AGENDA
鳥越慎二氏(以下、鳥越):みなさま、こんにちは。株式会社アドバンテッジリスクマネジメント代表取締役社長の鳥越です。本日は当セミナーをご視聴いただき誠にありがとうございます。
本日は私から、会社概要、先日発表した「中期経営計画2026」、株主還元の3点についてご説明します。よろしくお願いします。
会社概要 | コーポレートメッセージ・企業理念
鳥越:当社は、企業の人事の方々とともに、企業の人事課題を解決する会社です。「企業に未来基準の元気を!」というコーポレートメッセージを掲げ、仕事に取り組んでいます。
働く人々が元気であるということは、「なにか大きな課題を抱えており、生産性が落ちている」ことが起きていない状態、もしくは、生産性の低下を未然に予防できている状態を指します。加えて、働きがいを感じながら、いきいきと仕事ができていることも重要です。これをきちんと実現していくことが、我々の目的になります。
働く人がそのような状態であれば、会社にとっても、生産性の向上を通じて企業価値が向上していきます。
昨今は人口減少により、働き手が減ってきており、働く人の流動性も高まってきています。いかに優秀な人材を採用・定着させるかが、企業にとってクリティカルな課題になってきている状況です。
働きやすい環境を作ることで、そのような人々をひきつけ、定着させることができますので、人事課題の解決は会社にとっても非常に大きなメリットがあります。
また、働く従業員にとっても、会社にとってもWin-Winの関係は、良い状態であり、まさしく「働く人々が元気である」と言えます。当社はそのようなことを考えながら、仕事を行っている会社です。
会社概要 | 当社の事業を通じて目指すこと
鳥越:「ウェルビーイング」という言葉が使われるようになってしばらくが経ちました。心も体も社会的にも満ち足りた状態が、ウェルビーイングな状態であると定義されています。昨今は、企業活動のみならず、国レベルでも、「国民のウェルビーイングを実現しましょう」という動きがあり、この言葉が使われるシチュエーションが多くなってきました。
我々が取り組んでいることは、まさしくこのウェルビーイングの実現です。スライドに記載しているように、従業員のウェルビーイングな状態が、組織を通じて企業価値の向上につながっていきます。
その成果として、健康度の向上は当然ですが、人間関係も良くなり、創造性も促進され、今、非常に多くの企業さまが課題に抱えているエンゲージメントも向上します。また、その結果、生産性が高まり、離職率も低下していきます。このようなプラスのサイクルを実現しようという取り組みが、我々の事業です。
会社概要 | 沿革-1995年の創業から間もなく30周年
鳥越:当社の沿革です。30年の歴史を売上高推移のグラフで表しました。
当社は1995年に、私自身が創業しました。創業時の最初のビジネスは企業向けの保険の一種であるGroup Long Term Disability(GLTD)でした。日本語では「団体長期障害所得補償保険」という長い名前になります。
この制度は、病気やけがの発生によって長い間働くことができず、収入がなくなってしまった際に、それを補償するものです。
従業員のやる気を高めるために会社が福利厚生制度として導入するような制度で、これの代理店として、まずはスタートしました。保険会社ではないため、実際に保険を引き受けるというよりは、我々が制度を設計し、それを企業に販売していきました。それに加え、運営上で起こるさまざまな事務や、働くことができない方の保険金支払い以外のサポートも行いました。そのような事業から始まっています。
そして2002年に、EAPと呼ばれる、いわゆるカウンセリングサービスを始めました。このEAPはアメリカが発祥で、メンタルヘルスをはじめとする従業員の困りごとを気軽に相談できる窓口を作り、そこでカウンセリングやいろいろな相談を受けられるようなサービスを指します。当社ではこれを2002年に提供開始しています。
その後、2013年にエンゲージメント向上支援を開始しました。この背景には、「ストレスのみでなく、エンゲージメントも改善できないか」というお客さまからの要望がありました。
企業にとっては、従業員のストレス軽減が重要である一方、単にストレスがない状態では十分とは言えません。やはり働きがいがなければ、生産性は向上しないということです。
その後、2018年からは、フィジカルヘルスも含めた総合的な健康経営支援を開始しました。それまでは働くことができない方のサポートや、心の健康支援に取り組んでいましたが、この数年前から、いわゆる「健康経営」が経済産業省の指導のもと始まりました。「企業側が従業員の心と体の健康をきちんと実現していこう、これを経営課題として取り組みましょう」というものです。
そのような中で、企業から「体の健康は支援しないのですか?」と聞かれるようになりました。企業の方々からすれば、心と体の2つは密接に関係しているため、1つのベンダーから支援を受けるほうがなにかと便利です。そのような要望もあり、当社はフィジカルヘルスの分野にも参入しました。
