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吉原信一郎氏(以下、吉原):みなさま、こんにちは。株式会社エプコの吉原です。我々のIRプレゼンにお時間をいただき、ありがとうございます。

本日は、会社概要、エプコグループの成長戦略、それから株主還元の3点についてご説明します。要点を絞ってコンパクトにご説明し、質疑応答の時間をたくさん取りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

会社概要

吉原:まずは会社概要についてです。株式会社エプコという社名は、「Energy Plan Company」の頭文字である「EPCO」から取っています。

経営理念とパーパスは、スライド左側に記載しています。「住まい・暮らし・地球環境をDX技術で支えます。」をパーパスに掲げ、いろいろな事業を展開していますが、住宅分野領域での事業展開という点は一貫しています。その中で、暮らしや地球環境を支えるさまざまなサービスを手がけている会社だとご理解ください。

1990年に設立し、現在33年目を迎えています。本社は東京都墨田区の錦糸町にあります。スタンダード市場に上場しており、証券コードは2311です。従業員は連結ベースで、日本と中国に850名ほど在籍しています。

また、代表取締役2名体制で経営しており、当グループCEOの岩崎がエプコの創業者であり、筆頭株主ですので、我々はオーナー企業ということになります。

岩崎と私の2名体制となっていますが、役割としては岩崎が新規事業の立ち上げや、これから拡大していく新事業に注力し、公認会計士でもある私がCFOとして管理部門、全体グループ経営統括、既存事業の管理を行っています。2002年の上場から、2人で20年以上一緒に経営してきた会社です。

エプコグループの事業拠点

吉原:当グループの事業拠点についてお話しします。当社は設計サービス、メンテナンスサービス、再エネサービスと、3つのセグメントで経営を行っています。こちらについては、あらためてご説明します。

特徴は、東京と沖縄、それから中国の拠点人数が非常に多いことです。先ほど従業員について850名と言いましたが、実はそのうち400名以上が沖縄にいます。中国は、吉林と深センを合わせると250名ほどです。

kenmo氏(以下、kenmo):なぜ、沖縄にそれだけ多くのスタッフがいるのですか?

吉原:沖縄は、メンテナンスサービスと設計サービスという、いわゆるオペレーション拠点です。メンテナンスならコールセンター、設計ならCADオペレーターといったソフトサービスに携わる人材を、沖縄県が積極的に誘致しており、税金と事業税の減免などの行政支援もあったため、我々は沖縄に拠点を設けました。

エプコグループの事業モデル(現在)

吉原:事業モデルについてご紹介します。エプコグループは1990年の創業以来、住宅ライフラインを支える3つの事業を展開しています。

1990年に開始したのが設計サービスです。設計サービスにおける主要顧客は、注文住宅を作る大手ハウスメーカーです。例えば、テレビでCMを流されている住友林業、三井ホーム、パナソニックホームズといった企業からご依頼をいただいています。

設計サービスは、家を建てる時に設備設計と呼ばれる水回りや電気の設計を行い、CADで図面を書いて納品して、お金をいただくモデルです。実際にこの設備の工事を担当する工事会社は別にあるのですが、エプコが1件1件設計することで、工事コストが標準化されて節約でき、さらには工期の短縮、工事の品質向上につながるため、いろいろなハウスメーカーに採用され、業績を伸ばしてきました。

次に、2000年代に立ち上げたのがメンテナンスサービスです。こちらは住宅を建てた後のサービスです。施主さまが実際に住み始めると、いろいろな困りごとが出てきます。設備のトラブル、壁に穴が開いた、近隣がうるさいといった多種多様なトラブルがあります。そのような事態に備えて、多くのメーカーは問い合わせ窓口を持っていますが、我々はハウスメーカーからオーナーズデスクやコンシェルジュサービスといったコールセンター機能を請け負っています。「〇〇コールセンターです」と電話をお受けしていますが、実際には沖縄からメンテナンスサービスを提供しています。こちらも、大手ハウスメーカーからお金をいただいています。

