会社概要

中西正文氏(以下、中西):中西正文です。本日は週末のお忙しい時間にご視聴いただきましてありがとうございます。聞いてよかったと思っていただけるお話をしたいと思います。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):楽しみにしています。

中西:せっかくですので、資料に書いていないことを中心にお話ししたいと思っています。

まず、会社概要です。設立は2018年とスライドに記載していますが、こちらは上場に向けたホールディングカンパニーの設立年になります。スライドの表の中央にある株式会社Kids Smile Projectという事業会社は2008年12月に設立し、現在は保育・幼児教育施設の運営を中心に行っています。

2009年5月に1園目を開園しました。それから14年ほど経ちます。だんだんと園が増え、2023年4月に2施設を開設し、全80施設になります。従業員数も1,543名超となっています。

私の経歴は、大学卒業後に大手広告代理店に就職しました。メディアのセクションが長く、特にテレビメディアの担当期間が長かったです。私が入社した時の研修では「テレビはメディアの王様だ」と言われていましたが、今では誰もが「テレビは王様ではないだろう」と思っており、時代の変遷を感じます。

このあとお話ししますが、今まさに保育・幼児教育業界に何十年ぶりかの大変革が起きています。我々としてもこれからが非常に楽しみですし、投資家のみなさまも注目されている業界なのではないかと思っています。

企業ビジョン

中西:企業ビジョンです。大手の同業他社では、子育て支援や女性の社会進出や活躍を支えるという経営理念を掲げている会社もありますが、私たちは幼児教育をしっかり行いたいという思いがスタート地点になっています。そこが他社との違いです。保育施設を運営する会社ではなく、幼児教育を実践する会社で、その過程で保育施設や幼児教育施設を運営しています。

坂本:2ページ目の経歴の最後にも記載されているように、幼児教育のつながりで、リソー教育グループの伸芽会の取締役も務めていらっしゃるのですね。

中西:リソー教育との関わりは、2015年に伸芽会との業務提携からスタートしました。2022年4月にはリソー教育とも業務提携を結び、取締役に就任したかたちです。

坂本:さまざまな関わりが多いのですよね。この話も後からいろいろ出てくると思いますので、あらためて教えてください。

事業内容

中西:事業内容です。保育施設を作り、そこに子どもが入園してくれます。補助金か保護者からの保育料かの違いはありますが、お子さまを預かることでお金をいただき、賃貸料や人件費などの費用を払い、残ったお金が利益となるシンプルな構造です。

4月以降に80施設になる中で、2つの事業を軸に展開しています。スライド左側の民間教育サービス事業は、補助金を一切いただかず、保護者からの保育料だけで運営しています。スライド右側の認可保育所事業は、99.9パーセントを補助金で運営しています。

坂本:認可保育所ばかりを運営している会社もけっこう多いですよね。

中西:多いですね。当社はこの2本立てで運営していることが特徴です。

認可保育所(ビジネスモデル)

中西:実際に認可保育所を利用している方もたくさんいらっしゃると思いますが、特徴としては、利用者は当社に直接申し込むのではなく、自治体などの行政に申し込み、保育料も自治体に支払います。そして、自治体から当社に「来月から誰々さんというお子さまが入園します」という連絡が入り、料金も自治体からいただいて運営するという仕組みです。

今月利用した人数で補助金をいただくのではなく、今月在籍している人数で補助金をいただけるという特徴があります。ふだんはあまり影響ありませんが、コロナ禍の2020年4月、5月などは大半の園が登園自粛となり、ほとんど園児は登園していませんでした。しかし、お休みしているだけで在籍はしているため、補助金は満額いただくことができたのです。

そのおかげで、従業員にも給料を満額支払うことができましたので、従業員は安心して在籍していました。そのような事態になっても、優秀な人材が辞めることなく働き続けることができるのが、認可保育所のビジネスモデルです。

坂本:認可保育所の土地・建物は賃貸ですか? それとも自前で建てているのでしょうか?

