会社概要
二階堂京介氏(以下、二階堂):さっそくですが、弊社のご説明を始めさせていただけたらと思っています。説明が淡々と続くものですから、ショートする場合もありますが、ぜひ積極的にご質問ください。みなさまの興味関心の深いところでじっくりお話ができたらと思っています。
まず、会社概要です。我々は2005年に名古屋で創業しました。現在は社員が94人です。協力会社の方たちの出向が多いため、パートナー社員が数多く参画している企業です。
我々は15年間ずっと移動体業界、つまり携帯屋です。携帯ショップを運営しているのではなくて、携帯ショップをサポートしていた会社となっています。キャリアや現場のニーズに合わせて、携帯ショップ周りの課題はなんでも行ってきた会社です。
当初は人が足りないからと販売に派遣するところから始まり、途中から「どのようにして生産性を高めていくか」「お店を元気にするためにマネジメントの質をどのようにして高めるか」という店舗のオペレーションやコンサルティングなど、携帯店頭周りの課題はなんでも対応するかたちで、ニッチな中ずっと行ってきました。
プロフィール
簡単に自己紹介します。私はもともとは小売アパレルから出て、その後メーカーで生産技術を担当していました。
社内でずっとコーポレートや新領域の事業、新案件などを幅広く担当してきたため、それこそ「専務のあとに監査役ってなぜ?」とよく聞かれるのですが、「必要であれば監査役だろうがCFOだろうが担当します」というかたちで、よくも悪くも器用貧乏な人間です。
中長期ビジョン
本日は、まず我々のビジョンの全体像をお話しした上で、中期の事業戦略、中期の投資戦略、最後にさらに先の長期構想についてお話ししたいと思っています。
まず、ビジョンからです。先ほどお伝えしたとおり、我々はずっと携帯業界の店頭コンサルティングに特化してきました。そこから一昨年にマザーズに上場しています。外部からの期待もあって、携帯業界を1つのリテールの店舗網としたら、そこをもう少し拡大したリテール業界全般に価値を提供していく方向に舵を切りました。
後ほどお話ししますが、我々の創業の思いが原点回帰して、スライドに記載の長期ビジョンを設定しています。
中期目標
中期目標です。ビジョンは先ほどお伝えしたとおり、国内において「リテールテックNo.1企業」になることです。今回、4ヶ年で設定した目標は売上高が100億円で、営業利益が8億円から10億円です。
事業ドメイン
中期の事業戦略をご説明します。我々は「国内No.1リテールテックプラットフォーマーを目指す」と掲げています。
これが何を意味するのかと言いますと、日本の小売と世界中のテクノロジーを適切にマッチングさせ、それを使いこなす手伝いをするということです。そのような位置付けのプラットフォーマーになっていきたいと思っています。
ビジネスモデル
ビジネスモデルです。スライド左側がリテールテック企業です。世界中のリテール関連のテクノロジーを持った企業のOEMや代理店としてソリューションを取り扱ったりしています。
企業に対して、我々のコンサルタントが本部の課題や現場の課題に対してオペレーションを適切に行うために必要なテクノロジーを選定して、本部も現場も使いこなすところまで並走していくというビジネスモデルを掲げています。
我々のようなカスタマーサクセスの企業がなぜ必要かと言いますと、数多くのおもしろいリテール関連のSaaS企業やテクノロジーを持った企業はありますが、小売の現場では使いこなすことをなかなか難しく感じています。
現場が考えていることや本部が戦略的に考えていることの間に入って、双方の課題をきちんとつなぎながら使いこなすところまで行うというのは泥臭いこともあり、なかなかいないのが我々の認識です。そこに特化して戦っていく会社になっています。
なぜこのような戦い方なのかと言いますと、携帯業界で行っていたことが、まさにそのようなことだったからです。
提供フロー
先ほどもお伝えしたとおり、そのようなアライアンスでの商品開発や商品の仕入れを行い、プラットフォーム上で製品紹介やメディアとして小売の適切な情報を発信して、その上でソリューション営業が本部やシステム部門、経営層と交渉して、現場の導入支援まで行う会社です。
現場の気づきが次の商品開発につながり、改善に反映されるサイクルを回していくのが、我々の提供フローになっています。
当社の強み
