本日のスピーカー
前川英之氏:ただ今より株式会社アストロスケールホールディングス事業説明会を開催します。ファイナンス&アカウンティングの前川と申します。本日の司会進行役を務めます。どうぞよろしくお願いします。
本日のスピーカーをご紹介します。代表取締役社長兼CEOの岡田光信と、取締役兼CFOの松山宜弘です。
岡田光信氏(以下、岡田):アストロスケールの代表取締役社長兼CEOの岡田です。本日は大変お忙しい中、お時間をいただき誠にありがとうございます。今日は松山とともに当社の事業についてご説明します。
世界初 スペースデブリの撮影に成功
スライドの画像の物体が何かおわかりでしょうか。こちらは世界で初めて撮られた本物のスペースデブリの写真です。直径4メートル、長さ11メートル、重さ3トンと、大型バス並みの大きさです。
一見止まっているように見えるデブリは、実は秒速7キロから8キロという新幹線の100倍くらいの速さで飛んでいます。今年5月に当社の商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」が、デブリへの接近に成功し、真後ろにぴたりと相対静止して撮影しました。
宇宙の持続利用のために必要な「軌道上サービス」には、このような技術が必須です。今後急激に成長すると予想される「軌道上サービス」市場において、アストロスケールは世界の最先端にいます。
本日はどのような課題があり、どのくらい喫緊であるのか、そして私たちがどのように技術や事業、あるいは法規制作りに取り組んでいるのか、さらにどのように財務的な数字につながるのかをご説明したいと思います。
アストロスケールの魅力
アストロスケールが「軌道上サービス」において、グローバルにリードし続けている理由は3つあります。
1つ目は技術面です。我々は非協力物体への接近と捕獲、いわゆるRPO技術を宇宙で実証した世界で唯一の民間企業です。実証は2度行っています。RPO技術実証を用いることにより、後ほどご説明する「軌道上サービス」の4つのセグメントにおいて、我々は最先端にいます。
2つ目は事業面です。「軌道上サービス」という市場はそもそもありませんでしたが、今後急激に拡大し11年間の累計収益額2兆5,000億円という規模になると予想される市場となりました。当社のグループはサービスや地域が分散した案件ポートフォリオを実現し、今年の4月末時点の想定受注残高は前年比約5.8倍の285億円です。2026年4月期には、損益分岐点近辺を目指す計画です。
3つ目はグローバルなプレゼンスです。私たちの事業は解決すべき課題にグローバルに取り組むべく、世界5ヶ国で展開しています。創業当初、スペースデブリ問題はほとんど知られていませんでしたが、今では国連やG7等で議題にのぼり、取り組みが加速しています。後ほど、そのルール作りが盛んになっていることについてもご紹介したいと思います。
各セクションの要旨
本日ご説明する内容をまとめたスライドです。ご一読ください。
会社概要
世界同時での取り組みが必須であるため、5ヶ国7拠点で展開し、現在600名ほどの多様な人材がいます。そのうちの4分の3がエンジニアという、エンジニア主体の会社です。また、女性の割合は4分の1となっています。
Vision/Mission
我々のミッションは「宇宙を安全で持続利用可能な宇宙開発を実現すること」です。現在、宇宙でのリスクは上がり、リターンが下がっています。これを逆転させなければ、宇宙の持続利用はありえません。そのために必要となるのが「軌道上サービス」です。
2013年時点における宇宙環境 (イメージ図)
どのくらいの喫緊の課題であるのか、また、当社グループがどのように取り組んでいるのかについてご説明します。スライドはアストロスケールを創業した2013年当時の宇宙環境を視覚化したイメージ図です。
赤い点で示したのはすべて10センチ以上のスペースデブリで、地球の周りを猛烈なスピードでさまざまな方向に飛んでいます。
当時、10センチ以上のものだけで1万数千個が飛んでいました。古い人工衛星やロケットの上段、あるいは、それらの爆発や衝突によってできた破片がデブリとなります。
ところどころにある白い点は本物の人工衛星です。つまり、宇宙空間にある物体のほとんどがゴミであり、現在の宇宙環境はさらに悪化しています。
軌道上の持続可能性に係る危機的状況がリスクを増大
スライド左側のグラフは、人工衛星の数およびデブリ数の推移です。この10年で増加し、2030年にはさらに宇宙が混雑することを示しています。
