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成田隆志氏(以下、成田):はじめまして、ニフティライフスタイル代表取締役社長の成田です。本日は当社の個人投資家向けセミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。

ログミーFinanceでのセミナーは、2022年5月以来となります。まだ当社のことをご存じない方もたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひこの機会にいろいろ知っていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。

本日は、会社概要、各サービスとビジネスモデル、進行期である2024年3月期第3四半期の決算ハイライトの順でご説明し、最後に今後の成長戦略についてもお話しできればと考えています。

会社概要

成田:まずは会社概要です。あらためまして、当社はニフティライフスタイル株式会社と言います。新宿にオフィスを構えており、現在グループ会社は2社あります。従業員数は全体で82名という規模で、事業を展開しています。

2023年の春先より、スライドの右側に載せた「思いやりとテクノロジーで、一人ひとりの『幸せな暮らしの意思決定』を支え続ける。」というPurposeを掲げています。

テクノロジーによって世の中を良くしていくことはもちろんなのですが、当社はITの世界で一人ひとりの気持ちに寄り添い、お節介なくらい思いやりを持つことによって、その人が想像もしないような新たな感動を届けていきたいという思いで、事業を進めています。

当社の歩み

成田:当社の歩みです。スライドに丸で示しているのが当社の沿革です。当社は2018年2月23日に設立しました。

上段の年表及び当社の社名に「ニフティ」と付いていることからもわかるように、親会社はインターネットプロバイダのニフティ株式会社です。その中のマーケットプレイス事業をスピンアウトしたのが当社設立の背景となります。

そのため、会社は2018年に設立していますが、主力の「ニフティ不動産」と「ニフティ温泉」に関しては、2000年から2003年くらいに立ち上げており、サービス自体は20年近く運用している状態です。

その後、2021年12月24日に、東証マザーズ市場(現東証グロース市場)に上場しています。2023年には中期経営計画とPurposeを策定しています。

さらに、2023年9月には、上場後初となるM&Aとして、GiRAFFE&Co.を子会社化しています。直近では、株主優待など、株主還元策にも取り組んでいる状況です。

事業ドメイン:行動支援サービス事業

成田:各サービスとビジネスモデルについてご説明します。

全体の事業ドメインに関しましては、当社は日常生活におけるユーザーの意思決定サポートを行う、行動支援サービス事業を展開しています。

主な領域としては、不動産テック領域、ウェルネステック領域、クロステック領域があります。クロステック領域は、不動産・ウェルネス以外の新たな領域が対象で、新規事業を含めて展開していきたいと考えており、現状では、デジタルマーケティング支援事業を中核として進めています。

当社の強み

成田:当社の強みは3点あります。1点目は膨大な情報量です。後ほどご説明しますが、「ニフティ不動産」と「ニフティ温泉」に関しては、物件数及び施設数の情報量が国内最大級の水準であることが、1つの強みとなっています。

2点目のデジタルマーケティング対応力に関しては、大きく2つあります。1つは自社の集客数を円滑に伸ばしていくデジタルマーケティング力の強さ、もう1つは、クライアント向けのデジタルマーケティング支援を行うノウハウが提供できる点です。これらが当社の強みになっています。

3点目は、情報処理分野における技術とノウハウがあることです。膨大な情報を瞬時に加工できる情報処理能力を持ち、より検索しやすくするシステムの構築など、情報を使いやすくするテクノロジーが当社にはあり、強みとして力を発揮していると考えています。

不動産テック領域

成田:不動産テック領域のサービスをご説明します。「ニフティ不動産」は、国内最大級の不動産物件情報検索プラットフォームとなっています。

特徴的なのが、当社のサービスは、「アットホーム」や「SUUMO」「LIFULL HOME'S」といった大手ポータルサイトを束ねたかたちになっている点です。当社のサービスサイト及びアプリが1つあれば、国内全体の各社物件情報をまとめて見ることができます。ここが最大のポイントとなっています。

不動産テック領域:ニフティ不動産の強み

成田:当社サービスには、情報が1つにまとまっていて、時短で便利という魅力ももちろんあるのですが、特にデバイスの部分において、サイトだけではなくアプリに注力しています。

アプリを使うことで、短い期間で効率的かつ漏れなく情報をキャッチアップできるところが、ユーザーから評価されています。新着情報や画像を見やすく届けるため、UI/UXを改善していくには、アプリというデバイスがよく、ここからユーザー獲得を進められています。

坂本慎太郎氏(以下、坂本):御社が力を入れている検索の部分について、こだわりの独自性等があればご紹介いただけますか?

