ハイライト情報

栗原将氏(以下、栗原):交換できるくんの栗原と申します。本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。決算説明の資料に基づき、直近の業績と事業内容をご説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

第3四半期業績について、ハイライト情報としてはスライド左側に記載のとおり、3点あります。

1点目に、当社が取り扱っている住宅設備機器の商品供給の遅延の影響が継続しています。これは最近、メディア等々でも報じられているためご存じの方も多いと思いますが、世界的な半導体不足の影響に伴うサプライチェーンの混乱や新型コロナウイルス感染拡大に伴い、主力商材のトイレ、給湯器などがまったく入ってこないという状況が継続しております。

結果として、受注はいただけるのですが、商品が入らないと工事が完了できないため、1月末現在でバックオーダーは3,500件を超え、金額にして6億円以上のご注文をいただいています。

この状況は昨年9月くらいから始まり、当初は11月には改善していくだろうと言われていましたが、10月の段階で12月に改善する見通しとなり、だんだん後ろ倒しになっていきました。「年明けには」と期待しながらさまざまな努力をしてきましたが、1月になって状況が悪化したメーカーさんもあり、そういった状況も鑑み、今回は通期業績予想の下方修正が必要と判断させていただきました。

そのような状況から、売上高は累計で36億4,400万円、前年同期比プラス4.5パーセントで、微増となりました。営業利益は6,700万円、前年同期比マイナス67.2パーセントで着地しています。

商品供給不足の社会問題化

栗原:商品供給不足については、昨年10月、11月くらいから積極的にメディアの方々が報道し、キー局や新聞などで、かなり取り上げていただいています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):特に給湯器について、入ってこないというお話はかなり聞いています。先ほどのご説明では納期が延びているということでしたが、少しずつ入ってきているのでしょうか?

栗原:はい。すべてではなく、少しずつは入ってきています。

坂本:まったく入ってこないわけではなく、量は少ないものの、入ってきているということですね。

栗原:入ってくる商品もあれば、まったく入ってこない商品もあります。当社が取り扱っている高価格帯の住宅設備は入ってこないものが多く、普及品、いわゆるベーシックなものはポツポツと入ってきており、それで対応している状況です。

坂本:バックオーダーを受けている方々は、商品が入ってくるまで待っているのですね。中古品や汎用品を活用すればよいと思いますが、バックオーダー分の売上は、キャンセルにならない限り、来期以降、もしくは今期に乗ってくるという考え方でよいですか?

栗原:はい、そのようになります。

強固な競争優位性

栗原:スライド左側のグラフでは、受注とアクセス数の推移を示しています。受注に関しては順調に推移しているものの、工事が完了しないため、業績としてはかなり落としています。

「競争環境は大丈夫なのか」といったご意見もあると思いますが、広告以外から入ってくる純粋なアクセス数(オーガニックのアクセス数)につきましても昨年と比較しても順調に上回り推移している状況です。

当社が重視しているのはSEO対策で、いわゆる検索エンジンで上位表示させる施策ですが、さまざまな施策により競争力はさらに強化されておりますので、この点に関してはご安心いただけると考えています。

坂本:SEO対策の強みの背景はどのようなところでしょうか?

栗原:私は、20年以上前からSEO対策について取り組んできました。今は「Google」がベースになり、その時々でさまざまなアップデートがあり順位変動もありますが、当社は短期的な小手先のテクニックではなく、長期的な目線でユーザーに対して有益な情報を発信しており、それを「Google」にしっかりと認識してもらうことで、上位表示させるという取り組みを行っています。テクニックが必要な部分もありますが、オーガニックのアクセスをしっかりと集められるよう、有益な情報を計画的にアップしていくかたちを取っています。

また、SEOのトレンドは変わっていきます。例えば、上場企業であっても数年前に上場したSEO業者さんもあれば、また新たに上場されているSEO業者さんもいるように、動きの速い業界です。

当社はSEO対策を内製化していますが、同時に、外部のパートナーなどいろいろなリソースから最新情報やトレンドを引き入れ、それらをミックスさせています。

代表的なキーワードはスライド右側に記載していますが、おおよそ3,000個くらいのワードを日々ウォッチしながら、このような領域におけるキーワードの順位を確認し、随時調整を行っています。

