GAIAX MISSION
上田祐司氏(以下、上田):当社は「人と人をつなげる」というミッションを掲げて事業を進めています。まず、2023年1月から12月までの2023年通期のハイライトについてご説明します。
当社事業概要
事業概要です。企業に対し、SNSマーケティングを中心としたサービス提供やコンサルティング、システム開発を行うソーシャルメディアサービス事業と、シェアサービス、web3/DAO、自治体からの起業家輩出支援受託と、社外のスタートアップへの投資事業からなるインキュベーション事業の2つのカテゴリーがあります。
2023年12月期:ソーシャルメディアサービス事業
ソーシャルメディアサービス事業におけるハイライトです。トピックとして、スナップマート株式会社の発行済株式のすべてを取得して、完全子会社化しています。
スナップマート社は、クリエイター、特にスマートフォンで写真や動画を撮ったり、縦型の写真や動画をクリエイティブなかたちで世の中に提供するような方の集まるプラットフォームを運営しています。
当社はソーシャルメディア活用支援として、企業に対して幅広いサービスを提供していますが、スナップマート社がグループ化することで、クリエイティブ制作が強くなるとともに、クリエイターエコノミーの分野も取り込んでいくと考えています。
2023年12月期:ソーシャルメディアサービス事業
2023年2月に子会社化し、6月には登録クリエイターが30万人を越えたスナップマート社と、SNSクリエイティブ支援を行う当社事業GENIC LABを統合し、2024年2月より100パーセント子会社の株式会社CREAVE(クリーブ)として「価値共創マーケティング」を行っていく予定です。
2023年12月期:ソーシャルメディアサービス事業
ソーシャルメディアサービス事業におけるトピックです。SEOが非常に強く、多くの方が参照している「Social Media Lab」をリニューアルしました。いろいろなサービスの拡充に伴う措置です。
2023年12月期:インキュベーション事業
インキュベーション事業のトピックについてご紹介します。現在、インキュベーション事業は、自社でシェアサービスやブロックチェーンを活用したweb3/DAO領域のビジネスを行っていますが、もう1つスタートアップ支援というビジネスがあります。
こちらは、これまで培ってきました事業を作っていくノウハウを自治体等に提供するものです。どうすれば企業が軌道に乗っていくのか、当社が代行するかたちでサービスを提供しています。
2023年12月期:インキュベーション事業(web3/DAO)
DAOに関して、2023年12月期は数多くの取り組みを行ってきました。ピックアップした内容をご説明します。
ブロックチェーンの登場によってビットコインなどの暗号資産が生まれましたが、同じくブロックチェーンによって生まれた新しい組織の仕組みがDAO(Decentralized Autonomous Organization)です。中央集権ではなく、より民主的に透明性が高く組織運営ができる仕組みで注目されております。当社では、個人が主体となるシェアリングエコノミーをよりさらに進めるテクノロジーとして2015年から注目しており、同技術とその活用に取り組み、2022年より日本初となるプロジェクトをてがけてきました。
2023年12月期 第4四半期:インキュベーション事業(web3/DAO)
新卒採用の現場で、DAO組織を活用することを実施しました。採用活動の透明性・公平性を高める取り組みであり、非常に多くマスコミに取り上げていただきました。
また、このような事例を紹介する企業向けフォーラム「DAO FORUM2023」を開催し、500名以上の方にお申し込みいただきました。企業がユーザーとともに商品やサービスを共創していきたい、企業内で部署を越えたコラボレーションをしていきたいなど、関係者がフラットな関係でプロジェクトを進めたいというニーズが増えています。
フォーラムお申し込みの40%の担当者が「DAO活用の新規事業を検討中」という結果でした。このような方がDAOで新規事業を行う、もしくは社内で取り組む際に、当社がシステム開発やコンサルティングを行っていくかたちになります。
2023年12月期 第4四半期:インキュベーション事業(web3/DAO)
このたび「DAOX(ダオエックス)」を発表しました。これまでお客さまごとにシステム開発を行っていましたが、DAOのシステムを作りたいとなると、近しい要件が並びます。そのため当社でパッケージを作り、SaaSのように月額課金のシステムで提供する準備を行っています。