実は、フィジカルヘルスに参入した理由がもう1つあります。体の健康というと、ウェアラブルデバイスや健康診断データといった、多種多様な情報を集めることに重きが置かれがちです。しかし、データを集めた後に健康を実現しようとすると、結局は生活習慣の改善が主となります。
病気は、たいてい遺伝子と生活習慣によって決まりますが、今のところ残念ながら遺伝子は変えられません。つまり、生活習慣を変えることでしか、病気の予防はできません。
ただ、生活習慣を変えることは、完全に心理学の話になります。行動変容と、変容した行動の定着化が重要で、これはまさしく心理学が得意としていることです。
現在、フィジカルヘルスのデータコレクションを行っている競合は数多く存在しますが、ほとんどの会社がデータを集めるのみで終わっています。医療情報、体の情報が医学的な領域だとすれば、生活習慣を変えるのは心理学の領域といえますので、我々の知見が活かせるだろうと考え、進出しました。
2019年には、休職者・復職者への支援サービスを拡大・リニューアルしました。当社は「GLTD」という制度を通じて、働くことができなくなった方への金銭面のサポートを行ってきましたが、働くことができなくなった方は、ある程度のパーセンテージで病気等が治ると仕事に戻られます。
ところが、特にその休職者の中でも多くの割合を占める、メンタルヘルス関連の休職者の場合は、戻る時に失敗するケースが非常に多くなっています。早く戻りすぎる、あるいは戻った後に適切な体制が構築できていなければ、それによって再発してしまいます。そして、何度か再発を繰り返すうちに、戻れなくなってしまうこともあります。
このようなことが起きてしまうため、予防や保険によるお金のサポートのみではなく、戻るところについても支援を開始しました。
休業者管理にあたっては、人事の方々にもさまざまな業務が発生します。休んだ時や休んでいる最中、そして休む直前も、さまざまな書類を用意したり、産業医との面談を設定したり、通常業務とは違う業務がある一方で、それらがなかなかシステム化されていませんでした。
ところが、今は産休を取得された方々もどんどん職場に戻るようになってきており、休職者・復職者の管理業務が急激に増えています。そのような状況にもかかわらず、未だに「Microsoft Excel」などを使って管理している状態になっていました。
そのため、復職のサポートや休職・復職に関する人事の業務支援サービスとして、SaaSシステムを開発しました。この時点で、お金のサポートのみではなく、休職、復職をさまざまな面からサポートするかたちで拡大したということになります。
コロナ禍明けの2021年、つまり前・中期経営計画の初年度には、ウェルビーイングDXプラットフォームというものを構想し、新サービスの提供を開始しました。当社の事業内容に対してウェルビーイングという言葉を明示的に使い始めたのが、この2021年以降になります。
それまではどちらかというと、LTD、EAP、エンゲージメント、そして体の健康を中心に、「従業員の方々のさまざまな困りごとを解決する会社」として取り組んでいました。
もともと意義のある事業内容だと思ってはいましたが、「当社はこれをやっています」という象徴的なキーワードがなかったため、「ウェルビーイング」という言葉と出会った時に「まさしく我々がやっていることだ」と思い、使うようになりました。
「我々のサービスがウェルビーイング実現のために存在しているのであれば、どのような全体設計にすべきなのか」とコンセプトもあらためて考え、それを形にしたのが「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」というわけです。
このプラットフォームでは、ストレスチェック、エンゲージメントサーベイ、勤怠情報、その他休職者情報など、「従業員が今どのような状態で働いているのか」という情報を1ヶ所に集め、ダッシュボードで可視化できます。
なおかつ、プラットフォーム上でデータ分析もできるため、組織の課題を見つけ、対策を打つことが可能です。その際には、カウンセリング、LTD、研修など、当社が保有するソリューションもご提案させていただいています。
つまり、これまで分散されていた当社のさまざまなサービスが、初めて1つのコンセプトの中に収まり、プラットフォーム上で結びつけられるようになったのです。これにより、お客さまにも当社の取り組みを詳しく理解していただけるようになりました。
実際に「これまで1つのサービスしか使っていなかったけれど、これも使います」「この領域も支援してください」と、複数のサービスを使う企業は急速に増えてきています。「ウェルビーイングを実現するための総合的なパートナーとして伴走してほしい」という依頼も、この3年間で増えています。
以上が当社の歴史となります。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社の沿革をかなり詳しくご説明いただき、見ている方もイメージが湧いたのではないかと思います。GLTDの代理店として創業された、そもそものきっかけは何だったのですか?