スライド右側のグラフは、人工衛星とデブリとの1キロメートル以内の月間ニアミス数です。2020年頃までは毎月2,000回、1日66回とひどい数字ですが、2021年にはその約3倍となる1日200回程度まで増加しており、急激に悪化しているのがおわかりいただけるかと思います。
つまり、宇宙空間で衝突が起きて新たに細かいデブリが生まれており、連鎖反応的な衝突がいつ起きてもおかしくない状況です。実際、細かなデブリの発生はすでに起きています。
宇宙での活動はデブリとの衝突によるリスクが増大
スライド左側の図は、デブリ集積度を高度別に表したものです。特に赤枠で示した高度400キロメートルから2,000キロメートルは低軌道(Low Earth Orbit)と呼ばれ人気があり、非常に混雑しているゾーンです。ここに残った宇宙ゴミは数十年から数百年の間残留します。
スライド右側に最近の具体的な事例をご紹介しています。2024年8月には中国が複数の衛星を打ち上げた直後、高度800キロメートルでロケット上段がなんらかの理由で破砕し、モニターできるものだけでも700個以上のデブリが生み出されました。これにより、混雑した軌道がさらに混雑しています。
スライド右下の図は、高度550キロメートルから600キロメートルの間に数千の衛星を配置している「Starlink」という衛星が、デブリや衛星との衝突回避のために高い燃料を吹いて軌道をずらした回数です。
2023年下半期は約11分に1回です。11日ではなく、11分に1回です。2024年上半期には5分に1回と、宇宙はリスクが増えてリターンが下がっているということで、喫緊の課題となっています。
今アクションを起こさなくては、宇宙はゴミだらけになり物理的に持続利用不可能になります。また、衛星の運用者にとってのエコノミクスがどんどん悪化し、コストが上昇します。
軌道上サービスによる宇宙の持続可能な開発
宇宙が持続利用不可能になる理由として、宇宙業界のバリューチェーンが短いことがあります。例えば自動車や船や発電などは、作って、売って、使われた後に、必ず保守メンテや廃棄といったバリューチェーンが続き、そのためのルールがあります。その上にプレイヤーがおりお金が回ることで、持続利用可能な環境を作ってきました。
一方で、宇宙は長らく使い捨ての文化でした。衛星やロケットは1回使ったきりで、リユースやリサイクル、リペア修理、リフューエル(燃料補給)、リムーブ(除去)といったバリューチェーンがありませんでした。この穴を埋めるために作ったのが当社グループであり、これを「軌道上サービス」と呼んでいます。
軌道上サービスの必須技術:非協力物体に対するRPO技術
私たちは、「軌道上サービス」を技術・事業・法規制作りの側面で前進させてきました。まずは技術面の取り組みからご説明します。
「軌道上サービス」は「多くの人に事業機会がある」と語られてきましたが、実現しなかった大きな理由は技術面にあります。
非協力物体は居場所を教えてくれず、勝手に地球の周りを飛んでいます。マーカーもなく姿勢も安定しない物体に接近し捕獲するRPO技術が必要であり、この技術は1つではなく多くの複雑な技術の組み合わせで成り立ちます。
RPO技術を2つのミッションで宇宙実証に成功
私たちはRPO技術を世界で唯一、宇宙で実証している企業です。これまで2基の衛星を打ち上げました。
「ELSA-d」は、3年前に打ち上げた世界初のデブリ除去技術実証衛星です。捕獲衛星と模擬のデブリを打ち上げ、宇宙空間に切り離して捕獲し、再び切り離して模擬デブリがまったく見えない位置から接近する、あるいは自動自律的に追尾するという一連のミッションに成功しました。2024年初めには、数年以内に大気圏で燃え尽きるところまで高度を落としています。
「ADRAS-J」は本物のデブリに接近し観測するという、こちらも世界初のミッションです。デブリ除去を語る時にはいつも捕獲方法に質問が集中しますが、実は接近が一番難しく誰も成し遂げたことがありませんでした。
ADRAS-Jの運用計画
2024年2月に打ち上げた「ADRAS-J」の運用計画をご説明します。まず打上げをニュージーランドで行い、相手物体(クライアント)が見えない中で絶対後方という方法で近づきます。相手物体を点で認識すると、そこから衛星に搭載したセンサ群を使い相対航法に切り替えます。
その後はSafety Ellipseと呼ばれる、途中で故障しても決してぶつからない安全な軌道をぐるぐる回って徐々に近づきます。50メートル手前の場所でぴたりと止まり、デブリの動きや状態を定点観測します。最後に周回観測といって、デブリの周りを360度回るということを、今回の運用計画としていました。