成田:「こだわり検索」の部分についてご説明します。スライドにも記載があるように、130以上の「こだわり条件」があります。独自性ももちろんありますが、当社の強みは、この網羅性だと思っています。

例えば「こだわり条件」というのは、Aサイト、Bサイトそれぞれで違います。それを、いったん網羅的にすべてを検索可能にしていきます。

当社としては、各ポータルにおいて、AサイトにはあるけどBサイトにはないような「こだわり条件」がある場合、「その条件をぜひ入れませんか?」と取り込み、網羅性をユーザーに向けてうまく提供していけるように動いています。このようなこだわりを持っているところが特徴だと思います。

坂本:僕も不動産投資を行っていて、物件をけっこう預けているのですが、全部の媒体に載せるのはやはり広告費がかかりすぎてしまいます。いくつかのサイトに絞って載せることになりますが、そうなるとやはり、見る側としては見落としがありますよね。

全部見たいと思うのは当然のことですので、見たい情報が全部入っているのは非常によいと思います。サイトごとに検索のパラメータが違うことも実際によくあるため、まとめて検索できるのは、便利ですね。

成田:特に最近、不動産投資の方は、実は居住用ではなく、居住用以外の物件を探しているケースもあります。金額は100万円以下、あるいはもっと金額の少ない設定で、空き家を狙っているような方も多くなってきており、レビューで「このような検索ができないか?」という要望も多いため、当社としても引き続きこの部分を強化していく方針です。

坂本:賃貸でも、2万円以下の物件があったら倉庫にしようとか、そのようなニーズはありますよね。レンタル倉庫を借りるよりも、リーズナブルなケースがあります。関東でも神奈川など、いわゆる大学需要がなくなった地域で、1万円台などの物件が普通に出ています。

成田:そうですね。引き続き、ユーザーのニーズに合わせた「こだわり条件」を増やしていくことで、最終的に使いやすいアプリができていくのだと思います。

不動産テック領域:アプリ強化の現状と背景

成田:今お話ししたアプリについては、注力しているところもあり、累計1,000万ダウンロードを超えています。このようなユーザー視点ももちろんあるのですが、もう1つビジネス視点で言いますと、実はアプリを使っている方のほうが、Webに比べて問い合わせ率が高いという傾向にあります。

Webで検索すると「どこのサイトで見ていたかな?」と迷子になってしまうことがあると思うのですが、スマホの中で、ワンクリックで立ち上がれば、そのまま問い合わせができるため、この状態がなくなります。

これによって、そのプラットフォームの中で探せばよいという利便性に気づくことができます。当社の場合は情報量が国内最大級ですので、この利便性に気づくと、だんだんと問い合わせもすべてアプリ内で完結するようになります。このように、アプリはビジネス上とても大きなポイントとなっています。

坂本:アプリで完結できるのはよいですね。

ビジネスモデル:不動産テック領域

成田:当社の不動産テック領域のビジネスモデルです。当社のクライアントは、不動産事業者というより、不動産ポータルです。そのため、当社は、各不動産ポータルから広告費をいただくかたちをとっています。

課金は、メールや電話からの問い合わせのタイミングで発生する仕組みです。さらに不動産ポータルとのお取引は20年以上続いているところも多いため、ストック的な意味合いも含めながら、毎月送客を安定的に行うことにより、ビジネスとしても安定しています。

坂本:確かにそうですね。最終的に問い合わせはアプリ上で行うため、スライドの不動産ポータルの部分できれいに導線がつながるかたちになっているのですね。

ここのお金の流れについて質問します。御社は不動産ポータルからも、問い合わせの発生によってお金をいただいているとのことでしたが、不動産ポータルには、恐らくいろいろな条件があると思います。不動産事業者からの問い合わせと、定額課金のパターンは、どちらが多いのでしょうか?