鳥越:今の事業内容を見て、「鳥越さんは昔から従業員のウェルビーイングに関して、なにかを実現したいという社会的課題を持っていたのですか?」とよく聞かれますが、実はまったくそのようなことはありません。
日経新聞の夕刊の一面に「GLTDという保険が日本で認可された」という記事が載っていたのを偶然見て、「アメリカでも売れているので参入できるのではないか。こんな保険があったら自分自身が入りたい」と思い、これをビジネスにしようと始めました。
ですので、今の立ち位置は計画していたものではなく、お客さまの要望を受けて拡大していき、振り返ってみると「これをやっていました」という展開の仕方です。
坂本:沿革のグラフを見ると、売上高がいきなり上がっている時期がありますが、なぜ上がっているのでしょうか? まずは1999年の部分について教えてください。
鳥越:1999年の金融危機があった時に、日本長期信用銀行(長銀)、日本債券信用銀行(日債銀)の2行が国有化されました。実は銀行に限らず、日本の会社のほとんどが機関代理店と呼ばれる損害保険の代理店をグループ内に持っています。長銀と日債銀も持っていましたが、この2行の場合は、貸付先にもいろいろな保険を売っており、たくさんのお客さんを有していたため、そこを買収しました。
小が大を飲む買収だったため、1999年に売上高が急激に上がっています。
坂本:規模が大きくなられた後の2005年はいかがでしょうか?
鳥越:2002年にEAPサービスが順調に伸び始め、LTDの普及スピードも少し高まったことが要因です。2006年に上場して、2008年まで伸び続けています。
坂本:最後に、2016年の伸びについても教えてください。
鳥越:2014年に労働安全衛生法が改正され、ストレスチェックが義務化されました。当社はEAPサービスの提供開始時から、法令と同じストレスチェックを提供していたため、それが法律化されたことで利用が増え、売上高が伸びました。
会社概要 | 事業セグメント
鳥越:事業内容については、先ほどほとんどご説明したため、ここでは簡単にお話しします。
当社の事業セグメントは開示上、メンタリティマネジメント事業、就業障がい者支援事業、リスクファイナンシング事業の3つとなっています。ただ、決算説明資料等においては、メンタリティマネジメント事業、健康経営事業、LTD事業、両立支援事業、リスクファイナンシング事業の5つとしています。
メンタリティマネジメント事業は、ストレスやエンゲージメントの状態を測り、課題に対する解決策をカウンセリングを含めて提供するビジネスです。
健康経営事業は、健康診断結果のデータベース化、健康診断の予約サービス、産業医の先生や保健師の方々の紹介を行っています。
LTD事業では、長期間働けなくなった従業員のための保険を販売しています。
両立支援事業は、休業者の管理業務ソフトと、復職に向けたプログラムを提供しています。
リスクファイナンシング事業では、買収した代理店が多数保有していたアメリカンファミリー ファミリー ライフ アシュアランス カンパニー オブ コロンバス(現アフラック生命保険株式会社)のがん保険を販売しています。がん保険は終身保険で、手数料が継続的に入ってくるため、キャッシュカードのポジションとして取り扱っています。以上が主な事業セグメントです。
メンタリティマネジメント事業 事業内容
鳥越:各事業内容について簡単にお話しします。まず、メンタリティマネジメント事業です。
サービス内容として、システム面では課題把握のためのデータコレクション「アドバンテッジ タフネス」を活用し、法令で求められているストレスチェックを含む、エンゲージメントや生産性も測れるようなWebテストを提供しています。テストを受けた後にWeb上で結果を見ることもできます。
課題の解決策としては、カウンセリングやさまざまな研修、マネージャー向けの行動変容プログラムなどを提供しています。採用試験に用いる適性検査も取り扱っており、メンタル面の適性などを入社前に把握し、入社後に適切に育てていくために活用できるものになっています。
また、効果測定として「アドバンテッジpdCa(ピディカ)」というパルスサーベイを提供しています。一般的なパルスサーベイはエンゲージメントを測るために使われることが多いのですが、当社の場合は、同時に効果測定のツールとしてお使いいただくよう提案しています。
例えば、サーベイで課題を把握し、ソリューションを実行したものの、その効果を翌年のテストで測定するのはあまりにも冗長です。そのため、長期のトレンドと細かい分析は年に1度の「アドバンテッジ タフネス」、課題解決の効果測定や、前年からの動きを見たい場合はパルスサーベイと、両方使えるかたちにしています。
基本的には、どのような課題でもきちんと発見でき、見つかった課題についてはほぼすべて解決策を用意しています。
坂本:御社の「アドバンテッジ タフネス」というシステムは自社で作られていますか? それともどこかに委託しているのでしょうか?