もともとはハウスメーカーが内製していた業務を、どんどん当社に任せていただいています。エプコは専業で展開しているため、内製するよりも効率的に運営でき、問い合わせの内容をデータベース化し、施主さまそれぞれの情報を病院のカルテのように管理することができます。

したがって、何年何月にこのような問い合わせが来て、この部品を変えたといった記録も全部データベース化しているため、リフォームやメンテナンス時に、その情報を活用することができます。この点を評価していただき、採用が広がったのがこのメンテナンスサービスです。

再エネサービスには、2010年代後半に入ってから取り組んでいます。新築、既築の住宅に再エネ設備の設置工事を提供しているサービスです。太陽光パネルや蓄電池を住まいに設置することで、電気代とガス代の節約につなげています。設置には費用が掛かりますが、電気代とガス代が下がるので元は取れます。

再エネサービスは、東京電力と合弁会社を設立して取り組んでおり、エンドユーザーである家を建てた個人からお金をもらうモデルとなっています。

ご承知のとおり、太陽光パネルや蓄電池の設置を行政が後押ししているため、普及が広がっている局面であり、非常に伸びている事業です。

以上の3つが当社の展開するサービスです。いずれも住宅に関連しており、家を建てる段階から、メンテナンス、リフォームまで一貫してサービスを提供できることが我々の特徴です。

kenmo:再エネサービスが非常に伸びていることについては、後ほど詳しくご説明いただきます。

事業ポートフォリオの見直し

吉原:我々は、この3つのサービスで成長を果たしてきましたが、現在は、この事業ポートフォリオを見直す局面を迎えています。これまでは、設計サービスとメンテナンスサービスという事業が、住宅会社にどんどん採用され、安定的に伸びてきました。

そこで培ったノウハウを活かしているのが再エネサービスです。非常に勢いのある分野ですので、ここに経営資源を集中させ、業績を伸ばしていこうというのが事業ポートフォリオの見直しです。

従来の設計サービスとメンテナンスサービスは、どちらかと言うとオーガニックで事業を育て、住宅会社にサービスを提供するという独自路線でした。一方で、再エネサービスは、市場も大きく、変化も早いため、エプコ単独でサービスを作るのではなく、いろいろな大手の会社と連携したり、合弁会社を作ったり、M&Aで再エネ関連のよいサービスを提供している会社を取り込んだりといった、積極的な資本提携による収益拡大を目指しています。

これまでとは経営のアプローチも変え、現在は日本市場だけではなく、海外市場にも取り組んでいます。

エプコグループにおける成長事業

吉原:再エネサービスの内容について、もう少し補足します。再エネサービスは、先ほど、太陽光パネルや蓄電池を家に設置するものだとお伝えしましたが、基本的には、再エネ設備に関連する製造から設計、施工、メンテナンスまで、ライフサイクル全般に対してサービスを提供していきたいと思っています。

すでに業績が伸び始めているのは、施工の部分です。東京電力との合弁会社であるTEPCOホームテックと、我々の100パーセント連結子会社で、下請け工事を担うENE'Sが関わっています。こちらの施工分野における国内の売上、利益が伸びてきています。

さらに、住宅に太陽光や蓄電池を設置する時に付随する契約の事務、太陽光の売電FITの申請、また設置後の問い合わせ対応やメンテナンスなどが発生し、設計やメンテナンスの仕事にもつながります。したがって、設計、メンテナンスも同時に伸びています。

香港市場で上場している管材の最大手企業であるLESSOと組むことで、海外市場でも同じように展開していこうと考えています。

エプコグループ 利益成長イメージ

吉原:再エネサービスの概況を踏まえ、エプコグループの利益がどのように広がっていくのかをご説明したいと思います。

スライド左側の図をご覧ください。横軸は、2020年から2022年を起点とした現在までの時期、縦軸はグループの経常利益を示しています。直近の2022年までは、既存の設計事業の利益が減っており、これまでの住宅会社向けビジネスの利益は減少局面にありました。

