2023年3月期の概況
斉藤雅也氏:それでは私から、2023年3月期の実績についてご説明します。当期は、新型コロナウイルス感染症の影響が全般に続いたものの、行動制限の緩和が進んだため、経済活動に改善の兆しが見られました。
世界的な消費マインドの回復とお客さまのニーズに合った商品提案に加え、円安の進行により大幅な増収となりました。
一方、ロシアのウクライナ侵攻の長期化を受けた世界的な原材料の高騰やエネルギーコストの上昇などにより原価率は悪化したものの、販売費および一般管理費の効率的活用に努めた結果、大幅な増益となり、売上および各利益段階で過去最高を更新しました。
国内においては、新型コロナワクチンの接種が進んだことや経済活動再開の動きから、消費マインドが回復傾向となりました。前期末に新発売した酵素洗顔が好調の「メラノCC」や 、日やけ止め、「肌ラボ」「ロートV5粒」、高額目薬などが好調を持続し、コロナ禍前を上回る売上となりました。
マスク着用習慣により伸び悩んでいたリップクリームも回復傾向となっています。新型コロナウイルス抗原迅速検査キットも17億円と増収に寄与しました。また、2021年8月に子会社となった天藤製薬やロートニッテンなどの子会社も売上・利益面で貢献しました。
海外事業についても、全地域セグメントで大幅な増収、増益となり、特にアジアでは東南アジアが成長を牽引しました。また、香港や台湾も増収に寄与しました。
カテゴリー別では、アイケアや日やけ止め、アジアを中心に伸ばした「50の恵」や「セルサン」のヘアケアが大きく増収に貢献しました。
連結損益
連結の損益計算書です。売上高は2,386億6,400万円と、前年同期比19.5パーセントの大幅な増収となりました。売上原価率は、原材料費やエネルギーコスト、人件費の上昇等の影響を受けましたが、増収効果と従前より続けている構造改革の効果により42.4パーセントと前年同期比0.6ポイントの上昇に留まりました。
営業利益は、広告費や研究開発費が増加したものの、大幅な増収により339億5,900万円と、前年同期比17パーセントの大幅な増益となりました。経常利益は、355億6,800万円と、前年同期比23.7パーセントの増益、親会社株主に帰属する当期純利益は、263億7,700万円と、前年同期比24.9パーセントの増益となり、売上・各利益段階で過去最高を更新しました。
2月に上方修正した業績予想値と比較しても、売上・各利益段階で上回る結果となりました。当期の為替レートは、前期の1USドル=111.55円に対して、20.3パーセント円安の134.19円で、円安効果により売上高を約128億円、営業利益を約15億円増加させる影響がありました。
連結営業利益の増減
グラフは、営業利益への寄与を表したものです。原価率の上昇と広告費、研究開発費、 人件費などの管理費が増加しましたが、大幅な増収により増益となっています。
業績推移(5年)
スライドに過去5年の業績推移を示しています。コロナ禍ではありましたが、売上高の5年平均増収率は8パーセント、5年平均営業利益率は13パーセントとなっています。また、ROEは当事業年度が13.6パーセントで、5年平均でも11.4パーセントと改善傾向が続いています。
報告セグメント別売上
エリア別では、日本が前年同期比で約153億円増加の12.6パーセントの増収、アジアが前年同期比で約148億円増加の26.4パーセントの増収になるなど、すべての地域で大幅な増収となりました。
報告セグメント別営業利益
営業利益についても、各地域とも大幅な増益となりました。特に、日本とアジアが利益を 大きく伸ばして連結業績に寄与しました。
日本 大幅な増収増益
報告セグメント別にご説明します。日本においては、売上高が1,366億6,800万円と、前年同期比12.6パーセントの大幅な増収となりました。
当期も引き続き新型コロナウイルス感染症の影響は続いたものの、経済活動の再開が進み消費マインドが回復したこと、お客さまのニーズをいち早くキャッチした新製品の投入やマーケティング効果により、アイケア、スキンケア、内服、その他すべてのカテゴリーで増収となりました。
