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地紙平氏(以下、地紙):ラサールロジポート投資法人の資産運用会社である、ラサールREITアドバイザーズ株式会社代表取締役社長の地紙です。本日はご多忙の中、2025年8月期(第19期)の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

今年は、下落基調にあったREIT市場の底打ちが見られ、成長期待のモメンタムを少しずつ感じ始めましたが、本投資法人の株価パフォーマンスは残念ながら、その上昇気流にはまだ乗ることができていない状況です。

本投資法人の運用戦略の基礎は変えていないものの、今回の決算発表では、足元の市場トレンドを踏まえ、過去から続けてきた各種施策が、一過性要因ではない恒常的な収益の成長にどのようにつながるかを示すことを意識しています。

過去2年間にわたる本投資法人の運用戦略や取り組みにより、足元の収益構造が複雑化し、中長期的な成長が見えにくくなっていることが、株価パフォーマンスの低迷につながる一因と捉えています。この現状分析に基づき、経営の方向性の修正を可能な限り行いました。

また、本投資法人の収益構造、バランスシート、1口当たり収益の感応度について定量的な要因分解を行い、その検証を基に、今後の中期的な収益ガイダンスを示しています。

それでは目次に沿って決算内容についてご説明します。

第19期(2025/8期)運用ハイライト

スライドには、2025年8月期までの運用ハイライトについてまとめています。

1つ目のファンド指標についてです。前期の1口当たり分配金は3,910円、1口当たり利益分配金は3,657円と、いずれも業績予想対比プラス2.1パーセントの水準で着地しました。

1口当たりNAVは、保有物件の鑑定評価額の上昇が売却による含み益の実現分を上回り、前期比プラス0.9パーセント増加しました。足元の環境下、運用のKPIとして導入している株主資本総還元率は、2025年8月期の単一決算期だけで見ても8.7パーセントと、目標の8パーセントを上回りました。

2つ目のポートフォリオの運営状況・内部成長についてです。稼働率は引き続き99パーセントという高い水準を維持しており、今後の業績予想期間においても大きなテナント退去は見込まれていません。2026年8月期には99パーセント超の稼働率を想定しています。契約更改の進捗も順調で、向こう2期においてそれぞれ約7割から9割の内定が完了しています。

賃料成長の過去実績も好調に推移しています。例えば、売却物件を除いたSame Storeベースの過去2年間の賃貸事業収入は、年平均でプラス1.2パーセントと継続的な成長を記録しています。

3つ目の資本戦略についてです。物件売却の進捗状況については、2025年8月期に「ロジポート流山B棟」と「ロジポート川越」の30パーセント持分の売却決済が完了し、これにより過去4期累計で214億円の売却が完了しました。さらに、今後2期の確定分として161億円の売却決済を控えています。

資金配分については、自己投資口取得において、2025年8月期には21億円の買付が完了しました。2024年4月以降の累積買付金額は101億円となり、発行済総口数の約3.9パーセントに相当する買付を完了しています。

2025年8月期末をもって、資金配分としては約4割が完了しました。今期以降に決済予定の投資や、昨日決議した追加の自己投資口取得が完了すれば、配分可能な資金実行の進捗率は約7割に達する見込みです。

4つ目のバリューアッド戦略については、前期に公表した松戸の開発案件の償還に伴い、約7,000万円の開発利益を計上しました。また、8月に公表したとおり、北海道苫小牧の危険物倉庫の開発案件への投資を意思決定し、第1回の資金実行が完了しています。

さらに、昨日公表した新たな取り組みとして、これまで別々のSPCで間接保有していた3物件を1つに統合し、新たに外部から取得予定の仙台扇町の物件を加え、4物件の統合ファンドを組成することを発表しました。

本投資法人は49パーセントの出資に加えて、第2号のメザニン投資案件として、投融資を決定しました。

DPU及び売却益等の一過性要因を排除した調整後EPUの推移

スライドには表面のDPUと、売却益などの一過性要因を除いた調整後EPUの過去推移を記載しています。

2024年2月期以降、毎期物件売却を継続し、その間に複数回の開発案件の償還や一時収入の享受など、DPUの変動が激しかったことから、過去に遡り、一過性要因を除いた調整後EPUを算出しました。

2026年8月期まで物件売却の決済が続くため、業績予想期間を含めた推移を記載していますが、一過性要因の調整を施しても多少の凸凹が見られるかと思います。

この凸凹は、物件売却によるNOI減少のスピードと、売却資金の再投資による収益貢献のスピードに時間差が生じ、そのバランスによって引き起こされているものです。

このグラフの6期の間は、売却と投資の過渡期にあり、これらの施策の成果が完全に反映されていません。そのため、巡航DPUという概念は現時点では導入できず、一過性要因調整後という位置づけであることをご認識ください。

現状分析と経営の方向性:資本コストや株価を意識した経営

スライドでは、「資本コストや株価を意識した経営」に則り、市場評価の分析と経営の方向性の調整を行う中での振り返りをまとめています。

本投資法人の資本収益性(ROE)は向上していますが、本投資法人の市場評価として、今年は市場全体に対してアンダーパフォームしています。

その原因の1つは、恒常的な収益の成長性が見えにくいと認識されていることにあると考えます。そのため、賃料成長を引き続き追求しながら、ポートフォリオの収益性向上に主眼をおいた物件売却を継続します。

