宮﨑直樹氏(以下、宮﨑):社長の宮﨑でございます。いつも大変お世話になっております。本日はお忙しいなか、多くの皆様に当社のESG説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。

本来ならば対面でご説明すべきところですが、新型コロナウイルス感染症のリスクを考慮し、テレフォンカンファレンス形式になりましたことを、ご理解頂けますと幸いに存じます。

私自身、社長になって丸5年が経ちましたが、経営が内向きで独りよがりなものにならないように、この数年は投資家やアナリストの皆様方をはじめステークホルダーの皆様との対話の機会をできる限り増やし、様々な点につきまして貴重なご意見をいただきながら、その改善を図ってきました。

今回のテーマは、当社にとって初めての試みであるESGについてです。本来、企業は社会的存在であり、社会の公器であるということから、社長としてここ数年ESGの取り組みを加速させ、企業価値の向上を図ってきたつもりです。

そうはいうものの、専門家の皆様方の目から見て、まだまだ至らないところがたくさんあろうかと思っていますので、本日はぜひ皆様方から忌憚のないご意見をいただき、参考にさせていただきたいと思います。本日はよろしくお願いいたします。

2-1. 当社の経営理念とESG:経営理念

小山享氏(以下、小山):副社長の小山でございます。私から、ガバナンスと環境についてご説明します。

3ページ目をご覧ください。当社の経営理念とESGについてです。豊田合成は、すべてのステークホルダーに対する責任を果たして初めて会社が持続的に成長できるという考えに立ち返り、2018年に経営理念を改定しました。

私たち自身が行動し責任を果たす規範である全項目に、一人称の「私たちは」という主語をつけています。また、経営理念の実現のために企業価値を測る新しい物差しであるESGの取り組みを推進し、しっかりと情報開示していきたいと思っています。

2-1. 当社の経営理念とESG:SDGsの取り組みとESG

4ページ目はSDGsの取り組みとESGについてです。

一番上にありますように、SDGsの全17のゴールの達成に貢献することを基本に、当社の製品・事業関連、そして経営基盤に親和性の高い8つの最重要の分野を設定し、取り組みを推進しています。

この取り組みの推進のために2020年1月より経営の中心である総合企画部にサステナビリティ推進グループを設置し、取り組みを加速しています。

下の緑、茶色、青で囲ってあるESGについてです。環境につきましては取り組みの方向性としてCO2排出量ゼロによる脱炭素社会の構築、それから、社会については多様な人材の活用を推進する企業風土の醸成、ガバナンスについては誠実な会社を目指し、取締役会を含めてガバナンス体制を強化させていきます。

そのガバナンス体制について、次のページでご説明します。

2-2. ガバナンス:ガバナンス体制

5ページ目、ガバナンス体制をご覧ください。

取締役会の意思決定に対する透明性と客観性を高めるために、図で示すように取締役会の3分の1を社外取締役にしています。図の右下にありますように、2019年3月より役員人事委員会、役員報酬委員会を設置しております。その議長を2020年3月より社外取締役に変更し、透明性と客観性を高めています。

2-2. ガバナンス:取締役・監査役 員数の変遷

6ページ目をご覧ください。取締役・監査役員数の変遷についてです。

年次と取締役数の表から、まず2012年に執行役員制度を導入し、取締役総数を2011年の23名から8名に削減し、2015年に社外取締役を初選任しています。

現在の体制は取締役総数が9名、そのうち社外取締役数は3名で比率は33パーセントです。社外取締役のうち1名は女性であり、客観性と多様性を確保しています。

2-2. ガバナンス:社外取締役への期待と当社サポート

7ページ目をご覧ください。社外取締役への期待と当社サポートでございます。豊富な経験と高い見識を持つ3名の方々に社外取締役になっていただいています。

1番上の土屋取締役はグローバル戦略と生産技術の分野、その下の山家取締役は、財務と環境の分野、そして松本取締役は環境とSDGsの分野の豊富な経験と高い見識をお持ちです。また、当社では初めての女性取締役です。

