主要トピックス

上田桂司氏:本日はお忙しい中、決算説明会のライブ配信にご参加いただき、誠にありがとうございます。株式会社ASNOVA代表取締役社長の上田です。本日は2024年3月期の決算についてご報告します。よろしくお願いします。

まずは、2024年3月期の主なトピックスについてご説明します。2023年12月25日に東京証券取引所(以下、東証)グロース市場に上場しました。2022年4月の名古屋証券取引所(以下、名証)ネクスト市場への上場に続き、その翌年に2年連続で上場できたことは、多くのみなさまのご支援のおかげであり、本当に感謝申し上げます。売上高も過去最高となり、機材センターも計画どおりに開設できたことで、今期はさらなる成長に向けて動いていきたいと思っています。

会社概要

2024年3月期の業績のご説明に入る前に、あらためてASNOVAについて簡単にご紹介します。

当社は2022年4月に名証ネクスト市場へ新規株式を公開し、その翌年の2023年12月に東証グロース市場へ上場を果たすことができました。非常にハードルの高いチャレンジでしたが、スピード感を持ってステップアップできるように、社員一丸となり、東証グロース市場上場に向けて励んできました。

今回の上場は、これからの当社の成長の第一歩と考え、初心を忘れず、企業価値の向上にさらに取り組んでいきたいと考えています。

ASNOVAの主要事業:足場レンタル

当社は「くさび式足場」をレンタルしています。くさび式足場は、主に住宅や、低中層の建物で使用されており、ハンマー1本で簡単に設置や組み立てができる点が特徴です。施工、運搬、保管の効率の高さが3つの大きな特徴となっています。

低中層マンション、そして住宅や商業施設、高さ45メートルまでのビルなど、大多数の現場でくさび式足場が使用されています。当社はこのくさび式足場に特化することで、幅広いニーズに応えることができています。お客さまは、事業規模が比較的小さな足場施工業者からの依頼が大半を占めています。足場施工業者以外にも、リフォーム会社、工務店、塗装・防水会社、その他のイベント会社など、多くの業種からレンタルの依頼があり、毎年200社から300社ほど新規のお客さまが増えています。

くさび式足場以外にも、高層ビルや高層マンションに適した枠組足場や、次世代足場といった、さまざまな種類の足場がありますが、当社はこの枠組足場や、次世代足場をレンタルする大手レンタル会社とは違い、また主な取引先も違うため、大手のレンタル会社と棲み分けができています。

現在約2,800社のお客さまと取引をしていますが、大手ゼネコン、大手建設会社に依存していないため、1社あたりの売上高が小さく、リスクが分散されている点も大きな特徴です。

足場レンタルを“広げる”2つの事業

足場の需要は年々増加しています。この需要にお応えするため、足場の保有量を増やすと同時に、全国だけではなく、海外にも足場レンタル事業を広げていきたいと考えています。「ASNOVA STATION」「ASNOVA VIETNAM」の2つの事業を展開していますので、それぞれについて詳しくご説明します。

ASNOVA STATION

当社は現在、自社の機材センターを21拠点展開していますが、「近くで借りたい」というお客さまの声にお応えするには、全国にさらなる拠点展開が必要だと考えています。そのために、パートナー企業と連携したレンタル事業を展開していきたいと考えています。

これにより、スピード感を持って拠点を展開することができ、「いつでも、近くで、安心して足場を借りることができる」を実現したいと考えています。

ASNOVA VIETNAM

2つ目の取り組みは「ASNOVA VIETNAM」です。海外での足場レンタル事業として、2022年10月に現地法人を設立しました。経済成長が著しいベトナムにおいて、日本で培った足場レンタルのノウハウを活かし、大きくレンタル事業を成長させていきたいと考えています。

3つの優位性

あらためて、当社の優位性についてご説明します。お客さまが足場のレンタル会社を選定する際に、最も重要視される点は、「いつでも」「近くで」「安心して」借りることができるということです。毎年お客さまにアンケートを実施していますが、必ずこの3点を重要視したいとの声が上がってきます。

当社は、豊富な在庫量を保有することで、「いつでも借りることができる」を実現し、「近くで借りたい」という声にお応えするため、全国各地に拠点を構え、品質と対応力を高めることで、2,800社を超えるお客さまに「安心して」ご利用いただいています。この3つが、同業他社と比較した優位性となっています。

