年度を下回ったものの、それ以降は右肩上がりで業績を伸ばしています。
今中期経営計画を含めて、これまでに3回の中期経営計画を策定してきました。いずれも新入社員でも理解できるように、わかりやすい言葉で作ってきています。ほぼ計画どおり業績に繋げることができています。
2024年度から2026年度は、人とソリューションへ積極的に投資し、さらに生き生きと働ける環境を作り上げていきます。2026年度の数値目標は売上高230億円、営業利益率12パーセント、営業利益28億円です。
2025年3月期 通期 業績予想
2025年3月期通期の業績予想です。売上高は190億円、営業利益は18億円、営業利益率は9.5パーセントを見込んでいます。
2025年3月期 配当予想
配当性向は45パーセント以上と公表しており、配当予想は38円です。
質疑応答:季節性要因と新卒の業績寄与時期について
質問者:今年度の営業利益は、上半期が前年同期比マイナスですが、通期ではプラス10億円以上の見通しです。この要因として、下期が好調となる傾向にある等、何が関係しているのでしょうか?
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