また、2023年にDAO型シェアハウス「RooptDAO」を発表していますが、シェアハウスにDAOを導入しました。無事に1年が経過したため、記者発表で結果をご説明しました。
こちらのシェアハウスを行っている巻組社は、通常、シェアハウスとして運営しているところと比べて、高い入居率を実現し、売上高1.7倍、利益率が赤字から37.5パーセントと大幅改善となりました。「DAOを導入すると具体的にどのようなメリットやどれくらいの売上・利益増がありますか?」という質問をよくいただきますが、その実績が1つ作れたと考えています。
そして、日本初の複数自治体の連合DAOである「美しい村DAO」を拡大しています。町長がデザインしたNFTの販売や体験ツアーの提供を行っています。
2023年12月期:インキュベーション事業(起業支援)
先ほどお話しした、自治体などから受注している企業支援の枠組みをいくつかピックアップしました。数多くの有力な自治体からお問い合わせいただき、当社が起業家及びスタートアップ輩出支援事業を受託しています。
北海道、東京都、福岡市などのプログラムを受託しています。福岡市のプログラムでは、開始4ヶ月で400名超の応募をいただくなど好評です。
2023年12月期:インキュベーション事業(起業ゼミ)
こちらのスライドでは起業をテーマにした探究教育「起業ゼミ」など教育機関向けの起業家教育の事例をピックアップしています。スタートアップ5ヶ年計画に基づき、小中高大での起業家教育に自治体・学校が力を入れており、それらを支援しています。
2023年12月期 出資先動向
ハイライトの最後として、出資先の動向をご紹介します。新規出資として、シェアリングエコノミーのサービスである、「教えたいと学びたいをつなぐまなびのマーケット」を掲げる「ストアカ」運営のストリートアカデミー社に出資しました。
デジタルIDとオンライン本人確認eKYCを展開するTRUSTDOCK社はeKYC導入社数No.1を獲得し、引き続き成長しています。
企業においても「TikTok」が使われるようになり、出資先のアディッシュ社が「TikTok」アカウントのリスク対策を開始しました。このようなかたちで事業を拡大しています。
2023年12月期 出資先動向
多拠点生活プラットフォームを提供するアドレス社は、クラウドファンディングで1億円弱の資金を調達しています。アドレス社と当社子会社のロコタビが提携して、世界中にいる日本人を囲むシェアリングエコノミーのサービスとして、世界中で泊まれるサービスを2024年春から提供する計画を進めています。
住んだ分の家賃で暮らせる部屋を提供するUnito社では、引き続き提携先を増やしており、物件数も大きく増やしています。
新規サービスや新規事業においてPMF(プロダクトマーケットフィット)は非常に重要ですが、企業のWebマーケティングを行うSAIRU社は、PMFに関するカンファレンスを行い、2,000名を突破する参加者を集めました。
いろいろな企業の相談に乗りながら、売上利益を上げていくビジネスモデルのため、非常に良いスタートを切っていると考えています。
以上が、出資先のハイライトのご説明となります。
2023年12月期 振り返り
流拓巳氏(以下、流):管理本部長の流です。私から2023年12月期の業績をご説明します。
数字に関してはスライドのとおりです。2023年12月期の振り返りとして、連結業績は、売上高が27億1,700万円、前年同期比で4.6パーセント増となりました。営業損益は、2022年12月期に2億1,000万円のマイナスでしたが、2023年12月期は、1億3,500万円の増加となりました。
セグメントごとでは、ソーシャルメディアサービス事業の売上高、営業損益ともに増加しました。インキュベーション事業は、売上高が7億9,500万円、営業利益は1億2,100万円です。売上高は前年同期比でやや減少したものの、営業損益はプラスとなりました。
連結売上高の推移
連結売上高の推移です。前期から2年連続で増加となりました。
連結営業損益の推移
連結営業損益の推移はスライドのとおりです。
2023年12月期 連結PL(年度比較)
2023年12月期の連結PLです。売上高が27億1,700万円で、YoYで増加となりました。売上総利益も17億8,100万円で増加、販売費および一般管理費が16億4,500万円の大幅削減です。