収益構造のイメージ

投資フェーズと回収フェーズにおける収益構造です。投資フェーズでは、売上高が伸長した分のみが営業利益の増加となりますが、いずれ回収フェーズに移り、減価償却費が減少すると、大幅に営業利益率が高まっていきます。

足場の減価償却期間は5年間ですが、実際は20年、30年と長く使用することができます。そのため、減価償却が終われば、大きく利益が向上する収益構造となっています。ちなみに、現在すでに償却済みの足場が約100億円あります。

業績ハイライト

ここからは、2024年3月期の業績についてご説明します。まずは業績ハイライトです。

売上高は前期比20.5パーセント増の37億8,500万円、営業利益は前期比86.1パーセント増の3億4,900万円となりました。当期純利益はベトナムでの投資が大きく、連結では2億1,000万円で着地しましたが、国内単体では3億300万円となっています。

損益計算書(前年同期比)

損益計算書です。資材高騰の影響もあり、販売よりもレンタルのニーズが非常に多い年でした。利益率はレンタルのほうが大きいこともあり、前年同期比で86.1パーセント増と、大幅な増益で着地しました。

また、新規のお客さまが大きく増加したこともあり、レンタル売上も大きく増収しました。

業績推移

業績推移です。すべて順調に推移しています。引き続き、市場のニーズを取り込みながら、成長させていきたいと考えています。

営業損益増減要因分析

前期は24億円の投資、機材の高騰、機材センターの出店もあり、売上原価が大きく増加しました。しかし、お客さまも足場購入を控える傾向にあり、レンタルへの移行が進んだことで、機材の高稼働率が続いた年となりました。通期の平均稼働率は78パーセントと、昨年に引き続き高稼働となりました。これにより、営業利益も増益となりました。

貸借対照表概要

貸借対照表の概要です。足場への投資を積極的に行ったことで、賃貸資産である固定資産が大きく増えましたが、同様に金融機関からの借入により、固定負債も増加しています。

時価評価差額(償却済資産)を含んだ資産

時価評価差額(償却済資産)を含んだ資産についてご説明します。会計上の資産では、時価評価差額を含んでいませんが、時価評価差額を含んだ資産は、スライド右側の図のようなイメージとなっています。

時価評価差額を含んだ場合、会計上の資産より安全性は高いと認識しています。償却を終えた後も、足場は長期にわたって使用できることがその理由だと考えています。

顧客数と現場数の推移

ここからは、2024年3月期の重要指標についてご説明します。前期は315社の新規顧客を獲得することができました。今期は400社の新規顧客の獲得を目指していきます。また、現場数も徐々に増加しており、3月末時点で4,244現場に足場を貸し出ししています。

拠点数の推移

前期は自社で直営の機材センターを2拠点開設しました。また、パートナーを通じた拠点展開として、新たに7拠点を展開することができました。合計36拠点の機材センターで、足場を借りることができる体制を作っています。

足場機材への投資額の推移

前期は24億4,700万円の足場投資を行いました。2024年3月末時点で約147億円の足場を保有しています。お客さまがいつでも借りることができるよう、今後も投資を継続していきます。

足場保有額と稼働率の推移

機材の保有量にこだわりながらも、適正な稼働率が維持できるよう、毎年足場の投資を行っています。前期は24億円以上の投資を実施しながらも、通期平均で78パーセントの稼働を維持しています。

仮設機材総合サイト「ASNOVA市場」

2023年5月にリリースした、仮設機材総合サイト「ASNOVA市場」についてご説明します。こちらでは、ネット上で誰でも足場を購入することができます。

また、「ASNOVA市場」では足場を買い取り、その足場を販売することで、必要な場所や人に足場を提供し、足場を循環させることも目的としています。中期経営計画の方針でもある、循環型社会の実現に貢献したいと考えています。

2025年3月期の業績予想

ここからは、2025年3月期の見通しについてお話しします。まず、今期の業績予想です。売上高は前年比11.1パーセント増の42億500万円を見込んでいます。

今期はベトナムへの投資を積極的に行いますが、それらを加味しても過去最高益の4億3,200万円の営業利益を予想しています。国内事業のみで営業利益率で見ると13.8パーセントとなり、前期と比べ2パーセントほど改善する予想となっています。

