2023年3月期第2四半期決算説明

菅原充氏(以下、菅原):みなさま、こんにちは。本日は、株式会社QDレーザの決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。私は、代表取締役社長の菅原でございます。まずは我々の会社について説明させていただき、その後に決算説明へ移ります。よろしくお願いいたします。

Mission

本日は初めてご参加の方もいらっしゃるため、当社事業について少し丁寧にご説明したいと思います。我々は半導体レーザを用いた事業を展開しており、設計から開発、製造、販売までを行なっています。

当社の半導体レーザは、約1ミリメートルのたいへん小さなチップですが、一般的に見られる大きなレーザと同じような機能を果たして、さまざまな産業で使われています。光通信、コンピュータ、加工、センサ、ディスプレイなどが事業の対象になっています。

当社は「QDレーザ」という名前ですが、世界で初めてQuantum Dot LASER、つまり光通信用量子ドットレーザを開発し、量産化に成功した会社です。また、それをベースとして、情報処理能力の飛躍的向上を実現し、視覚障害者の支援、眼疾患予防、視覚拡張など、いろいろなアプリケーションを通じて可能性を拡張する事業を進めています。

本日は、事業の根幹になる半導体レーザデバイスと、コンシューマ向けのレーザ網膜投影技術をご紹介した後に、業績ハイライトのご説明に入りたいと思います。

レーザデバイス事業の原点

半導体レーザデバイスについてです。我々がどのようなチームになっているかと言いますと、事業の原点としては、富士通やNECなどのさまざまな日本企業で、非常に厳しいインフラ系の光通信用半導体レーザを作っていた人材が集まってできた会社となっています。

そもそも半導体レーザとは?

半導体レーザは、先ほどお伝えしたように1ミリメートルくらいの小さなチップで、電流を入れると発振します。例えば、マイクロフォンで声を入れて、それをスピーカーにそのまま入れると、ぐるぐる回ってハウリングが起こりますが、それと同じような現象が光で起きるのが半導体レーザです。

通常は目にすることはありませんが、光通信、あるいは光の記録というかたちで1980年代から社会に実装されました。これが現在の情報通信機能の根幹になっていますので、半導体レーザがなければ今日の社会はなかったと言っても過言ではないと思います。

QDレーザへの期待

半導体レーザは、歴史的には100年くらいの技術になります。1915年にアインシュタインが原理を提唱し、1960年には反射鏡を使ったかたちで、先ほどご説明したハウリングのように光が戻ってくる、ある種のトリックのようなレーザが発明されました。1962年に半導体レーザができて、光通信として実装されたのが1980年代、インターネットができたのが1995年です。その後は、ご存知のように瞬く間に社会が変わっていきました。

現在喧伝されている新しい装置、システム、デバイスのうち、自動運転用LiDARや顔認証など、当社のレーザが適用可能な分野は多岐にわたります。QDレーザはスライド右下に記載のすべての商品について技術開発し、一部を製品化して進めています。

最もシンボリックなものが、シリコンチップに載せたQuantum Dot LASERです。我々の会社のレゾンデートルであり、コンピュータのチップ間通信に使うものとして、こちらが現在いよいよ量産のフェーズに入ってきています。

更なるTAM拡大の可能性

市場規模についてです。半導体レーザを使ったチップ、パッケージ、モジュール、それらを使った新たな機器を含めて7,700億円の市場があります。現在は今までのランプやLEDなどの光デバイスに置き換わる、例えばヘッドアップ・ディスプレイやヘッドライトなどの市場が立ち上がってきます。

我々が特に注力しているのは、新しい最終製品の市場です。LiDAR、顔認証、ドローン、眼底検査、シリコンフォトニクス、スマートグラス、5G、積層造形などが今後活躍していきたい分野となっています。

当社コアテクノロジーと競合優位性

これらを実現するための、当社のビジネスモデルと技術をご紹介します。まず技術では、半導体レーザのコアテクノロジーとして、材料から設計、制御にわたって、我々だけができる領域を多数持っているのがQDレーザです。

量子ドットについては後ほどご紹介しますが、シリコンフォトニクス回路に光を入れても動作が乱れずに、高温でもきちんと動き、室温から百数十度までシリコンの中で安定して動作するレーザです。この量子ドットを作る結晶成長も行っています。

また、高速で動くためのレーザを設計する技術、できあがったレーザをコンパクトなモジュールにする技術、出てきた光を制御するという意味で網膜に入れる技術、出てきた光の波長をオレンジやグリーンに変える技術などがあり、これらは富士通とNECを中心とした日本企業のコアテクノロジーが集まったものになります。

