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篠田庸介氏:株式会社ヘッドウォータース2022年12月期決算説明会を開催いたします。本日はお忙しい中、ご参加いただき誠にありがとうございます。昨年の状況説明および、本年と未来に関しての当社方針をお伝えできればと思います。
スライドには本日のアジェンダを記載しています。最初に当社について簡単にご説明し、その後、現在のビジネスモデルや将来目指している方向性、KPIについてお伝えします。
会社概要(2022年12月末現在)
当社は2005年11月に設立し、当初は私1人でスタートしました。当時、インターネットを中心にモバイルやクラウドなどの新しいテクノロジーが広がる中で、社会のデジタル化が今後急激に進むことは間違いないだろうと予測しました。
その中心にあるのがエンジニアです。プログラムを組んだりシステムを作ったりするだけではなく、高度なテクノロジーをベースに、世の中を変えていくような新しい価値やビジネスを生み出す存在でなくてはいけないと非常に感じていました。
海外に目を向けると、GAFAなどを中心にデジタルに詳しい人が新しいビジネスを作って発信していることがよく起こっていた時代でした。そのような感性や能力を持ったユニークなエンジニアの集団を作ろうとスタートしたのが始まりです。
沿革
沿革です。エンジニアを一人ずつ集めて、最初は受託やシステム開発を行いながら収益を得ていました。創業期は、エンジニアが自分たちでビジネスをするための独自の事業部制度などで注目を浴び、所属や仕事、給料まで自分で決めるようなユニークな制度で会社を運営していました。
その後、他社に先駆けてスマートフォンのゲームやオフショア開発でも精力的な取り組みを行い、非常に注目を浴びました。一方でなかなかブレイクするものがない中、2014年にロボットアプリ制作サービスを開始し、クオリティや実用性の高さから「ロボット×AI」のトップランナーの1社と認識されるようになりました。
のちに、ロボットやAIを実用化するための「SyncLect」(シンクレクト)というプラットフォームを出すなどステップを踏み、2020年に東証マザーズへの上場に至りました。
ヘッドウォータースの技術・開発力の「源」
当社の強みである技術・開発力についてご説明します。2014年から、ロボットアプリ制作が当社のテクノロジーのベースになりました。ロボットは非常に高度なIoTデバイスのひとつだと言えます。
「Pepper」は40個以上のモーターと約17個のセンサーがついており、人が近づいたり話しかけたりすると、さまざまな役割を果たします。これはIoTのデバイスの非常に高度なものだと言えると思います。
「Pepper」は非常にいい機体でしたが、単独で何かを行える機能がなく、「手はあるが物が持てない」「そこまで賢くない」などと言われていました。
当社は、「Pepper」のアプリケーション開発でシェアを広く持っていましたので、「何としてもこのロボットを世の中で働かせたい」という思いがあり、「Pepper」に足りないものを検証しようと、世界中からいろいろなAIを集めて検証し、「Pepper」に実装してきました。例えば、ファーストフード店で「Pepper」が注文を受けるようなソリューションも出しました。相手の年齢や来店履歴などをカメラの画像から認識し適切な接客を行い、横に置いた決済端末で決済まで行うものでした。
「Pepper」の周りには最先端のテクノロジーが非常に多く使われています。当然、タブレットのUIやUXも作ったり、クラウド上にデータを集めてAIに学習させ、行動を起こすこともしなくてはいけません。話したり言語を解析したりする能力など、AIを中心としたモダンなテクノロジーの集合体が「Pepper」のソリューションでした。
当社は世界でも先んじて取り組み始め、約8年が経過しました。AIでも「AI×IoT」でも、老舗かつトップランナーとして実績を積んできていると言えると思います。
市場環境認識
市場環境認識です。AIはDX全体で使われるテクノロジーの1つと言えます。DX国内市場は2030年までに5兆円以上まで拡大し、年間14.2パーセントの成長が見込まれています。AIビジネス国内市場も、毎年9.3パーセントの成長が予測されています。
同時に、2030年までにAIやDXの人材は今の3倍以上必要になると言われています。当社は市場の中心にいるため基本的には約10パーセント伸びるはずですが、いかにさらなる成長を遂げていくかが命題になります。
事業内容
事業内容です。AIの会社と言いますと、アルゴリズムを研究してAIの精度を上げていくような研究開発型の企業を思い浮かべると思います。
当社も以前はAIの研究などをかなり行っていましたが、日本マイクロソフトやAmazonには世界で頭のいい人を集めたような数千人規模のラボがあり、常にAIの研究を行っています。それらに学習モデルエンジンだけで対抗するのは、ビジネスモデルとして考えた場合に現実的ではないと思いました。
学習モデルエンジンを作ることがAIの会社だと思われるかも知れませんが、それだけでは利益にならないとわかってきたということです。
最近は、手書きの文字を読み取るAIをプロダクトの後ろで動かし、人が書いたものを読み取ってテキスト化するモデルや、DXの中でAIをどこに使うかを検証から実装まですべて行うAIのインテグレーションがあります。
当社がどの部分を担うのかと言いますと、基本的にはスライドに記載しているものをすべて網羅しています。学習モデルエンジンもプロダクトもありますし、企業に寄り添ってAIを活用したDXのインテグレーションも行います。
一番大事なのは市場のニーズです。市場に求められ、活用され、誰かを幸せにするビジネスやテクノロジーでなければ、会社は拡大・成長していかないと考えています。当社は、クライアントの費用対効果やビジネス強化にフォーカスした結果、このような領域となりました。
「AIインテグレーションサービス」とは...
