2021年3月期第3四半期決算説明会

由木幾夫氏(以下、由木):イリソ電子工業社長の由木でございます。お時間になりましたので、これより2021年3月期第3四半期の決算説明会を開催させていただきます。

まず、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、感染し、お亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げます。そして罹患されたみなさまに、心よりお見舞い申し上げます。同時に、罹患された方々の早期回復と感染の早期収束を心よりお祈り申し上げます。

さて、当社として初めてのライブ配信の説明会のため、ご不便、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、ご了承のほどお願い申し上げます。当社側といたしては、4月から社長に就任する取締役専務執行役員の鈴木、同じく4月から副社長に就任する取締役専務執行役員の武田、それから、取締役常務執行役員の宮内、人事総務部長の檜野が出席しております。

本日の説明会では2021年3月期第3四半期の決算概要、そして11月に加え再度上方修正させていただきますが、2021年3月期通期決算の見通し、そして最後に4月からの新しい社長の紹介を含めたトピックスの、3つの構成でお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。

1. 2021年3月期第3四半期 業績のポイント

まず、第3四半期の業績のポイントについて申し上げます。新型コロナの感染拡大にともなう世界的な生産活動の停止や需要低下の影響を受けて、累計の前年同期比では車載市場を中心に売上が減少し、減収減益となりました。

四半期別に見ますと第1四半期を底として急回復しており、第3四半期単独で見ますと、為替水準を同一と仮定した場合、過去最高の売上高となりました。

市場別ではセーフティー分野とパワートレイン分野が、また地域別では景気が回復しており、かつ環境対応車が増加している中華・韓国圏が四半期での過去最高値を更新しております。

セーフティ分野とパワートレイン分野に関しては従来から特に注力している分野ですが、第3四半期累計ではあわせて26.2パーセントの売上構成比となり、パワートレイン分野は前年同期比約65パーセント増と大きく伸長しています。

背景には、世界的に加速する各国の環境規制の政策の中で、ドイツやフランスが補助金を増額したり、中国で昨年中止される予定だった補助金が継続され、環境対応車の需要が高まったことが大きいと思われます。

また、そのほかに好調な市場としてコンシューマーがあります。コロナ禍での巣ごもり需要によりテレビやゲームの需要が増えていることが背景で、これらの機器向けのコネクタが増加しました。

利益に関しては、売上減少や金価格の高騰をはじめ運搬費の単価上昇、急激な需要増加にともなう在庫の減少の影響を受けましたが、原価低減と徹底したコスト削減を行ってまいりました。

結果として前年同期比で減益ですが、第3四半期単独では14.4パーセントの営業利益であり、ここでも回復してきていることが鮮明におわかりいただけると思います。

さらに申し上げますと、この第3四半期だけ見ると、先ほど申し上げた運搬費の増加と、金と銅価格の上昇で約4億9,000万円のマイナスのインパクトがあり、これがなければ、架空の数字ではありますがほぼ19パーセントの営業利益率であり、従前の高収益体質が戻ってきたと言えると思います。

トピックスですが、昨年の12月に発表させていただいたとおり、4月から社長が交代します。新しい体制となりますが、引き続き中長期的な成長を目指してまいりますので、変わらぬご支援をお願い申しあげます。新しい社長の紹介は後ほどさせていただきます。

【ご参考】各国の電動化関連政策と販売トピックス

次にご参考までですが、こちらに主要各国の2020年における自動車の電動化関連の政策と、販売台数のトピックスをまとめました。ご承知のとおり、もはや世界的に環境関連の政策は広まり、自動車業界においても電動化が大きなテーマとなっています。

おおむね2030年から2040年には各国で従来のガソリン車の販売が禁止されるので、環境対応車は急速に増加していくことが予想されます。現在は中国と欧州が中心で、中国では2020年は補助金が継続されたこともあり、前年比10.9パーセント増加の136万台販売されました。

欧州も大きな消費地でもあるドイツやフランスで補助金の増額もあり、中国を上回る年間販売台数にまで急増しています。

その他の地域でも、アメリカではバイデン新大統領の下、環境に配慮した政策がとられることが予想されますし、日本も3月からここに記載の補助金が倍の80万円に増額されたり、2050年カーボンニュートラルにともなうグリーン成長戦略の中で、電動車を100パーセントにする検討が行われています。

電池の問題など、種々技術的な課題やコストの課題はまだまだあると思いますが、電動化の流れが加速することは間違いないと当社は考え、製品開発、グローバルでの販売活動強化を引き続き行っていくことを改めてお伝え申しあげます。

2. 2021年3月期第3四半期連結業績(前年同期比)