QDレーザが開発・販売する半導体レーザの特徴

製品の特徴として、アレンジが自在であるということです。どんな波長のレーザも作ることができます。

色によってレーザのアプリケーションが異なるため、例えば太陽光に入っている光は屋外でのセンシングに使えませんが、940ナノメートルという目に見えない赤外光を使えば、太陽光に入っていない波長のため、太陽光の下でもセンシングができます。そのように、いろいろな波長によって特徴的な使い方ができます。

また、レーザの場合は、特にパルセーションで波長を高速で出したり出さなかったりすることができます。さまざまなアプリケーションで、例えば加工であるとか通信を自在に操れるところも我々の特徴になっています。

QDレーザ独自の製造プロセス

ビジネスとしては、先ほどのコアテクノロジーがあった上で、それを水平分業、つまりセミファブレスのかたちで世の中に出していきます。セミファブレスはもともと我々が作ったビジネスモデルです。我々の結晶成長技術を核に、いろいろな波長や量子ドットレーザを作るなどといった、コアの材料作りだけは自前で行なっています。

3インチか4インチのウエハーで、1万個から数万個のレーザを切り刻んで取ることができるのですが、この作業は外部のパートナーに行ってもらいます。その後、我々がチップをテストし、モジュール組立は再び外部のパートナーが担い、出荷検査を経て最後に出荷されます。

最初の結晶成長以外は、すべての製造工程をファブレスで行っています。メリットとしては、1台、2台といった数の試作から始まり、数千万台の自在な製造規模を持っていることです。つまり、自由度が高く、固定費はほぼすべて変動費化されており、レーザデバイス事業の固定費は非常に低い数字になっています。

そのため、一定の固定費で規模や品種が上がることによって、限界利益分が固定費をカバーし、損益分岐点を超えることになります。今年は計画として1億円の営業利益を計上しようとしており、今年前半ですでにその半分弱に到達しています。

QDレーザが開発・販売する半導体レーザのバリエーション

色がアプリケーションを作り上げると言いましたが、例えばスライドに示した緑やオレンジ、黄緑色などの波長は、バイオ系の可視レーザとして世の中に出ています。一方で、見える見えないのちょうど境目にあたる部分の波長は、半導体工場の中のさまざまなアプリケーション、特にセンシングに使われ始めています。

右から2番目の波長に関しては、波長を増幅する固体の装置があるため、瞬間的に光を当てると、装置の中で増幅されて加工ができます。スマートフォン加工の製造ラインに、我々のDFBレーザを用いた加工技術が使われています。

右端の量子ドットレーザチップには、合計で4本のレーザが(長さがだいたい数百ミクロン、幅が0.002ミリメートル)入っているのですが、そのレーザの中に、量子ドットが100万個くらい入っています。これが光を増幅して、レーザ光がシリコンの中に入っていきます。そのようなチップがいよいよ量産という段階まで来ています。

DFBレーザ

DFBレーザの用途として、レーザ加工ではスマートフォンの加工に使われたり、計測といった点では半導体ウエハーの表面の粗さ計測に使われたりしています。

小型可視レーザ・小型マルチカラーレーザ光源

マルチカラー光源の市場は、ニッチ領域ですが、我々の戦略商品となっています。スライドのレーザは、世界最小のオレンジレーザ・イエローグリーンレーザで、QDレーザが発明したものです。こちらについても、市場をきちんと捉え始めています。

用途としては、例えばフローサイトメータという装置は、血液を採取してそこに入れるとチューブの中を通ります。チューブの中を通った血液に光を当てると、血液の成分が白血球なのか赤血球なのかがわかり、また出口でソーティングができます。信じられないようなすごい装置ですが、年間で8,000台ほど市場に出ており、今後もっと大きくなる装置です。

小型可視レーザの成⻑戦略

8,000台のうち4,000台くらいは黄緑色のレーザが使われており、我々はそれをすべて置き換えるべく動き始めています。現在の市場シェアは33パーセントで、フローサイトメータという装置の3分の1には、すでに我々のレーザが使われています。

市場シェアは昨年から今年に向けて3割上がり、すでに計画を達成できる見込みです。年間30パーセント成長を続けて5年間で出荷台数を4倍から5倍に上げていこうとしています。現在は、そのために顧客企業を増やしたり、導入装置を9機種から26機種に増やしたりしています。また、新しいレーザとして、488ナノメートルという青色と紫外線の間のレーザや、552ナノメートルの緑よりも少し長波長のレーザの開発も進めています。1個15万円から20万円のため、このような市場を取っていくことにより、5,000台くらいで約10億円の売上になります。さらに、今後これに制御用電子回路も付けて、プラグアンドプレイで使えるようにソリューションも提供します。箱型にしてマルチカラー光源によってさまざまな色を組み合わせることで、非常に大きな市場が取れると考えています。

