eWeLL、急拡大する慢性期医療領域をDXで支援 高収益・高成長の裏側と在宅医療のプラットフォーマーとしての将来ビジョン
会社紹介

中野剛人氏(以下、中野):株式会社eWeLL代表取締役社長の中野です。よろしくお願いします。
まずは、当社についてご説明します。eWeLLは訪問看護を中心に在宅医療のDX支援を行っています。2012年に大阪で起業し、10年後の2022年9月にグロース市場へ上場しました。現在は103名の少数精鋭のメンバーで、事業の企画、経営、運用や新たな挑戦に取り組んでいます。
当社が展開しているすべての事業は、お客さまの成長とともに、当社の利益にもつながるWin-Winの関係を構築するビジネスモデルです。
先ほどご説明したとおり、いわゆる在宅療養という新たな領域で中心的な役割を担うのが訪問看護といわれています。当社は、その訪問看護分野に向けてシステムを開発・提供するビジネスモデルを展開しています。
当社は在宅医療のプラットフォーマーとして、医療従事者の業務を効率化し、患者さまが自宅で療養できる体制を整えることを目指しています。さらに、質を落とすことなく、看護を担う訪問看護ステーションが訪問件数を十分に確保できるように、DX、すなわちシステムを活用して効率化を高めることを行っています。
事業概要 在宅医療における訪問看護領域

中野:日本の医療の領域を4つの矢印で示しています。効率化のご説明をする前に、ここからご説明することで、よりご理解いただけると思います。
日本の医療を4つに分けた際の「急性期医療」ではこれまで、病院で手術を受けて回復すると、医師の判断で「帰っていいですよ」となれば自宅に帰れる、というものでした。しかし、今後は「急性期医療」の手術が終われば、そこから自宅で療養を行う体制が国策として進められます。
このような体制変更の大きな理由の1つは、医療費を35パーセント削減できることがわかっているためです。手術は病院で行うものの、その後の療養・回復は自宅で行うというかたちを政府が国策として推進しています。
一方で、この新たな体制を構築する上で訪問看護が非常に重要な役割を担うため、訪問看護の重要性がいっそう増しています。
事業概要 在宅医療における訪問看護領域

中野:こちらは、「慢性期を自宅で療養する際はこういう体制にしてください」という厚生労働省が作成した図ですが、少し古いものです。新たな地域包括ケアシステムが現在考案されていますが、まだ完成には至っていない状況です。この図には無理があり、医療と介護の連携が現実的には困難であることがわかります。
具体例として、医療側が医学的な指示を出しても、生活援助を行う介護側がそれを正確に理解できないことがあるという問題があります。その逆のケースも同様です。例えば、医師が診療中に「電球を買い足した」といった生活の情報を聞いても、医療の現場ではあまり役立つことがない場合があります。このように、図としてはまとまっていますが、この体制を実際に機能させるのは難しい状況です。
訪問看護については、随所に記されているとおり、訪問看護師が介在することで、医療と介護の双方に対応することが可能となります。訪問看護は保険を利用して提供されるサービスで、医療保険と介護保険の両方を唯一扱う医療従事者の集団です。この特徴により、訪問看護は医療と介護の両方を結び付ける役割を果たし、中心的な役割を担っています。
訪問看護市場の高成長

中野:訪問する頻度についても特徴があります。訪問看護師は平均して1ヶ月におよそ8回自宅を訪問するため、訪問回数が最も多くなっているという調査があります。一方で、医師の訪問はおおむね月に2回程度であることから、訪問看護の頻度の高さが、家族からの信頼を得る一因となっています。
このように重要な役割を果たす訪問看護が現状どうなっているかというと、私たちは2012年に起業して以来約13年が経過しましたが、その間、訪問看護ステーションの数は約6,000ステーションから1万8,743ステーションにまで増加しており、現在でも拡大傾向にあります。
eWeLL 安定した成長

中野:我々は、少数精鋭で事業に取り組むことで、高効率かつ人件費を抑えて運営しています。その結果として、営業利益率ランキングでは全上場企業中25位という成果を上げています。また、ROEランキングでは61位という状況です。
将来構想 在宅医療のプラットフォーム