先ほどはAIの事業領域の分布のご説明でしたが、こちらのスライドではカスタマージャーニー的にAI提供のプロセスを表しています。
以前から「AIを使いたいが、いい使い方はないのか」とのお話が多くありました。しかし、「このようなAIの使い方ができます」と提案しても、継続的に使われないケースが多く、作ったものが無駄になってしまうとわかってきました。
その原因は「AIをどのように使ったら会社が伸びるのか」など、先にクライアントと当社で共有していないためです。そのため、最上流で業務分析によって業務を可視化し、お客さまのビジネスフローを共通認識としてしっかり理解していきました。
その上で、AIを当てはめるとどのようにビジネスが強くなるのか、会社が効率的に動くのか、属人化を省けるのかなどを共有し、数年単位で必要な計画を立てることにしました。
AIの活用は実証実験を素早く行い、有用ならばお客さまのサービスやシステムに組み込み、周辺の開発まで行います。最終的には安定稼働しなければ意味がないため、運用や追加学習をすることで、より精度を上げていきます。こちらを一気通貫で行わないと、費用対効果や成果にコミットした提供ができないというのが、当社の1つの結論です。
例えば、大手企業ではコンサルだけを行い、その他は下請けに任せている場合があります。また、AIの会社ではAIモデルでソフトを作るが、顧客ニーズに合わなかったり周辺のテクノロジーがあまりなかったりするため、アプリケーションや業務システムを構築できないことがあります。
そのため、結局使われないこともよくあり、当社に助けを求める方もいます。当社はコストや工期のほか、必ず稼働してお客さまに使ってもらうことにコミットしています。1社で一気通貫で行うことが非常に大事であり、これが当社の強みの1つとなっています。
子会社設立による役割分担
一気通貫モデルにより、当社のサービス品質は非常に高いと言えると思います。クライアントに寄り添い、ニーズに合わせコストやスピード感をもたせたAIソリューションが提供可能な企業は当社以外ではほとんど見たことありません。
クオリティには自信がありますが、高いサービスを提供するだけでいいというわけではなく、上場企業として事業の拡大や成長は命題だと強く実感しています。そこでボトルネックとなるのが、最上流の業務分析やコンサルテーションです。最上流のボトルネックを解消することにより、全体の業務量を減らさず、成長が可能になります。
事業拡大に際しては、ボトルネックになりかねない業務分析チームを独立して別法人にすることで、採用の多様化ができます。テクノロジーの会社のため、今まではエンジニアをたくさん採用していました。しかし独立法人化することにより、コンサルテーションに向いた人間を多様に採用できます。
また、コンサルタントに必要な人事考課に最適化することもできます。これにより、昨年は加速度的にコンサルチームのメンバー採用が進みました。コンサルチームのボリュームが増えたことが、売上高が前期比34パーセントも伸びた要因の1つと言えます。
さらに、先ほどもお伝えしたとおり、2030年までにAIやDXの人材が今より3倍以上必要になると予測されています。当社はこれまでAIやモダンテクノロジーに寄っていたため、即戦力の人員しか採用できず、採用力が上がらないということがありました。
中長期では人材ニーズが増えるため、ポテンシャルや人間性を重視した採用を行い、時間をかけて教育し、成長させることも必要ではないかと思います。
そこでDX人材の確保や採用・教育を目的として、昨年、ヘッドウォータースプロフェッショナルズという会社を設立しました。2022年はこの3社の体制がスタートし、軌道に乗っています。本年度はさらに体制強化を進めていこうと考えています。
「SyncLect」
当社の強みである「SyncLect」というプラットフォームについてご説明します。こちらは、AIやIoTのビッグデータを活用したシステム構築や運用を高速化するプラットフォームです。
当社はAIソリューションの会社としては老舗のため、過去に作った学習モデルやサービスを提供するための仕組みが多数あります。これを部品化してクラウド上に置き、場合によっては同じようなポイントは開発せず、部品をいくつか組み合わせて提供しています。
その結果、コストが抑えられ、スピードは格段に上がります。AIソリューション事業を8年近く行ってきた結果によって積み上げられたもので、かなり実用性があり簡単にはまねできない分野だと思っています。
最近では、「SyncLect」からいろいろなAIのモデルや機能を部品化して提供することで、ライセンス収入を得ることも増えてきています。「SyncLect」を伸ばすことでストック収入を増やしていくことも、徐々に進んでいくと目論んでいます。
スーパーシティ構想に向けた当社実績
こちらは、開発済みの実績事例をスーパーシティ構想に当てはめて並べた図です。最近は取り組むプロジェクトの取捨選択をしっかり行い、当社の方針に合わないと思ったら絶対に受けません。大手のクライアントと一緒に、未来につながるようなプロジェクトを多数行っています。