営業損益は1億3,500万円のプラス、経常損益は1億5,200万円のプラス、親会社株主に帰属する当期純利益は2億7,900万円プラスです。
2023年12月期 第4四半期 連結PL(四半期会計期間比較)
2023年12月期第4四半期の連結PLです。売上高が8億2,000万円、売上総利益が5億6,200万円、販管費及び一般管理費が4億2,700万円です。以下項目は、ご覧の表のとおりです。
2023年12月期 連結B/S
2023年12月期末の連結のバランスシートです。営業投資有価証券の評価額が伸長したため、そのタイミングで一部売却を実施しました。
固定資産の増加は、スナップマート株式会社の子会社化に伴うのれん代の影響が大きいです。
ソーシャルメディア サービス事業 連結売上高の推移
事業グループ別に、業績を詳しくご説明します。まずはソーシャルメディアサービス事業の連結売上高の推移です。SNSマーケティング支援を統合型マーケティング支援へサービス拡張したことで受注数が増加して、売上が拡大しました。
この事業群における事業部の多くがBtoBのストック型ビジネスであり、ガイアックスグループの全体売上の約7割を占めています。この領域は経営環境に左右されずに安定的に売上を作ることができており、当社の強みの1つとなっています。
ソーシャルメディア サービス事業 連結営業損益の推移
ソーシャルメディアサービス事業の連結営業利益の推移です。2023年2月に連結子会社化したスナップマート社がこの事業群に含まれており、この影響で一時的には利益率が低下したものの、販路拡大等の事業シナジーにより、最終的には18.7パーセントまで改善しました。
インキュベーション事業 連結売上高の推移
インキュベーション事業について詳細をご説明します。インキュベーション事業の連結売上高の推移です。
当社の本社も入っている永田町のオフィスビル「Nagatacho GRiD(現在:MIDORI.so NAGATACHO)」は、レンタル事業などのコミュニティを展開しています。2023年5月に事業分割に伴う売上高減少の影響がありましたが、営業投資有価証券の評価額伸長に伴う売却が後押しして、スライドのグラフのような結果となりました。
なお、上田からご説明したような、現在注力している自治体受託案件の多くは、会計年度末のタイミングと重なるため、当社の2024年度12月期第1四半期に計上見込みとなります。
インキュベーション事業 連結営業損益の推移
インキュベーション事業の連結営業損益の推移です。外注費などで投資が続いていますが、コストコントロールを意識して継続しています。こちらも自治体受託案件の多くは、2024年度12月期に計上見込みです。
2024年12月期 業績見通し
今後の見通しについてです。2024年12月期の業績予想は、スライドの表のとおりです。
ソーシャルメディアサービス事業は、当社グループ全体売上の7割程度を占める分野で、引き続き、SNSマーケティング・インフルエンサーマーケティング市場で成長が見込まれます。
当社がノウハウを蓄積してきたSNS運用代行やマーケティング支援をさらに進化させて、ニーズの高まるビジュアルコンテンツの提供と、データ解析を加えた統合的マーケティングを継続的に提供することで、売上高増加を図っていきます。
インキュベーション事業では、政府によるスタートアップ5ヶ年計画を受けて、ニーズの高まっている自治体のスタートアップ創出支援、教育機関での起業家教育の事業委託をより進めていき、全国各地にスタートアップ支援を展開していく予定です。
新規事業として、web3やDAOにも注力していきますが、これらの市況は不透明であり、引き続き開発コストや人件費が先行することを想定しています。
事業領域
上田:事業方針および中期経営方針をご説明します。
まずは事業領域についてです。「人と人をつなげる」ことをミッションにしている当社としては、インターネットを使った「人と人をつなげる」事業、まさにソーシャルメディアやシェアリングエコノミーを1つ目の事業領域としています。
みなさまも感じているとおり、ソーシャルメディアはどんどん生活に溶け込んでいます。当社は企業向けのビジネスを中心として、サービスラインナップを増やして、着々と事業規模を拡大させていこうと思っています。
シェアリングエコノミーに関しては、ストリートアカデミー社に出資しましたが、引き続き、積極姿勢で、よりリアルなものをシェアしていく、赤の他人ともつながっていくようなビジネスを拡大させていくつもりです。
