「見える」に新たな価値を

浦壁昌広氏(以下、浦壁):株式会社シードの浦壁でございます。スライドを中心にご説明します。

当社は、スローガンである「『見える』に新たな価値を」の実現に向けて取り組んでいます。スライドには「Made in Nippon」「Japan Quality」と記載していますが、海外で委託生産しているものも日本の検査水準で生産しています。そして、「Japan Quality」のプライドを持った安全で有益な製品として、消費者あるいは患者へ届けていくことを標榜しています。

会社概要

浦壁:まず、会社概要を簡単にご説明します。当社は1951年1月に創業し、6年後の1957年10月9日に法人となりました。ちょうど今年が65回目の誕生日です。

創業当初から文京区本郷2丁目、地下鉄の本郷三丁目駅前に本社を構えており、社屋が老朽化したため、今年の春より建て替え工事に着手しています。2024年6月、7月には現在の仮社屋から旧本社へ移る予定となっており、社員一同、大変楽しみにしているところです。

証券コードは7743、東京証券取引所のプライム市場に上場しています。連結ベースで約1,000名の社員が働いており、生産設備や研究所等はJR高崎線沿線にある埼玉県鴻巣市にすべて集約しています。

自己紹介

浦壁:自己紹介に移ります。私はもともと銀行員で、1985年に富士銀行(現・みずほ銀行)へ入行しました。海外支店も含め、主に都市銀行と銀行のコーポレートにおいて中心的なポジションの人事部に在籍し、24年ほど勤めました。

その後当社へ移り、2010年1月からシードの社長を務めており、本年は在任13年目にあたる年となっています。趣味は少ないのですが、食べることと温泉に入ること、そして料理を作ることです。

沿革

浦壁:沿革として、当社の歴史についておさらいします。当社は、創業者の厚澤が順天堂大学医学部眼科学教室の研究員となるところからスタートしています。戦争が終わった後は傷病を負った方が多くおり、今では考えられないほど義眼の需要があったと想定しますが、家業で義眼製造を営んでいました。

当時は、東京大学医学部に義眼を提供していたのですが、若い先生から「アメリカでは、目にアクリル板のようなものを入れ、眼鏡の代わりとなるものをすでに売っているらしい。それを研究し、日本でも売れるものかどうかを検討しようじゃないか」と誘われたそうです。

厚澤は、昼間は家業、夜は研究員と二足のわらじを履きつつ、その先生とともに順天堂大学で研究を始め、6年後には企業化に成功しています。格好よく言いますと、医療発ベンチャーとしてスタートしています。

最初は、ハードコンタクトレンズのメーカーとしてスタートし、その後、ソフトコンタクトレンズの製造も始めました。かつてコンタクトレンズは非常に高価でしたので、いったんコンタクトレンズを落としてしまうと周囲の人々と探す光景がみられました。また、煮沸消毒しなければならず、消毒等の維持代が非常に大きいビジネスでした。

当社の売上としても、2000年を過ぎるくらいまでは売上の半分をコンタクトケア用品が占めており、コンタクトケア用品を製造していた製薬会社を自社に取り込みながら進めていましたが、それと同時に、ターゲット事業を使い捨てコンタクトレンズへトランスフォーメーションしました。

埼玉県鴻巣市に大規模な工場を構え、国産第1号の1日使い捨てコンタクトレンズの製造に成功し、現在は、売上の9割5分以上を使い捨てコンタクトが占めています。

一方、現在もハードコンタクトレンズを作っていますし、買収したスイス、イギリス、ドイツの企業は、それぞれに異なるタイプの製品を作るメーカーとなっています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):足元の売上が若干落ちていますが、この要因はコロナ禍の影響によりコンタクトを使う人が減ったのか、それとも選択の集中の影響でしょうか?