バックオーダーの状況

坂本:スライドは先ほどおっしゃっていたバックオーダー、注文の積み上がりですね。

栗原:前回のバックオーダー金額は1億円くらいでしたが、今回は6億3,000万円と大幅に増加しています。

坂本:商品が入ってこないものの、注文は積み上がっています。

バックオーダー解消の見通し

栗原:スライドの表は、どのメーカーさんがどういった状況なのかといった変化を示しています。最も影響が大きいのは給湯器で、一番長いものでは、2021年9月発注分がまだ入ってこないという状況で、床暖房付きなどといった少し複雑なものがまったく入ってこない状況で、かなりお客さまをお待たせしています。昨年9月からリンナイさんがこのような状況で、そうすると同業メーカーのノーリツさんなどに発注が殺到してしまいます。そして、ノーリツさんがパンクすると、今度はパロマさんにしわ寄せが行くというかたちです。

そのようなかたちで1社で供給が滞ると、連動して他の大手住宅設備メーカーさんもすべて受注できないということになってしまいます。特に給湯器やガスコンロの商品不足は、現在もまだ解消されていない状況です。

また、もう1つのメイン商材としてトイレがありますが、TOTOさんでは9月くらいから滞っているということです。そうすると、LIXILさん、Panasonicさんのほうでもなくなってきてしまいます。

坂本:ウォシュレットの部分だけでしょうか? それとも、便器まですべてですか?

栗原:一番影響が出ているのはウォシュレットで、特に一体型のタンクレスのものが入ってきていません。高価格帯、高級品のトイレがまったく入ってこない状況です。

その中でも、Panasonicさんでは食洗機やIHクッキングヒーターといった商品が第3四半期においてもある程度入ってきたため、そのようなもので第3四半期の売上を上げることができました。

しかし直近の状況としては、1月から、IHクッキングヒーターまでもが入ってこなくなり、さすがに数字が作れないという状況になってしまいました。今ですと発注しても届くのはだいたい3ヶ月後となり、「頼みの綱」のPanasonicさんが切れてしまったという状況です。

八木ひとみ氏(以下、八木):気になるのは解消時期ですね。

栗原:このような状況では保守的に見ざるを得ないということで、今期の解消は見込めないと考えています。

業績予想の修正

栗原:業績予想の修正です。お伝えしたとおり、受注はあるものの現状は工事が完了できず、さらに、最近はオミクロン株の国内感染拡大の影響もあります。一時的に感染が拡大すると、さすがにネット注文といっても「少し様子を見よう」という方々が、過去の第4波、第5波でも経験したように、ある程度は影響が出てくるだろうと予測しています。

そして、第4四半期は第3四半期並みの商品供給が続くという前提で、売上高は46億円、営業利益は6,000万円という着地予想に下方修正させていただきました。

坂本:やはりサプライチェーンの影響が大きいですね。物が入ってこないと値上げも考えられると思いますが、そのあたりの影響はいかがですか? 価格について転嫁できているのか、御社が負担しているのかなど、業界の動向を教えてください。

栗原:来期の4月以降は各社メーカーさんが値上げに踏み切ることになっていますが、当社の利益率などへの影響はそれほどありません。当社はtoCですので、値段に関してはメーカー側の価格に準じて柔軟にアジャストしているため、適正な利益を維持できる仕組みになっています。

業績の概要

栗原:業績の概要です。売上高については先ほどお伝えしたとおりですが、営業利益も当初の工事計画に基づいた体制を作っているため、売上が立たない分、営業利益へのマイナス影響は大きくなりました。

売上高と売上総利益率の推移

栗原:第3四半期の売上高は12億2,300万円で、第2四半期とほぼ変わっていません。当社は第3四半期と第4四半期の10月から年明けの3月くらいまでが繁忙期で、本来はこの時期に売上と利益をしっかりと稼ぎ出すタイミングではあったのですが、今回は第2四半期並みの数字となっています。

坂本:バックオーダーに対応するために施工体制を拡充するということですが、職人さんを増やしているイメージでしょうか?