2つ目の事業領域は、連続的な起業家輩出を支援するSTARTUP STUDIOです。ここでは自治体への支援を行う他、当社が投資をして起業家を作るという意味もあります。これまで多くの起業家を輩出してきたノウハウを武器に、この事業領域に取り組みます。
3つ目の事業領域はweb3・DAOに関してです。10年弱の間、web3に関わってきました。正直なところ、web3の中でも仮想通貨は当社の事業領域ではないと考えて投資してきませんでしたが、DAOに関しては、当社の事業と親和性が高いと考えて、現在、非常に力を入れているところです。
GAIAX BUSINESS MODEL
当社のビジネスモデルをご説明します。1つは、企業向けコンサルティングや自社で行うシェアリングエコノミーを支援するような、事業会社の側面があります。
もう1つは、例えば大きくなってきた事業をカーブアウトしてその株式の売却でキャピタルゲインを得る、もしくは外部の会社に投資することによってリターンを得るという投資会社の側面で、大きく2つに分かれています。
事業会社 投資会社
事業会社としては、基本的にインカムゲインを目指しており、毎年の売上・利益を拡大させていくかたちです。
投資会社としてはキャピタルゲインを目指しています。キャピタルゲインを得るまでに投資が大きくなることもあるのですが、最終的に上場時の利益金額を拡大・最大化するべく活動しています。
カーブアウト機能を活用した事業の成長加速
カーブアウトについて若干補足します。カーブアウトを「する」「しない」といろいろなパターンがあり、その事業がグループ外の投資先企業から出資を受けることで当社の持分は下がりはしますが、成長スピードが上がることにより、結果として利益の最大化につながることを考えて取り組んでいます。
経営陣においてもモチベーションが上がるため、そのような意味では、同じ事業でもカーブアウト機能の活用により成長スピードが上がるのではないかと思っています。
カーブアウトオプション制度活用事例
2つの事例をご説明します。1つはアディッシュ会社で、2007年に事業部を設立し、2020年に上場している事例です。
もう1つは「TRUSTDOCK」で、当初はブロックチェーンの事業部でしたが、事業部設立後にカーブアウトして法人化し、そのあと外部からの調達を行っています。現在はeKYCというカテゴリに若干ピボットして、事業を拡大しているところです。
事業会社と投資会社の「ハイブリッドモデル」
スライドの図のとおり、ガイアックスグループ事業を中心に、そこからカーブアウトした投資先、ガイアックス卒業生が創業・経営している投資先と広がりを持たせた、大きなモデルの中で一体となって取り組んでいます。
これまでの振り返りと中期経営方針
中期経営方針についてご説明します。ソーシャルメディアサービス事業については、これまで営業利益を確実に出していましたが、売上増加率がわずかだったということで、10パーセント以上の年成長率を出していく方針としています。
インキュベーション事業については、投資が非常に大きかったところですが、直近ではこれまでのノウハウを活かしてコストをコントロールし、投資規律の徹底を考えて取り組んでいます。結果として売上の安定成長と基本的な黒字、継続的な配当を行っていく方針としています。
2023-2027年度 中期経営方針 業績目標
2023年から2027年度までの中期経営方針についてご説明します。現在2年目で、5年目に向けて連結売上40億円、営業利益6億円を目指して進めているところです。
株主還元方針
配当に関して、2024年12月期期末配当額の予定は5円と発表しています。
2023年は、シェアオフィス事業の売却とともに入ってきた利益をもとに中間配当を行いましたが、2024年12月期の期末配当額は、基本的には5円としています。
質疑応答:管理本部長の流氏について
司会者:「登壇者が執行役の野澤氏から、管理本部長の流氏に変更となったのはなぜでしょうか? また、流氏についてご紹介ください」というご質問です。
上田:管理本部で業務を行っていた流が、今後は担当範囲を増やすということで本部長に就任した次第です。引き続き、執行役には野澤がいますが、現在は流がこの業務を担当しているかたちです。
流:今回、初めて管理本部長を担当する流です。今までは野澤が執行役と管理本部長を兼ねており、昨年半ばより、私が野澤から管理本部長を引き継ぎました。
