logmi Finance
logmi Finance

IR義務化時代の情報発信 データと事例に学ぶ、企業価値向上の実践法

徳力基彦氏(以下、徳力):こんにちは。noteプロデューサーの徳力です。本日もnoteのイベントにご参加いただきありがとうございます。

第一部:IRにおいて企業はどのような情報を発信すべきなのか

徳力:本日は、IR向上委員会との共催で「IR義務化時代の情報発信」というオンラインセミナーを開催します。よろしくお願いします。

登壇者紹介

後藤敏仁氏(以下、後藤):IR向上委員会を主催しているFiNX株式会社代表取締役の後藤です。よろしくお願いします。

徳力:よろしくお願いします。後藤さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか? 

後藤:もともと上場企業でCFOをしており、今はIR支援が多いです。あとは外部指標なども行っています。

徳力:今回はIR向上委員会との共催で開催します。私が後藤さんに泣きついてお願いしたというのが正直なところです(笑)。

牧知秀氏(以下、牧):MIHアドバイザリー代表取締役の牧と申します。よろしくお願いします。

徳力:どのようなサービスを提供する会社でしょうか? 

:主に外資系の投資銀行で働いており、その間の大部分が機関投資家と発行体を結びつける業務を行っていたため、MIHアドバイザリーでは発行体側に立ってサービスを提供しています。

齊藤大将氏(以下、齊藤):初めまして。株式会社シュタインズ代表の齊藤と申します。

徳力:シュタインズはどのような会社と表現するのが伝わりやすいでしょうか? 

齊藤:もともとは金融教育の分野で事業展開し、アプリ開発や情報発信を行っていたのですが、それに伴い銘柄分析のレポートなどを発信していたところ、IRをしている企業から「ぜひ手伝ってほしい」という話が上がってきました。

私はどこかの企業でIRに関する仕事をしてきたわけではないのですが、2016年から2021年にヨーロッパのエストニアという国に住んでおり、現地の大学院を出ています。そこでデータ分析をし、その知見を経済分析や銘柄分析に活かしています。

私も趣味で個人投資をする時に分析するため、今は趣味と仕事が重なっているような状況です。

徳力:ありがとうございます。今回、牧さんと齊藤さんにはリサーチしたレポートの紹介をしていただきます。

IRにおける情報発信の重要性の変化

徳力:本日は「IR義務化時代の情報発信」がテーマについて、最近、私もよく聞かれるようになってきました。IRが今どのようになっているかが正直わからないため、このセミナーで私も教えてもらおうという趣旨で開催します。

私自身も30年近く前にNTTでIR担当をしていたことがありますが、その頃と景色が変わりすぎているため、なぜIRにおいてこのような情報発信が重要になっているかをお聞きしていきたいと思います。その前に、このセミナーを開催した背景をご説明します。

「IR noteマガジン」

徳力:IRの情報発信は、実はnoteが力を入れる前から企業の方々に始めていただいた歴史があります。IR利用の高まりを受けて『IR noteマガジン』というものも運営しており、こちらはすでに100社以上が参加しており、フォロワーも2,000名を超える企業のIR情報発信の場所となっています。

ファンを生み出すIRの可能性とは? #等身大の企業広報

徳力:その関係で、ここは我々も注目したほうがよいと考え、2年前に「等身大の企業広報」というオンラインセミナーを行いました。

IR向上委員会 IR実務に携わる人のための勉強会コミュニティ

徳力:今回はこのテーマをさらにもう少し深掘りしようということで、IR向上委員会の後藤さんにご相談して共同開催のイベントにしたという経緯です。

後藤:12月12日も「IR Re:DESIGN」というオフラインイベントがあります。表参道の一角を借り切って、クラフトビールを飲みながらみんなで楽しむというイベントです。よかったらぜひ来てください。

徳力:ありがとうございます。なぜそもそもIR向上委員会を始めることになったのですか?

後藤:もともとは上場企業のCFOでしたが、IRはいろいろなテーマの中の1つでしかなく、興味はあっても現役時代にそこまで時間は割けませんでした。

徳力:経営者の方は特にそうですね。

後藤:しかしテーマはおもしろいため、みんなで知見を持ち寄ったらよいのではないかということで始めたのがきっかけです。

IRにおける情報発信の重要性の変化

徳力:後藤さんは、今の時代のIRにおける情報発信の重要性の変化をどのように捉えていますか? 私からすると、20年以上前ですが、NTT時代のIRは作らなければいけない書類がたくさんあり、それで精一杯だったイメージがあります。それ以上の情報発信もしなくてはいけないとなると、想像するだけで大変そうだと思ってしまいます。今、業界でどのような変化がありますか? 

後藤:『IR noteマガジン』が出た頃は、発信するだけでもかなり認知のリーチが取れていました。2020年くらいに、「X」(当時は「Twitter」)でIR担当が発信していた時は、それだけでリーチが取れていました。

ここで徳力さんがおっしゃったように、法定開示だけで終わる会社と積極的に取り組む会社で差が開き始めました。「これがよいのではないか」とみなさまが賛同して、このような発信を続けるようになりました。

現在、どのような感じかというと、「わりと増えてしまった上場企業数×1社あたりの情報の爆発」というようなものがあります。当初から「サステナビリティや人的資本、資本コスト、株価等、いろいろなものを意識して情報開示しなさい」という要請があり、決算説明資料の一つひとつがとってもボリュームが多く、50ページほどあるのが平均的になり、逆に何がポイントなのかが埋もれやすくなってしまっていました。

発信しないことにはニュースフローで取引されないため、大事な情報を発信していくことの重要度は引き続き高まっていると思います。

徳力:そうですね。ステップとしては当たり前の情報発信をしていた時代から、プラスでしたほうがよい時代になっていて、それはやはり社数が増えたというのが大きいのでしょうか? 