鳥越:当社にはITメンバーが30名強いるため、少なくとも要件定義やプロジェクトマネジメントは社内で行っています。実際のコーディングなどは外部の方に依頼していますが、そのような意味では、「アドバンテッジ タフネス」「アドバンテッジpdCa(ピディカ)」も自社開発と言えます。
坂本:こちらのマネタイズとしては、1IDにつきどの程度を設定しているのですか? それとも企業ごとに月額で契約しているのでしょうか?
鳥越:基本的には従業員1人あたりの金額でチャージするシステムです。サーベイは1人あたり500円からで、調べる内容によって変わります。これに上乗せでカウンセリングを付帯するケースが非常に多いです。さらにコンサルティングを含むプレミアムプランもあります。
健康経営事業 事業内容
鳥越:健康経営事業です。今後はモバイルデータなども取り込んでいきたいと考えていますが、今のところは健康診断データを中心に取り扱っています。
先ほどご紹介したサーベイは自社開発ソフトですが、こちらのシステムは体の情報をデータベース化する会社からOEM供給を受け、当社ブランドで販売し、データマネジメントしています。
スライド右側には産業医・保健師サービスと記載しています。大半の会社は産業医を配置する必要がありますが、これまではいわゆる「名ばかり産業医」、ほとんど何もしていないケースが多くありました。ただ最近は、高ストレス状態の従業員に医師面談が必要になるなど、現場でメンタルヘルスの問題が起きた時に産業医に頼るケースが増えてきました。
つまり、これまでどんな産業医・保健師でもよかった状態から、メンタルヘルスについてしっかりと相談できる医師のニーズが急速に高まっています。当社が紹介する産業医や保健師はメンタルヘルス分野での経験が豊富な方が中心のため、こちらも伸びています。
LTD事業 事業内容
鳥越:LTD事業です。スライド左側の図は縦軸が収入の割合、横軸が時間経過を表しています。健康な時は100パーセントの収入がありますが、傷病により働けなくなると、まずは有給休暇や病欠を取得する期間があり、その後は健康保険から傷病手当金と呼ばれるものが給付されます。
ただし、これは最長で1年半、標準報酬月額の3分の2程度しか給付されず、収入が一気に落ちてしまいます。さらに、その傷病手当金の給付が終わると支払いはゼロになります。この収入がなくなった期間を保険でカバーしていこうという仕組みがGLTDです。
特徴は定年まで保険金が支払われ続けることで、今後30年、40年働けない方には毎月支払われます。私自身も、この商品を見た瞬間に入りたいと思いました。
日本は死亡保険大国で、加入率が異様に高く、金額も非常に大きい一方で、世帯主が働けなくなった時の保険はほぼ何もありません。そのため、働けるうちはなんとかなりますが、働けなくなると困窮者が続出します。働けなくなった人の介護なども発生することを考えると、ある意味で一番困る時の保証がない状態です。それをサポートしようという制度がGLTDです。
しかし、これを個人に売ろうとすると難しく、あまりうまくいきません。なぜかというと、いわゆるモラルリスクと呼ばれる、不正な使い方が増える可能性があるためです。
坂本:メンタル不調などで、そのようなリスクが考えられますね。
鳥越:おっしゃるとおりです。例えば、本人が適当に「働けません」と言って、知り合いの医師に診断書を書いてもらうこともできてしまいます。保険会社からすると、そのような不正が発生する可能性を考え、一つひとつ調べなければなりません。
ところが会社単位で加入すると、企業側で「従業員が休職しました」ということをきちんと管理しているため、モラルリスクが大幅に低下します。そのような意味もあって、必ず企業を母体とする団体保険として全員加入型で契約していただき、そこにみなさまが任意で上乗せするかたちにしています。
我々もまずは会社に営業に行き、「会社の福利厚生としてこの制度を導入しませんか? 個人では入れませんので」とお話しし、検討いただくかたちで進めています。
現在、国内においては従業員数1,000名以上の会社の中で、20パーセント弱の普及率となっています。しかし、アメリカではすでに100パーセント近くまで普及しており、市場の成長余地は青天井です。
両立支援事業 事業内容
