会社概要
林順之亮氏(以下、林):みなさま、こんにちは。全研本社株式会社代表取締役社長の林順之亮です。本日はご視聴いただき誠にありがとうございます。弊社のことをより知っていただくために、今回はどうぞよろしくお願いします。
まず、会社概要からご説明します。弊社の創業は1975年で、比較的長い歴史を持つ会社です。グロース市場に上場しており、IT・語学・不動産という3つのセグメントで事業を展開しています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):社名の由来は前回もお話しいただきましたが、アルファベット表記に変わることを踏まえてもう一度教えてください。今日初めて見た投資家も理解が深まると思いますので、お願いします。
林:全研本社の前身となる企業が教育事業を営んでおり、「全国教育研究所」という社名でした。その名前の頭文字をとって「全研本社」という名前になりました。この10月からは、「Zenken株式会社」に社名を変更します。
ビジョン
林:弊社は2000年頃に教育事業からIT事業に業態転換し、IT事業が伸びてきています。5年ほど前から日本語教育を活かした海外IT人材事業にかなり力を入れており、現在はそちらを成長事業としています。
今後、日本の生産年齢人口減少により発生する課題をITで補強したり、日本語教育により海外人材を補強しながら日本企業に投入して、日本の生産年齢人口減少という非常に大きな社会課題を解決していく企業になりたいと思っています。
これから国内外に向けてそのような事業をしっかり成長させていきたいという思いから、社名を「Zenken株式会社」に変更することにしました。
まったく違う名前にしなかった理由は、創業の教育事業に対しての感謝や敬愛があり、また、そのアセットをこれからも十二分に活かしていきたいという思いがあったためです。「全研」という名前をそのまま英語に変え、内外にアピールしていきたいと考えています。
事業の変遷
林:当社の沿革です。全研本社は1975年に創業し、2000年からIT事業へ参入しました。私は19歳くらいに起業を決意し、20代で教育関連の会社を経営し始めました。
しかし、少子化が進行しシュリンク市場になっている中、ちょうどITがかなり盛んになってきたという背景を受けて、30歳くらいの時に「Zoom」のような仕組みを使ってオンラインのパソコン教室のフランチャイズ事業を作ろうと考えました。
開業資金が手持ちだけでは厳しいため、全研本社の創業者である吉澤信男に出資の相談に行きました。そこで「会社ごとグループにジョインしてくれるのであれば、ぜひ」というお話をいただいたため、統合しIT事業をスタートさせました。
これが20年ほど前のことで、統合してからはIT事業を主力に成長することができました。その後、吉澤が68歳くらいの時に社長就任の打診があり、私が2代目として社長に就任したという流れです。そして、5年ほど前に海外IT人材事業に着手し、現在は海外介護人材事業も新たにスタートしています。
事業の概要①
林:売上構成としては、ITセグメントが約8割を占めており、そのうちの6割以上を主力のコンテンツマーケティング事業が占めています。セグメント別利益に関しても、ITセグメントが約8割を占めています。
売上規模の大きなITセグメントのうち、特にコンテンツマーケティング事業をこれからも主力事業として成長させていきたいと考えています。同時に、今成長事業として掲げている海外IT人材事業や海外介護人材事業にも、かなり注力して取り組み始めています。
弊社が経営する日本語学校では、インドのベンガルールの外国人人材やインドネシアの介護人材が学んでいます。インドやインドネシアにいる時は、提携の日本語学校で日本語能力試験のN5、N4、N3レベルを学び、日本に来たらN3、N2、N1レベルを学ぶというかたちで、弊社が直に日本語を教育しています。
不動産セグメントは創業者の吉澤が残し、そのままでかなりの安定収益を得られています。元手の土台があることで、新たな投資事業ができているという状況です。
坂本:次に力を入れる分野がわかりました。特に海外ITという事業スキームについては、今後あらためて教えていただきたいと思います。
主力事業の環境 ITセグメント
林:本日は時間が限られていますので、主力事業であるコンテンツマーケティング事業と、成長事業である海外人材事業の2つに絞ってお話しします。
まずはITセグメントです。コンテンツマーケティング事業がメインで、主に顧客の集客向上のためのコンテンツ制作を手掛けています。