言い替えれば、国が提唱するスーパーシティ、世界的にはスマートシティと呼ばれるもののパーツを作り続けていると言えます。これらは未来的な都市のパーツで、人々が幸せになっていくためのものです。
例えば、高速道路のパーキングエリアのトイレで、忘れ物があると「忘れ物がありますよ」と音声で知らせるシステムを提供しています。これまで年間数万件の忘れ物を職員の方が届けていたため、忘れ物がなくなるだけでコストが激減すると言っていただいています。
最終的にはいろいろなソリューションから得たデータを横連携することで、生活をより豊かにすることがスーパーシティの根幹だと思います。
今後のビジョン
Socoety5.0が話題になっています。スーパーシティの推進も含めて、当社が進めている事業領域にはいろいろな見方がありますが、言い換えるとSocoety5.0に合致しています。
「国策やテクノロジーをどこに集約させていくのか」ということの中心に、当社がいると考えています。最近、官公庁の案件も増えており、国策と当社の方針が合致していると言えると思います。
2022年12月期通期決算概要
大きな構想を実現するためには、いろいろな問題を一歩一歩クリアしていかなければならないと自覚しています。毎年の業績は、大きな夢や構想、作りたい世界を実現するための指標でもあると考えています。
事業は、必ずしも毎年思惑どおりにいくわけではありません。うまくいったから良いわけでも、悪かったらダメというわけでもありません。
計画どおりに進んだ部分や成果が出た部分も見直し、目論みが外れた部分は再度計画を練り直すことで、より素晴らしい企業になっていくと思っています。これらを客観的に認識し、未来に進むための昨年度の数値とその反省を共有します。
スライドの表は、先日発表した2022年12月期通期決算概要です。売上高は前年度比134パーセント伸びています。修正後予算を見ても前年度比103.6パーセントと少し上向きで達成しました。
当期純利益は前年度比277.9パーセント、営業利益は前年度比120.3パーセントということで、予想より増えすぎたと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
予算は、プロジェクトが予定どおりに進んだ場合の最高値と、極力回避しますが問題が起こった場合をある程度織り込みながら立てていますが、全メンバーの創意工夫によってうまくいったということが、この数字に表れていると思います。
決算サマリー
決算サマリーです。売上高は15億7,400万円で前年度比134.4パーセント、年間予算達成率は115.9パーセントとなっています。
目論見どおりにならなかったところについては、みなさまにご心配をおかけして誠に申し訳ありません。上半期の特に第1四半期は、業績をご覧いただくとおわかりのとおり、不採算案件の対応に追われました。
これは一番の問題であると考え、全メンバーで徹底してこの不採算案件をなくそうと、いろいろ工夫しました。具体的にはプロジェクトの承認フローを変えました。採算がうまくいかない時は、最初の受け方に問題がある場合が多いため、プロジェクトの受け方をきちんと工夫しました。
当然、プロジェクト途中においても問題が起きるため、管理体制の強化など精度を細かくしました。問題が起こりそうな可能性があるところを細かく潰し、正しく運用することで、非常に精度が上がってきたと思います。第4四半期の利益率や伸びをご覧いただくと、だいぶ対応が進んだと言えると思います。
アライアンス戦略も順調です。日本マイクロソフトからの引き合いも、前年度の4倍程度ありました。年商が最低1,000億円、できれば5,000億円以上のロイヤルクライアントをメインのターゲットと考え、中長期でDXやAIに一緒に取り組んでいます。
年単位や数年単位の仕事が非常に多く、開発もラボ型やリカーリング型となっています。固定でお金をいただき、一緒にソリューション開発していきます。このようなことで、収益性は大変安定してきています。子会社の業績も順調です。
官公庁案件については、大阪府のスマートシニアライフや、経済産業省の業務自動化を行いました。昨年の売上に関しては、狙ったターゲットで十分に取れていると思います。
決算サマリー
営業利益についてです。売上高と同様に、当社の業績に大きな影響を及ぼすのは不採算案件の有無になると思いますが、昨年にしっかり対応し、結果に出てきています。
ロイヤルクライアントを獲得する場合、最初は手厚く対応しなければいけないため、大きな会社でも実は最初は利益率が低いです。お客さまの仕様や癖に対応し、どのような仕事が一番よいか、アジャストしていかなければいけません。
そのため最初は利益率がやや落ちますが、年間で見るとしっかり利益を取れていることが結果に表れています。
販管費については、採用コストを非常に圧縮できました。ホームページから採用したこともありますが、採用ペースはもう少し上げるべきだと感じています。