後藤:大きいです。去年は純減でしたが、毎年100社ほどのペースで上場しており、だいたい決算の時期に一斉に発信されるため、時期が被っており見るほうも大変です。今日来ている方、見ている方の中には、個人で投資している方もいらっしゃるかもしれませんが、追いかけられないぐらい情報がたくさん出ています。

中小型株の流動性課題と現状

徳力:そこで今回、牧さんと齊藤さんが関わった調査が関わってきます。この背景をご説明いただきます。

:先ほどお話ししたとおり、私自身の会社は主に機関投資家向けにどのようなIRをすべきなのかを支援したり、実際に海外を含めた機関投資家との接点を作ったりすることをメインの活動としていますが、そもそも機関投資家に見てもらうためには一定以上の流動性がないといけません。

これは機関投資家でいうと、バリュエーションよりもまず流動性が彼らの基準に満たないと、まったく見ることができません。現実問題として、3,800社から3,900社ほどある中で、おそらく2,500社ほどがその基準に達していません。

徳力:半分以上が達していないのですか? 

:達していません。したがって、みなさまは流動性は非常に大事であるとわかっており、危機感を持って取り組んでいます。しかし、出来高を作るのはかなり難しいという事実がある中で、世の中には出来高ができている会社もあれば、できていない会社もあり、「その違いは何だろう?」と昔から思っていました。

そのような背景があり、個別事象を見ていくとキリがないのですが、ちょうど夏前くらいに、隣に座っているシュタインズの齊藤さんと出会いました。

徳力:よい出会いがあったのですね。

:はい。よい出会いがあり、ご紹介していただきました。

徳力:問題意識を持っているだけだと分析できないですものね。

:分析できないです。齊藤さんがデータ分析が得意で、株にいろいろと関わっており、「そのような分析を一緒にしてみませんか?」とお声がけすることとなりました。

徳力:齊藤さんは、もともとは投資に興味がなさそうなことをおっしゃっていましたよね? 非常によいタイミングだったのですね。

:そうですね。したがって、「出来高ができている会社は、何が要因になっているのだろう?」というのを見てもらったことが、今回のレポートの背景になっています。

徳力:よくわかりました。齊藤さんからその部分をご紹介いただきます。

個人投資家と情報ギャップの課題

齊藤:こちらはまだ問題のページですが、時間がないため先にレポートと分析の結果に進んでいきます。

我々の取り組みの例:出来高増大のトリガー分析

齊藤:今年の10月ぐらいに第1弾のレポートを出しました。

基本的に時価総額が500億円以下の小型株で、「業績成長が伴っていないが、回転数が高いところと低いところでどのような違いがあるのか」を、最初に大雑把に見ていきました。

それぞれだいたい50社ずつ、回転数の多いところはだいたい4回転以上です。回転数が少ないところは平均が0.9回転ほどのため、その半分の0.45以下の50社ほどに絞り、かつtoCで個人投資家にも知名度の高いところは要因のノイズになりやすいため排除して見ています。

徳力:回転数とは、売買のことですか? 

齊藤:そうです。年間売買です。

:対時価総額ですね。時価総額の何倍かということです。

徳力:回転していると、時価総額分は売買がありますね。

:そうですね。

齊藤:業績成長を伴っていないところをはじいたのは、「業績が上がっていくと出来高も上がり、株価も上がるだろう」ということは考えやすいため、IRをどのような要因で行って出来高自体が上がっているのかというところに注目したためです。

結果からお話しすると、まず適時開示とリリースの数は出来高と正の相関がありました。

この適時開示と今回のレポートに関しては、私がリリースをディスクロージャーインデックスというかたちでまとめてカウントしています。つまり、会社が載せている適時開示の活動のお知らせの数などをひとまとめに計算して、それが出来高に対して関係があるのかを見ています。

我々の取り組みの例:出来高増大のトリガー分析

齊藤:ディスクロージャーインデックスは、スライドには「100パーセントで約2倍」と書いていますが、だいたい年間100本プラスで出すとそれだけ増えるということです。

徳力:100本は多いからみなさま不可能と思われると思いますが、少なくともそのような傾向があるのですね。

齊藤:はい。ただ、これは相関は示しているのですが、因果まではまだ証明できていません。

徳力:「可能性があるかも」というところは見えたということですね。

齊藤:そうです。今出来高が少ない企業が、2026年に年間100本をリリースしたら出来高が2倍になるかと言ったら、そこまでは証明できませんが、出来高が高いところは比較的発信もアクティブであるといえるということは優位性があり、証明できました。

逆に意外だったところは、資料の有無もがんばってカウントしましたが、これは出来高には直接的に要因するというわけではありませんでした。

もう1つ、IRの施策で株主優待や配当を出すことはよくあると思いますが、こちらはむしろマイナスの相関があったのです。

徳力:これは意外でした。

齊藤:一方で、なんとなく直感的にはわかります。個人投資家としても、優待目的で買うとなると、短期で売買するというよりわりと長期的に持つという視点になるためです。

もちろんプラスに働いている企業もあるのですが、ある種そのような諸刃の剣、劇薬的な効能があることをわかった上でどのような手順を踏むかを考えるべきだと思います。

徳力:ここがセットで出ているのが、このリサーチのおもしろいところだと思います。株主優待を実施したら、株価がネガティブということではなく、あくまで出来高に対してネガティブな相関性があるというのは、納得感があるということですね。

後藤:特に株主優待は納得感があります。逆に、配当利回りの場合は短期的にマーケットクラッシュで沈んだりすると配当利回りが上がります。私は、これがディフェンスラインになると思っています。

配当が上がりすぎるとまた買う人がいますが、高いままキープされると確かに売買は少ないかもしれません。

徳力:株主優待目当ての人はずっと株主優待を維持したいため、頻繁に売買しないということですよね。株価は別ですが、少なくとも出来高にはネガティブな影響があると出ており、情報発信との相関はありそうだということが見えてきています。

我々の取り組みの例:PR TIMESにおける情報発信頻度の効果分析

齊藤:その後、今回このイベントもあり、今年の11月に追加でまたリサーチを進めています。特にリリースには「PR TIMES」を使っている会社が多いのではないかと思いますが、「PR TIMES」に掲載することで、本当に出来高に効果があるのかを調べている最中です。2023年から2025年までの過去3年間、11月頭までにリリースを出している企業の数を調べました。

定性分析で自然言語処理などをしないといけないため、内容までとなると大変ですが、個人的には非常にやりたいと思っています。

徳力:将来的にはやってくれるかもしれない、ということですね(笑)。

齊藤:はい。みなさまは「どのようなリリースを出したらよいのか」ということが気になると思います。

結論からお話しすると、この3年間、全部で1,800社ほどの上場企業がリリースを出していました。その中で一番多いところだと、年間でプレスリリースを1,723本ほど出しています。

徳力:年間ですか? 

