アライドアーキテクツについて

中村壮秀氏(以下、中村):みなさま、はじめまして。今日はどうぞよろしくお願いします。アライドアーキテクツ代表の中村と申します。

さっそくですが、資料に沿ったご説明に移ります。こちらは概要ですが、弊社は2005年に設立しました。まさにソーシャルメディアが立ち上がった時代にできたマーケティングの会社です。企業が次の新しい時代を乗り越えていくために作られた会社だと考えています。

また、これからは国際的にマーケティングしやすくなっていく時代でもありますので、国際的にサービスを提供しています。現在の日本の拠点は1拠点なのですが、海外には6拠点あります。グループ社員数は約200名ですが、外国籍比率は35パーセント以上という会社です。もちろんソフトウェアの会社ですので、エンジニア比率は25パーセント以上となっています。

Mission

中村:今日は最初に事業の概要についてご説明し、その後に業績のお話、2021年12月期の方針、というかたちで進めます。

まずは、事業の概要についてご紹介します。スライドにあるように、弊社は「世界中の人と企業をつなぐ」というミッションのもと事業を展開しています。

新たに中期テーマを策定

中村:先ほど「創業以来、ソーシャルメディアの勃興とともに立ち上がった会社」であるとお伝えしましたが、SNSのマーケティングというのは、企業にとってはまさに「今後どうしていくのか」ということがなかなかわからない分野であると思います。これに対して、6,000社以上の支援実績があることは弊社の強みになっています。

さらに、昨今は新型コロナウイルスの影響もあってデジタルシフトが非常に加速しており、弊社の持っている実績とデジタルシフトの環境が相まっているため、中期テーマとして「マーケティングDX支援企業」としての圧倒的なポジションを確立することを掲げています。

当社が定義するマーケティングDXとは

中村:当社が定義する「マーケティングDX」についてご紹介します。スライドに「従来型のマーケティング」「マーケティングDX」と記載していますが、マーケティングの時間軸が変わったとご理解いただければと思います。かつてはデジタル広告にしろ、マス広告にしろ、プロジェクト型で考えてクリエイティブが作られてから消費者に届くまでにかなり時間がかかっていました。

しかし、マーケティングDXの時代というのは、企業と顧客がダイレクトにどんどんつながっていき、そこでコミュニケーションをとったり、コミュニティー化していったりということがリアルタイムで起こる状況になっています。したがって、その中で共感していけるような状況が必要になります。

そこで、デジタルの技術と弊社からご提供できるデジタル人材によって、そのような環境を企業に提供していくことが弊社のスタイルです。弊社のお伝えしている「マーケティングDX」というのは、ただ単にインターネットで広告を行うことではなく、デジタルの力を使って業務プロセスまで変革していくことを意味しています。

事業基盤とドメイン

中村:「事業基盤とドメイン」と記載していますが、基盤となる当社のアセットとしては、これまで10年以上も開発し続けているSaaSツールと、8年くらい提供し続けているマーケティンングの人材、デジタル人材があります。それを通じて、顧客企業のマーケティング効率を格段に向上させるマーケティングDXの支援を行っていることが弊社の事業ドメインです。

当社のビジネススキーム

中村:当社のビジネスキームについてご説明します。スライドの左側に顧客企業、右側に弊社が起こしたい状態を記載しています。お客さまはBtoCの会社が多いのですが、食品・化粧品メーカーや、最近ではD2Cなどの新しいタイプのEC企業に非常に多く参画していただいています。また、飲食業やサービス業なども弊社のお客さまになっていると考えています。

スライド右側の「当社の支援サイクル」についてご説明します。まずは消費者がファンになっていくような環境が必要です。そして今はソーシャルメディアの時代ですから、ファンが口コミを投稿したり、逆に興味を持った会社がファンに聞いたりなど、ファンの口コミを参考に新たな消費者が生まれていくサイクルを起こせる企業かどうかが重要です。今後の企業にとってはここがまさに「分水嶺」になるため、このようなサイクルを起こそうと考えています。

したがって、企業としては、社員がその企業のファンであったり、よく使われている方々がファンであったりと、口コミが漏れ聞こえていくような状況が非常に重要になってきています。