成田:不動産事業者と不動産ポータルとの間の課金パターンは2つあって、定額課金のところと、物件の値段によって金額が変わる反響課金のところがあります。一方、不動産ポータルと当社の間では、「賃貸であればいくら」「売買であればいくら」のようなかたちで、賃貸と売買の違いはありますが、基本的には「1件いくら」という送客単価になっています。

不動産テック領域 主要KPI

成田:当社の成長において重要なKPIは、利用者を表すMAUと、そこの送客数とコンバージョンレートがポイントとなっています。直近のMAUを見ると、2024年3月期第3四半期末のユーザー数はYoYでプラス26.3パーセントの387万人となっています。

ユーザーを集めるためには物件数も重要であるため、掲載物件情報数もKPIに置いています。また、最終的にユーザーからの問い合わせ率が高いアプリであることが大切ですので、アプリダウンロード数もKPIに設定しています。

ウェルネステック領域

成田:ウェルネステック領域の「ニフティ温泉」です。こちらは、日本国内最大級の温浴施設総合情報検索プラットフォームです。主なところは、旅館への宿泊などではなく、日帰り温泉やスパ、最近はサウナなども当社の情報の基盤になっており、掲載温浴施設数は現在1万6,000施設となっています。

利用者も年々増えており、2022年度平均で約360万人です。直近では400万人を超えたこともあります。長期休暇に家族で行ったり、自分たちの健康のために毎日行ったり、用途は多様で、ターゲットのユーザー属性も幅広くなっています。

飯村美樹氏(以下、飯村):日帰り温泉に特化している理由はあるのでしょうか?

成田:20年来の話でいくと、以前は旅行サイトを手掛けていたこともありました。その中で、温泉は日本ならではのものであり、誰しも温泉が好きだという気持ちを持っているということがあらためてわかりました。

また、温泉旅行というのは基本的に「非日常」だと思うのです。旅行となると年に1回から2回であるのに対し、日帰り温浴施設の利用者は、「日常的」なかたちで施設を使っています。

飯村:確かにそうですね。

成田:これがやはりポイントになってきます。したがって、旅行でもレジャーでもなく、「ウェルネス」にテーマを置いている理由はそこです。お風呂が家にあるため、銭湯と違って基本的には行かなくてもよいところですが、「あえて行く」という方は、健康や美容に関心が高い層になると思っています。

当社はこのウェルネス領域の基盤となるユーザー設定を、まずは日帰り温泉やサウナの利用者として取って、そこから広げていく戦略を考えています。

ニフティ温泉掲載施設は全国16,000以上!

成田:こちらは、ご存じない方もいらっしゃるかもしれませんが、ご覧のような日帰り温浴施設を全国で束ねています。

実は、日帰り温浴施設のユーザーは、旅行やスキー、キャンプの後などに行く方ももちろんいらっしゃいますが、案外住んでいるエリアの近く、半径3キロメートルから5キロメートル圏内の施設に、車で行くスタイルの方が多いです。そのため、「この場」を使ったエリアマーケティングも、当社のビジネスモデルとなっています。

ウェルネステック領域

成田:最近、リリースしたトピックです。「ニフティ温泉」に関しては、今まで、スマホ画面を提示する、あるいは印刷して持っていくとクーポンが使えるサービスを行っていたのですが、先月から電子チケットサービスを展開しています。

導入施設にとっては、オペレーションの軽減やユーザーの囲い込みの部分でメリットがあります。今後は、例えば回数券を買えるようにするなど、さまざまなサービスで電子化のお手伝いをしたいと思っています。

ユーザーから見ると、お得になる面ももちろんありますが、混雑時に並ばなくてもよいなどの利便性もあります。今後、このあたりのユーザー利便性を高めていきながら、対象施設を増やしていきます。2025年3月期に300施設の導入を目指す方針です。

ビジネスモデル:ウェルネステック領域

成田:「ニフティ温泉」を中心としたウェルネステック領域では、ビジネスモデルは大きくは2点あります。

1点はスライド上部にお示ししたクーポン送客ビジネスです。施設に行って、そこでクーポンを使うと利用量に応じた手数料がいただける成果報酬型のビジネスモデルです。

こちらの電子版である電子チケットは、「月額費用+決済手数料」をいただくかたちとなっています。現在、この決済手数料は入館料がメインですが、施設内でご飯を食べるなど、いろいろな取引がありますので、そのあたりまで広げていくと、より決済手数料を増やしていくことが可能です。そのため、今後強化していければと思っています。

もう1点が、広告ビジネスです。スライドには先ほどご説明した施設との直接的な流れを示しています。「ニフティ温泉」はポータルを束ねているのではなく、施設を束ねているため、温浴施設の「リアルな場」をお借りすることができます。これにより、全国の温浴施設内でのプロモーションが可能となります。