当社の強みです。「高い現場力」と記載していますが、現場力とは何かと言いますと、最新のテクノロジー・ソリューションの中から現場に根ざした適切なものを選んで使いこなすための目利きです。
また、非常に定性的ですが、現場はロジックだけでは動かないところもありますので、みなさまを中に巻き込んでいくエネルギーなども含めて、我々は「現場力」と呼んでいます。それを非常に大事にしている会社です。
移動体を中心にこれまで培ってきた実績や関係性があるからこそ、リテール全般に広げても十分に戦っていけると確信しているところです。
リテールテック領域への拡大
ここからは市場性のお話です。当たり前ですが、移動体の携帯ショップだけの市場から、小売・飲食まで含めたところまで広めていきます。
日本の小売市場
我々のターゲット市場は、小売市場または一部ECや飲食業まで含んだ上で定義しています。
労働人口の減少
労働問題です。新型コロナウイルスによって一部解消されているところもありますが、優秀な人材が現場で足りていない状況は未だに続いています。
リテールテックの世界の市場性
リテールテックの市場についてです。小売全般ではなく、リテールに向けたテクノロジー・ソリューションの市場になっています。北米や欧州では「スマートリテール」という呼び方で市場が定義されていますが、ここはイコールになります。
日本国内では、リテールテックという市場はあまり定着していません。DXの中の小売DXのような扱い方をされていますが、広義なものからだんだん狭義なものに特化されて、市場が広がっていくと考えています。そのような中、私たちはリテールテックでNo.1を取っていきたいと考えているところです。
アジアの市場性
特にアジアは店舗も多いため、急激に成長すると言われています。
リテールテックプラットフォーム
我々のプラットフォームについてです。現状では中身はほぼ完成しており、新事業・新商品の発表会ということで、7月8日に商品説明会も開催する予定です。その一部をお話ししたいと思います。
国内外のソリューションを取り扱っているところと我々のプラットフォームのポイントは、公平な製品紹介です。
リテール・ソリューションを選ぶ側のお客さまからは、「形のある商品はカタログで比較しやすいが、このようなソリューションに関しては比較するのがなかなか難しい」という声が非常に多くあります。
各ソリューションメーカーの提案資料を比較するしかないのですが、各提案資料は自分たちを最大化する表現を当たり前のように使うため、切り口がバラバラで比較することが難しいです。
我々はそれを各カテゴリーに並べていきます。例えば、モバイルオーダーであればモバイルオーダーの中の主要なソリューションを並べて、機能が「あり・なし」というかたちで明確に表現します。ですので、かなりリテーラー側に寄り添って設計しています。
一部のソリューションメーカーからは嫌がられたりもしますが、本質的によい商品が残っていきます。
また、我々は「なんでもいいから売る」というよりは、現場やリテーラー側が求めるもの、リテーラー側に適したものを導入していくのが狙いですので、我々のコンサルタントはそのような公平な製品紹介を、あえてライターも兼任して作っています。
業務に特化した記事という点ですが、リテール関連の有識者に参画していただいて良質な記事を掲載しており、なかなかおもしろい記事が揃っています。こちらは定期的に出していくものです。導入までのサポートは、先ほどからお伝えしている我々のビジネスモデルのお話になっています。
小売店のイメージ
リテールテックが具体的にどのような技術か、簡単にご説明します。例えば「Grab&Go」という技術は「Amazon Go」に代表される技術ですが、QRコードをピッとタッチするとゲートが開いてお店に入ることができ、好きな商品を持って出ていくと勝手に決済されます。セルフレジではなく、レジが完全にないお店の概念になっています。
それらを実現するための各技術をご紹介します。「電子棚札&ダイナミックプライシング」は、需要によってどんどん金額が変わる値札です。
「AIカメラ」は「Grab&Go」を支える技術にもなっていますが、AIのカメラで人や導線を撮って、商品を取ったことや戻したことを全部確認しています。そのためレジがいらないのです。カメラで人を認証して、物を取ったか取らないかも認証しているため、勝手に出ていくだけで必要な商品が決済される技術になります。