齊藤:年間です。

後藤:ほぼ「PR TIMES」ですね。

齊藤:KADOKAWAなどです。私も「本当か? バグではないか?」と思って見てみたら、本当に1日20本くらい出している日もありました。

徳力:ちょっとしたメディアですね。

齊藤:そのとおりです。実はそれぐらい出している企業もあるということを知っていただけたらと思います。

結果の一部と銘柄例

齊藤:先ほどの出来高要因と似たような結果は得られましたが、こちらはあくまで時価総額別に分けて見たものです。結論からいうと、一番ポジティブな部分に関しては、時価総額が70億円から200億円ぐらいはリリースの数と、出来高に相関がありました。もちろんこれも因果ではありません。

それ以上、特に1,000億円以上になってくると認知度も高くなってくるため、質が求められるフェーズなのではないかというところがあり、リリースの数自体は出来高とほとんど相関はないと思います。

徳力:おもしろいですね。

齊藤:70億円未満の企業に関しては、出していなくても、仕手株のようになっているなどノイズもよく混ざっています。

特有の企業の効果のようなものがあり、今後はここをきちんと分離して分析していかなければならないため、断定的にお話しできることはないのですが、このラインの企業でも今後IRに力を入れていくことを考えるのであれば、その上のレイヤーの発信をし、出来高に寄与するような活動をしていく必要があるのではないかと思います。

我々の取り組みの例:スポンサードリサーチレポートの効果分析

齊藤:こちらは某スポンサーリサーチをし、アナリストや上場企業、個人投資家、機関投資家向けにレポートを出している企業について、レポートを出した後に出来高に寄与しているのかどうかを調べたものです。

徳力:こわいリサーチをしますね。

齊藤:こちらも長いタームで調べており、新型コロナウイルス前や新NISA導入後などでかなり市場が変わっているため、そこも細かく見ていく必要があると思っていますが、基本的には出来高向上に寄与していないというのが結果論でした。

徳力:はい。ここは軽めにしておきましょう。

後藤:内容の理解が深まる目的という感じですね。

徳力:これも納得感はありますよね。1本の記事が出て出来高がバンと上がるのなら、このような楽なことはないと思います。

後藤さんと牧さんは、このレポートの結果を見てどう思われましたか?

後藤:特に、配当と優待のところはおもしろいと思います。

徳力:ただ出せばよいのではないという、相関性の意味が伝わってくる感じがありますね。それがないと、noteがこのレポートを紹介していると手前味噌な感じもしますが、そのような相関があるのは本当におもしろかったです。

後藤:特に企業の内容が伝わりにくい会社ほど、ニュースバリューがないと「マーケットの円安、円高などと何の関係があるのだろう」と思いますが、やはりマーケットに引っ張られて売買されるしかなくなってしまうため、当然、個社の要因でニュースを出したほうが材料として取り上げられやすいというのは納得感があります。

徳力:牧さんはどうですか? 

:今回でいうと、ニュースリリースは多少影響があるかもしれませんが、実は他の施策がまったく関係ないという結果が出ました。これで誤解してほしくないのは、出来高をある程度作ることは何に効くのかという話です。

認知を最初に取る段階の話のため、すでにある程度認知を持っている、もしくは株を持たれている会社は、今行っている説明会や資料、スポンサードリサーチは意味がないのかというと、これはまた違う話です。あくまでも最初に出来高がない、マーケット認知がない会社が認知を取りに行く時の話だと思います。

また、先ほどのスポンサードリサーチで今後やっていかなければいけないのは、要は毎四半期に出ているレポートで何か影響があるかというとおそらくないと思いますが、最初にレポートを出すところだけを見て、本当に影響がないかどうかはまだ分析していません。

徳力:そうですか。まったく知られていない会社の最初のレポートのインパクトが大きそうですね。

:今後、そのようなところを見ていきたいと思います。

徳力:おもしろいですよね。私も2年前に「等身大の企業広報」でIRについてのセミナーをした際、スパイダープラス社が情報発信をした結果、やはり出来高との相関性があるというお話がありました。

ただ、私はIR業界から離れていたこともあり、実は当時はあまり腹落ちしていなかったのです。

しかし、確かに売買されない、機関投資家に相手をしてもらえなくなるという話になってくると、出来高が多いということはみなさまが注目しているということになり、それによって健全な株価が形成されるという意味では、重要ということですね。

どういう情報発信が出来高向上に影響するのか?

徳力:では、どのような情報発信が出来高向上に影響するのでしょうか。先ほどご説明があったように年間100本リリースを出せと言われたら、おそらく誰でも嫌でしょうし、年間100本というのは「数を見たら多いところはそうだった」という話だと思います。

一般的には70億円から200億円ぐらいの時価総額で、東証が「IRに注力していないのではないか?」となるレベルの、社員数も少ないような会社が情報発信をしなくてはいけない時に、従来は絶対に、まず決算情報や適時開示など必要なものに取り組みます。

年間100本は出さないまでも、それ以外にどのようなことが取り組みの一歩としてよさそうでしょうか? 後藤さんと牧さんは何かイメージがありますか? 

後藤:業務提携、取引先の増加など、出せることはたくさんあります。ただ、そのようなアイデアがないためスルーしていたり、連携がなく出せていなかったりすることは多いような気がします。

徳力:「PR TIMES」側では出しているが、投資家に届いていないなどというパターンもありますよね? 