中野:今後の成長戦略についてです。当社が目指すことは、現在行っている事業を基盤として、「iBow」を活用したビジネスを引き続きしっかりと成長させるのはもちろんのこと、次の戦略として、「けあログっと」をリリースしました。
これは在宅医療の連携を目的としたプラットフォームです。我々は日本列島全体の訪問看護ステーションの情報を網羅しており、そのデータを活用して、従来データ化されていなかった情報を医療機関側で活用できるようにしました。
医療機関でアナログの携帯電話を用いて空きを確認していたような運用を、システム上での運用に切り替えることで、稼働状況や訪問看護ステーションの特徴まで細かく把握することが可能になります。さらに、空き状況も画面上で確認できるため、迅速にアサインができる点が特徴です。
これにより、従来の電話での手続きが不要となり、退院のスムーズな促進が可能になります。このシステムを医療機関に無料で展開する予定です。また、後ほどお話しする機会があれば、無料の意図についてもご説明したいと考えています。ご説明は以上です。
荒井沙織氏:それでは、ここからはIR Agentsの関本さんと一緒にじっくりうかがっていきたいと思います。まずは関本さんの視点で、中野社長に聞いてみたいポイントを教えてください。
関本圭吾氏(以下、関本):中野社長、プレゼンありがとうございました。まずは私から、質問の前提として「どういうふうに見ているか」のご説明ができればと思います。
株価の推移を考える

関本:まずは株価の推移についてです。2020年1月頃から2020年6月を底として、その後約1年間は決算を通じて安定的に上昇していました。右側の四半期決算をご覧いただいたとおり、売上成長も利益成長もすばらしく、高業績を背景に株価が伸びていると考えています。
一方で、直近半年ほどは株価が横ばいで推移しています。過去を比較すると、第3四半期の業績が良かったにもかかわらず、株価は比較的落ち着いています。このような中で、「来期に向けてどうなるのか?」のような議論が必要なタイミングになっているのではないかと思います。
株価の推移を考える

関本:同様に、バリュエーションに関していわゆるPERについてです。冒頭のKenさんのお話でもありましたが、こちらのグラフは、四季報ベースで来期のPERと今期のPERの推移を見た際の状況です。赤い線が来期の利益を基準としたPER、青い線が今期の利益を基準としたPERを示しています。
おおよそ昨年、2024年12月頃の来期のPERが30倍程度であり、現在も同程度の水準となっています。このことから、今期の売上が30パーセント増、利益率が40パーセントから50パーセントと非常に高い成長を遂げているものの、成長率という観点だけを見ると、「2026年12月期に2025年12月期並みの成長を実現できるのか?」ということが市場から問われているのではないかと考えています。
聞いていきたいところ

関本:開示内容が非常にしっかりしている会社であり、3年間の中期目標や「契約数や単価はこういうふうに推移させていければよいと考える」といった情報が開示されています。それぞれの状況についてお聞きしたいです。
聞いていきたいところ

関本:また、個人的に質問したい点として、AI関連製品に注目しています。これにより単価が上がるとおもしろいと思うので、この点についてもお聞きしたいと思います。
あとは、今回初めてご覧になる方もいらっしゃると思いますので、事業全体や、中野社長がいらっしゃることも踏まえて、ビジョンについておうかがいできればと思います。
補足資料 1 創業の経緯

関本:はじめにうかがいたいのは、そもそもの事業の成り立ちについてです。中野社長はかつて水上バイクのプロ選手でいらっしゃったとお聞きしました。そのようなスポーティーな経歴から、なぜ訪問看護の、しかもシステム領域に進まれたのか、大きな転機やきっかけがあれば教えてください。
中野:確かに、前職では水上バイクのプロライダーをしていました。ただ、プロライダーになる前の練習中に事故を起こし、10日間意識不明の重体となり、生死をさまよったという経験があります。
その際、命を救ってくれたのは看護師さんでした。もちろん医師の治療もありましたが、最初に異変に気づいてくれたのは看護師さんでした。そこからはプロ生活を送っていましたが、約13年前に引退し、「恩返しをしよう」という思いから現在の事業を始めました。
関本:その経験がきっかけで、看護領域の中でも訪問看護という領域に魅力を感じ、この分野に進まれたということですね?
中野:そうです。看護師さんに助けていただいたので、看護師さんや看護という領域に関係する恩返しとなるものを目指し、訪問看護というかたちで事業を始めることになりました。
補足資料 4 サービス関連 iBow (1/2)