後ほどお話ししますが、予定どおりに進まなかった分は、パートナーを活用したり、営業の取り方を工夫することで、昨年の利益率は確保しました。これを3年、5年ときちんと伸ばしていくためには、採用と教育が我々の肝になります。
決算サマリー
経常利益は、営業利益の増加に伴っています。採用について細かい数字をお話しします。2022年度の採用計画は、50名の採用で退職率10パーセント以下としていました。
純増で43名程度を目標にしていましたが、実際は純増23名と予定より20名不足しました。不足した分は、今回はパートナーの活用等で補いましたが、本質としては会社の中枢を担う人材をきちんと確保することが大事だと思っています。
勝ち負けで言いますと、事業としては市場の伸びに勝っているため勝ちだと思いますが、採用については負けていることを事実として認めなければいけません。今期は対策を打ち、工夫をしながら注力することで第1四半期に多く採用できています。
2023年の採用計画は、グループで55名です。退職率は10パーセント以下、純増で43名を目標にしていきたいと思います。
数値的な目標やいろいろな戦略を取っていますが、メンバーの待遇をいかに上げていくかであったり、よりおもしろく夢や希望が持てるビジネスや成長など全部が合わないと、表面的なテクニカルの分野だけでは採用できないと思っています。そのため会社の本質を上げることが非常に大事だと考えています。
また、昨年オフィスを移転しました。西新宿駅直通で、雨に濡れずに会社へ行けます。丸の内線のため、都内への営業に行きやすくなりましたし、リモート率が95パーセントを超えているため、オフィスを小さくして快適になり、年間800万円程度コストも削減できました。子会社も順調に運営しています。
ERPの刷新によって管理会計も非常に進み、どのプロジェクトがどのような状態になっているかを、より早くより精緻に分析できるように進めています。
経営指標 1
経営指標です。サービス別売上高は、全体的に伸びています。我々がターゲットにしているマーケット自体が非常に成長していると言えると思います。
ストック・フローの比率は、スライドのグラフだけを見ると「ストック率が減っているのではないのか」という印象を持つと思います。ストックの収入を見ると、2021年が2億円強、2022年が3億円強で、実は30パーセント以上増えています。
全体の売上の伸びが大きすぎて割合が伸びていませんが、ストックの売上高は30パーセント以上伸びているため、基本的にはあまり問題を感じていません。売上高もストックも、今後同じように伸びていくと考えています。実施案件数も順調に伸びています。
経営指標 2
AIエンジニア人材の推移です。独自の教育の仕組みにより、AI人材の比率は上がっています。きちんとOff-JTで教育していることと、AIやIoT関連のプロジェクトが非常に多くなっているため、OJTも含めてトータルで教育できることは非常に価値があることだと思います。
例えば、AIのエンジニアを育成する学校があったとしても、即戦力にはなりません。教育と現場経験を組み合わせながら、即戦力のAIエンジニアを作っていくことが我々の強みだと思っています。
当社がAIのソリューション事業に参入した2014年や2015年頃は、世の中にAIのエンジニアがほとんどいませんでした。当社で教育し、素養のある人間をAIエンジニアとして育成しなければならなかったため、それを8年近く行っている我々は、リアリティのあるAIエンジニアを育成する能力が非常に高いと思います。
アライアンス戦略関連売上高も非常に増えています。昨年度の3億9,000万円から今年は5億6,000万円に予算上は増える予定です。細かいお話はできませんが、日本マイクロソフトからの紹介で、会社の売上高の20パーセント程度になっています。他社からの紹介やアライアンスで、事業の伸びを非常に支えていただいています。
顧客1企業あたりの年間売上高も伸びています。ロイヤルクライアント化で1社の売上を伸ばすことにより、安定して利益を取れる売上の立て方ができてきていると思います。今期は1,500万円くらいの予想です。他社の状況を見ると、1企業平均で5,000万円くらいまでは伸ばせる余地があります。今年や来年は、より安定してより利益率を伸ばしていきたいと思っています。
成長戦略の進捗状況
成長戦略の進捗状況です。外部リソースの活用は、ソニーや日本マイクロソフトと連携することにより、順調に伸びています。
具体的には、日本マイクロソフトのクラウドサービスや、ソニーのスマートセンシングデバイスとなるAIカメラの活用、NVIDIAのGPUを現場でどのように活用しソリューション化まで進めるかについて、一緒に取り組んでいます。
ストックも順調に増えています。2022年3月に、エッジAIシステムにおけるアノテーションの全自動化を実現することについて、特許を申請しました。アノテーションの自動化は世の中にもいくつか出ていますが、その後の機械学習や自動配布まですべて自動でできるということで、マルチAIプラットフォームを特許出願中です。