また、ロート製薬単体だけではなく、「ボラギノール」で知られる天藤製薬やロートニッテンなどの子会社も業績に貢献しました。
営業利益は、原材料やエネルギーコスト、運賃などの上昇があったものの、大幅な増収と 販管費の効率的活用により、セグメント利益は211億5,000万円と、前年同期比10.1パーセントの増益となりました。
コロナ前の売上を上回る商品群
前期から好調な商品群も引き続き順調に推移しており、コロナ禍前の売上を上回っています。美白ラインとアンチエイジングラインが好調な「肌ラボ」や、発売して17年になる「メラノCC」の美容液は幅広い年代の方に支持されており、今ではドラッグストアで個数ベースで最も売れている美容液となっています。
ドラッグストアでの個数ベースで最も売れている化粧水が「肌ラボ」、2位が「メラノCC」となっており、基礎化粧品カテゴリー全体で見ても最も支持されるメーカーになりました。
日やけ止めにコントロールカラーの概念を付加した高付加価値の日やけ止め「スキンアクア トーンアップエッセンス」も、引き続き好調を維持しています。サプリメントの「ロートV5粒」は、デジタルデバイス使用頻度の増加により眼精疲労を訴える方が増えており、大変好評いただいています。同様に高額目薬も好調に推移しています。
好調持続の商品群
化粧品のダウントレードと言われていますが、ドラッグストアで5,000円から1万円で販売されている「オバジ」も好調を持続しています。リップクリームについても、マスク着用によりカラーリップは落ち込みましたが、薬用リップの需要が高まりました。
2018年に発売した発毛剤で、ミノキシジルを国内最大濃度配合した「リグロ」もブランドを根気強く育成した結果、10億円を超える売上となりました。
インバウンド需要回復傾向に
インバウンド需要については、中国からの団体旅行客は戻っていませんが、韓国や台湾、 ベトナム、フィリピン、タイなどからの旅行客が増加しており、回復傾向にあります。
商品別では従前と変わりなく「エピステーム ステムサイエンスドリンク」や「メラノCC」、目薬やコンタクトレンズケア用剤などが堅調に推移しており、売上は前年同期比18.5パーセント増の約22億円となりました。
アジア 大幅な増収増益
海外事業で最大のアジアについては、売上高が前年同期比26.4パーセント増の707億7,300万円と、大幅な増収となりました。「50の恵」が好調な香港や、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどの東南アジアが好調に推移しました。
アジアの売上の約4割を占める中国に関しては、第4四半期のロックダウン解除による新型コロナウイルスの急激な感染拡大などにより消費が落ち込み、第4四半期については減収となりましたが、通年ではほぼ前年同期レベルに落ち着きました。
営業利益については、積極的な広告販促投資を行いましたが、売上が好調だったため、前年同期比24.2パーセント増の103億9,200万円となりました。
アジア 大幅な増収増益
ブランド別で見ると、中国市場の環境悪化の影響はあるものの、他のアジア地域が好調に 推移しており、主力ブランドのすべてが2桁成長となりました。特に香港で今最も売れているブランドの「50の恵」は、積極的な広告販促活動を展開して高成長を続けています。
「50の恵」は、香港やアジアではヘアケアに特化し、メンズラインも展開しており、競争が非常に激しい香港のヘアケアカテゴリーで売上No.1を記録しています。また、フケ抑制シャンプーの「セルサン」も、東南アジアを中心に好調に推移しています。
アメリカ 大幅な増収増益
アメリカについては、売上高が前年同期比65.9パーセント増の166億5,500万円と、大幅な増収となりました。主な要因としては、前期11月に連結子会社となったハイドロックス・ラボラトリーズ社が増収に大きく貢献しました。