中西:一般の認可保育所事業は両タイプありますが、当社の場合は100パーセント賃貸です。

坂本:すべて借りているのですね。

認可保育所(課題と強み)

中西:認可保育所の課題と強みです。今までは待機児童が多かったため、保育園をどんどん作る必要がありました。当社も一番多い時は1年で14施設ほど開設し、業界大手の会社も毎年20施設ほど開設していました。会社として、新しい施設を作ることで成長するという右肩上がりのモデルだったのです。

子どもの数は減っているため、大学や高校、中学校、小学校、幼稚園などはどんどん減っていますが、保育園だけは利用率が上がって不足していたため、新しい施設をどんどん作っていました。しかし、いつかは保育園も足りる時期がきます。2025年、2026年くらいと言われていましたが、コロナ禍で少し早くなりました。

数字上は待機児童がまだいますが、現場レベルでは待機児童問題はすでに解消したと見ています。当社だけでなく業界全体で、新しい保育園を作って成長するモデルは終了しました。

坂本:保育業界も2歳までは充足率が高いものの、その先は定員割れしているイメージで、意外と足りている印象がありましたが、そのような状況なのですね。

中西:新しい保育園を作って成長するだけではなく、今ある保育園も充足率が減っていきます。先ほどお話ししたとおり、在籍している人数で補助金をいただくため、園児が減ってくると収支も悪くなってしまうことが今の課題です。

そのような中で、当社施設の強みは、まず保育ニーズが高い東京都・横浜市・川崎市・名古屋市に展開していることです。和歌山県で保育園を運営している方に聞いたのですが、町に定員120人の認定こども園が1つあるそうです。しかし、その町に住んでいる子どもは90人しかいないらしく、どれだけ努力しても絶対に満員になりません。

当社の認可保育所は70施設あり、東京都に63園、横浜市に3園、川崎市に2園、名古屋市に2園となっています。どこも同じエリアに保育園がたくさんあります。今までは子どもの数も多かったため全園満員でしたが、今は子どもの数が減ってきています。それでも子どもの絶対数はまだまだ多いエリアです。

その中でも、「この園に行きたい」と思っていただければ、充足率を十分に満たすことができるエリアに展開しています。

よく例としてお話しするのですが、東京の銀座に「ずかんミュージアム銀座」という施設があります。先日、子どもと一緒に行った時に銀座の裏通りを歩いていたら、ラーメン屋が2軒、はす向かいに建っていました。1軒は店の外までお客さまが並んでいましたが、もう1軒はすぐに入れる状態でした。おそらく保育園もそのような状態になると思います。

坂本:つまり、御社は認可保育所の中でも、親が通わせたいと思うような園を作り込んでいくということですね。

中西:そのとおりです。子どもの数が減ってきて、みなさまに「大変じゃない?」と言われますが、世の中の一般企業とまったく同じ状況で、行きたい園には行列ができ、行きたくない園には行列はできません。

行きたい園になっているのかというところが、強みの2つ目と3つ目になります。当社施設は新しい園が多いため、施設の環境や安全面、衛生面が最新の設備になっています。保育園の建物は長く使うところが多く、築何十年というところもたくさんあります。古い園もたくさんある中で、当社の施設はしっかり整えられています。

そして、一番重要なのが3つ目です。先ほどお話があった、プライム市場に上場しているリソー教育の100パーセント子会社である幼児教育部門の伸芽会と共同で開発したオリジナル教育プログラムを、全園で展開しています。このように、「ここに通いたい」と思ってもらえる園を作ることで、十分に勝ち抜いていけるだろうと思っています。

坂本:保育料など、認可保育所はいろいろな規制に縛られている部分もあると思いますが、教育に関してはある程度指定のものを実施しておけば、それ以外は柔軟にできるのでしょうか?

中西:認可保育所はあまり柔軟にはできません。

坂本:その中でもできることを実施しているのですか?