「品出しロボット」はその名のとおり、品出しを行うロボットです。「スマートサイネージ」も最近は「AIカメラ」と連動することがありますが、通りがかった人の顔や体型などからその人の属性を判別して、その人に合った広告や必要な情報を流すサイネージになります。他にも「スキャンロボット」「デリバリーロボット」などがあります。
飲食店のイメージ
飲食店は今回の新型コロナウイルスの影響でかなり進んできており、「即時テイクアウト」や「セルフオーダー」があります。
「セルフオーダー」をご存知ない方もいるかもしれませんが、最近はお店に行くとテーブルにQRコードが貼ってあることがあります。そちらを読み込んで、端末上から注文することを「セルフオーダー」「モバイルオーダー」と言います。
一般的には注文要員がいらなくなり、スタッフはサービスに集中できるようになると言われている技術です。決済も絡めたコアなサービスで、我々が自社で持っているサービスです。
その他に「ペイメント」「配膳ロボット」「お掃除ロボット」など、一部ではありますが、リテールテックの関連するテクノロジーと定義しています。
取り扱い商品例①
我々が取り扱うソリューションの一部をご紹介します。1つ目は「無人店舗」です。先ほどご説明した「Grab&Go」のような各主要ソリューションの総称です。
結果的に無人店舗になっているのであって、それを成り立たせるために「AIカメラ」「重量センサー」「Grab&Go」のソフトウェアなどあらゆるテクノロジーが密集しています。
2つ目は「スマートカート」です。中国系で流行っていますが、物を置くたびにカートに付いている重量センサーで自動的に判別したり、手持ちに付いている端末で1個1個登録すると現状の金額が出るというものです。このように、おもしろく買い物できる点はユーザー側のベネフィットになります。
また、スーパーでは往々にして買い物金額を低く抑える傾向があります。例えば、主婦が「2,000円分を買おう」と自分で暗算すると、だいたい1,400円から1,500円までしか買わないというデータが出ています。
しかし、金額がリアルタイムで表示されると2,000円までしっかり買うというおもしろいデータもあり、テクノロジーによって省人ではなくアップセルさせる効果も出ているということで、3つ目は「BIシステム」になります。
取り扱い商品例②
4つ目は「モバイルオーダーシステム」です。我々は今、「ZEROレジ」というかたちで、自社のコアサービスとして提供しています。
5つ目は「配膳ロボット」です。6つ目は「オンライン接客」ですが、ずっと移動体で提供してきたこともあり、我々も自社サービスを開発しているところです。
SDGsの取り組み
我々は上場企業として、SDGsの取り組みについてまったく発信してきませんでした。今回プラットフォームを立ち上げるにあたり、各ソリューションがSDGsの達成に向けてどのような効果を及ぼすのかについて有識者と検証しながらタグを付けていき、それを広めていく一翼を担うことを考えています。ここまでが事業の概要です。
中期戦略方針
投資についてご説明します。中期の投資方針です。まず海外アライアンスですが、先ほどからお伝えしている北米・イスラエル・中国等のリテール関連の最先端企業とのアライアンスを強化していきます。
次に、コアサービスへの投資です。現状は、「モバイルオーダー」「オンライン接客」をはじめとしたいくつかのコアサービスを自社で持ち、それらの開発や拡充を行っていきます。
その他に、組織の強化によるプロフェッショナル人材の獲得や、PR・ブランディングに投資していきます。
中期計画と投資戦略
今回、特殊な4ヶ年で出していますが、我々としてはまず先ほどの4つに投資していきたいと考えています。特にコアサービスや人材への投資にはかなりお金をかけ始めています。
売上と利益はここまでずっと右肩上がりで伸ばしてきました。移動体も1つの方法ではありましたが、リテール全般に広めるにあたってこちらへの投資を意思決定していますので、本当に申し訳ありませんが、直近ではもう利益は出しません。積極的に投資をかけていき、シェアを取りに行く動きをとります。
主要KPI
主要KPIです。「利益が出ていない中で、何を見て判断したらよいのか」というところですが、グループ全体のKPIとして一番わかりやすいのはサービス導入事業所数です。導入店舗数とほぼイコールと思ってください。