また、投資口価格が時価純資産倍率1倍を大きく下回る状況が続いているため、自己投資口取得を通じた資本効率の向上を継続すべきと考えています。

今回の決算発表のポイントは、資本効率を向上させることで、1口当たりの収益で見れば、内部成長を加速させ、かつ金利上昇による費用増加を抑制させる効果があることです。

したがって、資本効率の向上と恒常的な収益成長は両立可能であり、むしろ成長ドライバーの両輪の役割を果たすものと考えています。

不動産価格と株価のギャップを投資運用戦略の基幹として継続

スライドには、本投資法人の投資運用戦略の基幹となる考え方を再掲しています。スライド右のグラフを更新しましたが、ポートフォリオの不動産価値と株価が示唆する企業価値には引き続きネガティブギャップが継続しており、物件取得よりも資金化を優先すべきだというスタンスに変わりはありません。

本投資法人は、オフィスなど他のアセットタイプを運用するREITとは異なり、まだ外部成長について議論を始められる段階には至っていないと考えています。

中期的なEPU/DPUガイダンス(一過性要因を除く調整後ベース)

「成長性が見えにくい」という市場評価に対して、ポートフォリオ収益の成長ポテンシャルや現在の資本戦略と施策を踏まえ、中期的な事業計画を策定しました。

2023年8月期からの5年間、そして2025年8月期からの3年間を事業計画期間とした場合、内部成長ポテンシャルと資金配分に基づけば、ターミナル期を2028年8月期と設定して、1口当たり純利益は3,080円、1口当たり分配金は3,360円の水準をガイダンスとしています。

この数字は、2025年8月期の調整後EPUや調整後DPUを起点とした場合、年率約2.5パーセントの成長率となります。

また、物件売却と再投資に関する資金配分の進捗がまだ過渡期にあるため、当該施策を開始する前の2023年8月期を起点とした場合も考慮することが適切と考えられ、その場合でも年率約2.5パーセントの成長を計画しています。

さらに、前ページのスライドで再掲した不動産価格と株価のネガティブギャップを踏まえて、引き続き保有物件の資金化を進める方針の下で、追加的な物件売却を100億円から300億円の規模で行うことを視野に入れています。

それを自己投資口取得として投資主還元と資金効率の向上を図ることで、中期的なガイダンス水準として、2025年8月期を起点として年率約3パーセントから4.5パーセント成長までの、さらなる成長の可能性を有すると考えています。

スライド左上のグラフで示しているように、物件売却によるNOI剥落と資金配分の速度には時間差があり、2026年8月期の期初に「ロジポート狭山日高」の売却決済を行うことで、一連の売却を通じたNOIの剥落が完了します。

しかしながら、今後の投資可能な資金配分の進捗はまだ7割にとどまっており、再投資の効果の遅効性が中期的に1口当たり収益を押し上げる構図となっていきます。

中期的なEPU成長の構成要素分解

スライドでは、先ほどの事業計画において、収益を構成する各要素がどのように1口当たり純利益の成長に作用するのか、その内訳の概略を示しています。

なお、これらの各要素の成長率を単純に足し上げても、本投資法人全体の年率成長率にはなりません。その理由は、自己投資口取得により口数減少の効果が各要素に加速度的に寄与し、その関係が非線形であるためです。

言い換えれば、自己投資口取得の割合が増加すれば、収益成長が追加的に押し上げられ、収益減少や金利上昇による収益低下には抑制効果が働くことが、今回の分析の結果として判明しました。

内部成長については、今後3年間に賃貸借契約の更改を迎える区画の平均的な賃料増額率をプラス7パーセントと見込んでいます。これが調整後EPUの成長に及ぼす貢献度は、資本効率の向上を加味して約3.1パーセントから4.1パーセントと見積もっています。

物件売却の規模については現時点で、売却開始前の2023年8月期末の資産規模に対して約8パーセント相当の売却が確定しています。さらに売却を追加して同15パーセントの範囲内とすると、物件売却によるNOI剥落は調整後EPUに対して約1.4パーセントから2.6パーセントのマイナス効果があります。繰り返しになりますが、これも資本効率の向上により、一定程度抑制されています。

資金の再投資先として、今まで行ってきた総額80億円の間接投資など再投資の収益寄与は、最終到達点のターミナル期まで待てば年率換算で約2.7パーセントから3.3パーセントの貢献があると見込んでいます。

負債コストについては、金利上昇により、2023年8月期以降の全有利子負債の平均負債コストがターミナル期までに約70bps上昇すると仮定すると、年率換算で2パーセントから2.4パーセントのマイナス効果が見込まれます。

この70bpsの上昇とは、ベース金利が今後3年間にわたって現在から50bps上昇し、短期金利が現在よりも約20bps上昇し、各期のリファイナンスをその前提で行った場合を想定しています。

自己投資口取得の割合については、現時点で確定している物件売却の規模、すなわち資産規模の8パーセントとした場合は、その売却資金の金額に基づいて、2024年以降の累積で発行済総口数の約12パーセントを買い付けるという前提です。売却規模が15パーセントまで増加した場合、累積で21パーセントの口数減少に相当します。

