アジェンダ
丹下大氏(以下、丹下):ご視聴いただいているみなさま、こんにちは。株式会社SHIFT代表取締役社長の丹下でございます。これより事業説明会をさせていただきます。よろしくお願いします。
はじめに会社概要をご説明した後に、昨期の振り返りについてお話しします。また、売上高1兆円に向けた成長戦略「SHIFT3000」についてもご説明します。
会社概要
会社概要です。SHIFTグループは、ソフトウェアの「品質保証」を起点にサービスを展開しており、現段階では約9,000名の従業員がいます。売上の約半分は祖業であるソフトウェアテストが中心で、残りの半分ほどはソフトウェアの開発を行っている会社です。
1つの大きなポイントとしては、日本のIT市場が16兆円あるうちの5兆5,000億円がソフトウェアテスト市場だと言われています。アウトソーシングが顕在化しているのは1パーセントくらいしかないと言われており、99パーセントは事業会社や大手SIerが手掛けているということになります。我々としては、そこに非常にチャンスがあるのではないかと考え、事業を進めています。
そのようなマーケットの中での我々の強みは、「品質保証」を軸にしてCAT検定という検定試験を作っているところです。さらに、IT業界はExcelでテストを行うことが多いのですが、自前で作ったCATというツールを使うことによって、蓄積した不具合に対して、できるだけテストをしなくて済むようになります。開発をスマートに進めるためのサポートなどがお客さまから非常に好評で、それに伴って従業員数も増えている状況です。
SHIFT代表
私のバックグラウンドを簡単にご説明します。小学校6年生の頃から「社長になりたい」という思いがありました。
2000年に機械工学科系の学校を卒業し、まずはコンサルティングファームで事業を学びながら、会社を作る勉強をしようと考えていました。「自社で工場を持ち、自分たちで培ったノウハウを使ってコンサルティングしている会社に入りたい」と思い、ものづくり系のコンサルティングファームに入社しました。
その会社は、通常ならば2ヶ月かかる金型の製作を2日で作るといった特徴があり、そのような仕組みづくりに私も携わっていました。職人の技術という暗黙知を形式知化、つまり標準化・自動化して、誰でもできるようにすることが得意な会社でしたので、そのような能力を学べたのではないかと思っています。
生産管理や品質管理は日本のお家芸だと思います。そのようなノウハウを製造業で培い、今伸び盛りであるIT産業に応用しているからこそ、SHIFTが伸長できているのだと考えます。
マーケット(市場規模)
冒頭でもお伝えしましたが、市場規模は非常に大きく、我々はソフトウェアテストの分野だけでも5兆5,000億円のマーケットに向き合っています。
システムインテグレーター業界には1万5,000社の企業があるのですが、多重下請け構造になっており、1次ベンダーが200万円でもらった仕事を、7次請けの会社が50万円で行うような仕組みになっています。我々はこのようなことをできるだけなくしていこうと考えています。特に、エンジニアの人たちが働いたら働いた分だけ評価される世界を作ろうと思って事業に取り組んでいます。
加えて、15,000社あるSIerのうち、60歳以上のオーナー企業が5,000社くらいあると言われています。下請けのマーケットだけでも6兆円の規模がありますので、後継者問題で悩んでいる社長をサポートする意味でも、上場企業である当社の資金調達力を使いM&Aに実施し、下請けのSIerができるだけプライム案件の仕事を行えるようにしていきたいと思っています。
上場来のSHIFT数字
当社は2014年の上場から8年ほど経ちましたが、どのようなところが成長したかの一覧を、サマリーとしてスライドに記載しています。2014年当初の売上高は21億円くらいでしたが、昨期は648億円と、約30倍にまで成長しました。
連結従業員数も500名程度でしたが、今は9,000名を超えています。以前は年間で30名くらいしか採用できませんでしたが、現在では約2,500名も採用できるようになり、これは非常に大きなことだと思っています。
おかげさまでエンジニアの単価平均も約46万円から、86万円くらいまで上がってきています。最近では、高い方ですと単価500万円の仕事もありますし、プライム案件やエンドユーザーの仕事を非常に幅広く手掛けています。
加えて、私は日本の労働生産性を上げたいという思いがあり、年間昇給率にこだわっています。この10年ほどで、平均10パーセント程度は上げられるようになりましたので、社員の給料もできるだけ上げていこうと思って経営に携わっています。
通期業績概況
2022年の振り返りです。おかげさまで毎年約1.5倍のペースで成長しており、昨期の売上高も648億円となりました。目標公表値が630億円でしたので、なんとか上振れすることができています。