また、プラットフォームがどのくらいリードを獲得しているか、コアサービスである「ZEROレジ」がどのくらいの店舗に導入されているかをご覧いただければと思います。オンライン接客の蓄積データ量は後ほど長期構想でご説明します。
海外アライアンス戦略
実際の海外アライアンスです。まだ全部とアライアンスしたわけではなく、リテールテックの世界の主要100企業と言われているところになります。今は積極的にドアノックしたり、つないでもらいながらパートナーを広げているところです。
日本の小売にマッチしたソリューションは、まったく違うイスラエルやオランダの企業、中国の企業かもしれません。
テクノロジーはなんでもよく、大事なのは我々が常にクライアントや現場と向き合って、日本のリテールを元気にしていくためのテクノロジーについて考えていくことだと思います。そのために幅広に設けています。
コアサービスへの投資
コアサービスへの投資ですが、こちらが投資としては一番お金がかかってくるところになります。先ほどご説明した我々の「ZEROレジ」のモバイルオーダーシステムは、開発投資や広告等々の投資があります。
オンライン接客はシステムを開発してリリースしますが、システム売りというよりはプロフェッショナルなオンライン接客を行うセンターもだいたいセットで提供していますので、人への投資がかかってきます。その他はシステム開発です。
コアサービスの紹介 ZEROレジ①
「ZEROレジ」はご存知の方もいるかもしれません。一口にモバイルオーダーと言いますが、店舗内でオーダーできるだけのものから、決済機能の付いたものやデリバリー機能まで付いているものがあります。
他にも、使えるペイメントが違ったり、POSと連動できるなど、モバイルオーダーと一言で言ってもシステムの違いがかなり広いです。
もし興味がありましたら、我々のリテールテックプラットフォームでは機能別に明確に記載していますのでご覧ください。その中でも「ZEROレジ」はけっこう長い間開発しているため、機能リッチと自負しています。
コアサービスの紹介 ZEROレジ②
先日トランドールと、ほっかほっか亭に導入しました。いろいろな声をいただいていますが、前半からお伝えしているとおりテクノロジーの会社ではないため、SaaSを作ってとにかく数を広めていくよりは、みなさまに寄り添って改善していきたいと考えています。
今回の件に関しても、キャッシュレスが進んでいるクライアントの「顧客との接点がまったくない」「顧客のデータが一切取れなくなった」という声や課題感から入っています。
それらに対して、みなさまのアプリをきちんと開発して、会員をしっかり作っていきながら、裏側にモバイルオーダーを置くことをしています。
キャッシュレスによってピッとタッチして終わりではなく、しっかり登録してもらって、CRMを作り、お客さまとのリレーションの設計もきちんとお手伝いした上で、モバイルオーダーを利用していただくかたちです。あくまで本部の課題や現場の課題に寄り添いながら、必要なテクノロジーを探していくスタンスです。
これがよいか悪いかというところもありますが、決めたSaaSをとにかく拡販するというよりは、現場に丁寧に寄り添いながら広めていき、しっかりと根ざしていくというCSを大事にしています。
コアサービスの紹介 オンライン接客
オンライン接客です。実はすでに移動体向けにセンターを立ち上げており、もっと最適化していくために自社で完全にオンライン接客のシステムを作っています。秋にあらためてリリースする予定です。
また、オンライン接客システムと、もともと持っていた我々の「mimik(ミミック)」という表情解析と音声解析の技術を組み合わせると、そこでのやり取りによって表情のデータや音声のデータを数字で見ることができたり、「なぜなかなか成果が上がらないのか」「なぜお客さまのクレームにつながったのか」などを振り返ってフィードバックすることもできます。
このような解析ができることが、このシステムの強みになっています。例えば、今回使っている「Zoom」や、各社のオンライン接客などのシステムの会社はありますが、システムというよりは、オペレーションやコールセンター、オンライン接客センター自体をしっかりと社内に作り込むコンサルティングを行うところが強いサービスです。
コアサービスの紹介 リモートボックス
リテールと少し毛色が違いますが、昨年の新型コロナウイルスによる働き方改革の中で出てきた事業です。今はリモートワークがけっこう進んだものの、自宅でなかなか仕事ができない中堅企業や大企業の方たちは働く場所がありません。