このような状況を作るにあたって、企業にとっては、お客さまの声を聞きながら経営の中に取り込んでいくことや、マーケティングのメッセージを変えること、ソーシャルメディアでも活用することなどが重要になっていきます。これまでのマーケティングの概念とは捉え方のスピード感がまったく違うわけです。

ここに対して、ただ単に自社の人材だけで取り組んでいくと非常に大変ですから、弊社のSaaSツールとデジタル人材を提供することによって、この新たな時代のマーケティングサイクルを起こしていくことを可能にしています。

事業構成(単一セグメント内の各事業名称を下記に変更)

中村:今お伝えしたSaaSツールとデジタル人材によるソリューション提供について、もう少しご説明します。スライドに「SaaSビジネス」と書いてある部分がSaaSツールの事業であり、「ソリューションビジネス」と書いてある部分が人材に関する事業となっています。

これらの中には4つの事業体があります。スライドの左上が国内におけるSaaS事業、左下がグローバル市場におけるSaaS事業、右側が国内におけるSNS・ファンを中心とした人材によるソリューションの事業、右下が中国向けマーケティングにおけるソリューションの事業となっています。

SaaSビジネスの方向性

中村:SaaSビジネスについての、これまでの経緯と方向性についてご説明します。冒頭にご説明したとおり、弊社はもともとソーシャルメディアの勃興とともに立ち上がりましたが、まさにSNSマーケティングのSaaSツールからスタートしています。

その後、広告の制作に対して「ユーザーの声を活用したほうがよい」ということがわかってきまして、広告制作のプラットフォームを展開しました。さらに、弊社ではユーザーの声を「UGC」と呼んでいるのですが、そのUGCを活用できるようなキャンペーンを行いました。今後は動画や3Dのものを簡単に自動生成できるようなツールやサービスを拡充していきます。スピード感のある時代のマーケティングに活用しやすいSaaSツールを提供しているということです。

そして、スライドの左上が国内サービスの商品ラインナップになっており、右下が海外向けのサービスになっています。

2021年の重点テーマとしては、当然、新規顧客の獲得や既存サービスの機能拡充にも取り組むのですが、新サービスも引き続き開発し続けていますし、既存のお客さまに使っていただいているツールが1つあったとしたら、2つ、3つと使っていただくことにも取り組み、顧客の単価を上げていくことを進めています。

ソリューションビジネスの方向性

中村:次に、人を中心としたデジタル人材を活用したソリューションビジネスについてご紹介します。弊社はもともと、SNSの広告運用や「Twitter」のアカウント運用といったSNSの投稿など、SNS時代に適合したクリエイティブな制作ができるSNS人材を抱えており、それによって企業を支援していたところから始まっています。その後、中国向けのプロモーション支援を開始しました。

また、クリエイティブ・ディレクターというのは、企業の広告クリエイティブの制作部門のトップであり、チーフクリエイティブオフィサーとも言いますが、そのようなクリエイティブ・ディレクター自体を派遣していくことも始めています。

さらに、ファン育成支援ということで、後ほどご説明しますが、世の中のマーケティングの概念が、今後のマーケティングにおいてはファンが非常に重要である、という方向性にシフトしてきています。そこに対するサービスも提供しています。

2021年の重点施策としては、これまで培ってきた弊社のさまざまなソリューションにおいて新たなものを提供していこうということで、ネクストバッターズサークルという会社を4月に立ち上げます。加えて、今後もマーケティング人材やインフルエンサーの拡充・育成を続けていきます。

【SaaS】ターゲット領域

中村:先ほどお伝えした4つの事業についてご紹介します。まずはSaaS事業です。国内に向けたSaaS事業でターゲットとしている市場としては、マーケティングDXが全体にかかってはいるのですが、弊社としては、特にその中でもEC、デジタル販促、制作の3領域をターゲットとして注力しています。