さらに、昨期は売上総利益率が非常によくなり、32.5パーセントと前期に比べて2.3パーセントほど上げることができました。エンジニアの単価を引き上げたことや、売上の約半分を占めるグループ企業でのPMIが進んだことに起因していると思っています。
売上総利益率が上がった結果、営業利益率も10.7パーセントと、前期に比べて2パーセントほど上げることができました。
「SHIFT1000」の推進
マイルストーンとして「SHIFT1000」を策定し、売上高1,000億円を目指す構造を作ろうと考え、進めてきました。我々は「縦横組織」と呼んでいるのですが、そのようなマトリクス組織を作って、昨期からチャレンジを開始しています。
従来は、例えばDAAE、コンサルティング、デジタルマーケティング系のグループ会社、アジャイル、開発系のグループ会社、インフラ、テスティング、カスタマーサポートなどにおいて、単価をKPIとしてきました。エンジニアの単価をできるだけ上げ、かつサービスレベルを上げられるメンバーの数を増やしていくというかたちで進めてきました。
当社は横軸を中心に大きくなってきましたが、現在いろいろなインダストリーで多くのお客さまから引き合いがあります。そのため、我々としては単なるサービスの提供ではなく、お客さまのDXをトータル的に課題解決できる会社を目指そうと考えました。
スライドの縦軸に、金融、流通、通信などと記載していますが、いろいろなインダストリーのお客さまに向き合い、予算を勘案しつつ、お客さまのDXソリューションをお手伝いする縦組織を作りました。縦組織のKPIは「顧客単価×顧客数」で、お客さまにできるだけ多くの我々のサービスを買ってもらうことを目指します。
当然、買ってもらうためにはメリットがないといけません。メリットとは価格競争力あるいはサービス競争力ですので、結果として売上総利益、つまり売上総利益が上がる商品をご提供することになります。そこに顧客数を掛け合わせることで売上も伸びていくだろうと考え、このようなKPIで縦横組織を構築しました。
【営業】 営業組織の変革
営業組織についてです。営業にはかなり力を入れており、かねてより営業組織の改革を進めています。常勤の副社長としてキーエンスの元社長である佐々木氏を招き、日本トップクラスの営業ノウハウをSHIFTに注入しようと画策しています。
昨期1年は、まずは営業のボリュームを増やすことで質を上げていこうと活動しました。結果として、年間取引社数が887社から1,139社と、300社ほど増えました。それに伴い、売上成長率も50パーセントとなりました。
営業人員は50名から60名と少数精鋭で取り組んでいます。我々がこだわっているのは1人当たりの売上高で、1人で約8億円の商品を売れるようになりました。
縦組織での営業は、横組織からよいサービスを選び、お客さまにベストソリューションを提供するということです。利益率のよい商品を積極的に売ってくることで、売上総利益率も非常に改善されたと思っています。
【営業】 グループ会社の営業
グループ営業にもチャレンジしています。単体の売上高は約413億円ですが、グループ会社では236億円です。単体の売上成長率が50パーセントの一方で、グループ会社の売上成長率は33パーセントとなっています。そのため、まだまだ今後も伸びしろがあると考えています。
【アカウント】 業界別業績拡大状況
スライドには、いろいろな縦組織におけるセグメントごとの売上の伸びを記載しています。見ていただくとわかるとおり、ほとんどすべての事業部が伸びています。
特に、黄色で示した公共決済やチェーンストア、自動車・製造、エンタープライズの伸びは60パーセントから80パーセントと著しく高く、セグメントによっては大きく伸びる1年だったと思います。
【ソリューション/技術・サービス】 高度サービスの売上拡大
横組織については、あらゆるソリューションを手掛けている、さまざまな部署があります。祖業がソフトウェアテストですので、そこからさらにいろいろなサービスを作ろうということで、細かく分けると140ほどのサービスがあります。その中でも特徴的なサービス6つをスライドに記載しています。
最近は、要件やお客さまのニーズが変わることも多いため、決まった要件の下で開発するウォーターフォールという方法だけではなく、とにかく速く、よいものを作るアジャイルという方法が非常に注目されています。
そのようなアジャイル開発を担う部署が非常に伸びています。平均単価は130万円ほどですが、最大で320万円ほどになります。部署としても売上が70パーセントくらい伸びていますので、時代の流れに合ったサービスをご提供できていると思います。
