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原山直樹氏:みなさま、こんにちは。SMN株式会社代表取締役社長の原山です。本年4月1日に代表取締役社長に就任しました。今後ともどうぞよろしくお願いします。
本日は、2024年3月期の通期決算概要、2025年3月期の業績予想、並びに当社の中長期戦略についてご説明します。
2024年3月期 決算ハイライト
まずは決算ハイライトです。2024年3月期は、売上高93.3億円、営業利益1億円、親会社に帰属する当期純利益はマイナス10.2億円となりました。
ポイントとして、Googleテスト受託の売上などの特定顧客にて大型案件を受注、注力商材である「TVBridge」売上が、前年比で112パーセント、下期には126パーセントに成長しました。
またグループ経営の合理化、効率化を図るべく、子会社であるネクスジェンデジタル株式会社、SMNメディアデザイン株式会社、および株式会社ゼータ・ブリッジを吸収合併する構造改革を推進しました。
これらの要因により、営業利益は増益を達成しましたが、マーケティングソリューションにおいてASP事業における競争激化や、一部取引の収益認識方法において純額表示を採用したことにより、減収となりました。
そして、中長期戦略の再定義に伴い、デジタルソリューションにおいて、のれんなどの減損損失を計上したことで、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。
連結決算概要
業績予想に対する達成状況は、スライドに掲載のとおりです。
連結決算概要
前年度から回復傾向にある、下半期にフォーカスした内容について、ご説明します。
アドテクノロジーの増益に加え、前期から推進する構造改革による収益力回復効果が現れたことで、第3四半期に続き、第4四半期も前年比大幅増益となり、下半期6ヶ月で前年同期比4倍超を達成しました。
連結営業利益の増減分析
営業利益の増減要因についてご説明します。デジタルソリューションにおいて、ASAの減収、並びに海外拠点営業開始に伴うコスト先行により1億5,800万円、マーケティングソリューションにおいて、ASP領域における競争激化により9,000万円の減益となりました。
しかしアドテクノロジーにおいて、Googleテスト受託売上などの特定顧客にて大型案件を受注したことや、注力商材である「TVBridge」が前年比で112パーセント、下期は126パーセント成長したことにより、2億3,300万円の増益となりました。
また、前期から推進する構造改革による収益力回復効果の発現により、1億円の増益となった結果、営業利益は前年比で増益の1億200万円となりました。
事業別売上高
事業別売上高の概況についてご説明します。アドテクノロジーは、上半期の減収傾向を、下半期のGoogleテスト受託売上やソニーグループへの営業強化によりリカバリーを図り、減収幅を縮小し、前年比減の66億5,000万円となりました。
マーケティングソリューションについては、先ほどご説明したとおり、ASP事業における競争激化、一部取引の収益認識方法における純額表示の採用、前期に実施した一部事業売却などの影響により、前年比減の8億2,100万円となりました。
特別損失(減損損失)の計上について(2024年4月30日適時開示)
減損損失の発生による特別損失計上について、ご説明します。後のスライドでご説明する中長期戦略の再定義により、デジタルソリューションの将来計画の見直しを行いました。これに伴い、のれんなどの減損損失を11億2,400万円計上しました。
当該資産のキャッシュアウトは取得時であり、今期および来期以降に対するキャッシュへのマイナス影響はありません。またデット・エクイティ・レシオ(D/Eレシオ)も大きく変化しておらず、減損損失の計上後も財務の健全性を維持しています。
連結貸借対照表
貸借対照表の実績についてです。減損損失の計上に伴い、無形資産および純資産が減少していますが、自己資本比率やD/Eレシオは一定水準を維持しており、引き続き規律のとれた財務健全性を維持しています。
連結キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの実績についてです。営業活動におけるキャッシュ・フローは、期末の売上債権の増加により、前期比で1億8,100万円減少し、5億2,100万円となりました。しかしながら、構造改革などの影響により、フリー・キャッシュ・フローは5,800万円のプラスで着地しました。