鳥越:両立支援事業の「ADVANTAGE HARMONY(アドバンテッジ ハーモニー)」は、休業者のデータ管理、タスク管理、休業者の方が使えるマイページ、心の不調により休まれた方が職場復帰するためのリワーク支援「eRework(イーリワーク)」、さらに育児・出産で休まれた方向けのサービス「Career & Baby(キャリア&ベビー)」などを搭載しています。
これを休業者へのサポートとして、ダイバーシティというコンテクストで利用される企業も徐々に増えています。競合はほぼいないため、実質独占しているような状況です。
事業環境 | 私たちが向き合う課題
鳥越:事業環境です。ご紹介した当社のサービス全体が、社会的な動きに照らし合わせるとどのようなポテンシャルを持っているのかをお話しします。
まず社会全体として、働く人を良い状態に持っていくことへの関心が高まっており、旬のテーマと言えます。経済産業省が選定する「健康経営優良法人」に、大企業も中小企業も、毎年何千社という会社が申請しています。
従業員の心と体を健康に保つことが企業価値の向上につながると考えられるようになり、「経営課題として従業員の健康を管理しましょう」という流れができています。当社も健康経営に取り組んでおり、おかげさまで経済産業省が50社を選定する「健康経営銘柄」の1社に選ばれています。これはまさしく社会的なニーズが我々の事業に合致していると考えています。
もう1つは、人的資本経営です。「人的資本開示」という言葉を耳にされることがあると思いますが、この背景には非財務指標の開示という流れがあります。投資家の方が会社を評価する時に、B/SやP/Lのみでは会社のポテンシャルを把握できないため、本当のポテンシャルを知るために非財務情報の開示を求めるというものです。
その情報の1つである人的資本は、会社の成長力やポテンシャルを測る際に非常に重要です。開示が求められる情報の中には、従業員のエンゲージメントやストレスのレベル、休業者の数なども含まれています。
この人的資本開示が進んでいく中で、当社のサーベイ結果を開示する企業も増えてきている状況です。これは大きな変化だと考えています。正直なところ、法律で定められている必要最低限のストレスチェックの実施のみに終始している企業はまだ多くあります。
坂本:おっしゃるとおりです。
鳥越:ただ、結果を開示することになれば話は違います。もし従業員のストレスレベルが高い状況で会社がなにも対策していないとわかれば、投資家の方からも不満の声が出ると思います。
したがって、人的資本開示が進めば、我々の取り扱うさまざまな人事情報が開示対象になり、「それを改善してくれ」という投資家からの要望を受けることで、企業も本気になることが期待できます。
最後に生産性です。長きにわたって「日本の生産性は低い」と言われ続けていますが、相変わらずOECDの中でも非常に低いままとなっています。これを高めるためには、さまざまなポイントがありますが、従業員がストレスを感じている、あるいはエンゲージメントが低いために、生産性が上がらないということが考えられます。
以上3つが最近の社会課題としてよく言及されていますが、いずれも我々のビジネスにとって追い風となっています。
事業環境 | 私たちが向き合う課題 ー 健康経営
鳥越:経済産業省の「健康経営優良法人」に関しては、2023年時点で3,520社が申請されています。大規模法人のみでこの数になるため、中小企業も含めるとこの倍以上も申請されている状況です。企業にとっては人材の定着や、融資の際に優遇されるなどのメリットがあるため、注目度が非常に高まっています。
事業環境 | 私たちが向き合う課題 ー 人的資本経営
鳥越:人的資本開示はもともとアメリカから入ってきた考え方で、投資家の方々の要求を受け、非財務データの開示が進んでいます。
事業環境 | 直近のトピックス(ご参考)
鳥越:生産性については、日本はアメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアに比べ、はるかに低い状態です。これをどのように上げていくかが非常に重要な課題だと思います。
事業環境 | メンタリティマネジメント事業
鳥越:市場のポテンシャルについて、まずはメンタリティマネジメント事業からお話しします。ストレスチェックは法令で義務化されているため、すでにすべての対象企業が実施しています。ただ、チェック後のデータ活用はまだ十分ではありません。カウンセリングの結果も同様です。