中西:そのとおりです。今後、変わってくると思いますが今までは待機児童数が多かったため、希望の園に入れませんでした。

そのため、「英語に力を入れている園に行かせたいわけじゃなかった」と思う人や、「うちの子は入れなかったのに、あの家は体操に力を入れている園に入れて不公平だ」といった意見が出ることもありますので、あまり特徴を出さないようになっています。

子どもの数が減ってくると、売上が下がります。そうすると、私たち民間企業の発想では、「大変だ。どのようにしてお客さまに来てもらおう」と考えます。例えば、新しい商品を開発するなど、今まで1,000円だったところが1,200円に上がってもいいと思ってもらえるように工夫します。

坂本:大事ですよ。

中西:ところが、保育園業界は90パーセント以上が社会福祉法人と公立です。この業界は、「これは大変だ。補助金を多くもらわなければ」という発想になります。補助金をもらえればいいのですが、補助金を出せない行政は「各事業者の努力で工夫してください」と言わざるを得ないのです。

すると、当社のようなオリジナルプログラムの導入など、工夫や努力ができる環境になるだろうと考えています。おそらくこの1年、2年くらいで、そのような流れがどんどん出てくると思います。

地域や所得によって保育料は違いますが、認可保育所の保育料はだいたい月額3万円から5万円です。しかし、例えば体操のスペシャルプログラムを行ったり英語の先生を呼ぶことで、追加で月1,000円いただくといったことが国のルールでは可能です。

ただし、保育園の場合は各自治体に権限が委譲されており、各自治体でそれはできないと決められているところが大半です。とはいえ、今は子どもの数が減ってきていますので、自治体によっては国のルールに基づいて許可するところがだんだん出てきています。そのような流れがこれからどんどん増えてくると、より工夫しがいがあります。

例えば、当社の園が近くの園よりも保育料が月額5,000円ほど高く、さまざまなプログラムがある場合、いろいろなプログラムを提供してほしい人は追加で5,000円を払って当社の園に通い、何も期待していない人は、追加料金がかからない保育園に行くという時代がやってくると思います。

これからは保護者が自分のニーズに合わせて園を選べる時代になり、利用者にとってもプラスになる競争がどんどん始まると思っています。

坂本:幼児教育の無償化などの話もありますが、保育園に払うベースのお金がほぼゼロに近づいた場合、認可保育所にプラスアルファでさらに多くのお金を払うような状況になりますよね。

中西:おっしゃるとおりです。

坂本:認可保育所も意外とプラスになるプロダクトがたくさんあるということが、非常によくわかりました。

民間教育サービス (ビジネスモデル)

中西:民間教育サービスは、非常にシンプルな事業です。利用したいと思ってくださる方が当社の園に申し込み、当社に利用料金を支払っていただき、当社が利用者の方にサービスを提供するモデルです。

民間教育サービス(展開エリア)

中西:民間教育サービスの展開エリアです。現段階で9施設あり、だいたい過半数が港区です。特徴としては、さまざまな最先端の一番よい教育プログラムを取り入れ、プレミアムな教育サービスを提供しています。

どうしてもコストがかかってくるため、先ほどの認可保育所の場合、月額利用料は3万円から5万円ほどですが、当社の民間教育は、毎日通うと月額20万円超えくらいになります。

本当によいものを提供しようという方針で展開しています。当社のどの園も高い評価をいただいており、入園希望が多く、満席になり、待ってくれている方もいます。

プレミアム教育サービスのラインナップ

中西:プレミアム教育サービスのラインナップです。当社は0歳から9歳のお子さまを対象に、充実したサービスを提供しています。

粗利について、認可保育所の場合は7パーセントから8パーセントほどですが、当社のプレミアム教育サービスは25パーセントから30パーセントほどです。保育園や幼児教育の事業でこのようなお話をすると、「そんなに利益が出て、金儲け主義ではないか?」という反応をいただきます。

今までの日本は、国全般がデフレモデルの中にあったため、いかにコストを安くして提供するかが重要でした。当然人件費を含めてコストを抑え、サービスを安く提供する流れでしたが、当社はそのようなスタイルではなく、良いサービス、良い商品を提供し、それに対して適切な費用を負担していただくビジネスを行っています。