新製品:当社小型可視レーザを集積化した小型マルチカラーレーザ光源

前回ご紹介したように、フローサイトメータには基本的に4つのレーザが搭載されていますし、SLOという眼底撮影装置にも4つのレーザが必要となります。それをすべてパッケージにして、そのままプラグインで使えるものとして提供するのがこのマルチカラー光源です。こちらは現在、医療機器メーカーで検証が行われています。

量子ドットレーザ

こちらのスライドは量子ドットレーザです。先ほどレーザ1本の中に量子ドットが100万個入っているとお話ししましたが、アプリケーションはサーバのボード上のLSIがそのまま光でつながるというものです。5G・6G無線基地局では、外部から無線で来る大容量の画像情報が光でLSIに伝送されます。高温になる環境でいかに使えるようになるかという観点が必要です。

量子ドット量産技術の紹介

量子ドットをどのように作るかと言いますと、我々はこのMBE装置を2台設置して、量産を進めています。装置は釜のようになっており、中は宇宙空間並みの高真空となっています。

ここにヒ素、ガリウム・イリジウムという金属元素を飛ばして、秒単位で温度を制御しつつ、イリジウムの量を変えたりヒ素の圧力を変えたりすることで、4次元的に、つまり3つの時間軸に合わせてプログラミングしていくことで、自在に元素レベルのものを作れるという装置です。

顕在化し始めたシリコンフォトニクス(電子・光集積回路技術基盤、コンピュータチップの光通信)需要と当社の取り組み

シリコンフォトニクスがどこまで進んでいるのかと言いますと、FPGA、LSIの周りにこれらを敷き詰めることで、量子FPGAやFPGAがボード間で、あるいはFPGAが外部のルータやスイッチで大規模な高精細のカメラとつながり、高速でデータ処理ができます。コンピュータの速度が上がるというのが、シリコンフォトニクスチップの特徴です。

顕在化し始めたシリコンフォトニクス(電子・光集積回路技術基盤、コンピュータチップの光通信)

アイオーコア社はNECからスピンオフした会社です。通産省の300億円規模のプロジェクトを経て、経産省とNECからローンチされた会社ですが、その光源を提供しているのは、QDレーザが世界で唯一です。

彼らはそのようなシリコンチップを置けるようにするためのさまざまなテクノロジーを開発しており、すでに完成しています。我々の量子ドットレーザを最後に嵌め込めばできあがるというもので、こちらもすでにできあがっています。

特性としては、レーザを置くことで、なんとシリコンとレーザの温度が25度であっても105度であっても、まったく伝送波形が変わらないため、調整がまったく必要ありません。小型で低コスト、レイテンシーがなく時間遅れがありません。また、高温でも動いて、かつ壊れないものが完成しています。

社会がコンピュータシステムに光を入れるところまで立ち上がってくるのを待っています。いよいよ来年から量産が始まる方向ですので、アイオーコアと一緒に最終的な立ち上げを行っています。

高出力FPレーザ

FPレーザの用途は、工場用LiDAR、マシンビジョン、レベラー、パーティクルカウンターです。パーティクルカウンターとは、光を通した時にホコリが見えるように反射光を取って、どのくらいのホコリが工場の中にあるかをカウンティングする装置です。こちらは6社か7社のお客さまとタイアップするかたちで、認定をいただいています。

ただし、中国のロックダウンの影響があります。特に、レベラーは位置を測るような制御器なのですが、少し伸び悩んでいます。そのぶんが今年は少し減っているのが残念なものの、ロックダウンが終われば回復すると考えています。

当社の主要レーザデバイス製品と波⻑・特性・使途 一覧

ビジネスモデル、コア技術、またさまざまなアプリケーションがあること、我々の得意なレーザを使えば、ニッチな領域でも数十億円の売上が上がり、かつシリコンフォトニクスは、いよいよ市場の波が来ているということをお話ししました。

視覚にイノベーションを起こす独自レーザ技術

網膜投影についてです。レーザのアプリケーションには、通信・加工・センシング・ディスプレイなど、さまざまなものがあるとご説明しました。スライドはディスプレイについてのご説明です。網膜に映像を投影するディスプレイで、特徴は3つあります。

我々は10年間こちらに取り組んできました。特許の状況から判断すると、QDレーザ以外でこの技術の製品化を目指している会社は、おそらく1社もありません。QDレーザのみが行っている事業だと考えています。