野澤は今まで、執行役というよりは管理本部長の業務としてこちらに登壇していたので、業務引き継ぎに伴い、今回から私が登壇しています。
私のバックグラウンドについて少しご説明します。2017年にガイアックスに新卒入社しました。入社以前には内定者インターンとして新規事業領域を担当していましたが、その後は管理部にて人事領域やその他危機管理・セキュリティ周りなどを担当して、昨年、管理本部長になりました。1番の専門領域は人事周りです。よろしくお願いします。
質疑応答:DAOX(ダオエックス)について
司会者:「『DAOX』について教えてください。DAO支援というサービスに利便性、将来性を感じる一方で、非分散、集中型の組織であるガイアックスのような事業会社のプラットフォーム上のDAOというあり方に、DAOの分散の限界を見たような気もします。
DAOという世界線の最終的な着地点、マネタイズの可能性についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?」というご質問です。
上田:DAOという事業の可能性に関するご質問かと思います。分散と言ってもいくつかの要素がありますが、その1つはオーナーシップの分散という考え方です。
株式会社とDAOとは大きく違いますが、同じ部分もたくさんあります。実際に、多くのベンチャー企業が従業員にストックオプションを配布しているように、株式会社の社長が1人で株を持っているより、従業員も含めて株を持っているほうが、新規で戦うのに有利だということは想像されやすいかと思います。
例えば「YouTube」のチャンネル運営者や、「Airbnb」で自宅を民泊に出している方は株を持っているわけではありません。しかしそのような世界観ではなく、そのような方にも株を渡したほうが、多くの方々がさらに積極的に事業拡大を進められるため、そのようなスキームのほうがうまくいくのではないか、という考えがあります。
さらに考えを進めますが、「スターバックス」の成功を例に挙げると、1店舗目のヘビーユーザーの存在が大きな要因だったと思いますが、そのヘビーユーザー自身が何かを得たわけではありません。
しかし、DAOの世界観ではそのようなお客さまにもトークンとして、株式を持っていただきます。そして取締役会決議のようなものを株主総会のように開催し、トークンで決議していくスタイルでビジネスを進めています。
当社自体はDAOではありませんが、事業部ごとにカーブアウトオプションを用意し、それぞれの事業でストックオプションを用意しています。株式会社ではありますが、一方で株式が分散されており、またその提携会社などに株式を持ってもらい、成長を加速させていくところはDAOに近しい部分があると思っています。
株式以外の部分では、どのような枠組みでサービス提供がされているのかということも、DAOの特徴の1つです。具体的には、みなさまがイメージしやすいシェアリングエコノミー領域でご説明します。
「Uber Eats」を提供する、Uberとして知られる会社が諸外国で提供しているライドシェアというものも、これまでは中央集権型の会社がドライバーを雇って、出勤簿をはじめとして隅々までもれなく管理しながら、サービス提供するというのが通常だったと思います。
一方、シェアリングエコノミーでは分散化したかたちで、指示命令系統がない中で、1つのタスクに対して1つの業務委託を受ける方がいて、結果的に全体で見ると「Uber Eats」という食べ物を配送するシステムが出来上がっているということが行われています。
DAOもそのような働き方というか、サービスの提供型が中心です。もちろんシェアリングエコノミーには中央にプラットフォーマーがいて、通常のサービスに比べると管理レベルは低いですが、そのような存在があると言えばあります。
DAOはその中央にあるプラットフォームが、完全にプログラムになって自動化されているケースが多いです。だからこそ中央集権型ではないと言われますが、そうではなくシステムは中央集権しており、実際のサービス自体は分散化されているというイメージです。当社もシェアリングエコノミーのサービスを多数運営していますし、その分いろいろと勉強してきていますが、そのようなイメージが近いと思います。
世の中全体が分散していく社会に近づいていくと思っていますので、当社はその分野を推進すべく投資を行っています。
質疑応答:ステーブルコイン市場の参入と取り組みについて
司会者:「ステーブルコインの取り組みはどうなっていますか?」というご質問です。