並行して、コンサルティングやセキュリティ、インフラ領域も伸びています。特にインフラはクラウド全盛ですので、クラウドサーバーにどのようなサービスを構築するかといったお手伝いが増えており、顕著に伸びています。
DAAEはSHIFTが考え出した用語なのですが、デザイン(D)がよくて、アジリティ(A)が高いものを、技術をアセンブリ(A)して、エコノミッククオリティ(E)が合うように作ろうという新しい開発手法です。「売れるサービス作り」をお手伝いする開発スタイルでお客さまからも徐々に認知され、受け入れていただけるようになったことで、非常に伸びてきたと思っています。
加えて、エンジニアプラットフォームというものがあります。これは、我々だけのリソースだけでなく、他社のリソースも活かすプラットフォームです。約1万5,000社あるSIerと組んでプラットフォーム化し、彼らの外注先のパートナーに我々の仕事を依頼します。他社を巻き込むかたちで、より高い次元で1つの総合的なSIerになろうと考えており、そのような事業も非常に伸びてきています。
【ソリューション/技術・サービス】 売総率の構成
SHIFT単体と、グループ会社合算の売上構成比を俯瞰的に表したものです。先ほどお話ししたとおり、SHIFTグループは売上総利益率が非常に高いのですが、その中でも特徴的なのは、事業会社の売上比率が非常に高いことです。SHIFT単体では約8割を占めており、平均単価が78万円です。さらに、単価自体もまだ伸びる余地があります。
私としては平均単価水準を150万円くらいまで上げていけると思っており、既存のお客さまの売上利益だけでも、倍ぐらいになる可能性は高いと思っています。
一部で20パーセントほど、大手ベンダーと一緒に進めている仕事がありますが、平均単価が高いことが物語っているように、我々がベンダーのアンダーであるというより、ベンダーにとって我々のリソースが必要不可欠なものになっているということをお伝えしたいです。
ベンダー側が我々に発注するということは、技術者が我々のところに非常に多いことを意味しています。ベンダー側は我々に依頼することで利益を出すというより、むしろ逆ザヤになっている可能性もあるのです。
それでもSHIFTの技術者を中心としていろいろな仕事を取っていこうと思っていただけている面があります。そのような背景から平均単価が非常に高いというのが当社の特徴だと思っています。
一方で、グループ会社合算での事業会社の売上比率は38パーセントで、今後も事業会社を増やしていくチャンスがありますので、伸びしろしかないと思っています。ベンダーのアンダーとしても平均単価は64万円で、売上比率は40パーセントと全体の半分以下ですが、こちらも伸びしろがあり、今後も非常におもしろい取り組みができると考えています。
【人事/採用】 採用力の強化
マトリクス組織体制には、技術、営業に加えて、採用という軸がある訳ですが、我々は今、グループ全体で年間約2,500名を採用できるような実力値になっています。
どのような構造になっているのかと言いますと、まずIT業界では約100万人のプログラマーがいます。我々はこの100万人の中から採用するだけではなく、新卒の中から今後プログラマーやエンジニア候補になるような方も採用します。
また、日本の労働人口における非エンジニアの約6,500万人の中からも、ITに向いた方々を採用しようとしており、つまりすべての労働人口の中から採用を行なっています。そのような中で、中途採用では年間約4万人、新卒採用では年間約3.3万人がSHIFTグループに応募してくださる母体となっています。
我々はCAT検定という検定試験を通過しないと採用しないのですが、合格率が6パーセントぐらいです。そのため、CAT検定で受かった6パーセントの方の中から、面接を通して合格できる方が約2,500名ということになります。
2,500名というと、ただ多くの人を採用しているのではないかと思われがちなのですが、実際はかなり狭き門で、採用した結果が2,500名ということです。採用としてのケイパビリティは非常に高い会社だと思っています。
【人事/採用】 LTVの最大化
結果としてよかったことは、退職率が非常に下がったことです。もともと約8パーセントだった退職率が、約6パーセントに下がりました。
長く働いていただけることになるため、働いているメンバーのLTVも上がりますし、会社としてのLTVも上がるという好循環が生まれます。退職率を下げるだけで、お金に換算すると764億円ほどの経済効果があったと思います。
さらに、我々は単価を上げることに非常にコミットしているため、トップガン教育という独自の教育システムを使い、従業員の教育に当たっています。これによって単価が上がり、従業員自体の給与も上がります。我々としてもお客さまから高いフィーをいただけるため、経済効果としても582億円ほどあると見ています。