また、インフレが高止まりする中でも、OEM製品が売上に貢献し、リップクリームや「メンソレータム軟膏」などが堅調に推移しました。
営業利益に関しては、原材料の調達コストや人手不足による労務費の上昇があったものの、売上高の増加や販売管理費の効率的活用により、セグメント利益が前年同期比234.6パーセント増の7億2,400万円と、大幅な増益になりました。
ヨーロッパ 大幅な増収増益
ヨーロッパについては、売上高は前年同期比18.8パーセント増の122億3,100万円で増収となりました。エネルギーコスト上昇やインフレが急速に進行する厳しい環境下においても、引き続き主力の外用消炎鎮痛剤を伸ばしたことによって、大幅な増収となりました。
また、前期にイギリスでEC専売で発売した「Hadalabo Tokyo」は店頭展開に成功し、「コスモポリタン」誌でビューティアワードを受賞するなど成長を続けています。現在は東欧および中東、南アフリカで発売するなど育成を進めており、ドバイではドラッグストアチェーン「ワトソンズ」の定番ブランドとして定着しています。
2021年5月に発売した点眼剤「ロートドライエイド」は、イギリス、ポーランド、トルコの他にアラブ首長国連邦やサウジアラビアにも販路を拡大しており、容器の使い勝手が評価され、イギリスの「ベストOTCパッケージ賞」を受賞しました。現在、販売促進に努めて市場に定着させるとともに、販売エリアを拡大しています。
営業利益に関しては、アメリカ同様にエネルギーコストや原材料の調達コストが増加したものの、販売管理費の効率的な活用により、セグメント利益が前年同期比73.6パーセント増の9億7,800万円と、大幅な増益になりました。
私からは以上です。ありがとうございました。
業績見通しのポイント
杉本雅史氏:杉本です。平素よりみなさまにはたいへんお世話になっております。2023年3月期の業績は、期初予想を上回る大幅な増収増益で着地しました。私から、2024年3月期の業績見通しについてご説明します。
2024年3月期の業績については、WHOが新型コロナウイルスの緊急事態宣言を解除し経済活動の再開が進む一方、世界的に物価上昇が継続し、個人消費に影響を及ぼす懸念が強くなっています。また、ウクライナ危機による原材料費や物流費の上昇により、原価率の悪化が続くと予想されます。
海外に関しては、製品価格を値上げすることで原価率の悪化を吸収していきたいと考えていますが、急激なインフレに追いついていない状況です。国内においては、お客さまの「Well-being」を第一に考え、既存品に関しては、付加価値の追加なしでの値上げは今のところ考えていません。
このような状況においても、当社は2024年3月期も増収、増益の見通しです。日本以外の地域は増収増益予定、日本のみ増収減益の予定です。海外では円高が進むと予想しており、当社にとってはマイナス影響となりますが、アジア、特に中国がゼロコロナ政策による落ち込みから復調すると見込んでおり、東南アジア諸国が引き続き成長を牽引する予定です。
日本では国内消費やインバウンド消費が増加すると見込まれ、引き続きお客さまに支持される商品の提案を続け、増収を維持する予定です。営業利益に関しては、2024年3月期は中長期の持続的成長に向けた先行投資として、複数の新ブランドを立ち上げるためのマーケティングコストが必要になり、減益を予定しています。
業績見通し
2024年3月期の見通しについてです。売上高は前年同期比8.5パーセント増の2,590億円と増収、営業利益は前年同期比3.1パーセント増の350億円、経常利益は前年同期比1.2パーセント増の360億円、当期純利益は前年同期比0.5パーセント増の265億円と、それぞれ増益を見込んでいます。
原価率の悪化は続くと見ていますが、新ブランドの投入や販路の開拓により売上のトップラインを伸ばし、販売管理費の効率的活用を行うことで増益を目指します。なお、通期の連結業績予想に用いた為替レートは「1USドル=130円」です。
報告セグメント別売上予想