例えばトイレタリーメーカーの花王などが新商品を展開する時に、この仕組みを使い、広告やサンプリング、テスターの提供を行っています。いわゆるドラッグストアでのプロモーションに近いかたちのビジネスです。

ウェルネステック領域 主要KPI

成田:ウェルネステック領域のKPIも、基本的には不動産テック領域と似ていますが、利用者数を示すMAUと、どれくらいクーポンや電子チケットを使っていただけるかを示す送客数が主要KPIとなっています。

そのような意味では、総掲載施設数とクーポン掲載施設数を充実させていくことが、今後の成長のポイントになってくると思っています。

SaaS型 インターネット広告入稿支援 マーケティングツール

成田:最後に、クロステック領域内で展開しているデジタルマーケティング支援サービスについてご紹介します。

まずは「DFO」です。「DFO」はData Feed Optimizationの略語で、インターネット広告、特にダイナミック広告の出稿時に、インターネット広告における適切な原稿を、企業の商品ごとに自動的に作るSaaS型システムのサービスです。

こちらでは主に、EC企業のダイレクト系販売のお手伝いを行っています。直近では、旅行関連や、求人系の引き合いが多く、例えば「Indeed」等に求人を掲載したい時に、当社の「DFO」を使って、求人ごとに適切な原稿に変換するといったかたちで支援しています。

坂本:どのようなきっかけでDFO事業に参入されたのでしょうか?

成田:参入のきっかけはグループ再編です。事業を再編する時に、当社とのシナジー、親和性を考えて、一緒に事業を行うかたちになったのですが、ポイントとしては送客支援の拡張だと思っています。

当社のメインである「ニフティ不動産」や「二フティ温泉」は、ある意味ポータルからの支援となっており、そこに掲載するかたちをとっていますが、今後はダイレクトマーケティングの支援が必要になると考えました。

特にEC、旅行、求人などは徐々にポータル離れが進んでおり、自社集客にシフトしつつありますので、そこをしっかりと支援していきます。今後は不動産でもこのあたりのニーズが高くなってくると思っています。

テクニカルSEOをはじめとするデジタルマーケティングコンサルティングサービス

成田:クロステック領域のもう1つのサービスが、昨年9月にM&Aを行った株式会社GiRAFFE&Co.が手掛ける「SEOコンサルティング」です。特徴としては、コンテンツマーケティングというよりも、テクニカルSEOであるところで、大量のデータベースをどのように「Google」に読み込ませるかなど、データを保有している企業に対し、SEOの成果を上げるための支援を行うことができます。

ビジネスモデル:クロステック領域(デジタルマーケティング支援)

成田:「DFO」はSaaS型で月額利用料をいただくビジネスモデルです。また、広告運用支援も行っていますが、こちらは広告の運用に合わせた手数料をいただいています。

「SEOコンサルティング」については、コンサルティングフィーとして定額料金をいただくビジネスモデルとなっています。

2024年3月期 第3四半期(累計):決算ハイライト

成田:2024年3月期第3四半期の決算ハイライトをご説明します。

売上高はYoYでプラス16.7パーセントの23億7,400万円と、第3四半期としては過去最高を更新しました。主力の「ニフティ不動産」のユーザー数の増加が、売上を牽引しました。

営業利益はYoYでプラス63.8パーセントの5億6,400万円と、大幅な増益となりました。売上がしっかり伸びてきたことに加え、オーガニックの集客が増えたことで集客費を抑えられており、この販管費の最適化が利益を押し上げたかたちです。

トピックスに関しては、電子チケットサービスと、この後ご説明する上方修正及び増配についての項目を挙げています。

2024年3月期 第3四半期(累計):連結損益計算書

成田:連結損益計算書はスライドに記載のとおりです。売上高におけるYoYでプラス16.7パーセントの成長に加え、各段階利益も大幅な伸長で推移しています。

2024年3月期 第3四半期:四半期別売上高

成田:四半期ごとの売上高推移についてご説明します。第3四半期単独の売上高はYoYでプラス24.9パーセントの8億7,900万円と、順調に推移しています。

当社の特徴として、一部季節偏重があります。第4四半期の1月から3月までが不動産業界の繁忙期となるため、まさに進行中の第4四半期に季節偏重があります。

2024年3月期 第3四半期(累計):不動産テック領域売上高

成田:各領域についてご説明します。不動産テック領域は、主に「ニフティ不動産」と「オンライン内見」で構成されています。全体としては利用者が堅調に伸びてきており、それに伴い売上もアップしています。