これらの計算から導き出されるのは、REITにおける資本効率向上の最大の効果と言いますか、意義は、ROEの向上というよりも、自己投資口の消却による口数減少がもたらす1口当たり収益の成長を加速させることにあると考えています。

なお、本投資法人の場合、内部成長と負債コストに加えて、物件売却、再投資、自己投資口取得の5つの要素が収益を構成しているため、複雑な仕組みと見られることがあると思います。

そのため、これらの構成要素分解と成長率への貢献の計算方法について、スライド28ページ以降のセクション7に、簡易的で実態に近い計算例を記載しましたので、ご興味があればご覧ください。

株主資本総還元率(Total Payout on Equity)

毎期の株主資本総還元率についてのアップデートです。過去3期の平均は9.9パーセントであり、今後も大規模な自己投資口取得を継続する前提で、11パーセントという高い水準が見込まれます。

過去の成長牽引と今後の成長ポテンシャルに基づくポジショニング分布

セクション2では、ポートフォリオ・マネジメントについて簡単にご説明します。スライドでは、本投資法人のポートフォリオの成長ドライバーを可視化するために、個別物件の過去の成長貢献と今後の成長ポテンシャルの2つの軸に基づいて、グルーピングを行いました。

過去に内部成長を牽引してきたグラフ右側の青色の物件群は、本投資法人のポートフォリオの旗艦物件で構成されており、約10パーセントの賃料ギャップを有していることから、引き続き内部成長を牽引すると期待されています。

一方、グラフ左側の緑色の物件群は、他と比べて過去の契約更改の進捗が遅い物件群に該当するため、過去の賃料成長は大きくないものの、その分の貯金が足元の賃料ギャップとして蓄積していることから、今後の内部成長が期待されるもう1つのグループです。

バブルの大きさは各物件の賃貸面積と比例していることから、今後の成長ドライバーは相対的に規模が大きい物件群が担っていくことが見て取れます。

1点補足すると、スライドの散布図で示した「ロジポート東扇島」の3物件の賃料ギャップは普通借区画を含んでおらず、定借区画のみの数値です。したがって、より賃料ギャップが大きい普通借区画で賃料増額が実現すれば、追加的な内部成長が期待できます。

内部成長力の向上を目指したポートフォリオ・マネジメント

スライドでは、物件売却の実績と基準をまとめています。当初は、周辺の供給や築年数の経過による追加投資の必要性などを考慮し、売却益の実現を1つの目的としていました。

しかし、金利の上昇やインフレ基調の高まりを背景に、内部成長やポートフォリオ収益性の向上によって、恒常的な分配金成長が求められる市場環境へと移行しています。これを踏まえ、売却物件の選定基準も環境の変化に応じて微調整を行っています。

今後の売却候補としては、まず「ロジポート流山B棟」はこれまでに部分的な分割売却を進めてきており、残りの50パーセント持分についても引き続き売却候補としています。

「ロジポート流山B棟」は築年数が古いものの、簿価利回りが高く、含み益も豊富です。足元では賃借人の転貸先との直接契約への切り替えなど、短期的な賃料増額を牽引している特殊な物件であり、魅力的な交換取引や内部留保を活用できる時期を工夫した売却を模索しています。

「ロジポート流山B棟」以外にも、約230億円規模の売却候補物件を追加しており、安定稼働している物流不動産の流動性の高さを活用して売却を検討しています。

なお、この230億円という数字には、前期に公表した三菱地所物流リートとの協業に関する流動化候補物件は含まれていないことを申し添えます。

資金配分(キャピタルアロケーション)

セクション3では、資本戦略についてアップデートを行います。

スライドは、資金配分の進捗を示しています。以前より、物件売却資金に加え、待機資金として約100億円を有していることを記載していましたが、現金を寝かせておくのは得策ではないため、今後の資金配分の原資として、これも含めた配分を示しています。

2023年8月期末以降の累積で、合計約416億円の資金のうち、現時点では約6割にあたる250億円を実行しました。その内訳は、55パーセントが再投資、45パーセントが自己投資口取得です。

昨日、追加の資金使途として、2026年10月までの約1年の期間において、100億円を上限とする追加の自己投資口取得を決議しました。これにより、累積で約350億円の資金実行が進捗し、上限までの買付が実施されれば、約7割の資金配分が完了することになります。

残る未消化資金は67億円となり、今後の新規投資機会に備えたドライパウダーとして位置付けています。

直近足許の市場環境及び資本コストを考慮した新規投資の考え方

スライドには、新規投資の優先順位の考え方について再掲しています。内容は前期と大きく変わっていません。

本投資法人の投資口価格は、投資対象として最も魅力的な水準にあると考え、引き続き自己投資口取得に優先的に充当していく方針です。前ページスライドに示した資金配分についても、この優先順位に沿った内容になっていると考えています。

自己投資口取得の決議内容と背景

昨日決議した自己投資口取得の増枠および延長の内容についてです。

上限買付規模は100億円、上限買付口数は7万1,500口であり、当社にとって過去最大の規模です。これは、2025年8月期末の発行済総口数に対して4パーセントに相当します。