2025年3月期の営業利益予想

営業利益について詳しくご説明します。国内の事業のみに限ると営業利益は5億7,300万円と、前年比の約1.64倍に増益する見込みとなっています。前期は大幅な投資をしたこともあり、売上原価も大きく増加することになりますが、それらの要因がありながらも大きく伸長すると予想しています。

また、ベトナム事業に利益の約24.6パーセントを投資しながらも、連結営業利益は過去最高の4億3,200万円を見込んでいます。

中期経営計画の基本方針

ここからは、2025年3月期から2027年3月期の第12期中期経営計画についてご説明します。中期経営計画の基本方針として、「足場レンタルの普及で循環型社会の実現に貢献し、明日の場を創りだす」を掲げています。この方針を、判断基準として事業に取り組んでいきたいと考えています。

3カ年の業績目標

3ヶ年の売上計画についてです。2027年3月期には、少なくとも売上高53億円を達成したいと考えています。営業利益については、2027年3月期には6億5,000万円の達成を計画しています。

当社の場合、足場の償却費が費用の大きな割合を占めるため、営業利益に加えてEBITDAも重要指標として認識しています。2027年3月期のEBITAは、前期に比べて約10億円の増加を見込んでいます。

成長戦略の全体像

ここからは、当社が成長するための戦略についてご説明します。大きくは、スライドに記載の4つを、成長のための戦略と考えています。一つひとつ詳しくご説明します。

戦略1:ASNOVAの拠点網拡大

1つ目の戦略は、機材センターの拠点網の拡大です。直営での機材センターの開設に加え、パートナーを通じたレンタル事業である「ASNOVA STATION」を、積極的に拡大していきます。

今期の目標としては、直営とパートナーを合わせて2025年3月期には43拠点、2027年3月期には57拠点の展開を目指していきます。

戦略2:新規顧客数拡大への取り組み

2つ目の戦略では、新規顧客数の拡大に力を入れていきます。例年は200社から300社ほどの新規顧客を獲得してきましたが、今期からは400社以上の顧客獲得を目指し、営業力を高めていきます。

戦略3:「仮設機材の総合サイト」本格稼働

3つ目の戦略は、2023年5月にリリースした「ASNOVA市場」の本格稼働です。「ASNOVA市場」は仮設機材の総合サイトで、ネット上で誰でも足場を購入することができます。

また、「ASNOVA市場」では、足場を買い取り、その足場を販売することで、必要な場所や人に足場を提供し、足場を循環させることも目的としています。中期経営計画の方針でもある、循環型社会の実現に貢献したいと考えています。

戦略4:ベトナムシェアNo.1を目指すための基盤強化

4つ目の戦略は、2022年10月に現地法人を設立した「ASNOVA VIETNAM」の経営基盤の強化です。まずは、ASNOVAの認知度向上と保有量拡大に向け、機材センターの新設を準備していきます。将来的にはベトナムにおいて足場レンタルシェアNo.1を目指していきます。

ASNOVAを支える取り組み

スライドは、ASNOVAの成長戦略を支える、人事制度の全体像を表しています。一貫性のある人事制度を構築し、個人の成長、そして会社の成長を支える人材を育てていきたいと考えています。

IR活動の方針

今後のIR活動の方針です。これまでも積極的に活動してきましたが、新たな取り組みを開始させ、より当社の認知度を高め、企業価値を向上させていきたいと考えています。

6月2日には質疑応答をメインとした説明会を実施します。このような取り組みはあまり聞いたことがありませんが、より当社のことを知っていただくために、IRの取り組みも積極的に行っていきます。

株主還元について

当社はまだ投資フェーズでありながらも、株主還元は重要な施策であると認識しています。

あらゆる施策を実施してきましたが、配当は累進配当を基本としながら、事業拡大と業績向上を優先とし、企業価値向上に取り組んでいきたいと考えています。

株価推移(株式分割後、終値ベース)

株価の推移です。2022年4月に上場してから、配当の実施、優待の導入、増配、優待の拡充、株式分割など、新たな投資家層の拡大や株価を意識しながら、株主還元の強化を図ってきました。