エリア別では、各地域とも増収の予定です。日本が前年同期比9パーセント増を予定しており、ロート製薬単体ではなく、この4月にアリナミン製薬から自販体制に切り替わった天藤製薬が売上・利益共に大きく成長する予定です。
アジアについては、前年同期比8.9パーセント増を見込んでおり、中国の復調に加えて、インドネシアやベトナムなど東南アジアが引き続き成長する予定です。
アメリカについては、2021年に買収したハイドロックス・ラボラトリーズ社は連結月数による増収効果はなくなりますが、2024年3月期も増収を見込んでいます。
ヨーロッパについては、依然として厳しい環境が続く中で、「Hadalabo Tokyo」が好調なDAXコスメティクス社が増収に寄与する予定です。
報告セグメント別営業利益予想
営業利益については、日本は前年同期比1.7パーセントの減益を見込んでいます。ロート製薬単体では原価率の悪化が進むことに加え、中長期の持続的成長に向けてマーケティング費用を大幅に積み増します。
また、子会社のクオリテックファーマが原価高騰あるいは受託製品ミックスの関係、また人員増などにより、2024年3月期は減益を見込んでいます。
他地域についてもマーケティング費を増やす予定ですが、増収により増益予定となっています。
Vision2030 ~Connect for Well-being~
日本における中長期の成長への取り組みについてご説明します。従来より繰り返しご説明していますが、ロートグループは、世界の人々が身体も心もいきいきと、さまざまなライフステージにおいて笑顔あふれる毎日を過ごせるよう、「Connect for Well-being」のスローガンを掲げています。2030年ビジョンにおいて、6つの事業領域でさらなる企業価値の向上を目指しています。
安定したキャシュフローの源泉であるOTC分野において、リーディングカンパニーを目指すと同時に、将来の成長戦略である医療用医薬品事業、加えて開発製造受託事業の強化を図ります。
特に、主力のOTC医薬品や機能性食品分野については、新型コロナウイルスの感染拡大もあって、自分自身で健康を保つ「セルフケア」の意識が高まったこともあり、OTC領域をコアビジネスとしている当社に、追い風となってきていると考えています。
ロートスキンサイエンス始動!
ロート製薬は2001年に「オバジ」を発売して以来、「本当の美しさは健康の先にある」を皮膚研究の信念として化粧品開発に取り組んできました。まだ機能性化粧品という言葉が一般的ではなかった時代から、例え化粧品であっても製薬会社としてエビデンスにこだわったモノ作りを行ってきました。
「オバジ」「肌ラボ」「メラノCC」などの当社の化粧品がお客さまにご支持いただいているのも、エビデンスにこだわった機能性化粧品の効果感を実感していただけているからと自負しています。
そこで、2024年3月期は「ロートスキンサイエンス」をテーマに、当社が注力して研究開発を行っている3つの戦略成分「ビタミンC」「ヒアルロン酸」「セラミド」を軸にした新しいスキンケアブランドを3つ立ち上げる予定です。
ドラッグストアでは基礎化粧品ブランドとして「肌ラボ」「メラノCC」がNo.1、No.2を獲得し、お客さまの支持を得ています。しかし、ブランドももちろん大切ですが、今後は「ロート製薬だから」「ロート製薬のスキンサイエンスだから」と選んでいただけるように取り組んでいきます。
スキンケア新ブランド ダーマセプトRX
3つの新ブランドのうち、1つは先日発表しましたのでご紹介します。「ダーマセプトRX」というブランドです。当社は美容皮膚科専用のブランド「DRX」を販売しており、その知見を活かした機能性化粧品で、ビタミンCやセラミドに加えて、アゼライン酸やハイドロキノンを配合しています。
これらは美容医療の現場でも使われている成分で、効果があるがゆえに扱いが難しい成分ですが、お客さまの肌状態に合わせて適切にご使用いただけるように、日本美容皮膚研究会監修のもと、独自プログラムの「ロートメディカルケアメソッド」を開発しました。こちらの商品は通販で販売します。