それにより、従業員の方にも良い給料をお支払いすることができており、当社のプレミアム教育サービスでの給料は他の認可保育所などより高くなっています。そのため優秀な人材が集まってきて、長く働いてくれるようになっています。

そのおかげで提供できるサービスの質をさらに上げていけるため、もっと良いサービスが提供できれば、場合によっては金額をもう少し高くしてもお客さまが来てくださるかもしれないということで、事業を拡大していくことができます。

そうすると、さらに従業員の給料を上げていくことができます。このように、当社はいわゆる賃金の上昇カーブがしっかり描けるビジネスモデルを作っていきたいと考えています。

世の中にあるサービスの中で、教育の世界では「よいものであれば、しかるべき金額を払ってもそこのサービスを利用しよう」と考えてくれるお客さまが比較的多いと見ています。

坂本:実際にお待ちの方がたくさんいるということは、需要がたくさんあるということですよね。

中西:おっしゃるとおりです。

坂本:認可保育所で働いている先生がプレミアム教育サービスのほうに異動するなど、人事交流のようなものはありますか?

中西:そのようなケースもそれぞれにあります。ただし、認可保育所とプレミアム教育サービスの園では特性に違いがあるため、どちらが良い悪いではなく、先生にとって合う合わないという相性の部分もあります。

交流は行っていますし、先生の交流だけでなく、安全面や衛生面などの管理面では非常に連携しており、しっかりとクオリティの高いサービスを提供しています。

プレミアム教育サービスにおける事業領域

中西:プレミアム教育サービスの事業領域についてです。スライドの左下は、南青山にあるスイミングスクールです。こちらは全部で240人ほど入る2,200平米ほどの大きな施設で、25メートルのレーンが3レーンあり、室内の温水プールがあります。

2022年4月から、北島康介さんと一緒にオリジナルのスイミングのプログラムを考えて実践するサービスを始めました。このように、他にはない良いものを提供しようというのが、当社のプレミアム教育サービスです。

2023年3月期 業績推移

中西:発表済みの実績ですのでご覧いただいた方も多いと思いますが、業績は順調に推移しています。3月の決算まで残り1ヶ月半しかありませんが、当社は昨年5月に発表した目標数字を確実に達成できるように4月から順調に運営しています。第3四半期の決算まで、予想の変更もなく進んでいます。

新規開設計画の進捗

中西:中期経営計画として、昨年5月に発表している内容です。結論から言いますと、順調に進んでいます。現段階では、当社のビジネスは保育・幼児教育サービス施設を開設し、その利用により売上が立ち、利益が出るというモデルです。

そのため、中期経営計画も施設の開設が予定どおりに進んでいるかが非常に大きなポイントになりますが、順調に進んでいます。

坂本:スライドの棒グラフの青色部分は民間新規の施設数ですが、2025年3月にかなり増えています。これは、このあとお話しがある「グローバルスクール」の施設数でしょうか? それとも、先ほどのプレミアム教育サービス事業の施設数なのかを教えてください。

中西:中心は「グローバルスクール」のほうです。こちらを大きく展開していく方針ですので、後ほど詳しくご説明します。

坂本:また、認可保育所の事業について、「かなり飽和してきた」というお話がありました。調べたり、業界のお話をいろいろ聞いてみていると、随意契約のところもあるかもしれませんが、期間が決まっており、終わったあとにコンペのようなかたちになって、落ちる可能性があるということでした。

実際はどのようになっているのかと、長期の契約があるのかについて教えてください。

中西:認可保育所には2種類あり、1つは自社で開園したケースです。よくあるのは新しい私立保育園を作る場合で、補助金を得ながら、基本的には10年から20年という長期契約で進めます。

それとは別に、公立保育園の民営化というケースがあります。その場合は、3年から5年ほどの委託契約であるため、そのたびにコンペがあって更新されていきますが、当社の場合は委託契約は1つもありません。そのため、長期ビジネスで運営できます。

坂本:だから、このような業績になっているのですね。

増井麻里子氏(以下、増井):その場合、補助金に差はあるのでしょうか?