こちらは、日本の住宅着工、特に我々がメインとしている注文住宅市場が非常に減少しています。建築資材の高騰により、住宅価格はかなり上がってしまい、簡単に購入しづらくなっています。着工が減少すると、設計サービスの依頼がダイレクトに減るため、期待のできる再エネサービスに経営資源を集中させたのですが、2023年からすでに結果が出始めています。

エネルギーに関連する設計サービスやメンテナンスサービスが増え、設置工事についてもTEPCOホームテックやENE'Sが伸びています。

我々は、この2023年から直近3年、5年くらいは、太陽光と蓄電池の市場が普及する時期だと思っています。そのため、中期的なところまでは、再エネサービスで結果を出そうということです。

住宅会社向けの設計サービスやメンテナンスサービスは伸びないのかというと、決してそういうわけではありません。新築の設計や引き渡し後のメンテナンスも含め、業界全体が変わろうとしています。

設計分野の場合、現在はCADという2次元のソフトウェアが我々の主流です。これが3次元、かついろいろな属性情報を取り込めるBIM(Building Information Modeling)に移行するため、そこにもビジネスチャンスが生まれます。その準備もすでに進めています。

また、コールセンターは、現在電話の問い合わせ対応が中心ですが、今後は、アプリやチャットを使ったり、データベースを使った展開だったり、あり方が変わっていきますので、そのような転換への準備も進めています。

中長期では、再エネサービスの成長と、スライドに記載している薄い緑色の部分を伸ばしていく2段重ねで、連結経常利益の最大化を目指していくことを基本方針としています。

kenmo:設計、メンテナンスは戸建の市況により、徐々に落ちていく中で、再エネ事業については市場が拡大しており、そこに乗っていくことでしっかり売上利益を伸ばしていけるということですね。再エネ事業と既存事業のシナジーが発現し、さらにレバレッジが効くというイメージでしょうか?

吉原:おっしゃるとおりです。

荒井沙織氏(以下、荒井):電話対応がネットやチャットに変わると、コストも削減できるのでしょうか?

吉原:そのとおりです。コールセンタービジネスは、問い合わせが増えると、人を増やす必要があり、住宅会社が当社に支払うお金も増えるため、歓迎されません。その部分で、お互いの手間を省き、さらにお客さまも、つながらないコールセンターに電話をする労力を省くことができます。

したがって、アプリやチャットが今後の主流になると思います。

再エネサービス(日本市場)の市場環境①

吉原:日本での成長が期待できる再エネサービス市場において、我々のビジネスの数字に直結するのは、家庭向けの太陽光パネルの設置、蓄電池、電気自動車(EV)です。

電気自動車を普及させるためには、充電器等、充電をするためのインフラが必要となり、国も補助金を増やして、マンション、ホテル、高速道路などでの普通充電や急速充電を普及させようとしています。これらがいずれもビジネスチャンスになると我々は捉えています。

再エネサービス(日本市場)の市場環境②

吉原:再エネサービス市場が伸びていく理由には、大きく3つのポイントがあります。1つは、「①脱炭素社会の実現に向けたさまざまな政策支援」です。現在、日本政府は新築戸建住宅の6割に太陽光パネルを設置する方針を出しています。

東京都では、小池都知事が2025年に向けて、太陽光パネル設置義務化の方針を打ち出しました。また、各市町村では、省エネ設備設置のための補助金制度が充実しています。これにより、戸建にはかなりお得に太陽光パネルや蓄電池を設置できます。

さらに、昨今取り沙汰されている「②電力不足及び電力料金の高騰」もポイントの1つです。電気料金の単価が上がっているため、太陽光などにより自分で発電できるようになると、節約できるインパクトがより大きくなります。このことも後押しとなっています。

①と②を踏まえて、一般・個人の方の「太陽光や蓄電池を導入しよう」という意欲が高まっています。これが「③省エネ設備機器の設置意欲の高まり」です。

経済的なメリットが上がっていることに加え、最近は防災・節電意識が高まっており、お住いの地域が停電になったとしても、太陽光パネルや蓄電池があれば電気を使うことができるということを意識する方も非常に増えてきています。