この後、事業紹介のところでご説明があると思いますが、御社の仕事は効率的で、ほぼ専属のようなかたちで働いている職人さんがたくさんいらっしゃるということです。その方々をリザーブしておくと言いますか、「今は仕事がないけれど、バックオーダーが来たら回すよ」ということになっているのか、別途社員を雇っているのか、体制作りについて教えてください。

栗原:正社員の人数はあまり増やしておらず、パートナーを増やしています。おっしゃられたように、ほぼ専属パートナーのようなかたちです。売上自体は昨年比で伸びており、まったく仕事がないわけではないため、入ってくる商材で工事を回しています。

職人さんが満足するほどの仕事量ではありませんが、我慢していただきながら、何とかお仕事してもらっています。そのような意味では、業界全体が同じで、職人さんは非常に厳しい状況にあります。

坂本:他の物が入ってこないために、仕事が少ないということですね。

栗原:おっしゃるとおりです。当社は仕事が比較的多いほうだと考えています。

坂本:バイイングパワーもありますし、メーカーとのつながりもあると思います。

栗原:ある意味で、これはチャンスと捉えています。優秀な職人さんは定着しますので、通常は動かないのですが、そういった方々が動くことを考えるタイミングだろうと感じています。従来はなかなか採用できなかったような、当社が優秀と定義する人材を獲得するチャンスだと考えています。

坂本:多能工な方々ですね。

栗原:そのような方や、普段は人づてでなければ動かないような方から普通に応募があります。そういう意味ではこれはチャンスだと感じています。

坂本:採用後に御社の仕事がさらに増えていくと、そのまま続けていただけるということですね。

栗原:そのとおりです。

工事件数の推移

栗原:工事件数自体は微増しています。しかし、高価格帯、高機能帯の商品が入らず、平均単価は少し下がっている状況です。

営業利益の推移

栗原:第3四半期の営業利益は1,100万円と限定的です。

販管費の推移

栗原:販管費の推移です。広告宣伝とシステム投資は継続しています。一部地方都市を中心にテレビCM等を放映しており、テストマーケティングを行っています。今期はいろいろなことがわかりましたので、来期以降、どのような戦略を実施するかは現在議論しているところです。

第4四半期においては、供給のない中で宣伝するのはお客さまにとってあまり有益ではないため、自粛しようと考えています。

バランスシート

栗原:バランスシートです。本社移転および拠点増加に伴い、敷金の増加等がありますが、自己資本比率を含め大きな変化はありません。

対法人向けサービスを加速

栗原:第3四半期についてはさほど大きなトピックがあるわけではないのですが、「対法人向けサービスを加速」ということで、施工事業を子会社のKDサービスに承継しました。

対法人向けサービスと一括りに言っても、賃貸住宅管理や生活サービス、メーカーさん、エネルギーインフラなどたくさんあるのですが、そのような企業さま向けのサービスを作り込んでいったり、テストマーケティングを行ったりというサービスをKDサービスのほうに詰めてまとめて新しいものを生み出していきます。

「交換できるくん」はtoCのセールス&マーケティングに集中し、それ以外の新たなサービスの開発はすべてKDサービスのほうで柔軟に取り組んでいくよう進めています。

第3四半期もそうですが、今期は本当にさまざまな企業さまとお話をさせていただいており、例えば、家電量販店さんやホームセンターさん、あるいはポータルの大手ECなど、いろいろな企業さまとお話しさせていただく中で、シナジーがある業種もあれば、なかなか難しい業種もあることが見えてきました。その中で、どのような戦略を取るかまとめています。

一番最初にスタートできたのは賃貸住宅管理です。従来かなりアナログな方法で行われている部分が多くあり、管理会社の方々が住宅設備の交換や修理など、苦労して対応されていたものについて、我々のネット見積りのノウハウなどを流用して対応させていただいたところ、非常に便利だと好評でした。

入居者に対してすばやく工事や修理対応ができ、入居率の向上につながると評価いただいており、これらを先行していろいろと進めています。

また、実はメーカーさんの施工も行っているのですが、メーカーさんが自前で賄い切れない部分や手がかかる部分を当社ならネットを活用し効率よく施工ができるということで、メーカーさんの仕事を我々が一部受託することもあります。そのほかには、エネルギーインフラ系の企業さまなどともいろいろとお話をさせていただいております。

今回、住宅設備機器がなかなか入らないなど、これまでになかったような「商品が入らない」というリスクが出てきました。今後は、ネットマーケティングやネット見積りを切り出すなど、さまざまな展開ができると考えており、準備を進めています。

八木:金融などのサービスもあるのですね。

栗原:はい。例えば、賃貸不動産のオーナーさんに商品を販売させていただいてその保証を提供させていただく、あるいは我々が工事させていただいたもの以外にも、物件が持っている設備の保証を我々が受け持つなどを考えています。

