事業環境(情報サービス産業)
小林裕明氏:NCS&A執行役員常務経営戦略室長の小林です。本日はよろしくお願いします。私からは、2025年3月期の決算概要についてご説明します。
まず、情報サービス産業の事業環境についてご説明します。雇用・所得環境が改善する中で、企業の投資においても持ち直しが見られ、IT投資は引き続き堅調に推移しました。
また、例えば電子帳簿保存法やインボイス制度、テレワーク等への対応など、デジタル活用が必要となる制度変更や、労働者不足をきっかけに業務効率化に向けたIT活用の重要性が中堅・中小企業でも高まっています。
さらに、経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」を背景に、古い基幹業務システムを刷新する動きが活性化しています。
NCS&Aは
NCS&A株式会社のご紹介です。1961年に大阪市で創業し、現在従業員は連結で1,219名です。お客さまは約1,700社、パートナー企業が約200社あります。従業員の有給取得日数は年平均17.2日、従業員の残業時間は月平均10.5時間まで減らすことができています。
2025年3月期は営業利益率が9.7パーセント、ROEは15.9パーセントという結果でした。
NCS&A 2025年3月期 ハイライト
2025年3月期のハイライトです。営業利益は過去最高を更新し、営業利益率は9.7パーセントでした。また、4期連続で配当の増額修正を実施し、2026年3月期の配当予想は44円に増額しています。
2024年6月に平均5.0パーセントの給与水準の引き上げも実施しており、3年連続で同水準の引き上げを行っています。
2024年7月から導入済みのフェムテックサービスに対し、「更年期プログラム」を追加しています。サステナビリティへの取り組みも推進しており、こちらは後ほどご説明します。
2025年3月期 通期 経営成績
2025年3月期の通期の経営成績です。売上高は主力ソリューションが堅調に推移し、204億9,300万円となりました。営業利益は利益率が改善し、19億9,300万円となっています。
経常利益は受取配当金などを含めて21億900万円、親会社株主に帰属する当期純利益については繰延税金資産を2025年3月期末に計上し、21億900万円となりました。経常利益と親会社株主に帰属する当期純利益が同じ数字になっていますが、これは偶然の一致です。
売上高(売上区分別)の状況
売上区分別の状況です。当社は4つの売上区分に分類して、それぞれの進捗の推移を見ています。
自社製品によるソリューションとは、文字通り自分たちで作った製品をお客さまに提供するものです。システムインテグレーションは、システムの提案・開発・保守までワンストップサービスを提供するものです。機器・パッケージはパッケージをそのまま単体で売るビジネス、受託開発は大手メーカーからの開発委託等になります。
当社では、自社製品によるソリューションの売上強化を継続しており、2025年3月期はマイグレーションサービス等の大型案件で堅調に推移したことにより、売上高は54億700万円、売上構成比では約27パーセントまで伸ばすことができています。
営業利益の変動要因(前年同期比)
スライドのグラフは、営業利益の変動要因を前年同期比で示したものです。一番左が2024年3月期の営業利益で16億3,800万円となっています。
これに対し、売上増による利益増がプラス4億7,200万円、売上総利益率の改善によりプラス1億3,700万円、研究開発の増加や給与水準の引き上げによる人件費の増加等によりマイナス2億5,400万円となった結果、2025年3月期の営業利益は19億9,300万円で着地しました。
受注・売上・受注残の状況
受注・売上・受注残の状況です。スライドのグラフは、2023年3月期から2025年3月期までの3年間の推移を示しています。
棒グラフが紺色の部分は受注高、水色の部分は売上高、その上にある実線は期末の受注残、点線は継続契約の売上予定も含んだ受注残を示しています。
2025年3月期の受注高は209億5,800万円でした。期末の受注残高は前期末に比べて約4億円増加し、53億6,400万円となっています。
資産・負債・純資産の状況
資産・負債・純資産の状況です。スライド左側のグラフは、2024年3月期末と2025年3月期末を示しています。
2025年3月期末の資産合計は213億2,000万円となり、前期から21億800万円増加しました。これは現金及び預金が増加したことと、繰延税金資産を計上したことによるものです。
負債合計は70億9,300万円となり、前期から1億3,500万円増加しました。これは流動負債の増加によるものです。
純資産の合計は142億2,600万円となり、前期から19億7,300万円増加しました。これは主に利益剰余金の増加によるものです。この結果、自己資本比率は66.7パーセントとなっています。
NCS&A 2026年3月期 トピック
辻󠄀隆博氏(以下、辻󠄀):NCS&A代表取締役社長の辻󠄀です。私からは重点施策についてご説明します。
まず2025年度のトピックスです。営業利益率は10.9パーセントを目標にしています。2024年度の実績は9.7パーセントでしたので、引き続きソリューションを強化していきたいと考えています。
配当予想は40円から44円に増配します。さらに、2025年度からは中間配当を実施します。
