本日お話ししたいこと
喜舎場慎司氏(以下、喜舎場):株式会社オープンアップグループIR部部長の喜舎場です。本日お話ししたいことを目次にまとめています。最初に人材派遣業界の紹介、続いてオープンアップグループとは、次に競合・市場環境について、最後に今後の見通しについてご説明します。
株価指数の推移
喜舎場:株価チャートを掲載しています。みなさまにご注目いただきたいのは、人材関連サービスは、この10年間で最もアウトパフォームした業界であるということです。当社を含めて、人材関連業界は昨今注目されている半導体関連業界よりも株価推移が非常に高く、好調だったことがわかります。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):こちらの株価の推移を見て興味を持った投資家がいると思います。人材関連のサービスが伸びている理由を簡単に教えてください。
喜舎場:人材関連サービスは、これまで投資家の方々に注目されにくい業種でした。実際のところ、人材関連セクターという項目はアナリストカバレッジの中にもありません。ただ、2014年のリクルートの上場をきっかけに人材関連という業種に一挙に注目が集まり、人材関連企業の業績も非常に良かったため、それが株価に反映されていったのではないかと考えています。
坂本:確かに、その頃からバリュエーションが少しずつ切り上がってきて、注目が集まったと思います。
喜舎場:おっしゃるとおりです。
人材派遣とは
喜舎場:人材派遣業界についてご説明します。人材関連サービスは主に、求人広告、弊社が属する人材派遣、人材紹介の3つに分けられます。人材派遣の仕組みについては、後ほどスライドの図をご覧いただければと思います。
人材派遣とは
喜舎場:人材派遣をもう少し分解してみると、事務派遣、エンジニア派遣、製造派遣があります。ほかにもいろいろな形態の派遣がありますが、この3つが代表的だと考えています。
事務派遣の業務内容としては、オフィス業務が最も知られています。主な上場企業としては、リクルートやパーソル、パソナが挙げられます。エンジニア派遣業界は当社の主力事業になっていますが、特徴としては、業務内容が研究開発に携わる部門であることです。
また、当社のようにエンジニアを正社員雇用していることが特徴に挙げられます。代表的な上場企業としては、当社以外では、マーケットリーダーであるテクノプロ、この業界の老舗であるメイテックなどが挙げられます。
製造派遣はエンジニア派遣と間違われやすいのですが、製造派遣の業務内容はライン作業です。主な上場企業としては、昨年非上場化したアウトソーシング、UTグループ、日総工産などが挙げられます。
例:製造業企業へのエンジニア派遣と製造派遣の違い
喜舎場:一般的な製造業を行う企業へのエンジニア派遣と製造派遣の違いについて簡単にご説明します。エンジニア派遣は上流工程にかかわる派遣業務です。例えば研究・開発、設計・解析、実験・評価、生産技術・整備保全などが、私たちのエンジニア派遣が携わる業務内容です。実際にものづくりが始まる工程からが製造派遣となり、エンジニア派遣とは区分けしています。
坂本:御社の派遣領域である4つの工程について、どの工程への派遣ボリュームが多いのか、また、派遣の単価はそれぞれの工程で異なるのか教えてください。
喜舎場:当社の特徴として、未経験者をエンジニアに育てるということが挙げられます。そのため、エンジニア領域とはいっても、最初はローエンドの技術領域からスタートします。研究・開発を例にとっても上から下までの工程がありますが、お客さまの社員だけで行う基礎開発の部分がコアとなります。そこから派生する開発事業はアウトソーシングされることが多く、当社の場合は比較的ローエンドからミッドエンドの領域がターゲットになっています。
単価については、この事例のような製造業ですと、1時間当たり3,500円ぐらいからスタートとなっています。
坂本:非常に高単価ですね。
喜舎場:上流工程になればなるほど、6,000円、7,000円と上がっていきます。
坂本:コアの方と一緒に行うかたちのものですね。
会社業績推移
喜舎場:当社について簡単にご説明します。スライドは、10年間の売上高と営業利益の推移です。売上高は約10倍、営業利益は約11倍の成長を成し遂げてきました。