なお、買付価格の目線は変更せず、NAV倍率約0.9倍未満での買付を進めていきます。ちなみに、過去の買付実績をスライド左上に記載していますが、買付総額は111億円、買付口数は7万8,548口で、平均NAV倍率0.85倍で取得できています。この実績から、買付価格目線よりもより良い条件で投資ができていることがわかります。

昨日の投資口価格の終値は14万6,000円で、NAV倍率に換算すると0.88倍です。スライドの下段にも記載しているとおり、現在の投資口価格形成には主に3つの乖離が作用していると考えています。

本投資法人のポートフォリオや成長性に対する資本市場の潜在的な認識にはギャップがあるものと考え、それを魅力的な投資機会と捉え、かつ、資本効率の向上によって将来の内部成長を後押しする有効な手段として自己投資口取得を位置づけ、投資主価値の向上に努めていきます。

売却物件を除いたポートフォリオ収益の推移(Same Storeベース)

セクション4では、内部成長に関する内容についてご説明します。

スライドには、2023年8月期以降の売却物件を除いたSame Storeベースのポートフォリオ収益を記載しています。過去4期にわたり毎期段階的に物件売却を進めてきたため、純粋な内部成長の数字を開示できていませんでしたが、今回、過去に遡って記載しました。

対象物件をSame Storeベースに揃えても、毎期の修繕費などの変動は多少ありますが、5期の間での平均として、賃貸事業収入は年率1.2パーセント、NOIは年率2.6パーセントの持続的な成長を実現できています。

賃貸借契約満了スケジュールと賃料ギャップ

スライドには、内部成長の源泉となる契約更改の面積と時期、ならびに各期の賃料増額率をまとめています。2023年8月期以降の直近5期の実績では、対象面積約100万平米において、加重平均でプラス6.4パーセントの賃料増額を達成できています。

そして、業績予想の2期(今期と来期)では、それぞれプラス7パーセント、プラス5.5パーセントの賃料増額を、現時点で契約更改が内定している区画で見込んでいます。

毎期同様ですが、各期の対象区画や現行賃料に差があるため、多少の上下はありますが、本投資法人のポートフォリオでは、過去から継続的に1桁後半の賃料増額率を達成してきた中で、そのモメンタムを業績予想期間でも維持できる見込みです。

また、今回、2028年までの中期的な成長ガイダンスを示していますが、今後約2年半の間に訪れる契約更改区画の賃料ギャップは、1桁後半から2桁前半の範囲で存在し、内部成長の成長カーブは持続性があると考えています。

なお、スライドのバーグラフの色が濃さの異なるグラデーションになっているのは、賃貸区画ごとの面積割合を表しているためです。今後の契約更改は非常に分散された区画で構成されており、大口テナントとの交渉状況に左右されるものではありません。

ちなみに、本投資法人のポートフォリオにおける賃貸借契約の残存年数は3.7年であり、2028年2月期までに約46パーセントの面積が更改を迎えます。賃貸借契約年数はテナントとの協議事項であり、個別性が高いですが、昨今の環境変化を踏まえ、契約年数が短いものも含めて柔軟に協議しながら、ポートフォリオの運営を進めていきます。

ロジポート東扇島A/B/C棟の内部成長実績とポテンシャル

スライドでは、ポートフォリオ内の特徴的な物件である「ロジポート東扇島A棟」「ロジポート東扇島B棟」「ロジポート東扇島C棟」の3物件の状況についてアップデートしています。

これらはポートフォリオの約2割の面積を占め、平均残存年数が約1.6年と他の物件に比べて短い契約で構成されています。また、賃料ギャップも大きいため、今後の内部成長を促すドライバーの1つとなります。

足元では、特に普通借区画の賃料増額交渉に注力しています。毎期必ずお約束できるものではありませんが、2桁パーセントを超える増額に合意できた事例が増えています。

賃料ギャップおよびリースマチュリティラダーについては、スライド右に示したとおりです。今後4期でポートフォリオ全体の約16パーセントを占めるため、社内のリーシングチームとの連携を密にして、当該物件の価値を顕在化していきます。

本投資法人の”経済圏”の活用(バランスシート外の運用資産)

セクション5では、バリューアッド戦略のポイントについてご説明します。まずは、間接投資の保有持分と間接投資先の運用資産残高についてのアップデートです。

前期は新たに2案件の投資と開発の1案件の償還がありました。その差し引きに加え、昨日公表した稼働物件を保有する複数のSPCの再編に伴う投融資を反映しています。

間接投資の出資などの持分総額は、資産規模の約3.3パーセント、総額で119億円です。以前よりお伝えしているとおり、当面は資産規模の約5パーセントを上限として、間接投資のエクスポージャー管理を行っていきます。

複数の稼働物件保有SPCの再編

スライドには、昨日発表した稼働物件を運用するSPCの再編概要を記載しています。

「ロジポート流山B棟」の物件交換などで取得し間接投資を行っていた「南港物流センター」「八千代物流センター」、そして外部から取得した「沖縄糸満物流センター」の3物件は、複数の別のSPCで運用していましたが、今回その統合を行うものです。

