統合報告書説明会

原一将氏(以下、原):みなさま、こんにちは。代表取締役社長の原です。本日は大変お忙しい中、ご視聴いただき誠にありがとうございます。

このたび、当社は初めて統合報告書を発行する運びとなりました。統合報告書の制作にあたり、できるだけみなさまに理解しやすいものとなるよう努めましたが、記載内容が多岐にわたるため、私から直接ご解説したほうがよいと考え、本日ご説明の場を設けました。

本統合報告書では、企業の価値創造への関心の高まりを踏まえ、当社がどのように価値を創出しているのか、他社との違いは何かという点を詳細に記載しました。当社への理解を深めていただく一助となれば幸いです。

また、投資家のみなさまには日頃から貴重な意見を賜り、本統合報告書の制作においても、その反映を図っています。

先般、当社は「JPXプライム150指数」と「JPX日経インデックス400」に選定されました。おかげさまで時価総額も4,000億円を超え、新たなステージに上がったことを実感しています。

このようなかたちで当社についてご報告できることは大変うれしく、あらためて感謝申し上げます。

統合報告書 LIMITLESS 2023 制作に込めた想い・意図

今回の統合報告書制作の目的と想いについてお話しします。当社は、法人向け、特に半導体という製造部材や、企業の情報システム部門で利用されるITサービスなどのビジネスを行っていることから、一般的にはあまり認知されておらず、事業の内容についての理解もそれほど高くないと認識しています。

そこで、初の制作となる今回は、まずみなさまに当社を知ってもらうことを目的とし、「初めまして、マクニカです」という想いで制作しました。

2022年に発表したパーパスの策定から、今回の統合報告書制作の過程において、幸運にも『伊藤レポート』で有名な一橋大学名誉教授の伊藤邦雄先生と何度もディスカッションする機会をいただきました。その壁打ちの中で、当社では当たり前と思っていた考え方、行動指針、企業文化が実は稀有なものであるとご教示いただきました。

暗黙知となっていた行動・プロセス・制度・文化などの非財務価値を分解し、統合したシステムとしてどのように機能しているのかというメカニズムを紐解き、説明可能にすることにこだわったことで、客観的な視点から、マクニカの当たり前が当社のユニークさであり、競争力の源泉であることを再認識できました。

財務諸表からは読み取ることが困難な当社の文化、非財務価値のメカニズムの重要な部分、ユニークさ、オリジナリティが解像度高く伝わるように制作していますので、ご理解いただければ幸いです。

また、今回の制作にあたり、企業のIRチームが内容を検討し、内容に問題がないか関係部門に承認を取るといった、ありがちな進め方はしていません。関係する部門の担当者が直接参加し、部門の代表としてだけではなく、会社の代表として自分ごとで考えていく横断チームを結成して制作しました。

内容に関しても、ただ単に事業戦略やガバナンス制度の概要を網羅的に掲載するだけでなく、随所に記載したリアルな実例のケースを通して、手触り感のある本当のマクニカのビジネス現場の様子を感じていただけるように工夫しています。読み進めていく中で、これらの違いを感じていただければと思います。

このような制作メンバーの声は、統合報告書の70ページと71ページに記載しています。目を通していただくことで、より鮮明な当社の企業文化、社員の多様な考え方などについても感じていただけるのではないかと思います。

コンテンツ

今回記載した項目です。パーパスに始まり「CEOメッセージ」「価値創造プロセス Vision2030と中長期戦略」「ガバナンスとリスクマネジメント」の3つのセクションがあり、最後に各種データという構成になっています。

本日は、決算発表でカバーするような足元の業績や中期経営計画の進捗ではなく、本統合報告書の中で特にみなさまにお伝えしたい「CEOメッセージ」「価値創造プロセス」「強い個とチーム」、先日、上方修正を発表した長期経営目標を中心にご説明します。