ユーザー数の増加だけではなく、アプリのUI/UX改善によりコンバージョンレートが向上していますので、そこをさらに伸ばしていくことが成長のポイントとなります。

2024年3月期 第3四半期(累計):ウェルネステック領域売上高

成田:ウェルネステック領域に関して、売上高はYoYでマイナス0.3パーセントの2億2,800万円となっています。こちらは、コロナ禍により落ち込んだレジャー需要の回復により、利用者数がようやく戻り始めたと思っています。

第1四半期、第2四半期は少しマイナスだったところがありましたが、第3四半期単独ではYoYでプラスになり始めているため、これからしっかりマイナス分をカバーしていく状況です。そのため、引き続き温浴のユーザー数の増加、及びクーポンや電子チケットの利便性を上げることによって、今後はさらなるビジネス拡大を目指していきたいと考えています。

2024年3月期 第3四半期(累計):クロステック領域売上高

成田:クロステック領域売上高は、既存の「DFO」の売上に加え、9月からGiRAFFE&Co.の「SEOコンサルティング」の売上が計上されたことにより、YoYでプラス31.2パーセントと大幅な増収となっています。

今後は「DFO」「SEOコンサルティング」をセットとしたデジタルマーケティング支援事業で、引き続きクロステック領域を引っ張っていこうと考えています。また、デジタルマーケティング支援以外でも、クロステック領域の売上伸長を目指したいと考えています。

2024年3月期 第3四半期(累計):コストマネジメント方針及び費用内訳

成田:コストマネジメントの方針及び費用内訳についてご説明します。ポイントとして、広告宣伝費、開発費、販売促進費の部分が大きな要因となっています。前期は認知獲得目的のテレビ CMなども行いましたが、今期はその分デジタルマーケティング支援を強化していますので、昨年と比べ広告宣伝費は低下しています。

一方で、デジタルマーケティング支援については、特にオーガニック部分がうまくいっており、販売促進費はほぼ横ばいで推移しつつ、売上を伸ばしてきています。

坂本:テレビ CMでの認知獲得から、Web動画による利便性訴求へブランディングシフトされているとのことですが、それでも広告宣伝費は圧縮できたのでしょうか? あるいは、テレビ CMに投じていた費用をそのままWeb動画に流しているのでしょうか?

成田:今お話したように、販売促進費は増えていませんので、特に広告宣伝費をWeb動画に寄せたというところまではいっていません。SEOなどによるオーガニック流入が好調だったため、販売促進費を抑えられているという意味では、ダブルで抑えられたことになります。

一方で、例えば交通広告など、一部Web以外での接点を取りたい部分については、今年1月にも継続しています。今後もタイミングを見ながら、サービス告知なのか、もしくは採用を含めたコーポレートブランディングなのかも含め、テレビ広告への出稿については行う可能性があります。

坂本:機能追加なども含め、何かPRしたいことがあれば、またテレビ CMも使うということですね。すでに一定の認知度は獲得されているため、そのようなタイミングが来るまではWebで進めるという広告戦略でしょうか?

成田:そうですね。現状はオーガニックも含め、順調にユーザー数が増えているため、広告戦略の引き続きの方針としては、そのようなかたちになると思います。

通期連結業績予想の修正(上方修正)について

成田:業績予想の修正についてご説明します。売上高は35億400万円、営業利益は8億1,000万円、EBITDAは10億1,400万円にそれぞれ上方修正しています。

配当予想の修正(増配)について

成田:通期上方修正に合わせ、期末配当を2円増額しています。年間配当額は1株当たり15円、期末配当は8円50銭となっています。引き続き、DOE2パーセント以上を目標に掲げており、そこを超えるような安定的かつ継続的な配当の実施を考えていきます。

坂本:継続的かつ安定配当という方針で、この業績だと増配になると思うのですが、仮に2026年3月時点で業績が現状の想定どおり進むと、配当は何円くらいになりそうでしょうか? 約束するわけではありませんが、目安があれば教えてください。

成田:今の段階で具体的な数字はお伝えできませんが、業績をしっかり伸ばしていきたいと思っています。DOEも2パーセントに合わせるというよりは、2パーセント以上を目指しています。基本的には、安定的に増配していく方針のため、期待に応えられるようにしたいと思っています。