浦壁:新型コロナウイルス関連ですが、業界団体で実施した出荷額調査によると、カレンダーイヤーベースで、2020年のコンタクトレンズの出荷は約10パーセント減りましたが、2021年の出荷は回復傾向にあります。

また、当社は2021年度をもって眼鏡事業を終了したため、その影響が3億円から4億円ありました。

当社は、カラーコンタクトレンズの国内販売のパーセンテージが比較的高いのですが、在宅勤務とマスク着用により化粧をせず、「自宅にいる時には安い眼鏡でもいい」という方が増えました。カラーコンタクトレンズ、サークルレンズの需要は2年間かけて約10パーセントずつ回復している状況です。

コンタクトレンズ全体の出荷が10パーセント落ちたことに加え、女性用のカラーコンタクトレンズ、サークルレンズの出荷が20パーセント弱落ちたことで、大きな影響を受けました。

事業内容

浦壁:スライド右側に記載している眼鏡事業は、2022年3月をもってすべて終売となりました。2023年3月までの1年間は保証期間内の既存商品の修理等を請け負っており、そちらが完了次第、終了と考えています。

また、スライド中央の円グラフのとおり、コンタクトレンズの製造・販売が売上の97.3パーセントを占めています。ケア用品は主にハードコンタクトレンズのケア用品です。

シードの特徴 ~Made in Nippon のコンタクトレンズ~

浦壁:スライドには、現在販売している主な製品のラインアップを掲載しています。スライド左上にある長方形の箱の製品は1日使い捨てタイプのコンタクトレンズで、通常の近視用・遠視用だけでなく乱視用も取り揃えています。また「シード 1dayPure EDOF(イードフ)」という、新しいタイプの遠近両用のコンタクトレンズもご用意しています。

そして、私も本日装用していますが、自社開発したシリコーン製のコンタクトレンズもあります。

他にも、2週間交換タイプのコンタクトレンズやハードコンタクトレンズも取り扱っており、ハードコンタクトレンズの中でも、かなり特殊なオーダーメイドのレンズも作っています。

また、スライド右上では当社の工場の建屋外観をご紹介しています。

坂本:国内で一貫生産しているとのことですね?

浦壁:金型から材料の調合、最終製品まで作っています。

坂本:そちらの強みを教えてください。

浦壁:強みとして、自社でサプライチェーンをコントロールすることができますので、日本国内で大規模な災害が起きない限り、製造が止まってしまうリスクが低い点が挙げられます。

ただし、東日本大震災の時は計画停電がありました。当然ながら工場も停電になり、生産が止まってしまい、また、一部のペレットやフィルムも被災した地域に工場があったため、一時的に商品が出せないこともありました。

このようなリスクには弱いところがありますが、現在は新型コロナウイルス関連の影響などにより輸入飛行機や船便の便数が少なくなっているものの、当社では輸入時のタイムラグが長くなるといったようなことはありません。

コンタクトレンズ(輸入商品)

浦壁:スライドには輸入商品を掲載しています。商品としては台湾(一部中国)の工場に委託生産しており、国内販売しているものはすべて台湾(一部マレーシア)の委託製品です。いわゆるカラーコンタクトレンズ類の製造を委託しています。

カラーコンタクトレンズは、流行により商品の入れ替わりが非常に激しいことと、衛生環境上、透き通ったレンズとインクの色が飛散する可能性のあるカラーコンタクトレンズを同じ建屋で製造するのは無理があることから、外部委託方式を取っています。

坂本:今後も海外で製造する予定でしょうか? おそらくかなりの売れ筋になっているかと思いますが「自社でもう1個建屋を作ろうか」といったことはお考えですか?

浦壁:向こう1年、2年では考えていません。ただし、現在の為替レートが延々と続くと、配送費も考慮した場合、台湾やマレーシアへの委託は経済的にまったく意味をなさなくなります。

1ドル120円を超えることが長く続くとなると、構造的な問題によっては他のことも考えなくてはならないかもしれません。

坂本:カラーコンタクトレンズ市場は、右肩上がりに伸びているかたちですか? それともそろそろ頭打ちのイメージでしょうか?

浦壁:2019年の卸売出荷額は450億円弱くらいでしたので、おそらく小売ベースでは、少なくとも800億円近いマーケットサイズがあったかと思います。しかし、コロナ禍で化粧する機会が減りました。そして大学もリモート講義になり、クラブ活動や部活動の休止、コンサートやフェスといったイベント等もなくなり、このような外出機会の喪失により、マーケット全体で20パーセント弱の影響が出ました。

現在は年間10パーセント程度のペースで回復してきており、今後は徐々に回復してくるだろうと思っています。

シードの特徴 ~製造能力枚数は国内最大!~

浦壁:当社の生産工場です。使い捨てコンタクトレンズを作っている国内工場のみですが、埼玉県の鴻巣市に生産ラインが3棟、R&Dが1棟、資材と製品の倉庫がそれぞれ1棟ずつあります。さらに、製造能力としては、大体2,000万枚から2,500万枚規模の工場を作ることができる、建付地の余力があります。

現在のコンタクトレンズの製造能力は、約5,300万枚です。2,000万枚を台湾に委託していますので、双方で毎月7,000万枚強を作ることができる能力を持っています。同じものを作る能力で計算していますので、少量多品種、製造が非常に難しいレンズ、時間のかかるレンズでは、数値は変わってきます。

坂本:ここ数年の売上高の予想からすると、キャパシティは足りている状況だと理解してよいでしょうか?