中西:自治体によって違いますが、1年間にかかる運営費としていただく費用は、基本は委託契約のところとそれほど変わりません。

認可保育所事業の進捗

中西:施設数は順調に進んでいます。

民間教育サービス事業の進捗

中西:民間教育サービス事業も順調に進んでおり、新しいサービスラインの「グローバルスクール」については、今後の新規開設のメインサービスとして展開予定です。

成長戦略のステップ

中西:こちらは、今後の成長戦略のサマリーです。

成長戦略のステップ1 (第一次成長)

中西:グラフは当社の運営施設数および在籍児童数の推移です。2009年に1施設目の認可外の民間教育サービスを始めました。認可保育所を始めたのは2014年4月ですので、認可保育所の事業は2015年3月期から始まり、だんだんと増えてきました。

2022年9月期には、認可保育所が69施設、民間教育サービスが9施設で、合計78施設となりました。今年4月には80施設になります。

ただし、認可保育所をどんどん増やしていく時代は終わりましたので、これからは認可保育所の施設数の右肩カーブはなくなります。

成長戦略のステップ2 (市場環境の変化)

中西:その理由はスライドのグラフのとおり、待機児童の数がどんどん減ってきているからです。その間、保育所の利用率はどんどん上がっており、グラフにはありませんが、施設数はどんどん増えています。これは当社だけでなく、世の中全般で起きています。

坂本:高学年の充足率はかなり低くなってしまうと思いますので、今のところはギリギリでバランスがとれているかたちでしょうか? 

中西:地方のほうが東京より厳しいところがありますので、エリアにもよります。

坂本:施設数を一気に増やすと、人口が多いかどうかというお話になるわけですね。

中西:そのとおりです。東京は人口が増えており、今回の異次元の少子化対策などで児童手当が充実してきています。

坂本:小池百合子東京都知事による月5,000円の支給等のお話もありますので、意外と東京に引っ越したい人も増えるかもしれませんね。

中西:第2子の保育料無償化で、「子どもを産もう」と思う人が増えることが本来の目的ですが、それには少し時間がかかります。それより前に、引っ越すのであれば千葉県や埼玉県、神奈川県でなく、少子化対策が充実している東京都に引っ越そうと考える人が増えることに即効性があると思います。

成長戦略のステップ3 (保育・幼児教育サービス市場の拡大)

中西:一方で、1人あたりの幼児教育費が増加し、保育・幼児教育サービス市場はまだ拡大しています。少子化になってくると、1人あたりの教育費が増えるという流れが世界中で起こっています。

お父さま、お母さまとそれぞれのご両親のお財布があるため、予算がどんどん増えていくという、いわゆるシックスポケットの例もあり、市場は非常に追い風にあります。

成長戦略のステップ4 (第二次成長)

中西:その中で当社独自の戦略として、民間教育サービスをどんどん増やし、会社を成長させていきたいと考えています。

坂本:そこが競合他社との一番の違いになっているということですね。将来的に認可保育所でいろいろなことができるようになってきたら、培ってきた知見を少しずつ移動させて、さらに差別化を図るというのが主な戦略でしょうか。

中西:おっしゃるとおりです。

成長戦略 - 新サービスライン開発

中西:その中で、今回新しく「グローバルスクール」を始めます。これを大きく広げていきたいと思っています。ポイントは2つあり、1つはスライドに「バイリンガルスクール」と記載しているとおり、英語教育をしっかり行うということです。もう1つは、今までの民間のものより料金をリーズナブルに設定していることです。

今までの当社園では、通常園児は朝の8時から9時くらいに登園し、夕方5時から6時くらいに降園するまで、9時間から10時間ほど園に滞在します。その中で今までは英語の時間は1日1時間でした。今回のグローバルスクールではそれを英語と日本語の時間配分を半分ずつにしようと考えています。