株主優待制度の新設について

成田:2024年2月16日に発表したばかりですが、今期より株主優待制度を新設することになりました。株主のみなさまには日頃からご支援いただいているため、当社株式の魅力を伝えつつ、特に出来高・流動性の向上を目指していきたいと思っています。

特に今は新NISAなどで個人投資家の方も増えているため、このような優待をきっかけに当社サービスについて、興味を持っていただきたいと思っています。内容に関しては、保有株式数100株以上から500株未満の株主さまには、「ニフティ温泉」に掲載中の人気施設の優待券2,000円相当と、電子ギフトまたは社会貢献団体への寄付です。

優待券は関東と関西の人気施設を中心にピックアップしているため、どうしても距離的な都合でそちらをご体験いただけない株主さまには、電子ギフトまたは社会貢献団体への寄付というかたちでご利用いただければと思います。

飯村:新設された株主優待制度は、やはり温浴施設の優待券にされたのですね。

成田:そうですね。1番のユーザー接点と日常的に使っていただけるサービスは、やはり「ニフティ温泉」だったことに加え、株主総会やこのようなセミナーなどで「温泉のクーポンなどはないですか?」と日頃からお声がけいただいていたため、その声にもぜひお応えしたいと、今回このように制度を新設しました。

飯村:株主優待制度新設が今の時期になったのは、理由があるのでしょうか?

成田:全体での株主還元の配当方針などで「まずは配当を行っていこう」など、そのような段階的な部分を踏まえた結果ですね。

株主優待制度の新設について

成田:こちらのスライドは先ほどご説明した内容です。人気施設のご利用、電子ギフトの付与など、これらをご利用いただけます。

<ご参考>配当利回り/優待利回りについて

成田:配当利回り、優待利回りについてです。2024年2月21日の終値1,020円で算出した、必要投資金額、優待利回り、配当利回りなどをスライドに記載しています。

今後の戦略について:中期経営計画骨子

成田:今後の成長戦略です。当社は2023年5月に中期経営計画を発表しています。骨子として、1つ目は事業基盤の強化を図ります。不動産テック、ウェルネステックに続く第2、第3のビジネスを作っていきます。

2つ目は、事業拡大による収益源の多様化です。先ほどの「ニフティ温泉」の電子チケットのように、ビジネスモデルをより広げることにより、収益の拡大をさらに狙えると思っています。不動産は、現在賃貸と購入という領域ですが、さらにリフォームや、不動産売却などへ領域を広げることにより、事業の多様化を目指していきたいと考えています。

また、Purpose等も掲げていますが、イノベーションが生まれるような組織の活性化を図り、採用等も含めて組織強化を進めていきます。

定量的な目標として、2026年3月期に売上高45億5,000万円、営業利益10億円を掲げており、それぞれ15パーセント、20パーセントの成長を目指しています。

不動産テック領域 事業戦略

成田:各事業戦略です。不動産テック領域に関しては、定量的な目標として、2026年3月期に売上高32億5,000万円、CAGR11.7パーセントを掲げています。

主要なKPIについては、利用者数600万MAUを目指していきます。スライド上段に記載している、ビジネスモデルの多様化を行うことが成長の1つとなるため、周辺領域の展開を掲げています。

また、不動産事業者向け送客支援の拡充をしっかり行いつつ、不動産領域においても積極的にM&A等の検討を進めていきたいと考えています。

ウェルネステック領域 事業戦略

成田:ウェルネス領域に関しては、スライド上段が「ニフティ温泉」を中心とした事業戦略となっています。

1点目は、クーポン送客のほか、体験型広告を引き続きメーカー向けマーケティング支援として強化していきます。クーポン送客に関しては、温浴施設向けビジネスの深化と記載していますが、電子チケット導入など、施設側の事業DX支援を行っていくことで、事業拡大を目指していきます。

2点目として、「ニフティ温泉」のユーザーは、温泉が好きなのはもちろんですが、美容・健康に興味のある方が多いため、プラットフォームやユーザーを活用したかたちで、新たな美容・健康ビジネスの拡大やブランディングの強化などを行います。自社開発やM&Aも含め、事業のスピードを上げていきたいと考えています。

こちらは、2026年3月期に売上高7億5,000万円、CAGR33.7パーセントを計画しています。当社のユーザー基盤にしていきたいことから、KPIは1,000万MAUを目指し、現在進めています。

坂本:美容や健康に関心のある方には女性が多いイメージなのですが、御社の基本的なサイト・アプリの女性の利用割合はどのくらいなのでしょうか?