スライドのグラフのとおり、インターネット広告市場は毎年非常に堅調に拡大を続けており、足元では約2.9兆円規模に成長しています。この傾向は今後も続いていくと考えており、弊社はこの成長市場で独自のコンテンツマーケティング事業を展開していきたいと思っています。
主力事業の特徴① 専門性の高い集客メディア
林:弊社が手掛けているコンテンツマーケティング事業は、どちらかというとインターネットやITが不得手な会社をニッチトップメディアという施策でサポートしており、この領域でNo.1企業になろうと考えています。
Webマーケティングは、他社にもよくある事業です。しかし、「ベアリングなら○○」「充填機なら○○」など、狭い市場で専門的なメディアはほとんどありません。
坂本:ありませんね。「○○とは」と検索しても、それを作っている会社のちょっとしたサイトが出てくるだけで、結局よくわからないということが多いです。
林:おっしゃるとおりです。そのような小さな市場にも必ずプレーヤーが何社かあり、そこに競争原理が必ず働いています。そして、それを求めるユーザーニーズも当然あるため、そのような会社は何十年も堅調に成長することができています。
このような市場が、実は莫大な市場だったりします。そこにひしめく小さな市場にいるお店や企業を、全国津々浦々のきめ細かいエリアまでサポートするようなメディアを運営しています。
坂本:非常におもしろいですね。私も「これは御社のメディアだろうな」と思うものをいくつか見たことがありますが、非常に良いなと思います。
林:今までに、約8,000メディアを制作・運営してきました。
坂本:なるほど。それだけの多さなら、みなさまも何か見ているかもしれないですね。
林:そうですね。足元では約1,100メディアを超えるくらい運用しており、利益を上げています。
主力事業の特徴② クライアント商材とユーザーのマッチング
坂本:スライドの図がビジネスモデルですね。
林:特にニッチ市場に特化しているため、「専門メディアがないところに専門メディアを作る」というミッションで取り組んでいます。
検索市場では、健康系、美容系、医療系などのマーケットが多くの広告費を持っているため、IT業者はその分野に集中しがちです。弊社も最初はそちらにかなり注力しており、順調に新規案件を受注していました。
しかし、多くの広告費を持つ分野は、その分レッドオーシャン市場です。したがって、作ったメディアを上位表示させるためのコストがかかり、結果的に利益率が非常に低くなります。
しかし、例えば自動精算機メーカーのメディアなら、制作後2ヶ月から3ヶ月すれば検索結果1ページ目の1位、2位、3位くらいまで上がってきます。つまり、リスティング広告などのコストをまったくかけずに上位表示できるということです。
検索エンジンの順位を決定するアルゴリズムは、昔から変わらずユーザーにとって有益な情報を上位表示します。テクニカルなSEOの時代は終わり、しっかりとしたコンテンツを作る会社のみが上位に上がることができます。
検索ユーザーのニーズとクライアントのニーズがマッチするメディアを作り、それをしっかり読み込んで、納得して、クライアントのページに飛んでいただくことで、非常に高いコンバージョンを得ることができるというのが弊社の仕組みです。
「どのような優位性をアピールするとコンバージョンしやすいか」というところまでコンサルティングし、業界全体とクライアントのバリュープロポジションを調べ、そこを強調して、すべてのクライアントの良いところをメディアに掲載します。
ユーザーのニーズはさまざまです。そのユーザーのニーズに合わせ、コンバージョンしやすい専門メディアを8,000件ほど手掛けてきました。
坂本:非常によくわかりました。この事業も御社の収益の柱になっていますが、そもそもこの事業に取り組もうと思った理由と、アクセルを吹かして非常に伸ばすことができた理由を教えてください。
林:非常に単純な話です。約20年前にパソコン教室のフランチャイズ事業を立ち上げた時に、自社のLPに「弊社のフランチャイズ事業はこのようなメリットがありますよ」と掲載していました。
しかし、そのLPを訪れた人よりも、「PC系のフランチャイズ事業ならここ」というようなフランチャイズ事業をたくさん紹介するメディアから来る人のほうが、コンバージョン率が高かったのです。
例えると、各保険会社が自社の保険をアピールするよりも、「ほけんの窓口」のように束ねたかたちで紹介したほうが食いつきが良く、非常にコンバージョンしやすいということです。
こちらをグループ内のいろいろな事業で試したところ、全部うまくいきました。そのため、世の中のすべてのクライアントにおいても同じことではないかと考え、独自で取り組み始めた結果、約8,000メディアを作るまでに至っています。
主力事業の強み① バリューチェーンと収益モデル