相手物体は日本が出した大型デブリで、「H2A」ロケットの上段です。このプロジェクトはJAXAが商業デブリ除去実証(CRD2)プログラムとしてスタートしたもので、我々がパートナーに選定されたものです。我々が設計・開発・テスト・打上げまで運用し、JAXAからは多大なるサポートを受けています。
ADRAS-Jの運用成果
スライドは「ADRAS-J」の実際の運用画像です。打ち上げてすぐは、イニシャルチェックアウトというさまざまな機器のチェックを行います。
その後、相手がまったく見えない中で絶対航法をし、ついにデブリを点で捉えました。その後、安全に接近し、搭載する可視光カメラを使い複数ピクセルで撮像できるとこまで近づいています。
スライド下段中央がデブリを数百メートル手前から撮像した画像です。デブリの全体像と状況がよく見て取れます。その後さらに接近し、360度ぐるりと周回観測しました。
本物のデブリに対する至近距離からの定点観測と周回観測(世界初)
スライド左側がデブリ後方50メートル地点での定点観測で得た写真です。デブリの運動や材料の老朽化、紫外線等による影響などの知見を得ることができました。
デブリがどのようになっているのかについて、いろいろなコミュニティがさまざまな論文を出してきましたが、その答えを見つけたことになります。
スライド右側はFly Aroundと呼ばれる周回観測のタイムラプスです。デブリの全体像を観測するとともに、今後捕獲するために必要な技術を獲得しています。実はこれを3回違う方向に繰り返しており、私たちは非常に難しいRPO技術を実証したことになります。
後ほど松山からご説明しますが、もう一度このデブリに近づき除去するというミッション(ADRAS-J2)の契約締結について、本日リリースしました。
当社グループのビジネスモデル
私たちグループの事業モデルについてご説明します。私たちのサービスは宇宙空間で提供する点が、観測衛星やロケットと違うところです。お客さまは国・政府や衛星の運用企業などです。
我々が衛星を設計・開発・製造・テスト・打上げまで行いますが、打上げのみ打上げ業者のロケットを購入しています。
多様な顧客のニーズに応える当社サービス内容
我々はRPO技術を活用し、4つの事業セグメントで開発を行っています。軌道上サービスは我々が開発してきた市場であり、その草創期においていずれのセグメントでも受注していることがポイントです。
スライド左側からご説明します。「EOL(End-of-Life Service)」は今後デブリを増やさないために運用終了後の衛星の除去をするものです。お客さまは、特に衛星コンステレーションと呼ばれる数十機、数百機、数千機を打ち上げる衛星群です。
まず、お客さまにはドッキングプレートという非常に軽いプレートを事前に取り付けていただきます。もしも故障した場合や大気圏に落ちてくることができなかった場合には、このプレートがあることにより、我々の衛星から見つけやすく、近づきやすく、磁石で捕獲しやすいというサービスです。
「ADR(Active Debris Removal)」は既存のデブリの除去をするものです。先ほどご覧いただいた画像は既存ゴミであり、まさに「ADR」の対象となります。特に宇宙環境に影響の大きいデブリはいち早く除去しなければいけません。お客さまは政府です。これにはドッキングプレートは付いていないため、ロボットアームで捕獲します。
「LEX(Life Extension Service)」は寿命延長サービスです。特に静止軌道と呼ばれる軌道で燃料が不足した衛星に対し、我々の衛星が接近捕獲して軌道を修正してあげたり、別の軌道に移動してあげたり、あるいは燃料補給するというものです。
「ISSA(In-situ Space Situational Awareness)」は捕獲せず観測するだけの点検観測サービスです。先ほどの写真のミッションもISSAの一環になります。
いずれもRPO技術が必要になっています。我々の具体的な案件ポートフォリオは後ほど松山からお伝えします。
このような我々の取り組みを後押しするように、各国や国際機関によるルール作りが進んでいます。このような議論は以前からずっとありましたが、2022年以降急速に規制強化、ルール作りが加速しています。
各国政府の規制強化と革新的な政策導入により市場が拡大
例えばスライド左上のアメリカのFCC(連邦通信委員会)は2年前に、今後衛星は運用終了してから5年以内に軌道離脱することを義務づけると発表しました。放っておくと数十年、数百年と滞留してしまうため、「5年以内に大気圏に落ちてきなさい」ということです。これが今年9月30日以降に打ち上げる衛星に対して適用されます。