関本:続いて、先ほど市場の展望についてうかがいましたが、プロダクトについてもお聞きしたいと思います。「iBow」という訪問看護向けのプロダクトを展開されていますが、具体的にどのような機能を持つソフトウェアで、利用者にとってどのような価値があるのかについて教えていただけますか?
中野:「iBow」は訪問看護専用に作られており、これまで主に手書きで行われていた日々の訪問業務をデジタル化するものです。訪問先でメモを取り、月末にそれを集計して国への保険請求を行うレセプト請求システムに手入力するという作業が全国的に行われています。
この手書きから月末の手入力という工程を削減し、日々の業務からデータ化を進めることを目指して開発しました。
「iBow」の特徴は、日常業務で活用できる点にあります。また、システムとしてデータを蓄積し、それを閲覧可能にすることで、電子カルテとしての機能も果たしています。この電子カルテシステムは医療グレードで作られており、それが「iBow」の意義であり、「あなたの相棒になります」のコンセプトを体現しています。
関本:1つ気になる点として、「紙でやれていたなら紙でいいじゃないか」という考え方もあると思います。そもそも「iBow」を活用することで、お客さまがより利益を上げられるような効果があるのでしょうか?
中野:紙を使用していると、1日の訪問件数にどうしても制限が生じています。例えば、看護師が自宅からステーションへ出勤し、そこで打ち合わせをして訪問を開始します。そして、その後にカルテを持参してステーションへ戻り、次の訪問に向かう、といった流れで運用をせざるを得ない状況になります。これはさまざまな理由から仕方のないことですが、その結果、1日の訪問件数が3件程度にとどまります。
それが「iBow」を使用することで、自宅から直接患者さまのところへ訪問し、高品質な看護を維持しながら次々と訪問を続け、自宅に直帰することが可能になります。その結果、1日の訪問件数を倍の6件程度とすることができ、訪問看護ステーションの売上に直結します。また、システム化によって自動的にカバー率も倍にすることが可能となります。看護師不足が続く中で、同じ看護師の人数で対応件数を倍増できるような仕組みとなっています。
関本:そうすると回数を増やせて、売上も上がるので、売上が上がった分を活用すれば、御社のシステムを導入しても、十分にコストを賄えるというわけですね?
中野:おっしゃるとおりです。我々が提供するアップセルやクロスセルも導入しやすい環境が整います。
補足資料 4 サービス関連 BPaaS

関本:「iBow」とは別にBPaaSについて説明されていましたが、こちらもBPOに近いところだと思います。最初に何をされているのかをうかがってもよろしいでしょうか?
中野:「iBow」を使い、事務を代行するサービスとして提供しています。このシステムを利用することで、訪問看護ステーションの事務的な部分を完全に遠隔で担うことが可能になります。
もちろん「iBow」が導入されていることが前提となりますが、その状況下で「iBow」がデータを入力したり閲覧したりすることが自由にでき、その機能を活用して適切な記録になっているかの確認や正しい請求や意図しない不正請求がないかの確認を代行するサービスを提供しています。そのため、訪問看護ステーションにおける事務作業は不要となります。
関本:そうすると、訪問看護ステーションはより看護や看護師さんにフォーカスができるわけですね?
中野:そうです。業務に集中できるようになります。通常の場合、事務員さんが担当すると、業務がブラックボックス化してしまったり、何かと余分な気を遣ったりすることがありますが、それがなくなります。
安定した経営の実現により、もしその方が辞められる場合でも、「誰が仕事を回すのか」のような問題でベテランの看護師が時間を取られることや、さまざまな問題に直面することがなくなる非常に重要なサービスだと思います。
補足資料 4 サービス関連 AI訪問看護計画

関本:これで事業の概要は理解しました。先ほどのポイントについておうかがいしましたが、やはり個人的に注目しているのは、AIを活用したサービスです。
今、「AI訪問看護計画」と「AIルート」という2つが挙がっていますが、こちらについて詳しくお話しいただけますか?
中野:AIのサービスについてですが、我々は医療領域の仕事をしており、多くの企業がこの分野でのAIサービス提供を非常に困難だと感じている状況です。その理由として、AIには「ハルシネーション」という問題があり、正しいことだけを教えてくれるわけではなく、間違った情報も混在することがあります。
これは、AIがインターネット上の情報を基にディープラーニングを行うことで、誤った回答や虚偽の情報を生成してしまうという問題に起因します。我々が医療領域でAIを活用したサービスを提供しようとすると、この点が非常に大きな課題となります。万が一間違った情報を提供してしまうと、大きな問題を引き起こす可能性があり、結果的にサービスインが難しくなるという現実があります。
こうした中で、日本企業が大規模言語モデル(LLM)を効果的に活用するために重要となるのは、正確で日々更新されるデータの存在です。データが十分にない企業はサービスインが難しいですが、我々はこれまで「iBow」を通じて多くのデータをしっかりと蓄積してきました。業界で他社に引けを取らない量と質のデータを持っていると自負しています。
さらに、そのデータは国家資格を持つ看護師が最終確認を行い、確定させた正確なデータです。この正しいデータをどこよりも豊富に持つことで、ディープラーニングを効果的に活用し、AIを用いた新しいサービスを生み出すことができたと考えています。
補足資料 4 サービス関連 AI訪問看護報告

