つみたてNISAってなに?
頼藤太希氏(以下、頼藤):こんにちは。
高山一恵氏(以下、高山):こんにちは。
頼藤:先日、セゾン投信の中野社長とコラボセミナーをやりました。
高山:やらせていただきましたね。
頼藤:タイトルはずばり?
高山:「人生100年時代の働き方とお金の育て方」。
頼藤:というわけで、本当にバリバリ投資をやっている方たちにお集まりいただきました。
高山:本当にすてきな女性が多かったですね。意識高い系女子にすごいお集まりいただきましたね。
頼藤:そうですね(笑)。
その時の様子はすでに「Mocha(モカ)」でセミナーレポートが上がっていますので、ぜひ確認していただきたいと思います。
(その時に)つみたてNISAについて「今後どうすればいいですか?」とか「概要を教えてください」という話が多かったので、今回は真面目につみたてNISAの回にしたいと思います。では高山さん、つみたてNISAの概要を教えてください。
NISAとつみたてNISAはどう違う?
高山:わかりました。今、普通にNISAというのはありますよね。
頼藤:ありますね。
高山:あれは20歳以上の人を対象としたものなんですけど、年間投資額120万円までで、そこから得られた売却益や分配金に関しては5年間非課税になるという制度です。
来年(2018年)1月から始まるつみたてNISAは、年間40万円の投資から得られた売却益や分配金について、20年間非課税になるという制度です。毎月ではなくてもいいんだけど、積み立てていくお金ということがポイントです。
頼藤:名前のとおり、つみたてNISAは一括で購入できないんですよね。(NISAと)大きく違うのは、買える商品も違いますよね。
高山:違います。NISAは株や投資信託、ETF(上場投資信託)だったり、いろいろ買えるんですけど、つみたてNISAの場合は投資信託しか買えません。
頼藤:その投資信託も金融庁が厳選した114本(収録時の11月16日時点。※公開日12月13日時点では132本。)しかないんですよね。なので本日は「そもそもNISAとつみたてNISAは両方使えるのか」とか、「どうすればいいのか」という疑問を解消していきたいと思います。
まず僕から、つみたてNISAの細かい部分をお伝えしていきます。年間の投資上限額は40万円までで、(そこから得られた利益や分配金は)非課税です。(最長で)20年間投資できるので、上限が800万円が上限となります。
商品は金融庁が定めた基準を満たす投資信託で、実はETFもOKです。ただ現状114本(収録時の11月16日時点。※公開日12月13日時点では132本。うちETFは3本。)の中にETFは含まれていません。買い方は定期的かつ継続的方法による積立のみです。
よく「iDeCo(イデコ)」とつみたてNISAが比べられるんですけど、iDeCoは60歳まで引き出しできなくて、つみたてNISAはいつでも引き出せます。
あとよく聞かれることとして、まだつみたてNISAは始まっていないのですが、途中で金融機関の変更はできるのかというところで、今の情報では年単位であれば変更可能ということです。
つみたてNISAのメリット
高山:つみたてNISAのメリットはなんでしょうか?
頼藤:いくつかあるんですけど、6個お伝えしようと思います。
1つ目のメリットは、年間40万円までの投資額については、運用益が非課税ということです。日本では投資から得られた利益には20.315パーセントの税金がかかります。大きいですよね。仮に40万円投資して10万円儲かったとすると、通常はその10万円から2万315円が税金でとられるということです。
高山:手元に8万円も残らないという。
頼藤:そうなんですよ。でも、つみたてNISAを活用すれば(年間40万円までは)非課税で投資することができるので、本来差し引かれるはずの税金も含めて、投資に回すことができるということです。
2つ目のメリットは、非課税となる期間が20年と長いということです。
NISAは5年間(非課税)ということだったので、長期投資向きとは言えなかったんです。長期投資のメリットは複利です。複利というのは、例えば年間30万円投資して利息が1万円だとします。翌年は31万円に対して利息がかかるということで、複利を味方につけられるのが長期投資のメリットです。それが20年間非課税になるということなので、メリットが大きいと思います。
3つ目のメリットは、金融庁に選ばれた商品から投資できるということです。
高山:これは初心者の方には本当にいいと思います。
頼藤:そうなんですよ。金融庁が選ぶ商品は、長期積立分散投資に適した一定の投資信託になっているということなんです。具体的には、投資信託の運用期間が20年以上、分配金の支払い頻度が毎月ではなく半年に1回とか年に1回、手数料が低いものなどのルールがあります。
高山:今、投資信託って普通に5,000本以上ありますよね。
頼藤:今は6,000本です。6,000本の中から自分で選ぶのは大変ですから、高山さんがおっしゃったとおり、(つみたてNISAの場合は)商品数が少ないので選びやすいということです。
