「総合生活文化企業」スターツグループ
菊地修一氏(以下、菊地):スターツ出版社長の菊地でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、資料をもとに会社のご説明を行います。
弊社の親会社は、プライム市場に上場している建設・不動産業を核としたスターツコーポレーションで、スターツグループとして83社で構成されています。
スライドの中央に「総合生活文化企業」と記載しています。建設・不動産を核としながらさまざまな事業を展開しており、弊社はその中でも出版業を行っています。あくまで「総合生活文化企業」ですので、このグループの中でも文化部門を担当しているという位置づけです。ちなみに、弊社は21年前にJASDAQに上場しています。
スターツ出版(株)の経営ビジョン
菊地:弊社の経営ビジョンは「感動プロデュース企業へ」です。総合生活文化企業を掲げるスターツグループの中でも「紙とデジタルを駆使する、ユニークな出版社として、時代に合わせたコンテンツの発信で、多くのエンドユーザーに喜んでいただく「文化企業」であり続けること」をモットーにしています。いつも感動をプロデュースしていこうと取り組んでいます。
スターツ出版(株)の事業領域
菊地:具体的な事業領域をご説明します。大きく分けると2つあり、1つは書籍コンテンツ事業です。
後ほど詳しくご説明しますが、他の出版社とは商品の作り方がやや異なっています。弊社は小説投稿サイトを自社で開発・運営しており、一般の方に小説を投稿していただく仕組みができています。
そして、サイトに投稿された作品の中から優良な作品をピックアップします。作家ではなく作家の卵のような一般の方々の中から、「この方は作家になれるのではないか」という方のコンテンツをチョイスし、それを書籍や電子書籍、コミックにするビジネスです。
もう1つはメディアソリューション事業で、大きく2つに分かれます。1つはプレミアム予約事業です。「オズモールのプレミアム予約」というサービスで、いわゆる予約サイトの中でもオズのブランドで厳選店舗だけを掲載し、特に女性に人気のお店・プランを予約して利用していただく送客手数料ビジネスです。弊社は出版社ですが、こちらに関してはITビジネスを展開しています。
もう1つは、マーケットソリューション事業です。老舗の女性誌である「オズマガジン」「メトロミニッツ」などや、女性向けサイト「オズモール」、後ほどご説明する「東京女子部」というSNSのグループを持っています。これらを総合的に活用して、さまざまな大手企業や地方自治体の宣伝・販促をお手伝いするビジネスを行っています。
業績推移
菊地:業績の推移について、スライドに直近6年間の業績を示しています。ご覧のとおり、2020年は新型コロナウイルスの影響が多少ありましたが、基本的には右肩上がりで順調に成長しています。
今年に関しては第3四半期の決算を先般発表し、第3四半期累計で売上高は49億円となっています。先日の段階で上方修正も行っており、今期の最終見通しは65億円という予測を立てています。
営業利益についても、今年の予測は13億円で、第3四半期までの累計実績は10億9,200万円を超えている状況です。2017年の3億5,500万円から比べて右肩成長で業績が非常に伸びています。
業績推移
菊地:経常利益および純利益に関しても、スライドに示したとおりです。純利益に関しては、今期の予想は9億円で、10億円に手が届きそうな状況です。第3四半期までの実績は、7億3,600万円となっています。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ここから質問も挟みながら進めていきたいと思います。まず、売上高と営業利益が新型コロナウイルスの影響でやや落ち込んだというお話もありましたが、コロナ禍前を超えて成長を続けている状況です。その中で、特にどの部分が伸びたのかを教えてください。
また、営業利益についても進捗がかなり進んでいるとのことですが、上方修正は行わないのでしょうか?