我々のストレスチェック・エンゲージメントサーベイはリプレイスで導入されることが多いですが、ストレスチェックの義務化から10年が経とうとしており、この数年で大企業から「毎年測っているがほとんど変化がない。データを活用したほうがよいのではないか?」という声が上がってきています。
加えて、従業員エンゲージメントへの関心が着実に高まってきており、こちらの測定ニーズもあります。そのため、「当社のシステムはエンゲージメントとストレスが同時に測れます。バラバラに導入するよりも安いですよ」とご説明すると、「それならば今までのストレスチェックから切り替えて、エンゲージメントとセットで実施しよう」ということになります。
市場が順調に伸びているため、切り替えのマーケットも大きく、エンゲージメント診断の市場もまだ成長の余地があります。現在、当社のシェアは概算で10パーセント弱と、さらに大きく伸ばせる状況です。
当社以外のシェアについてよく質問をいただきますが、非常に小さなプレーヤーが多くいるほか、人事関係のシステムに無料付帯されているケース、また市販のソフトを使って産業医の先生が実施しているケースなど、さまざまなものがあります。今後どのようにシェアを獲得していくかについては、我々のチャレンジとなります。
事業環境 | 健康経営事業
鳥越:産業医・保健師の紹介サービスおよび健診についてです。産業医・保健師が必要な事業所が全国に約17万事業所あります。当社はまだ450事業所しか紹介しておらず、こちらもまだポテンシャルがあります。
健診結果のデータベース化に関しては2桁近く成長しており、マーケットも伸びるため、これからさらに拡大していく見込みです。
事業環境 | LTD事業
鳥越:LTDについては、アメリカにおける2022年の市場規模が保険料ベースで約1兆6,000億円となっています。
人口差もありますが、アメリカ並みに伸びた場合、7,000億円から7,500億円規模に拡大するポテンシャルがあると見込んでいます。しかしながら、今の市場は400億円程度です。まだ15倍以上の余地があるということで、こちらも今後の伸びしろがあります。
事業環境 | 両立支援事業
鳥越:両立支援事業は、休業者数がある程度の規模になる組織が対象となり、1,000名以上の企業をメインターゲットとしています。
ポテンシャルとしては4,000社ぐらいありますが、当社の導入先はまだ79社です。競合がほぼいない状態を踏まえると、今後もまだ伸びしろがあります。
休業者数も増えており、特にメンタル不調による休業は増加傾向にあるため、休業者管理および復職支援のニーズはこれからも高まるだろうと見ています。ここまでが当社の事業環境認識です。
当社の強み
鳥越:当社の強みは、企業のさまざまな課題の解決にワンストップで伴走できることです。
そして非常に重要なポイントとして、当社の競合はほぼすべて部分競合となっています。例えば、ストレスチェックの競合、カウンセリングの競合、エンゲージメントの競合、フィジカルデータの競合とも戦っています。
裏を返すと、ほぼすべての競合は1つのエリアの1つのファンクションのみを提供し、それを使って「あとは利用者のほうで対応してください」という状態です。ただ、実態としてはそれではなかなか進みません。もちろん専門家もいないため、データが分散していればクロス分析もできません。しかし、我々のサービスでは、すべてのデータコレクションを手伝うことができます。
一括で見ることができ、どのソリューションも提供できるという総合性が、やはり企業に対して最大のアピールポイントとなります。したがって、課題解決の伴走者として我々が選ばれるケースが多くなっています。
また、まだこれからではあるものの、ビッグデータも当社の強みの1つです。現在、約417万人の従業員にさまざまなサービスを提供しており、ストレスチェックのデータも約300万人分あります。そのようなデータを、今後はマネタイズも含めて活用できることも当社の強みといえます。仮に他社が参入してきても、そこまで早く追いつけないのではないかと思っています。
当社の強み | 企業の課題解決にワンストップで伴走 ー DXプラットフォーム