後藤:それもありますね。私の場合は「第3四半期に当てたいから、ここに業務提携を作れるように事業サイドにお願いする」という感じで、逆算で設計します。

徳力:なるほど。CFO的な視点ということですね。

後藤:そうですね。私は逆算するのが好きです。 

:後藤さんのいうとおり、実は出せるネタはそれなりにあると思いますので、それをきっちり出していくことです。

今後はより精査していきたいのですが、ほとんどの人は「ラッキーだったらヘッドラインが目にとまる」という考えではないでしょうか。

あくまでも株をやっている人に見てもらうという観点でいうと、100本あるうちの5本から6本程度になるかもしれないですが、そのヘッドラインに株に関心がある人が引っかかるようなワードを入れるとよいと思います。そのようなアイデアをIR担当者が考えていくと、今あるものでも意外と違いが起こせると思います。

徳力:確かに生成AIなどを使えば、比較的簡単にタイトルのアイデアを出してもらったり、メディア向けのリリースをIR向けに書き換えてもらったりもできそうですよね。

なお、齊藤さんがいくつか企業の事例を分析してくれていますので、ご紹介ください。

銘柄例①

齊藤:先ほどのレポートの中で、実際、具体的にどのような動きをしているのかまでを個別で見ていき、取り上げられそうなものをいくつか選びました。リベルタは、年間で100本以上リリースを出している企業です。

徳力:年間で100本は多いという認識で合っていますよね。

後藤:多いですね。

齊藤:先ほどのKADOKAWAの例は衝撃的でインパクトが強いと思いますが、1,000件を超えていたのは学研とKADOKAWAの2社だけで、その次はABEMAです。プレスリリースには内容がいろいろあるということで、100件未満、年間数本から数十本がほとんどと訂正します。

徳力:まず、最初の事例のリベルタはリリースが1年で100本以上ある会社なのですね。

齊藤:2024年5月15日の株式分割の発表の時には株価は反応しなかったのですが、次週の製品で株価が暴騰しました。この会社は猛暑関連で注目が集まったところもあり、なんともいえない部分はありますが、業績成長は伴っていないものの出来高が高くなったという1つの事例です。

銘柄例②

徳力:次の事例が倉元製作所です。こちらも月平均5本から10本、年間でいうと50本から100本になりますでしょうか? 

齊藤:そうです。倉元製作所は、リリースはやる気がないという感じでした。PDFを掲載しているだけというかたちでしたが、こちらも業績の黒字見通しが入ったり、セットで出して注目が集まったりしたところがあります。

結果の一部と銘柄例:スポンサードリサーチレポートの効果分析

齊藤:先ほど後藤さんから「セットしてそこを目指して」というお話がありましたが、データ的に、私もそうだと思います。先ほど、外部のレポートはあまり効果がないと言ったのですが、サークレイスは2024年12月25日にレポートを出して、そこからどんと上がっていっています。

徳力:なるほど。これはレポートがうまくいったのですね。

齊藤:うまくいったパターンです。

この時に決算とAI関連のリリースも集中して出していたため、一発のIRレポートをとりあえず外部に頼んで終わりではなく、そこを1つの起点としたキャンペーンのようなかたちで、1ヶ月、2ヶ月と集めて取り組んだほうが注目度を高めやすいのではないかというのが個人的な感触です。

徳力:なるほど。スポンサードリサーチレポートもこういう使い方であればうまくいくということですね。

どういう情報発信が出来高向上に影響するのか?

徳力:おもしろいですね。そのまま今の事例の真似をすることはないと思いますが、こうした事例をどのように企業担当者は意識すればよいのでしょうか? 

後藤:牧さんがおっしゃられたように、初手として認知度を上げるという意味で作るのはよいと思います。先ほど見てわかったかと思いますが、けっこう特徴的なチャートです。私も毎月末に1年前と比較して2倍以上になっている時価総額1,000億円以下の銘柄を、半年前、3ヶ月前、1ヶ月前と切ってリサーチしていますが、そのようなチャートのかたちが多いです。

徳力:最初のスライドの、リベルタのようなチャートですね。

後藤:どんと上がってシュッとしぼむというようなチャートです。瞬間的に上がるのですが、また収斂してしまうため、必ずしもこれ自体が良いかどうかという懸念はあります。

ただし、ポイントとして、モメンタムを形成するのは非常に大事なことです。モメンタムを形成できないと、不安になってすぐに売ってしまう方も多いため、売り勢の心が折れるまで打つという感じです。

徳力:1回注目が集まって買ってもらえるものの、その後不安になって売ってしまうということですね。

後藤:すぐに比較する方々や、「ショートだ」と言っている人がいますが、そこで心が折れるぐらいリリースを用意しておくと、出来高のモメンタムが形成されて「お祭りだ」といったん認知が取れるのです。

その後、実際の業績の中身などで証明していくとよい流れが作りやすいです。

徳力:この動きはありがちということですね。

後藤:これはよくあります。

徳力:特に出来高が少ないからこそ、買うと一気に上がってしまうことがあるということですね。

後藤:おっしゃるとおりです。

:先ほどお話に出た50社について、その中でも、一時期に出来高が増えてもとに戻ってしまった会社と、比較的維持できている会社に分かれていました。

もちろん、最大のファクターは業績ですが、継続できている会社は、それ以外にも定期的にリリースを出していることが多いと感じています。

徳力:齊藤さんにこのような分析をしていただいたので、チャートで理解できるのはありがたいですね。

後藤:本当におもしろいですね。

徳力:おもしろいです。

第二部:成功事例に学ぶ企業のIR発信事例

徳力:それでは第二部に移りたいと思います。

「成功事例に学ぶ企業のIR発信事例」というと、三井さんのハードルがかなり高くなってしまいますが、実際に情報発信をしている企業はどのようなことを考えているのか、後半は具体的なお話を中心にお聞きできればと思います。まずは自己紹介をお願いします。

登壇者紹介

三井俊治氏(以下、三井):株式会社ユナイテッドアローズでIRを担当している三井と申します。

徳力:IRはどのくらい担当されていますか?

三井:明確には覚えてはいませんが、10年強担当しているのではないかと思います。もともとは新卒で広報職に就き、転職後も広報を続けて、ユナイテッドアローズに入ってからも広報でしたが、ある時期からIRも兼務するかたちになり現在に至ります。私はファイナンス畑ではなく、広報(PR)畑からIRに来ました。

徳力:IR担当になる方は、広報畑か会計畑かのどちらかだと思います。

三井:そうですね。ファイナンスには強いけれど、話すのは苦手なタイプか、よく話すけれど、あまりわかっていないタイプのどちらかになってしまうと思います。私は、よく話すけれどあまりわかっていなかったため、「とりあえず勉強しよう」という感じでした。

徳力:ありがとうございます。では、後藤さんにも引き続きご参加いただいて、進めていきたいと思います。

後藤:よろしくお願いします。

ユナイテッドアローズの情報発信

徳力:まずは、ユナイテッドアローズがどのような情報発信をされているのかをご紹介いただければと思います。

本日は「note」のイベントですので、「note」の活用事例としてお越しいただいていますが、御社の「IR note」は立ち上がりがとても早かったですよね。

三井:見直したところ、スタートしたのがちょうど3年前の明日でした。

徳力:本当ですか。偶然ですね。どのようなきっかけで始めようと考えたのですか? 