林:弊社は、市場調査から編集、デザイン、品質管理、リーガルチェック、運用にいたるまで、すべて一気通貫で行っているため、非常に速いスピードで対応できる点が強みです。それにより、クライアントから月額運用費なども得ることができるため、収益性の高いビジネスモデルとなっています。
コロナ禍によって、我々がコアターゲットとしていたエステサロン、結婚式場、住宅展示場、ありとあらゆる店舗、スクールなどが大きな打撃を受けました。
ネットマーケティングをまったくしていなかった製造業などでは、東京ビッグサイトなどに年に1度出展し、名刺を200枚から300枚集めて後追い営業するような手法しか使ってこなかった会社が多くいます。その方々の営業活動の場であった住宅展示場や国際展示場が、コロナ禍ですべて閉鎖されてしまいました。
そこで、広告業界はどうするのかという状況になり、インターネットならできるのではとマーケティングを始めてみたところ、ことごとくうまくいきました。
美容・健康業界のようなレッドオーシャンと比べ完全にブルーオーシャンで、これまで充填機で100ページ単位のメディアを作る会社はなかったため簡単に上位表示され、非常に高いコンバージョン率で送客できるモデルが出来上がったのです。
坂本:非常によくわかりました。スライド左側の制作(編集)の部分はかなり労力がかかる工程ですので、専門分野に外注することもあると思います。
僕は最近話題の「ChatGPT」で本を書いています。そのため、今後「ChatGPT」を使って御社と同じようなコンテンツを作る人が出てくると思いますが、それは御社の経営にとって逆風になるのでしょうか? それとも、もともとの強みがあるため影響はないと思っていますか?
林:両方だと思っています。「ChatGPT」の大きな可能性からは、弊社もかなり恩恵を受けられると思っています。
主力事業の強み② コンテンツ制作力
林:弊社が独自に運営しているライター採用サイト「ライターステーション」には、美容ライター、医療ライター、工業ライター、新聞記者など、専門的記事を書ける方が1,000名以上登録されています。コロナ禍で副業が認められるようになったこともあり、今までに千数百名の方々を、十数年間採用の中間マージンゼロで集めています。
「ChatGPT」は、日本語で入力すると、かなりとんちんかんな回答が出てくることがあります。先般リリースしたとおり、AI専門会社のJAPAN AIと提携し共同開発を行うことを、他社に先駆けて開始しました。
英語由来のサービスに負けないために、弊社が制作してきた8,000メディアの膨大な文字量を生成AIに学習させることで、かなりレベルの高い日本語のコンテンツのWebメディアを制作します。
同時に、集客メディアとしては「買いたくなる」ような高度な文章制作にも力を入れています。それが出来上がると、弊社の制作にかかる人件費部分が大幅にコスト削減できることと、現在かかっている工数が圧倒的に減るという2つのメリットがあります。
他社の追随に関しては、弊社の圧倒的なマンパワーと、何千ものメディアを制作・運営してきた強みがあります。そのメディアをAIに学習させ、クローズドAIとして弊社独自で展開していこうと思っているため、いわゆるOpenAIのようなものが台頭してきたとしても、かなり先を行くことができるのではないかと考えています。
坂本:非常によくわかりました。ありがとうございます。
集客メディア展開事例(構成)
林:非常に高いレベルのライターが作ったコンテンツでメディアを生成し続けてきたため、「メディア 制作事例」でGoogle検索していただくと、おそらく弊社の「キャククル」というメディアが1位に出てくると思います。
主力事業の市場領域
林:「キャククル」には、スライドに記載の工作機械オーバーホール、3Dマシンビジョン、振動試験機など、弊社が作ってきたありとあらゆるメディアが表示されています。これらの市場において、何千単位でWebメディアを作っている会社はかなりまれだと思います。
このように、競合他社が簡単には真似しにくい状況があります。実際に、上場企業で弊社と似たメディア展開をしているところはほとんどなく、弊社が単独で走れていると思っています。
成長戦略 海外人材事業の拡大 ~市場背景
林:現在かなり注力している、海外人材事業についてご説明します。日本では人口減少が進んでおり、この状況は誰も止められないと思います。
労働力が半分になり、経済力やGDPが半分になった時に、そこを補うのはやはりテクノロジーとIT人材、海外人材ではないかと考え、まずはIT人材から力を入れ始めました。
成長戦略 海外人材事業の拡大 ~海外IT人材①
