インスペックの概要

菅原雅史氏(以下、菅原):それでは、パワーポイントの資料に沿って、説明を進めてまいりたいと思います。

まずはじめに、弊社の概要でございます。

本社が秋田県仙北市角館町にございます。桜と武家屋敷が有名で、最近、観光客がたくさんお見えになっています。創業が1984年、今年(2018年)で34年目となります。主な事業といたしまして、電子回路基板、いわゆる精密なプリント基板の外観検査装置の開発・製造・販売をしています。

グループ企業として、スイスに本社のあるFirst EIE SAはプリント基板の製造装置のメーカーでございます。あともう1社、パスイメージング株式会社は青森県弘前市にありまして、病理診断をデジタル化するための、WSIという装置のメーカーでございます。従業員が前期末連結で77名となっています。

2018年4月期 業績ハイライト

決算の概要についてご説明申し上げます。

まず、2018年4月期は売上高が連結で19億2,000万円、前期比でマイナス11.1パーセントという結果でございました。経常利益、営業利益ともマイナスでございますけれども、主な要因といたしまして、のれんの減損損失ということで、スイスのFirst EIE SAののれんの減損処理をいたしました。単体では、売上高が13億4,600万円で前期比マイナス10.7パーセント。営業利益はマイナス1,900万円、経常利益はマイナス2,100万円、当期純利益がマイナス5億4,300万円です。

売上が振るわなかった要因といたしましては、前期計画していましたロールtoロール型検査装置の受注時期が、ずっと期末までずれ込んでしまいました。私どもが計画していた時期よりも、半年ほど後ろにずれたというのが、非常に大きな要因でございます。

しかしながら4月に単月で10億円を超える過去最大の受注をいたしまして、それが今期以降につながる大きな受注でした。このへんは後ほど、また説明を申し上げたいと思います。

セグメント別売上高

前期の売上の内容でございます。

ちょっと細かい数字ですが、ロールtoロール型検査装置は、3年ほど前から戦略的に取り組んできた装置です。これが前期比でしっかりと伸びています。61.5パーセント伸びて、約6億円の売上を立てていますけれども。これが4月に受注した装置のかなりの比率を占めていまして、今後、最も大きく伸びるであろうと期待をいたしています。

その上のフラットベッド型検査装置は、前期比で少し落ちていますけれども、今後、主要なお客さんが中期的な投資計画を持っていまして、それに沿ってかなり伸びていくだろうと予想しています。

あとスイスの精密基板製造装置関連事業は、前期は本社工場をジュネーブ市内から20キロメートルほど離れたニヨンに引っ越しをしました。また、(2017年)11月にドイツで開催された「productronica」という非常に大きな展示会に出展しました。非常に小さい会社なものですから、その間に生産活動が止まってしまったという特殊な要因で、売上が少し落ちてしまったという状況にあります。これは今期以降、また回復してくる予定になっています。

セグメント別売上高推移

次に、セグメント別の売上高推移のグラフです。

上の赤と小さい緑がありますけれども、これは子会社の売上ですけれども、その下の濃い青。これがロールtoロール型検査装置の売上でございまして。見てのとおり、かなりの比率で伸びていますし、今後も伸びるであろうという分野でございます。

個別月次受注状況の推移(毎月開示)

次に、個別のインスペック単体の月次の受注状況です。

先ほどからお話しているとおり、今年(2018年)の4月に非常に大きな受注をしています。この内容はそのほとんどが、ロールtoロールの大型の装置でございます。これは今期、すべて売上になる予定のものでございます。

当社にとっての意味は、発注いただいたお客さまが、お客さま自身の事業戦略に基づく中期的な投資計画を持っていまして、それに沿ったかたちで、当社が検査装置のメーカーとして選定をいただいているということでございます。今後につながるものということで、当社としては非常に大きな受注であったということでございます。

要約連結貸借対照表

次に、貸借対照表の概要について、ご説明申し上げます。

まず、流動資産が非常に大きく増えていますけれども、これは売掛債権が前期比で約1億5,000万円。それから、仕掛品が約2億3,000万円増加しています。これは受注増に伴うものです。あと、負債の部ですけれども、当社の事業の特性として、受注案件をこなすためにかなりの期間、支払いが先行するということで、資金需要が大きく発生いたしします。そういった理由で、前期比で約4億円ほど短期借入が増えているのが、主な理由でございます。