沿革
喜舎場:当社はオープンアップグループといいますが、2021年4月に、旧夢真ホールディングスと旧ビーネックスグループの2社が合併してできた会社です。
旧夢真ホールディングスは、建設派遣のマーケットリーダーで、ITに力を入れている会社でした。一方、旧ビーネックスグループは機電エンジニア派遣に強い会社で、こちらもITエンジニアに力を入れていました。この会社が2021年4月に合併してできたのがオープンアップグループです。
会社概要
喜舎場:現在のマネジメント層の3名です。当社は取締役が10名いますが、社内の取締役はこの3名しかいません。
代表取締役会長兼CEOの西田穣は旧ビーネックスグループの社長でした。代表取締役社長兼COOの佐藤大央は旧夢真ホールディングスの社長で、管掌としては業務執行を担当しています。取締役CFOの佐藤博は、旧ビーネックスグループCFOをそのまま引き継いでいます。
坂本:こちらの合併のきっかけについて教えてください。
喜舎場:旧夢真ホールディングスも旧ビーネックスグループも、成長にかなり野心的な会社であったことが前提にあります。
坂本:お話はうかがったことがあります。
喜舎場:コアとなるのはやはり理念だと考えています。会社が密接に関わる存在として、エンジニアとお客さまが存在しますが、両社とも「人」「エンジニア」に比重を置いており、そのような理念が近しかったと思います。もともと社長同士でのつながりもあったのですが、統合に向けて非常に早くスムーズに決定することができました。
パーパス
喜舎場:弊社のパーパスは、「幸せな仕事を通じてひとりひとりの可能性をひらく社会に」です。このパーパスを実際に経営に落とし込んでいます。英文にすると「Open up individual potential through rewarding work」になることから、パーパスを社名に冠して現在の「オープンアップグループ」になりました。
Open Upper(オープンアッパー)の紹介
喜舎場:「オープンアップ」とは、「可能性を開く」という意味です。こちらのスライドは統合報告書から抜粋したものです。このように、可能性を開いた方を一人ひとり紹介しています。ほとんどの方がエンジニア未経験者です。
ある方は小売業、ある方は飲食業と、まったく畑違いの仕事をしていた方々が、手に職をつけたいと当社に入ってエンジニアになることを志し、見事にその目標を成し遂げています。後ほどぜひご覧いただければと思います。
未経験からエンジニアの創出
喜舎場:「Open Upper(オープンアッパー)」を創り出すのが今後の重要な課題です。ここからは、当社と同業他社との大きな3つの違いについてご説明します。
1つ目が、未経験からエンジニアを創出することです。多くの派遣会社ではエンジニアの取り合いになってしまっていますが、当社は未経験者からエンジニアを創出するのが特徴で、それが大きな社会貢献の1つになっていると考えています。スライドの図で示しているのはITインフラエンジニアの場合です。こちらも参考にしていただければと思います。
坂本:未経験者の人材確保は御社の特色だと思いますが、伝えないとなかなか応募につながらない面もあります。旧夢真には「夢探索カフェ」のような場所が全国にあり、そこで未経験者をマッチングしていたと思います。そのような取り組みは現在も続けているのでしょうか?
喜舎場:旧夢真の場合は建設派遣になりますが、どちらかと言うと今の採用は人材紹介を使うのがメインになっています。人材紹介を通じて、当社におけるリスキリングが本当にすばらしいと第三者の立場で宣伝してもらっています。
坂本:将来的に人材紹介の部分を内製化することはありますか?
喜舎場:現在の人材紹介は人の取り合いでコストが上がっています。そのため、自社サイトを通じての採用に力を入れようと思っています。後ほどご説明する当社の3つ目の特徴である、顧客先への転籍を認めていることは、人材紹介業務に関わっているとも言えます。
坂本:スライドの図を見ると、ミッドエンドエンジニアぐらいになると、かなりスキルの高いエンジニアかと思います。これはどのぐらいの時間をかけてなるものなのでしょうか?