ポイントの1番目は、非常に細いビームを送り瞳孔を通して網膜に映像を投影することで、角膜・水晶体の状態に関わらずピントが合ったものが見えます。2番目に、フリーフォーカスによって、映像をリアルなものに重ねて見ることができます。

3番目に、網膜の周辺部でもピントが合います。つまり全面にピントが合い、水晶体や角膜に依拠することなく、ピントが合った映像が見えるということです。つまり「見る」のではなくて「見えてしまう」のです。そのような装置によって、さまざまなアプリケーションを生まれるというわけです。

レーザアイウェア事業

事業領域の1つ目は、見えづらいを「見える」に変える「Low Vision Aid」を目的にしています。これにより、前眼部の疾患の方も網膜症の方も見え方が改善します。また、医学的エビデンスも取れてきています。

2つ目は、「見える」の健康寿命を延ばすことです。こちらは来週からいよいよ事業として始まりますので、後ほどご紹介します。

3つ目は、先日のCEATECでもご紹介したように、TDK、NTTと一緒に「見える」の世界を拡張するスマートグラスARを実現するスマートグラスの開発に取り組んでいます。

世界初の網膜投影アイウェア

「Low Vision Aid」に関して、現在ロービジョンの方は世界に2.5億人います。実は世界人口の3パーセントを占める方が、眼鏡を使っても視力0.3まで出ません。このような方を、WHOはロービジョンと定義しています。

その上で、視力が低くても何かを計画したり、何かすることを決意したりている人は、WHOの非常によいロービジョンのモデルとして定義されています。

終了した国内外治験

我々は医学的なエビデンスと安全性を立証するための臨床試験を、2015年に日本とヨーロッパでスタートさせ、2020年と2021年に完了し、日本ではすでに製造販売承認を取得済みです。

日本においては、被験者全員の視力を向上させ、かつ、まったく本が読めなかった型が読書できるようになりました。ヨーロッパでは、ほぼ失明状態の方が見えるようになったというような結果を得ています。

RETISSAシリーズ製品展開状況

今は、初号機として「RETISSA DisplayⅡ」という民生福祉機器と「RETISSA メディカル」という医療機器を発売しています。スライド右側の製品は厚生労働省、スライド左側の製品は経済産業省の消費者安全マークを付けて販売を継続しています。

Low vision aid領域TAM(※前眼部適用のみ:屈折異常、角膜混濁)

前眼部のみ、特に角膜や水晶体の病気によるロービジョンの方の市場規模は約9,000億円です。特に、日本と欧米の眼科先進国の合わせて10億人を対象とした数字です。中国にも展開が始まりつつあり、それを含めるとさらに大きな市場になっていくと思います。

後ほどご紹介しますが、最終的には網膜症の方にもある程度、適用可能な技術が立ち上がってきています。本日は数字をはっきりとお伝えできませんが、最終的なTAMとしては、これ以上の数字が存在しています。

レーザ網膜投影製品RETISSA製造・販売体制構築、拡販

現在の我々のビジネスモデルはファブレス体制です。こちらの装置では基本的に、全体を設計して部品を提供する以外は、すべてファブレスで行っています。

現在目指しているのは、いかに安く高性能商品を作るかということです。かつ、スライドの4つ目に記載している「ユーザビリティの向上と新製品開発」を目指しています。どのようなお客さまに、どのようなものを、どのように使っていただけるかというマーケティングを含めた戦略になります。

KAGA FEI、Santen、SONY、SEED、TDKなど、さまざまな企業に賛同いただき、連携が進んでいます。こちらの方々は、すでに公開情報としてコラボレーションが公表されています。

レーザ網膜投影製品RETISSAロードマップ:レーザアイウェア

その新しい製品をご紹介します。装置としては2種類あります。昨年まではレーザアイウェア、眼鏡を中心に進めてきました。最終的には「Display 3」「Display 4」というスマートグラスに集約する方向で、すべてが進むと思います。

我々は現在のメタバースに使っているような巨大なものではなく、眼鏡と同じ形状のものを目指して開発を進めています。後ほど、もう少し詳しくご紹介します。

売価の目標は10万円です。スマートフォン並みの金額で使えるものを目指しており、10万円台で販売するというのがIPO前からの我々のお約束であり、目標です。ぜひこれを実現するべく、進めています。「Medical」「Display」については、先ほどご紹介したとおりです。

レーザ網膜投影製品RETISSAロードマップ:3つの新製品

今年は3つの新製品をリリースするとお伝えしてきました。もちろん発売するのですが、残念ながら部材の供給のディレイがあります。また、一部の部材がEOLを迎えたこともあり、調達先を変えたり部材自体を自分たちで作ったりせざるを得ません。そのため、現在は第4四半期での発売を目指して進めています。