上田:現在は「DAO上で扱うものとして、ステーブルコインの決済も扱っています」というかたちになっています。
決済の導入ができるようにはなってはいるのですが、実際のマーケットニーズとしては、「ステーブルコインでもそうでなくてもいいし、普通の現金でもよい」というものです。当社としても、お客さまの要望に応じて対応可能な体制はできていますが、そのような背景をもとに対応しています。
引き続き市場が伸びたらそれに応じて、そのサービス分野もとっていきますが、特にステーブルコインだけにアンテナを張っているわけではないとご理解ください。
流:私から補足します。2023年6月22日にプレスリリースを出していますが、昨年8月にステーブルコインについて、今後の展望をガイアックス従業員が解説する動画を公開しています。気になる方はこちらもご参照ください。
質疑応答:人材の育成や定着について
司会者:「入社2年目、3年目で離職している人が多い印象がありますが、人材の育成や定着はどのような状況でしょうか?」というご質問です。
流:離職者について、数字に基づいてご説明します。
新卒入社メンバーに関して、入社から3年での離職率は、厚生労働省で発表されている平均数値と同水準の約30パーセントとなっています。世の中との比較を求められているわけではないかもしれませんが、一般的な水準となっています。
新卒に限らず全体での勤続年数に関しては、こちらも一般的な水準と同程度ですが、男性・女性ともに新興企業の中では長く、男性は8.3年、女性は5.6年となっています。
人材の育成や定着に関しては、当社の場合は採用において、新規事業の立ち上げや独立後の出資を狙った採用などさまざまなかたちがあり、単純な定着率の向上自体というよりも、能力開発面と活躍できる環境作りにこれまでは注力していました。
今後もその方針で、当社に関わる従業員それぞれの才能が、より発揮されるような環境作りに努めていきたいと思っています。
質疑応答:従業員持株会への奨励金効果について
司会者:「過去に従業員持株会の奨励金を増やし、持株会に注力した成果を教えてください」というご質問です。
流:奨励金アップの前後で比較します。30パーセントに引き上げたのが2018年8月です。従業員が自社株式を保有することによる株主との利害一致を図るほか、ガイアックスへの帰属意識や経営参画意識の醸成等を狙いました。
2017年末の30パーセント引き上げ前の時点では、全体における従業員持株会の持分比率は0.98パーセントでした。直近の2023年末時点では1.2パーセントとなっています。全体における持株会の比率自体はそれほど変化がなく微増で、本当にわずかに増えたという程度です。あまり大きく伸びたとは言えないと思っています。
持株会から個人で引き出した従業員や元従業員が多数いることは確認していることから、実質としては、先ほどお伝えした数値よりも、もう少し効果があったと考えています。
今後も、自社株式を保有することによる株主との利害一致を図ったり、従業員の帰属意識や経営参画意識の醸成等を狙ったりする重要度は高いと思っていることから、持株会への加入啓発に努めていきたいと思います。
質疑応答:「起業ゼミ」の事業性について
司会者:「『起業ゼミ』については、露出が多い一方で事業性があるとは考えづらいです。事業規模や収益はどれだけ期待できますか?」というご質問です。
上田:「起業ゼミ」は中学校や高校を中心に行っていることから、単体での事業規模はそこまで大きくありません。仮に大きくなっても、どうしても売上とコストが連動してしまうことで、収益もそこまで大きくなりません。
先ほどご説明したように、「起業ゼミ」の活動自体が自治体からのスタートアップ支援の業務の受託にひも付いていることから、受託というビジネスを合算して考えた時には、けっこうな事業規模ではないかと考えられます。
現状のガイアックスの事業規模から考えると、数割を占める規模になる可能性もあるのではないかと考えています。
質疑応答:海外展開の展望について
司会者:「アドレス社から、ガイアックス子会社であるロコタビ社との海外展開における提携の発表がありましたが、今後の各社の事業の展望をお聞かせください」というご質問です。
上田:ロコタビ社は、インバウンドではなくアウトバウンド向けのサービスで、日本人が海外に行く時にガイドとして採用するというサービス設計になっています。これまでは旅行者中心にサービスを提供してきましたが、コロナ禍で旅行者が激減する一方、法人は海外に人を送り込めなくなり、海外事業を行うに当たってのサポートが欲しいというところで参入したビジネスです。