喜舎場:スライドの例ですと、最短約1年でミッドエンドエンジニアになれると考えています。もともとITに知見の高い方もいらっしゃれば、まったく知見に乏しい方もいらっしゃるため、研修内容もその人に応じて変えています。
ある例では、最初に中級研修を受ける前に、まず配属先で実務経験を積み、その後中級研修を受けて資格を取得するコースもあります。そこは人によってさまざまです。
坂本:Off-JTとOJTが絡まりながら成長していくかたちですか?
喜舎場:おっしゃるとおりです。すでに配属された方も、また戻ってきて研修を受けられます。配属されながらでも研修を受けられますが、そのようにどんどんリスキリングしながら、自分の価値を高めていくことが当社のアップスキームモデルです。
坂本:成長も早そうですね。ミッドエンドエンジニアになった場合の単価は、だいたい御社の平均ぐらいのイメージですか?
喜舎場:セグメントによって変わりますが、だいたい平均ぐらいだと思います。
坂本:早い人で1年ぐらいで平均程度に戦力化できるということですね。
喜舎場:そのとおりです。
研修による資格取得数
喜舎場:実際にITインフラの研修を受けた成果の1つとして、資格取得数が挙げられると思います。
坂本:これはかなり難しいのですか?
喜舎場:初級から上級までありますが、人気資格です。今はAIやDXでクラウドエンジニアの需要が高まっているため、このような資格取得が年々上がっていっています。スライドの表の一番上は第3四半期の累計です。第4四半期も含めると、年々資格取得数は伸びている状況にあります。
エンジニアファーストの事業モデル
喜舎場:当社の2つ目の特徴は、エンジニアファーストの事業モデルです。一般的な派遣事業は、人と顧客をマッチングさせる事業モデルで、これには同業各社での違いは特にありません。
まずお客さまからオーダーをいただき、お客さまの条件に合う人を探してきてマッチングさせるのが一般的ですが、当社の場合は、まず人です。エンジニアがどのような職に就きたいのか、最初に希望を聞いて、その人に合う仕事を取りに行くのが当社の事業モデルです。同じ派遣業界でも、その点が他社とはまったく異なっています。
顧客先への転籍も認める「卒業モデル」
喜舎場:3つ目の特徴です。人に重きを置いているため、当社を通じてキャリアメイク、キャリアアップしていただくだけではなく、キャリアチェンジとして顧客先への転籍も奨励しています。スライド右のグラフに実績数を記載しているとおり、2024年6月期においては473名のエンジニアが顧客転籍を果たしています。
坂本:非常によい取り組みであり、この理念が広がっていくと社会的に非常に評価されると思います。ただし、御社としては、育てて、フィーを生み出していた社員の方に辞められると、フィーが入ってこなくなると思います。転籍する際に、転籍先からある程度紹介フィーのようなものが入ってくるのでしょうか?
喜舎場:おっしゃるとおり、フィーをいただいています。
坂本:それは有意義ですね。
喜舎場:そのような意味では、人材紹介とも言えるかもしれません。
坂本:うまく回っていくと良いモデルになりますね。
エンジニアのアウトソーシング依存が高い日本
喜舎場:競合・市場環境についてご説明します。まず、なぜこのように人材派遣業界が伸びてきているのかという根本の話です。スライド左のグラフを見ていただくと、日本はアウトソーシング比率が非常に高いことがわかります。
このような状況になったのには、2つの理由があると考えています。1つは、日本特有の雇用環境です。終身雇用、年功賃金、企業別労働組合などがあり、なかなか採用した人間をクビにできない、リストラできない状況があります。
また、昨今は技術革新が目まぐるしく、なかなか企業としては人員を抱えにくい背景があります。そのため、アウトソーシングへの依存度が高い産業構造が出来上がったのではないかと考えています。
坂本:1つのものを開発する時、人材のリソースのかかり方の濃淡が大きいというのはありますか?