当社はテック企業ということで、R&Dも非常に力を入れており、研究開発費も年々増加しています。
アライアンス戦略:Microsoft協業
アライアンス戦略です。最近、IRでも発表しているとおり、各社との連携が非常に進んでいます。象徴的なものは、大手の小売店やリテールに提案して進めている共同ソリューションです。
ソニーが提供するスマートセンシングデバイスを付けて、人の動きや人流などいろいろなものを即時にエッジ側で判断しながら解析します。全体の人の流れはソニーのデバイスを使い、例えば棚などの細かいところはより高精度のカメラが必要なため、NVIDIAのGPUを活用して組み合わせます。それら全部を日本マイクロソフトの「Azure」上にデータをためて分析し、活用します。
それを可視化できることを1つのソリューションとして、お客さまに提供します。このソリューションが売れた場合、最終的にはソニー、日本マイクロソフト、NVIDIA、そして我々も利益を獲得でき、お客さまも喜びます。
日本マイクロソフトにたくさんいる営業の方には、非常にすばらしいソリューションだとご紹介していただいていますし、ソニーもグローバルで非常に強い顧客基盤を持っているため、全世界の顧客にご紹介していただけます。
なぜ日本マイクロソフトに我々を重視していただけるかというと、例えば「Azure」上のいろいろなクラウドのサービスを活用できる能力や実績は、他社にあまりありません。「Microsoft365」の環境の活用も熟知しており、Microsoft Power Platformを使えて、「Azure」上のAIの活用についても多くの実例を持っています。
我々のように、ソリューション化して提案までできる会社はほとんどないと考えており、簡単にはまねできないと思っています。
ソニーについては、もともと我々の顧客でした。「AITRIOS」というエッジAIを活用するためのプラットフォーム活用を支援していました。その結果、当社はソニーのエッジデバイスを活用するソリューションの使い方や内容を日本で最も知っている会社の1つとなっています。
そのソリューションによって溜めたデータを活用しシステムを作り提供したことで、ソニーは単なるクライアントではなくパートナーとなり、一緒にお互いが幸せになる仕組みが作れました。
これが我々のアライアンス戦略です。共同でマーケティングしたり、ソリューションを作ったり、営業も一緒に提案へ行くような1つのエコシステムを作っています。そして、その基盤に乗って我々も成長しています。
GAFAなどのIT系企業を見ても、例えば日本マイクロソフトは最初にIBMのパソコンにOSを載せられたことや、オラクルがIBMに採用されたなどがありました。特にBtoBは、どんなに大きな会社でもワールドワイドな企業の基盤に乗ることによって、GAFAのようなポジションを取っていくステップがあったと思います。
ゼロからグローバルな基盤を作ることは、現実的ではないと思います。これから世の中を変えていくようなソリューションは1社で行うものではなく、いろいろな優秀なテクノロジーや機能を集めて、最高によいソリューションを作り、全世界に打っていくことが正しいやり方だと思います。この方向に向かって各社と手を組みながら全力で進みます。
各社に「ヘッドウォータースはいらない」と言われないように、我々はコアのテクノロジーを磨いて、負けないように全体を取りまとめて、ソリューションを出してがんばっていきたいと思っています。
2023年度12月期決算業績予測(連結)
2023年の業績予想です。売上高は前年度比133.9パーセントの成長ということで、今年以上の成長を狙っていきます。今年並みの成長は必須で、手応えも十分にあります。
営業利益は前年度比109.3パーセントで、10パーセント程度の伸びです。10パーセント程度の伸びを確保しつつ、トップラインを伸ばしていきたいと思っています。昨年もお話ししましたが、我々のような会社はまだ成長しなければいけません。
事業の規模やレベル、影響範囲を広げていかないと取るに足らない存在のため、まずはトップラインを伸ばすことに注力したいと思います。しかし、上場企業であるため、みなさまの信頼にきちんと応えて利益を出すことも必要です。10パーセント程度の利益の伸びは実現するとした上で、トップラインを伸ばしていきます。
来年のKPIでみなさまにご覧いただきたいのは、きちんとトップラインが伸びたかどうかです。売上高が前年度比134パーセント以上で、今年並みかそれ以上の売上を確保したかどうかがまず1つです。
もう1つは、社員数をきちんと確保できたかどうかです。これから3年後、5年後の成長を支えるのはやはり人材です。来年が終わった段階で、社員156名体制が我々の今のテーマです。
この2点に注目していただき、これができれば来年、再来年とまた十分に成長が見込まれると思います。
今後の施策
今後の課題と戦略です。今までお話した内容のサマリーになります。先ほどお話ししたとおり、特に肝になるのは人材の採用と定着ではないかと思います。