続きまして、売上と損益の前年同期比の詳細です。売上は先ほど申し上げましたとおり、新型コロナウイルスによる影響を受けて前年同期比86.4パーセント、40億8,200万円の減収で、259億2,000万円となりました。

第1四半期は前年同期比58.9パーセント、上半期では75.1パーセントであり、回復してきていることがお判りいただけることと思います。

営業利益は前年同期比18億9,100万円の減益で、17億3,900万円。経常利益は、為替差損が2億2,400万円発生したこともあり15億8,000万円。そして親会社株主に帰属する四半期純利益11億400万円でした。

上期では僅かですが黒字化を達成し、繰り返しますが第3四半期単独では14.4パーセントの2桁の営業利益率まで回復させることができました。今期はあと2ヶ月あるので、さらなる改善を目指してまいります。

為替はドルが3円22銭の円高、ユーロが85銭の円安、元は32銭の円高となり、売上利益ともにマイナスの影響を受けました。

3. 売上高詳細(市場別)

続きまして、売上高の市場別詳細です。なお今期からは、車載市場はインフォテインメント、セーフティ、パワートレイン、その他の4つに分けた区分のみで開示とさせていただいております。

当社の主力の車載市場は売上高210億2,000万円と、前年同期比82.2パーセント、45億3,600万円減少し、構成比で81.1パーセントとなりました。3Q累計では減収となりましたが、3Q単独の売上は1Qの2倍、2Qと比べても20パーセント増と回復が鮮明になっております。

車載市場の内訳を見ますと、インフォテインメント分野は台数の影響に加えてナビの構造変化により、前年同期比75.2パーセントでした。レーダーやカメラ向け等のセーフティー分野は回復が早く、3Q単独の売上は過去最高を更新しております。

もう1つの注力分野のパワートレイン分野も同じく過去最高を更新し、前年同期比65パーセント増加となりました。この分野は、バッテリー関連や外部給電用のインバーターをはじめとして、従来のガソリン車にはなかった機器が環境対応車に搭載されています。

数年前から注力していたこともあり、欧州や中国で環境対応車が増加する中で、当社もその恩恵を得ているものと考えます。

コンシューマー関連市場はコロナでの巣ごもり需要もあり、新規テレビ向けでの生産ラインの自動化を目的とした、イリソの可動「BtoB(ボード・ツー・ボード)コネクタ」の搭載増加や、ゲーム機向けでの増加で前年同期比10パーセント増収。

インダストリアル市場は中国市場向けのFA関連機器の需要増加により、前年同期比約10パーセント増収となりました。

4. 市場別売上高構成比推移(前年同期比)

続きまして、前年同期比との比較で、市場別売上高構成比の推移を円グラフでまとめてみたものがこのスライドです。車載市場の構成比が前期が85.2パーセントだったのに対して、今期は81.3パーセントと4.1ポイント減少しました。

1Qの車載市場の構成比が76パーセントでしたので、そこと比較すると、こちらも車載市場の回復がおわかりいただけるかと思います。また前年同期と比較すると、「車載(パワートレイン)」の比率は4.1パーセントから7.8パーセントへと大きく伸びています。

車載市場のなかの売上では10パーセント近い構成なので、成長によりだいぶ存在感が出てきたと思っております。

5. 市場別売上高(四半期推移)

続きまして、市場別の半期別売上高推移です。先ほどから述べていることと内容が重複しますので、詳細は省略させていただきます。3Q単独の前年同期比を見ると、車載全体でも前期の3Qより増加しました。

車載市場の四半期単独での対前年同期比増加は2019年3月期の第2四半期ぶりなので、米中貿易摩擦やコロナからの影響からようやく抜けつつあるのかと考えています。

内訳を見ると、パワートレインは92パーセント増と好調、セーフティー分野も13パーセント増で、この2分野は四半期での最高売上を更新しております。コンシューマー市場も前年同期比30パーセントの増加と、今期はコロナ禍でのテレビやゲームの需要増加が見て取れるかと思います。

6. 地域別売上高(四半期推移)

対して、地域別の売上高推移についてご説明します。こちらも今期の1Q 、2Q比で急回復しているのがわかるかと思います。特に、中華・韓国圏では四半期での最高売上を更新しています。

ゲーム機向けなどコンシューマー市場の貢献もありますが、やはりパワートレイン分野の存在も大きいと思います。これは日本や欧州でも同じで、いずれの地域も前年同期比で増加しています。

パワートレイン分野の機器を製造している、中国や韓国、台湾、日本、そして欧州のメーカーと、しっかりと取り引きできていることが背景となっていると思います。

アメリカは前年同期比で数字上は減少していますが、為替の影響によるもので、実際は増加しています。

7. 製品別売上高(四半期推移)