スライドの上段中央のグラフにおいて、2024年度の連結当期純利益が跳ね上がっていますが、これは繰延税金資産を計上したことによるものです。
また、今年4月に可視化ソリューション「ReverseNeo」に生成AIを搭載したものをリリースしました。この技術は、当社のビジネスの幅を大きく広げるような商品です。後ほど詳しくご説明します。
「2025年の崖」を背景にDXが続く
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」を背景に、多くの企業がDXを進めています。ご存じのとおり、DXとはデジタル技術を活用・浸透させて、人々の生活をより良いものにしようという動きです。
レガシーと呼ばれる古いコンピューターシステムを使い続けることは、古いシステムの維持にお金がかかるだけでなく、それが下地にあると、DXを進めようにも進まないという問題があります。
そのため、古いコンピューターシステムの維持にお金を使うのをやめ、オープンで柔軟な新しいシステムに作り変えることを推奨するのが「2025年の崖」です。当社で進行中の大半のプロジェクトは、DX関連の開発となっています。
主力ソリューションの推進 <REVERSE PLANET>
DXを進める上で、当社の主力商品である「REVERSE PLANET」という可視化ツールをご提案しています。レガシーと呼ばれる古くて膨大なコンピューターシステムを可視化するツールです。
これには別の使い方もあります。例えば、プログラムを修正する際に、まずはシステムエンジニアが修正すべき箇所は1ヶ所だけなのか、複数にまたがるのかを特定します。
この作業にはベテラン技術者の経験と知識を要します。なぜかというと、手元にあるドキュメントは必ずしも最新のものと合致しておらず、手探り状態で作業しなければならないためです。
規模が大きければ大きいほど時間もかかりますし、修正漏れも発生します。よくニュースで耳にする「システム障害」は、このようなシステム調査時の修正漏れであると推測されます。「REVERSE PLANET」という可視化ツールは、このようなコンピューター技術者の悩みを解決します。
今年10月に「Windows10」のサポートが終了するため、多くの企業の情報システム部門では、「Windows10」から「Windows11」に切り替えた時に、アプリケーションプログラムにどのような支障が出るかの調査に苦慮することが想定されます。
主力ソリューションの推進 <AirsNeo>
当社はDXの構築方法として、マイグレーションという手法を提案しています。マイグレーションとは移動・移住・移転などを指す言葉で、現在利用しているシステムを新しい環境に移行することを意味しています。
システムを再構築するためには、当初かけたお金・時間・手間と同じような労力がかかってしまいます。そのため、比較的安全かつ安心で安く移行できるマイグレーションを提案しています。
マイグレーションは、ロジックを変えないで移行するため、もともとのシステムを知らなくても、当社のサービスである「AirsNeo」を使用することで移行が可能です。
手順としては、もともと使っていたシステムの棚卸を行い、マイグレーションの実現性を図ってから、実際に移行ツールを作り、変換して実装します。
新しい技術への取り組み ~生成AI
今年4月には可視化ソリューション「ReverseNeo」に生成AIを搭載した新バージョンをリリースしました。この新バージョンでは、生成AIによってソースコードから処理フローと処理概要の仕様書を作成することができます。
通常はシステムエンジニアが設計書を作り、その設計書をもとにプログラム仕様書を作ります。このプログラム仕様書をもとにしてプログラマーがソースコードを書きます。
特に古く大きいシステムの場合には、ドキュメントがない場合や、存在しても最新の状況と異なるケースが多数あります。しかし、ドキュメントがなくてもソースコードは存在していますので、このソースコードからドキュメントの作成を実現する製品です。
プログラム仕様書が作成できるようになると、システムの全体像が見えてきます。当社においても、これまでマイグレーションを請け負ってきましたが、その後の保守に関してはロジックに変化はないがドキュメントがないという理由で、お断りしてきました。しかし、これにより保守にも対応できるようになります。
つまり、これはマイグレーション後のシステム保守にも役立つ機能となります。プログラム仕様書を作成して終わりではなく、保守を実施するために必要なさまざまなドキュメントを作っています。
中期経営計画(2024-2026)の要綱
こちらのスライドには、2026年度までの中期経営計画の要綱を記載しています。
数値目標として、女性管理職の比率を20パーセントにしようと掲げています。2024年4月1日時点で5.4パーセントでしたが、2025年4月1日時点では9.4パーセントとなっています。あと2年かけて女性管理職を増やしていきたいと思っています。将来的には男女50パーセントずつの比率を実現する考えです。
男性の育児休業については、2024年度に100パーセントを達成できました。これを維持していきたいと考えています。
有給取得日数の目標は18日ですが、現在の実績は平均17.2日です。残業時間は目標10時間に対して、実績は平均10.5時間です。