浦壁:問題ありません。3号棟には若干の新設スペースがありますし、15年ほど前に建てた1号棟は、ちょうどスクラップ&ビルドの時期を迎えています。昨年から今年にかけて2台分以上をスクラップし、新しい機械を入れました。これにより、生産能力向上を実現しています。

坂本:効率はかなりよくなっていくということでしょうか?

浦壁:おっしゃるとおりです。ただし、既存のものを入れ替えるため、最低でもおそらく2ヶ月、3ヶ月はかかります。現在半導体不足ですので、機械については1年後くらいの導入になるかと思います。

シードの特徴 ~日本のシードから世界のSEEDへ~

浦壁:この7年間、8年間は、海外展開を推進しています。最初の数年間は海外で生産して出荷できるよう工場認証取得に注力し、審査申請に時間を費やしましたが、約8年の実売期間を経て、今年に至っています。

現在は40以上の国と地域へ出荷しています。現地法人の売上も合わせると、売上高は50億円近くまで順調に増えてきました。しかし、2020年、2021年はこれまでのコロナ禍に加え、ヨーロッパ地域におけるウクライナ問題の影響を受けています。

さらに、中国のゼロコロナ政策により、上海のショッピングセンターが本年3月後半から6月まで実質的な閉店状態になりました。1級都市、2級都市、すべてにおいて同様の状況で、大きく影響を受けています。

坂本:為替影響について、国内からの輸出に関しては非常にプラスになっていると思います。売上ベースでは、そこまでの影響ではないかもしれませんが、どのくらいの感応度がありますか? 

浦壁:そもそも「使っていないけど安いから、この商品買おうか」とは、なかなかならず、また、目の悪くない人は絶対に商品を手に取らないという問題があります。

坂本:中高級品が強いということですね。

浦壁:そのような意味で言いますと、ニーズのある人が買いますので、値段以外で選ばれる要素が高いです。また、輸送費は2倍から3倍になっているため、例えばヨーロッパでは、いったんドイツの物流センターに納めています。

坂本:各国に配送するかたちですか?

浦壁:おっしゃるとおりです。イギリスも含め、ドイツの物流センターからヨーロッパに出荷していますが、その配送コストやピッキングコストも上がっている状態です。製品は減っていますが、物流費が上がっているため、全体としての日本製品の価格競争力が上がっているかと言いますと、疑問です。

中国は、そのような面ではリードタイムが短いため、本来、価格の影響はあまり受けないのですが、ゼロコロナの影響により、3月から6月にかけては、インターネットの配送業務も大幅に制限されていました。

今後は、11月11日に行われる中国のイベントから年末年始の春節までにかけての消費の盛り上がりを見て、来年の運用を考えると思います。おそらく2023年3月まで、同じポリシーを貫くという話ですので、慎重な対応が必要かと思っています。

一方で、台湾に委託している製品については、ドル建てで50億円程度輸入しています。円建ての輸出もありますが、それを除いたドル建ての輸出は10億円から15億円台までですので、30億円がいわゆる為替リスクとなります。

リスク回避のため、1年半後くらいまでを見越しながら、ロールオーバーで為替予約を継続しています。

特に2023年2月以降に、同じ政策金融方針が貫かれるとなれば、正直なところ、為替の問題は厳しい状況になると思っています。

2023年3月期 第1四半期 連結決算ハイライト

浦壁:連結決算ハイライトということで、当社は3月期決算ですので、4月から6月を第1四半期としています。売上高は75億6,900万円、営業利益は3億5,200万円、経常利益は4億900万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は1億8,400万円です。2022年3月期と比べると、売上も利益も同じように伸びています。