その3種類は「ON HAND」「NEOVIEWER」「MEOCHECK」です。それぞれ商標の登録を進めています。

「ON HAND」は片手で持てる商品で、公共空間で使うことを想定しています。図書館や美術館・博物館・劇場などで、本を読んだり探したり、美術品を見たりするような機器です。

「NEOVIEWER」は、デジタルカメラのビューファインダーです。これを使うことで、網膜症の方も含めて、自分1人で旅行して写真を撮る楽しみを見つけていただくというような商品です。

網膜投影製品では、見えない方の見え方が改善します。一方で、「MEOCHECK」は、健常者が網膜投影によって見えにくい場所を発見するものです。現在、販売代理店との契約や、サービス事業としての立ち上げに取り組んでいます。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:レーザアイウェア

レーザアイウェアの基本的な戦略と進展状況について、より具体的にご紹介します。現在は認知を高めることを目指して、アクセスビリティに強い株式会社ミライロ、さらに当事者団体や公共・教育機関と連携した情報発信、認知度拡大に取り組んでいます。

スライド左側の動画をご覧になった方もいるかもしれません。調律師を目指す女性が実際にこの製品を使い、調律師の試験を受けるところまで進みました。両手で作業ができるため、目が見えない方にとっては仕事の選択肢が広がります。仕事ができるようになる新しい装置として、非常に期待されています。

特に一番大きな市場は、以前からご説明しているように、中国です。まだ「Foxconn」のニュースなど踏まえると厳しさはあるものの、ロックダウンの収束を見据えつつ、西安の盲学校に応札中です。11月末までの期限で、現在3台の応札が始まっているところです。

また、CEATECでも公開しましたが、国内メーカー数社と連携して高性能、低コストな「Display3」を開発しています。

メタバースの世界で一般的に使われるための技術開発を意欲的に進めているところがポイントです。まずはLow Visionの方が使い始め、最終的には一般の方が使うようになることを目指しています。Low Visionの方が「あれ、自分たちが使った装置をみんなが使っているよ」といった展開になることを目指しています。

要素技術は3つあり、1つは小型のレーザ集積光です。これはTDKとNTTが共同開発で作ったものです。また、QDレーザは眼鏡とほぼ同じような厚さ数mmのプラスチックレンズのようなフラットミラーを独自に開発し、先日展示しました。

また、スライドには記載していませんが、アイトラッキングです。より使いやすさを求めるため、目があらゆる方向を向いていてもそのままトラッキングしていくようなシステムを、新しいパートナーと共同開発し始めたところです。

この3つがすべて集約され、どこで「Display3」に入れるのかについては、来年の初めに判断していきたいと思います。そのような中で技術改善が進んでいます。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:ON HAND

「ON HAND」についてご説明します。先ほどは図書館などで使うとお伝えしました。

現在、国内では図書館流通センターと販売契約が結ばれており、ブックフェア共同展示ツアーと図書館購買担当者の方向けの展示会が進んでいます。来年度の発売に向け、自治体予算がこのまま年度内に取れればと考えており、図書館での実装に向けて活動しているところです。

これにより、まず視覚障害者用の拡大読書器の置き換えが進むと思います。拡大読書器の置き換えというのは、地図などを見るものを「Display」で見るということです。「Display」の下にはカメラが付いており、カメラで撮ったものを「Display」に映して、拡大して見ます。

こちらは、実は日本で4,000台、世界に7万台で市場があり、1台40万円とすると、世界で280億円の市場になります。まずはそれを置き換えていこうと考えています。

網膜投影を行うと、端がきれいに見えるようになります。拡大すると1ヶ所しか見えませんが、スライド左端の写真の方は、地図の全体を一度に見ることができるのです。そこが一番大きな違いだと思います。また、スライド中央の方はアルビノ当事者の方なのですが、水族館などの体験会を行いました。YouTube上での発信を進め、数日前には、クラウドファンディングを開始しました。

このようにBtoBの図書館の流通センターの方々と連携しつつ、個人の方にも広めていくように、認知を高める活動を続けています。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:NEOVIEWER(Super Capture)

「NEOVIEWER」は前述のSuper Captureでもご説明したように、デジタルカメラのビューファインダーです。戦略的には、「NEOVIEWER」をデジタルカメラのアクセサリーとして販売することにしました。第4四半期に国内外での発売を目指しており、すでにアメリカへ子会社を設立しています。