これはもちろん保険業法が絡むため専門家と詰めているところですが、そのようなサービスが展開できると考えており準備を進めています。

坂本:それはおもしろいですね。保険を専門とした会社は上場企業にもありますが、それを自社で行うと、かなりのコスト低減になりますよね。

栗原:そのとおりです。toCの「交換できるくん」の媒体から来るマーケティングとは別の視点で賃貸特有のニーズがあり、「交換だけではなく修理も対応してほしい」あるいは「修理の保証を提供してほしい」「入居者の方に連絡を取ってほしい」などの要望があります。

そのような今まで手のかかっていた部分をスピーディに処理することは、私どもが一番得意な部分で、そこは親和性がよいと思っています。

坂本:入口があればということですよね。法人向けを切り離すと、専門的に動けるようになりますので、できることがいろいろ出てきます。おそらくビジネスチャンスがたくさんあるから分けたと思うのですが、もともと法人サービスの売上高はどれくらいの割合だったのでしょうか?

栗原:もともとは法人向けよりtoCを中心としており、現在は、まだ数パーセントの売上高ですが、非常に伸びています。

坂本:例えば、大手不動産管理会社と提携すると、かなりの売上が入ってくると思っています。ホームセンターや家電量販店はどちらかと言いますと、施工を手伝うかたちでしょうか? 下請けになってしまうとおもしろくないと思いますので、何かアイデアはありますか?

栗原:家電量販店さんもホームセンターさんも同様に、私どもが扱っている住宅設備機器に関しては非常に手を焼いています。単価が小さいけれど手間がかかるということで、やはり見積りをインターネットで行いたいとお考えです。

坂本:その見積りを写真で出すのは御社の得意な部分ですよね。

栗原:上場以来、本当にさまざまな企業さまから住宅設備をネットで販売したいとご相談いただくケースがたくさんあります。私どもは20年以上にわたって蓄積している特殊なノウハウをもって品質を担保し安定的に提供しています。住宅設備のネット販売はなかなかうまくいかないものですので、そのような企業さまには単に競合するだけではなく、何か一緒に取り組みを行いたいと考えています。

ただし、家電量販店さんやホームセンターさんなど、本来toCで展開している企業さまは、それなりの儲けが必要となります。私どもは安く、品質の良いサービスをすばやく届けたいと考えているため、そこから離れる内容になってくるのであれば、私どもの事業とは異なってきます。

坂本:ネット通販は物を売ったら終わりです。個人に売っても取り付けできないため、おそらく一人親方のような方が注文していると思います。しかし、それに施工が付いていれば事業としても伸びるということで、そこを御社が手伝うのでしょうか?

栗原:いろいろなパターンがありますが、私どもがITで見積り運用などをサポートし、施工についてはインフラ系の企業さまであれば既存のものもありますので、そこは柔軟に対応していきたいと思っています。

八木:先ほどご説明があった職人さんの採用も好調ということですね。

栗原:そのとおりです。高齢化が叫ばれていますが、採用も順調です。当社の場合は、比較的若く、真面目でやる気のある方が採用できていますので、体制は着実によくなっています。商品の供給が急に増えた時にどこまで対応できるかが勝負だと思っており、そこで対応していけるような体制は継続しています。

質疑応答:サプライチェーン混乱の要因について

八木:「商品が入ってこない要因はサプライチェーンの混乱とのことでしたが、材料不足や工場の停止など、どの要因が一番大きいのでしょうか?」と質問をいただきました。

栗原:それはメーカーさんによっても違うのですが、例えばワイヤーハーネスです。給湯器ですと本体は入ってきますが、リモコンに使われている部品がないため、リモコンは入ってこないということがあります。

そのような場合は本体を先に設置させてもらい、多少不便ですが、本体だけで先に使ってもらうなど、現場でさまざまな工夫をし、なんとか対処しているところです。

質疑応答:顧客層や社員の変化について

八木:もう1つ、「上場して1年以上経ちますが、会社としてお客さまや社員に変化はありましたか?」とのご質問です。

栗原:やはり1年経ってかなり変わってきたという実感はあります。特に企業さまとのお話はさせていただきやすくなっていると感じています。社内については、上場以来、多くの社員を雇用したわけではなく、辞めた人もほとんどいない中で、みな着実に成長しています。