【SaaS】サービス構成

中村:その中で、クリエイティブとコミュニケーションをより効果的にできるようなSaaSツールを提供しています。まず、クリエイティブに関してですが、SNS時代では「Instagram」などでユーザーが自社のサービスに対してどんどん投稿してくれます。投稿されたクリエイティブを広告に活用すると親近感が湧くため、実は企業メッセージが強すぎるものよりもユーザーの生の声のほうがよりリアルに伝わるということで、非常に優良なクリエイティブとなりました。

クリエイティブの方向性として、これまでは「企業が広告を制作する」という考え方でしたが、現在は、勝手にどんどん湧き起こってくるユーザーのボイスを今後興味を持つであろうお客さまに届けていくことが重要視されるようになってきました。このような部分において、弊社はさまざまな経験とSaaSツールをブラッシュアップしてきている状況です。

スライドの左下にある「LetroStudio」では、我々のお客さまから集まっているUGCや、さまざまなテンプレートを活用することによって、企業の動画を簡単に制作できるツールを提供しています。

次に、スライド右側のコミュニケーションですが、「モニプラ ファンブログ」は、ブログや「Instagram」などの30万人以上のユーザーに商品のサンプリングを行ってもらうということを行っています。

また、スライド右下の「echoes」は、「Twitter」や「Instagram」上でキャンペーンを実施できるツールになっています。さまざまなソーシャルメディアにおいてクリエイティブを展開したり、コミュニケーションが活用できるようなSaaSツールの提供を行っています。

【SaaS】顧客数・平均単価

中村:弊社のマーケティングDXにおけるSaaSツールは、今後もまだまだ分野が広がっていくと思うのですが、とにかく企業のマーケティングDXを支援できるラインナップを揃えていくことを重要視しています。

2020年は、758社のお客さまに861のサービスを利用いただいており、2つ以上のサービスを利用している企業も増えてきています。しかし、まだまだであると考えており、今後はクロスセルに力を入れていきたいと考えています。

結果として、1年間の平均の顧客単価は約77万円ということで、マーケティングDXのSaaSツールを非常にリーズナブルな価格でご利用いただける環境を用意しています。

【SaaS】粗利売上推移・今期方針

中村:こちらは四半期ごとの売上の推移です。昨年の第2四半期は、新型コロナウイルスの影響で営業がかなり難しい状況ではあったのですが、その後、SaaSツールやデジタル化の流れが一気にきました。メーカーやECの会社もそうですが、サービス業でも「お店で待っているだけではなく、積極的に『Twitter』でつながっていこう」といった風潮が強くなり、第3四半期以降で大いに伸びてきています。

【海外】サービス構成

中村:次に、海外SaaS事業についてご説明します。こちらは欧米のゲームやアプリの会社が主要顧客になっています。彼らのゲームやアプリの広告制作は非常にクリエイティブレベルが高く、3Dなどを活用しています。

弊社は世界中に広告デザイナーや編集者を抱えていますが、そのようなグローバルな制作デザイナーたちが、弊社のSaaSツールを活用しながら企業の広告を制作しており、高品質低価格のものを企業に提供できています。現在、こちらは非常に好調に推移しています。

【海外】粗利売上推移・今期方針

中村:こちらは売上の推移です。このマーケットに対しては、さまざまな業種に展開したり、エリアに展開したりしていたのですが、弊社のサービスに適合する業界がしっかりとわかってきており、PMFができた状況であると感じています。

欧米の場合、第1四半期に新型コロナウイルスの影響が色濃く出たのですが、それ以降は右肩上がりで成長しており、いよいよ黒字化の段階になっています。今後は、さらにサービスを強化していき、3D動画の供給能力を高めていきたいと考えています。

【ソリューション】サービス構成

中村:次に、人材における国内の事業であるソリューション事業についてご説明します。「SNS」と「ファン」が弊社のキーワードになっているのですが、昨今は「新規顧客の獲得」がマーケティングの中心にありました。「新規顧客の獲得」と言っても、国内の人口は頭打ちになってきていますし、人々は口コミを重視した消費活動に入ってきています。

そうなってくると、実はマーケティングにとっては、「新規顧客をひたすら探していく」という考え方よりも、既存のファンにいかに正しく自社の想いや強みを伝えて、いかに深く企業のことを好きになってもらうかという部分が一番大事なのではないかと思います。弊社もそのように啓蒙していますし、周りの企業もそのような方向性になってきました。