昔は太陽光や蓄電池を設置すると、それぞれ100万円から200万円ほど費用がかかり、販売価格が上がってしまうことから、住宅の事業者、特に分譲系のビルダーなどは、あまり積極的に売ろうとしていませんでした。

1年、2年くらい前までは、大手の注文住宅では搭載率が非常に高く、分譲ビルダーでは搭載率が10パーセントくらいというのが当たり前でした。昨今、脱炭素社会の実現が叫ばれるようになり、彼らもオプションではなくて、標準で売っていく姿勢になってきています。

そのような中で、TEPCOホームテックという会社では、単純に太陽光パネルや蓄電池を設置して100万円をいただくというモデルではなく、いわゆるサブスク的なモデルを展開しています。初期費用0円で月額5,000円から1万円を支払っていただくことで、蓄電池や太陽光パネルを利用できるというモデルです。

分譲ビルダーにとっては、この省エネ機器のサブスクモデル「エネカリ」が非常に使いやすいと言えます。月額利用料で支払われるため、住宅ローンを組む時に、これらの費用をローン金額に加える必要がなくなるからです。省エネ機器の費用を住宅ローンに合算すると、お客さまの与信によっては販売できなくなってしまうこともあります。

現在いろいろな大手分譲ビルダーが「エネカリ」を採用しており、施工の数字が伸びています。

kenmo:「エネカリ」はこれからどんどん伸びていくというイメージでよろしいでしょうか?

吉原:我々としてはそのように理解しています。

TEPCOホームテック業績紹介

吉原:TEPCOホームテックは、先ほど申し上げたとおり、東京電力との合弁会社です。東京電力が51パーセント、エプコが49パーセントのシェアであるため、いわゆる持分法適用会社です。連結の財務諸表上では、売上高や営業利益ではなく、営業外損益のところに収益が乗ってくる格好となります。この持分法投資損益という営業外の損益が大きく伸びていることを示しているのが、スライド右側のグラフです。

左側のグラフは、TEPCOホームテック自体の売上を示しており、非常に大きく伸びていることがわかります。先日発表した2023年度12月期第3四半期決算でも、前年同期比で約67パーセント伸びています。新築と既築の住宅の両方で、設置工事の売上が好調に推移している状況です。

再エネ設備導入による経済効果

吉原:先ほど、個人の住宅に再エネ設備を設置すると、補助金等でお得だとお伝えしました。こちらのスライドは、太陽光発電システムを設置することで、どのくらい電気代を節約できるのかを示したものです。

こちらは東京都のAさまを例としていますが、設置前の年間の電気代がだいたい25万円のご家庭で、設置した後に電気代として支払うのは約13万8,000円、「エネカリ」利用料が年間で約5万8,000円です。合算しても年間で5万3,000円くらいお得になります。

5万3,000円の節約が実現する背景には、3つの理由があります。

1つ目は、太陽光パネルを設置することで、昼間は電力会社から電気を買わなくてよくなることです。したがって、実質的な電気購入量が減ります。

2つ目は、そのうちの一部を売電すれば、売電収入が得られることです。

3つ目は、今、市町村が補助金を積極的に導入しているため、結果的に「エネカリ」の利用料が大きく減ることです。利用料は本来もう少し高くなるのですが、補助金が出ることで、この額になっており、結果として節約が実現できるという状況となっています。

エプコグループの連結業績推移

吉原:エプコグループの連結業績の推移です。我々は2002年に上場し、約20年が経ちます。もともと当社は、設計やメンテナンスといったソフトサービスが中心の会社で、モノを売る、あるいは工事を行うかたちではないため、売上高の規模は小さいです。直近でも50億円くらいで、徐々に伸びていることがうかがえると思います。

今までは、どちらかというと規模ではなく、安定的に利益を獲得することを重視して経営を行ってきたため、売上、利益も安定的に推移していました。今後は、再エネサービスに注力し、もっとスピード感を上げて、さらなる成長を果たしていくことが、現在の基本方針となっています。