次に、製品別の売上高について説明します。車載市場の回復により、当社の強みである「BtoBコネクタ」と「車載インターフェースコネクタ」が前年同期比でプラスになっていることがありました。また、「FPC」も「PCコネクタ」もコンシューマー市場の増加もあり、大きく増加しました。

8. 損益計算書(連結)(前年同期比)

続きまして、損益計算書の詳細についてご説明いたします。冒頭でも申し上げましたとおり、売上高は259億2,000万円で前年同期に比べ40億8,200万円減少いたしました。

売上が減少したことにより、原価率は前年同期比3.9ポイント増加の70.6パーセントに、販管費比率は前年同期比1.5ポイント増の22.7パーセントになりました。

ただ、上半期では原価率は73パーセント、販管費比率は25.9パーセントでしたので、それぞれ良化していることがわかると思います。以上により、営業利益は17億3,900万円。経常利益は為替差損が2億2,400万円発生し、15億8,000万円。親会社株主に帰属する四半期純利益は11億400万円となりました。

9. 貸借対照表(連結)(前期末比)

続きまして、連結貸借対照表に関してご説明します。総資産は前期末に比べて6億3,400万円減少し、600億300万円となりました。この主な要因は、受取手形および売掛金が5億7,700万円増加し、現金および預金が9億8,700万円、有形固定資産が6億8,000万円減少したことによるものであります。

負債は前期末に比べ6億1,600万円減少し、85億100万円となりました。この主な要因は、支払手形および買掛金が3億1,300万円増加し、未払金が9億9,200万円減少したことによるものであります。

純資産は前期末に比べて1,700万円減少し、515億100万円となりました。この主な要因は、利益剰余金が親会社株主に帰属する四半期利益により11億400万円増加し、配当により11億8,300万円減少したことによるものであります。

10. 設備投資・減価償却・研究開発

続きまして、設備投資、減価償却費、研究開発費につきましてご説明いたします。まず、向かって左の設備投資額でありますが、厳選して実施しているために、前年同期比で12億6,300万円減少し、37億3,600万円となりました。

中央の減価償却費は、34億6,300万円。右側の研究開発費につきましては、9億1,500万円となりました。

研究開発費は前年同期比でかなり減っていますが、これは、前期までは研究開発費で計上してきた金型などが多かったのですが、今期は試作段階での金型を量産に転用することにして資産扱いとしたため研究開発費が減少しているもので、研究開発を緩めているわけではございません。

1. 2021年3月期 計画(再上方修正)

それでは、続きまして2021年3月期の連結業績見通しについてご説明させていただきます。新型コロナウイルスによる影響で市場は大きく変化し、感染再拡大など予断を許さない状況と言えます。

ただ、そのような中でも市場の回復が予想以上に進んでいることから、11月に修正した計画を再度上方修正させていただきました。

それが、こちらになります。通期の修正計画は売上高360億円と、期首予想に対して25億円増加。11月時の修正計画に対しては15億円の増加の計画です。

利益に関しては、営業利益が32億5,000万円と、期首予想に対して18億5,000万円増加させ、約2.3倍と大幅な改善予定です。営業利益率は9パーセントの計画ですが、なんとか10パーセント以上とすべく、残り2ヶ月で徹底した原価低減とコスト削減、売上の拡大に取り組んでまいります。

最終損益も期首予想から改善が見込まれることから、配当予想も1株当たり40円から50円へと修正させていただきます。

なお、この数値の計画から第3四半期までの実績を差し引くと、第4四半期の計画がありますが、第4四半期は売上が約101億円、営業利益が約15億円となり、営業利益率は15パーセントを見込んでいます。

売上は第3四半期が108億円だったのでやや下がる予定ですが、これは昨年の8月くらいからの自動車市場で市場在庫の減少を補うための増産が一巡する見込みであることや、欧州など新型コロナウイルスの感染再拡大で見通しが一部不透明であるためです。

一方、営業利益率は第3四半期の14.4パーセントから、0.6パーセント上昇のの15パーセントを見込んでおり、コストコントロールをしっかりして体質を改善させていきます。何度も繰り返しますが、通期では営業利益率10パーセント以上を目指すべく社内一同一丸となって取り組んでまいります。

1. トピックス:社長交代(2021年4月1日〜)

最後に、3つほどトピックスを挙げさせていただきます。1つ目は、社長の交代についてです。私、由木は3月までで、4月からは現取締役専務執行役員の鈴木仁が新社長に就任予定です。改めまして、私から2015年4月に就任してからのこの6年間、みなさまには時には厳しいご意見をいただきながら、ご支援いただいたことを感謝申し上げます。