この3名には、取締役会での活発な議論に加えて、モニタリングとアドバイザリーをしっかり実施していただいています。

右側にモニタリングのサポートとありますが、当社の各部門により事業内容や課題を説明、さらには国内外子会社視察を通じ、現地現物の視察に行っていただいて、ありのままの経営状態をご理解頂いております。その上で、取締役会の決議前に各議案の背景と内容をしっかりと説明して、適性な意思決定がなされるように努めています。

同時にアドバイザリーの機会としまして、社外役員連絡会で、監査役も含めた全社外役員に出席いただきまして、会社の方向性、事業の課題についてアドバイスを頂いております。そして販売会議、臨時会議等の各種会議体への出席をしていただいております。

2-2. ガバナンス:各取締役に期待する分野(スキルマトリックス)

8ページは、各取締役に期待する分野(スキルマトリックス)の中身についてです。

白い部分の社内取締役が主要機能などを網羅的にカバーし、青い部分の社外取締役が重点分野を強化する体制になっています。

社外取締役は全員を独立役員として指定しており、今後もこのスキルマトリックスを公表し、客観性とガバナンスをしっかり担保していきたいと思います。

2-3. 環境:中長期計画

9ページをご覧ください。ここからは環境についてのご説明です。中長期の環境計画です。下にあるように、1993年から環境活動を地道に改善し続けて現在に至ります。

大きな矢印は長期活動TG2050環境チャレンジとして策定し、今回はその着実な実現のために2030年の目標を策定しています。

右の六角形のTGマークの下にあるように、この環境チャレンジでは持続可能な環境活動のための環境マネジメント、とくに企業風土、人づくりと、製品・技術、高分子・LEDの環境や技術開発が豊田合成の特徴になっています。

2-3. 環境:2030年CO2排出量目標

10ページをご覧ください。2030年のCO2排出量目標についてです。図で示す通り、2030年のCO2排出量目標に向けて、日常改善、生産技術革新、ユーティリティ設備更新、再生可能エネルギー活用により、2030年の目標である2015年比43パーセント減を目指します。この目標は、パリ協定の気温上昇を産業革命前より2度を下回る水準となります。

2-3. 環境:現在の取り組み状況(CO2の事例)

11ページ目です。現在の取り組み状況としてCO2の事例を説明します。

第6次取り組みプランでは2020年の目標を2012年度比17パーセント減と設定していますが、2019年の時点ですでに達成いたしました。今後、第7次取り組みプランとして、2025年に向かってさらに高い目標を設定し、実現していきたいと考えています。

具体的には、右の図にあるように環境負荷の少ない燃料への置換、蛍光灯・工場照明のLED化、再生可能エネルギーの拡大等を進めています。

2-3. 環境:現在の取り組み状況(その他)

12ページをご覧ください。現在の取り組み状況として、大きく2つご紹介します。

まず左側にあるように、もったいない活動による風土づくりです。環境活動を持続可能なものにするために、企業風土・人づくりを積極的に推進していると申し上げましたが、このもったいない活動は、現状を知り、みんなで考え、改善、確認するサイクルを回すことで、環境負荷を低減することに加えて、一人ひとりの意識を高めることを狙っています。

具体的なもったいない活動としては使わなくなった事務用品を社内で還流させるTGフリーマーケットや、革巻きハンドル等の端材を使ったノベルティの製作を進めています。

また右にあるように、自然共生活動の充実が2つ目の柱です。「生命の源である水で活動をつなぐ」をスローガンに、藤前干潟の保全活動や工場でのビオトープづくり、里山づくりなどを積極的に推進しています。

2-4. 社会:風土改革の背景・考え方

宮﨑:ここからは、再び社長の宮﨑から社会の取り組みについてご説明します。

それでは、13ページをご覧ください。社会について、今回は風土改革という項目に絞ってお話します。一番上に書いた通り「前向きで活力にあふれた企業風土でなければ、会社の持続的成長はない」ということです。

ここに記載はありませんが、当社の経営理念の第6項に「活力と働きがいのある企業風土を実現」というくだりがあります。しかしながら、私が6年前にトヨタ自動車から来たときに、率直に言ってまだまだ風土を改善すべきであると感じました。多くの従業員と懇談の場を持ち「もっとこういうところを改善してほしい」という発言をもらいました。