また、そのきっかけとして新たに「仙台扇町物流センター」という1物件を取得し、合計4物件、約230億円のポートフォリオとして1つのSPCとしました。

SPCの統合に伴いリファイナンスを行い、単一物件よりもデットの資金調達条件が良化します。これが1つの目的です。

また、資本コストを上回る収益を金利と配当収入の両面で享受する機会を拡張し、第2号のメザニン投資を決定しました。今回は変動金利のメザニン投資となり、今後の金利上昇リスクを収益機会に変えることで、金利上昇局面での収益安定化を少しでも図ることも、本取引の大きな目的です。

本投資法人の出資および融資の総額は38億3,000万円となります。金利と配当収益を組み合わせることで、スライド右下の感応度分析のグラフで示すように、より安定した間接投資のリスク・リターンに仕上げています。

開発案件への出資:第2号案件の投資回収及び第4号案件への投資開始

スライドは、今回のもう1つのバリューアッド投資である賃貸型危険物倉庫への開発出資について概要をまとめたものです。

開発案件への出資に関しては、建設費の高騰に伴い、目下では慎重かつ選別的に検討しています。開発コストの増加により、通常のドライの倉庫では開発利益が圧迫される傾向が見られるため、今後はいかに付加価値が高く、需給バランスが良好な施設に投資を行うかが重要だと考えています。

そのような中、本件は半導体の生産に必要不可欠な保管需要を見据えた、危険物倉庫の開発案件です。場所は北海道苫小牧市に位置し、報道等でもご案内のとおり、先端半導体の量産に伴う物流需要に対応するものです。

苫小牧港から車で10分ほどの距離にある、約3,600坪の敷地に危険物倉庫と高圧ガス倉庫の計4棟を整備し、道内における重要な危険物輸送拠点の1つとして位置づけられます。

本投資法人の出資額は2.2億円で、2027年上半期の竣工を目指し、来年早々に着工を開始する予定です。

本投資法人による開発案件への出資は、2023年の住之江底地から数えて4件目となりますが、投資と回収を約1年半のサイクルで定期的に繰り返すことで、リスク量を抑えつつ、1つの超過収益を構成する取り組みとなっています。

強固な財務体質を堅持

セクション6では、バランスシートのアップデートについてご説明します。スライドには、各種財務指標を記載しています。LTVは35パーセントと、前期と同水準を維持しています。

金利固定化比率は、短期のブリッジローンをパーマネント化したことで94パーセントまで上昇しました。それに伴い、デットマチュリティラダーの分散も進み、平均借入年限は7.6年とわずかに長期化されました。

今後も本投資法人では、借入余力を活用した物件取得を行うことは考えておらず、LTVを同水準で維持することを目指します。

どちらかと言えば、現在進めている運用戦略に沿って物件売却や自己投資口取得を行うと、LTVは自然微増しますので、LTVの余力はそこで吸収していくことのほうが重要だと考えています。

決算説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

質疑応答:今回の決算発表のポイントについて

質問者:今回の地紙社長のお話のポイントは、当面は自己投資口の取得がEPSやDPUをしっかり上昇させる最も重要な施策であり、粛々と自己投資口の取得を継続することだという印象を受けました。

また、それ以外の成長果実を得るためにSPCへの出資を進めるというお話だったのかと理解していますが、認識として正しいでしょうか? 

地紙:基本方針としては、バイバック(自己投資口の取得)が現在、調整後と言いますか、一過性を除いたDPUやEPUの成長に最も寄与する投資であるという結論に至りました。これは、さまざまな数字を分析して達した結論ですので、おっしゃった認識で問題ありません。

それ以外の投資機会について、当社がどのようにハードルリターンを考えているかについてお話しします。多くのREITにおいては、現在のインプライド・キャップレートとの比較や、同じ規模の投資をした場合、DPUがどれくらい上昇するかという分析が行われているかと思います。

しかし、当社のスタンスとして、バイバックは市場で普通にオーダーすれば購入可能な、リスクフリーの投資だと捉えています。このようなエクゼキューションの観点から、それを超えるかどうかを1つのハードルとして考えています。

例えば、物件を売却して100億円の資金が生まれた場合、その約3割をバイバックではなく他のものに再投資する場合、どの程度のリターンがあれば、100億円すべてをバイバックした場合と同じ、もしくはそれを超えるのかという計算を行っています。

その結果、償却後利回りで5パーセント前半くらいの水準になります。したがって、その利回りを確保できるような物件取得などがない限りは、バイバックを行ったほうが投資家の価値向上に寄与すると考えています。

償却後利回りで5パーセント前半という指標に対し、当社の間接投資は現在おおむね6.5パーセント、良い場合には8パーセント程度の利回りが見込めるため、間接投資を行っている状況です。

つまり、バイバック比較したハードルに対しても、十分なリスク・リターン、スプレッドを確保した投資だから行っているという位置づけです。

そのため、今後もそのような投資機会があれば選択します。一方、そのような投資機会がない場合は、当社が割安と考える株価水準においてバイバックを実施する方針です。

質疑応答:その他の成長ドライバーについて

質問者:お話しいただいた以外に、より成長に焦点を当てたい分野があれば教えてください。

地紙:それ以外の成長ドライバーについては、現時点では特に思い浮かびません。

ただし、内部成長が当社の本業であるため、それを着実に進めていきます。その際には、単純な賃料の増額だけでなく、それを支えるポートフォリオのマネジメントやバイバック、いわゆる資本戦略で支えるという構成です。

質疑応答:賃料成長率とNOI成長率の見通しについて

質問者:内部成長について、スライド19ページにSame Storeベースの賃貸事業収入の成長率が年率1.2パーセントとNOIの成長率が年率2.6パーセントと記載されています。どちらがより実態に近いのでしょうか?