同時に、再生医療研究の知見を活かした幹細胞培養上清配合の医療機関専売化粧品「ダーマセプトRX ステムアドバンス」も新発売します。残り2つの新ブランドは近日発表予定ですので、楽しみにお待ちください。
再生医療の進捗
再生医療の進捗についてお伝えします。肺線維症の現在のステージ終了目標時期が、患者エントリーの状況により2023年度から2024年度に変更になったことを除き、スライドに記載のとおり、各パイプラインの進捗に従来の状況から大きな変更はありません。
重症心不全と腎疾患に関しては、全フェーズの治験が完了し、データをまとめて総括している段階であり、次相試験の実施も含めて検討中です。
外傷性軟骨欠損に関しては、当局に提出すべき必要な症例は予定どおり終了しており、2023年度中の承認申請を目指して現在準備を進めています。
医療用眼科治療薬の進捗
医療用眼科治療薬については、現在4つのパイプラインを走らせており、特に変更はなく順調に進捗しています。
創傷治療システム「オートロジェル システム」申請状況
創傷治療システム「オートロジェル システム」の申請状況についてご説明します。日本では高齢化の進展や糖尿病患者の増加に伴い、糖尿病性潰瘍を始めとした慢性創傷を有する患者が増えていくと予想されています。
近年、国内外で自己多血小板血漿(PRP)療法の創傷に対する有用性が報告されており、当社では新医療機器として開発を進めてきました。本医療機器は患者への適応を有するPRP療法の医療機器として、既存治療が奏効しない創傷に対する新たな治療選択肢になることが期待されます。
昨年11月に医療機器製造販売の承認を取得し、保険適用に向け現在申請中です。今年、保険適用の承認が下り次第、メディパルホールディングスに業務を委託します。
積極的に研究開発進めるも費用は微減
以上のことから、2024年3月期も積極的に研究開発は進めるものの、現時点では新たな治験費用の予定がないため、研究開発費は売上に対して4.7パーセントから4.1パーセントに減少する予定です。ただし、若干流動的な部分もあります。
アジア市場が引き続き成長を牽引
海外については、今後もアジア市場が成長を牽引する予定です。今年は、中国市場がコロナ禍から回復すると共に、香港を拠点とし、中国や台湾などの当社のアジア事業を統括するメンソレータム社・アジアパシフィックが設立40周年を迎える年になります。そのため、各国ともにGDP成長率を上回る成長を目指していきます。
また、今後は東南アジア諸国がさらに成長をリードしてくれると期待しています。ベトナムやインドネシア、マレーシアなど各国のGDP成長率は緩やかになる見込みですが、当社は東南アジアでの圧倒的なブランド力に加え、積極的なマーケティングで市場をリードしていきます。
ベトナムでは、前期に買収したナリス社の工場がロートベトナム第二工場として5月に稼働予定です。加えて、インドネシアのバンドン工場も目薬ラインを1本追加する予定となっており、生産体制も十分整っています。
20期連続増配予定
配当については、当期の期末配当金を1株当たり2円増配の12円とします。実施済みの中間配当金20円と合わせて32円となりますが、2022年12月末を基準日として2対1の株式分割を行っているため、株式分割前に換算すると通期で44円となり、8円の増配となります。
今年度の配当については、株主のみなさまの日頃のご支援に感謝の意を表するため、中間配当金を1株当たり12円、期末配当金を1株当たり12円とし、年間24円を予定しています。株式分割前に換算すると48円となり、実質4円の増配となります。
株主還元については、安定したキャッシュフローをベースに安定的に配当を続けており、20期連続増配となる予定です。
私からは以上です。ありがとうございました。
ロートが目指すWell-being経営
山田邦雄氏:私からは「Well-beingに向けて」という、ロート製薬の中長期的な展望についてご説明します。
現在では「Well-being」が世の中で広く叫ばれていますが、当社が「Well-being」と言い始めた時には、まだ浸透していない状態だったと思います。