投資初心者にとっては、選択肢がたくさんあると選びづらいんですよね。行動心理学で、選択肢が増えれば増えるほど悩んで行動できないということがあるので、そこを改善するような仕組みになっているということです。
5つ目のメリットは、いつでも払い出し可能なので、用途が老後資金だけではなく、住宅資金や教育資金、余暇資金、自分へのご褒美のためにも活用しやすいということです。
6つ目のメリットは、20歳以上であれば年齢に関係なく投資できるということです。iDeCoは60歳までなんです。だからiDeCoで長期的な投資ができないという人は、つみたてNISAを活用すると長期的にできると。60歳以上でも長期にわたって投資ができるということがメリットかなと思います。
高山:これからは60歳以上でもぜんぜん働く時代じゃないですか。なので収入を得続けられればずっと(投資)できます。
つみたてNISAのデメリット
高山:今度はつみたてNISAのデメリットをお願いします。
頼藤:デメリットは8個あります!(笑)。
高山:けっこうありますね。
頼藤:見方によっては8個あるということですね。
1つ目のデメリットは、非課税枠がNISAより少ないということです。NISAの年間120万円に対して、つみたてNISAは40万円なので、その年でまとめて投資したい場合にはデメリットだと感じるかもしれません。
2つ目のデメリットは、購入方法が積立のみなので、一度にまとまった金額を投資したい方にとってはデメリットとも言えるかと思います。
3つ目のデメリットは、メリットの裏返しでもあるんですが、商品数が少ない、個別株やREITが運用できないのがデメリットになるのかなということです。
高山:株をやりたい人はちょっとね。
頼藤:そういう方はNISAを選んだほうがいいのかなと思います。
4つ目のデメリットは、NISAも一緒なんですけど、余った非課税枠を翌年に持ち越すことはできません。例えば2018年の投資金額が20万円で、非課税枠が残り20万円ある場合、その20万円を翌年に持ち越して、60万円分投資することはできません。
5つ目のデメリットは、損益通算も繰越控除もできないということです。これは少し難しいんですけど、通常の課税口座、特定口座や一般口座と言われているものでは、確定申告をすることでほかの金融機関で取引した株や投資信託などと損益通算ができるんです。
損益通算というのは、例えば金融機関Aの特定口座で損益がプラス30万円で、金融機関Bの特定口座の損益がマイナス10万円だった場合、合わせるとプラス20万円になりますよね。
高山:はい。
頼藤:そうすると20万円が税金の対象になるんですけど、それができないので、例えば特定口座でプラス30万円、NISA口座でマイナス10万円だった時に、20万円に対する税金ではなくて30万円に対する税金になってしまうことがあります。
高山:なるほど。
頼藤:難しいですね。NISA口座では損はなかったものとみなされるので、損益通算も繰越控除もできないということです。
高山:ではNISA口座では損をしないほうがいいということですよね。
頼藤:そうです。損をしない、コツコツと利益を積み上げられるような投資のほうが向いているのかもしれません。
6つ目のデメリットは、スイッチングと分配金再投資は新規買付とみなされるということです。スイッチングというのは、今持っている金融商品を売却して、別の金融商品を買って入れ替ことです。
例えば、金融商品を30万円分買ったとして、持っている金融商品(30万円分)を全部売って新しい商品に乗りかえるとすると、(新たに)30万円分買ったとみなされてしまうので、60万円分買ったことになってしまいます。そうすると、非課税枠は40万円だから使い切れないということがあります。
高山:なるほど。
頼藤:分配金については、投資信託を買う時に自分で受け取るか再投資するかを選ぶんですけど、分配金を再投資する方法を選んだ場合、年間非課税枠40万円を使い切っていると、分配金をもらった(再投資)分は非課税枠を使えないので注意が必要です。非課税枠をフルに使っているとそのようなことが起こってしまいます。
7つ目のデメリットは、非課税期間が20年と長いんですけど、それで終わってしまうということです。期限があるということがデメリットだと思います。
例えば、つみたてNISAで投資した資産が20年後にぜんぜん増えなくて、40万円投資したものが30万円に下がったと。そうすると10万円を損していますよね。
先ほど、NISAは損はなかったこととしてみなされると伝えたと思うんですけど、そのあと(非課税期間が終わって)30万円が10万円上昇して40万円になったとしても、本来は(つみたてNISAを)40万円で始めたから40万円に戻っただけだと思うんですけど、10万円は利益とみなされて税金がかかってしまいます。
なので、非課税期間に期限があることがデメリットかなと。これはNISAでも一緒のことが言えます。
8つ目のデメリットは、iDeCoとの比較なんですけど、積み立てている掛金が所得控除の対象ではないということです。iDeCoは積み立てた金額が全額所得控除になるので、所得税、住民税が減るので、ここのところはiDeCoのほうが優遇性があるかなと思います。
つみたてNISAの注意点はココ!