年率1.2パーセントの賃料成長率は、物流REIT全体の中ではやや低い数字ではないかと感じています。一方で、NOIの年率成長率が2.6パーセントは高いほうだと思います。

通常、年率1.2パーセントの賃料成長であれば、NOIマージンが80パーセント程度と仮定すると、NOI成長は2パーセントには満たないのではないかと考えています。それにもかかわらず、賃料が年率1.2パーセントである中、なぜNOIが2.6パーセント成長しているのか、その背景についてご説明いただければと思います。

また、賃料の成長率1.2パーセントとNOIの成長率2.6パーセントのどちらを重視して評価すべきかについても、掘り下げてご説明をお願いします。

地紙:結論を一言で言うと、費用のばらつきがあるためです。いわゆる修繕費の多寡や、我々の場合におけるリーシング費用、具体的には仲介手数料を支払うタイミングが契約満了時ではなく、契約締結時であること等による影響が大きいため、賃料の成長率1.2パーセントとNOIの成長率2.6パーセントが必ずしも一致しない、というのが今回の数字の比較における要因です。

また、1.2パーセントの成長率が低いと感じる要因については、長期固定でキャッシュフローを生み出す物件、例えば2023年8月期の増資で購入したものを通期寄与させて再構築した数字であり、ポートフォリオ全体への賃料増額の貢献が、この5期の間ではポテンシャルを十分に発揮できていないことが背景にあります。

この2つの要因において、賃料の成長率1.2パーセントとNOIの成長率2.6パーセントの関係性があります。

今後の事業計画における概ねの賃料のトップラインの増額は、1.5パーセント程度と見込んでいます。賃料の成長率1.2パーセントを上回る1.5パーセントという水準が、今後のガイダンスとしての実態を示す目安となります。

それに対して、NOIではありませんが、費用率、例えば20パーセントや、それ以外の償却費や間接費を含む収益構造で計算すると、トップラインと営業利益の間には、おおむね1.5倍程度のいわゆるオペレーショナルレバレッジがかかります。

つまり、例えばトップラインが1パーセント成長すると、営業利益ベースでは1.6パーセント程度の成長になるといった関係性です。NOIベースでの具体的な数字は今はお答えできませんが、トップラインの1.5パーセントの成長をしっかり目指すことが、より実態に近いと言えます。

一方で、NOI成長2.6パーセントというトップラインと営業利益の間の成長率は、費用の凸凹などの要因によって毎期変動するものであるというイメージを持っています。

質疑応答:賃料増減率の見通しについて

質問者:スライド9ページの中期的なEPU成長の構成要素分解には「内部成長の賃料平均増額率は7パーセントを想定」との記載があります。ある程度現実的な数字として示されていると思うのですが、やはり他のサブセクターと比べると、「物流は2桁に届かない」という現実でみなさまが集約されていると感じています。

もう少し何かがあれば2桁に達することは可能なのでしょうか? それとも、そのような状況は現実的には難しいのでしょうか? 物流の賃料の現状における粘着性が強く、なかなか上がってこない傾向が当面続くのか、それともその状況が崩れる兆しがあるのか、足元の変化があればご説明ください。

地紙:全体として、なにか大きな変化が起きているとはまだ感じていません。そのため、この7パーセントは、あくまで当社の物件の各価格をボトムアップで計算し、ある意味、現実的より少し志の高い数字を策定しています。

その数字をならしていくと7パーセントがやはり平均的な水準になると考えています。この数字は、運用部隊とも議論して策定したものです。この見通しが変化するかどうかは、マーケット全体の空室率が、自然空室率にどのタイミングで近づくかというスピード感に依存すると考えています。

それをいかに補完するかがカギとなりますが、我々としては、例えば東扇島の物件では2桁の普通借の増額が可能となっています。今後それが何件達成できるかや、ポートフォリオの中で賃料ギャップの大きい物件でいかに果実を取っていけるかが重要です。

同時に、資本戦略として、それをどれだけ後押しできるかが、発行体としての足元の課題だと見ています。

質疑応答:物件売却の影響と効果について

質問者:物件売却による影響と効果について、資本効率性の向上により成長性を多面的に押し上げるという点については、ご説明いただいているとおりかと思います。しかし、前回の「ロジポート狭山日高」のように物件を売却することで、Same StoreのトップラインやNOIを押し上げることになると考えてよいのでしょうか?