要約連結キャッシュ・フロー計算書

次に、キャッシュ・フローですけれども、現金及び現金同等物が約1億円ほど増加いたしています。

研究開発費

次に、研究開発費についてご説明申し上げます。

インスペック単体として半導体パッケージ基板・精密基板検査装置関連事業のところですけれども、これが13パーセントほど増加しています。

これはほとんど、ロールtoロール検査装置と精密基板の検査装置、これの主に画像処理システムの開発に投下しておりますけれども、今後、売上比率でだいたい8パーセント前後で継続して投下していくという基本的な考え方で取り組んでおります。

あと精密基板製造装置関連、スイスのFirst EIE社のものですけれども、この会社は、私どもが関与する以前の経営陣は研究開発という項目での投資をあまりせずに、受注したものを製造原価の中で少しずつ開発してきたという体制でした。私どもが関わって以降、やはり成長するために研究開発がマストだということで、まだ少しずつではありますけれども、そういう投資を増やし始めたというかたちでございます。

デジタルパソロジー関連事業については、まだ立ち上げ段階ということで、製品開発が主な業務の内容ということで推移していますけれども、そのうちで研究開発費として計上したものが約1,400万円あったということでございます。

業績見通し

次に業績見通しでございます。

業績見通しについては、まず売上高は連結で27億円、インスペック本体が20億円、それから、First EIE社が7億円です。パスイメージング社のデジタルパソロジー関連事業、こちらは今期から持分法適用会社に移行する予定であるために、売上高には含まれていないということでございます。これについては後ほどまた触れたいと思います。

インスペック本体の今期の見通しの20億円についても、4月の受注および4月末の受注残として14億円強ございます。5月と合わせると15億円の受注残を抱えておりまして、それから類推すると(売上高)20億円をもっと上回ってもいいのではないだろうかと思われる方も多いかと思いますけれども、これも最後の中計のところで詳しくご説明したいと思っております。

今後の経営戦略

次にインスペックの成長戦略です。

これは3年ほど前から同じことを申し上げておりまして、まず中期戦略として、フレキシブル基板、それからチップオンフィルム、FPCとCOF向けのロールtoロール型の検査装置、まずこれを主力製品としていく。それからもう2つ、インライン検査システムそして超精密基板向け検査装置、いずれもインスペックが非常に特徴的な技術を持って差別化を図っており、それがうまく実現できているという分野(も主力製品としていく)。

中長期的な戦略として1つお伝えしたいと思っておりますのは、まず、AIを活用した検査システムです。私どもの検査システムは画像処理技術をコア技術としておりますので、ある意味、非常にAIを活用しやすいといいますか、AIを活かしやすい分野でございます。これは早くから私どもも注目しておりまして、この辺の調査を始めたのはもう3年から4年くらい前です。具体的には、1年半ほど前から社内に専任者を設けて、具体的な開発を進めております。

輸送機関連分野向け検査システムは、自動車とか航空機は、どんどん電子化しています。コンピュータとセンサーと塊になってきているという中で、私どもが力を入れているフレキシブル基板が非常に大きく関わってくるといわれています。

具体的な例を申し上げますと、電気自動車で有名なテスラの「モデル3」は、量産で非常に苦労しているというニュースが頻繁に出ておりますけれども、このモデル3に使われている車内の電気配線が総延長で1,500メートルあります。重量にして約200キログラムにもなる。大人3人分くらいの重さのものを積んで走っているということです。テスラが開発部門でかなり詳細に検討した結果、すべてフレキシブル基板にもし変えることができれば、フレキシブル基板わずか100メートルで済む。テスラが公式に発表しております。これはまだ調査、検討の段階で、まだ試作にもいってないと思うのですけれども、自動車の配線、ワイヤハーネスのごく一部はすでにフレキシブル基板に置き換えるという試みが始まっております。ワイヤハーネスの世界市場というのは昨年度で約5兆6,000億円という世界市場がありまして、わずか1割フレキシブル基板に変わるだけで、現在のフレキシブル基板全体の市場に匹敵するくらいの規模に、あっという間になってしまいます。しかも、輸送機なので不良品はすぐ人命に直結するリスクがあるということで、検査が非常に重要になってきます。

ここに今、私どもも注目しておりまして、まだ具体的にどういう取り組みをしていくかを申し上げるのは時期尚早ですけれども、近い将来、かなり重要になる製品を世に出したいということで、一生懸命社内で検討を始めているところでございます。