「Well-being」にはいろいろな定義がありますが、心身ともに健康であること、豊かな生活を送ることなどが挙げられます。それにも増して重要なことは、生きがいを持って生きられる社会を作りたいと願っています。
「生きがい」は、単に「ハッピー」ということとは少し違います。「楽である」「心地よい」などとは違い、「困難にチャレンジしながらもそれを充実させ、やりがいを持って生きること」が大事だと常々考えていました。
一方で、コロナ禍前後の激変がありました。また、ウクライナ戦争や中国の政策変更に伴い、それまでは統合に向かっていた世界経済が、一転して分断方向に向かうなど、非常に不確実な時代になっていると思います。
このような不確実な時代は、一方では、不安もあり先が見通しにくく、日本の少子化の1つの原因であろうと思います。もう一方では、この不確実な時代に対応できる人材、企業が今後は生き残り「Well-being」を達成できると思います。
加えて、特にコロナ禍が明けた頃からは、日本では猛烈な人手不足時代が現実味を帯びてきました。「2024年問題」と言われており、本当に身近なところで働き手の不足が起きています。今後は人材こそ競争力となり、人材の集まる会社こそが新しいことや困難にチャレンジできると思います。
ロート製薬はこの「Well-being」を追求し、いろいろな領域でチャレンジしてきました。その成果が問われるとともに、実を結びつつあると思っています。過去を振り返ると、途上国がまだ市場開放の時代から、外国のマーケットにもチャレンジしてきました。また、医療領域でもチャレンジしたことが今日に結びついています。
数年前から再生医療への取り組みをご紹介しています。それが、医薬、「オートロジェル システム」のような製品、受託加工ビジネス、さらには動物向けの医薬や再生医療にもつながり、この精鋭分野での今後の展開が楽しみです。
一方で、「食」も健康にとって重要な要素です。「食」への取り組みも一歩一歩進めており、世界経済の分断が心配される世の中にあっては、食料を自給できる体制作りが必要です。また、「食」を通じて健康を作ることの重要性が、今こそクローズアップされてきていると思っています。
矢継ぎ早にニュースが出ているように、藤田医科大学と共同で、リアルワールドデータ利活用の社会実装に向け、合弁会社を設立しました。
リアルワールドデータにより、医療の現場の診療記録やカルテ、レセプトなどの医療を取り巻くデータ基盤を整備し、一元的に管理できるようにします。
将来的には、パーソナルなヘルスレコードとも結びつけ、患者がどのように生活し、食生活を送り、治療を受け、どのようなコンディションにあるのか、そしてそれらが治療後にどのように変化したのかビッグデータとして取り出せる時代になっていきます。そのための第一歩を踏み出しました。
従来の医療は、かかってしまった病気を治療することでした。しかし現在は、一人ひとりの遺伝子、体質、過去の生活、食の好みなどをトータルに捉え、生き方や、必要な食事や運動について個別に最適解を提供できる時代に着実に入っていきます。
このようなことを通じ、結果的に、健康で長生きし、健康寿命を伸ばして天寿をまっとうできる社会作りに実際的な意味で貢献できると思っています。
これらは国際的に見ても非常に競争が激しい領域です。いわゆる欧米のGAFAをはじめ、超巨大企業も今後は健康に取り組んでいくと思います。
不確実な時代ですが、その変化を先取りして対応し、イノベーションを起こせる人材企業でありたいと、強く確信の念を持っています。
これまでロートはいろいろなことに取り組み、「どこに行くのか」と心配されている向きもあったと思いますが、人々の「Well-being」、Well-beingな社会、人材、企業というところに集約されていくのではないかと思います。
それが、今後5年後、10年後の当社あるいは当社グループの業績のベースになると考え注視しています。簡単ですが、中長期の展望についてお話ししました。ありがとうございます。