社内でも非常に手厚く取り組んでいきますが、具体的な施策として、いかに待遇をよくするかを考えています。2022年度に入社した人を除いて、もともといた社員に対する昇給は、今年に入って平均8.4パーセント増です。
これから数年は、全世界の報酬へいかに近づけるかを目標にします。利益が出はじめて、企業が伸びていき、よい人材をよい待遇で遇すれば遇するほど、利益率も上がって会社も成長する段階に入ってきていると思います。そのため毎年2桁以上の給与の上昇を狙っていきたいと思います。
また、譲渡制限付株式報酬の導入を先日発表しました。入社3年以上で年収360万円超の社員に株式を報酬として譲渡します。年収360万円超というのは、社員のほぼ全員が該当します。
譲渡制限付株式ですので、譲渡から5年後に売却できますが、5年後の当社の時価総額が現在の5倍、10倍と上昇する未来を社員一同の力で実現しなければならないと思っています。メンバー全員が「時価総額が上昇してよかった」と思えるような状態を作るため、毎年、譲渡制限付株式を報酬として付与していきます。当然、重み付けは多少あります。
これにより、他社にない一体感のあるチームの土台を作っていこうと思っています。ただ、お金や物で釣るのもよくないため、あくまでもチームの土台作りです。会社としての在り方、カルチャー、どのような人間とどのような未来を思い描いて一緒に進むかというベースがある上で進めていきます。
また、先日IRで発表しましたが、くるみん認定を受けました。現在、リモート率も95パーセントを超え、育休・産休もほとんどの社員が取得しています。働き方も多様化しており、2年くらい会っていない社員もいます。2年ぶりに会社で会い、「どこにいたの?」と尋ねると、「実家の沖縄に帰っていました」という会話があったほどです。
特に、これからのIT・AI関連会社には、クオリティの高い作業をしてもらって連動していけるようなカルチャーを作ることが必要だと思います。世界中のすばらしい人材を集約し、よい事業を作っていくことを制度や体制として目指していくべきだと考えています。
くるみん認定、リモート勤務や産休・育休など、人が幸せに生活する基盤をきちんと作った上で、高い利益率やクライアントの要求に応えられるような仕組み作りには自信がありますので、経営方針として全力で進めていきます。
主な取引先実績企業一覧
取引先実績一覧となります。直近1年間で、新たに増えた取引先に星印をつけています。官公庁もだいぶ増加しています。我々はAIやIoTで検索するとだいたい上位にくるような独自のポジションを持っており、各アライアンス先のパートナーに対しても独自ポジションを持っているため、こちらを活用しながら、これからも大手クライアントを開拓していく方針です。
AI人材育成
AI人材育成については、先ほどお伝えしたとおり順調に進んでいます。19ページのグラフにも記載しましたが、AIエンジニア人材の比率は2020年の15.4パーセントから2022年は38.0パーセントまで推移し、今期は41.8パーセントを目標としています。
現在順調ですが、現場でAIソリューション開発をきちんと実行できる人間を育成していくことを全力で進めていきたいと考えています。
また、今後我々がコア技術と認定した分野の資格には資格手当を出していきます。例えば、AI分野では、世界的コンペティションの「Kaggle」でメダルをとった社員にメダル手当てを出すなど、我々がコアと定めたものに対して力をつけた社員を全力でサポートしていきます。
AIを取り巻く環境変化
会社の方向性です。AIは高精度のエンジンを作るだけでは儲かりません。つまり、これは研究開発であって事業ではないと考えています。
AIを事業にする道は2つです。1つ目は、企業のDXに寄り添い、企業がデジタルを使って新しい存在になるために必要なコア技術としてAIを活用するという、どちらかというとコンサル的な要素が強い、ハンズオンでお客さまとDXを完成させるビジネスモデルです。
2つ目は、我々は「IoT×AI」が得意分野で、いろいろなセンサーにより世の中でまだデータ化されていないリアルなデータを収集し、そのビッグデータを活用することで人々の生活を良くします。現在のあらゆるインターネット上のデータは、だいたいどこかの会社が独占しているため、新たなデータの収集が重要です。
Amazonでは購買データ、Googleでは検索データ、Facebookでは個人データを独占することでお金を稼いでいます。私はこのマネタイズは理想形ではないと思っており、データをオープン化して、個人が自由に使っていけるような未来が正しいと思っています。
彼らにまだ独占されてない世界はデータ化されてないリアルな世界で、データ化するにはIoTセンサーの力が必要です。この大きなデータを活用して事業化します。
以上の2つが、AIの会社が進む道の中で今最も事業として成長できるものだと思います。最終的にAIの会社として次のステップに進める分野だと思っていますので、我々はこの両方の道を押さえて、事業領域として前進していきます。
中・長期施策:Society5.0に向けた戦略マップ