菊地:実は、コロナ禍前は書籍コンテンツ事業とメディアソリューション事業では、どちらかといいますとメディアソリューション事業のほうが比率が大きかったのですが、メディアソリューション事業はお出かけを支援するサービスです。
後ほどご説明しますが、「オズモール」で記念日などにお店やレストランを予約してお出かけするサービスは、新型コロナウイルスの影響を非常に大きく受けることになります。
さらに、雑誌などのメディアを利用したマーケットソリューション事業も、人に街へ出ていただくために広告・宣伝・販促していくビジネスのため、新型コロナウイルスの影響を大変大きく受ける部分があります。
そのため、2020年は大きく業績が落ち込みました。新型コロナウイルスが日本を席巻しそうになった2020年4月の段階で、いち早く「お出かけ支援サービスは厳しい」と感じた一方で、弊社が行っている出版事業、すなわち書籍コンテンツ事業は、巣篭もり需要があります。
そのため、こちらに経営の軸を大きく振ろうとして、今まで「オズモール」やメディアソリューションの営業を行っていたメンバーの相当数を、書籍部門の編集や販売営業に異動しました。
巣ごもり需要が間違いなく発生すると考え、優良なコンテンツをたくさん出し、新創刊を出していくことを決め、書籍コンテンツを徹底的に強化することに軸足を移したおかげで、書籍コンテンツ事業が大変伸びたという状況です。
紙の本は売上を伸ばすと、重版がかかります。重版がかかると、原価経費をほとんどリクープした状態で売上が上がりますので、どんどん利益が上がり、非常に高い利益率を実現することができました。第3四半期累計実績の営業利益率は、すでに20パーセントを超えています。
坂本:今後アフターコロナになると、営業から書籍部門に異動した方はWebメディアに戻るのでしょうか? それとも新規採用で補う予定なのかを教えてください。
菊地:3年前に異動したメンバーはほとんど20代で、イチから編集や販売の仕事を教えましたので、3年経つとベテランになっています。
坂本:かなりのプロフェッショナルになっており、ヒットも出されているし実績もよいということですね。
菊地:そのとおりです。したがって、元の事業部に戻るということはありません。足元でお出かけ需要がどんどん戻ってきていますので、そちらの足りない部分を中途採用と来年の新卒採用で着実に補っている最中です。
坂本:本来なら時間がかかるような書籍部門の育成がかなり進んだのは、御社の大きな財産になっているのですね。
財務状況
菊地:財務状況です。スライド左側が資産の部、右側が負債の部と純資産の部です。スライド下部に記載のとおり、自己資本比率は76.9パーセントと非常に高くなっています。
さらに利益剰余金は約44億6,400万円、有利子負債はゼロと、財務体質的には極めて優良で盤石な財務内容になっていると考えています。将来はこの潤沢なキャッシュを利用して、さらに大きなビジネスにもチャレンジできるのではないかとも考えています。
加えて、この財務内容がずっと継続している状況でもあります。3年前に新型コロナウイルスの影響で大きく売上が減収し、世の中では最悪の場合は赤字に突入するかもしれない、2年から3年は赤字が続くかもしれないという状況になっていましたが、そのような時もこのように自己資本比率が高くてキャッシュがあると、全く心配する必要がありません。
社内的にもまったく動揺せず、安定・安心して経営することができたのは、この財務体質によるものでもあり、大変ありがたかったと考えています。
上場維持基準をクリアし、持続的に企業価値を高める
菊地:スライドは、2019年から現在に至るまでの株価です。2001年に上場して今年で21年目になりますが、多少の上下はあるものの緩やかに上昇しています。
ITビジネスも行っていますが、あまり大きく変動するのではなく、業績に合わせて順調に上がっていると思います。特に最近は足元の業績が非常に堅調で、なおかつIRも強化していますので、それに伴ってこの夏くらいから株価が急上昇しています。