人事が一生懸命がんばっているからこそ、売上および利益ともに、多くの従業員に還元できる仕組みになったのだと思っています。
【M&A/PMI】 グループ会社の成長
M&AとPMIについてです。SHIFTのPMIのスタイルは、M&A後も「社名を変えない」「販管費をいじらない」など、自主運営を促す方針で遠心力経営を進めています。
一方で、PMIについての細かいノウハウがあります。実際に100個くらいのPMIを定義しており、グループ会社がジョインした際には徹底的に活用してもらい、伸びてもらおうと思って、スライドに示したようなSHIFTのPMI体制を確立しています。
その結果が現れてきて、前年比でグループ会社全体の売上高成長率がプラス32パーセントほど伸びており、売上総利益率としても、プラス2.1ポイントほど成長することができました。
「SHIFT3000」への道のり
成長戦略についてです。私は、会社が大きく継続的に伸びていくためには、一定の条件があると考えています。
スライドに記載のとおり、1つ目に、マーケットが大きくないと売上は伸びませんし、継続的に伸ばすこともできません。伸びる会社というのは、マーケットが大きいことが条件になります。
2つ目に、そのマーケットに対して競合優位性があるようなかたちで、構造化されたビジネスモデルを確立できているかが重要なポイントだと思っています。
3つ目に、マーケットもビジネスモデルもよいのであれば、それを誰が推進するのかということで、経営チームがすばらしいかどうかも重要になってきます。
「SHIFT3000」を実現する上で、この3つの条件を揃えることが私にとっての大きなミッションだったのですが、それが現在確立されつつあると感じています。
「SHIFT3000」への道のり 〜マーケットの大きさ〜
マーケットの大きさについてです。繰り返しますが、ソフトウェアテストの分野だけでも約5.5兆円あり、M&Aのマーケットだけでも約6兆円あります。のみならず、そもそも日本国内には約16兆円のDX市場があり、我々の前には非常に大きなマーケットが存在しています。
スライドはよくご案内している図なのですが、例えば銀行や保険会社、証券会社という、我々が取り得るべきマーケットポテンシャルの中で、まだ15億円ほどしか売上を取っていません。マーケットが非常に大きいため、我々としては伸び率、伸びしろが非常にあると思っています。
それぞれのセグメントに対しても、縦組織におけるアカウントマネジャーがしっかりとお客さまのCIO、CTOの方と対面し、まずはSHIFTを知ってもらうということが、昨年1年間でできたと思っていますので、マーケットポテンシャルをどんどん広げられる可能性があると思っています。
「SHIFT3000」への道のり 〜構造化されたビジネスモデルを確立〜
ビジネスモデルについてですが、兼ねてより4つの柱が重要だと思っています。ビジネス、経営というのは構造が大事だと考えています。誰が取り組んでも会社が伸びるという構造を作ることが前提として最重要になります。
マイクロマネジメントを進めたから会社が伸びるというわけではありませんし、ニーズが強いマーケットで着実に経営していく構造にあることが、不可欠だと思っています。
そのような観点で、まず1つ目の柱として重要なのは、アカウント/営業です。お伝えしたようにIT市場は16兆円で、お客さまも500万社ほどいる中で、我々のお客さまはまだ2,000社ほどしかありません。
特にキーエンスから来た副社長である佐々木氏からは、「キーエンスは日本では指折りの会社、世界では有数の会社になっているが、そのキーエンスから見て、SHIFTは製造業のみならず、すべての領域にソリューションを提供できる。これほどチャンスがあることはないのではないか」というお話をいただいています。
このような評価も踏まえて、このアカウントを徹底的に取っていこうと思っています。それができる営業のメンバー、体制にもなり始めましたので、今こそ重要だと考えています。
2つ目に重要な柱は、サービス/技術です。当たり前ですが、技術がよくないとしっかりとしたサービスを提供できません。我々はテストのみならず、約140種類の多様なサービスを作ってきました。つまり、サービスを作れるメンバー、ケイパビリティができています。
新しいメンバーがどんどん主体的に考えて、お客さまにサービスを自ら作って提供することができるようになってきました。その結果として、エンジニアの単価も非常に上がっていきます。我々としてはまだ業界の半分くらいのエンジニア単価だと思っており、単価を上げていける大きな可能性があります。
3つ目に重要な柱は、人事採用です。先ほどお話ししたとおり、市場全体でITエンジニアが約100万人、非エンジニアの労働人口は6,500万人ほどいる中で人を集めています。