私自身、人事の経験が長いため、いかに従業員の意欲・活力を高めていくかということを長い間飯の種にしていました。私は事業運営と風土改革を車の両輪として、それぞれ同じぐらいのエネルギーをもって取り組んできているということです。

左のグラフのように、縦軸に仕事(業績)、横軸に企業風土をおいて考えると、やはり企業風土が良くなければ継続して持続的に会社のパフォーマンスを上げることはできないと思っています。

右側には「どのような風土がいいのか」ということを羅列しました。志が高い、誠実である・思いやりがある・人をリスペクトするといったことから、下の一体感、PDCAに至るまでができる会社にしていくということに取り組んでいます。

2-4. 社会:風土改革に向けた取り組み(経営見直しの一環として)

14ページをご覧ください。表にしましたが、すべてが風土の改革につながっていくため、簡単に説明します。

2015年に社長に就任し、毎年の経営のキーワードを作って従業員に周知しました。双方向コミュニケーションから始まり、足腰の強化、先読み・積極果断、総力結集、「圧倒的なスピード感」で実行、本領発揮と、その年々の我々として取り組むべき重点の項目について一言で表しています。これらの実現に向け、従業員と一体となって取り組んでまいりました。

①の行の下のほうにあるように、2018年度には経営理念を改定して「2025事業計画」も発表しました。

②の体制/関係強化についてです。臨機応変に組織・体制を整備していきます。そして、質の面でも量の面でも、人的リソーセスをしっかりと充実させてきております。さらには、将来を担う人材の育成を加速します。具体的には、人材育成センターを立ち上げ、ベンチャー投資専門組織を設置しました。

また、長年お付き合いのある、とくに中国・アジアを中心とするグローバルパートナーや、最近提携を進めているベンチャー企業との協業の促進、当社の真のパートナーである仕入先様との交流、協力・信頼関係づくり等を進めています。

③の働き方についてです。世間では働き方改革の推進が叫ばれていますが、その前に、やはり会社として業務を効率化し、無駄な仕事をなくすといいますか、仕事には仕事と無駄しかないので、無駄を徹底的になくすという会社自体の取り組みを行い、その上で働き方改革を推進するという順序で取り組みを進めています。

④の風土という意味では、健全な労使関係構築、ボトムアップ、活力・一体感ということを書きました。これ以外にもたくさんの風土改革に係る取り組みを進めているところです。

2-4. 社会:風土改革の事例(健全な労使関係構築)

15ページは風土改革の事例です。ポスターの上半分が取締役執行役員、下の半分が執行役員と、次世代の経営幹部人材です。

会社の雰囲気を明るくするために、従業員から和かな表情であると、雰囲気を柔らかくするということで、2016年からこのようなポスターを毎年作り直して、役員宣言5ヶ条を役員自ら宣言して、柔らかい話のしやすい風土づくりを進めています。

しかし、このポスターをとある社外の方にお見せすると「笑っているのは良いんだけど、女性がいないね」と言われました。ここは当社のこれからの課題の1つでして、5年後ぐらいには、このなかにも女性の役員クラスが複数名いる会社にしていきたいと思っています。

私自身も多くの従業員や役員と懇談会の場を持っています。1,000名程と食事会を通じて本音で話をしています。

2-4. 社会:風土改革の事例(ボトムアップ/活力・一体感)

16ページをご覧ください。ボトムアップの活動の1つ(を紹介します)。昨年、当社は創立70周年を迎えました。そこで5つほど記念の事業を行いました。その1つとして、制服の見直しを行いました。テーマは「世界一かっこいい制服を作る」です。

写真にあるとおり、1年程かけて女性ならではの視点から「かっこいい制服」を作り上げたということです。投票も行いながら、自分たちで制服を作り上げ、ほぼ全員がこの制服を着て仕事しています。

2-4. 社会:風土改革の事例(活力・一体感)

次のページをお願いします。グローバルサミットとは、原則2年に1度、世界中のグループ各社の幹部が集まって、その時々の課題を共有し、グローバルでの一体感を向上させていくという取り組みです。

前列の着物を着ているのが私です。その両隣の海外拠点の幹部は、慣れない正座で辛そうでしたが、このような交流も通じて、グローバルに一体感を高めていくということを行っています。

私の説明は以上です。