林:日本のIT人材は、2030年には約79万人不足すると予測されているため、この社会課題を解決しようと、日本企業にIT人材や介護人材を紹介する取り組みを始めています。
成長戦略 海外人材事業の拡大 ~海外IT人材②
林:本事業においては、新卒と中途で異なる採用戦略を採っています。新卒採用は、インド・ベンガルールの上位40近い大学と提携し、インドのICT教育を受けたレベルの高い新卒学生と日本企業のマッチングに取り組んでいます。中途採用は、2022年に「Yaaay」というマッチングプラットフォームをリリースしています。
坂本:「Yaaay」はおもしろい名前だと思いますが、由来を教えてください。
林:インドは、今年か来年には世界一の人口大国になりますが、実は、人口が多すぎるために、人材に対して圧倒的に就職先が足りないという日本と真逆の悩みを抱えています。
例えば、弊社のようなグロース企業や中堅の上場企業が100万円かけて日本でIT人材を募集すると、10人前後の応募しかありませんが、弊社が手掛けるマッチングサービスでは500人近い応募者が集まります。
ITテストを行って100人ぐらいに絞り込み、二次面接、三次面接を経て20人ぐらいまで絞り込んで、最終的には3人から4人採用されます。その時に「イエーーイ!」と泣き崩れるように雄叫びを上げる人が多く、その場面に毎回感動して癒されることから、そのような思いをサイト名にしようと決めました。
成長戦略 海外人材事業の拡大 ~海外IT人材③
林:「Yaaay」は今、世界80ヶ国以上の国籍の即戦力になる人たちが集まる集客プラットフォームに成長しています。足元でも登録者がどんどん増えており、この1年で2万人を超えました。ここから内定につながっていくように、着実にビジネスを伸ばしていきたいと考えています。
坂本:海外人材で日本の労働力問題が解決できるというのは、理想であると同時に、そうするしかないとも思っていますが、海外人材が日本に馴染むのはかなり難しいと思います。
語学の面では、現地と日本の2段階で教育を施していくため、ある程度頭の良い方は話せるようになり、コミュニケーションは取れると思います。しかし、食べられる肉の種類など、文化に馴染むのが意外と大変なのではないかと思います。そのあたりの問題にはどのように対処されていくのか教えてください。
林:ベトナムなどに進出している企業はかなり多いですが、我々も中国やアメリカのシリコンバレーを含め10ヶ国ほどを訪れ、人材レベルや採用状況を視察しました。その中で、圧倒的にレベルが高かったのがインドのベンガルールでした。
世界の名だたるIT企業のCEOがベンガルール出身であるなど相当レベルが高いということと、日本の津々浦々、インド料理店のない街はほぼありません。
坂本:確かに、中華料理とインド料理は世界中にありますね。
林:まず、それらが大きな決断の後押しになりました。加えて、ある時間帯になったらどこかの方角を向いて拝み始めるということもないため、日本人が思うほど宗教的な問題もありません。そして、政治的にも日本とインドが非常に安定した外交関係を結んでいることや、その他さまざまなことを考えた時に、人材マーケットとしても今後ますます伸びていく国だと思いました。
インド視察の時には直行便がなく、我々のスタッフは18時間ぐらいかけて行き来していましたが、それでもインド市場に魅力を感じ、インドの人材を日本に供給する事業は絶対に伸びると確信しました。
現在、現地の大学内に弊社がキャリアセンターを作り、日本でIT人材として働きたいインド人のために、従来は4年生からだったところを、3年生、2年生と前倒しして、日本語教育に力を入れています。
弊社はクライアントとインド人エンジニアの間に立って、語学教育のノウハウをフルに使い、文化教育から言葉の教育までフルサポートしています。日本に馴染む、馴染まないの問題も、物理的に人口が減っていき、どうしようもなくなれば雇うしかないという状況がすぐそこまで来ているため、そこに着眼して先行で走っているところです。
成長戦略 海外人材事業の拡大 ~海外介護人材①
林:また、介護領域においても人材減少問題は切迫しており、2040年には69万人の介護人材が不足するだろうと言われています。この問題についても、IT人材事業で培ったノウハウを今度はそのままインドネシアに使い、日本の介護施設への受け入れから定着まで一気通貫でサポートを行っています。
成長戦略 海外人材事業の拡大 ~海外介護人材②
林:介護事業でわからないことがないように、弊社がM&Aで取得した介護施設に弊社が採用したインドネシア人材を入れる取り組みを行っています。彼らは一生懸命がんばっており、おじいちゃんおばあちゃんと一緒に楽しく過ごしています。