その中で、弊社はファンベースカンパニーという持分法適用関連会社を設立し、まさにこのファンベースを研究して広めています。どうやってファンを増やしていくのか、また、どのようにファンとコミュニケーションをとるのかを、企業と一緒になって取り組んでいます。

次にスライド中央のアライドアーキテクツについてです。こちらはずっと取り組んでいる事業ですが、ファンを作っていくという考え方とソーシャルメディアは非常に相性がよいです。15秒、30秒のテレビCMでは伝わらなかったこともありますが、「YouTube」や「Twitter」では、頻繁かつ深いコミュニケーションが可能になりました。

例えば、SNSでフォローしていただいたファンに、「このような工場で作っています」「工場ではどのようなことを大事にしているのか」などの情報を届け、たまに「YouTube」の長い動画を見てもらう、といったコミュニケーションが非常に有効になってきています。これは長年行っていますので、ここと先ほどのファンベースという考え方を組み合わせることによって、非常に相性のよいサービスを提供できる状況になっています。

また、各企業が「ソーシャルメディアやファンをベースとしたマーケティングをやりたい」という状況になってくる中で、人材の提供・確保がまったく追いつかない状況であると考えています。総務省の「2025年に向けてDXを進めよ」という流れの中で、もちろんさまざまな業界がDX化しているわけですが、マーケティングの領域は、その中央にあると考えています。つまり、人材を発掘し、提供できるようなかたちを模索している状況です。

【ソリューション】【連結子会社】AiCON TOKYO:クリエイティブ・ディレクターのシェアリング

中村:こちらはクリエイティブ・ディレクターのシェアリングということで、人材の提供の中で特にクリエイティブのトップの層の方々を取り込んでいます。例えば、ユニクロが佐藤可士和さんとタッグを組んでいると思うのですが、実はそのようなことをしたい企業は山ほどいます。ただ、どのようなクリエイティブ・ディレクターが自社に合うのかはなかなかわからないのですよね。

弊社に石渡というクリエイティブ・ディレクターがいますが、彼を中心としたクリエイティブ・ディレクターを比較的安価にシェアリングできるモデルを提供しています。

【ソリューション】【関連会社】ファンベースカンパニー:ファン育成支援

中村:先ほどご紹介したファンベースカンパニーがこちらです。まさに「ファンベース」という概念を開発して提供していくかたちなのですが、ファンをベースとして、売上高や事業価値を中長期的に高める考え方をしています。

スライドの右側にありますが、昨年に『ファンベースなひとたち』という書籍を発行しました。こちらも大変ご好評いただいています。

【ソリューション】デジタルマーケティング人材のシェアリングを行う新会社(4月1日設立予定)

中村:先ほどお伝えしたクリエイティブ・ディレクターのシェアリング以外にも、日々のソーシャルメディアでの対応などについて、ある企業が「自社の社員に取り組んでもらおう」と思っても、ソーシャルメディアには、新しい環境がどんどん生まれてくる中で最新情報になかなかキャッチアップできない環境があると思います。

弊社のグループであれば、最新の情報が常にアップデートされている中でトレーニングされており、かなり多くの顧客を体験していますので、どのようなコミュニケーションが今のその企業にとって大切なのかがわかります。

このような方を弊社の中で育成し、企業が使いやすい準委任契約というかたちでご提供するモデルとなっています。こちらは4月から開始しようと考えています。

【ソリューション】粗利売上推移・今期方針

中村:結果として、先ほどのSaaS事業と同じように、昨年の第2四半期に一旦へこんだのですが、それを一気に持ち返しています。ソーシャルメディアに対しての予算シフトが増えてきたと感じています。2021年は、先ほどからお伝えしているようなデジタル人材の不足に対しても、育成、採用、提供をどんどん強化していきたいと考えています。

【中国】サービス構成

中村:最後に中国進出支援事業についてご紹介します。スライドの左側に日本企業と記載しているのが、弊社の主要顧客の業種です。日用品、化粧品、健康食品とありますが、中国ではフードやベビーなども日本の商品が人気となっていると考えています。特に今は化粧品が人気です。