2023年12月期業績予想の概況

吉原:2023年12月期の業績予想です。2022年に設計事業が落ち込んだことで利益水準がかなり下がってしまったのですが、2023年は転換点を迎えており、計画としては営業利益と経常利益で増益を果たす見通しとなっています。

連結経常利益 四半期別推移(2021年〜2023年)

吉原:先日、第3四半期の決算を発表しました。これを四半期ごとの推移で見ると、2022年は減益だったものの、2023年の第2四半期と第3四半期は、3つのセグメントがいずれも増益に転換しています。ちょうど2023年が増益に切り替わるタイミングとなっていることが、お伝えしたかったメッセージです。

kenmo:スライドを見ると、毎年、第3四半期で利益がかなり乗るように見えるのですが、季節性はあるのでしょうか?

吉原:おっしゃるとおりです。鋭いご質問だと思います。当社の第3四半期は7月から9月に相当しますが、我々のもともとの主力の設計サービスでは、第3四半期の頃に住宅会社から設計依頼が来ます。3月末に住宅が建ち、その半年前に依頼が来るイメージです。

図面を納品したら、すぐに売上が計上できるので、ヒストリカルでは、第3四半期の利益水準が一番高くなる傾向にあります。

通期業績予想に対する進捗状況

通期業績予想に対しては、いずれも計画どおりに進捗しています。営業利益と当期純利益は第3四半期の計画を超過し、営業利益にいたっては通期の数字も超えている状況です。

第4四半期も、業績動向を注視した上で、通期業績予想の修正が必要な際には速やかに開示する方針です。

株主還元①配当方針

最後に、株主還元についてご説明します。

配当方針と、抽選式の株主優待という2点についてご説明します。配当に関しては、我々の配当方針の定量的な目安が、連結配当性向50パーセント、純資産配当率8パーセントとなっています。

加えて、安定的に配当を行うこともポイントになっています。利益は外部環境や先行投資の実施により、けっこう上下する部分がありますが、我々は、配当はそのような外部環境等でむやみに上下させるべきではないと考えています。

2023年12月期の1株当たり配当予想額は32円です。上場した時に初めて行った配当は1株5円でしたが、過去20年間、減配を行ったことはありません。基本的にはキープ、ないしは上がることを段階的に繰り返して、今の32円に至っています。

2023年12月期は、計画を保守的に見込んでいるため、配当性向としては93.2パーセントの見通しです。少し高めに出ていますが、現在は事業ポートフォリオの見直し局面であり、再エネサービスが拡大すれば、利益は今後基本的に上がっていくため、この配当性向の高さは一時的なものです。利益の上昇によって配当性向は下がっていくと思いますので、この水準を維持して配当を実施する予定です。

株主還元②抽選式株主優待制度

抽選式株主優待は、他の会社ではなかなかやっていない制度のため、簡単にご紹介します。抽選式ということで、全員が対象ではなく、上半期と下半期、いわゆる6月末と12月末の年2回実施しています。

当社株式を100株以上保有、かつ抽選に応募してくださった方を対象に抽選を行い、太陽光発電システムもしくは蓄電池をただで設置できる権利を当選者に付与するという優待です。どちらも、普通の家庭に設置するとだいたい100万円ぐらいかかります。

この優待を始めたきっかけは、2つあります。1つ目は、事業ポートフォリオの見直しの一環です。今までは、どちらかというと、住宅会社向けに設計やコールセンターのアウトソーシングを提供する企業という見られ方をしてきました。今は、太陽光パネルや蓄電池、再エネ設備に関連するさまざまな再エネサービスを提供する会社であるとブランディングを実施していきたいと思い、このような制度を導入しました。

2つ目は、当選された方への設置工事は我々の合弁会社のTEPCOホームテックと100パーセント子会社のENE’sが請け負うため、結果的に売上利益としてエプコグループに少し戻ってくることとなり、すべての株主の方に恩恵があることです。

kenmo:抽選式株主優待は、他社では旅行券や、テレビ局では番組観覧が300名に当たるといったものはありますが、太陽光パネルが当選するというのは初めて見ました。おそらく他社にはありませんね。