坂本:非常に業績がよく、今回の決算発表後も株価がかなり上がっています。当然業績が一番大きな要因だと思いますが、IRを積極的に行っているとのことで、「ログミーファイナンス」以外にどのような取り組みを行ったのかを教えてください。
菊地:「ログミーファイナンス」以外にも、個人投資家向け会社説明会やプロの投資家向け説明会などに、1ヶ月から2ヶ月に1回くらいずつ意識的に参加するようにしています。また、後ほどご説明しますが、昨年からは株主優待なども行うなど、できるだけ社員と株主と一般ユーザーのお客さまの三方を見ながら経営しています。
配当政策に関して
菊地:今お話しした配当政策についてです。剰余金の配当に関しては、昔から安定配当の考えをベースにしてきました。ただし、最近は業績が大変好調であるため、配当額が30円から35円、昨年は40円と徐々に上がってきて、今年は今のところ40円の予定ではありますが、純利益もかなり上がってきています。
安定配当の考えをベースにしつつも、業績の拡大に合わせた増配はその都度検討していきたいと考えています。
さらに、昨年から株主優待制度を設けました。後ほどご説明しますが、弊社の書籍が非常によく売れています。現在ヒットしている書籍を株主のみなさまにもぜひご覧いただきたいと思い、弊社発行の書籍の贈呈を始めました。私が直接選んだベストヒット作品を、継続保有期間が3年未満の方には3冊、3年以上の方には5冊プレゼントしています。
株式分割に関して
菊地:先般、株式分割を発表しました。おかげさまで株価も60万円台となり、一般の個人投資家のみなさまに買っていただくには少し高くなってきました。なおかつ、個人の株主を増やしていきたいという強い思いがありますので、今回株式分割を行うこととしています。
効力発生日は来年の1月1日で、年末に所有している株式を1株につき2株に分割すると発表しています。
書籍コンテンツ事業のレーベル別売上推移
菊地:事業の具体的な内容をご説明します。まず書籍コンテンツ事業について、スライドにレーベル別の売上推移を2017年から四半期単位で記載しています。紙の書籍と電子書籍の売上を合計していますが、2022年第3四半期の数字が急拡大しています。
1つのレーベルが大当たりしたということではなく、すべてのレーベルが着実に成長を遂げています。また、新型コロナウイルスが拡大する中、3つのレーベルを立ち上げることにチャレンジし、いずれも成功を収めています。これらの売上が業績を押し上げる結果につながりました。
読者ターゲットを細分化し、マーケティングを徹底
坂本:基本的にどのようなジャンルのレーベルが得意なのでしょうか?
菊地:読者ターゲットを細分化しており、小学生向けの児童文庫をはじめ、中学生、高校生、大学生、大人など女性に向けたジャンルが得意だと思っています。女性向けのレーベルは基本的に恋愛がベースになっており、思春期を迎えた子どもたちの甘い恋愛から大人の恋愛をテーマにしています。性的な描写のあるジャンルは取り扱っていません。
しかし、新型コロナウイルスが拡大する中、男性向けのジャンルをスタートしました。スライドに記載している「グラストNOVELS」「グラストCOMICS」は、男性向けジャンルとして新たに創刊しています。
坂本:「noicomi」は、11ページのグラフを見ると第3四半期に売上が大きく伸びています。こちらの背景を教えてください。
菊地:現在、『鬼の花嫁』という作品が大ヒットしています。3年前に文庫本で出版した作品で、5巻まで刊行して大変好調だったため、紙のコミックや電子コミックでも販売しています。この作品はわずか1年間で約100万部の売上を記録しました。現在も売上を伸ばしており、売上が大きく伸びた部分はこちらが大きな要因となっています。
坂本:男性向けのコミック誌「comic グラスト」について、「チャレンジする」というお話しでしたが、このジャンルの立ち上げや伸びについて評価を教えてください。
菊地:「comic グラスト」は冒険もののコミックです。弊社が男性向けコミックを手がけるのは初めてですが、「こんなにうまくいくのか」と驚くくらい、紙も電子書籍も創刊当初から売れ続けています。