スライドの右上をご覧ください。中国は日本にも増してSNS大国であるということで、「Weibo」 「WeChat」「RED」「bilibili」「Douyin」「Kuaishou」 などのプラットフォームがありますが、弊社グループでは、こちらのすべてのプラットフォームに適応したユーザーも多く獲得しています。

ソーシャルメディアのユーザーに動画を作ってもらう状況では、中国で影響力のある日本在住のインフルエンサーの中から、昨年は1度に4,000万回再生されるような「VSTAR JAPAN」登録のYouTuberも生まれています。

また、「WEI Q」は、中国の非常に大きなSNSである「Weibo」の関連会社である、北京の会社のサービスになっておりますが、日本の独占契約を持っています。こちらは100万人のインフルエンサーを獲得しており、その中で「この企業の商品はどのインフルエンサーがよいか」という解析ができます。そのようなことを通じてキャスティングしていくことも可能になっています。

さらに、日本でも最近ライブコマースが注目されていますが、中国ではすでに非常に活況になっていますので、ライブコマースも活用しています。

また、スライドの中央下側に、口コミ生成「BoJapan」がありますが、こちらは日本最大級の在日中国人の女性コミュニティになっています。約3,000名が所属しておりますが、商品に対するレビュー力が非常にある方々です。こちらも日本発のブランドとして、在日中国人がどのような感想を持つのかということに大きく活用しています。

【中国】ラオックス社との事業提携(3Q:7月〜)

中村:昨年、ラオックスと提携しました。弊社はマーケティング、ラオックスは販路というかたちで、ラオックスの親会社である蘇寧グループと組んで、日本から越境Eコマースを提供しています。蘇寧グループは、中国における非常に大きな小売業です。

この蘇寧グループ、ラオックスの販路で越境Eコマースを行いつつ、非常に大きな反響が出てきたら、リアルの流通も増やしていくということで、ワンパッケージでできるものを提供しており、好評いただいています。

【中国】粗利売上推移・今期方針

中村:売上高の推移です。でこぼこはあるのですが、2018年以降は右肩上がりが続いています。特に昨年はインバウンドの需要が消滅してしまったのですが、一方で越境Eコマースが活況でした。2020年はなかなかシビアな年でしたが、弊社のサービス力を受け入れていただいたことで、新型コロナウイルスの中でも売上を伸ばすことができたと考えています。

【業績】2020年12月期 損益計算書サマリー

中村:直近の業績に移ります。2020年12月期の損益計算書サマリーということで、売上高・粗利売上ともに前期比をオーバーしています。弊社は特に粗利売上を重要視していますが、粗利売上は23億7,100万円、前期比9.2パーセント増という状況になっています。営業損益に関しても2億9,800万円の営業利益となり、前期比でプラス4億5,500万円と、大幅に成長しました。

【業績】重要な経営指標(KPI):粗利売上

中村:今ご紹介した粗利売上の考え方についてです。売上高から直接原価を引いたものが粗利売上となっていますが、こちらは弊社の純売上高に近くなります。広告などが入ると原価は高くなってしまい、売上と利益がズレる要因になるため、そのようなものを除外した粗利売上を重要なKPIとして設定しています。

【業績】事業区分別KPI推移

中村:これは、先ほどお伝えした4つの事業すべてを足し合わせたグラフになっています。我々は「プロダクトマーケットフィット」と呼んでいますが、昨年の第2四半期まで、これからもしっかり伸ばせる状態をつくるためにさまざまな開発や試行錯誤をしていました。

しかし、アフターコロナに向かって弊社のサービスが受け入れられてきており、一気に成長が始まりました。そして、すべての事業において成長が始まっています。特に国内のSaaS事業が売上としては一番大きくなっています。

【業績】粗利売上・コスト推移

中村:こちらは、先ほどご説明した粗利売上とコストの推移ですが、グラフの赤い線から点線を引けば営業利益、営業損失となります。昨年は粗利がグーッと伸びてくる中でコストをコントロールできており、しっかりと投資した中でコントロールができていると感じています。