売上高の会計基準については若干変更していますが、四半期ベースで前期比12.4パーセント増となっています。実は、3月末に一部商品の値上げを発表したため、おそらく4月、5月、6月は駆け込み需要があり、元の値段で買われた方が多くいると想定しています。

そのため、購入したものがなくなると見込まれる、第2四半期の特に7月から8月前半くらいまでの間は、多少減殺されると睨んでいます。しかし半期では、ほぼ均衡している状態と見ています。

通期見通しに対する売上高の進捗率は24.4パーセントですので、ほぼ4分の1を達成しているかたちになっており、利益の進捗率も順調です。

しかしよくない話では、電力料金が3ヶ月から6ヶ月遅れで入ってきます。当社の場合、第1四半期は比較的安い値段となっていますが、クリーンエネルギーを導入したことによる定額制が影響しており、契約した段階では高かったのですが、蓋を開けてみたらもっとも安いという結果になりました。

坂本:今となっては、安くなっているということですね?

浦壁:そのとおりです。いわゆる東京電力管内であれば、9月からの電気料金がミックスされた状態になっています。これが3ヶ月ごとに見直されていくかたちで、タイムラグはおおよそ3ヶ月から6ヶ月くらいあります。

そこに為替が加わるため、少なくとも2023年の第4四半期から2024年の第1四半期に至るまでは、ラチェットが上がるかたちになります。そこからどのようにフラットになるかということですが、電気料金は上がっていきますので、利益としては非常に厳しい状況です。

また、滅菌のためボイラーを動かしていますので、天然ガスも毎月改定されています。原材料のプラスチックは、ナフサのレートです。毎月、レートで購入していますが、ナフサは石油関連商品のため、当社にとっては非常に厳しいということです。

また、医療機器には再生用プラスチックは使えないという問題があり、すべてバージン材を使っているのも大きな制約の1つだと思います。

ガス代と電気代については、2018年や2019年の量と同じ量を使った場合、どのようになるかと言いますと、今のままラチェットが上がっていくとすると、ほぼ年間で倍額になる見込みです。

坂本:燃料費の高騰は、非常に大きな影響を及ぼしますね。

浦壁:そのとおりです。コンタクトレンズの製造原価のほとんどは機械の減価償却費で、次が人件費、エネルギー料金です。しかし、今の流れでは、エネルギー料金が2番手になってきます。

坂本:人件費を超えるということですね。

スライド下部に記載されているオルソケラトロジーレンズは大変注目が集まっています。これが非常に伸びているということですが、地域としては、やはり日本が中心ですか?

浦壁:オルソケラトロジーレンズについては、日本以外にも、グループの中で2社販売しています。今、シード単体で販売しているものは日本国内が一番多いのですが、香港やシンガポール、マカオ、ベトナム、インドネシア、ジャカルタ、インドなどで販売しています。

坂本:実は、自分の子どももオルソケラトロジーレンズをつけ始めました。「本当に効果があるんだな」と思っています。

浦壁:ありがとうございます。

坂本:しかし、子どもでなければ、なかなか難しいというお話をうかがっています。

浦壁:そのとおりです。現在、国内でも臨床治験をしている会社があり、当社でも治験を行おうかと思っています。海外では、いくつかの大学のグループが臨床研究を行っています。

オルソケラトロジーレンズは、単に近視を矯正するだけではなく、数年間つけ続けることによって、近視の度の上がり方を減殺する効果が期待されています。速報値のレポートでは、何もしない時に比べて半分くらいは減殺するのではないかとのことです。

マイナス6Dやマイナス8Dまでいくと、いわゆる高度近視や病的近視という言葉で言い表します。歳を取ると加齢黄斑変性や網膜剥離、白内障、緑内障などになるオッズ比率が非常に高くなり、マイナス8D以上になると、アジア人では、300倍近い確率で、加齢黄斑変性になるということがあります。

寿命が延びているため、失明原因が増え、今までとは違う介護などのニーズが出てきてしまうことになるかと思います。

坂本:そうですよね。僕の体感では、子どものほうが近視が進むようなイメージがあり、大人は意外と大丈夫かと思っていました。

浦壁:そのとおりです。身長が伸びている間は眼球も大きくなります。眼球が真円ではなく楕円に成長し、後ろ側に成長することで近視が進みます。

成長が落ち着くと、近視の進行は徐々に緩やかになり、30代になるとほぼフラットの状態になります。20代前半に近視が進行するのは、おそらく目を酷使することによる影響が若干あるのではないかと思います。そのため、おっしゃるとおり、若いうちのほうが進みが早くなります。