喜舎場:当然ながらあります。
継続的な派遣需要の増加
喜舎場:スライドで紹介しているのは、あくまでも機電・ITエンジニア派遣の市場規推移になります。建設派遣や製造派遣ではまた見え方が違いますが、右肩上がりに伸びているのがわかります。リーマン・ショックの時に一時的に下落していますが、コロナショックの時は伸び続けています。
これは日本の構造を表しているものだと思います。かつてリーマン・ショック時に各社でアウトソーシング比率を減らす動きがありましたが、その結果開発がストップしてしまうという状況に陥りました。それが、欧米諸国と比べて日本の経済の立ち上がりが出遅れた大きな要因にもなっていると考えられ、その反省もあったと思います。そのため、コロナ禍においてもエンジニア派遣は右肩上がりに伸び続けてきました。
ターゲットドメイン
喜舎場:当社のターゲットドメインについてご説明します。スライドには、ライバル企業についても記載しています。右の表を見ていただくとわかるとおり、当社の主なお客さまの業界は、機電、IT、建設です。
主な採用層は未経験者と新卒です。新卒も未経験に含まれますが、左側のピラミッドに示したように、まずローエンドからスタートすることになります。
当社の特徴は育成・教育にあるため、どんどんリスキリングしていきながらミッドエンドになっていきます。このアッパーローエンドからミッドエンドが当社のターゲットドメインとなっています。
売上高
喜舎場:ここからは、売上高と社員数の推移について解説します。当社の場合は、同業他社と比べて年平均成長率(CAGR)が非常に高く、30パーセント弱あります。
社員数
喜舎場:社員数も同様に、CAGR29.3パーセントと非常に高い成長を遂げてきました。経験者採用の市場は非常に厳しい状況です。当社は未経験者に主軸を置いたこと、M&Aに積極的に関わってきたこと、この2点が成長速度を早めた要因だと考えています。
求人倍率
喜舎場:求人倍率についてご紹介します。スライドのグラフの灰色の線が経験者求人倍率です。これはITエンジニアの場合ですが、10倍を超えてしまっています。例えば、経験者採用を主軸に置いていた人材派遣の会社は人が採れない状況になっています。
当社の場合は、どちらかと言うとオレンジの線になります。こちらの領域で伸びてきたため、それほど採用に苦労はしませんでした。ただし、経験者採用主軸だったライバル企業が、どんどん未経験者採用を始めています。今後は未経験者採用市場もかなり活況になり、競争環境は厳しくなると考えられます。
中期経営方針
喜舎場:続いて、今後の見通しです。昨年の通期決算で中期経営方針を発表しました。「収益指標」「成長指標」「還元指標」3つの指標があります。
収益指標としては、売上高・営業利益で年率10パーセント以上の成長を遂げ、営業利益率も10パーセント以上を達成します。
成長指標としては、国内エンジニア数を年率10パーセント以上増やします。また、社員の育成投資をしっかり行い、M&Aにも取り組みます。
還元指標としては、配当性向を50パーセント以上とし、累進配当を行います。これまで13期連続増配となっていますが、今期を含めて14期連続増配がほぼ確定しています。また、M&Aなどの機会がなければ、自己株取得も検討することを還元方針としています。
事業ポートフォリオの再編
喜舎場:大きなトピックとして、事業ポートフォリオの再編を行いました。実は今期の途中まで、当社はブルーカラーワーカー領域に携わっていました。しかしながら、昨年4月1日に製造派遣を売却し、さらに今年3月には、軽作業領域で売上高が300億円弱を占めるイギリスの大きな会社を売却しました。これにより、エンジニア領域に一本化しました。
事業ポートフォリオの再編
喜舎場:スライドには、なぜエンジニアに特化しなければならなかったのか、事業ポートフォリオについて簡単に記載しています。
ブルーカラーワーカー領域は、成長率も利益率も非常に低い領域だったのに対して、エンジニア派遣の領域は成長率も高く利益率も高いことから、今後は全社利益率が改善していくと考えています。
売上高を構成する主要KPI
喜舎場:特殊な業界ですので、売上高を構成する主要KPIについて簡単にご説明します。エンジニア数、稼働率、お客さまからへの請求額の3つを掛け合わせると、売上高になります。
当社のようなエンジニア派遣の場合は正社員雇用であるため、特に稼働率が重要になります。稼働していないエンジニア社員にも賃金を支払わないといけないため、稼働率は利益率を決める主要なKPIとなっています。
坂本:派遣先の1つの現場が終わり、次の現場が少し先だったり、決まっていなかったりするケースもあると思います。エンジニアは正社員ですので、給料を払いながら待機することになると思いますが、次の現場が決まるまでの間は何をしているのでしょうか?