アドレス社との提携をロコタビ社の視点でご説明すると、アドレス社が海外に展開するのをロコタビ社が支援するというかたちです。今後はアウトバウンドが復活してくることから、売上も急改善し、これまで行ってきた企業向けのサービスをより振興していこうという考えです。個人向けと法人向けのサービス両方を行っていく予定です。
出資先のアドレス社の立場では、国内滞在が多かった利用者からはコロナ禍が明けて、「海外に行くから」すなわち「サービス利用をやめたい」というような声もなくはない中で、海外向けのサービスを提供していく段階に来ているところです。サービス提供国数が増える余地はまだまだあるのではないかと考えています。
質疑応答:株価向上の施策について
質問者:ここ数年にわたり行ってきた長期キャピタルゲイン狙いの出資は結果として株価に反映されていません。いろいろな思惑があるとは思いますが、我々が望むのは株価の向上です。このように変動要素が多いところで将来を不透明にするような投資よりは、国策にもなっているスタートアップの流れに乗って、事業支援などで営業利益をしっかりと稼いでいくのをメインに置いたほうがいいと思っています。
それでも長期キャピタルゲインを狙いたいのであれば、売却時に株主に還元すべきだと思います。いずれの施策も取らないので、今の株価になっていると理解していますが、ここはどうお考えでしょうか?
上田:まず投資リターンに関しては、確かに時間軸は長いですが投資した会社を上場させるという枠組みが我々にもわかってきました。大きな会社にすることと、それに対しての比率が高いということの掛け合わせがないと、ある程度のインパクトはあっても、より一層のインパクトはないと思っています。
我々だけの意見ではないですが、例えば、TRUSTDOCK1社のように小さく上場すると、以前のように大きなインパクトはあまりなく、いかに大きくなるかということがやはり重要だと思っています。それができていない時点でうまくいっていないという点については反省しています。
そのような事業よりもスタートアップ支援のほうで稼ぐべきではないかということに関しては、スタートアップ支援のほうはスタートアップ支援のほうで、営業利益を出せる枠組みがあることから、まさに全力で取りかかっているところです。
多くのリソースをそちらに回しており、本当に1年前ではゼロだったものが2023年度中にはかなりの人員を抱え、数億円の一歩手前に迫る事業規模になってきていると思っています。力を入れていないということはありません。
質疑応答:株主還元に関する意見
質問者:スタートアップ支援に意義はあると感じており、そちらは推進いただければと思います。何度も申し上げますが、我々の目指すべきところは「株価をしっかり上げてほしい」というところです。
現状はうまくいっていないわけです。新しい営業利益を出す仕組みもいいですが、社長のご説明によると、要は投資の面に変更はないという考えだと思いますが、このままキャピタルゲイン狙いの案件を行っても、何も変えなければ結果はまた同じで株価に反映されません。ですから、ここを変えてほしいです。
少なくとも株主還元をしっかりと行ってください。例えば特別配当でもけっこうです。そのようなことがない結果、何も変わらないので変えてもらいたいです。
上田:経営方針を変更して配当を安定的に出していくという発表を行いました。背景には、安定的にキャピタルゲインを出し、安定的に配当も出すというところがありました。
2023年の上半期中にキャピタルゲインではなくシェアオフィス事業の売却に伴う特別利益が発生したことから、特別配当に近いニュアンスで中間配当を5円としました。つまり直近で特別配当に類似の還元は行っています。背景としてご意見は理解しています。我々もケースバイケースで対応を進めていきたいと思っています。
質問者:配当性向を示すなど、ある程度の指針を示していただかないとわかりません。特に今回は黒字にもかかわらず、10円から5円への減配に見えます。やはりある程度の方向性を示していただかないと、どうなるかわからないことから、このままでは他の人が投資できません。そこはしっかりと考えてもらいたいと思います。
上田:5円の中間配当は、キャピタルゲインによる利益に連動させての配当を行っていきたいという気持ちの表れだとご理解いただければうれしく思います。
質問者:ということは、今期は前期に比べて配当金が増えるという理解でいいですか?