三井:IRを担当している方はみなさまご存じだと思いますが、配当に合わせて、株主通信というかたちで半年間のいろいろな出来事を紹介する冊子を作ります。

徳力:懐かしいですね。私もNTTの時代に担当していました。

三井:それを年に2回作って発行します。配当の書類と一緒に送るため、重量制限があり、ページ数や掲載スペースも限られます。

なおかつ、年に2回しか発表できないため、まったくタイムリーではありません。そのわりにお金がかかるし、紙で作るのはとても大変です。

徳力:文字や数字の間違いがあると、本当に怖いですよね。

三井:それだけお金をかけて、大変な思いをして作っているのですが、「本当に読んでいるのか?」「捨てていないか?」と思っていました。実際に私自身も、証券会社などから送られてくる資料はほとんど読まないのですよね。

徳力:会場で大きくリアクションしている方がいらっしゃいますね。

三井:「そこにお金と労力をかけるのはどうなのだろう?」とずっと考えていたので、「電子化してみよう」と思いました。

自分たちでメディアを作るか、どこかのブログでするかを探していた時に、当時、「note」でIR発信をしている企業が数社いることを知り、「これは『note』でできるのではないか」と思い、スタートしました。

徳力:当時から「IR note」というタイトルを使っていたのですか? 

三井:はい。IR目的で、IRの予算で始めました。

徳力:当時、「note」で発信する企業もそれほど多くない時代でしたので、「IRでアカウントを作る企業があるのか」と、非常に驚いたのをよく覚えています。

普段のnoteの発信事例としては、月次の売上情報などがわかりやすいですよね。

三井:そうです。11月の記事も先ほどアップロードしたばかりです。

徳力:これを見て、私はユナイテッドアローズさんは少しずるいなと思ったのですよね(笑)。

後藤:ビジュアルがすばらしいですね。

徳力:はい。売上概況に、写真映えする画像が入れられるのが良いですよね。

三井:このようなビジュアルは、Webサイトでも以前から使っています。

徳力:「ファッションの画像はずるいな」と思いながら見ていました。売上概況も、華があるビジュアルになるのはうらやましいですよね。一方で、一般企業が真似しやすいのは決算情報の記事でしょうか?

三井:そのとおりです。

徳力:これまでは冊子にグラフを掲載されていたのを、今は「note」に画像を挿入されているイメージでしょうか。

三井:こちらも全部を読むのは大変なので、「こことここ」というポイントだけをハイライトにしておき、興味のある方はオリジナルの部分に飛ぶだろうという考え方です。

手応えを感じた発信はどういうもの?

徳力:当時は、スタートアップ企業はnoteの活用が増えていましたが、ユナイテッドアローズ規模のところはあまりなかったと思います。noteの発信で、手応えを感じた発信はどのようなものですか?

三井:スライドの「CITEN(シテン)」というブランドです。

徳力:まず、「CITEN」とは何かを教えていただけますか? 

三井:どちらかというと、当社はビジネスで使える服や、きれいめの服を取り扱っているイメージがありますが、「CITEN」はもう少しカジュアルに振っていて、より若い方にアピールしていくようなブランドです。3年ほど前にスタートしていますが、最初は郊外のららぽーと中心の出店でした。したがって、都心の方は、ほとんど目にする機会がなかったのです。

広報リリースが出た時に、「これはIR用に変換して出してもよいのでは」という話になり、中期計画の中で「こういう考え方をしていて、その一環としてこのようなことをしています」というのを提示しました。

今回お話をいただいて、「どの記事のページビュー(以下、PV)数が多いのかな?」と見たところ、一番は株主優待で、2番目がこちらでした。

徳力:なるほど。

三井:見ている方はお客さまでもあり、投資家でもあると思っています。「ユナイテッドアローズはこんなにおもしろいことをしている」「新しいことをしている」というところへの関心が非常に高いのだと再認識しました。

年間140件ほど投資家の方と話していると、ほぼ1年中投資家の方とお話ししているため、どうしても脳が機関投資家寄りになってしまいます。

徳力:機関投資家の方は詳しいので、芯を食った質問のほうに寄りがちですよね。

三井:以前はそのような視点で発信してきましたが、「あ、これなんだ」と気づきました。先日、東証のIRフェアでの個人投資家向けの説明を見た時も、やはり視点や切り口がまったく違うと感じました。

徳力:同じ投資家でも、機関投資家と個人投資家では刺さる情報が違うという話ですね。

三井:はい。このような取り組みはプレスリリースで発信していますので、それをIR用に変換して出すと効果があるのではないかと思います。マンパワーが足りず十分にできていないのが現状ですが、手応えは非常に感じています。

徳力:このようなお話を聞いて、後藤さんはいかがですか? 

後藤:非常によいと思いますし、おもしろいですね。あと、一番大事なのは、どの記事のPVが反応しているのかがデータで取れるところです。反応度がわかるのは手応えがあって、とてもよいと思います。

徳力:難しいですよね。冊子は冊子でよさはありますが、手応えがありません。

後藤:おっしゃるとおりです。

徳力:どの記事が読まれたかもわからないですし、そもそも開いているのかもわかりません。

三井:「note」を使うことでコストが下がり、情報量も増え、効果もわかるため「もうこれでいいじゃん」と思っています。

徳力:そうですね。以前、別のIRのセミナーでご一緒した時に、本当は私が「note」の宣伝をしなければならないのに、三井さんが「『note』の有料プランは、投資家向け説明会のコストに比べたらぜんぜん安い」と話してくださったのが印象的でした。

三井:本当に安いと思いますよ。

徳力:私も、驚きながらお話を聞いていた記憶があります。きっかけは、先ほどの「このような情報発信をしたほうがよいのではないか」という、ふとした問題意識だったのですね。

三井:そうですね。「お金や労力をかけて続ける意味が本当にあるのか?」と思うことを継続するのに抵抗感がありました。ただ、上場以来続けていることをやめるのにもそれなりの勇気が要りますが「まあいいや」と切り替えました。