ITエンジニア人口に関して言えば、TAMが年間約100万人の中で、1割の10万人しか転職しないマーケットなのですが、そのうちの4分の1程度はSHIFTを受けており、4人に1人は必ず当社を受けていることになります。
そのような意味では、認知度としてもSHIFTが日本でもトップレベルであり、実際に採用しているメンバーもトップレベルですので、これをもっと広げていこうと思っています。そのようなところできちんとセンターピンを打っている状態です。
さらに4つ目に重要な柱は、M&A/PMIです。繰り返しになりますが、我々は毎年5社から6社ほどM&Aを実施しています。件数としては日本で一番多いと言われていますが、いろいろな箱を使ってM&Aができる体制になりました。これは非常に大きなことだと思っています。
これらを合わせて、営業、技術、採用と、それを下支えするようなチームということで、この4つを軸にしながらしっかり経営していきたいと思っています。
「SHIFT3000」への道のり 〜構造化されたビジネスモデルを確立〜
これは非常に重要なのですが、なぜ売上高が1,000億円を超えたら3,000億円を目指すのかという、成長戦略のポイントになります。今まで我々は、横組織としてエンジニアの単価に非常にこだわってきました。
多くの会社は年功序列、学歴主義といったかたちで、「給料は年齢が上がらないと上がらない」もしくは「学歴がよくないと上がらない」「プライムのベンダーにいないと上がらない」といった体制の中にありました。そこには、実力とは違う給与制度という不透明さがありました。
それに対して我々は非常に明確で、エンジニアがお客さまからいただくフィーの約6割をエンジニアの給与にしています。非常にわかりやすく公明正大な評価制度になっていますので、この評価制度があるからこそ、多くの仲間が集まります。「みんなにチャンスが与えられて、やっていることがちゃんと評価されるから、よりがんばろう、より単価を上げよう」という原動力が生まれ、会社が大きくなってきたという軌跡があります。そのような意味では、評価制度は非常に重要だと思っています。
さらに、この縦組織に変わったことで、営業とアカウントマネジャーのインセンティブ設計もしっかりしないといけないという、新しい方針を取り入れました。我々独自のインセンティブ設計なのですが、我々がお客さまからいただく売上総利益の約7パーセントを原資にして、それに紐付いて営業とアカウントマネジャーの給与を決めていくという方針を定めました。
これは非常に重要なことです。例えば、10億円のお客さまの案件1つを2人で行なうのと、3人で行なうのとでは、2人のほうが圧倒的に給与が高くなります。そのため、当然ながら少ない人数で取り組もうと、インセンティブも働きます。
また、細かい話では、営業の現場では営業経費、接待費や交通費などがかかってきますが、我々は接待費も交通費もほとんど出していません。むしろ出さないほうが売上総利益は上がってくるため、自分たちの取り分が増えるということで、できるだけ効率のよい営業、もしくはできるだけ効率のよいお客さまのアカウンティングのサービスに取り組もうといったインセンティブが働きます。
大きな組織になろうとする時に、私は社長が何か言ったことに従うというよりも、自分たちで考えられる構造の中でがんばるということが重要なポイントになってくると考えており、そのような構造を作りあげたのが非常によかったと捉えています、
加えて、単価のところもそうなのですが、横軸のエンジニア単価においても、年収2,000万円から3,000万円を当たり前にもらえるようなインセンティブ設計にしようと考えています。
フィーの約6割がエンジニアの給与になったとしても、もし年収が500万円から600万円だったとすれば、それほどやる気は出ません。年収2,000万円から3,000万円となると業界でもかなり高額です。そのような構造があるからこそ、SHIFTでがんばろうと思ってもらえると考えています。
縦組織も、キーエンスで年収2,000万円というのは非常に有名ですが、2,000万円から3,000万円を稼ぐ営業を輩出できるようなインセンティブ設計を作ることが非常に重要なため、まずはそのような仕組みができたことが大きいと思います。
大きなマーケットがあり、ビジネスモデルが確立され、インセンティブ設計もしっかりしていると、売上高も1,000億円を超えて、3,000億円が狙えると思います。もちろん仕事はあるため、自分たちがどれだけがんばれば自分たちの給料がどれだけ増えるかが明確になりますので、非常に大きな原動力になるのではないかと思っています。
「SHIFT3000」への道のり 〜経営チームを強化〜