喜舎場:大まかにいうと、3つのパターンがあると思います。1つ目に、プロジェクトとプロジェクトの狭間で1週間ほど有給休暇を取るのはよくある例だと思います。2つ目としては、研修を行っています。研修中の人たちも待機の人数に含まれます。
3つ目が一番問題なのですが、次の就業先が見つからない場合です。例えば派遣先と合わない場合や、エンジニアから「この会社では働きたくない」と言われるケースです。退職率の上昇にもつながるため、そのような人たちを減らすことが重要な課題となっています。
坂本:少なくともこの3つのパターンを抑えるほうが稼働率は上がるということだと思いますが、御社ではどのような取り組みをしているのでしょうか? 研修はレベルアップする役割もありますが、その他にあれば教えてください。
喜舎場:当社の重要課題として、おそらく今期の通期決算発表でも取り組みについて発表することになると思います。現在取り組んでいると言うよりも、このようなことを目指せばよいのではという1つのヒントとして考えていることがあります。
派遣と請負の違いをベースに考えると、派遣社員はだいたい1人で現場に赴くことになります。退職率は、当社の場合で15パーセントから20パーセントとかなり高くなります。一方で、請負で働いている当社社員の退職率は、1桁の半分もしくは半分以下しかありません。
そこに今後の課題を解決する1つのヒントがあると思います。やはりチームで働くと帰属意識も高まります。また、自分のなりたい将来の姿を、例えば先輩を通じて見ることができることなども、退職率の低さにつながっているのではないかと考えています。
今後は派遣社員についても同じような取り組みができないかと考えています。例えば、1人で派遣されている場合でも、横の連絡がつながるような仕組みを作るなどしています。
25年6月期業績予想
喜舎場:ここからは当社の業績についてお話しします。売上高は、2025年6月期の予想1,850億円に対して、第3四半期時点の実績が1,468億円と、非常に良い進捗率で推移しています。営業利益も同様に、予想の155億円に対して、第3四半期時点の実績が129億円ですので、達成は比較的可能だと考えています。
坂本:本日ここまでのご説明を聞くと、エンジニア領域のお話がかなり多かったと感じます。エンジニア領域を伸ばしていくイメージなのでしょうか? また、建設絡みの仕事も売上のボリュームとしてはまだ大きいと思います。こちらについての取り組みと成長イメージがあれば教えてください。
御社のエンジニアにはおそらく建築関係も入っているのだと思いますが、視聴者はITのイメージを持ってしまったのではないかと思いました。
喜舎場:弊社が「エンジニア領域」という場合は建設エンジニアも含んでいます。エンジニア派遣の強化を考えているとお話ししましたが、昨年と今年において、建設派遣のM&Aを2件行っています。
建設だけを強化したいと考えているわけではなく、機電もITも、チャンスがあれば当然M&Aを行っていきたいと考えています。一方で、オーガニックの成長も非常に重要になってきています。ベースはオーガニックの成長で、プラスアルファでM&Aの成長と考えています。
財政状態(BS)
喜舎場:財務状況です。スライドのBSで「営業債権・その他流動資産」をご覧ください。人材派遣業界の特徴で、非常に強みだと思える部分です。その右を見ると、「営業債務・その他流動負債」と記載しています。差し引くと、ワーキングキャピタルと言われる運転資本になります。この運転資本はマイナスになっています。
これが当社の特徴でもあり、当社のライバル企業もそうなのですが、運転資本がマイナスということは、キャッシュが貯まりやすい構造だということです。例えば、「成長投資に回したい」「成長は抑えて配当還元を強化したい、その原資にしたい」ということもできるように、非常にお金が貯まりやすい構造となっています。
坂本:どちらの方向にも振ることができるわけですね。
喜舎場:おっしゃるとおりです。当社の場合は、主に成長投資に回しています。後でお話ししますが、さらに還元も行い、どちらの方向も追っていることになります。
キャッシュアロケーションの考え方
喜舎場:キャッシュアロケーションです。スライド右に記載のとおり、オーガニック成長への投資、株主還元、M&A投資がキャッシュフローの使途となっています。
株主還元
喜舎場:株主還元です。当社の場合、今期の配当性向は58パーセントくらいに収まる予定になっています。スライド左の表を見ていただくとわかるとおり、累進配当になっています。累進配当は今後も続ける予定です。
坂本:株主還元についてうかがいます。スライドには「①配当性向50パーセント以上、②累進配当」と記載がありますが、これは配当性向50パーセント以上かつ累進配当という理解でよろしいでしょうか?