このような中で、ブランドサイト刷新や体験者コンテンツ、インターネット販売に向けた顧客導線を構築中です。1月末までにはきちんと整備したいと思います。

現在は、デジタルカメラメーカーと連携した日米欧展示会を1年ほど続けており、来週にはヨーロッパで行われます。このような中で、いよいよという段階になっています。

レーザ網膜投影製品RETISSA販売戦略と進展:MEOCHECK

3つ目の新商品である「MEOCHECK」についてご説明します。セルフチェック小型検眼装置「MEOCHECK」の販売と、さらに眼科の総代理店の契約が結ばれており、750台の確約をいただきました。

一方で、目の健康チェックサービスとの両輪で収益拡大を目指しています。幸い先々週、東北大学が文部科学省のCOI-NEXTに採択され、10年間のプロジェクトが始まりました。そこにいらっしゃる眼科専門医のトップの中澤先生という方と共同開発して、装置・疾患の判定をしつつ、このようなサービスを提供していくのが全体のシステムです。COI-NEXTの参加企業の方々と連携することで、このようなエコシステムができあがっていくと思っています。

全国タクシー会社での、1,000人規模での試験運用もすでに終了しています。仙台、東京、あるいは他の地域でも行ってきました。緑内障、白内障、また脳腫瘍の方々も発見され、一部の方は手術を受けて復帰されているということです。来週にリリースが出て、いよいよサービス提供が始まる予定です。

眼疾患・認知症・循環器疾患の早期発見サービスプラットフォーム構築

アップサイドは前回と変わりませんが、あらためてサービスについてご紹介します。今の眼科医療は早期発見ができないシステムです。そのため、失明される方が多くいます。緑内障で失明した方は、日本におそらく5万人ほどいます。

20人に1人しか自覚症状がないため、病院に行かなければ測ることができず、発見が非常に難しいです。自分では発見することができません。これについて、公共機関や会社での検診など、いろいろな動線上でシェアできれば失明を救えるだろう、というのがこの事業の原点です。

レーザ網膜投影技術を活用した新しい検眼装置群

我々は、先ほどご紹介した東北大学のドクターと一緒に開発を続けてきました。2年間取り組んで簡易視野計ができあがり、現在は実装が始まろうとしています。

また、スライド右下の写真のような眼底撮影のレーザができつつあるため、これを小型化したいと考えています。より身近な動線として、自分で測る眼底撮影をして、さらにそれがAIで判定できるというものです。

「あなたは緑内障ですよ」「脳腫瘍ですよ」「糖尿病の気があります」というようなことが自分でわかり、自分で健康管理することを目指すのが、先ほどのサービスシステムです。

実証事例

こちらはタクシー会社の実証事例の結果ですが、前回もお話ししたため割愛します。特に大事なことは、60歳を超えるとスコアが高いところは見えにくくなります。これが目の寿命で、つまり60歳を超えるとだんだんと目が悪くなってくるということです。

私も老眼になり、見るのが非常に大変になってしまいました。そのような方が非常に増えており、一部の方は緑内障になっています。人生100年の中で、30年間をこのような状態で過ごさざるを得えないということであり、人類にとってたいへん大きな社会課題であると思います。

システムイメージ:大学×DX企業

検診を始める時はまだシステムは必要ありませんが、これをシステム化し、個人が自分の目の病気を常に知ることができるヘルスケアシステムを実現させるために、DX企業の方々と話を始めています。

自分の生活動線にある物でチェックして、それがインターネットでデータ管理基盤に送られて、それを個人ビューワーに持ってくることで常にスマホから自分の目の状態を知ることができます。また、管理者の方もそれを見て、自分の企業の社員がどのような状態かを知ることができます。これらは非常に大事なことです。

今後は、医療機関、PHR、アカデミアなどを標準化データと連携して組み合わせることで、目の健康に加えて全身の健康をチェックすることもできるようになります。

企業検診から始めて5年タームになると思いますが、先ほどお話ししたCOI-NE⁠XTと連携しながらこのようなサービスを提供することで、目の健康を自分で守るという新しいインフラストラクチャーを作ることが、この事業の目標です。

起点として大事なのは、やはり安くて小さくてどこでも自分で測れる装置ができあがることです。それがレーザ網膜投影製品の「MEOCHECK」ということになります。

中⻑期で期待できるポテンシャル

この事業は、展開としては3段階になっています。1つ目は、先ほどお伝えした加工やバイオセンシングといった、数十億円規模になるニッチ領域です。

その上で、これからご紹介するような製品を含めたアイウェア事業が立ち上がっていきます。2024年度末までには、アイウェアの新しい世代の開発をなんとかして進めていきたいと考えており、このような路線は最初のIPO前の公約どおり、力強く推進していきたいと考えています。