なぜかと言いますと、語学はこの年齢の時期にすごく習得しやすいからです。一方で、今回ターゲットは基本的に日本の方で、大半が日本の小学校に進学するため、日本語の基礎力もないと小学校の生活に支障が出てきます。そのような意味で、両方の言語の習得をしっかり行うことがテーマになっています。

なぜ英語を習得するのかと言いますと、2020年の学習指導要領の改訂で、日本全国で小学校3年生から英語教育を行うことになりました。その影響で、「小学校3年生から英語教育が始まるのであれば、早く始めておいたほうがいいよね」という機運が日本全国で高まっています。そのような背景から、英語教育の事業を開始することにしました。

成長戦略 - 顧客層・展開エリアの拡大

中西:今の港区中心のプレミアム教育サービスは、世帯年収3,000万円以上の方が中心的に通っていますが、今回の新サービスラインのターゲットは世帯年収1,000万円超えを目安にしています。

これにより、顧客層が今の約40倍に増えるという試算です。今までは月額20万円超えでしたが、月額10万円以下で通えるモデルとなります。

加えて幼児教育の無償化により、日本全国で月額37,000円の補助が出るため、実施の負担額は6万円から7万円になります。利用してくださる顧客層が一気に増えると考えているため、スピード感を持って展開していきます。

坂本:かなり安いですね。高所得の人の中には今までもそのくらい払っていた方も多くいらっしゃったと思います。26ページに記載がありますが、「グローバルスクール」は保育園としても通えるのですか?

中西:おっしゃるとおりです。

坂本:それはどのような仕組みなのでしょうか? 保育園として通えるようなカリキュラムがあったり、預かる時間も長いのでしょうか?

中西:保育園の定義はいろいろありますが、特徴としては、朝8時から夜19時まで開いているため、お仕事をしていらっしゃる方が一般の認可保育所のように預けて利用できます。

成長戦略 - 第二次成長イメージ

中西:スライドのグラフをご覧ください。第1次成長の部分が、当社が認可保育所事業を中心として成長していたところです。1年で多い時に14園開設している状態でした。

その時に比べて会社の基盤もできていますし、さまざまなノウハウも蓄積されてきていますので、第2次成長の部分ではそれ以上のペースで「グローバルスクール」を中心とした民間教育を展開していきたいと考えています。

坂本:「グローバルスクール」は非常に人気が出そうだと思います。ある程度増えないとわからない部分もあるかと思いますが、どのくらいの利益率になりそうですか?

中西:基本的には今までのプレミアム教育サービスと同じで、粗利で25パーセントから30パーセントは出せるようなモデルとして作っています。

坂本:この園は、先ほどお話があったいろいろな教育もオプションでつけることができて、利益率が高くなる可能性があるということですね。

中西:おっしゃるとおりです。

総括

中西:総括です。通期業績予想については、順調に推移しています。昨年5月の発表予想数字を確実に達成できるように取り組んでいます。

成長戦略については、民間教育を増やしていくことに会社の資源のすべてを投入していきます。

中期経営計画については、2023年5月に新しく2026年3月期までの計画を出します。場合によっては、3年ではなく5年くらいのものを出したほうがよいのではないかと考えています。

先ほどから「民間教育をいかに増やすか」というお話をしていますが、投資家のみなさまからは「何年に何施設出すのでしょうか?」という質問をいただいています。

「1施設あたりの売上や利益がどのくらいなのか」「威勢のいいことを言っているが、実際はどうなのか」というところがわからないと投資できないと思いますので、そこを十分に示せるような中期経営計画を現在策定中です。

EBITDAと株価の推移について

中西:株価についてです。2020年3月に上場し2,260円で売り出しましたが、大きく低迷しているということで、投資していただいたみなさまには申し訳ないと深く反省しています。

一方で、私たちはEBITDA(営業利益+減価償却費)を重要指標においています。なぜかと言いますと、施設整備型のため、減価償却費が非常に多い事業です。今春80施設となるうちの70施設が認可保育所ですが、認可保育所は施設を作ると約2億円の費用がかかり、その約8割を補助金でいただけます。