関本:つまり、AIを活用してさまざまな作業を効率化していくということですね?
中野:そのとおりです。応用範囲は幅広いですが、今回提供しているのは看護計画書と報告書です。訪問看護は計画を立てた上で訪問し、その内容を医師に報告する必要がありますが、AIが計画書をしっかり作成してくれます。
報告書については、人が作成する場合、どうしても1ヶ月ほど前の記憶を基にしがちで、直近30日間では最後の5日間が特に印象に残りやすく、そこが中心の報告書になる傾向があります。しかしAIを活用することで、1日目から30日目までのデータを平均的に基にして作成できます。そのため、非常に高い精度で提供できており、利用された方々から驚かれることが多いです。
1Qトピックス 1 AI訪問予定・ルート

関本:最後に、今期についてですが、AIが単価の上昇にかなり寄与している印象があります。現在展開している訪問看護計画報告やAIルートに関して、お客さまからの評価や、来期に向けた展望についてどのように考えていますか?
中野:AIに関する部分ですが、まず第1印象として「えっ?」という反応が多く、みなさま非常に驚いています。「AI訪問看護計画・報告」はすでにお客さまの約40パーセントにご利用いただいています。
AIは課金モデルでのご利用となっており、無料ではないにもかかわらず、多くのお客さまにお使いいただいていることが、AIの驚異的な効率や効果を物語っています。「助かる」というお声もいただいており、人手が取られず、しかも瞬時に処理ができるという点で、これまでは何十時間もかかっていた作業が数分で完了するのは非常に魅力的です。
リリース直後にもかかわらず、4割近くのお客さまに課金してご利用いただいていることからも、AIの重要性が非常に高いと実感しています。
質疑応答:BPaaSにおける訪問看護業務の代行内容について

質問者:BPaaSの部分についておうかがいします。御社の製品は、看護師の方が業務をしながら入力する仕様になっていると想像しています。そうすると、BPaaSで裏方として御社が代わりに入力するというのがあまりイメージできません。どのような業務を肩代わりするのでしょうか?
中野:訪問看護の仕事の内容として、例えば1ヶ月あるとした場合、基本的には日々訪問看護を行い、その時の記録を取ります。通常であれば、メモに記録を残したり、体温を測定したりなど、さまざまな項目があります。そして、その後に記録を閲覧する必要が出てきます。
月末には1ヶ月分の仕事を国に対して保険請求します。医療保険と介護保険の両方に請求を行う必要があるため、非常に複雑な作業です。通常であれば、紙で入力し、1ヶ月分をとりまとめてから再度入力を開始するという流れになります。また、主治医の指示内容や、利用者の保険証情報の入力など、事務作業も多数存在します。
これらを例えばBPaaSで効率化する場合、まず「iBow」では、今説明した作業すべてをシステムで置き換えることが可能です。
さらに、レセプト入力に関しては「iBow」を利用することで基本的に入力作業を不要にできますが、請求を送る前の最終確認は必要となります。この請求を送る前に、内容が正確であるか、入力に漏れがないかといった点を、事務員の方々ではなく、我々の側で確認します。
もちろん、事務員の方がいれば問題なく対応可能ですが、「iBow」がある場合に限ります。しかし、その事務員の方が常にいらっしゃるとは限らないという課題があります。
訪問看護ステーション内で、例えば急な退職が発生した場合、現場で働く看護師の方々が時間を取られてしまうことは避けたい状況です。このような問題を防ぐため、我々が対応を引き受けているのがBPaaSの仕組みということになります。
質疑応答:デリケートなデータ管理とセキュリティ対策について