財務活動におけるキャッシュ・フローは、2023年3月期は、第三者割当増資の実行に伴う一時的な増加があったため、その反動を受けたことで前期比で4億3,200万円減少し、マイナス2億2,800万円となりました。
なお、本要因を除くと、財務活動によるキャッシュ・フローに大きな差異はありません。
2025年3月期 業績予想
2025年3月期の業績予想について、ご説明します。来期については、今後予定されている「Google Chrome」への「Privacy Sandbox」導入に伴う広告効果への影響や、今期受注したGoogleテスト受託売上などの大型案件の影響を織り込んでいますが、売上高および全段階における利益について増収増益、当期純利益の黒字化を見込んでいます。
外部環境
今後の中長期戦略について、まずは外部環境をご説明します。当社の経営要件として考慮すべき環境要因は数多くありますが、その中でもとりわけ重要な外部環境は、スライドに挙げている3点であると認識しています。
1つ目がデジタルマーケティングプロセスにおける高度化/複雑化と専門人材へのニーズの高まり、2つ目がインターネット広告におけるプライバシー保護や透明性への要求水準向上、3つ目がデジタルマーケティング領域における新たな有望市場の形成です。
例えば1st Party Dataの活用、リテールメディア、CTV(コネクテッドTV)広告、インフルエンサーマーケティング、ライブコマース、デジタルマーケティングのインハウス支援などが挙げられます。
SMNの強みと課題
当社の強みと課題認識についてです。当社の強みは、スライドに挙げている4点であると認識しています。
他方で、当社が克服すべき課題は、中核事業であるアドテクノロジー・マーケティングソリューションの売上高の減少を食い止めて、再び成長性を取り戻すこと、低い水準が続いている当社の利益水準を高収益体質に転換すること、当社の成長を牽引していく新しい事業を創造することだと考えています。
先ほどご説明した重要な環境要件および当社の強みと課題に鑑み、中長期戦略の再定義により、改革を加速していきます。
中長期戦略の方向性
中長期戦略の方向性は、大きく3つの骨子で構成されています。1つ目は3つの構造改革である「中核事業改革」「事業ポートフォリオの再定義」「収益構造改革」の推進による収益性の向上、2つ目はソニーグループ連携の更なる深化と新規事業創造による成長、3つ目は成長を支える強靭な経営基盤の確立です。
中長期戦略の全体像
SMNの中長期戦略の全体像を、1枚の絵にまとめました。次のスライド以降で、これらを構成するパーツについて、もう少し詳細にご説明しますが、まずは全体概要をご説明します。
スライド上部の「めざす姿」についてです。当社は定性的な目標として、最先端のデータサイエンスとビッグデータを駆使してクライアントのデジタルマーケティング領域の課題を解決する、総合デジタルマーケティングテクノロジー企業となることを定めました。中期的な目標として、まずはROE8パーセント以上の達成を目指します。
その「めざす姿」を達成するための戦略についてです。前のスライドにてご説明した「3つの構造改革の推進による成長性と収益性の向上」「ソニーグループ連携の更なる深化と新規事業創出」の2つを、真ん中の構造改革・成長戦略に据えています。
それらを支える基盤戦略として、「サステナビリティ」「人的資本」「最先端技術」「財務」の4つの戦略を位置づけています。SMNの強みであるソニーグループとの連携を深化させつつ、これらの中長期戦略を推進していきます。
①:SMNがめざす事業構造
こちらのスライドは、SMNが「めざす姿」、「めざす事業構造」の概念を図示化したものです。SMNはソニーグループの経営資源をコアとして、これまで成長を遂げてきました。今後もソニーグループの有する有形無形の経営資源やケイパビリティを、SMNのコアとして位置づけていきます。
そして、SMNが長年にわたって培ってきた「AI技術」「データの可視化」「ビッグデータ処理」「高速マッチング」の4つのコア・ケイパビリティを中心に、「アドテクノロジー」「マーケティングソリューション」「1st Party Ad Platform」「デジタルハウスエージェンシー」「新規事業創造」の5つの事業領域をコア・ケイパビリティと蓄積したビッグデータで有機的に連携させ、単独事業の競争力と総合としてのシナジーを追求することで、成長を遂げていくという事業構造を目指します。
これらの事業構造により、最先端のデータサイエンスとビッグデータを駆使し、クライアントのデジタルマーケティング領域の課題を解決する、総合デジタルマーケティングテクノロジー企業を実現していきます。
②:3つの構造改革による成長性と収益性の向上