喜舎場:そのとおりです。
坂本:御社のキャッシュの貯まり方についてのお話がありましたが、これがいきなり凹んでいくのはよほどのことがない限りないと思います。そうなると、配当性向がかなり高くなって、累進配当で最低でも前年度よりも配当は多くなるというイメージですね。
喜舎場:配当性向も上がってしまいます。
坂本:その部分は許容するかたちで配当政策を組まれているということですか?
喜舎場:おっしゃるとおりです。
坂本:自社株買いを行う際に、当然ながらフレキシブルに行うのが基本の回答になると思いますが、条件や設定されている目線などについて、配当とバランスなども含めて開示できるものがあれば教えてください。
喜舎場:一昨年に自社株買いを行いました。100パーセントコミットできるわけではありませんが、基本的にはM&Aがなかった年は自社株買いの対象になるかと考えています。また、社内に大きなインサイダーを抱えていないことが条件になります。
坂本:非常によくわかります。そこまで考えられているのは、なかなかすばらしいと感じました。
まとめ
喜舎場:まとめとして、今回ご参加の個人投資家のみなさまに、当社の特徴として覚えていただきたい項目を3つ挙げました。1つ目が高い成長性、2つ目がエンジニアファーストの事業モデル、3つ目が累進配当・50パーセント以上の配当性向です。
課題も3つあります。今回がオープンアップグループになって初めてのIRセミナーということもあり、当社の細かいKPIなどについては触れていませんが、やはり退職率の削減・定着率の改善が大きな課題になっています。
2つ目に、採用単価の上昇です。採用環境がかなり厳しくなっていることから、いかに採用単価を上げないようにするかが重要だと考えています。3つ目に、昨年買収した企業の利益改善、PMIが今後の課題だと考えています。
坂本:課題について、もしまだお話ができていない部分があれば、ここでお話しいただければと思います。また、3つの課題の改善のために取り組んでいる施策などを簡単に教えてください。
喜舎場:この場よりも、当社の期末決算でお話ししたほうがよいかと思います。なぜ退職率に注目しているのかというと、今後はライフタイムバリューが当社の重要指標になると考えているためです。いかに当社で長く働いてもらうか、当社でいかに給与を高めてもらうか、その人たちの生み出す付加価値を上げることが重要になります。
具体的な施策や、ライフタイムバリューのKPIの進捗状況については、各年度もしくは四半期ごとの決算発表で今後発表することになると思います。
スライド下段にもURLを記載しているように、もっと当社を知っていただきたいと考えています。ご関心のある方はぜひホームページやIRメールマガジン、「X」などにアクセスいただきたいと考えています。
当社の目指す姿
喜舎場:最後に、当社の目指す姿についてお話しします。まだ始まったばかりですが、当社は現在の人材派遣企業から、今後は人材成長支援企業になりたいと考えています。
現状の事業定義はマッチングです。これはビジネスモデルそのものです。今後は、それに加えて、社員一人ひとりが、当社でいろいろな経験や体験をすることを通じてキャリアアップを図る「ワークライフエクスペリエンス」が事業定義になるのではないかと考えています。
これまでの成長の源泉は、就業機会の提供でした。これからは、冒頭でご説明した「Open Upper」の紹介にあったように、いかに「Open Upper」を増やすかが当社の成長の源泉になると考えています。
以上で、当社の説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:技術者の確保に対する自社の強みについて
坂本:「技術者の確保についての御社の強みを教えてください」というご質問です。
こちらは、事前に投資家からいただいている質問です。今日のプレゼンの中でご説明はあったのですが、今一度教えていただけたらと思います。未経験採用に他社が入ってきていますが、御社がすでに打っている布石などを含めて教えてください。
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