中長期の方向性にはステップがあります。現在は、1つ目のステップとして、各業界のコアパートナーといろいろな課題、時には技術や人材なども共有しながらAIを活用した新しい取り組みを行っています。まず、AIを活用した業界全体のDXを進めています。これが非常に有効となった場合、業界全体で活用できるようにするのが最初のステップの在り方だと思います。
2つ目のステップでは、1つ目のステップで業界ごとに作ったいろいろなソリューションのデータ連係が非常に重要になると思います。例えば、スーパーの購買データや医療データがつながると、食べものと医療の相関性がわかります。さらに、スポーツクラブのデータがつながると、人の健康度がより上昇するような効果が期待できそうです。
また、人のいろいろな生活のデータ、病気や幸福度などを全部つなげていくと、今まで気が付かなかった、今自分に本当に必要なものがわかるようになるかもしれません。
読んだ本のデータ、1日の歩行時間や陽に当たっている時間などが関連するかもしれませんし、全部がデータ化されて、個人のものとして有効に活用できたら人生がだいぶ変わるのではないかと思います。私は、そのようなデータ連係がスマートシティの本質だと思っています。
3つ目のステップでは、地域ごとのデータを全部連係することにより、都市OS、社会OSとなって、本当の意味で社会のDXが推進されるのではないかと思います。
中期経営計画のシナリオ・ストーリー
今お伝えしたように社会のDXを進めていく上で、我々の強みは新しいかたちのコンサルティングです。話やレポートを成果物として出すのではなく、ハンズオンでかつ一気通貫でクライアントに寄り添い、会社から社会まで変わる最後の成果までコミットして一緒に走っていきます。
レポートを出すだけでなく、テクノロジーを自ら持って活用できる、完全にハンズオン型で行えるコンサルテーションと、新しい最新のデバイスやAIを中心としたモダンテクノロジーを常にキャッチアップして最初に検証し、社会に実装していくのが我々の強みです。
1社だけでこれを実現するのは難しいため、この強みを活用しながら各業界のトップランナーとしっかりパートナーシップを組み、業界のDX、社会のDXを推進していきます。最終的には、社会のDXを実現してSociety 5.0に貢献します。国策にのっとった方針をしっかりかたちにしていきたいと思っています。
質疑応答:NVIDIAやソニーとの連携状況について
「マイクロソフトの連携は順調のようですが、NVIDIAやソニーとの連携状況はいかがでしょうか?」とのご質問です。
先ほど少しお伝えしたとおり、進んでいます。かたちになるものがあればIRで発表したいと思いますが、ディスクロージャー上お伝えできないことがあるため、お話は進んでいるという回答にさせてください。例えば、昨日リリースした「ChatGPT」のお話については、現場で活用するにはハイスペックなコアなGPUが必要になるため、このあたりのお話も始めています。
質疑応答:スーパーシティ構想に向けた実績について
「スーパーシティ構想に向けた実績についてお話がありましたが、IRでは実績として公表しないのでしょうか?」とのご質問です。
先ほどお伝えしたとおり、スーパーシティについての動向はIRで発表しています。すでに導入されて動いているものもありますが、一つひとつの案件の売上などはお伝えすべきではないと思っています。実績としては、取り組んだものはだいたい稼働しており、今期は134パーセントの成長ということが1つの答えだと思っていただけると幸いです。
今後、クオリティの高いソリューションを一つひとつきちんと出して、横連携のOSとして行った取り組みについては、最終的に公表したいと考えています。今のお話は、ディスクロージャーというよりは、今後の構想話だと思っていただければと思います。
IRは個別のものは少しずつ公表しているため、「これはおそらくスーパーシティの部品だな」と思っていただき、今後IRについては力を入れていこうと考えているため、ご覧いただけるとうれしく思います。
質疑応答:不採算案件発生の可能性について
「昨年度上期に不採算案件が影響したようですが、今後も不採算案件が発生する可能性は考慮したほうがいいのでしょうか?」とのご質問です。
可能性という面ではゼロではないと思っています。昨年度、不採算案件はあったものの年間予算を達成したとおり、現状の我々の能力においていろいろな可能性があるため、不採算案件が出る可能性を一定数組み入れた予算計画を立てています。不採算案件が出ても、それを込みで予算達成していくことを基本目標にしています。
ただし、昨年の第4四半期のように対応がよすぎると利益が出てしまうということもあるため、このあたりは修正予算を出しながら進めていきたいと思っています。年間予算には影響のない範囲でどんどん新しいことに挑戦するため、不採算案件が出る可能性はあります。ただ、先ほどお伝えしたとおり、対応はかなり進んでいます。
質疑応答:競合企業との違いについて