2016年6月に東証一部に上場し、2018年3月期には営業利益率が19.9パーセントと過去最高を記録し、また一部上場の頃と比較すると現在の株価は約1.8倍となりました。

一方で、米中貿易摩擦や新型コロナウイルスなどにより、500億円の売上目標は達成することができず、大変申し訳なく思っております。

4月から鈴木による新しい体制が、再度500億円の達成、そしてモットーである「顧客価値を創造する100年企業」の実現に向けて力を尽くしてまいりますので、引き続きご支援のほどをよろしくお願いいたします。ここで、せっかくの機会ですので新社長の鈴木を紹介させていただきます。

鈴木仁氏:ただいま紹介いただきました、鈴木です。私は1989年にイリソに入社して、その後、技術部門に在籍しておりまして、主に自動車関係のフローティングコネクタを開発しておりました。

その後、営業、マーケティングを経て、今の職にあります。もともと車載事業のほうに強い者になっております。今、由木社長から話があったとおり4月から社長を務めさせていただきますが、由木社長からバトンを渡された新中期経営計画および1,000億円への長期ビジョン達成に向けて、4月から活動をしたいと思います。

チームワークをよくしながら、「顧客価値を創造する100年企業」の基盤づくりに邁進したいと思いますので、4月からよろしくお願いいたします。

2. トピックス:電動化対応への成果と今後

由木:それでは2つ目のトピックスでございます。イリソの自動車電動化対応への成果と今後でございます。本日の説明会で当社のパワートレイン分野の伸びについて、年度も強調させていただきました。

これはもちろん、各国政府主導あるいは自動車メーカーの取り組みにより、EV、プラグインハイブリッド、ハイブリッドといった電気を使って動く電動車が増えてきたことが大きな理由の1つです。

その結果、この棒グラフのように当社のパワートレイン分野の売上は順調に伸びていました。

私たちはこの分野で培ってきたフローティング技術の結晶である3次元可動「BtoBコネクタ」「Z-Move(ジィームーブ)」を始めとした耐震耐熱、高電流対応コネクタという製品ラインナップの強み。

そして、それらの製品と自主開発した振動シミュレーションを組み合わせた耐震ソリューションサービスをご提供できる強み。そして、グローバルでのお客さまとのつながり、という3つの強みがあると考えています。

売上が伸びているのは、台数の増加はもちろん大きいのですが、この強みを生かした販売活動をしていることも大きいと考えております。

実際、グローバルでの私たちのパワートレイン分野の機器を作られているお客さまを通じ、現在でも世界で約40社の自動車メーカーの環境対応車にイリソの製品が搭載されています。

また、右上の円グラフで示しているように、各地域のメーカーの環境対応車に万遍なく搭載されています。現在、中国と欧州系で約50パーセントの売上比率となっていますが、この2地域は前に述べましたように伸びている地域で、これらのメーカーにもしっかりとイリソの製品が搭載されていることがおわかりいただけるかと思います。

このようにかなり以前より注力して製品を開発し、グローバルで営業活動をして、売上を伸ばしてまいりましたことは成果だと思っています。

今後についても、足元は8月に発表した中期経営計画を上回る見込みで、2023年3月期のパワートレイン分野の売上は60億円の計画でしたが、15億円多い75億円の予想になります。

お陰さまでお客さまからの引き合いも順調に増えており、しっかりと伸ばしていきたいと思います。

会社概要

最後になりますが、昨日の2月3日の夜に、当社のベトナム工場が所在するベトナムのハイズオン省から、一部の地域の都市封鎖をする旨の通知がありましたので、この場をお借りしてお伝えします。

ハイズオン省では、2月2日に英国で発見されている新型コロナウイルスの変異種が感染者の中かから確認されたため、今回の措置に至ったようです。

この閉鎖措置期間は2月3日から3週間で、閉鎖はベトナム工場のあるハイズオン省工業団地側からもロックダウンの指示がありましたので、従業員の安全を確保するとともに、今回の処置に従い、2月3日18時から一次的に操業を停止いたしました。

現時点では、操業停止は2月3日18時から2月24日までを予定しておりますが、今後の状況を引き続き確認しながら対応は決定してまいります。業績への影響等については、今現在は不透明な部分が多いため、今後算出が可能になり次第、速やかに開示してまいります。

お客さまへの影響を最小限にすべく、全力を挙げて取り組んでまいります。以上、長くなりましたが、私からの決算説明会の発表とさせていただきます。