その後に来るのがシリコンフォトニクスです。すでにだいぶオーバーラップを始めていますが、いよいよ来年から量産に向けて、サーバー、5G・6Gステーション、高精細カメラなど、データ伝送により使われるものの量産が始まります。

検眼スクリーニングサービスも、スライドには2022年に試験運用開始と書いていますが、実際にお金をいただいてのサービス運用は来週から始まることになっており、かなり並行して立ち上がってきていると思います。

業績ハイライト

ここまでは、事業の狙いや戦略、現状と未来についてお話ししました。ここからは上期、特に第2四半期の業績ハイライトについてご紹介します。

まず、LD(レーザデバイス)事業部品売上は4億3,900万円でした。前年同期比1パーセント増というのはやや心もとないと思われるかもしれませんが、これは残念ながら中国でのロックダウンの影響によるものです。先ほど少しお話しした、半導体の工場や、個人がDIY(Do It Yourself)で使うような高出力レーザーの受注が、4,500万円の計画から減少してしまったこともあり、この数字でとどまっています。

一方で、LD事業の営業利益は前年同期比625パーセント増と、昨年が600万円に対し、今年の上期は4,400万円まで膨らんできました。今年1億円を目指すという計画は当初からお知らせしているとおりです。

経常損失は、前年同期比で3パーセントの改善です。四半期純損失は悪化していますが、昨年は資産除去の債務戻しがあったこともあり、その分今年がマイナスに見えているということです。

業績ハイライト

全社売上は前期比で13パーセント減少していますが、これも特に心配するものではありません。今年の上期は昨年に比べて外部からの開発受託が減っていますが、今の受注状況でいくと下期はかなり盛り返していくことが予想されるため、年間での売上計画はまったく変えていません。

全社営業損失も、LD事業の売上高の減少がそのまま効いていることあって残念ながら少し悪化していますが、こちらもロックダウンの解除を待ちながら、お客さまの幅を広げていくことで回避できると考えています。

それぞれの製品別にブレイクダウンしたものが、スライド右側の表です。売上高は先ほどお伝えした4億7,700万円で、内LD、内LEW(レーザアイウェア)です。LD事業の営業利益は約4,400万円まで上がってきています。

売上高の内容としては、先ほど数十億円を目指すとお伝えした小型可視レーザは、世界で2番目のプロサイトメーカーから力強い受注があり、製品を次々に置き換えて新しい製品を入れていっているため、特に伸びています。

高出力レーザは、残念ながらロックダウンの影響があった製品です。量子ドットレーザに関しては、現在量産を待っているところで、9社と共同開発していくところは変わっていません。

貸借対照表

貸借対照表です。資産合計は37億6,000万円で、前期末と比較して2億5,700万円減少しています。負債合計は、1年内返済予定の長期借入金の減少によって、前期末比4,000万円減少しており、最終的に現在の自己資本比率は90パーセント弱になっています。

キャッシュフロー

キャッシュフローです。現金と現金同等物の期末残高は、前年同期比1億1,400万円の減少で、現在は26億7,500万円です。今後の見込みとしては、今年の売上高予想の12億7,700万円はもちろん変えていません。

受注状況

第2四半期末時点での売上高と、現在いただいている当年度売上予定分の受注残高である2億9,800万円を合わせると、年間売上高予想全体の61パーセントまできています。

起こらないとは思っていますが、リスクについてもお伝えします。先ほど、部品の供給が遅れて一部自前で作った部品を使わざるを得なかったとお伝えした3製品が、第4四半期にしっかりと立ち上がるかどうかといったところですが、すでに金型の製造も始まっており、設計はフィックスしているため、確実に出していけるよう進めたいと思っています。そのため、結論としては年間予想を変えていないということです。

精密加工用・計測用DFBレーザ:売上高

細かいところをお話ししますが、北米は特に加工装置向けレーザの受注が堅調で、売上が前年同期比で1パーセント増加しました。これは、先ほどお話ししたようにスマートフォンの加工に使われているものです。大規模なレーザ装置メーカーの3台目の装置として、今新しい装置の発注が進んでいるところです。

ヨーロッパでは、欧州のモジュールベンダーによって日本の計測器メーカーに渡されて、半導体ウェハープロセス検査装置に使われています。

おもしろいのは眼科検査です。こちらは目の眼力値を測る装置として、非常に長い間安定して受注をいただいているものです。レーザを目に入れて、戻ってくる光を測ることで目の長さを測ります。

最近は、近視が世界的な大問題とされ始めています。20億人の方が近視で、いずれは緑内障、強度近視が網膜剥離に進むだろうということが非常に大きな社会問題になったと言われていますが、それに向けた大事なシステムだと思います。