経営チームについてです。創業メンバーとして、私と取締役の小林、上席執行役員の菅原がいます。CEO的な役割をする小林と、CHRO的な人事を統括する菅原が、どんどんオペレーションを磨いていくことができているのが1つの特徴です。
また、営業では佐々木氏、管理部門では元IndeedのCFOだった服部氏といった非常に優秀な経営者の方を外部から連れてきて、活躍できる場を提供しているということが組織として重要だと思っています。
この業界は、やはり大手ベンダーに技術力があるというのは間違いありません。そのようなメンバーによって、古い技術も新しい技術も包括的に見られる体制が整っており、しっかりと結果を出せるチームになっていると思っています。
FY2023通期目標
今期の売上目標は870億円です。営業利益は94億円、EBITDAは100億円を超えて108億円という目標を設定しました。
今まではオーガニック成長とM&A成長の両軸での成長を目指していましたが、M&Aというのは出会いによるため、タイミングが合う、もしくはそのような顧客、会社があるからM&Aができるわけです。したがって、M&Aを計画に入れるというより、オーガニックの成長をどこまでできるかというのがポイントだと思っています。
昨期はオーガニック売上高が188億円に成長しており、今期は222億円の成長ができると考えています。約200億円のオーガニック成長ができる会社になったのではないかということはお伝えしたいと思います。
M&Aはプラスアルファのためサプライズなのですが、例えば5年経てば1,000億円が足されるため、換算すると1,000億円と870億円で1,870億円となります。加えてグループ会社が成長しますので、4年、5年以内に売上高は2,000億円に届くのではないかと思います。
その計算では、2028年から2030年の間くらいで3,000億円という売上高もしっかりと達成できると思います。我々の売上総利益率は32.2パーセントくらいですが、売上高3,000億円の場合は35パーセントまで届くかもしれませんし、それよりも上がるかもしれません。
販管費率も、規模が大きくなれば徐々に効率化されていくため、現在は20パーセントですが、もし17パーセントほどになれば、営業利益も18パーセントくらいになるため、売上3,000億円の中で営業利益が500億円というのも夢ではないと思っています。 そのような意味では、売上高3,000億円は1つの大きなステップだと思っていますし、会社の基礎体力としても、当然ながら行けるのではないかと思っています。
SHIFTの目指すところ
最後になりますが、SHIFTの目指すところについてです。IT業界を俯瞰的に見た時に、DXは世界中で非常に大切な技術、サービスです。特に日本の場合は、労働生産性が非常に低いため、給料が低いということがあります。給料を上げるための1つの大きな戦略として、DXはなくてはならないものだと思っています。
当然ながら、お客さまがDXに投資することはもっと増えると思います。しかし、我々のようなDXを行う側は、例えば多重下請け構造があって報われない、もしくは評価制度が不明確で報われない、大企業に至っては50歳でだいたい役職定年となり、給料が半分になったり、60歳で定年になったりしてしまうなどの問題があります。また、地方では賃金格差や地方格差があるため、東京と同じ仕事ができないなど、非常に問題を抱えている業界だと思います。
我々は定年70歳の推奨や、多重下請け構造をなくすことに取り組んでいます。東京の仕事をそのまま東京で行うのではなく、地方でできるという環境も整ってきたため、地方採用にも力を入れていますし、実際に東京の仕事が地方でできるという事例が多々あります。
圧倒的なITエンジニア不足というのは、国力として非常にもったいないです。それを解消し、我々は年間10パーセント給料を上げているため、当然ながらエンジニアの給料も上がっていくことになります。
SHIFTの売上が伸び、利益が上がるということは、世の中がよくなっている、日本の社会的課題が解決されていることだと思っていただきたいです。我々としては、売上・利益というのは結果だと思っています。そのような社会課題を解決するために、我々は会社を経営しています。
マーケットも非常に大きく、メンバーも経営陣も若いです。まだやるべきことがたくさんありますので、引き続き会社を大きくして、社会をよくしていきたいと思っています。
丹下氏からのご挨拶
本日はSHIFTの事業説明会ということで、年に1回、株主のみなさまにぜひSHIFTを知っていただきたい、これからも応援していただきたいと思い、簡単ではありますが、このような機会を設けさせていただきました。
SHIFT一同、株主のみなさまに感謝申し上げますとともに、今後もがんばっていきますので、応援いただければと思っています。それでは、以上をもちまして、事業説明会を終了します。本日は誠にありがとうございました。