収穫逓増モデルのインターネットの事業は、プロダクトマーケットフィットするまでのコストがけっこう高いですが、粗利売上がガーッと伸びていく中でもコストの推移はそこまで増えないモデルだということが立証できてきたと考えています。

2021年戦略方針

中村:2021年12月期の方針についてご説明します。先ほど「マーケティングDXの支援企業として圧倒的ポジションを確立する」とご説明しましたが、2021年はその第1ステージと位置づけています。

2021年は、先ほどご説明した「SaaSの強化とデジタル人材の拡充」を徹底的に実施することによって、さまざまな企業が取り組もうとしているマーケティングDXを支援できる体制をしっかりつくりたいと考えています。

今期業績予想

中村:2021年12月期の予想について記載しています。売上高46億2,000万円、前期比プラス10.2パーセント、粗利売上27億円、前期比プラス13.8パーセント、営業利益4億円、前期比プラス33.9パーセントといった数値を組んでいます。

マーケティングDX支援企業として更なる成長ステージへ

中村:そして、「マーケティングDX支援企業として更なる成長ステージへ」進んでいきます。ありがとうございました。

質疑応答:SaaSツールの契約形態について

坂本慎太郎氏(以下、坂本):おそらく個人投資家が一番興味があるところだと思いますので、まずは御社の足元の業績回復の原動力であったSaaSについてお伺いしたいと思います。

SaaSツールは平均で約77万円の単価ということですが、契約形態は「契約するとその会社の社員であれば使える」という、アカウントのようなかたちなのでしょうか? それとも部署ごとの契約や一人ひとりに紐付いているかたちなのでしょうか? このあたりがどのようなかたちになっているのか教えてください。

中村:SaaSでよくある、シート数のような考え方をご想像されたのだと思うのですが、マーケティングのSaaSは比較的そのような考え方にはならないと思っています。ある程度固定費がある上で、できるキャンペーンの数やつくれる動画の数などが変わると思います。

また、追加機能を使うのに料金を追加したり、Eコマースで売れた分をチャージしていく従量課金など、サービスによって少しずつ違うのですが、利用できる人数において、というかたちではないと思います。

坂本:非常にわかりやすかったです。おそらくみなさまもほかのサービスのイメージが湧いたかと思います。従量課金の部分もあるということで、単純なものではないということですね。

質疑応答:SaaSツールの相乗効果について

坂本:SaaSツールにおいて、1社で複数のツールを使う会社があるということでしたが、このツールは横断的に使われるものなのでしょうか? また、相乗効果もあるのですか?

中村:複数のツールを使う際のシナジーについてのお話ということでしょうか?

坂本:おっしゃるとおりです。

中村:実はシナジーはかなりあります。例えば、企業が新たな商品をどんどん出していく場合、ユーザーには利用体験がありません。そのため、サンプリングしてしまおうということで、スライドの右上にある「モニプラ ファンブログ」を使うと、ユーザーのさまざまな体験や感想が上がってきます。

「Letro」では、このようなものをユーザーの声としてサイトに掲載することが可能となっています。また、「LetroStudio」では、このようなユーザーのボイスを使って簡単に動画を制作し、広告に活用することができます。

非常に短期間で、しかも専門家がいなくてもできるということで、この3つを活用している企業が出てきており、相乗効果も非常に出てきています。ただ、まだそこまでしっかりとご案内できていないため、今後はそこのクロスセルに取り組んでいきたいと考えています。

質疑応答:SaaSツールの営業スタイルについて

坂本:SaaSツールの営業のスタイルがどのようなかたちになっているのか教えてください。サブスクで積み上がるとはいえ、年間1社77万円ということで、御社の営業が足で稼ぐのにはなかなか負担が大きい部分もあると思うのですが、いかがでしょうか?