そのため、いわゆる学童期にあたる7歳や8歳、小学校の2年生から3年生くらいで近視の進みが非常に高いと言われています。また、女性のほうが早く進みやすいということもあります。

リスクファクターについては、いろいろな先生方が、さまざまな切り口で研究していますので、文部科学省やWHOなども、近視問題は捨て置けない問題だと言っています。ですので、さらにハイライトが当たってくると思います。

坂本:非常によくわかりました。オルソケラトロジーレンズを初めて見る方もいると思いますが、これは寝ている時につけて、日中は外すレンズです。

浦壁:今、当社では遠近両用の多焦点眼内レンズと似たようなタイプのレンズを使い、昼間につけるレンズで治験等を行っているものもあります。

お子さまによっては、若干硬めのコンタクトレンズはつけにくいということもあり、お手入れも必要ですので、それが不十分になりがちな方には、朝につける使い捨てタイプもあります。多種多様なかたちで、近視問題についてのアプローチが広がってきています。

コンタクトレンズ市場 と 近視人口の低年齢化

浦壁:スライド左側はコンタクトレンズ市場のシェアを表しています。日本は人口が減っているわりにはコンタクトレンズ市場は拡大しており、コンタクトレンズ市場全体を見ても出荷額が上がっています。

全体の当社シェアは10パーセントを多少切るかたちですが、市場は拡大しており、インターネットやドラッグストア、バラエティストアなどで売られているレンズの成長率が上がっています。当社とはチャネルが違うため少し残念ですが、がんばっていこうと思います。

近視の低年齢化について、スライド右側に記載しています。2020年の学校保健統計調査では、子どもの近視率は約10年間で7.8パーセント上がっています。

特に小学生の上がり方が一番急ですので、この問題にどのように対応していくかが、将来を左右することになると思います。

2023年3月期 第1四半期 トピックス

浦壁:スライドに記載しているレンズは、先ほど私が「今、つけています」と言ったものです。当社でシリコーンハイドロゲルを配合した、酸素透過性や含水率が非常に高い後発品を出しました。イメージキャラクターに北川景子さんを起用していますので、動画をご覧ください。

増井麻里子氏(以下、増井):こちらは、ワンデーの使い捨てソフトレンズですね?

浦壁:そのとおりです。

増井:つけ心地や乾燥のしにくさなど、どのようなところが今までとは一番違うのですか?

浦壁: シリコーンの場合、物質としての網目が酸素の分子よりも大きいため、酸素を通すことができ、シリコーンとハイドロゲルを混ぜることにより、酸素透過率を上げているということです。酸素透過率は70前後で、当社では真ん中の間から少し下くらいにあたる商品です。酸素透過率を高くすればするほど、硬いレンズになってしまいます。シリコーンレンズがあまり合わない方の理由に、レンズが硬いということがあります。後発商品として差別化を図るため、含水率を上げた柔らかいシリコーンレンズにし、造語で「シルクのような」という意味合いを含め、「シード 1daySilfa」という名前にしました。

北欧やフランス、スイス、イタリアのヨーロッパの一部などでも発売しており、ヨーロッパでは比較的好調です。

日本国内では、福岡の物流センターに在庫を集めています。福岡から配送できる圏内で配送、発売していますが、全国発売にはもうしばらく時間がかかると思います。

2023年3月期 第1四半期 トピックス

浦壁:スライドに記載している「シード AirGrade 1day UV W-Moisture」は、台湾に委託している製品で、「シード 1daySilfa」とはまったく逆の発想の商品です。「AirGrade」はグレードが高いという意味を持ち、高スペックな商品を必要としている方のための商品です。酸素透過率は187と、日本で販売しているものの中では非常に高くなっています。

2023年3月期 第1四半期 トピックス ~幅広いラインアップ展開~

坂本:スライドには、商品ラインアップが記載されています。

浦壁:SIB素材とシリコーンハイドロゲルは、それぞれ特徴を持ったポジショニングとなっています。

坂本:人気はどちらが高いですか?