コワーキングスペースやカフェなどはありますが、コワーキングスペースはオープンな場所で、大企業の機密事項が盛り込まれた会議はできません。カフェも最近はどんどんオンラインでのミーティングを断るようになってきています。
そのような中で、都内で「1メートル×1メートル」くらいのきちんと密閉された個室空間で、セキュアなかたちで低価格で仕事ができる場所を我々も求めていました。
「それを作ってしまおう」ということで、工務店といろいろな協議を重ねながら作りました。鍵はもちろんリテールテックの技術で、全部遠隔操作できるスマートキーになっています。このように、完全に無人オペレーションでできる個室型のワークスペースを提供しています。
先日、新宿駅南口のすぐ近くに導入しました。今は、空いている遊休スペースのオーナーやサービサーと一緒に広めているところで、来月も2ヶ所から順調に受注いただいています。リテールテックの中では、遊休スペースのアップセルというサービスとして取り扱っているものになっています。
ピアズグループ一覧
コアサービスを取り扱っているのが、我々のグループ子会社です。
組織への強化
組織への強化です。今プロフェッショナル人材を募っており、私や代表をはじめとして全力で投資しています。お金もですが、労力の投資も大きいところになっています。
PR・ブランディング
我々はずっと移動体業界でニッチな中にいましたので、クライアントの顔が思い浮かぶ中でしっかりと成果を上げて、関係性を築いていくというやり方をしており、あまりPRの必要がなかったため興味がありませんでした。
しかし、今回からは幅広くリテール全般で戦うにあたり、メディアに声をかけながらリテールテックプラットフォームの立ち上げや新商品説明会を行うなど、PRの発信を全般的に強化しています。こちらは我々にとって、けっこう大きな転換になる予定です。
中期営業利益目標
今伸びている事業は、今の計画でもある程度の成長は利益ベースで可能ですが、少なくともこの2年から3年に関しては、「我々はリテールテック領域の拡大のために投資していくので、利益を出しません」とお話ししています。
投資家のみなさまとしてもいろいろな捉え方があると思いますが、我々としてはこのような考えです。その先で柱として確立した時には、必ずみなさまにお返しできるように考えていますので、ぜひ興味のある方は期待していただけたらと思っています。
無人化が進む世界
一部長期構想ということで、まだ構想の段階にありますが、研究しているアイデアをお話しします。先ほどお伝えしたオンライン接客のシステムは常に動いているため、今日現在もオンライン接客をたくさん行う中で、音声や表情のデータは蓄積されています。
これらを活用して、おもてなし接客のエンジンのようなものを作ることが大きな構想としてあります。
どんどんロボット化したり無人化していく中でも、我々日本人としての情緒的なサービスはどこまでも文脈に流れていますし、このようなものは人間の本質的なものですので、なくならないと思っています。それを適用していきたいというのが長期における大きな構想です。
おもてなしテック
我々は「おもてなしテック」と勝手に命名しました。まだ構想の段階ですが、ニーズは広くあります。
それこそ「すばらしいどこかのおもてなし」をただ形にして輸出するのではなくて、「おもてなし」という文脈をきちんとデータ化することによって、各国のカルチャーにマッチさせながら適切な接客AIに変えていくことは可能性としても十分にありますし、日本が輸出できるすばらしいコンテンツの1つだと思うのです。
そこを形にしていきたいというのが、ずっと店頭にいる我々だからこその長期的な思いとしてあります。事業計画というよりは本当に構想の段階ですが、このようなものを目指しています。
最後に...
移動体をずっと主軸に行ってきましたが、今後もその価値をしっかりと提供しつつ、リテール全般に幅を広げて価値を提供していけたらと思います。さらにその先へは「おもてなしテック」をはじめとした、未来都市実現を促進するような企業になっていきたいと考えています。
中期事業概要まとめ
その上で、リテールテックNo.1企業を目指していきたいと思いますので、よろしければ応援のほどよろしくお願いいたします。
質疑応答:ほっかほっか亭のモバイルオーダーの導入数について