補助金は、例えば2022年4月に開園する場合、1億6,000万円を2022年5月くらいには一括していただけるようになっており、2023年3月期の第1四半期に営業外収益で一括計上しているかたちです。

そのため、毎年の減価償却費の約8割はすでに受領済みかつ計上済みのため、一般的な企業のEBITDAよりも、当社のEBITDAは実際の営業利益に非常に近いところがあるのではないかと考えており、重要視しています。

上場の時の目論見書で出している数字からEBITDAは順調に増えているため、そのようなところも十分にお伝えしていくことで、株価もより正確に評価していただけるようにしていきたいと考えています。

認可保育所開設に伴う施設整備補助金の会計処理について

中西:認可保育所開設に伴う施設整備補助金の会計処理についてお話しします。非常に複雑なことを記載していますので、お時間のある際にご覧いただければと思います。

例えば、同業大手と比べた時に、「あの会社は営業利益がしっかり出ているが、Kids Smile Holdingsは赤字じゃないか。どうなっているんだ」とよく言われます。

先ほど補助金についてお話ししましたが、例えば施設整備に2億円かかり、1億6,000万円の補助金がいただけたとします。当社の場合は2億円を減価償却していますが、その会社の会計処理は圧縮記帳方式のため、2億円から補助金の1億6,000万円を引き、4,000万円を減価償却しています。

当社も一昨年から今年までその会社と同じ圧縮記帳方式で会計処理をしていれば、実は営業黒字になっているということになります。非常に複雑ですが、会計方式が保育事業者の中で異なりますので、それによって業績の見方が少し変わってくるということです。

増井:それではここで、ご説明のあった「キッズガーデン グローバルスクール錦糸町」の紹介動画をご覧ください。

質疑応答:子育て支援拡大の効果について

坂本:政府や都道府県、各自治体主導の子育て支援の拡大について、御社のビジネスの場合は児童手当の上限における年収の上限撤廃が一番の追い風になるかと思いますが、そのあたりを含めてどのような効果が得られそうかを教えてください。

中西:全般的に非常に追い風であると考えています。なぜかと言いますと、今までは保育園が足りなかったため、保育施設を作ることに費用をかけていました。園を1つ作るのに2億円かかりますので、けっこうなお金がかかります。

今後の子育て支援の補助については、基本の流れとしては保護者の方に現金給付していく考え方のため、保護者の方の可処分所得が増えます。保護者の方は補助金をそれぞれの判断でどのように子育てに使おうかと考え、結果として民間教育サービスに使うことが増えていくという流れになります。

質疑応答:教育施設運営以外の事業について

坂本:御社は民間教育サービスと認可保育所を展開しています。それ以外の事業展開があれば、売上ベースとしてはまだ小さいかもしれませんが教えてください。

中西:すでに始めていることとしては、先ほどお話ししたリソー教育の子会社である伸芽会と共同で作った教育プログラムを他園へ販売し始めています。

当社の施設は認可保育所が70施設で、これから先、基本的には増やすことはありません。ただし、認可保育所だけでも全国に約2万5,000施設あります。他のところで展開したとしても、そちらと競合して私たちの園に影響が出る可能性は非常に少ないです。

ですので、競合に影響が出ないところにどんどん販売しようと考え、すでにいくつかの法人に販売しています。そのような例はこれから増やしていきたいと考えています。

質疑応答:東京都以外でのサービス展開について

坂本:「認可保育所をこれ以上増やさない方針」とのことですが、プレミアム教育サービスも含めて、東京都以外の地方では展開しないのでしょうか?

中西:地方にもどんどん展開していきたいと思っています。プレミアム教育サービスか「グローバルスクール」かは別として、民間教育サービスを地方で展開をすることは考えています。地方の中でも大都市部を中心に、すでに園が出ている名古屋市や、業務提携している伸芽会がすでに展開している京阪神エリアなどからスタートしていくと思います。

質疑応答:海外への事業展開について

増井:日本は少子化が進むため、ゆくゆくは海外展開も考えているのでしょうか?