メッセージポイント:挑戦の歩みとめてはならない

はじめに、みなさまに当社をご紹介するにあたり、「CEOメッセージ」では、代表としての私の想いを記載しました。まずお伝えしたいことは、当社は創業当時から困難なことに果敢に挑戦する社員一人ひとりの働きにより、特に若い人たちの無限の可能性と成長スピードを活かし、事業を成長させてきたということです。

当社には「失敗を恐れず、何事にもどんどん挑戦してよい」という企業文化が根付いており、この挑戦を実践してきた社員一人ひとりの「人」が最大の強みです。

一方で、私が20代に経験してきたヒリヒリするようなチャレンジの機会や、ビジネスの醍醐味、おもしろさは、企業が大きくなり組織が充実してくると、一人ひとりに巡ってくる挑戦の機会もおのずと少なくなってきていることも事実です。

マクニカのチャレンジスピリット・ベンチャースピリットを維持・拡大していくためには、私自身が経験した以上に若い人たちが多くのチャレンジをし、それによって成長の機会を創出できるよう、ダイナミックなビジョンと新たな目標を示すことが必要で、それは私の最大の使命です。加えて、挑戦の歩みを加速させることにより競争力をさらに高め、結果的にはサステナブルな成長につながると考えています。

今後の私たちの挑戦は、技術商社としてこれまで培ってきた最先端テクノロジーを見つけて、その実装を支援するモデルに加えて、最先端のテクノロジーを活用し、自らサービス・ソリューションを開発して、価値を生み出すようになることです。

その実現に向けて、現在、当社にはないケイパビリティの獲得やエコシステムの構築が必要になりますが、当社の持つダイナミック・ケイパビリティがあれば、必ず実現できると確信しています。

具体的には、主力の半導体とネットワーク・サイバーセキュリティ事業をさらに成長させることに加えて、新規のCPSソリューション事業を収益の第3の柱にします。このビジョンは大変高い目標であり、大きな変革を要しますが、一つひとつの挑戦を繰り返しながら、着実にステップバイステップで進化していきたいと考えています。

価値創造プロセスとケイパビリティ

当社の価値創造プロセスに関してご説明します。おかげさまで、最近は海外の新規投資家からの面談が非常に増えていますが、その中で「なぜ顧客企業は仕入れ先メーカーから直接購入せず、当社から購入するのか?」というご質問をいただきます。当社は商社ですので、確かに当社の役割や生み出す価値にわかりにくいところがあるかと思います。

まず、当社の大きな価値創造の根源となるのが、世の中に役立つ最先端のテクノロジーをどこよりも早く見つけ、お客さまが実装できるように支援することにあります。特に、新しくイノベーティブなテクノロジーにおいては、お客さまにとって採用するリスクが高い一方で、その技術が利用可能になるメリットが非常に大きいため、使いこなすことの価値が高くなります。

新しいテクノロジーは世界中のスタートアップ企業で生まれることが多く、その活用にはリスクが伴うケースもありますが、当社がファーストペンギンとして取り扱い、実装支援することで価値を生んできました。同時に、当社が新しいテクノロジーを推進し、新たな技術が活用されたりすることで、より便利で快適になる社会に価値を提供できていると考えています。

このような価値を生み続けるため、常に最先端のテクノロジーを探索し、その中でも実用化できる良いものだけを目利きして実装することを繰り返してきました。

当社ではこれを実現サイクルと呼んでおり、このサイクルを仕入れ先サプライヤーやパートナーとともに高い次元で回していくことで、最先端テクノロジーを活用したソリューションやサービスの価値を創出し、新しい豊かな未来社会を牽引していく存在であり続けたいと考えています。

当社の強み:強い個とチームを創出する組織と文化

「CEOメッセージ」でお話ししたように、当社の価値創造の源泉は、社員一人ひとりの「人」です。特に当社では強い「個」と呼んでいますが、変化や逆境においても粘り強く、そして自らのビジョンを達成する強い個人と強い個を醸成するチームが最も重要だと考えています。