上田:いえ、2023年上半期に売却益が出たことから配当を発生させたかたちです。
質問者:配当性向はどのくらいですか。
上田:2024年以降の配当性向ですか?
質問者:今後の配当性向でもかまいません。
上田:2024年以降は未定です。数字が出次第、要検討として考えていきます。
質問者:結局、株主からすると売却して利益が出ていてもどれだけの恩恵があるかわからず、投資判断に値しないという結論になる内容ですが、どのような施策でもかまいません。今の株価を見てください。今まで実施してきたこと全部に意味がありません。そこを本当に真剣に考えていただかない限りは終わってしまうでしょうということです。
上田:ご意見ありがとうございます。
質疑応答:2024年度の中間配当有無について
司会者:「2023年は中間配当を実施したが、2024年は中間配当を実施しないのでしょうか?」というご質問です。
上田:2023年の中間配当は、先ほどお伝えしたとおり、売却益が出たことにより実施しました。2024年については現時点では予定していません。
質疑応答:ストリートアカデミー社への投資について
司会者:「ストリートアカデミー社へ投資したのはいつですか? どのような事業に対しての投資なのか、投資による期待など投資判断の背景を教えてください」とご質問です。
上田:投資のタイミングは開示していませんが、発表したとおり2023年度中になります。投資の背景は、個人が個人に対して教えるというカテゴリーでは非常に強い会社ということで、シェアリングエコノミー事業に投資していく中でポジションを活かしての事業拡大が見込め、投資対リターンも合うと判断しました。
シェアリングエコノミーに関しては、多くの会社へ投資してきたノウハウなども共有しながら、事業拡大を支援していきたい考えです。
質疑応答:ガイアックス社内の信頼関係について
司会者:「近年、株主総会における信任率が低いが社内ではどうか? 従業員内での上田代表および経営陣の信頼度や、従業員と経営陣との関係性について状況を教えてください」というご質問です。
流:従業員や社内から見ての代表および経営陣に対しての信頼関係について、状況の説明からになり恐縮ですが、各事業部や部署の自由度をかなり高めている関係で、社内での体感として当社は一般的な企業に比べ、株式会社ガイアックスという会社なり法人なりという単位への帰属意識よりも、事業部や部署に対する帰属意識のほうが強い組織だというところがあります。
それも影響してか、株主総会における信任率は低い状況ですが、社内アンケートはもちろん、転職の際などに利用されるような外部が一般的に運営している企業の口コミサイト的な媒体でも、ガイアックス社内での働きやすさや風通しの良さ、その他満足度の水準というところは国内でもかなり上位に位置しています。
「経営陣への信頼についてはどうですか」という項目こそないものの、そこに絡んでくるようなスコアに関してはかなり高い水準を維持できています。これは、ただ経営陣への信頼が厚いからというよりは、会社の形態によるところがあるかもしれないと思っていますが、そのような状況です。
従業員がそのような状況であるというところを、株主のみなさまからはこのように思っての信任率というところを、それぞれ踏まえながら、トータルで企業価値をどう上げていくかが、経営陣にとって努力が必要な箇所だとは思っています。そこに関しては、引き続き工夫を重ねて検討していきたいと思います。