質問者:とてもデリケートなデータを扱っておられると思います。そのデータは、大変な影響力を持ち、万が一漏洩すれば、会社に甚大な損害を与えるのではないかと考えます。
そのようなデータの管理について、看護師さん側の管理体制やデータのバックアップ管理などはどのようになっているのでしょうか? その部分が最も重要であり、その1つで会社が傾くか、あるいは成長するかが決まる場合もあるのではないかと感じました。ぜひ教えていただければと思います。
中野:会社を経営する上でのリスク要因についてのご質問かと思いますが、もちろん、今おっしゃられた点も非常に重要だと認識しています。また、制度の改定も我々にとっては大きな課題であると考えています。
まず、システムのセキュリティ管理、特に情報管理に関して、我々はいくつもの対策を講じています。
例えば、訪問看護の看護師が訪問先で写真を撮影する場合を考えてみます。訪問看護時に「iPad」を持参したとすると、通常、「iPad」で撮影したデータは「iPad」本体に保存されます。
一方で、当社のシステムはSaaS型のサービスです。SaaSとは、簡単に言えばWebブラウザを利用するアプリケーションで、データセンターからの情報を参照する仕組みです。このため、撮影した写真データは「iPad」本体に保存されることはなく、直接データセンターに送られるようになっています。したがって、仮に端末を紛失しても、その端末内にはデータが一切残っていない構造です。
大前提として、このようなセキュリティ対策をしっかりと施しています。また、厚生労働省が提示しているガイドラインもしっかりと遵守しています。3省2ガイドライン(厚生労働省、経済産業省・総務省の2つのガイドライン)などにすべて準拠させてシステムの構築を行っています。
この点は他社とは決定的に異なる部分です。ただし、「ド競合」と呼べる企業がいるかどうかは、現状では我々も認識していません。
仮に他社でレセプトを作成しているところがあるとしても、それらは多くの場合、介護分野からの汎用性を活かして作られており、ガイドラインに必ずしも準拠していなくても問題なく、むしろそれで十分だと思われます。
しかし、我々はご質問いただいた非常に重要な部分に取り組んでいます。そのため、徹底的にこだわり、すべてのガイドラインに準拠させています。これが、我々が講じている重要な対策の1つだと考えています。
質疑応答:訪問看護システムにおける競合との差別化と優位性について

質問者:訪問看護で実際に働いている友人から話を聞いてみました。その友人は何社かで勤務経験のあるベテラン看護師で、実際にサービスを利用したことがあるのか尋ねてみたところ、「使ったことがある」とのことでした。
ただし、他にもより安価な競合サービスがあり、それらを利用することが多いとも話していました。
そのようなお話を踏まえまして、実際に他の競合サービスと御社について比較した際に、先ほどお話のあった営業利益率の高さが際立つ一方で、他のサービスは安価で使いやすいという声もあるかと思います。そのような状況の中で、どのように優位性を発揮していくお考えなのでしょうか?
また、競合とのシェア状況やシェア獲得に向けた戦略についてもうかがえればと思います。シェア獲得は非常に重要な視点ではないかと考えていますので、目指している方向性や戦略について、ぜひお聞かせいただければと思います。
中野:まず、他社との違いについてご質問をいただいたので、もう少し詳しくご説明します。
私たち以外にこの領域で活動しているプレーヤーは、今のところ例外なくすべてレセプト請求ベンダーです。レセプト請求システムは月初の1日から10日の間に行うもので、現在では法律でシステムの使用が義務付けられています。このシステムを供給するベンダーが、私の知る限りでは20社ほど存在しています。
2012年に私がこの事業を始めた時には、30社以上が存在していました。どの請求システムを使っても同じ保険請求ができなくてはいけないのに、当時、私はなぜ30社も存在しているのかと不思議に思い、今でも20社いることが不思議だと感じています。そのように、現在も多くのプレーヤーがこの領域に存在しています。
おそらく、異なるサービスも存在するのではないかというご意見もあったかと思いますが、確かにレセプト請求システムを提供しているベンダー各社が展開しているシステムは多くあります。
我々が提供しているものは何が違うのかという点ですが、私どもが開発しているのは、レセプトではなく、日々の業務を手書きで行っていた部分を電子化してきたものであり、これが現在提供している「iBow」の最も主要な要素になります。
つまり、レセプトではなく、日々の業務で1ヶ月毎日使用していただく業務システムを開発し、サービスとして提供しています。このようなサービスを展開している企業は、現時点で私の認識では存在していません。
そのため、レセプト請求システムと、我々の日々の業務をサポートする電子カルテ「iBow」とを比較する議論がしばしば行われますが、両者の性質が異なるため、なかなか比較対象にはなりにくいと考えています。
一方で、我々は「iBowレセプト」というシステムを約3年前に満を持してリリースしました。このシステムの大きな特徴についてですが、他社で提供されるレセプト請求システムが20社から30社もある中で、なぜ我々がこのシステムを開発したのかという理由として、我々のシステムは基本的に入力画面を持たない設計となっている点が挙げられます。
日々の業務がそのまま自動的に連携される仕組みのため、極端に言えば誤請求が起きにくく、不正請求もほとんどできない仕組みになっています。
このように不正請求ができないという点は、当社システムの非常に大きな特徴であると考えています。
質疑応答:中期的な既存事業の展開について