当社には、挑戦をよいとする文化があるだけではなく、信頼して任せる、権限委譲をすることを良しとするTrust & Empowermentという考え方があります。上司が部下を信頼し、挑戦的な仕事を任せることをきっかけとして、自ら考え「やりたい」と思ったビジョンの達成と実現のために工夫し、実践を重ねることにより徐々に手応えを得て、さらに大きな挑戦をしたいと思うようになるサイクルを当社では「手応えサイクル」と呼んでいます。

この「手応えサイクル」を社員一人ひとりが日々の活動で実践し、より強い個を創出しながら、それらの強い個が自律的かつボーダレスな連携により、自然とチームを構成し、より大きなプロジェクトへ挑戦していくことで、さらに強いチームを創出していくような活動を繰り返しながら高い競争力を保っています。

当社の強み:強い個とチームを創出する組織と文化

さらに、特に若手社員においては「手応えサイクル」を加速させるため、企業文化だけではなく、人事考課の面で成果よりも成功するためのプロセスで評価しています。挑戦の機会や成長スピードを高めるよう取り組んでいます。

統合報告書の21ページには、プロセス評価項目と「中核人材/ひとり立ち」のG3グレード、リーダーグレードのG4グレードで評価される活動例を記載しています。

こちらは社員に共有されているため、どのようなプロセスが自分自身の評価につながるかが理解できるようになっています。

長期経営構想

2022年5月に、長期経営構想として「サービス・ソリューションカンパニーを目指す」という「Vision2030」を発表しました。これまでは、半導体事業とネットワーク事業において高付加価値ディストリビューションのビジネスモデルを確立し、持続的に事業を拡大してきました。

2030年に向けて、従来のビジネスモデルの拡大と同時に、半導体事業で培ってきたフィジカルとネットワーク事業で培ってきたサイバーの強みが活きる領域で、新たなビジネスモデルであるサービス・ソリューションモデルに挑戦します。

当社独自の価値を持ったオリジナルサービスを生み出し、「Cyber×Physical」システム、CPSソリューション事業へ挑戦します。

長期経営目標

長期経営目標です。9月25日に、売上2兆円以上、営業利益1,500億円以上、営業利益率7.5パーセント以上、ROE15パーセント以上と上方修正しました。

「Vision2030」のサービス・ソリューションカンパニーの実現に向けて、主力事業の半導体、ネットワーク、サイバーセキュリティの高付加価値ディストリビューションモデルに、CPSソリューションのサービス・ソリューションモデルを加えて、3つの事業で長期経営目標達成を目指します。

中期経営計画

今期は、2022年から2024年までの中期経営計画の2年目です。既存の半導体事業とネットワーク事業の拡大や、CPSソリューション事業における事業開発で必要なケイパビリティ獲得が重要なテーマです。

各事業概要と状況はスライドに記載のとおり、いずれも順調に進捗しています。詳細は、決算発表の際に詳しくご説明します。

CFO対談

当社の急速な事業成長と新たなCPSソリューション事業への挑戦によって、財務戦略はより重要なテーマになっています。今年6月まで長年にわたり財務担当役員を務めた佐野と、今年4月より大手総合商社から当社に入社し常務執行役員となった大河原の対談のかたちで、当社のビジネスモデルを踏まえた財務戦略と今後の強化ポイントについて記載しています。

今後CPSソリューション事業を進める中で、ケイパビリティの強化や獲得が必要になります。これまでのM&Aは半導体商社やITディストリビューターが中心でしたが、今後は強化が必要なケイパビリティを持った、これまでとは異なる事業モデルの会社の買収や、無形資産への投資などが考えられます。

大河原が30年勤めた総合商社においても、トレーディングから事業投資へビジネスが変化していった時期がありました。そちらでの経験を活かし、変革期に必要となる財務管理や資金調達手法、バランスシートコントロールなどの社内制度の刷新を期待しています。

また、売上成長に伴って運転資本調達が必要になり負債が増加するという、半導体商社のビジネスモデルにおける財務的な側面についても記載しています。

当社は資本コストである運転資本を意識したビジネスを徹底するため、事業部門では運転資本に対する利益であるROWCをKPIに設定し、ユニットや主要なプロダクトごとに進捗を見ています。運転資本回転率は中期経営計画の目標にも設定しており、取り組みの結果、順調に改善できています。