一番オーソドックスな御社の営業の形態が、インバウンドのWebからの申込みなのか、それとも広告から来るのか、または代理店営業なのかなど、どのようなかたちになっているのか教えてください。

中村:Webや広告など、弊社への問い合わせは非常に多く入ります。そのような問い合わせに対しては営業メンバーが対応しています。また、マーケティングのツールにおいて「この会社は絶対に合うね」という方々に対しては、必要な情報をしっかりと提供していく中でご興味がある時に利用いただいており、非常に効率のよいマーケティングを展開しています。

また、まさに今日もウェビナーですが、このようなウェビナーを開催することによって、興味のある企業がかなりたくさん集まってきますので、この中から展開していくかたちもあります。弊社に興味をもっていただいている企業リストの中から営業をかけているかたちです。平均単価は77万円ですが、月数万円の契約から月数百万円に届く契約までありますので、非常に効率よく営業できているのではないかと考えています。

質疑応答:今後の業績のイメージについて

坂本:御社の足元の業績についてお伺いします。第3四半期は最終利益で黒字化しているということで、全体的にもかなり数字が改善していますが、粗利がとれる事業を着実に積み上げてきた成果と、今まで種まきだった部分が回収期に入られたことが要因でしょうか? また、なんらかのアクシデントがない限り、ある程度利益を確保しながら成長していくイメージで合っていますか? このあたりのイメージを共有できればうれしいです。

中村:先ほどもご紹介したように、やはりインターネットのサービスの収穫逓増モデルの部分があると感じています。このゾーンに入ると、しっかりと黒字化基調を続けられると考えています。

また、2020年については、第2四半期は新型コロナウイルスの影響があったのですが、先ほどご紹介したように、その後にマーケティングのDX化が進み、結果的には新型コロナウイルスに強い業種にできてきました。

弊社が支援するお客さまについては、やはり非常に好調な会社が多いです。例えばサービス業でも、ソーシャルメディアでファンを増やしていこう、つながっていこうとしていた企業は、新型コロナウイルスの状況になっても顧客がついてくるのですよね。このような企業の業績は好調なのですが、好調な企業ほど弊社に対する期待をますます高めています。

逆にそのようなことを行ってこなかった企業でも、「今までどおり待っているだけではしょうがないので、ユーザーとのコミュニケーションを積極的に増やしていこう」と考える企業も増えてきています。

したがって、そのような意味ではこの追い風は一過性ではなく、企業の考え方や体質が変わる瞬間だったわけです。しかし、日本の企業がマーケティングDXできているかと言うとまだまだこれからです。よって、これからしっかり伸ばせていけると考えています。

コストについても、もちろん規律ある投資はしていくのですが、アンコントローラブルに、売上とともにコストが上がってしまうことはありません。そのような意味では、2021年以降もしっかりと利益を出しつつ、大きな成長を目指していきたいと考えています。

質疑応答:業績予想について

坂本:前期の第2四半期からの業績の積み上げがそのままスライドすることや、新型コロナウイルスの状況からの改善を考えると、業績予想は全体的にはやや弱気かと思いました。今期の事業を行う上で注視しているポイント等を含めて、このあたりについて教えてください。

中村:おっしゃるとおり、前期の下期や第4四半期の粗利、営業利益の状況から、よく投資家からも「保守的なのではないのか?」というご指摘をいただいています。もちろん社内では、予算としてもっと高いところを目指しているのですが、やはり足元の新型コロナウイルスの状況や緊急事態宣言もそうですし、弊社は海外の事業も多いため、その部分の影響がいつまでどの程度続くのかについては、やはり不透明な部分もあります。したがって、一旦今回の予想の金額としている状況です。

質疑応答:中国の見通しについて

坂本:第4四半期の業績についてなのですが、蘇寧グループは販路開拓のものなのでしょうか? それとも単純なECなのでしょうか? この伸びは他のクライアントも注目するところかと思うのですが、今後、この中国部分の事業が伸びる予想はあるのでしょうか? 見通しについて教えてください。

中村:例えば、W11(ダブルイレブン)など、けっこう繁忙期があるのですよね。

坂本:「独身の日」などですよね。

中村:はい。そこに影響される部分があると思っています。もちろん、ラオックスとの効果も出てきていると思いますが、季節性はあると思います。ただ、こちらのグラフを見てわかるとおり、でこぼこはあるものの右肩上がりであると感じています。