成田:老若男女にご利用いただいており、人口分布に似たかたちとなっています。

坂本:それでは、半分は女性ということですね。

成田:サイトでは「5:5」から「6:4」くらいで、少し男性が多いです。ただし、施設によって戦略がまったく異なり、女性ばかりの施設もあれば、男性向けやシニア向けの施設もあります。それらを全部網羅しているため、そのターゲットに合ったかたちがあると思っています。

おもしろいのが体験型広告で、美容というと女性のイメージがあると思うのですが、ここ最近は、メーカーからのニーズとしてはけっこう男性も多いのです。

坂本:そちらに広告費を入れたほうが将来伸びる見込みがあるということですか?

成田:お互いにそうです。この層はなかなかドラッグストアには行かないため、新しい美容情報や商品と、どこで接点を作るか、体験するかというと、温浴施設の場は、今とてもニーズが上がってきていると思います。

飯村:確かに、サンプルを配っている時がありますね。

成田:お風呂上がりなどに、脱衣所で使っていただくこともあります。

坂本:美容はライバルが多いと思いますが、これはどこかに特化していくのでしょうか?

成田:リラクゼーション系やコスメは温泉と親和性が高いため、体験の延長線につながるようなところをイメージしています。

クロステック領域 事業戦略

成田:クロステック領域に関して、全体としてはグループ第3の柱を作るということで、大きく2つあります。1つはデジタルマーケティング支援の強化、もう1つが新規事業の創出です。

新たな「ライフスタイル×テクノロジー」という領域ということで、ここをどのように広げられるか、しっかり取り組んでいきたいと思っています。

坂本:現状は1から立ち上げる感じでしょうか、あるいはM&Aで一気に進めるイメージでしょうか? 

成田:スピード感の部分を考えていくと、M&Aは1つの軸として可能性があると思っています。ただ、世の中にないもの、という部分にチャレンジしていくしかないと思っています。

中期成長に向けた事業領域別戦略:まとめ

成田:まとめると、こちらの3領域それぞれを、既存の領域からプラスアルファの領域へ広げていくことが、全体の事業戦略となっています。

中期成長に向けたM&A戦略

成田:M&A戦略についてです。持続的な成長をしていく上で欠かせない部分だと考えているため、現金を活用したかたちでの積極的な投資と、ソーシングの強化や外部パートナーとの連携等に、引き続き取り組んでいきたいと思っています。

全体としては、収益源の多様化や提供価値の拡大について、しっかり実施していくことになると思います。

長期ビジョンのイメージ

成田:最終的な長期ビジョンのイメージについてです。中長期的には売上高100億円規模の企業成長を目指しています。

まずは、2026年3月期の目標をしっかりと達成しながら、中長期的な成長を目指していきたいと思っています。各領域、新しい領域も含め、着実に進めていきます。

企業価値向上に向けたIR活動の実施

成田:企業価値の向上に向けたIR活動、個人投資家のみなさまに向けたセミナー等をしっかり実施していきます。少しでも当社の事業への理解を深め、興味を持っていただけるように、進めていきます。

質疑応答:ニフティとの関係とシナジー効果について

坂本:「ニフティとの関係と、シナジー効果について知りたいです。もし事例があれば、差し支えない範囲で教えてください」というご質問です。

成田:上場しているということもありまして、独立性もあるため、現状そこまで大きなシナジー連携はありません。「ない」理由として大きいのは、ターゲット層がズレていることが挙げられます。

ニフティのターゲットは、比較的シニアが多いのです。一方で、当社の今のビジネスのターゲットは、現役世代というか、30代から40代の方が多くなっています。今後、例えば、不動産領域などを広げれば、シニアをターゲットにすることももちろんありますし、物販のようなことを行うこともありますので、そのような時には、シナジーを検討してもよいと思います。

質疑応答:新たなコンテンツ開発について

坂本:「新たなコンテンツ開発の予定について教えてください」というご質問です。多岐にわたっている部分だと思いますが、新事業のことなのか、あるいは現状のアプリを含めた不動産、温泉・温浴施設の拡充なのか、どちらを回答していただいても大丈夫です。