「他のAI企業の決算を見ていると軒並み苦戦しているように感じますが、他社との違いはどういったものになるのでしょうか?」とのご質問です。
他社の状況を精緻に見ているわけではありませんが、細かい違いはいろいろあります。本質論で言いますと、私は事業というのは、クライアントに対して費用対効果を出すなど、「誰かを幸せにすることを一生懸命目指す」かどうかだと思います。
クライアントにはクライアントのビジネスがあります。「この先、お客さまはどうしたら幸せになるんだろう」と考え、AIを使用したりDXなどを進めています。そこからフォーカスが離れてしまったら、その事業は最終的には伸びないと思います。
たまたま新しいことを行って一瞬だけ売上が上がり、注目を浴びて研究開発費などをもらえることはあるかと思いますが、社会の一部に組み込まれ、きちんとお金を生みながら人を幸せにしていかないと継続性はありません。
我々は器用ではなく、博士課程をとっているメンバーだけを集めているような会社でもありませんが、リアルなビジネスでお客さまが生きる世の中がよくなることをリアルに捉え、フォーカスして進んでいることが我々の強みだと思っています。
質疑応答:「ChatGPT」のスケールの可能性について
「話題となっている『ChatGPT』のスケールの可能性についてはどう考えていますか?」とのご質問です。
我々は「Pepper」を中心としたロボットからAIの世界に入っています。例えば、居酒屋に置いた「Alexa」に「『Alexa』注文いい?」と話し掛けると、「はい、何ですか?」「ビールを2杯ちょうだい」「ビールを2杯ですね。このビールにはからあげが合いますがどうですか?」と会話できるものを作りました。
5年ほど前のコロナ禍前に発想したものです。居酒屋で店員に頼むのも面倒だと思う人も多いため、よいアイデアだと思いました。居酒屋のオーナーから、「もう1杯どうですか?」「これもすごくお勧めですよ」など声掛けをすると、売上がすごく上がると聞きました。
品質の高いアルバイトの方がいると、売上がぜんぜん違うと言われていますが、その品質を人に求めると教育が大変です。しかし、AIに代替すれば同じような品質が出せるのではないかと考えました。ただし、やはり会話能力や聞き取り能力が低く、継続稼働までには至りませんでした。
「ChatGPT」は、このようなものとのリプレイスを実現できるのではないかと思います。何かを聞いたら文章を返してくれるコード生成が可能で、すでに実用性はいろいろありますが、未来の可能性としてさらにいろいろなところで使えると思います。
例えば、我々がクライアントに提供している会話型AIで、社内にあるいろいろなデータやファイルなどを出してくるものがありますが、「GPT-3.5」を使用すると、精度がまったく違うのではないかということをいろいろ検証しています。
すでに我々の出したソリューションの中で活用することにより、ソリューションとしてのレベルを格段に上げることはほぼ可能だと思っています。今まで、AIの成長が足りずにできなかったソリューションが、これからかたちになると思っており、思い描いたものが世の中に出せるようになると考えています。
今までのAIは教師データがあって学習して、「このような場合はこう」という対応が主流でした。対して、「ChatGPT」のような生成型のAIは、いろいろなデータを集めてリアルなものを計測し、自らモデルを作って、そのモデルをベースに、自分で計画を立てて提案を出すような、今までのAIとは違う領域のAIです。その意味では、より実用性があり、今までにない市場を作る可能性があると思っています。
我々は、このような新しいものが大好きで、また、日本マイクロソフトとも提携しているため、今までの経験も含めて、他の会社よりも早くこのモデルを活用したソリューションに次々と挑戦し、世の中へ出していきたいと思っています。
今のところはどれだけスケールするかはわかりませんが、そのくらい可能性のあるテクノロジーだと思っているため、全力で検証して世に出していきたいと思っています。
篠田氏からのご挨拶
本日はお付き合いいただき、ありがとうございました。毎回このようなご質問をいただけると、どこに興味を持っていただけているか、数字だけではわからない私の思い入れのある部分を感じ取っていただいたり、今期に対する自信の部分、もしかしたら自信がないと感じられるかもしれませんが、そのような部分を直接お伝えしていける素晴らしい機会だと思っています。
そのうち、ご興味のある方や株主の方と一緒に、ビジネスに対するディスカッションをリアルでできる場が開催できればとも考えています。
今後、当社は新しいビジネス領域へのチャレンジも多くなります。売上を見ても、1年前や2年前よりも我々が進んでいる領域が確かな事業領域として伸びている実感があります。
今まで以上にしっかりと成長を実現し、株主のみなさまのご期待に応えていきたいと思いますので、これからもご注目、ご支援、ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。本日は、誠にありがとうございました。