株主還元について、中期経営計画では総還元性向30パーセントから50パーセント、配当はDOE4パーセントを目安としています。おかげさまで当社のバリュエーションは徐々に上がってきていますが、商社として認識されているため、PERで見るとまだ割安です。

さらなる企業価値の向上に向けて、私自ら先頭に立ち、よりプロアクティブなIR活動を積極的に推進していきます。

コーポレートガバナンス&リスク・マネジメント

急速な事業成長に伴った制度作りとして、コーポレートガバナンスやリスクマネジメントついて記載しています。特に、前CEOで現会長の中島のインタビューでは、当社の文化とガバナンス体制づくりについて詳細に記載しています。

社外取締役のメッセージも掲載し、外部の目から見た当社の課題についても言及しています。コーポレートガバナンスに関する情報は統合報告書の59ページから62ページ、リスクマネジメント、コンプライアンスなどに関する情報は63ページから67ページに記載しています。

ESG

ESGの取り組みとして、気候変動のシナリオ分析と影響度を評価し、その結果を掲載しています。また、温室効果ガス排出量は、「Scope3」において前年度までは国内拠点のみの算出でしたが、今年度は海外拠点も含む連結ベースで算出しています。温室効果ガス排出量の削減目標についても統合報告書の66ページに掲載しています。

また、人権ポリシーの表明など社会に関する取り組みは統合報告書の67ページに記載していますので、ご覧ください。

対話を通じた企業価値向上

統合報告書の69ページにはIR活動について掲載しています。5月には「JPXプライム150指数」、7月には「JPX日経インデックス400」に選定され、投資家のみなさまの目に留まることになりました。特に海外の新規投資家の方々からの面談依頼が急増しています。初めての投資家の方は、私が直接面談を行い、ご挨拶と対話を通じてわかりやすい説明を心がけています。

また、今年度は本統合報告書の発行や海外投資家向けのロードショー、開示コンテンツの充実、IR Webサイトの更新などを重要な取り組みとしています。面談数などIR活動の定量的な情報も統合報告書の69ページに掲載しました。今後、IRはさらに重要になると考えており、責任者である経営企画部長の真野のメッセージも掲載しています。

第三者意見 一橋大学名誉教授 伊藤邦雄先生

一橋大学名誉教授の伊藤邦雄先生には、パーパス策定に向けた壁打ちから始まり今日に至るまでの2年間、本当に多くのご支援と当社への関心、ご興味をいただいた経緯もあり、今回、第三者意見として寄稿いただきました。

最後に

当社はこれまで半導体とITの技術商社として50年事業活動を行ってきましたが、「Vision2030」を掲げ、サービス・ソリューションカンパニーへと進化、変革していきます。みなさまには、当社の事業成長と新たな挑戦によるさらなる飛躍の可能性を、統合報告書を通じてぜひ感じていただければと思います。

質疑応答:強みについて

司会者:「マクニカの強みを教えてください」というご質問です。

:当社の強みは大きく3つあります。1つ目は、世界中の最先端テクノロジーのソーシング力と圧倒的な商材力、2つ目は、商材をあらゆる市場に実装するための技術力、3つ目は、世界中に張り巡らされたグローバルネットワークです。

従業員の3分の1がエンジニアで、この点において競合他社を圧倒しています。お客さまの技術支援からオリジナル商品の企画、設計、開発と幅広い技術的価値を提供しています。

また、23の国と地域・81拠点を有しており、グローバルネットワークとカバレッジを実現しています。お客さまが世界中のどちらで製造しても、国内外問わずシームレスに日本と同等水準のQCD(Quality・Cost・Delivery)の対応が可能です。

現在の主力事業における具体的な強みとして、半導体事業はすでに国内No.1のマーケットシェアを獲得していますが、注力している市場の観点における優位性についてご説明します。

スライドは、統合報告書の37ページに記載している図です。当社は産業機器を中心とした中堅中小のお客さまの市場に注力しています。成長性が高い市場であることは言うまでもありませんが、こちらの市場は多くのお客さまで構成されています。