成田:既存事業について回答します。不動産に関しては、家を借りる、買うというフェーズで、ユーザーニーズの満足度を上げるところが止まっているため、その先のラインアップを増やすことは、日々考えています。

基本的にベースは居住用のイメージがありますが、投資家の方々が日々情報を集めていることは強く感じていますので、そちらに向けたコンテンツのラインアップ拡充や、プロの方が使うかたちでの情報の活用についても、考えていきたいと思っています。

質疑応答:不動産の掲載件数の上限について

坂本:「不動産の掲載件数は、もう上限に達しているのでしょうか? 可能な限り掲載されているように見えますが、まだ連携していないところもあるのでしょうか?」というご質問です。

成田:対ポータルの物件情報数はほぼ網羅できていると思っています。しかし、その先のオーナーや、不動産会社も同様ですが、やはりポータルに情報を載せたいか、載せたくないかという部分はありますので、まだその差分があると思っています。

よく空き家の問題がありますが、空き家はお金を出してまで不動産情報を載せません。しかし、その情報が欲しいユーザーもいらっしゃると思います。ユーザー視点で、そのような不動産会社があまり取り扱いたがらない、要は収益性が低い情報をうまく取り込み、パートナーや仕組みも含め、今のポータルにない情報をどのように集めていくかが、差別化のポイントになると思っています。

質疑応答:「ニフティ温泉」の割引について

坂本:「『ニフティ温泉』にしかない割引などもあるのでしょうか?」というご質問です。

成田:当社はスライドにも記載のとおり、年間ランキングを毎年12月に発表しています。その年間ランキング発表後は「ユーザーのみなさまのおかげで」という気持ちが施設側にもありますので、謝恩クーポンというかたちで「ニフティ温泉」が一番安くなるようなクーポンも提供していただいています。

今後は電子チケットを活用し、独自の割引ができるようになるため、当社ならではのお得感みたいなものを、「ニフティ温泉」の中で作ることができればよいと思っています。

質疑応答:円安が進む中での影響と対策について

坂本:「2023年の修正理由に、円安の進展によるクラウドサービスの利用料増加を挙げています。現在も円安が進んでいますが、この影響はマイナスに働くのでしょうか? また対策などはあるのでしょうか?」というご質問です。これはおそらく、米国のサーバーの話だと思いますが、そこで為替と利用料が上がってしまったということですね。

成田:今期はすでに織り込んでいますので、特に大きな問題はないと思います。

坂本:為替ヘッジをかけることについてはどのようにお考えでしょうか?

成田:現状、議論はしていますが、やはりプラスもマイナスもあり、変動することもあるため、慎重に検討していければと思っています。

質疑応答:保有年数に応じた株主優待の検討について

坂本:「株主優待制度を新設したばかりですが、保有年数に応じた優待なども将来的に検討する可能性はあるのでしょうか?」というご質問です。

成田:今回は保有数でしたが、保有期間という軸も、他社で実施されているところは確認しています。長期的にファンになってもらえるように、そのような取り組みも貴重なご意見として、引き続き検討していきたいと思っています。

質疑応答:外国人向けサービスについて

坂本:「インバウンド客が増えていますが、外国人向けサービスの提供予定はあるのでしょうか?」というご質問です。アプリの多言語対応を含め、教えてください。

成田:一応「ニフティ温泉」は、一部多言語向けのページがあるにはあります。しかし、全体として、外国の方のニーズが日帰り温浴施設なのか、温泉なのか、何を目的にするかというところが重要です。結局、ニーズがどこまであるのか、温浴施設も地域密着型が多いですので、ターゲットとしてインバウンド客が入ってくることがよいのかどうかという部分もあります。

成田空港の近くなどは、外国人を中心に展開されている温浴施設もあります。また、不動産では、インバウンドというよりも外国人という部分で、家の借りやすさなどが課題になっていると認識しています。そのあたりを、どのようにうまくできるかというのは考えていきたいです。

成田氏からのご挨拶

本日は当社のPurposeや事業についてご説明しましたが、引き続き、主力事業はしっかりと伸ばしていきたいと思っています。電子チケットを含め、新たな取り組みも現在進めているため、ぜひ今後の提供価値の拡大にご期待いただければ幸いです。

また、今回ご紹介した配当や株主優待といった株主還元に関しても、引き続き意識していきたいと思っているため、当社の今後にぜひご期待ください。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。