また、欧州宇宙機関は2030年までにデブリの発生をネットゼロにすること、つまり1個打ち上げて1個除去することを発表しています。このようなルールは、私たちのビジネスのTAMを広げ、市場を広げていくことになります。
成長が大いに期待される軌道上サービス市場
これらの理由から「軌道上サービス」はつい数年前までありませんでした。しかしながら、今後11年間の累計で2兆5,000億円の市場になるという調査予測が出ています。このような市場を私たちはグローバルに獲得していく必要があります。
我々が先駆的に動いて技術を示しながらルール作りにも貢献し、併せて事業も作っていきます。それによって市場のリーダーになっていくことを考えています。
戦略的に重要な地域からの政府受注を推進する体制を構築
市場で我々の拠点をどこに置くかに関しては、極めて戦略的に動いています。スライドのグラフに各国の宇宙関連支出の多い国々を並べています。特に支出の多い西側諸国に拠点を構え、それらの国々で事業拡大をできるように動いており、実際に拠点のあるすべての国でなんらかの受注実績を有しています。
拠点:各国に根付いたローカルカンパニーとしてのプレゼンスを確立
宇宙はグローバルですが、リージョナルでもあります。各国に根づいたローカルカンパニーとして活動しており、各国にクリーンルーム、研究開発拠点があり、各国でサービスを提供できることが我々の大きな強みです。
これは軌道上サービス市場のみならず、宇宙業界でも例を見ないグローバル企業だと考えています。
当社が開発する衛星
私たちはそのような取り組みにより、具体的にはこのような衛星を開発しています。スライドに載せていない開発も進めており、今後加速していく予定です。
売上収益の将来成長要因
松山宜弘氏(以下、松山):「軌道上サービス」業界は、他の宇宙セクターと同様に段階を追って成長していくと想定しています。現時点ですでに、基礎的な調査研究だけでなく具体的な政府機関からの需要も現れてきています。このような政府との取り組みが進展していくと民間需要が高まっていくため、今回は民間需要をドライバーとしたさらなる市場の拡大を期待しています。
受注残高 (想定受注分含む)
このような市場の拡大を背景として、当社の受注残高は2年前と比較して18倍に伸びており、285億円に達しています。さらに、直近発表した「ELSA-M フェーズ4」や「ADRAS-J2」などの大型契約を受け、この大部分が契約済みのものということになります。
また、弊社の提案の範囲内で、費用を全額負担いただける案件の比率もスライド下段にあるとおり大きく増加しており、収益性の向上も進んでいきます。
政府機関需要による強固なパイプライン
私どものパイプライン戦略は着実に実現しています。直近だと、スライドの3番の「ELSA-M フェーズ4」を契約し、また7番の「ADRAS-J2」についても、本日開示したとおり明日契約します。
「ADRAS-J2」は契約額が約120億円(税抜)であり、もともと当社が想定していた114億円(税抜)を大きく上回るものでした。また、6番の「APS-R」は契約額を約140万米ドル増額することに成功しました。
今お伝えしたものは、すべて以前お伝えした計画を着実に実現するものです。今後、4番の「COSMIC フェーズC」に加え、8番の「LEXI-P」、9番の「K-Program」の受注に注力していきます。これらのパイプラインは、当社のプロジェクト収益や収益性の向上に大きく貢献すると期待しています。
政府機関需要に基づく民間需要の拡大
先ほどお伝えしたとおり、政府ミッションにより将来の民間需要が喚起されていきます。例えば「EOL」サービスの場合、「ELSA-M」ミッションが将来の「EOL」サービスにつながっていき、今軌道上にある568機のドッキングプレートが鍵になっていきます。
スライド上段の折れ線グラフに、これまでに打ち上がっているドッキングプレートの数を示しています。例えば2021年度に打ち上げたドッキングプレート付きのお客さまの衛星102機は、寿命が5年から7年程度であるため、2026年度ないし2027年度頃には軌道降下を開始します。
当社は保守的に見て、この中で7パーセントから8パーセント程度は故障して自力で降りてこられないのではないかと想定しています。これらの故障機を対象に、1除去あたり800万米ドルから1,300万米ドルくらいをお支払いいただき、「EOL」サービスを提供することを計画しており、非常に大きな収益機会となります。
また、「LEX」サービスについては「LEXI-P」ミッションというものが将来の「LEX」サービスにつながっていきます。静止軌道では今後毎年20機から30機くらいの衛星の退役を想定していますが、その中から毎年1件、2件程度の「LEX」の寿命延長サービスの契約を獲得することを目標としています。