吉原:そのとおりです。我々も去年始める時に調べたのですが、ここまで大がかりに実施している会社はありませんでした。

荒井:「斬新かつ太っ腹ですね」というコメントも入っています。

抽選式株主優待 | 2023年度上半期抽選の結果

吉原:この取り組みには社会貢献的な意義もあると思っています。半期で5名くらいに無料で設置していますが、いわゆる植林のようなもので、一般家庭に年間3件、5件と増えていくのは、それ自体が脱炭素社会への貢献になるという位置付けで始めたものです。

去年から始まり、去年の6月末、12月末、今年の6月末と、今まで3回実施しています。ありがたいことに応募者の数はどんどん増えており、1回目の862名から、前回は2,598名となりました。これは、実は母数である株主が増えています。2022年上半期には4,000名ほどだったのですが、この制度を始めてから、6,700名まで個人株主が増えました。

また、この制度がだんだん認知されるようになり、最初は20パーセントくらいの応募率でしたが、今はもう40パーセント近くとなりました。我々も最初は、当選者を3名に設定し、小さくスタートしたのですが、反響もかなり大きくなってきたため、この6月からは当選者を5名に増やしました。2,598名中5名ですから、今は500人に1人当たるということです。

kenmo:私の周りでは当選した方は見たことがないのですが、実際当選された方から、喜びの声のようなものはありますか?

吉原:現在、合計で11名の方が当選しています。設置が完了した方に対してはヒアリングを行い、エプコのWebサイトのブログに喜びの声といったかたちで少し掲載しています。

ご意見として多かったのは、設置後のメンテナンス等もあるため、購入するかどうかを迷っていたが、「無料ならいいか」と思って申し込んでみたところ当選したというものでした。

先ほど設置例をご紹介しましたが、電気代は半分くらいに下がり、家のモニターで節電の数字が見える化することから、「子どもがおもしろがって節電を行っている」など、いろいろな声をいただいています。

蓄電池、または太陽光発電システムが当たるという意味では、幅広い人が参加できるため、喜びの声をたくさんいただいているところです。

kenmo:優待はかなり賛否があると思っており、リアルタイムで視聴されている方の中には、「優待をやめて1円でも増配してくれたほうがありがたいです」というご意見もあるとは思います。しかし、自社サービスの優待はある程度自社にもメリットがあり、個人的には非常におもしろいため、私も応募しようかと思います。

吉原:ぜひ応募してください。設置する方にとっては相当お得です。特に、今回の応募件数は2,598名でしたが、期待値を計算すると、実質利回りがもっと上がります。

我々は、保有株数が多いと倍率が上がる仕組みにしていますので、100株だと0.08パーセント、1,000株だと0.8パーセントの当選率になります。100株持つと、実質1株8円配当と一緒です。太陽光発電システム・蓄電池が欲しい人にとっては非常に良い制度ですので、ご参加いただければと思います。

荒井:好評ということもありますし、今後もこの方針は変えられないのでしょうか?

吉原:そのとおりです。「配当に還元してほしい」という声もいただいているのですが、32円配当というのは配当利回り約4パーセントと、相応の水準です。

抽選式株主優待はブランディングや、実際に太陽光発電システムを設置したい人向けであり、意味合いが異なりますので、この2つを進めたいと思っています。

荒井:ちなみに、今後当選者が増えていく可能性はありますか?

吉原:あり得ますね。やはり応募件数が増えていけば、当選者を増やすことも考えたいと思っています。

抽選式株主優待 | 『2023年 下半期』 抽選のご案内

吉原:最後は、この下半期にまた抽選を行いますというご案内です。12月28日時点で100株以上保有している方で、1月に応募手続きをされた方を対象に抽選を行います。抽選は2月下旬に実施し、当選者を発表します。

ちなみに、太陽光発電システムと蓄電池を選べるのですが、お申し込み状況は約70パーセントが太陽光発電システム、約30パーセントの方が蓄電池となっています。我々のルールでは、株主が設置場所を選べますので、自分の家でも、ご両親の家でも、友だちの家につけてもよいことになっています。