また、このコミックを担当しているのは20代の新卒社員で、ものすごい情熱で作品を作っています。紙と電子書籍の売上は月商約6,000万円です。わずか1年で、ここまで作品を大きくしました。そこに新たな新卒社員が加わり、引き続き20代前半のチームで戦っている状況です。
環境変化に左右されず、書店店頭(紙)でも着実に伸長
菊地:大手出版社の決算を見ると、電子コミックやゲーム、海外事業の売上が伸びていますが、国内の出版物の売上が減少しています。
スライドの緑のグラフは全国の書店の店頭平均売上で、前年比80パーセントから90パーセントとなっています。新型コロナウイルスが落ち着いているのか落ち着いていないのかよくわからない状況ではありますが、緊急事態宣言が出ていないためマスクをして外出することで、家でじっくりと本を読む機会が減ったと考えています。
スライドのオレンジのグラフは、当社の紙の書籍の売上です。8月、9月は前年比140パーセントを超えています。相対的に見ると、書店では紙の本の売上が非常に厳しい一方で、弊社が発売している書籍は他の出版社と比べ、1.5倍程度売れ行きがよい傾向となっています。
これだけ売れてきますと、全国の書店でスターツ出版の棚をどんどん広げて、入り口の目立つところに置いてくれます。それがさらなる相乗効果を発揮し、影響力が大きくなっていると考えています。
坂本:営業の方の努力もあったと思いますが、売れるため棚が増えているのですね。
菊地:全体の読者数は8割から9割に減少していますが、その中で弊社のシェアが上がっている状況だと思っています。紙の書籍が売れている出版社はそれほど多くないはずです。
坂本:どこの出版社も電子書籍にシフトしていますね。若い年齢層がターゲットになっているというのも、少なからず影響しているのだと思います。
菊地:私どもの分析では、紙の書籍を買う読者は50代から70代くらいが多いです。一方で、20代、30代はもともとデジタルネイティブ世代のため、紙の本を読む文化はなく、スマホがあれば十分です。
しかし、弊社が作っている作品は、10代から読める内容となっています。作品が「Twitter」などのSNSを通じて広がり、それを見た子どもたちが書店に行って本を買って読んだら「紙の本でこんなに泣けるとは思わなかった」という感想がSNSにたくさん投稿されました。
すると、それを読んだ若い子たちにもう一度拡散され、弊社の本を名指しで買いにくるという現象が起きました。「TikTok」や「Twitter」で本が売れるという状況で、今まで本を買っていなかった方たちが本を買い、本のよさに気づいた方がさらにリピートするというブルーオーシャンとなっています。
弊社のレーベル群の部数が毎月伸びているのは、コアになるファンの方が増えたからだと考えています。
投稿サイトから作家を発掘、紙とデジタルの循環で読者を拡大
菊地:読者が拡大している仕組みをご説明します。弊社はもともと大きな出版社ではないため、有名な作家は抱えていません。ではどのようなことを行っているかといいますと、スライド左側に記載の小説投稿サイト「noichigo」「Berry’s Cafe」「ノベマ!」を開発しました。小説を投稿できたり、無料で読んだりすることができます。販売は行っていません。
本気で作家を目指している方たちが小説を投稿しているわけではなく、あくまで一般の方がブログを書くように趣味の域でサイトに作品を投稿しています。
人はおもしろいもので、自身では気づいていないのですが、数百人に1人の割合で文才を持った方がいます。そのような方々の作品を弊社の編集者が丹念に調べて見つけだし、「あなたの作品を本にしてみませんか?」と声をかけています。
昔は詐欺と勘違いされることもありましたが、今はどこの書店に行ってもスターツ出版の本が並んでいるため、疑われることも減り、弊社から作家デビューしていただけるようになりました。
プロの作家ではないため、編集者と二人三脚で本を作っています。なおかつ、その作家は一般の方のため、一般読者と同じ目線で物語を書くことができます。読者に非常に寄り添ったかたちでコンテンツが作れるため、それが売れる理由となっていると感じています。