また、新しくオンライン専門職を導入したいと考えています。自立している社員を対象に、例えば実家の親の介護が必要な社員が会社に通わずに働ける体制や、子育て期間中に会社に通わず働ける体制がとれる会社にしたいということで、2025年中には施行したいと考えています。
したがって、入社後に研修を行い、自立していると判断した場合は、どこで仕事をしてもかまわないような、社員が仕事の環境を選べる会社にしたいと思っています。
中期経営計画 ~基本方針を支える戦略投資
2026年度までの中期経営計画の基本方針です。大きく分けて4点あります。
1点目は「既存事業の強化」です。既存事業を発展させ、持続的な成長を目指します。
2点目は「新規事業の創出」です。将来に向けた持続的な成長基盤を獲得するため、2020年度から「社内スタートアップ制度」を始めました。これを社内だけではなく、社外にも広げ、信頼できる相手と互いにリスクをとった協業ビジネスを発展させたいと考えています。
3点目は「人への投資」です。社員に投資しようというもので、この背景にはダイバーシティ&インクルージョンがあります。これに当社は公平性を確保しながらDE&Iを進めています。
4点目は「株主への還元」です。当社が成長して社会に貢献する上で、当社を応援してくださる株主のみなさまに利益を還元したいと考えています。新たな事業への投資と株主還元を進めていく考えです。
企業価値向上に向けた成長投資の強化
今お話しした中期経営計画の基本方針のうち3つの項目において、企業価値向上に向けた成長投資の強化を図っていきます。営業利益率が安定的に創出できる状況であることから、さらなる企業価値向上を目指し、事業投資と株主還元を推進していきます。
人材への積極投資
基本方針の3点目である人材への投資により、中長期の価値向上を目指します。
スライドの図には、人材に投資することが財務価値を向上させ、その成果として社会価値を創出し、当社の価値の源泉に還流することを描いています。
社会貢献活動およびサステナビリティ
社会貢献活動およびサステナビリティについてご説明します。
男性育休取得率は、2024年度で100パーセントとなっています。新卒採用については、2025年4月は64名が入社しました。なお、キャリア採用は10名で、概ね計画どおりに進んでいます。
2020年度下期から始まった社内スタートアップ制度については、採用累計件数が108件となり、実際に商品化したものも数多くあります。この制度を発展させ、信頼できる相手と互いにリスクをとった協業ビジネスに取り組んでいきます。
また、コンプライアンスの遵守を徹底しています。パワーハラスメント研修とジェンダーハラスメント研修を実施しました。さらに、毎年11月1日を当社の「コンプライアンスの日」と制定し、全社研修を実施しています。
そして、環境保全活動の実施に加え、社会貢献活動への参加も実施しており、継続していきたいと考えています。
健康経営優良法人2025に認定(2年連続)
当社は「健康経営宣言」を実施しており、2024年度に続き「健康経営優良法人2025」に認定されています。社員一人ひとりが心身ともに健康で、個々の力を最大限に発揮できるように、働く環境を改善していきます。
2018年度から2024年度の7年間では、途中で新型コロナウイルスの影響を受けましたが、社員の働く環境の改善を行った結果、2024年度は過去最高益を更新しています。引き続き「健康経営」に取り組んでいきます。
中期経営計画の変遷と目標
過去2つの中期経営計画から新中期経営計画の変遷です。売上高、営業利益、営業利益率をグラフに示しています。
2018年度から業績を回復させています。2020年度に新型コロナウイルスの影響を受け、前年度を下回ったものの、それ以降は右肩上がりの業績となっています。
2018年度から2020年度、2021年度から2023年度の2つの中期経営計画では、個々の施策はそれぞれ違いますが、共通して収益基盤の安定を重要視してきました。そのため、主力ソリューションを強化し、自主ビジネスを拡大してきました。併せて働き方改革を進め、社員の処遇を改善してきています。
営業利益率は約10パーセント、ROEは10パーセント以上と、安定的に創出できる状況であることから、さらなる企業価値の向上を目指し、株主還元に加えて事業投資を推進していく方針です。
2026年3月期 通期 業績予想
2026年3月期通期の業績予想です。売上高は207億円、営業利益は22億5,000万円、営業利益率は10.9パーセントを目指します。
2026年3月期 配当予想
配当予想です。連結配当性向は45パーセント以上と公表しています。2025年度の配当予想は前期から4円増配の44円です。併せて、中間配当を実施します。
ご説明は以上です。ありがとうございました。
質疑応答:中期経営計画の目標に対する進捗について
質問者:中期経営計画の目標に対する進捗について、自社評価をお聞かせください。2025年度は売上高があまり伸びませんが、今後、営業利益は順調に伸びる見込みとなっています。2026年度は売上高230億円、営業利益28億円と大幅なジャンプアップとなる見通しですが、想定どおりなのか、かなり難しい状況なのかを教えてください。
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