また、太陽光発電システムはどうしても戸建に設置することになってしまいますが、蓄電池はマンションにお住まいの方でも設置でき、節電対策が可能となっています。

質疑応答:各サービスの収益構造について

kenmo:事業ポートフォリオの見直しが一番のキーになるかと思います。設計サービス、メンテナンスサービス、再エネサービスについて、フロー収益なのか、徐々に積み上がっていくタイプのストック収益なのか、収益構造を教えてください。おそらくメンテナンスサービスがストック収益なのではないかと思っています。

吉原:設計サービスに関しては、毎年「新築の設計件数×単価」ですので、住宅会社の着工によって影響を受けるという意味ではフロー収益の部分があります。

一方で、大手の住宅会社、例えば住友林業は年間8,000棟くらい建てていますが、そこまで大きく変動しません。大きく増減してしまうと関連業者が食べていけないため、だいたい同じ数字を維持しています。

我々は、例えば100パーセント採用、50パーセント採用など、導入していただく会社によってさまざまなのですが、基本的には毎月コンスタントに受注があるため、結果的にストック収益となります。

メンテナンスサービスについては、おっしゃるとおりOB顧客数が積み上がっていき、それに連動してビジネスになるため、完全にストック収益です。

再エネサービスは、今は工事が主体ですので、「設置件数×単価」となります。設計サービスと比較的近いフロー収益の要素もありますが、先ほどお話ししたとおり、新築分野では分譲住宅会社にどんどん採用いただいており、新築を建てる時の標準仕様になると、ある程度安定的にいただくことができるため、ストック収益の部分が出てきます。

質疑応答:顧客獲得と人材採用について

kenmo:今後の注目ポイントは、再エネサービスを伸ばしていけるかどうかだと思います。顧客の獲得方法と、労働集約型の工事を行うために、社内の採用をどのように増やしていくかについて教えてください。

吉原:ご指摘のとおり、顧客の獲得は非常に重要です。

工事に関して、自分たちだけではなく、東京電力と一緒にTEPCOホームテックを作ったことには理由があります。工事業界において、太陽光発電システムの設置工事は、以前から行われており、競合会社には、例えば積水ハウスリフォーム、パナソニックリフォーム、LIXILトータルサービスなどの大手のほか、地域に散在する小規模な工事会社も多数あります。

我々はその中で差別化を図り、また、再エネ設備である太陽光発電システムと蓄電池は電力と関連する設備ですので、安心感とブランドとしての信頼感を出すために東京電力と組んでいます。2017年に設立し、現在5年を超えたところですが、もくろみどおり東京電力の安心感によって、大手分譲会社や個人の方からお仕事をいただいています。

海外市場も同様に、香港市場に上場しているLESSOという大手企業のブランドを活用して、獲得していくことが基本戦略となります。

採用について回答します。太陽光発電システムと蓄電池の市場は非常に伸びており、お客さまからの引き合いも多いのですが、おっしゃるとおり、職人をどのように確保していくかが今後の成長のポイントになります。

建設業界、住宅業界のみなさまが職人の囲い込み合戦をしているため、なかなか難しいのですが、我々は東京電力と連携して、新規採用した社員の教育を行っており、それに加えてENE’sのような工事業者をM&Aによって取り込んだり、あるいは外注で職人を集めたりなど、あらゆる方法で採用活動を行っています。

質疑応答:LESSOとの合弁会社の売上・利益が出る時期について

kenmo:「LESSOとの合弁会社の売上・利益は第4四半期から出てくる予定なのか、それとも来期から出てくるイメージなのでしょうか?」というご質問です。

吉原:第4四半期から出てきます。先ほどのTEPCOホームテックと一緒で、合弁会社ですので、売上高や営業利益というよりは、営業外損益を通じて持分法投資経由で入ってくるかたちです。