質疑応答:価格変動におけるリスクについて

坂本:「価格変動で値段が上がっているので逆ザヤになるリスクはありませんか?」と個人投資家から心配の声がありました。値上げは決まった時期ですので、通常はリスクはないと思いますが、そのあたりについてお聞かせください。

栗原:発注時期に紐づくため、すでに注文が入っているものに対して値上げすることはさすがにないと思います。

値上げ後の発注分につきましては、現場での対応は必要ですが、相場自体が上がるかたちですし、販売価格に何かキャップをかけられていることはありません。過去にも時々値上げはありましたが特に変化はなかったため、過去同様に変化はないかと思います。

質疑応答:株主優待について

坂本:「自社サービスの割引などの株主優待ですが、導入を検討しているのでしょうか?」という質問が来ていますが、いかがですか?

栗原:議論していますが、実施したいという意見もあれば慎重な意見もあり、検討は続けたいと思っています。

住宅設備機器の交換をネットで注文!

坂本:ここからは事業内容のご説明をお願いします。

栗原:私どもは住宅設備機器をネットで販売している会社で、スライドにある「ビルトインガスコンロ」「給湯器」「トイレ」といった機器だけを交換できるという特徴を持っています。これを工事費込みで提供しています。

市場規模

栗原:住宅設備機器の市場規模は、リフォーム市場が6.5兆円と言われているうちの2.8兆円ということで、最大規模の市場になっています。リフォーム市場は、システムキッチンなどの大規模工事やお風呂の入れ替えが連想されますが、実はトイレや給湯器の交換が大きな割合を占めています。

事業ドメイン

栗原:私どもはこれを「チェンジ領域」と名付けていますが、これだけを専門としているのには理由があります。一般の方が「ビルトイン食洗器」「ビルトインコンロ」「レンジフード」を交換しようと思うと、どこに頼むか非常に悩ましい領域となっています。

スライド左側に記載しているリフォームやリノベーションなどについては、さまざまな会社があり、インターネット検索すれば、積極的に行っている会社さんも数多く見つかります。あるいは、近所にある工務店さん、またチラシなどで選択肢がありますが、当社のように「住宅設備機器だけを積極的にやろう」という業者さんはなかなかいないという状況です。

一方、スライド右側に記載しているリペア領域は、水道修理や関連機器の修理で、すでに認知されているかと思います。

今までは、例えばビルトイン食洗器の修理を依頼する時、「一般のリフォーム屋さんに頼むのか、水道屋さんに頼むのか、どうしたらよいのかわからない」という声がありました。

ギャップが存在し、マーケットが未確立

栗原:これはなぜかと言いますと、例えば、システムキッチンがきれいでも、日々使っているガスコンロ、食器洗い機、蛇口のような機器だけが劣化しているケースや、機器をグレードアップしたいというニーズがそこには確実にあります。お客様としては機器の交換だけをしっかりと行ってくれればよいというニーズがあるのですが、一方でそのようなニーズに対する業者側の本音として、リフォーム屋さんでは最低でも50万円くらいの金額にならなければ、採算が合いません。

なぜかと言いますと、ご依頼いただくと、まずは見積りに伺いカタログを見せながらお話しします。その後、「今度見積りを持って伺います」というように、何回もやり取りしながら進めていく商習慣があります。そのようなやり取りを繰り返しますので、私どもの平均単価のような13~14万円の工事では採算が合わず、住宅設備機器の交換はあまり拡大しないのが現状です。

また、2番目の金額についても、「工事の価格がわからない」と非常によく言われます。

八木:確かにそうですね。

坂本:こわいと思ってしまいます。

八木:インターネット上に「最安◯円から」と書いてあると、その最安値のほうを自分の中でアンカリングしてしまいます。

坂本:それで実際の工事価格を言われると、「えっ」という反応になります。

八木:おっしゃるとおり、びっくりしてしまうことが多いです。

栗原:これは本当に業界の悪しき習慣ではないかと思っています。大半の価格は「◯円から」となっているため、こわいという気持ちや不満につながります。工事が終わってから請求書を見てみると、よくわからない項目が入っていることもあります。