そのような成功事例を見ていただくことで、介護事業も拡大していこうと考えています。結果として、他の介護事業者も海外介護人材を受け入れやすくなるのではないかと思います。
また、先般の非常に大きなトピックとして、弊社の約5年間の実績が評価され、インド政府機関のNSDCI(NSDC International Limited)とMOUを締結し、弊社を通じてIT人材と介護人材を安定供給してすることになりました。
海外人材を日本に入れて働いてもらう流れは、まだ言葉の問題などはありますが、今後さらに加速するだろうと考えています。
2023年6月期 連結決算ハイライト【前期比較】
林:2023年6月期の決算についてご説明します。2023年は前期比で減収減益となり、売上高は70億円で約7億円のマイナス、営業利益は8億円で約15億円のマイナスとなりました。
こちらは、AI事業を手掛けていた子会社サイシードの株式を今年5月に譲渡したことが要因です。コロナワクチンで大きく利益を出したものの、コロナ禍の収束とともにワクチンの需要がなくなったため売却に至りました。営業利益は、サイシードの減収とITセグメントにおける費用増加が影響しています。
スライド右側のグラフには、サイシードの影響を除いた前期比較を示しています。サイシードを除くと、売上高は約3億円のプラス、営業利益は外注費や人件費などの費用が増加したことにより約5億円のマイナスとなっています。
2023年6月期 連結決算ハイライト(セグメント別)【前期比較】
林:セグメント別の前期比較です。ITセグメントの売上高は54億円、営業利益は11億円で減収減益となっています。減益の要因は、サイシードの減収に加え、コンテンツマーケティング事業においてリスティング広告の出稿を増やしたことです。
また、先ほどお伝えしたとおり、SEO激化のレッドオーシャン市場でのメディアをリスティング広告でカバーしたことによる外注費の増加や、採用増に伴う人件費の増加なども要因となっています。
語学セグメント、不動産セグメントはそれぞれ増収増益で着地しています。
主な指標①
林:新規公開メディアは280件で、運用メディアは1,151件です。単価が高く、専門メディアが少ないBtoB業種へのアプローチを特に強化しています。メディアの件数自体は減少していますが、非常に専門性の高いメディアのため単価自体が向上し、継続率もコンバージョン率も高くなっています。売上高は前期比でほぼ横ばいです。
主な指標②
林:主要メディアを業種別に見ると、BtoBが50パーセントを超える勢いになってきています。BtoB業種は製造業や機械、エネルギー、ITツール、コンサルティングと非常に巨大なマーケットで、毎年新しい技術や商品が生まれますが、それらの情報は不足しています。
弊社は専門メディアのないところに専門メディアを作ることをミッションにしていますので、さらにここを伸ばしていきたいと考えています。
トピックス
林:トピックスです。
1点目として、3月にスタイル・エッジと資本業務提携を行いました。スタイル・エッジは士業、医業など専門家に特化したシステム支援とマーケティング支援をワンストップで行うことが強みです。弊社は幅広い業種を対象とする集客メディアに強みを持っていますので、相互のお客さまに相互の商品を販売できることで伸びていけると考え、連携に至りました。
2点目として、AI事業を担うサイシードの全株式を譲渡しました。こちらは今後、成長事業が見込めない事業の選択と集中を進めた結果です。コロナ禍が収束し、AIに関してはそもそも赤字で「ChatGPT」などによりかなり競争が激化されると考えたため、売却を決意しました。
トピックス
林:3点目は、配当方針の変更です。株主のみなさまに長く応援していただける企業になるために、今後はより積極的な利益還元を実施していきたいと考えています。配当については、当面の間、年間配当性向40パーセントを基準とし、安定的な配当を行っていきたいです。なお、直近の配当性向は56.4パーセントです。
4点目として、1億円を上限とする自己株式の取得を決議しました。当社の株価は、過去の株価水準と比較すると割安で推移していると認識しているので、株主還元の充実と資本効率の向上を目的に、自己株式の取得を行うことにしました。今後の業績や戦略的な投資機会、株価水準などを総合的に考え、自己株式の取得を検討したという状況です。
坂本:配当方針の変更については、自社株買いも初めてだと思います。次々と株主還元策を打ち出されていますが、株主還元に舵を切った背景と社長のお考えについて教えてください。
林:株主のみなさまにとにかく長く応援していただける企業になりたいことと、そうするためにどうしたら良いのかを考えた結果です。弊社は利益還元をすると同時に、当社の事業を理解し長く応援していただくことによって、さまざまな新事業に投資し、さらに成長させ、株価の上昇につなげていきたいと考えています。