いろいろ議論があると思いますが、そこで浮いたお金はスポンサードリサーチに使っています。

徳力:なるほど。おもしろいですね。余談ですが、週刊文春が紙の媒体と並行してオンラインを始めた時に、最初は記者の方々は嫌がっていたものの、記事が「Yahoo!ニュース」のトピックスで取り上げられるようになって、非常にモチベーションが上がったという話があります。

それまで雑誌の記者の方は、自分の記事が売上に効いている手応えがまったくなかったらしいのです。ある意味、それと似ていますよね。

デジタルならではのフィードバックが取れることによって、どのような情報に意味があって、重宝されるのかがわかるし、読まれていない記事でも反応が返ってきます。「このような記事にも意外と意味があるのだ」と、定性的にわかるのは大事ですね。

徳力:もう1つの事例としてご用意いただいたのは、株主優待の記事ですね。

三井:株主優待を2年前から電子化したのですが、紙から電子に変えたら、問い合わせが非常に増えました。

徳力:当然ながら、やり方が変わるからですよね。

三井:はい。「これはたまらないな」というぐらい増えました。問い合わせ内容はだいたいパターンが決まっているため、それを全部「こうですよ」とまとめて、使い方やダウンロード方法、取得の仕方、「保存をミスした時はこうしてね」といった内容をすべて「note」に書きました。

問い合わせが来たら、「ここを読んでください」と返すと対応が非常に楽になります。また、お客さまも「何かあればここを見ればよいのか」とわかりますので、副産物として、「よく聞かれることは全部ここに書いてしまえ」というかたちです。

徳力:私もこういう活用をおすすめしたいです。「note」ではなくてもよいのですが、オンライン上にそのような質問が多いことへの情報を出していない企業が多すぎると思います。結果、電話や問い合わせのメールがたくさん来て、毎回同じ返事を書くことになります。

でも、このように1記事書いておいて「この記事を読んでください」と返せば、少なくともメールの労力は減ります。このような記事であれば、バズらなくても意味があるということですよね。

ユナイテッドアローズの場合は、そうした問い合わせ対応のための記事と決算情報などのルーティーンの記事を組み合わせながら発信を続けられていて、本当は「CITEN」のような記事を増やしたいものの、忙しくて増やせていないということですね。

三井:今日も、2026年1月からIRに加わるメンバーが1人来ています。マンパワーが揃うため「ここを今後やるよ」ということです。

徳力:プレッシャーをかけるために、このセミナーをやっているのではないかという気持ちですね(笑)。

三井:公共の場で圧力をかけます(笑)。

徳力:後藤さんとしては、どのような記事を出すのがおすすめですか?

後藤:基本的には決算説明資料です。

徳力:まずは出している情報に、ビジュアルなど組み合わせていくのがおすすめだということですよね。

後藤:そうです。ただ、決算説明資料は、各社30ページから50ページぐらいのボリュームになっていて、「この順番にこれが書いてあるんだ、遅いな」「これはもっと上に出したほうがよいな」と思うことがけっこうあります。

徳力:なるほど。会社の特徴となるべきものが奥のほうに眠っていて、そこに投資家がたどり着けていない可能性があるということですね。

後藤:そうです。Webと一緒で、ページの上からドロップしていくため、「今投資家が知りたいのはおそらくそこではないのだろうな」と思いますが、「お作法的にこのあたりに書いておこうか」ということで、遅くなることがあります。

徳力:確かに、他社のスライドの順番を真似して編集するとそのようになりますね。

後藤:だいたいそのような流れで、来期業績予想は後ろのほうに入っていて「いや、最初に出そうよ」と思うこともあります。その時に、「note」で関心がありそうなテーマを個別に出すのは非常に有効だと思います。

徳力:なるほど。おもしろいですね。三井さんからも、「こういうのを試行錯誤してうまくいった」というヒントはありますか?

三井:決算に関していうと、出ている情報を編集し直すだけですので、そんなに手間はかからないのです。

徳力:この記事だけを見ると「作るの大変だろうな」と思ってしまいますが、そもそもこの画像は冊子用に作っているものであるため、大変ではないということですよね。

三井:はい。どこをピックアップして、どのように表現するかだけを決めればよいので、実はそれほど大変ではありません。

月次も発表しているものを編集するだけで、ありものをどう使い回すかです。プラスオンで何かしようとすると、疲れてしまいます。

徳力:そうですよね。ここは非常に大事ですね。IR担当の方も、「『note』で情報発信をしなければならない」と思うと、「業務が増えるのか」となりますが、まずはあるものをWebに載せることによって、「今ない状態をある状態に変える」ということですね。

先ほどおっしゃっていた「CITEN」については、当然ながら手間がかかるため、三井さんですら完璧にはできていないという上級編です。したがって、まずはありものの編集や問い合わせの多いものから始めるという話です。

効果測定はどのように行うべき?

徳力:もう1つのテーマとしてお聞きしたいのが、効果測定です。三井さんも後藤さんも偉い人なので、偉い人が「やるんだ」と言ってやれば、できるような話だとは思います。しかし、おそらく今日のセミナーに参加されているのは、「私はやりたいと思うのだけど、上司に『これは意味があるのか?』と言われる懸念がある」ような方です。

これは「note」活用全般でも必ず言われることですが、IRの場合は、手応え感や効果測定をどのように行うべきだとお考えですか? 

三井:「note」で効果を図れるのは、PVやフォロワー数です。

徳力:見えるものを測定するかたちですね。

三井:そうです。それが先ほどの出来高や株価にどのようにつながっているのか、その相関関係まではぜんぜん考えていません。

徳力:そうですよね。今日の前半の話を受けて心配になるのは、情報発信をしたらすぐに出来高に相関があると経営者が考えると担当者の方が絶対に疲弊してしまうことです。そのため、「そうではないよ」というのを共有したいと思いました。当然ながら、数字はメインで考えているわけではないですよね。

三井:一定のフォロワー数を確保できていれば、その人たちと常にコミュニケーションが取れます。コミュニケーションの場が持てることを重視しているため、フォロワー数の増え方や、PV数の増え方とか、そのあたりはあまり重視していません。

徳力:そこの数字の感覚は、三井さんは投資家とのリアルのコミュニケーションと脳で変換しているということですね。

三井:そうですね。「フォロワー数が何人だったら成功なのか」という考え方はどこもしておらず、基準がありません。したがって、私がよいと思ったら「よい」と言います。

徳力:うらやましいですね。みなさまも「三井さんが上司だったらよかったな」と感じる話かと思います。後藤さんは、この効果測定について何か考えはありますか? 