浦壁:今は、「シード 1dayPure」です。国内では、「1day」のみでは近視で約10パーセントのシェアを獲得しています。トップ3に入っている単一ブランドで、ヨーロッパやアジアでも非常に支持されていると思います。

坂本:今後、そのような方がスライド右側の付加価値の高い商品に移行すれば、さらに御社のビジネスチャンスが広がるということですね。

浦壁:そうですね。また、光学設計という点では「シード 1dayPure EDOF」という商品があります。こちらは非常に作るのが難しいですが、遠近両用の世界では非常に優れたレンズだと思います。

2023年3月期 第1四半期 トピックス

浦壁:「夜寝る前につける」コンタクトレンズについてご説明します。市場規模は以前の1.3倍から1.4倍以上になるとも言われており、中国は日本の市場規模の20倍以上だと推測しています。

長らく行っていた中国での治験を終了し、2024年の販売に向けて、今年8月に承認申請を提出し、来年度には承認されるものと思っています。生産は当社と合弁契約を結んでいる中国のパートナー企業の工場で行い、原材料はドイツにある当社の子会社から出荷します。デザインやトレーニングに関する人員は東京本社より出向予定です。現地パートナーの中国企業において、「Made in Japan」「Made in Germany」を作っていきたいと思っています。

日本では50パーセント以上のマーケットシェアを獲得しておりますので、おそらく現在No.1のブランドだと思います。

今後の成長に向けた取り組み ~さらなる高付加価値商品の拡販・研究~

浦壁:当社としては、眼科領域でオンリーワンのものを作るということをポイントにしています。具体的には、量産品で負けないことと、ニッチな商材で長く続くものを作ることの2点です。

ロングショットの商品で言いますと、スマートコンタクトレンズが挙げられます。唯一、世界三大地域で承認を受けているのは「トリガーフィッシュ」というスライド左上の金色の輪が入っているものです。こちらは、世界最初のスマートコンタクトレンズで、眼圧変化率を24時間自動モニタリングします。

スライド中央に記載されているのは、「シード 1dayPure EDOF」という遠近両用コンタクトレンズです。他には、ロービジョンと呼ばれる、あまり視力のよくない方にレーザーポインターを通じて視力を与える商品や、動物用コンタクトレンズ、動物用眼底カメラ等も開発しています。

それ以外にも、いろいろなデバイスやスマートコンタクトレンズの開発、医薬品との融合の研究などを行っています。

さらに、究極のパーソナライゼーションとして「あなたに合った1点もののコンタクトレンズを、使い捨てでも作れます」という商品を、向こう5年から10年の商品施策として持っています。身近なものから長いものまで、いろいろな開発案件がありますが、どれもオープンイノベーションを基本にしながら行っています。

足元の利益のため研究開発費に投資しないと、あまりよいことにはなりませんので、必要な部分にはきちんと費用を出していこうと思っています。

今期の業績見通し

浦壁:今期の業績見通しについてご説明します。売上高は310億円の見通しです。前年比21億6,500万円の増加のうち、新商品と市場全体の価格でそれぞれ約10億円ずつ稼ぐと見込んでいます。営業利益を8億2,000万円としているのは、先ほどお伝えしたとおり、円安の影響により商品の輸入原価が高くなることと、電力料金が上がることを見越しています。

政府の自助努力についても、1月から補助が3円50銭ほどあるとのことですが、どこまでを対象事業者とするのかがまだはっきりとしていません。当社は特別高圧電力を引いているため、いわゆる産業用の中でもさらに一段上の大口の事業者にあたりますが、そのような事業者も対象となるか、現時点では不明のため、営業利益は減益と見ています。

経常利益についても同様です。海外、特に中国において、親会社株主に帰属する当期純利益はずっと黒字を保持していたのですが、今年は営業していない月が3ヶ月もあったためさすがに厳しい状況です。したがって、海外からの収益はないものと見ています。

新中期経営計画 ~経営ビジョン~

浦壁:長い目で見ると「『見える』に新たな価値を」という中期経営計画のとおり、最先端の技術を活用し、高機能・高付加価値のレンズを開発し、市場に新しい価値を提供していくことを、マスマーケットでも行っていきながら、小さなマーケットでも実施していこうと考えています。

売上高は年間1億円から2億円でも、最終利益が5,000万円残るような、高付加価値で長く続く地味なものをどれだけ作っていけるかということが大きな課題だと思っています。

新中期経営計画 ~財務目標達成に向けた成長戦略~

浦壁:これら以外にも、会社として基盤を固めていきます。事業の競争力を高めることは、企業にとってごく当たり前のことですが、当社が販売しているのは医療機器ですので、信頼に勝るものはないと思っています。