最初は小説を紙の書籍にし、その後電子書籍化します。売れ行きが好調な作品はコミカライズするために漫画家を別途探し、原作をもとに漫画を描いていただきます。その漫画を電子コミックとして販売し、好評だった作品は紙の書籍にします。
紙とデジタルが循環しながら読者を拡大するモデルで、これまでに延べ500名を超える作家を輩出しました。
読者ターゲットを細分化し、マーケティングを徹底(再掲)
菊地:スライド上段が紙の作品、下段がデジタルの作品です。児童文庫を読む年齢のお子さまは課金ができないため、基本的に紙の書籍しか投入していません。
ピンク色の「野いちごジュニア文庫」も新型コロナウイルスが拡大して真っ先に創刊したレーベルで、3年前に紙の本のみで投入しました。現在は大手4社にスターツ出版が加わり、本の売れ行きランキングではベスト3に入っています。
また、大学生以上が楽しめる大人向けのスターツ出版文庫でも大ヒットが多く出ています。
IP展開を強化 「話題の作品」を映画化・ドラマ化・アニメ化へ
菊地:現在、知的財産の有効活用を強化しています。私たちは10万部以上売れた書籍を話題の作品と考えており、これを映像化しています。今年はスライドに記載した3作品が映画化、ドラマ化されました。
この春には『君が落とした青空』というラブストーリーが映画化されました。そして、現在も上映されている『カラダ探し』がホラー映画として公開されました。この作品は橋本環奈さんが主演を務め、映画もヒットしています。さらに、『-50kgのシンデレラ』がドラマ化されました。
IP戦略担当を設け、映画化やドラマ化、アニメ化というかたちで立体的に展開しながら、最終的には弊社の本が売れる仕組みを構築しているところです。
『鬼の花嫁』ロングランヒットの可能性
菊地:先ほどお話しした『鬼の花嫁』はロングランヒットの可能性があり、文庫本、電子コミック、紙のコミックで現在約100万部売り上げています。あと5年から10年間ほど続くコンテンツ量があるため、弊社としても非常に楽しみな作品です。
坂本:続編も用意されているのでしょうか?
菊地:文庫本の続編がすでにスタートしています。
OZのプレミアム予約とは?
菊地:メディアソリューション事業をご説明します。Googleで検索していただくと出てきますが、OZのプレミアム予約「OZmall」という女性向けサイトをスタートして26年目になります。こちらのサイトを利用して、レストラン予約、トラベル予約、ビューティ予約などが可能です。
厳選した店舗で、OZならではの贅沢でオトクな限定プラン
菊地:厳選した店舗で、OZならではの贅沢でオトクな限定プランが予約できます。大手予約サイトは全国の津々浦々のお店が予約できますが、「OZmall」は基本的に関東圏中心で、レストランについては名古屋と関西方面で予約が可能な現状です。
オズモールプレミアム予約数と掲載施設・店舗数は、回復中
菊地:スライドのグラフからもわかるとおり、予約数はコロナ禍による大きな影響を受けましたが、現在は急激に回復基調になっています。中でもレストラン予約に関しては、足元の11月は2019年の売上を超えてきています。
デジタルマーケティング力の強化で、ファンを拡大
菊地:IT業界では当たり前の話ですが、デジタルマーケティング力を強化しています。SEO・SNSの流入から、UI・UX、F1・F2化、CRMまで、ネットの世界でどれだけユーザーを集めて、そのユーザーにファンになってもらい、リピート利用してもらうかというデジタルの仕組み作りに、専門のチームを設け取り組んでいます。
そして、OZオリジナルの価値を大きくすることによって他社との差別化を図っています。一種のファンビジネスですので、単に便利な予約サイトというだけではなく、「OZが大好き」という女性ユーザーのハートを捕まえることは、書籍のファンを広げることと同じなのではないかと思います。
坂本:意外に男性の私もけっこう使いますよ。
菊地:ありがとうございます。
坂本:お得な部分もありますし、プレミアムな感じがすごく非常によいと思いながら使っています。