地紙:物件売却が収益を押し上げるかどうかについては、2つの観点で考えています。1つ目は、ポートフォリオ全体の利回りに対して、その物件の利回りが高いか低いかという点です。

ROICを考えると、低い利回りの物件を売却することでROICが向上し、結果としてROEが上昇し、分配金の増加につながります。これは、事業会社で言うところの低採算事業を売却することと同義です。

次に、売却した資金をどのように活用するかという点です。例えば、4.5パーセントの利回り物件を売却して5パーセントの利回り物件を購入できれば、それが収益に貢献します。

しかし、そのような案件を見つけるのは困難です。過去に流山の物件を売却する際にも複数の交換案を検討しましたが、そのような条件に合致する案件はなかなかありませんでした。

今回の結論として、バイバックが最も有効な資金活用策であると再確認しました。単純に4.5パーセントから5パーセントに上がる以上の効果があり、それを繰り返すことでポートフォリオ全体の数値を押し上げることができると考えています。これは計算に基づいたものです。

したがって、物件売却後の資本戦略が正しいか否かで、投資主の収益向上に寄与するかが決まります。この2つの観点が、売却が収益を押し上げるかどうかについての当社の考え方となっています。

質疑応答:売却資金の消化見通しについて

質問者:自己投資口取得が株価の上昇により選択肢として魅力が低下した場合、現在の選択肢ではメザニンが有力なのではと考えています。メザニンを含めて、売却資金の再投資枠を十分に消化していける見通しがあるかどうかについてコメントをお願いします。

地紙:バイバックに関しては、株価が上昇することでその効果が薄れるかどうか、さらには資金の振り向け先をどうするかという点については、常に検討しています。間接投資については、条件が適切で高いリターンが得られる案件があれば、メザニン投資も同様にそのような物件をソーシングし、間接投資のかたちで高いリターンを目指しています。

これは日頃から取り組んでいますが、現状では足元のキャップレートが引き続き横ばいであると見ていることから、好条件の案件をソーシングができても、それが必ずしもボリュームに結びつくわけではありません。それに対し、バイバックは即時性がある点が大きな利点だと考えています。

当社では、バイバックの買い付け価格に関して、NAV倍率0.9倍を1つの目安として上限価格を設定しています。ただし、これについては柔軟化を視野に入れています。

具体的な柔軟化の方法についてはまだ私の中で結論が出ていませんが、1つの考え方として、現在までの買い付け価格の平均が0.85倍であり、合計で110億円を買い付けてきた実績があるため、一定の貯金・バッファーがあると認識しています。

そのため、今後バイバックを進めていく中で、買い付け価格については必ずしも0.9倍に押さえつけるべきなのかという点は検討の余地があります。

それ以外については、良質な案件のソーシングをさらにがんばるということが重要だと考えています。

質疑応答:市場賃料の下落圧力について

質問者:スライド17ページには、市場の賃料が下落する圧力があるとの記載があります。一方で、スライド20ページでは、賃料ギャップが3年を見ても7パーセントから14パーセント程度あるとのことです。

これらは直接関係ないかもしれませんが、例えば市場賃料の下落が影響する場合、賃料ギャップが縮小して賃料を上げにくくなるといった懸念は不要なのでしょうか?

地紙:スライド17ページに記載されている「市場賃料の下落圧力」については、パーセプションに基づいて作成したものです。つまり、資本市場における株価、特に物流REITが常にディスカウントされている理由について、こうした懸念があるのではないかと市場が認識しているという仮説をもとに書いています。

ただし、実際の我々のポートフォリオでは賃料に下落圧力はまったくありません。そのため、我々が考える本投資法人の投資口価格と、現在市場でつけられている投資口価格に乖離があり、その乖離を活用してバイバックを実施するという分析をまとめたのがスライド17ページです。

したがって、ファンダメンタルに関する市場の懸念と、我々のポートフォリオで実際に何が起こっているかの乖離について示したのが、スライドの17ページと20ページとの違いだとお考えください。

質疑応答:危険物倉庫の投資優位性について

質問者:スライド25ページの危険物倉庫についてです。私は通常、不動産デベロッパーを主に見ている中で、霞が関キャピタル社などが有望な事業として取り組んでいるように、このような事業を展開する企業が増えてきていると感じています。

例えば、現在ドライ倉庫の空室率が10パーセントと上昇している状況を考えると、延長線上には危険物倉庫や冷凍冷蔵物流、データセンターなど、さまざまな選択肢がある中で、危険物倉庫を選ぶ優位性についてうかがいたいです。

例えば、冷凍冷蔵倉庫では投資額が大きくなる場合が多いと思います。危険物倉庫をドライ倉庫と比較した際に、投資額がそれほど増えずに済むのか、投資額は増えるものの競争が少なくリターンが高いのかなど、他の類似するドライ倉庫の延長上にある商品との投資の優位性についてお聞かせください。

地紙:おっしゃるとおり、付加価値のある、つまり高い賃料が取れる施設への移行や開発において、そのような施設への投資を振り向けていく中での1つの選択肢が危険物倉庫です。

危険物倉庫を選んだ理由の1つは、そのような投資機会が存在していたことに加え、当社には尼崎での増築経験があり、危険物倉庫に対するノウハウと経験が蓄積されていることです。それを今回は併設型ではなく、単体型、すなわち危険物倉庫のみの開発に応用しようと考えています。これが投資の意義です。

ただし、危険物倉庫はボリュームが取りにくい資産です。1件1件が小規模であり、またワンフロアのみしか作れないため、ボリュームが少なく、これを多く展開していくのは適していません。

REITの資産規模をどの程度増やせるのかという観点では大したことがないという判断になりますので、あくまで限定的な位置づけになります。そのため、あくまで物流施設における関連施設の分散を図る中での1つの付随したアセットタイプとして位置づけています。

冷凍冷蔵設備についての検討も当然行いますが、冷凍冷蔵設備は空室リスクが相対的に高くなるため、REITで積極的に取り組むかどうかは慎重に見定める必要があります。ただし、冷凍冷蔵設備も付加価値が高く、高い賃料を確保できるアセットであることから、引き続き視野に入れています。

質疑応答:苫小牧の危険物倉庫の開発案件の開発リスクについて

質問者:苫小牧のようなエリアでは、データセンターの開発について、例えば日野自動車の敷地で三井不動産がデータセンターを建設しようとした際に反対運動が起きて計画が中断するといったことがありました。

今回の対象地域は工業地域であり、利用が難しい土地が多く存在することから、開発リスクはほとんどないと考えてよいのでしょうか?