また、SDGsの推進に関しては、先ほどもお話しした太陽光発電や、プラスチックの再生利用を進めています。自分たちが使えるものは限られていますが、その中で排出されるプラスチックは非常に質の高いものですので、こちらをもう一度使う試みに取り組んでいます。

さらに、株主への情報提供および還元ということで、ちょうど65周年の節目を迎えていますので、さまざまな発信機能を高めていきたいと思っています。

中期経営計画進捗 ~財務目標~

浦壁:財務目標です。残念ながら2022年と2023年はそれほどよくならず、2024年3月期から上がっていくと見ています。

中期経営計画進捗 ~財務目標~

浦壁:財務目標のグラフです。実額では、EBITDAで40億円を超えるような経営をしようと考えています。ROEについては、最終的に子会社の資産をどのように評価するかで上下しますので、あまり細かく見ていません。利益のうちどの程度を配当、自己資産の評価に回すといった観点で考えています。

株主還元策 ~配当について~

浦壁:年間配当金額は12円とご案内しています。昨年、一昨年の配当性向は26パーセント程度ですので、上下幅が大きいですが、5年から6年平均で4割程度と見ています。

株主還元策 ~優待制度~

浦壁:コンタクトレンズは消費財の要素もありますので、ユーザーにも株主にもなっていただき、2つの面で関心と応援をいただければと思っています。

株式を保有していただいた方については、コンタクトレンズ優待券や当社ケア用品の詰め合わせをお送りしています。

坂本:僕もたまにいただきますが、1年分くらいあるのですごく助かります。

浦壁:さらに、スライド右側にあるように、地方の名産品をお送りするコースもあります。当社の工場がある埼玉県や、被災地支援として福島県のものは必ず入れるようにしていますので、ぜひ、そのような商品も選んでいただきたいと思います。

他には、盲導犬育成団体のアイメイト協会や角膜移植普及活動を行うアイバンク協会への寄付も受け付けています。

参考資料:サステナビリティ・ESGの取り組み

浦壁:コンタクトレンズ産業は「大プラスチック消費産業」ですので、当然ながら、北欧などを中心にアンチテーゼがあります。当社としても、プラスチックをどのように回収するかを考えており、「BLUE SEED PROJECT」というものを立ち上げています。

このプロジェクトは眼科や販売店、公益的な場所などからブリスター(空ケース)を回収していただいたり、企業や学校では社員や生徒からの回収を行っていただいています。

回収したブリスター(空ケース)を倉庫に集め、最終的にはパレットメーカーで運輸パレットとして再生、活用していただくことで、プラスチックを燃やさない活動を行っています。おかげさまで、この3年弱で約4トンのブリスター(空ケース)を回収しました。

参考資料:シードに関する情報を公式ホームページやSNSで発信

浦壁:先ほどお伝えした活動以外にも、「YouTube」の公式チャンネル、「Twitter」「アイコフレ」ブランドサイト、「TikTok」など、いろいろな媒体を通して、広報担当およびプロジェクト担当の窓口から情報を発信しています。

また、ホームページには、決算関係の資料や本日ご説明したような個人投資家説明会の資料、IRレポート、統合報告書などを掲載しています。特に統合報告書については、日頃あまりお話しできないことも含めて詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。

質疑応答:65周年記念優待の実施について

坂本:「御社はたしか今年で65周年ということで、特設サイトもあるとうかがいましたが、65周年記念優待はありますか?」というご質問です。

浦壁:今のところは考えていませんが、以前は60周年の時に行いました。

質疑応答:カラーコンタクトレンズの利益率について

坂本:「カラーコンタクトレンズのほうが高価格で販売されている印象がありますが、カラーコンタクトレンズの方が利益率も高いのでしょうか? 生産コストも高いのでしょうか?」というご質問です。

浦壁:カラーコンタクトレンズの方が利益率は低いです。流行商品ですので、特に中国では顕著ですが、「今年のクリスマスモデル」のようなものを作らなくてはなりません。

そうすると、商品のロスも一定程度生まれます。当社の場合、コンタクトレンズの新商品を出す時には、トライアルレンズという無償のレンズを、眼科に配ります。こちらはすべて無償のため、3年に一度ずつ商品を入れ替えるとしても、この分はすべて無駄になります。