菊地:男性の個人投資家のみなさまにもぜひご覧いただきたいと思っています。オズモールは裏テーマに「かけがえのない女友だち」という考え方を置いているのですが、かけがえのない女友だちは絶対に裏切りません。
それだけ厳選して、絶対に裏切らないプランやお店しか掲載していませんので、男性がパートナーを記念日・誕生日にお祝いしたいと思った時に、「OZmall」で予約すれば間違いありません。パートナーも喜んでくれますので、男性の利用率も実は2割くらいあります。
ブランドを生かした、マーケットソリューションビジネス
菊地:スライド上段に「ブランドを生かした、マーケットソリューションビジネス」と記載しています。スターツ出版はもともと『OZmagazine』からスタートしており、首都圏ではほとんどの女性がご存知の雑誌になっていると思いますが、今年で創刊35年目です。『OZmagazine TRIP』という『OZmagazine』の旅行版雑誌も持っています。
また、『metromin.』というフリーマガジンは創刊して20年になるのですが、東京メトロで毎月10万部捌けるようなクオリティの高い雑誌で、大変好評です。Webサイトの『OZmall』は創刊して26年になります。さらに、地域情報誌『AELDE』は創刊39年です。
いずれも10年、20年、30年と続いており、雑誌を長く継続できているということは、信頼と安心のブランド価値が出来上がっているということです。そのため、雑誌のブランドを利用したソリューションビジネスを行うことにより、大企業や地方自治体に安心して弊社のサービスを利用してもらうことができます。
「東京女子部」OZユーザー代表によるインフルエンサー組織
菊地:さらに、昔ながらの雑誌のブランドにしがみつくだけではなく、昨今のSNSの隆盛を受けて、「東京女子部」というOZユーザー代表1,500人ほどによるインフルエンサー組織を作りました。
「Ozmall」の会員は400万人おり、そのトップに位置する1,500人のメンバーがイベントに参加したり、企業の新商品発表会に行ったりして、その様子をどんどんSNSで拡散してもらう仕組みです。
「東京地域密着 × リアル体験」でユーザーのおでかけ・購買促進
菊地:「東京地域密着×リアル体験」についてです。弊社の雑誌は基本的にすべて東京に根ざしており、そのような方針で20年、35年と事業を運営しています。
世界の中の日本、日本の中の東京、その東京に密着し、何十年も続けている雑誌とリアル体験のイベントやショップを掛け合わせることで、ユーザーのお出かけや購買促進をこれからどんどん進めていきます。
今は巣ごもり需要からお出かけ需要にシフトしている最中ですので、巣ごもり需要に向けた書籍コンテンツの維持・拡大は続けながら、お出かけの需要回復にも大きく踏み出していこうと考えています。
坂本:東京を中心に展開されてきたとのことですが、最近は地方自治体のプロモーションを含めていろいろ取り組んでいるのですよね?
菊地:長いこと東京に根ざして展開している雑誌で、なおかつ東京でかなり大きな部数が出る影響力を持っていますので、地方自治体からかなりお仕事をいただいています。北海道から沖縄までの各地方自治体からは、「東京から観光客を呼びたい」「地方の物産を関東圏で売りたい」「東京から移住してほしい」などの強いニーズがあります。
私どもには東京地域密着メディアと、東京都内でリアル体験をする場所があり、さらには「東京女子部」のような人たちがどんどんSNSで拡散してくれる機能も持っています。そのため、安心・信頼して、私どもに予算を預けていただき、地方自治体のよいところを東京でPRするというビジネスが非常に活況を呈しています。
昨日も新宿・小田急エース北館1階に「OZとハルコの旅するベーカリー」を新しくオープンしました。弊社がお店を経営しているわけではないのですが、OZブランドを提供してパンを売っています。今後は『OZmagazine』と連動しながら、地方のいろいろな名産品をパンにして販売していく活動を展開することも考えています。
坂本:このあたりには、イベントを繰り返してきた強みが活かされているのでしょうか?