坂本慎太郎氏(以下、坂本):ほっかほっか亭のモバイルオーダーの「ZEROレジ」についてです。今のキャッシュレスの流れや新型コロナウイルスの対応、またスマホを含めてインフラがかなり整ってきたため、これから非常に盛り上がると思っています。
現在600店ほどに導入されていますが、ここまでくると全店に導入されると思っています。ここの壁はFCの店舗で進んでいないからなのか、それとも何か問題があるのかを教えてください。
ほっかほっか亭は、確か全部で1,000店ちょっとですよね。
二階堂:そうですね。ですので、段階的に行っているところです。
坂本:「時が来ればいきますよ」ということですね。
二階堂:そうですね。ほっかほっか亭もですが、他の提供企業においても、このモバイルオーダーは月額のSaaSの使用料とは別に従量課金となっています。ですので、モバイルオーダーという文化が広まれば広まるほど、1店舗あたりの単価が上がってきます。
このカルチャーはこの1年でだいぶ変わってきましたし、どこかで爆発すると考えています。また、大手との場合は、そのエリアで「モバイルオーダーを始めました」という広告を打つたびに単価が上がります。
坂本:非常に便利ですよね。他社の事例だと思いますが、スターバックスですごく並んでいても、モバイルオーダーを入れると一番前に割り込めますよね。マクドナルドもそうですが、これはもっと進むべきだなと僕は思っています。
質疑応答:NTTのドコモ買収の影響について
坂本:NTTのドコモ買収はけっこう大きな出来事だったと思いますが、御社のビジネスへの影響を教えてください。
二階堂:我々はずっとキャリアの課題や現場の課題に根ざしているため、実はこのような大きな変化は非常にビジネスチャンスだったりします。
それこそ少し前は、例えば菅首相が元官房長官だった時代に「携帯の待ち時間とか不適切販売をなんとかしろ」と、内閣の1つの主要コンテンツで出していました。それによってキャリアが動くとなると、現場に根ざしつつご相談いただけるため、我々としては非常にチャンスであり、大きな変革のタイミングとして捉えています。
今回の再編に関しても、実はかなり商機があります。お伝えできることはまだ少ないのですが、取引の幅も広がり始めているのが現状です。
質疑応答:業績に関するトピックスについて
坂本:業績についてお伺いします。今日の資料ではどちらかと言いますと事業紹介の部分が主だったと思いますが、第2四半期決算の状況と年度末までの見通しも含めて、トピックとイメージがありましたら教えてください。
二階堂:今回数字としては下方修正していますが、1つ大きなところはリテール関連の投資になります。既存事業においては、昨年、我々のブームだったキャッシュレス推進事業は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。通信キャリアの「〇〇払い」「〇〇ペイ」の推進をお手伝いする事業ですが、実はお店に行って営業ができなくなったため、急速に止まっています。
しかし、代わりに本業のコンサルティング事業に関しては、オンライン接客やオンライン化の対応がかなり進み、収益率はかなり改善している状態です。
坂本:「キャッシュレス推進の部分が止まる」とのことですが、やめる方向に転換したのではなく、新型コロナウイルスが収まって営業活動ができるようになれば再開するというイメージでしょうか?
それとも、どちらかと言いますとリテールテックのほうにどんどん注力していくというかたちでしょうか? このあたりのボリューム感を教えてください。
二階堂:現状も舞台がまったくなくなったわけではありません。飲食店のアカウントや関係性としてもけっこう重要な事業になっていますので、一定の収益はあります。
導入においてはなかなか伺えないところがかなり歯止めになるため、数字が大きく上がらないところはありますが、飲食店界隈のリレーション作りはしっかりと行っていく予定です。
もちろん新型コロナウイルスが明けてからですので、ドライブするという可能性もまだまだ十分にあると思っています。
坂本:そこが残されているというのと、柔軟に対応するということですね。
二階堂:そうですね。
質疑応答:リテールテックへの参入について
坂本:リテールテックの参入について、時間を割いてお話ししていただきました。分野としては通信から小売・飲食サービスに移ると僕は理解しているのですが、人を使うような業態なのか、また、他に考えられる分野はあるのでしょうか?