最後に、つみたてNISAの注意点をお伝えしたいと思います。NISAとつみたてNISAは併用できないという書かれ方をしているんですけど、正確に言うと、両方を同じ年に買付できないという言い方が正しいです。NISA口座は1人1口座というのはまさにそのとおりなんですけど、実際は両方持っていてもいいんです。
なぜかというと、NISAとつみたてNISAの間では資産を持ち越すことができないんです。例えば今、NISAで株や投資信託を持っていて、その資産をつみたてNISAにもってくることはできません。つみたてNISAからNISAに持っていくこともダメです。専門用語でロールオーバーと言うんですけど、持ち越しができないので(NISAとつみたてNISAを)2つ持っていてもいいということになります。
(同じ年に)NISAとつみたてNISAの買付はできないということで、例えば2018年につみたてNISAで月1万円を買い付けたとすると、その年にNISAは買付ができません。翌年、つみたてNISAの買付をやめて、NISAを運用することはOKです。1年ごとに運用を切り替えることはできるということです。
高山:つみたてNISAで積み上げてきた資金はもちろんずっと待機ということなんですか?
頼藤:そうです。そこはずっと非課税で運用し続けられます。例えば2018年に積み立て始めたのであれば、2037年までは非課税でいられるということです。今あるNISAの資産も、5年間は非課税で運用できます。
高山:なるほど。
頼藤:このあたりは、まだあまりニュースにも出ていないので、この機会に確認しておいていただければと思います。
高山:はい。
頼藤:あと、冒頭で「つみたてNISAは金融機関を変更できる」とお話ししたんですけど、その場合も資産を移動することはできません。なので、金融機関AのつみたてNISA口座と金融機関BのつみたてNISA口座を持つことになります。
高山:なるほど。金融機関を変えれば変えるほど(つみたてNISA口座が)増えるということですか?
頼藤:そういうことになります(笑)。現状はそういうルールです。新規の買付は最新口座でしかできないんですけど、注意が必要です。
高山:なるほど(笑)。けっこうややこしいね。
頼藤:そうですね。ただ、今後整備されるかもしれませんね。
高山:金融庁の方はつみたてNISA推しなんですよね。
頼藤:将来(NISAと)一本化すると。
高山:ですもんね。
つみたてNISAの制度の目的
頼藤:そもそも、つみたてNISAはなんでつくられたんですか?
高山:なんでつくられたのか。急に振りましたね?(笑)。
これは手元資金が十分でない若年層などの利用を促進する観点から、少額からの積立、分散投資に適した制度を創設したいという思いからです。
頼藤:実際、NISAを利用しているのは資産を持っている50代以上と聞きますからね。
高山:やはり今は、若年層こそ資産を形成しないと厳しい時代ですからね。
頼藤:そうですね。そして投資することで失敗するともうやりたくないとなってしまうので、なるべく失敗しにくい方法として積立投資、そして積立投資に非課税を適用するのがつみたてNISAということです。今回は専門的な回になってしまいました。
高山:証券会社によっては100円からやれるんでしょ? 100円からやってもあれだけど(笑)。
頼藤:SBI証券と楽天証券は100円から投資信託が買えて、つみたてNISAが利用できます。
高山:おこづかい程度でもいいからやっていくということも大事だよね。
頼藤:そうですね。iDeCoは5,000円からなので、もし5,000円も厳しいという方がいらっしゃったらつみたてNISAから始めていただくといいのかなと思います。大丈夫ですか? 話し足りてないですか?(笑)。
高山:私は大丈夫です(笑)。若い方であればあるほど、ぜひ活用してほしいなと思います。
頼藤:ちなみに高山さんは来年からつみたてNISAは活用するんですか?
高山:私は株好きなのでNISAの予定です(笑)。
頼藤:僕も個別株をやっているので、NISAは引き続き利用しようかなと思うんですけど、まだ投資を始めたことがないという方は、つみたてNISAを活用するのもいいかなと思います。
もちろん働いて税金を納めている方は、まずはiDeCoをやったほうが節税のメリットがあるので、そちらからやってもいいのかなと思います。
僕たちはiDeCoもNISAもやっているということで、iDeCoは今年の3月に企業型に移しましたけど、ぜひフル活用していただくのがいいのかなと思います。