2024年6月期決算の見通し概要
林:2024年6月期の見通しについてご説明します。売上高は前期比マイナス約6億円の64億円を見込んでいます。サイシード売却によって売上高は減少するものの、コンテンツマーケティング事業および海外人材事業の成長を見込んでいます。
一方で、営業利益は前期比マイナス約1億円の7億円となる見込みです。サイシード売却による減収、海外人材事業の広告宣伝費などの費用の増加を計画していることから、減益を見込んでいます。営業利益率は11.2パーセントとなる見込みです。
セグメント別の見通し
林:セグメント別の見通しです。ITセグメントは、コンテンツマーケティング事業の業績拡大を見込む一方で、サイシード売却によって減収を見込んでいます。費用面は、今後成長を見込む海外人材事業などにおいて、広告宣伝費などの増加を考えています。以上により、売上高は前期比マイナス約6億円の48億円、営業利益は前期比マイナス約1億円の10億円を見込んでいます。
このITセグメントの見通しが全体の売上利益の見通しに影響しており、語学セグメントの売上高は7億円、営業利益は3,200万円を見込んでいます。不動産セグメントは前期と同程度です。
2023年6月期の振り返り
林:最後に、当社の中期成長戦略についてご説明します。1つ目はコンテンツマーケティング事業のさらなる拡大、2つ目は成長事業の海外人材事業の拡大です。
中期における数値目標については、CAGRを15パーセントから20パーセント、連結営業利益率を3年間平均20パーセントと掲げています。
中期成長戦略
林:こちらはもともと掲げていた数値でもありますが、前年度業績の下方修正を行いました。サイシード売却の影響により、前年度までに掲げていた目標の達成が困難となりましたので、あらためて数値目標を掲げています。
下方修正の要因は、コンテンツマーケティング事業の費用増加と、海外人材事業がまだ収益規模がそれほど大きくなっていないことです。今後飛躍できるようにいろいろやるべきことがありますが、プライム上場までは業績向上が大前提ですので、掲げた目標は最低限絶対やり抜きたいと考えています。
また、外部リソースのM&Aを活用し、さらなる可能性を追求して大きく成長させていきたいと考えています。
今後、全研が日本と世界の架け橋となって、グローバルに全研ブランドを浸透させて事業を展開するために社名変更を行います。10月以降は全研本社ではなく、社名を変更して英語のZenkenで認知を高めていきたいと思います。今後もご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。
質疑応答:今後のBtoB比率について
坂本:BtoB比率がかなり高くなっていますが、今後この比率はどうなるのかについて教えていただきたいと思います。
林:今後、ますます高くなります。電気、機械、土木、建設とかなり膨大な市場があるものの、まだ市場全体の10パーセントも取りきれてないと感じています。これらの市場は継続率もコンバージョン率も高く、上位表示も誘いやすいですし、一つひとつの商品・サービス単価も高いため、すべてがコンテンツマーケティングに向いた市場であると考えています。
坂本:確かに、BtoBはCMを打ってもそこまで響かないところがありますので、意外とコンテンツマーケティングが向いていると思います。
林:そのために今営業の人材の投資採用に今かなり力を入れています。いわゆるエビデンス営業ができなければいけないため、それができる営業担当の採用と育成に今取り組んでいます。
坂本:やはり会社の詳しい業務内容なり、お困りごとにある程度沿って営業しないといけない結構なスキルが要りますよね。
林:そうですね、ですがまったく違う会社の数値も提供することによって「あっなるほどね」となりやすいです。
坂本:すでにけっこうなデータ量があるということですね。
質疑応答:語学セグメントの営業利益率低下について
増井麻里子氏(以下、増井):語学セグメントの営業利益率が下がっている理由を教えてください。
林:こちらはさまざまな細かい要因があります。
増井:売上自体は、むしろ増えていますので、いろいろとコストがかかったということですね。
質疑応答:スタイル・エッジとの提携について
坂本:M&Aを行った企業の売却等々を行っており、どちらかというと事業ポートフォリオをかなりうまく入れ替えながら成長されていると思います。資本業務提携を行ったスタイル・エッジは、基本的に御社と同じような業務であり、御社よりもさらに士業を含めた専門的なサイトを作っているという印象でよろしいでしょうか?