TOMORROW AND BEYOND

最後になりますが、当社は、多くの方が「足場」と聞けばASNOVAを思い浮かべるような、そのような企業を目指していきます。

足場レンタルという事業は、社会インフラを支えるために、非常に重要なビジネスでありながらも、まだ世の中で認知が進んでいません。当社が足場レンタルビジネスを普及させることで、多くの社会課題を解決し、多くの方に認知していただくことで業界の活性化に貢献したいと考えています。

以上が2024年3月期決算についてのご報告となります。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:中計最終年度での売上高と営業利益の国内外の内訳について

「中計最終年度での売上高と営業利益について、国内外の内訳を教えてください」というご質問です。

ベトナムの売上高は、およそ2億円から3億円の間と見込んでいます。営業利益は今期同様に、国内の営業利益の約20パーセントから25パーセントほどを投資する見込みを立てています。

質疑応答:中計以降の年成長率の変化について

「中計以降の年成長率はどのように変化する可能性がありますか?」というご質問です。

今期は前期と比べ約11パーセントの増収を見込んでいますが、目標としては15パーセントくらいの年成長率を考えています。

質疑応答:今後10年の年間当たりの投資額について

「年間当たりの投資額は今後10年でどのように推移しますか? ほぼ均等でしょうか?」というご質問です。

前期は24億円、今期も同様の投資額を見込んでいます。出店が続く限りは、20億円から25億円ほど投資したいと思っています。しかしながら、機材センターが出店できない限りは足場の投資ができませんので、10年続くかと言われると、その投資フェーズが10年続くとは思ってはいません。少なくとも、5年くらいは今のような足場の投資ペースが続くと考えています。

質疑応答:ベトナムでの受注状況や市況について

「直近のベトナムでの受注状況や市況について教えてください」というご質問です。

ベトナム経済は、直近の1年、2年は非常に低迷していました。今年の秋くらいに、経済はだいたい回復すると言われています。先月私も訪越し、実際にお客さまの声を聞いてきました。いよいよ今年秋以降から来年にかけて、大きな受注が見込めそうな雰囲気があります。今は少しずつ認知度を高めて、これからようやく足場レンタルの受注が始まるという状況です。

質疑応答:ベトナム事業の黒字化想定時期について

「ベトナム事業の黒字化は、いつ頃を想定しているのでしょうか?」というご質問です。

レンタル事業では、受注があればあるほど足場投資を行います。投資を行えば行うほど、減価償却費が増加します。償却済みの足場は、目安で言うと20億円から30億円くらいの償却済資産があって、そこから初めて利益が出ると見込んでいます。

そのため、現段階では急いで黒字化を目指すことなく、トップラインと受注を獲得し、足場の投資を積極的に行っていきたいと考えています。したがって、黒字化はまだまだ先になると想定しています。

質疑応答:今後の足場への投資割合について

「足場は今後どのような割合で投資していくのでしょうか? 基準等があれば教えてください」というご質問です。

足場の投資は適正な稼働率を維持しながら、積極的に行っています。前期は、通期平均で78パーセントほどの稼働率を保ちながら足場の投資を行っています。今後も20億円から25億円の投資を行っていきますが、同等水準の稼働率を維持しながら、足場投資を実施していきたいと考えています。

質疑応答:社長の保有している株式売却について

「直近で社長が保有している株式の売り出しは検討していますか?」というご質問です。

現段階では、私が保有している株式の売り出しは検討していません。

質疑応答:足場投資以外に今後増大する可能性のある費用について

「事業拡大に伴い、増大すると思われる費用は足場投資以外にどのようなものがありますか?」というご質問です。

足場投資以外には、機材センターの出店が一番大きな投資となります。機材センターは基本的に土地を購入しています。土地を購入した後に、足場が保有できる状態にするための工事費用が発生します。足場投資以外の大きな出費という部分で言うと、機材センターの出店くらいだと考えています。

質疑応答:利上げが進んだ場合の足場レンタルへの価格転嫁について

「今後、利上げが進んだ場合、足場レンタルへの価格転嫁は検討していますか?」というご質問です。

今のところ、大きな利上げになるとは聞いていませんが、今まで足場レンタルへの価格転嫁は、資材高騰による影響によって、直近で2度から3度行っています。資材高騰はある程度落ち着きましたので、今後は大きな要因がない限り、足場レンタルへの価格転嫁を実施することはないと考えています。