鳥越:プラットフォームは「情報の収集」「見える化」「それに対するソリューション」の3つあり、さまざまなサービスをほぼマルチで持っていることになります。
当社の強み | 企業の課題解決にワンストップで伴走 ー 多彩なソリューション群
鳥越:スライドの図では、先ほどからご説明しているさまざまなサービスが、どのエリアに当たるのかを表しました。心の支援、体の支援、両立支援で区別し、課題の見える化から施策までご紹介しています。
当社の強み | 導入実績
鳥越:利用企業は大手が中心で、規模としては700名から800名以上の企業がほとんどです。
また、健康経営優良法人の銘柄に「ホワイト500」というものがあります。「健康経営銘柄」や「ホワイト500」のうち、約3割は当社のソリューションを導入している企業となっています。このように、きちんと取り組む方々に、当社のサービスを非常によくアピールできていると思っています。
中期経営計画2026の骨子
鳥越:中期経営計画の骨子として、「効果につながるプラットフォームとソリューションをより多くの企業に提供し、ウェルビーイング領域における圧倒的地位を目指す」ということを掲げています。
ストレスチェックやLTDは、おそらく当社がNo.1のポジションにいます。しかし、エンゲージメント領域などでは、まだ我々が追いかけるポジションにいます。
すべての領域で1番を目指すには、プラットフォームとソリューションを有機的に結び付けること、そして、効果につながっていることが重要だと思います。人に対する投資はどうしても「やりっ放し」になりがちで、効果があったかわからないケースがほとんどです。
例えば、研修の満足度についてはアンケートを取りますが、「本当にそれが生産性につながったのか?」ということは、誰もわかっていないのではないかと思います。
当社の特長は、ストレス、エンゲージメント、生産性といった指標を毎年測っている点にあります。パルスサーベイもあるため、施策の実施前後でどのように数字が変わったのか確認して、効果をある程度把握できると考えています。
このように我々のチャレンジは、なんとなく雰囲気で行いがちな人的投資の効果を見える化しようというものです。「これを行ったことでこのぐらいストレスが改善され、その結果として生産性がここまで上がった」ということを示せれば、さらに普及も進むと考えており、中期経営計画で注力したいポイントです。
中期経営計画2026の重点テーマ ー 全体像
鳥越:「中期経営計画2026」の重点テーマの「3.新たな取り組みの推進」のうち、カウンセリングおよびストレスチェックに関する取り組みを、ピックアップしてご説明します。
これまで当社は、自ら販路を拡大し、サービスを開発してきましたが、多くの小規模プレーヤーは、ストレスチェックシステムやカウンセリングの予約システムの開発にはなかなか投資できません。
そこで、当社が作ったストレスチェックとカウンセリングの支援システムをインフラとして提供することで、いわゆるフランチャイズのような仕組みを整えたいと考えています。
当社のソリューションも提供することで、市場のプレーヤーをネットワーキングし、面を広げていきたいです。
全社数値目標
鳥越:中期経営計画の数字についてです。2026年度末時点で売上高は90億円から95億円程度で、おおよそ年率10パーセントの成長を目指します。営業利益は13億円から16億円を仮定して動いています。
株主還元
鳥越:株主還元です。従前は、連結配当性向を30パーセントから35パーセントとしていましたが、前期の決算発表時に見直し、35パーセント以上に変更しています。
着実に成長していきながら、M&Aも行いたいと考えているため、資金はもちろん必要です。その一方で、株主還元は非常に重要だと考えているため、配当に関してはアグレッシブに行っていきます。
また、自社株買いを実施しており、6億円、100万株を上限に取得予定です。発行済株式が約1,700万株あるため、そのうち約6パーセント弱になります。取得した株式は消却することを発表しています。
質疑応答:海外の同業他社について
坂本:「海外の同業企業など、御社が目指す上場企業はありますか? また、その企業に比べ、御社に足りてない部分があれば教えてください」というご質問です。
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