後藤:私は、IR全般における効果測定として、会うたびにいろいろな人に、「適時開示のダウンロード件数や閲覧件数は、定期的にモニタリングしていますか?」と聞いています。

徳力:意外に見ていないということですね。

後藤:はい。意外に見ていないのです。例えば、私が支援している会社で言うと、優待は、やはり適時開示も閲覧件数で上位に来ることが多いです。

しかし、決算説明資料の閲覧数のほうが、次第に上がってくると感じる時があります。すると、出来高には相関がなかったとしても、事業に興味を持っている人は一定増えてきていることがなんとなく感じられるのです。

やはりマーケットの流れがあるため、「いいな」と思ってもすぐに購入したり売却したりはしません。しかし、興味を持ってくれる層が増えているかどうかで言えば、業績に関連があるような適時開示・決算説明資料がどの程度見られているかは参考にしやすいのではないかとは思います。

徳力:ポイントはやはり、お二人とも数字を俯瞰的に見られていることですね。IRだけではなく、オウンドメディアやSNSでも必ず起こる話ですが、数字が見えるが故に、他社と比べて「多い少ない」「早く抜け」となりがちで、数字だけ見始めると本質から離れていくケースが多いイメージがあります。

本来IRは、投資家に向けて出しているはずです。しかし、投資家向けではない情報を出したほうがPV数は増えます。それは本末転倒ですよね。

後藤:そのとおりです。目的意識をどこに置くかによっても変わってきますが、リーチできる数を増やして、必要な時にズドンと刺さるものをより多くの人に届けたいので、フォロワー数を常にキープしておきたいというのは理解できる戦略です。

「そこは出来高に相関していなくてもぜんぜんよいです」といった目的意識の関係で組み立てやすいと思います。

徳力:ユナイテッドアローズの場合も、決算や月次を定期的に出しているからこそ、それ以外の情報で見られるとプラスアルファのように取れるわけですね。

三井:数字の効果もありますが、どちらかというと業務のほうが大きくて、年2回グッと集中していた業務が分散化されるのではないですか。

徳力:それは大きいですね。

三井:それが楽です。「紙をやめるって、こんなに楽だったんだ」と思います。

徳力:確かにそうですね。当然ながら、メリット・デメリットはあります。紙はできたら完成して打ち上げに行けますが(笑)、Web版は延々に打ち上げがない状態になりやすいですよね。

三井:「その日までにこれだけの情報を集めなければ」というプレッシャーから逃れられて、とりあえず決算を出して、「何日以内に出そうかな」といったかたちでわりと緩めです。忙しい時は遅れたり、忘れてしまったりする時もありますが、そのプレッシャーの少なさ、追われない感じは非常に助かっています。

どのように社内を説得するのか?

徳力:なるほど。ちなみに、どのように社内を説得するのかを聞いておきたいのですが、お二人の場合は、説得する必要がないポジションかもしれません。ただ、IR担当の方々がこのような情報発信をしようと思ったら、おそらく他部署の協力や、当然ながら上司や経営者の協力が必要だと思います。どのように巻き込んだり説得していくのがよいのでしょうか? 

三井:やはりコストで説得するのがよいと思います。私の場合は「紙で作っているよりも、これぐらいコストが下がりますよ」「業務が分散化されるから、より質が上がりますよ」「頻度も上がりますよ」と言います。

徳力:紙で作っている方々がデジタルシフトするのであれば、コストメリットから入っていけますし、意外とシンプルでわかりやすいというお話ですね。後藤さんはいかがですか? 

後藤:確かにそうですね。コストメリットのようなところもありますし、他に切り替えるものがなくて、新たにこれだけ始めるケースだと、「他の会社はどのくらい行っているのか?」ということは聞かれると思います。先ほど出ていたとおり、「今は100何社ほどが行っている実績があります」という話ですね。

あとは、あまりデメリットがありません。おそらく稼働ぐらいですね。 

徳力:あえて食いつきますが、稼働のことはよく聞かれますか?私はIRの古い人間なので、しなければならない業務があると思うのです。

後藤:ありますね。

徳力:これにプラスしてしようとしたら、「意味あるの?」と絶対に聞かれると思います。

後藤:「意味あるの?」は、聞かれますね(笑)。

徳力:「あなた、これに毎週数時間を投じるの?」と聞かれそうです。

後藤:最近は、AIが非常に進化しています。そのため、省力化しながらどのように有効なことをしていくのかという点で、うまく組み立てられるのであればよいと思います。ゼロではないと思いますが、負担にならなければよい気がします。

徳力:期待値のコントロールも大事ですよね。今回、セミナーを設計している私が言うのも憚られますが、「情報発信すると出来高が増えるらしい。そのためにコストをかけてやろう」となると、話がおかしくなってしまいます。

そうではなく、投資家の方々が今必要としている情報が、実はオンライン上にないのではないかという問題意識から、まずはオンライン上に情報がある状態を作っていこうということですね。

そのための予算を紙からひねり出すのもよいですし、情報がないのであればないこと自体が問題であるため、きちんと出さなければなりません。そもそも投資対象としてのライバルが山ほどいるわけです。

後藤:山ほどいます。これだけあると、今日ご来場いただいている方や、オンライン視聴していただいている方の中には、私が知っている企業の方もたくさんいらっしゃいます。日々みなさまの会社のマーケットは見ていても、個別の開示までをすべて見ているわけではありません。

そのため、久しぶりに会うと「そういえばどうなっているのだろう」と確認することがあります。それと同じ感覚で、例えば『IR noteマガジン』が届くと、「最近どうなっているのだろう」と引っかかって見に行く時があります。何もないよりは知るきっかけになると思います。

徳力:三井さんはいかがでしょうか? コストではなく発信すること自体の意義という点で、定性的な反応で「よかったな」と思う時はありますか? 