地紙:苫小牧については、おっしゃるような例にはまったく該当しません。私も現地を訪れましたが、周囲に反対が起きるような施設は一切ありません。ご安心ください。

質疑応答:本業である内部成長の強化について

質問者:以前にも同じような質問をしたのですが、危険物倉庫やメザニンといった事業について、賃貸事業を本業とするREITの場合、言葉が悪いのですが、どうしても「おまけ」的な位置づけになってしまうと感じます。資本政策についても同様で、「おまけ」的なものになってしまうのではないかと考えています。

やはり本業である賃料水準の向上について、困難な一面があるのは理解していますが、もどかしさから新たな収益を生み出す方法を模索されているのではないかと思います。

御社では本業における賃料の向上について、どのようにお考えでしょうか? 稼働率は非常に高く保たれていますが、さらなる賃料増加の可能性や、テナントが移りにくい現状を踏まえた上での取り組みについて詳しくお聞かせください。

地紙:本業については、事業計画上、平均で賃料を7パーセント引き上げることを目標としたアセットマネジメントを進めていくことに尽きると思います。

現状の市場の賃料ギャップや今後のリースマチュリティラダーを見据えながら、我々として努力していきます。それ以上でもそれ以下でもない、というのが回答になります。

その成長の傾きについては、他のアセットタイプと比較した場合、先ほど別の質問者からもご指摘がありましたが、物流はおおよそ各社が同じ水準に収斂しているのではないかと考えています。

この結果が株価に反映されており、当然ながら、投資家のみなさまも成長性のあるところや、場合によっては相対的に割安なところに資金を振り向ける、といった行動をされると思います。

私たちとしては、物流アセットに特化した運用者として、本業による成長をしっかりと進めていくことが唯一の道であり、それをおろそかにするつもりはまったくありません。

いかにして、例えば賃料を1パーセント上げてトップラインを向上させた際に、投資家価値である1口あたりの分配金をどれだけ最大限に押し上げられるか、この施策を資料のバランスシートの右側で実行している、ということを意味しています。冒頭でご説明したとおり、これは両輪の関係だと思います。

本業は資料のバランスシートの左側に該当すると考えていますが、それをいかに右側でサポートするかという点を工夫しているとお考えいただけると幸いです。

質疑応答:三菱地所物流リート投資法人との業務提携について

質問者:三菱地所物流リート投資法人との提携について、同法人の説明会では「協議はしていますが」ということでしたが、詳細までは聞けませんでした。御社から見た三菱地所物流リート投資法人との業務提携について、現状の感触や進捗状況など、お話できる範囲で教えていただけますでしょうか?

地紙:両社の条件の合意が重要です。まず、物件を売却するタイミングと、その対象物件が何であるかという点で合意がなされれば、前に進むと考えています。

ただし、この点には、お互いが売却しようとしている物件の優先順位や、ディールの蓋然性も当然絡んできます。それらがこの枠組みの外にあることを踏まえ、まずは双方にとって条件を合わせられるかどうかが重要です。

そのうえで、具体的に対象物件が何であるか、いくらで売却するのか、いつのタイミングで行うのか、またどのようなスキームで進めるのかを検討していきます。

スキームの検討については、継続的に行っています。我々で言うと、これまで取り組んできた間接投資の派生形であり、特に複雑な要素を伴うわけではありません。そのため、なにか論点があって遅れているわけではなく、単純に物件を選定する上での都合によるもので、両社間の合意が得られれば、案件を実行すると考えています。

この取り組みの一番の目的は、安定した物件売却先であるビークル(組織体)を上場REIT間で作ることにあります。

現在のマーケットでは、物件を外部に売却する流動性の高い現物市場があります。そのため、どちらの方法を選ぶかは両方の選択肢が考えられる状態です。しかし、環境が変化し、売却益や間接投資への切り替えが必要な局面において、他の手段が利用できない場合には、安定したストラクチャーとして機能すると思います。

それを使うタイミングはいつなのかを両社間で合意してから、具体的に進めていくことになると考えています。

長くなりましたがまとめると、1つはお互いがどの売却物件をいつ実行するかについて合意すること、もう1つは他の選択肢と比較してこの方法を採用するという合意ができることです。この2つが具体的な案件を進めるための重要な要素になると考えています。

質問者:なるほど。これは1年や半年というよりも、時間をかけて、お互いに話し合って進めていくものだということでしょうか? 

地紙:おっしゃるとおり、1つの引き出しとしてこのようなツールを持っているのだと捉えています。

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