中西:海外にも非常に興味はあります。例えば、公文式や七田式などの日本の教育プログラムを海外で展開している先輩企業がすでにありますので、伸芽会と一緒に作った教育プログラムをもとに、海外での園や幼児教室の展開も考えられます。

また、当社のプレミアム教育サービスは、東京都港区を中心とした富裕層のみなさまに評価していただいていますので、海外の富裕層の方に向けたきめ細かい幼児教育サービスも十分にニーズがあるのではないかと思っています。

質疑応答:伸芽会との小学校受験における連携について

坂本:「伸芽会とのシナジーをこれからどの程度発揮できる見込みですか?」というご質問です。

伸芽会と御社は「教育」という点で共通していますが、伸芽会が得意なのはどちらかというと受験で、占有率などを考えると、私の中では小学校受験は「SAPIX kids」というイメージです。そのため「受験対策もお願いしたい」という要望があるかと思います。

そのあたりは完全に切り分けているのか、それとも御社の中でプログラムを作って取り組む意思があるのか、あるいはプレミアム教育サービスですでに行っているのかなども含めて教えてください。

中西:私たちの運営している園の中で、民間教育では小学校受験の一番基礎となるところはすでに行っています。

坂本:体操などですね。

中西:認可保育所の方たちに向けても小学校受験の勉強会は行っていますので、その中で小学校受験に興味がある方がいたら、伸芽会にご紹介してます。受験の場合、塾に通っていればいいというわけではないため、家庭やお子さまのフォローなどは当社の園で行うなど、連携して進めていくこともすでに始めています。

質疑応答:株価のPBRについて

増井:株価について、PBRが1を割っています。これについてはどのように考えていますか?

中西:当社を知っていただく努力が足りなかったと真摯に反省しています。少子化の中では成長性が低いのではないかと思いがちですが、私たちの会社の状況やこの業界の状況は、実は高い成長性があります。その中で、当社の特徴を知っていただくと評価につながるのではないかと思っています。

去年の秋頃から、このようなかたちで投資家のみなさまとの会話を増やしているところです。このような機会をさらに積極的に行っていくことで、評価していただけるように取り組んでいきたいと思っています。

質疑応答:「グローバルスクール」における英語担当教諭について

坂本:みなさまも「グローバルスクール」の可能性は非常に感じているのではないかと思います。非常に訴求力がありますので、人員の確保はすぐにできると私は思っています。

英語の担当の方は海外の方なのでしょうか? それとも、英語ができる日本人も採用していくのでしょうか?

中西:単に語学を習得するだけでしたら、海外留学経験や海外生活がある日本人でも問題ありません。ただし、小さいお子さまに、見た目も含めて違った文化や人種の方と接していただき、多様性を学び取ってもらうことが非常に大事だと思っています。そのため、今はどの園も海外の方を採用して運営しており、採用も強化しているところです。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:中期経営計画が3年ごとなのはなぜでしょうか?

回答:東証の基準、他社事例、当社が提供する幼児教育・保育サービスの市場動向を総合的に判断し、投資家のみなさまに精度の高い計画をお示しするという観点から昨年は3年間の中期計画にて発表させていただきました。

今後については必ずしも3年にこだわることなく、投資家のみなさまに当社の将来像をご理解いただけるよう具体的な中期計画をお示しする予定です。

<質問2>

質問:これまでにうまくいかなかった事業があれば教えてください。

回答:2009年の創業当初は、深夜に働くご両親さまのニーズにお応えすべく、24時間保育の提供も予定していましたが、結果として利用者が誰もおらず、24時間保育の提供はすぐに終了となりました。

<質問3>

質問:今後のIR活動方針や意気込みをお願いします。

回答:引き続き、投資家のみなさまに当社のことを知っていただき、期待していただけるよう、個人投資家、機関投資家の両方に向け、リアル開催とオンライン開催を組み合わせながら、積極的に社長自らが発信するかたちで開催してまいります。