質問者:御社の第3四半期の決算資料を拝見しました。中期的な成長のベクトルについておうかがいしたいと思います。
「既存事業を成長させる」と記載されていますが、訪問介護以外の横方向の展開、例えばオンライン医療や、別会社で取り組まれているような薬のデリバリーサービス、さらには訪問介護の上流や下流に拡大するといった計画はあるのでしょうか?
中野:ご質問にあった薬の部分をはじめとするいろいろな多職種連携にはすでに取り組んでおり、「けあログっと」という製品をリリースしています。
この製品については先ほども簡単に触れましたが、基本的には病院に利用していただくことを想定して作られています。ただし、病院だけでなく、病院と訪問看護ステーション、病院と介護施設、さらには病院とケアマネジャーとの連携を図ることが可能です。もちろん調剤や訪問調剤にも対応できるようになっています。
これまで大手企業が開発してきた既存の製品がいくつか存在する中で、訪問看護のデータがなく、十分に活用されていないということも聞きます。「けあログっと」については、この点を踏まえ、訪問看護のデータを含めたかたちでやっていこうと考えています。
質疑応答:データビジネスのマネタイズについて

質問者:データビジネスのマネタイズについても将来構想として記載があると思いますが、具体的にどのようなかたちでマネタイズを予定されているのか、お聞かせいただければと思います。
中野:まず、そもそも日本は医療データ、特に医療情報をデータとして十分に保有しているとは言いがたい状況であると考えています。
その中で、当社は日本全国を横断して医療情報、特に慢性期医療のデータを有しています。具体的には、急性期医療のデータを保有している他の機関とデータを統合することで、真の意味で医療の総合データとして活用することが可能になると考えています。
実際に現在行っている事例として「在宅治験」が挙げられます。これについては、日本では未だ実施が難しい状況にあります。
なぜできないかというと、どこに患者がいるかを誰も把握していないからです。我々は患者の所在をしっかりと把握できる企業の1つですが、スライドの図にも示しているとおり、治験コーディネーター(以下、CRO)という役割があります。
現在、このCROが「このお薬がこの病院に納品されているから、この疾患の患者がいるのではないか?」というように逐一電話で確認を行っており、しかも医師に情報提供を依頼するなど、非常に手間をかけて患者を探しています。希少疾患の患者さまの場合は件数が少ないため対応が可能ですが、新型コロナウイルスの治験のような事例が大量に必要な場合、現状ではほぼ不可能に近いのが現実です。
治験は、在宅で実施するのはもちろん、病院を介したかたちであっても非常に困難だと言われています。しかし、当社が保有しているデータを活用すれば、ボタン1つで疾患ごとの患者さまの住所まで瞬時に把握できます。
さらに、当社の「iBow」サービスをご利用いただいている訪問看護ステーションがあり、そこで患者さまに「治験しますか? しませんか?」といった確認も日々行われているため、関係性が構築され、訪問治験を容易に実現できる体制が整っています。スライドの黄色で強調されている部分を当社が一手に担うかたちとなります。
また、データを活用したビジネスとして先ほど述べたAIを早急に立ち上げ、製品化し、事業ベースに乗せていくためには、ハルシネーションが生じないよう、正確な答えを出せるAIの作成が必要です。当社が保有する質・量ともに圧倒的なデータは、こうしたAIの作成において非常に有用です。これらのデータを活用して実現したサービスが、当社のAIサービスです。
質疑応答:レセプト請求対応とファクタリングサービスについて