質疑応答:中期経営計画の刷新時期について

荒井:「中期経営計画を刷新する予定はいつ頃を検討されていますか?」というご質問です。

吉原:我々は2021年に中期経営計画を発表しており、売上高100億円、経常利益20億円、経常利益率20パーセントを掲げています。2022年と2023年は既存事業が弱かったため、非常にご心配いただいており、見直しを考えています。

設計サービスやメンテナンスサービスにおける、BIMやCRMなどの建設業界を変えていく新しいサービスは、当時計画したよりも進捗が遅れている状況です。

一方で、再エネサービスは当時立てた計画を上回るかたちで進捗しています。さらに、2021年に中計を発表した後に、菅前総理がはじめたカーボンニュートラルの取り組みが盛り上がっているため、再エネサービスは期初の計画を上振れできると思っています。さらに深掘りして、中身を差し替えた中計を作っています。

LESSOも含めて、だいぶ役者がそろってきましたので、ある程度全体の見通しが見えた段階で刷新を図りたいと考えています。

kenmo:前提条件がいくつか変わってきているということですね。再エネサービスについてはもともと2010年から取り組まれていましたが、国策による世の中の流れが影響して伸びてきているということですね。

吉原:おっしゃるとおりです。

質疑応答:MEDX(メデックス)の今後の展開について

kenmo:「三井物産と御社が設立した、住宅産業向けDXサービスの『MEDX(メデックス)』はどのような事業ですか? また、今後の展開について教えてください」というご質問です。

吉原:再エネサービスの拡大戦略の1つとして、大手商社である三井物産と一緒に合弁会社を作っています。三井物産が51パーセント、エプコが49パーセントの持分法出資会社です。「設計とメンテの次世代サービスを作ろう」というのが基本コンセプトですので、設計サービスにおいては、BIMを使ったサービスの事業開発に取り組んでいます。

コールセンターについては、先ほどのCRMと呼ばれるアプリやチャット、お客さまから蓄積した情報データベースを活用し、データベースビジネスを作ることを基本コンセプトとしています。この2つの事業開発を行っています。

ただし、住宅会社や関連プレーヤーのお客さまが乗ってこなければすぐには始められないため、今はまだそこまで売上・利益は立っておらず、赤字が出ています。中長期のドライブでは、今後一定の時間をかければ業界が変わっていくと考えていますので、取り組みを進めていきたいと思っています。

kenmo:今後建築業界では、BIMを導入していかなくてはならない流れがあると思うのですが、なかなか標準化というか、足並みがそろわないイメージがあります。御社の肌感はいかがでしょうか?

吉原:おっしゃるとおり、日本の建設業界では、2DのCADが日本市場特有の進化を遂げており、変える動機付けが低い状況です。「効率的になるのはわかるが、変えるには手間がかかる」というのが現状ですが、アメリカや中国など、海外の高層ビルはすでにBIMに置き換わっています。

国土交通省も、そのような世界の趨勢を理解しているため、今日本でも躍起になって仕掛けています。そのため、既存プレーヤーたちがすぐに変わることはないものの、5年、10年の時間軸で見ると、置き換わる方向に進むと思っています。我々はそこにも研究開発投資を行っていこうと考え、DXに取り組んでいます。

kenmo:高層ビルは情報量が非常に多く、図面も膨大な量になるためBIMを使い、それが徐々に下流に流れてくるイメージでしょうか?

吉原:おっしゃるとおりです。住宅分野でも、例えば規格型アパートは効果が出ると思いますので、進めていきたいと思っています。

質疑応答:季節性による繁閑差について

kenmo:季節ごとに待機人員が出てしまうなど、仕事の繁閑差があると推測するのですが、平準化や人員の効率化について教えてください。

吉原:設計サービスには季節性があると先ほどお話ししたのですが、第3四半期がやはり小高くなります。

ただし、第1四半期、第2四半期と比べて倍も違うというほどではなく、既存の人たちをあてて、一定程度の残業時間を確保すれば対応できる範囲です。

それ以外のメンテナンスサービスや再エネサービスには、そこまで目立った季節性がないため、あまり心配しなくても大丈夫だと思います。