主な製品と用途

次に、インスペックの事業について少しご説明申し上げたいと思います。

先ほど、3分野の戦略的な分野ということで申し上げましたけれども、フレキシブル基板は、身につけるデバイスや非常に小型で高性能なスマートフォンのハイエンドのモデルとか、そういったものにもたくさん使われています。不良が出ると機能しないということで、検査が全数検査の方向にどんどん進んできております。ほんの5・6年前は、あまり検査しなくていい、というものが多かったんですけれども、全数自動検査しなくてはいけないという流れがかなり急ピッチで進んでいます。それが、将来かなり増えていくということの裏付けになっております。

超精密基板は、ご承知のようにアメリカのI社を始めとするコンピューターの頭脳になる半導体を乗せる精密基板でございまして、クラウドサーバーはがものすごい勢いで増えているのと、AIに使われるGPUと言われる半導体の微細化が進んで、それにともなって精密基板もどんどん高度化が進んでいます。やはり全数検査が必要になってきているというところに対応をいたしております。

(スライド12で説明した戦略分野の)3つ目のインライン検査装置は、ここには出ていないんですけれども、この後ご説明申し上げます。

スマホ、ウエアラブルの増加が、FPC需要を後押し

これは、フレキシブル基板の主な現在の市場についてです。

スマートフォンは世界中で14億台強、毎年作られています。とくに高性能なアップル社の「iPhone」、サムスンの「Galaxy」が、そのうちの3割ぐらいを占めてるかと思います。それだけでもものすごい数ですけれども、フレキシブル基板の使われる数はモデルが変わるたびに増えているということで、フレキシブル基板自体の生産数量がものすごく増えてます。

それに加えて、ウエアラブルデバイスが、またどんどんいろんなものが出てきています。我々がそこに目をつけているというのは、こういった背景がございます。

主要3分野の製品戦略

先ほどの主力戦略的な3つの分野の中で2番めの、インライン検査装置も、これまた大変な数作られてまして、その主なメーカーはほとんどが日本のメーカー。一部韓国のメーカーもございますけれども、今、最新のアップルのスマートフォン1台に、チップコンデンサが約1,000個入っています。数年前・2・3年前までは5、600個と言われてたんですけれども、今1,000個を超えたと言われてまして、これもメーカーさんの中で検査が必要です。

これについては、各メーカーとも製造設備自体が最高機密で、私どもは工場の中に入れないので、検査システムをユニットしたものをお客様にお納めしております。そういうかたちで、これも2年半前ほど前からお客さんのところで、ずっと評価をいただいて、十分な性能があるということでラインに導入が始まっています。

チップコンデンサのラインというのは、国内に複数社メーカーありますけれども、全部合わせると数千ライン製造ラインがありまして、どれぐらいの比率で私どもを採用していただけるかわかりませんけれども、今後、結構なラインに採用していただけるんではないかなと、期待をいたしております。

AI取り組み : AI(人工知能)の活用で出来ること

先ほどAIの取り組みを申し上げました。

検査装置は検出した箇所を欠陥として認識し、それを人間が見直すという作業をしているんですけれども、それをAIの技術を使って人手を介さずに判断できるようなシステムの開発を今進めております。

現在マンパワーによる再確認作業に、ものすごいたくさんの人が関わってます。(スライド上の)この絵にあるような再検査用の装置が、毎年2,000台ぐらい世界中で売れているということで、それだけ人が関わっているんですけれども、それをAIの技術で毎年1,000人分の仕事を置き換えることができます。

そこまで、完全なものができるには時間はかかりますけれども、数10パーセント削減出来るだけでも、コストの削減効果は非常に大きいということで、今、さまざまなお客さんのデータを承諾を得ながら、ディープラーニングで学習をさせております。

First EIE社 製品ラインナップ

次に、Firtst EIE社について、ご説明いたします。

この会社はプリント基板の製造装置ということで、プリント基板の配線を焼き付ける際に使われる原盤を焼き付ける装置です。いわゆるフォトプロッターと言いまして、現場に使われるフィルムのパターンを焼き付ける装置、これがメインの商品でございます。

かれこれ15年ぐらい前から、ずっとこの事業をやっていまして、市場にすでに1,000台前後の稼働している装置があって、毎年更新事業が安定的にあるということで、売上規模は非常に小さいんですけれども、安定した事業形態となっております。

当社が、グループ化して3年経過いたしました。海外ということもあって、なかなか相互理解がスピーディーに進まず、いろいろ苦労をいたしましたけれども、半年ほど前から本当に信頼関係ができ相互理解も非常に深まってきました。お互いにもっているものを持ち寄ることによって、新たな製品ができそうだと思っています。