質問者:レセプトの作成に参入されているとのことですが、請求代行というかたちでの参入はお考えですか?
開業している方々は小規模の会社が多いと思います。そのため、例えばレセプトの請求からお金が入ってくるまでの時間差を補完するようなことも可能かと思いますが、いかがでしょうか?
中野:現在、いわゆるファクタリング、つまり確定債権に対する対応に関して、すでにサービスを提供開始しています。
現時点では少しずつではありますが、利用が着実に増えてきています。まさに請求を立ててから入金までの間、当社が先に立て替えるという仕組みを提供しています。
質疑応答:訪問看護ステーション契約数と売上拡大戦略について

質問者:「AI訪問看護計画」のところについてです。1訪問あたり20円の課金について、今後売上を伸ばすために、例えば月々1,000件や2,000件の契約が可能であり、将来的な見込みとして件数の母数が多くなるならよいのですが、20円という単価は顧客にとって魅力的であるとは思うものの、プラス1万円の顧客単価が計画されている中で、売上をさらに伸ばすために訪問看護ステーションや病院との契約割合を増やしていける計画はあるのでしょうか?
この分野には競合他社も存在しており、御社が競合他社に対してどのように優位性を発揮し、1社に絞って選んでもらう計画があるのかも気になります。
中野:まず、戦略的には両方を意識しています。当社のサービスを積極的にご利用いただくために努力を続けていかなければならないと考えています。
競合他社について「ド競合」と呼べるような企業は存在しないという認識ですが、レセプトの分野では競合が発生することもあります。その点からも、当社のシステムを広くご利用いただけるよう進めていきます。
そもそも「iBowレセプト」という製品は、他社のレセプトベンダーが多数存在する中で、「iBowレセプト」の利用率は、当社のお客さまの中でおおよそ85パーセントに達しています。
全顧客のおよそ85パーセントが「iBow」と「iBowレセプト」のセットでご利用いただいています。この点を踏まえ、売上構成比についてもご確認いただきたいと思います。
加えて、ご質問にありました単価に関してですが、訪問看護ステーションにおける単価は1訪問あたり100円に設定されており、そこから単価が上昇している状況です。現在の具体的な状況としては、顧客単価は8万8,000円にまで上がってきています。
これは参考値としてご承知ください。ただし、新規契約を多数獲得すると一時的に下がる可能性もあるため、完全には頼りにしないほうがよいかもしれません。しかし現在のところ、ミドルクラスの訪問看護ステーションの契約が順調に獲得できており、単価も上昇しています。また、仮に単価の低い新規契約を獲得して一時的に数値が毀損したとしても、訪問看護ステーションが事業を継続するうちに、1年、2年、3年と利用が進むごとに訪問件数は増加するため、結果的に単価に寄与していきます。
このビジネスの特徴として挙げられるのは、単価が上昇するだけでなく、契約件数も徐々に増加している点です。おかげさまで、2期連続で過去最高の契約件数を達成しています。これにより、契約件数の増加とともに単価も上昇し、新しいアップセルサービスを追加することでさらなる成長が期待できます。
質問者:訪問件数の上限には限界があると思うのですが、いかがでしょうか?
中野:まず、この数値を6件にまで増やします。当社の「iBow」を導入いただいた時点で、従来型の運用に比べるともともとの件数が倍以上になる傾向にあります。そのため、訪問看護ステーションの売上も伸びますし、当然ながら当社のフィーも増えていきます。限界はありません。
看護師の数も増加しています。ちなみに、1ステーションで1万件の訪問を行っているところもあります。
中野氏からのご挨拶
中野:本日はありがとうございました。そして、みなさまにも感謝申し上げます。これからも、これまでどおり中心となっている「iBow」という製品をしっかりと伸ばしていきながら、新たな成長戦略として「けあログっと」という新たな病院向けの製品をリリースし、在宅療養の効率化を図っていければと考えています。
それが、多くの方々のためになると信じています。みなさま現在はご健康かと思いますが、いつ自分がそのような状況になるかわからないですし、ご家族がそうなる可能性もあるかもしれません。そのような方々が困らないような世界を、このITを活用したDXを通じて実現し、社会に寄与できればと思います。
つまり、社会を支える一助となれるよう努力していきたいと考えています。効率化を目指し引き続き取り組んでいきますので、みなさまの応援をいただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。
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