坂本:ありますね。

栗原:見積り自体もよくわからない項目が並んでいますが、今のお客さまのニーズは家電製品のように買い替えることだろうと思っています。

坂本:確かにそのように思います。

栗原:当社では見積りをシンプルにしていますが、従来の流れでは、最初の見積りは無料で業者の人が来てくれるという認識になっています。ではその人件費をどこに乗せるのかとなってくると、工事費のようなわかりにくいところに振り分けるしかないという切実な事情があるのですが、結果的に業界不信につながり、悪循環となっています。

3番目に記載している技術についても、お客さまにとって「どんな職人さんが来るかわからない」などの不安があります。例えば、頼んでいたところとはまったく違う会社の職人さんが来て、嫌な思いをしたといった声もよく聞きます。

このような不信感によって、4番の「どこに頼めばいいかわからない」という状態になり、不信感が非常に溜まっています。

業者側にとって、住宅設備は単価が小さいものの、年1回はモデルチェンジし、高機能商品には非常に数多くの機能があります。それらを覚えてお客さまにご説明するためには、キャッチアップがかなり大変で、積極的な取り組みは難しい状況です。そのため、どうしても単価の高いものや、「行ってすぐ工事ができる修理に行こう」となり、そのような背景もあって、業者が集まりづらかったのだと思います。

交換できるくんのサービス

栗原:それに対して当社では、「どうすれば業者として積極的にできるのか」と考えました。市場は大きくニーズはありますが、積極的にできないのは採算が合わないことが理由でしたので、インターネットでその部分に取り組んでいくことにしました。

住宅設備機器の施工は、基本的に1日かからないため、スピーディーさを求められます。また、日常的に使うものですので、品質に対するお客さまの目は非常に厳しく、しっかりと管理して徐々に品質を上げていかなければ、あっという間にクレームだらけになって、結果的に会社がしぼんでいくことになります。私どもは、それらを全部実現しようと取り組んできました。

Web完結型の見積りで交換工事のDX

栗原:まず見積り依頼は「交換できるくん」というインターネット媒体を通して、お客さまに商品を選んでいただきます。「なにもわからない」という方でも、当社サイトを見ていただくだけで好きな商品を選ぶことができますし、あるいは、お任せで見積りをご依頼いただけるサービスも提供しています。 

気に入った商品があれば、インターネットの見積りフォームから送信できます。だいたい100ユニークユーザーに対して、1名から見積りをいただいています。

見積り依頼では、現在設置されている給湯器やトイレ、ガスコンロの型番や写真をフォームにアップして、希望の商品などを入力して送っていただければ、社内にいるセールス担当がお客さま専用の見積り画面を提示します。見積り画面では工事価格を「◯円から」ではなく、すべて込みの総額でしっかりと提示させていただきます。

お客さまはこれまで営業担当を家に上げたり、いろいろとお話ししたりという手間がありました。しかし、それをすることなく、総額の見積りを見ることができ、当然ながら注文もオンラインで行えます。そして、注文後は当社の部隊が責任をもって工事まで行わせていただくという、一気通貫のモデルを整えています。

見積りから施工までを一気通貫で提供

栗原:従来は出張見積りや、職人さんのスケジュールを確認して「いつ行くか」といった数多くのやり取りなどの手間暇が必要でした。しかし、私どもは住宅設備機器のみを扱っているため、それに特化したビジネスフローになっています。

フローはスライド下部のとおりで、自社サイトから集客して、Web見積りからそのまま訪問日調整まで社内ですべて行っています。

一般的には、受注した後に職人さんの予定を聞くような段取りをします。しかし、それではスピーディーな対応や、多くの受注量を処理していくことができません。

そのため、パートナーの方々のスケジュールを、すべてシステムの専用画面で管理しています。「いつ、誰が、どこに行けるか、商品はどこにあるか」ということも即座にわかるため、見積り後に注文いただければ、すぐさま工事日を提示できます。

最終的には自社の工事担当が向かうのですが、そこで初めてお客さまと対面します。工事担当については、事前に「このような担当者、スタッフが伺います」ということもすべてお客さまに開示するため、安心して当日を迎えていただけます。

そして、何かあれば、すべての責任を当社がとります。よくある業者のたらい回しのように、販売会社と施工会社が「お互いさまですね」となってしまう場面が非常に多くあります。当社ではそのような事がなく、ご連絡いただければ、すべて対応するため、一度使っていただいた方には非常に満足していただけています。