とくに自動車産業関連の分野ではヨーロッパ市場は世界で最も大きい市場ですので、近い将来、インスペックの製品をアジア地域のみならず(販売するときに)、その拠点として一緒にやれるんではないかというかたちで、ずいぶん最近は積極的なディスカッションが出来るようになってきております。具体的に数字で出てくるのはもう少し時間はかかるかと思いますけれども、結果としてかなり前向きに取り組めてきているということをご報告いたしたいと思います。

First EIE社のグローバル拠点を活用

スイスは(スライド記載の)地図にあるとおり、飛行機で1時間半あれば、ヨーロッパの主要な国はほぼ行けます。販売活動、それからサービス・サポート活動の拠点としては非常に良い場所にあると考えております。

顕微鏡観察からWSI( Whole Slide Imaging)での観察へ

次にデジタルパソロジー関連事業でございます。

これは従来は顕微鏡で病院の先生がやっていたがんの病理診断を、デジタル画像で診断できるようなシステムを作るということで、現在この製品を作っております。インスペックの事業分野と医療の分野は非常に大きく異なっております。インスペックが関与することで、パスイメージングの成長にプラスになるような活動ができるかというと、やはりなかなか難しい。医療関係の分野で独自の判断や独自の活動が必要だということで、自律的な体制を作った方がパスイメージングの成長にとってプラスになるだろうということで、今回、持分法適用会社という形で対応していくという判断をしております。

今後の経営戦略

この分野は将来的には非常に期待できます。

今年(2018年)の3月、デジタル画像を使っての病理診断に対して、状況を満たせば保険点数の請求ができるというような非常に大きな方針転換が、厚労省の方から公示されています。これは一つの転機になるだろうと、私どもとしても期待をしております。

中期経営計画の修正

中期経営計画を、修正という形で先日発表いたしました。これについてご説明を申し上げたいと思います。

先ほど申し上げたとおり、(2018年)5月末で15億円の受注残があって、今期通常どおり毎月受注を重ねていけば、十分20億円を超える売上ができると思います。私自身も、そこのところは正直期待しているところでございます。

商談の今後の状況によっては、今期の売上につながるものも色々と出てくるかと思いますけれども、現時点で、ほぼ間違いなく今期売上が達成できるだろうと思われるものを、集め上げて20億円という数字を出したわけです。

先日初めて、当社の最新のロールtoロール型検査装置を、東京のビックサイトの非常に大きな展示会に展示しております。まだロールtoロール型検査装置は海外にまったく販売していないのですけれども、海外のお客様から「どうしても見てみたい」ということで見学の予約みたいな形で、かなりの数が連絡してくれました。その会社さんが、ほとんど見に来てくれて、中には「すぐにこれを買っていきたい」というの話が複数社ございました。

ちなみに単価は1億5,000万円くらいする装置なのですけれども、ロールtoロールの需要は間違いなく非常に高まってきております。今後かなり継続して投資していく計画を持っている会社さんが多くなっているので、期待値が大きいというのは間違いございません。

今期の20億円の数字の背景として、装置単価が高い、大きい装置であるということが一つ要因になっていますけども、大型化した装置であるために、やはり作る期間が長くなります。また私どもの社内の生産のキャパの問題もあります。装置が高ければそれだけ仕入れの金額も大きくて、我々としてはその資金の対策も同時に並行してやらなくてはならければなりません。

更に人材不足が他社の例にもれず非常に深刻に今なっています。これらの課題を解決しつつ、一回り大きな成長した会社を作らないといけないということで現在取り組んでいる最中であります。

今お話した通り、商談の進み具合内容によっては、売上を積み上げるということが、可能性が十分あると思っています。期待が大きく、ワクワクしているという中で、今期の数字のみならず来期の数字も含めて、いかに積み上げていけるかということにチャレンジしている状況でございます。決してこれだけしかいかないと思っているわけではございません。むしろフレキシブル基板それから精密基板の市場が、私どもが狙っていた形でついに来たかと、社内は今活気にあふれて「大変だけれどもやるぞ」という形で取り組んでいます。

そういうことで、なかなか今まで投資家のみなさんの期待にそうような結果が出ていなかったと思いますけども、ここは一番の勝負所ということで、全社をあげてこの大きなチャンスをしっかりものにしたいと思っています。引き続きご支援をいただければ非常に幸いでございます。

以上でご説明を終了いたします。どうもご清聴ありがとうございました。