このマーケット自体では、特に越境Eコマースは進出の仕方がライトです。例えば、中国に流通網をひらいて、支社を置いて、社員を雇って、小売店をつくってとなると、チャイナリスクを受けやすくなります。一方で、越境EコマースやEコマースを中心とした販売、ブランディングは非常にライトなかたちで中国のマーケットを攻めることができます。今後、企業の注目度はますます高まってくると考えています。

実はもともと弊社はインバウンドのマーケットが得意で、非常に強かったのです。去年の第3四半期、第4四半期にインバウンドがかなり少なくなったため、ここがまたさらに戻ってくるとよいと考えています。

質疑応答:事業全体的における季節性の影響について

八木ひとみ氏(以下、八木):中国の事業に関しては、もしかしたら季節性があるかもしれないとお話ししていましたが、全体的には売上の変調や季節性は特にないと見てよいのでしょうか?

中村:多少はあるのですが、SaaSの事業やソリューションの事業も、リカーリングレベニューといいますか、サブスクリプションレベニューの比率が高まってきているのですよね。そのようなものはあまり季節性を受けない状況には近づいてはいます。

一方で、スポット的なものは決算月に多く出やすいといった要素があるのですが、全体で見ると季節性の影響度は会社としてはかなり減ってきていると考えています。

質疑応答:ネクストバッターズサークルにおける準委任契約について

坂本:ネクストバッターズサークルについてお伺いします。まだ走り始めていない部分はあるのですが、「顧客企業との人材のシェアリングを行う」というかたちは非常におもしろいと思います。

紹介した方は何社と準委任契約を結ぶのでしょうか? コンプライアンス的に大丈夫なのか、という部分があるのですが、そのあたりの仕組みについて教えてください。

中村:弊社でトレーニングして、準委任契約のかたちとなりますが、もちろん弊社は事業として複数のお客さまへのサービス提供をずっと続けていますので、コンプライアンスの部分については、フリーランスや契約社員の方々をきちんと教育することによって防ぐことができると考えています。また、顧問弁護士などと連携し、しっかりとした安定感のある安全なサービスを提供できるようにしています。

一方で、1社だけ持っているソーシャルメディアの運用者や広告運用者がよいのかどうかということも考えた方がよいです。やはりこの業界はさまざまな環境を見ている人が強く、「このような反応があったから、このエッセンスを活用しよう」といった機動力が必要になります。

そうすると、(同じ業界の)競合(する会社を顧客として)を持つことはよくないと思うのですが、いくつかの経験知を回しながら弊社で集合知を貯めていき、それを各メンバーでフィードバックしつつ、横につながったさまざまな経験を積んでいくことで、実は最も成果が出るだろうと考えています。

八木:よい会社名ですよね。野球が好きなので。すてきな名前だと思います。

中村:ありがとうございます。

質疑応答:今後の横展開について

八木:会場の方から「『Letro』が化粧品通販の売上に大きく貢献していますが、今後はどのような分野や商材への横展開を考えていますか?」という質問をいただいたのですが、いかがでしょうか?

中村:実はD2Cと言われる、Direct to Consumerの業態の方々に非常に向いています。というのも、このような企業はまさにユーザーとのファンベースをつくっていくことを大切にしながら、ファンの方々と一体になって商品をつくっているためです。

確かにD2Cの会社は化粧品がけっこう多かったのですが、アパレルやフードなどにも展開が広がってきています。大手メーカーもD2C的に商品を開発することになってきていると思いますので、今後はユーザーと一緒になって商品をつくったり、ユーザーに体験してもらったことを広告に使ったりする流れは不可逆だと思います。

また、ユーザーも企業のメッセージだけではなく、必ずユーザーのボイスを確認しますから、「化粧品だけでよいか」と言われるとそのようなことはありません。さまざまな商品に対してレビューが活用されるようになると思いますので、幅はけっこう広いと考えています。特にD2C企業はそのあたりの意識が高いというイメージを受けています。

八木:D2Cは若者の間ですごく流行っていますからね。

坂本:そうですよね。

中村:最近、まさにそのような著名なベンチャーキャピタルからたくさんお金を集めているD2Cも出てきていますが、このようなお客さまはかなりの確率で弊社の「Letro」が入っています。