これは1件あたり1億2,100万米ドルから2億1,500万米ドルほどの収益機会となるため、私どもにとっては非常に大きな事業機会となってきます。
当社の収益認識
当社の収益認識についてです。私どものプロジェクトは、競争入札を経て採択、契約されるものであり、その後設計からサービス提供まで当社が担うものです。
政府案件の場合、お客さまの支払いはマイルストーン支払いという形態になっており、いくつかの事前に定められた時点で審査を経てお支払いいただくものとなっています。これらのマイルストーン期間中は、一定額を定期的に収益認識していくかたちになります。
また、いくつかの案件ではIFRSの規定に基づき、収入を売上収益ではなく政府補助金収入と、その他の収益として計上する場合があります。これはあくまで会計上の取り扱いの差であり、プロジェクトの性質として何か差異があるということではありません。
したがって、当社ではすべてのプロジェクト活動から得られる収入を計測する指標として、売上収益と政府補助金収入の合計であるプロジェクト収益というものを採用しています。
プロジェクト収益 (売上収益+政府補助金収入)
2024年度のプロジェクト収益は46億6,700万円で、これは過去2年間の年平均成長率で126.4パーセントというものでした。今期も好調なパイプラインを背景に昨年対比3.7倍の増加、金額にして180億円を業績予想として示しています。
売上総利益
トップラインの急激な伸びをもとに、今期は売上総利益を損益分岐近辺まで持っていくことを目指しています。
研究開発費
研究開発費は今期に過去最大となるものの、来期以降の大幅な減少を見込んでいます。弊社の研究開発費には、大きく3つの構成要素があります。
1つ目が純粋な研究開発費で、こちらは金額としてはさほど大きくありません。
2つ目が補助金案件に関する費用です。先ほどお伝えした、収入が政府補助金収入として計上される案件では、その費用が研究開発費に計上されることになります。
しかし、これは当然ミッションの費用であるため、性格としては売上原価に近いものとなり、政府補助金収入でカバーされるものです。このような補助金案件に関する費用は、「SBIR」あるいは「APS-R」といった補助金の案件が完了すると計上が終了するものになります。
3つ目が未受注のプロジェクトに関する先行開発費です。これはスケジュールに間に合わせるために、一部プロジェクトの契約前に一部分の開発を開始することによる費用です。
営業損失/利益
現時点では「LEXI-P」に関わるものが多いですが、これは契約の締結後にはなくなるものです。特にこの部分が来期以降に消失することで、研究開発費は来期以降大きく減少することを期待しています。以上の結果、営業損失は今期で底打ちとなり、来期は損益分岐に近い水準を目指していきます。
損益分岐達成に向けた想定ロードマップ:サマリー
損益分岐達成に向けた道筋を、今までご説明した内容に基づきスライドに整理しています。パイプラインの成長、弊社の提案の範囲内で費用を全額負担いただける案件の増加、研究開発費の減少、販管費の成長率減少などを通じて、売上総利益は今期、営業利益は来期に損益分岐に近い水準を目指しています。
長期利益率目標
長期的な利益率としては、売上総利益で30パーセント台半ば、営業利益率で20パーセント台半ばを目指しています。
財務戦略
足元の現金残高は非常に潤沢であり、フリー・キャッシュ・フローの損益分岐までに必要な現金は確保しています。これは本当にみなさまにご支援いただき、上場時に201億円調達したことによるものであるため、あらためて御礼申し上げます。
今後は、想定以上にパイプラインの受注が増加したり、魅力的な投資機会が生じたりしない限り、株式調達は想定していません。
豊富な経験と広い人脈を兼ね備えた、多様性に富む経営陣
岡田:このような市場を創造しながら、ディープテックでグローバルに展開するという非常にダイナミックな事業には、強いリーダーシップチームが必要になります。私たちのリーダーシップチームは、専門分野・年齢・性別・国籍などが非常に多様であり、それが私たちのグループを強くしていると考えています。
質疑応答:SpaceLogistics社との差別化について
質問者:SpaceLogistics社を競合企業として意識しているかと思いますが、SpaceLogistics社の技術と御社の技術の違いについて解説をお願いします。
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