また、「こんなに手軽にできるのであれば、もっと早くやればよかった」という評価もいただき、そのような方々がリピーターになっています。当社の住宅設備機器のメイン商材は十数点あるため、例えば、ガスコンロを換えた方がしばらくして食器洗い機を交換するというようなことがあります。新築でほぼ同時期に取り付けた機器が、だいたい10年くらいで交換となります。

坂本:同じ時期に壊れてくるのですね。

栗原:おっしゃるとおりです。順番に劣化していきますので、実はリピート利用がけっこうあります。今新規の注文も増えていますが、そのうち25パーセント以上が過去にご依頼いただいた方からの注文で、実際に非常に多くの方々にリピートされています。

坂本:IHコンロを交換して、「この値段と早さだったら洗面台もやろうかな」ということですね。

栗原:そのような場合もあります。

媒体の強み

栗原:当社は集客の部分に非常に強みがあり、「交換できるくん」というインターネット媒体を持っており、SEOを強化しています。

お客さまに対してインターネット上で営業部隊が対応し、さらに施工、アフターサービスも行っているため、リアルなコンテンツを作っていくことが可能です。注文があればあるほど、コンテンツの元となるデータを得ることができますし、それをまたデータベースに反映させていくことで、日々競争力を強め、優位性を保っています。

施工のスケジュール管理で生産性向上

栗原:施工のスケジュール管理に関しては、私ども自身が施工業者でもあるという利点を活かし、住宅設備に特化する内容に置き換えたことにより、生産性を向上させています。

多能工化による生産性向上

栗原:もう1つは、先ほどお話があった多能工についてです。例えば、大きめのトイレ工事の場合、1人の職人さんが多能工としてトイレの内装を張ったり、床を工事したり、電球を外したりすることがあります。従来であれば、何人もの職人さんを入れなければいけませんでしたが、当社では1人の職人さんが朝に行って夕方にはきちんと終わらせることができます。

何人も出入りしないため品質は上がりますし、毎日行うことによって、品質もスピードもさらに上がってきます。このプロセスによってトラブルも起きません。

職人さんにとっても、1人で工事ができるようになると、報酬もある程度変わりますし、お客さまにとっても1日で工事が終わるメリットがあります。組織力、多能工化についても強化しています。

IT×住宅設備機器の単品交換市場の参入障壁

栗原:最近では、住宅設備を販売する企業さんも出てきました。競合の状況について、どのような企業があるのかという話もかなりあります。

八木:気になりますね。

栗原:例えば、大手企業さんや、あるいは小規模の企業さんが住宅設備の販売に取り組んでいますが、なかなか難しいと思います。当社の場合は、インターネット媒体を持っており、20年以上もの経験を積み上げてきているため、SEOが効いています。これは一朝一夕でできるものではなく、他社が追いつくまでには何十年もかかりますので、これは競争力だと自負しています。

また、見積り依頼を多くいただいてもすべて受注できるわけではなく、非常に高い精度の見積りを返さなければ、このビジネスは完結しません。例えば、100パーセントのうち95パーセントの工事はうまくいき、残りの5パーセントはできなかったということでは通用しないのです。

お客さまは非常に不安がある中で注文しているため、100パーセントに極めて近い状態で工事できなければ、一瞬でクレームだらけになってしまい、大変なことになります。これを積み上げながら品質を保ち、ノウハウを蓄積しています。

それだけではなく、私ども自体が施工部隊として、職人さんを100名以上組織しており、高品質を保っています。ですので、これらをすべてやろうと思っても、なかなか難しいのが現状です。新たにポンと参入してくるケースは多いのですが、それでは続けられないマーケットと言えます。そのため、競争力、参入障壁が高いビジネスモデルとなっています。

ユニークなポジションを確立

栗原:このように、当社は非常にユニークなポジションにいます。先述したとおり、住宅設備機器の交換だけで、修理もリフォームもせず、交換だけを続けています。

非常に小規模な市場をイメージされると思いますが、実は市場は3兆円近くあるため、私たちはそこをしっかりと深掘りしていきます。例えば、1パーセントのシェアで300億円、3パーセント、4パーセント台で1,000億円も見えてくるという非常に大きな市場の中で、現状はまだマーケットリーダーが存在していません。ですので、今後もしっかりと成長していきたいと考えています。

坂本:職人さんをきちんと自社で組織し、それによって満足いくサービスを提供して、さらには早い施工時間やSEO対策で差をつけるということが御社の強みということですね。