したがって、カラーコンタクトレンズは単品で多く販売すれば利益率は上がりますが、一定の範囲まででは、そこまで高くない商品になります。

質疑応答:バックアップ体制について

坂本:鴻巣の工場が1号棟から3号棟まであるということについて、「先ほど生産についてはお話しいただきましたが、被災などにより、例えば、1号棟が故障あるいは生産が止まった際には、2号棟および3号棟でバックアップできる体制はあるのでしょうか?」というご質問です。

浦壁:空調や排水など、それぞれの設備はすべて独立したかたちにしています。そのため、1号棟が停電しても2号棟や3号棟は問題なく動きますし、相応の震災には耐えうるかたちで構造設計もしています。東日本大震災の時にも埼玉県は比較的揺れましたが、特段の影響はなく、壁やその他の部分の補修と充填を若干行った程度で済みました。

質疑応答:中国での販売について

坂本:中国での販売について「眼鏡やコンタクトレンズ市場は中国の伸びが期待されていましたが、現在の中国の政策や成長の影響などをどのように見られていますか? リスクはどのようなものがあるかを教えてください」というご質問です。

浦壁:中国は為替レートによって変わりますが、概ね1元15円ですが、今は1元20円くらいですので、年間の売上高は20億円弱とご認識ください。売上高の半分がカラーコンタクトレンズの市場、半分がインターネット市場となっており、消費者のテイストの変化が非常に激しいのが特徴です。

さらに、日本ではあまり見かけませんが、ファッション業界やIT業界から「多額の広告宣伝費を投じて、数年間試してうまくいかなければすぐに撤退する」というかたちで参入してくる、彗星のようなプレイヤーが出てくることが大きなリスクです。

また5年に一度、法規制が変わりますし、5年以内であっても急な命令が出ればすぐ変わりますので、行政リスクは日本に比べて非常に高いという認識でよいと思います。

質疑応答:会社の今後の展望について

坂本:「会社として、今後向かっていきたい展望のようなものがあれば教えてください」というご質問です。

浦壁:高齢化社会においては、基本的に年齢が上がっても使っていただける層を広げていこうと考えています。また、オルソケラトロジーレンズ等も含め、若年層の方にも使っていただける商品をご用意することも大切だと思います。

このような取り組みを通じて、マスマーケットとニッチマーケットの両方で、日本だけではなく、同じ所得体系や医療体系を持つシンガポールや香港等に対し、ライフスタイルに合った商品を提供したいと思っています。ヨーロッパについては、セレクティブに進めていきます。

もう1つの展望としては、今後大きく伸びると想定されるインド、インドネシア、ベトナム、フィリピン、中国のように、人口が1億人を超えている近視率の高い国に対しては、それぞれに合ったマスマーケットやミドルマーケットを展開していこうと考えています。

「高いばかりが能じゃない」という部分も出していかなければ支持が得られないと思いますし、日本の人口は昨年だけで71万人も減っていますので、この部分を補うのはアジアへの横展開しかないと確信しています。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:この数年の売上減はコロナの影響ですか?

回答:2020年はコロナの影響でコンタクトレンズ需要が減退し、コンタクトレンズ市場が約10パーセント縮小しました。2021年の1年間で市場規模はコロナ前である2019年の水準まで回復しています。

<質問2>

質問:コンタクトの原料は何ですか? 資源高がネガティブに感じます。

回答:コンタクトレンズはプラスチックを多く使用します。ロシアのウクライナ侵攻に起因するエネルギー価格や原材料価格の高騰に影響を受けています。その中でも、コンタクトレンズを製造している工場の電気・ガス代の上昇による影響は大きい状況です。

<質問3>

質問:売上高は上昇していますが、純利益が減少しているようです。今後の対応はいかがでしょうか?

回答:販売費および一般管理費の削減に努めていますが、極端な円安による商品輸入原価の上昇や、ウクライナへの軍事侵攻に起因したエネルギー価格や原材料価格の高騰により、利益が減少しています。

コスト増については、2022年4月から7月にかけて使い捨てコンタクトレンズ商品の大部分で卸売販売価格を引き上げることで吸収を図りました。

今後については、主力である国産の「ワンデーピュアシリーズ」を中心として、今年発売した2種類のシリコーンレンズの拡販および海外事業規模の拡大と収益基盤の強化を図っていきます。