構造改革として、3つの改革を加速させます。1つ目は、中核事業であるアドテクノロジーとマーケティングソリューションの改革により、成長性と収益性を回復させるものです。2つ目は事業ポートフォリオの再定義で、デジタルソリューションの再定義・変革を進めるものです。
そして3つ目は収益構造改革です。コスト構造のリーン化、投資対効果の高い開発などに投資を行います。これらの構造改革を推進することで、収益性と成長性を回復させ、次にご説明する成長領域に配分する投資原資を創出します。
③:ソニーグループ連携の更なる深化と新規事業創造による成長
新たな成長に向けた戦略として、ソニーグループとの連携の更なる深化と新規事業の創出を進めていきます。その柱となるのがデジタルハウスエージェンシーと1st Party Ad Platformです。デジタルハウスエージェンシーについては、次のスライド以降で概要をご説明します。
1st Party Ad Platformは、現在も読売新聞社との「YxS(ワイ・バイ・エス)」や、大日本印刷の有する1st Party Dataを使用したマーケティング支援を行っています。
3rd Party Cookieの使用が難しくなる環境下において、1st Party Dataの価値はますます高まっています。とりわけ米国の大手小売企業などは、自社の1st Party Dataを利用したリテールメディア事業で高い収益を上げています。
また、日本の小売企業においても、同事業の立ち上げを行う企業が増加していますが、まだ大きな成功事例は生まれておらず、小売企業側、広告代理店側、アドテクノロジー事業側、ともに手探りで進めているところです。
この事業機会を活かし、当社の培ってきた1st Party Ad Platformの技術により、小売企業に対するリテールメディア支援事業への参入に向けた準備を進めていきます。それ以外の新規事業については、ソニーグループと連携しながら、インキュベートしていきたいと考えています。
デジタルマーケティングをめぐるマーケット環境
デジタルハウスエージェンシーの概要をお話しする前に、デジタルマーケティングを巡るマーケット環境について簡単にご説明します。
現在、デジタルマーケティングプロセスの細分化とオペレーションツールの多様化、3rd Party Cookieの廃止による、サービス事業者のユーザーデータ取得の難化といった状況の中で、広告主は、アウトソーシングに伴うオペレーションのブラックボックス化や、ユーザーデータを取得保持できないことによる戦略面の空洞化の課題に直面しています。
このような課題を解決するには、デジタルマーケティングのインハウス化が必要です。しかしながら、データ分析、データプラットフォームの開発/運用、情報収集能力、広告の調達・運用・戦略立案などの機能を社内に揃える必要があり、実行の難易度が非常に高くなっています。
デジタルハウスエージェンシー
このような環境において、当社はケイパビリティとして、デジタルマーケティングに係る戦略立案・実行支援能力、自社プロダクトの開発/運用の中で培ってきた技術力とエンジニア人材、AI技術・ビッグデータ処理・データ可視化・高速マッチング、独自性のあるビッグデータを有しています。
親会社であるソニーネットワークコミュニケーションズにおいても、前のスライドでご説明したとおり、インハウス化に向けた4つの課題を抱えていると考えています。
当社はSMNのケイパビリティを活用し、デジタルハウスエージェンシーとして、ソニーネットワークコミュニケーションズのインハウス化における課題に対し、解決支援を行っていきます。
④:成長を支える強靭な経営基盤の確立
基盤戦略については、人的資本への投資、先端技術への投資、サステナビリティ経営を推進し、構造改革や成長戦略を支えていくための強靭な経営基盤を構築していきます。
資本コストや株価を意識した経営の推進
最後に、当社の資本コストや株価を意識した経営の推進についてご説明します。 当社は、株主資本コストを上回るROEの達成を目標とし、ROEと株主資本コストとの差であるエクイティ・スプレッドをプラスにします。すなわち、株主の要求水準を上回るROEの達成を目指します。
当面の目標として、中期的にROE8パーセントを目指します。この水準は、当社が推定する株主資本コストを上回り、企業価値を創造するミニマム水準と捉えており、長期的には10パーセント以上の恒常的な達成を目指します。また、重点投資領域として、「人的資本」「先端技術」「新規事業創出」「戦略的アライアンス」の4つを定めています。
本日ご説明した中長期戦略の実行により、企業価値の創造に取り組んでいきます。私からのご説明は以上です。最後までご清聴いただき、誠にありがとうございました。