菊地:コロナ禍前は、イベントは弊社のお家芸でもありました。10年以上前から、女性だけを一度に500人集める巨大女子会を毎年行っていた時代もあります。
「OZmall」『OZmagazine』『metromin.』を利用すると、女性がたくさん集まります。素敵なイベントを企画して、その中で企業や地方自治体の新商品やサービスを試して、楽しんでもらうような町の賑わいを演出するイベントは得意です。来年にかけて、このようなイベントを多く繰り出していくことができるのではないかと考えています。
成長戦略の基本方針
菊地:成長戦略は大きく3つあります。1つ目は「穏やかで、伸び伸びとした、社員の成長が持続できる企業風土」です。スターツグループは「人が、心が、すべて。」をずっと経営指針にしており、社員を大事に考えています。社員のがんばりによって、今の会社のブランドや業績は作られています。
2つ目は「信頼され、時代の変化に応じた、商品とサービスを、次々と提供」することです。安心・信頼できる商品とサービスを何十年も継続することの大切さと、時代はどんどん変化していきますので、変化に応じた商品とサービスを次々と提供していくことが大事だと考えています。
3つ目は「企業価値を上げ、一人でも多くのステークホルダーに喜びを」提供していくことです。これらにより、感動プロデュース企業を目指していきます。
質疑応答:コロナ禍前後の「OZmall」の予約の質と掲載件数の変化について
坂本:「『OZmall』について、コロナ禍前後で予約の質に変化はありましたか? また、コロナ禍でも掲載件数が落ちなかった理由を教えてください」というご質問です。以前、他社では月額料金がかかるところは掲載件数が落ちたという話もありましたが、「OZmall」の強みも含めて教えてください。
菊地:もともと「OZmall」の強みは女性に圧倒的に支持されているところでした。コロナ禍においては、世の中全般で旅行はできず、夜の会食もできませんでしたが、ランチやアフタヌーンティーは意外と強かったです。アフタヌーンティーに行かれたことはありますか?
坂本:はい、あります。
菊地:OZといえばアフタヌーンティーですので、検索していただく上位に「OZmall」が出てくると思います。「夜の会食はなかなか行けないけど、お昼に少し贅沢をしよう」ということで、女性たちに高級なランチを相当利用していただきました。
また、今や女性にとって当たり前のことだと思いますが、アフタヌーンティーは非常に華やかな食事ですので、写真を撮って「Instagram」をはじめとするSNSでどんどん拡散することをOZが先導したのだと思っています。それにより、売上はそこまで大きく落ちませんでした。
掲載している店舗数が落ちなかったのは、弊社は広告モデルではなく送客手数料のビジネスですので、送客がゼロの時はまったくお金がかからないためです。ただし、予約が入らなくても閲覧しているユーザーはたくさんいますので、「お出かけ需要が戻ってきたら予約も入りますよ」と伝えています。
昨年くらいからは新規の店舗も徐々に増えてきています。この年末はどこのお店も書き入れ時ですので、新規の掲載依頼が非常に増えている状況です。
質疑応答:成長戦略における新規事業について
坂本:成長戦略についてです。御社は若い力が非常に業績に貢献しており、「営業から書籍部門へ移った」というお話もありました。「資本もかなり厚いですが、M&Aは行わないのですか?」というご質問もいただいていますので、投資家のみなさまが興味を持っているであろう新規事業の取り組みについて教えてください。
菊地:既存事業も当面は堅調に成長していくだろうと思っています。ただし、時代の変化に応じた新たなビジネスは必要です。毎年会社のスローガンを決めているのですが、今年は「未来を自ら切り開こう」でしたので、それに基づき今年から「スターツ出版未来プロジェクト」をスタートさせました。
役員以下の部署長を含めた9人のリーダーが、事業横断でメンバーを6人ずつ選出し、新規事業を検討する取り組みです。そして、社員全員の前で「Zoom」でプレゼンテーション大会を行いました。
全部で9チーム出たのですが、そのうち4チームが残っており、年末までにいくつかの新規事業をスタートすることが決まっています。社員にはすでに発表していますが、年明けからプロジェクトチームを発足させ、1案件につき数千万円から大きいものでは数億円かけてもよいと伝えています。
坂本:すごいですね。
菊地:足元の資金は潤沢にありますから、2年後、3年後以降の近い将来の新しい柱になるような事業を育てていこうという試みです。この試みによって、社内は大変盛り上がっています。
部署を横断しているのが非常に良く、この試みは来年以降も継続して行おうと考えています。今後も既存事業に加え、新規事業がどんどん生まれていくような企業体質に成長させていきたいと考えています。