林:我々は、1社に1メディアか2メディアと、集客メディアを多くの会社に提供しているのに対し、スタイル・エッジは士業や医業などのかなり限られた業界に深く入り込み、いわゆるハウスエージェンシーとして何から何まで動くことで大きな実績を出している会社です。
そのため、同じようなことを行っているようで、「浅く広く」と「狭く深く」という違いがあります。ノウハウをお互いに享受しながら、お互いに伸ばしていけるというところで提携することを決断しました。
坂本:これからの成長を含めても、この分野は御社が大変力を入れている分野ですので、他の業種と強い会社を買収したいということは考えられているのでしょうか?
林:おっしゃるとおりです。弊社はかなり財政的には資本力のある会社ですので、それを十二分に活かしたいと考えています。上場したのがコロナ禍のまっただ中の約2年前です。数ヶ月前にコロナ禍がなんとなく終結した雰囲気になっていますので、今まで大きな戦略を練って出られなかった分、ここからだと思っていますので、さまざまなM&Aや業務提携に邁進していきます。
質疑応答:インドの学生に人気の国について
坂本:インドの学生の日本に対しての人気についてうかがいます。インド国内で働くなら外へ出たほうが良いと思っている人が多いとは思いますが、大学を出た方からの日本の人気度というか、例えば他の人気国なども含めて教えていただければと思います。
林:もちろん、かなりレベルの高い大学の方々は、アメリカのGoogleやAmazonに憧れている方もたくさんいます。しかし、なにせ人口が多いため、日本やシンガポール、中国、韓国に行きたいという人もたくさんいます。
日本が人気な理由は、やはり安全の部分と食の部分です。加えて、若者であればアニメなどの日本文化も理由です。日本人が思っているよりも、日本という国は海外の人から見るとかなり魅力的な国だということです。
坂本:インド出身コミュニティも葛西のほうに行くとありますよね。
林:海外人材を扱う採用としては、大きな会社が10年で4万人の外国人人材の登録を集められたのに対し、弊社は1年で2万人集めていますので、おそらくあと数年で日本で1番外国人材を抱える会社になろうかと思います。
今は世界中から膨大な数の人が日本で就職したいと、弊社のプラットホームに登録してきている状況です。
坂本:たしかにITは教育コストがとてもかかりますので、ある程度お付き合いのある人にお願いして使っていただくというのはビジネスとしてすごく良いと思います。
質疑応答:ニッチ企業に対する対応について
増井:「ITサービスのニッチメディアについて、登録制でライターがたくさんいるということでした。今後はさまざまなニッチ企業が出てくると思いますが、御社で対応し切れるのかどうかが少し不安です」というご質問です。
林:今は登録者だけで千数百人を超えており、弊社社内だけで150人近いSEO編集者といわれる人を正社員で抱えています。外部ライターを1,000人以上抱え、外部に医療ライター、工業ライターなどの専門性の高いライターの人たちが数百人レベルでおり、さらに「らいく」という月額1,000円のライター育成コンテンツがあり、ライターの育成にも力を入れています。この数は弊社が圧倒的という状況です。