三井:株主アンケートを毎年1回取っており、「『note』を見ていますか?」という質問をしていますが、見ている方は徐々に増えています。また、今日行いましたが、個人投資家向けのオンラインの説明会を開催しています。

通常だと、どこかの証券会社やイベントに絡めてするのが多いと思います。しかし、それはコストがかかりますので、あくまでも「note」の発信、IRサイトでの発信、そして当社のPR情報に入れるくらいです。平日のお昼休みの時間に発信しています。

いろいろな時間に発信しましたが、結局お昼休みの参加がよく、そんなに数は多くないですが一定数は来てくださいます。

徳力:その時間帯に、個人向けの説明会をするのは珍しいですね。ファンが多そうなユナイテッドアローズならではというかたちでよいですね。

三井:それで、一定数の方と3ヶ月に1回、このようにコミュニケーションが取れるわけです。

徳力:それは「Zoomミーティング」的なものですか? 

三井:「Zoomウェビナー」です。

徳力:おもしろいですね。チャットのコメントなどで質問が来るのですね。

三井:質問があれば受けるかたちです。今考えているのは、そのようなイベントを定期的に行いながら、そこでいただいた質問に対して「note」上で返していくことです。そのような間接的なキャッチボールのようなことを、イベントと絡めながらできないかを模索しているところです。

徳力:おもしろいですね。アンケートは非常によいと思いました。「note」が今一番使われているのは採用広報なのですが、採用広報が手応えを得るのに一番よいのが、面接をした人に「どの記事を読みましたか?」と聞けることです。

どのような記事を読んで来たのか、どの記事が記憶に残っているのかが定性で見えますので、PVに引っ張られすぎなくて済みます。「面接に来ている人は、こういう記事を読んでいるんだ」ということがわかります。

PVは花見スポットの記事が多かったとしても、面接に来る人はぜんぜん違う記事を見ているというのが、アンケートを取るとわかります。そこはぜひ、みなさまも大事にしていただけるとよいと思います。

私としては「note」を使っていただきたいのですが、最後に、オンラインで見ている方や会場に来られている方に向け、デジタルで情報発信をする最初の一歩として、「このようなところからトライしてみるとよいのではないか」「上司をこのように口説くとよいのではないか」といったアドバイスを一言ずついただいて、締めたいと思います。

「IR noteマガジン」

徳力:「note」では、先ほどもご紹介いただいた「IR noteマガジン」が、「note」としてもIRのきっかけになっています。そこから「IR向けにいろいろやったほうがよいのではないか」というリクエストもいただくようになり、このようなセミナーを開催するなど、いろいろ模索しています。

「noteマネー」と連携

徳力:最近では「noteマネー」という、投資家向けのまとめポータルのような情報サイトをオープンしています。ここには各企業の「note」での発信を投資情報と紐づけて出すような機能も組み合わせています。

このような場所と、企業の方々が運営している「note」を結びつけて情報を出せるようにもトライしていますので、ぜひ企業の方々には「note」を開設していただければと思います。

投資家への発信を最短1週間で強化!「note IR執筆プラン」をリリース

徳力:また「note IR執筆プラン」を11月から始めており、現在キャンペーン中です。このセミナーはこのキャンペーンのために開催しているものとなりますが、どうすればよいかわからないという方、興味がある方には資料等を送りますので、ご検討いただければと思います。

後藤:これは無料でサポートしていただけるのですか? 

徳力:有料です。まあまあの値段がかかります(笑)。

後藤:なるほど(笑)。

徳力:「人手はないけれどお金はある」という企業は、こちらを検討いただくのがよいと思っています。当然ながら、三井さんのように自分たちでできる方は自分たちでするという手もありますし、「note pro」という「note」の有料版では、我々のメンバーがサポートしますので、併せてご検討いただけますと幸いです。

(※「本日の感想をアンケートでお寄せください」のパートは割愛しています)

徳力:最後にお二人からみなさまにアドバイスをいただいて、締めにしたいと思います。 

後藤:始めやすいところで言うと、おそらく決算情報がよいかと思います。今だと、いろいろな株系メディアが短信などから自動で記事を作り出して、良くも悪くもヘッドラインを作ってしまいます。したがって、本当に伝えたいことが伝わりにくいヘッドラインになってしまうことがあります。

徳力:なるほど。おもしろいですね。

後藤:そうなのです。そのため、それに対抗するように自分たちで「今回の決算はこうでした」と端的に示すだけでも、十分に効果があると思います。そのような簡単なところからでもよいのではないかと思います。

徳力:おもしろいですね。私は当時、決算短信はシートを作ってPDFで出すことで仕事が終わったような気持ちになっていましたが、それを翻訳するだけで、個人投資家からするとぜんぜん意味が違ってきますね。

後藤:そのとおりです。例えば、何十パーセントも減益になった時に、「なんで減益になっているのだろう」というのがわからないヘッドラインのままだと、よくありません。

徳力:短信情報だけでまとめられてしまうと、株メディア・投資メディアではネガティブに取られてしまうということですね。

後藤:そのとおりです。そのような時は「先行投資をしたためこうなりました」というヘッドラインを自分たちで無理やり作ってしまうことができます。内容はそれほど大きく変えなくてもよいです。ヘッドラインを変えるだけでも、かなり手間が楽なのではないかと思います。

徳力:ある意味、たたき台自体はAIで作って、大事なところだけ手で変えるようなやり方はありそうですね。よいアドバイスをありがとうございます。

三井:私は、がんばりすぎないのが一番よいと思います。「これをやって、これを使ったら、こんなこともできて、あんなこともできて、きっとこうなるだろう」と期待しすぎてしまうと、実際にそれが回らなかった時の絶望感が大きいと思います。緩く始めるというのが一番よいと思います。

徳力:そうですよね。三井さんは、世の中的に誰もIRの情報発信に期待していない時に「note」を始められています。ある意味、実験的に始めてみて、自分たちが楽になるよう株主の問い合わせを減らすためにしてみたり、コスト下げるためにしてみたら、思いのほかうまくいったかたちですね。

このようなセミナーを開催すると、うまくいく前提でアピールしがちですが、まずは自分たちなりに手軽に始められるところから始めてみて、うまくいったら私に教えていただけると、それを横展開できると思います。ぜひよろしくお願いします。本日のセミナーは以上になります。ご参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました。

facebookxhatenaBookmark