二階堂:まさにリテールテックですので、「小売プラス飲食」以外の業態というよりは、あくまでもその店舗に関連したチャネルで考えています。
なぜかと言いますと、我々のナレッジはお店や小売関連の最適化、コンサルティングがコアになっていますので、動いていく中で「拡大していくのであればここの市場だろう」というのが見えてきたところです。
「このようなオペレーションやこのような商材だから、ECに転換していきましょう」「そっちに主軸を変えていきましょう」というのも、もちろんコンサルティングのサービスの中でよくあることです。
あくまでも店舗から入っていくというのは、我々の1つの勝ちパターンと言いますか、戦い方だと思っています。
質疑応答:通信業界で培った知見の活用について
坂本:通信で培った知見や経験を、どのように活かすのかを教えてください。
二階堂:1つは、通信業界にいたことによって、かなり最先端のテクノロジーやサービスへの理解が一定以上あります。例えば、携帯ショップのスタッフはそこはあまり詳しくないため、売れるように教えたり、使えるように教えることを我々はずっと得意としてきました。
ですので、テクノロジーへの理解と翻訳が我々のコアです。もちろん本質的には日本のリテールの課題でもありますので、携帯ショップのスタッフに限りません。我々は教える人として育ててきましたが、使う人を育てることも十分に可能と考えています。
質疑応答:リテールテックの収益化について
坂本:リテールテックに投資をかなり割いていくということですが、回収期はだいたい2025年で、この時の営業利益はだいたい8億円から10億円とあります。リテールテックがどのくらい収益化していくのかについて、4年後から5年後のお話ですのでなかなか難しいと思いますが、イメージを教えてください。
二階堂:こちらに関しては、我々もけっこう手探りな計画ではあったりします。現状では、各テック系サービスに関してもかなりアライアンス網は広まってきていますが、国内で行うには、まずPoCからの場合が多いのが正直なところです。その中で、我々が狙うのは「ZEROレジ」モデルです。
そのようなソリューションを代理店やOEMで活用していただいて、日本で一定規模や一定の機会を確信したタイミングで投資し、作るか、買うか、組むかというかたちで自社サービス化します。このような瞬間に利益率は跳ね上がります。
大企業モデルでは現状のコンサルティングフィーのみになるため、そこまで大きな収益はなかなか難しくなってきます。
「ZEROレジ」モデルではないですが、OEMで世界中のいろいろなテクノロジーを扱っていきます。「これが一番日本の市場にフィットする」という確信を最初に得たのはモバイルオーダーでしたが、次の商材をどんどん見つけていき、そこに集中投資してコアサービスを増やしていった先が、我々の目指すべき姿の1つです。
質疑応答:副業・兼業の解禁について
坂本:御社は副業や兼業を解禁していますが、御社のビジネスモデルとコンサルタントの知見をもとに、「何かビジネスをやろうかな」という人がいて、新しいビジネスが生まれるのではないかと思っています。すでにユニークなことを行っている方はいるのでしょうか?
二階堂:実際、スペシャリストと言われる人間は、どちらかと言いますと社内のコンサルタントがなっていくというよりは、我々の「事業責任やマネジメント責任を持たないで、現場に集中してくれ」というプロフェッショナルを採るためのシステムです。
そのような意味では、それこそ事業を行っていたり、「自分でやりたい」という山師の人間はわりとゼネラリストにいます。このあたりの人間は、成果を上げたらどんどん子会社化して事業を持たせていきます。
坂本:よくあるものですね。
二階堂:結果的にそうなっていますね。
質疑応答:世界中の優れたテクノロジーの探し方について
叶内文子氏(以下、叶内):世界中の優れたテクノロジーをどのように見つけているのですか? 例えば、「リテールテックJAPAN」に出展している企業では、大手の子会社や同業他社の方がアドバンテージを取っている場合が多いのではないかと思います。
二階堂:すばらしいご質問をありがとうございます。こちらに関しては、正直、国内の情報で得られるとはまったく思っていません。完全に海外のベンチャーファンドなどのネットワークを持っている方たちと一緒に動いています。
イスラエルや北米などにおもしろい企業が数多くあるため、そのような方々と日々お話ししています。最近の悩みは時差が辛いことくらいです。
北米時間に合わせて朝5時や6時にミーティングを設定して、仕事をして、9時くらいになると日本が始まるため、なかなか大変です。そのようなかたちで動かしています。
坂本:おもしろいですね。日本では接客や小売、リテールテック、おもてなしなどいろいろありますが、イスラエルは特に技術的なものがけっこう発達している部分も多いと思います。そこから得られる知見は多いのですか?
二階堂:多いですね。日本がよい悪いというよりは、事実としてあることをお伝えしますと、正確な数字がわかりませんが、例えば無人店舗をフルソリューションで行うところは米国系で5社から6社、中国に2社ほど、イスラエルで1社ほどあります。
各社とお話ししていますが、こと欧米のイスラエルの方たちは「お店全体をどのように新しいフレームワークで最適化して、収益化するか」と考えます。
日本のベンチャーは資金の問題なのか、考え方の問題なのかはわかりませんが、その中の「カメラ技術の1個をやろう」「重量センサーの一部をやろう」「棚の一部をやろう」など、ニッチで戦いたがります。ですので、上段からという無人店舗のようなソリューションは、なかなか日本では生まれません。
坂本:非常に勉強になりました。御社の未来が若干見えた気がします。