バイオ検査装置用小型可視レーザ:売上高

先ほどお伝えしたように、バイオ系の売上高は非常によく伸びています。ここを皮切りに足を広げてモジュール化し、お客さまを増やして納入する製品、使っていただく製品を増やし、さらに伸ばしていきたいと思います。

センサ用高出力レーザ:売上高

高出力レーザは、先ほどお伝えしたようにロックダウンの影響がありましたが、半導体工場の新規建設なども含めて、また立ち上がっていくと思います。

通信用量子ドットレーザ:売上高

量子ドットレーザは開発中ですので、フラクチュエーションは期ごとにありますが、決して心配する必要はありません。特に、最初の日本の光コネクタ・チップ間通信向けお客さまとの量産に向けて、現在注力しています。日米欧の合計9社の方々と開発を進めています。そのうち2つは、車に搭載されるLidarです。

レーザアイウェア(LEW):売上高

LEWについてです。これまで500軒の施設を1年間回ってきましたが、そのうち30施設、特に角膜関連の施設の方には、「RETISSA メディカル」に非常に強い興味を持っていただいており、10数施設で導入されています。

SEEDとの連携により、「RETISSA メディカル」だけではなく、民生機器「RETISSA DisplayⅡ」や他の新しい装置も紹介していただいており、より患者に適合したデバイスはどれなのかを選んでいただき、導入できるような仕組みを今作っているところです。

民生機器「RETISSA DisplayⅡ」に関しては、スライドに「YouTube」のURLをいろいろと載せています。仕事や読書などにいかに効果があって生活に役立つのかがわかるような動画がありますので、ぜひご覧ください。

今後このような認知を広める活動に加えて、開発を受託する中で、先月公開したスマートグラス用の新しい光源やブラックミラーが公開されたのは、先ほどご説明したとおりです。

3つの新製品について、より具体的な数字をお話しします。「ONHNAD」に関しては、今年度すでに240台の販売を契約していて、この売上がこれから上がってくることを期待しています。

「RNV」のデジタルカメラメーカとのビジネス連携は、先ほどお伝えした3つの展示会をベースとして、いよいよ日本とアメリカで発売する方向で進んでいます。

「MEOCHECK」は、今年の開発受託が150台で、1年間で750台の販売の契約が進んでいます。さらに、先ほどお話ししたようなサービス事業も始まろうとしているところです。

質疑応答:NTTの技術との関連について

質問者:NTTが開発する回路そのものを光通信に切り替える技術は、シリコンフォトニクスと関連するのでしょうか?

菅原:そのとおりです。NTTは3段階に分かれていて、最初に行っていることは、信号を多重化して、光通信を大容量化するということが1つです。その次に、シリコンに光を入れて、アイオーコアとQDレーザが行っているようなシリコンチップを作ります。最後は、LSIのシリコンチップの下に光回路を作ることで、LSIの入出力が光になることを目指して開発しています。

最初のフェーズの大容量化は、NECと富士通とNTTが一緒になって、光通信のデバイスをさらに進化させ、インフラ系のデバイスとして鋭意開発を進められているもので、ビジネスチャンスはあると思います。

ただし、第2世代、第3世代以降は、まだR&Dの状況であり、それに先んじてQDレーザとアイオーコアの製品が世の中に出てくることは間違いないと思っています。

さらに、シリコンフォトニクスが実際にコンピュータの中で使われるためには、レーザ光源が高温でも安定して調整不要で、かつ壊れないという特徴が大前提になっています。そのような意味で、おそらく量子ドットレーザを使う以外には解はないと想像しています。NTTは量子ドットレーザの別の技術を開発されていますので、原理的に、アイオーコアとQDレーザ連合のチップの強みは非常にあると思っています。

質疑応答:新製品立ち上げの遅れについて

質問者:部材不足などにより、新製品立ち上げが、第4四半期からさらに遅れてしまうリスクはどのようにお考えでしょうか?

菅原:非常に厳しいご質問です。これはもともと、第2四半期の終わりから第3四半期には量産を始めるとお話ししていたものですが、第4四半期まで遅れてしまいました。その原因には部材調達の問題だけではなく、バッテリーがEOLとなり、周辺回路も自分たちで作らざるを得なかったということがありました。

ピンチな状況ではありましたが、ようやく盛り返して、現在はロードマップや線表もしっかりと引かれた上で金型なども作り始めていますので、大きなリスクはかなり減ってきていると考えています。

以上で、第2四半期の決算説明を終わります。第3四半期、第4四半期も同様に進めていきますので、次回もぜひご参加いただければと思います。ありがとうございました。