ここは半導体のサプライヤーのみではカバーしきれず、主に当社のような商社が対応している市場です。当社の豊富な商品ラインナップや技術支援などの付加価値が出しやすい、スライドに記載している三角形の下の部分です。この領域を中長期な戦略として強化した結果、他社を圧倒しており、今後も安定的かつ持続的に成長できる市場だと考えています。

統合報告書の36ページには、世界トップ21社の半導体メーカーと当社との代理店契約の状況を表した表を記載しています。世界の半導体市場におけるこのトップの半導体メーカーのシェアの合計は80パーセントを超えており、それはつまり、ここにある半導体メーカーだけで誇大な半導体市場のほとんどを占めているということになります。当社は、この世界の半導体市場におけるトップ21社のうち16社と契約しており、当社の取扱商品の豊富な商品ラインナップや、トップメーカーの最先端の半導体をグローバルで取り扱うことにより、同業他社と大きな差別化を図っていると言えます。

仕入れ先における当社のシェアについても、多くの仕入れ先で国内1位、世界でも1位や2位を確保しています。当社の技術支援力や顧客基盤が期待され、当社が懸命に応えてきた結果と考えています。

最近では代理店の集約の動きもあり、ビジネスにおいて互いに重要な関係が築けていることが、当社の持続的な成長を支えていると考えています。

ネットワーク事業に関しては、似たような事業者が非常に少ないため比較しにくいのですが、当社は総代理店、一次代理店として最先端のセキュリティなどの仕入れ先と契約しています。

二次代理店であるシステムインテグレーターなどのリセラーを経由して販売するビジネスモデルのため、野村総合研究所や伊藤忠テクノソリューションズなどのシステムインテグレーター事業者の多くは、当社の競合ではなくパートナーとなります。

ネットワーク事業の国内売上の60パーセントから70パーセントを占めるサイバーセキュリティに関しては、サイバー攻撃を仕掛ける側・守る側も常に新しい手法を開発しあういたちごっこになっていますが、それに対応するためのテクノロジーの選定には高い専門性と目利き力が必要であり、当社の得意分野です。

当社は、攻撃者視点の攻撃手法と海外の先進的な対策技術の評価を組み込みながら、攻撃と対策の両面を調査するセキュリティ研究センターというユニークな組織を持っています。この知見により、今後重要になる最先端テクノロジーを高い確度で選定し、そのテクノロジーを有した世界中のスタートアップをどこよりも早く見つけて契約し、技術を習得することでサイバーセキュリティ界のトップを走り続けています。

ヒューマンネットワークによっても有望な商材を獲得しています。例えば、現在米国株式市場で名高いCrowdStrike社は2019年にIPOを行いましたが、当社はそれよりもはるか以前の2013年に契約し、世界初の代理店となりました。

これを可能としたのは、創業時のCrowdStrike社の会長が他の会社のCEOだった時に、日本市場におけるビジネス立ち上げに際して当社と組み、成功したという経験があったためです。新たな会社でビジネスを加速するにあたり、当社を信頼してコンタクトをいただいたという経緯です。

当社は多くの外資系ITベンダーの商品を取り扱っていますが、このように多くの企業が日本法人を設置する前のベンチャー企業の時代から当社の担当者が本社とコミュニケーションをとりながら苦楽を共にし、成功するという経験をしています。

そして、新たに創業する時、あるいはIPOを目指すような有望なベンチャーに転職した時に、再び当社にお声がけいただくことがよくあります。このようなヒューマンネットワークが、他社が簡単には真似できない強みだと感じています。

質疑応答:マクニカの成長戦略について

司会者:「マクニカの成長戦略について教えてください」というご質問です。

:成長戦略は、統合報告書の35ページの事業別サマリーに記載しています。進捗は決算発表であらためてご説明しますが、規模の大きな半導体事業とネットワーク事業は、売上・利益ともに成長させていく想定です。CPSソリューション事業は売上を急拡大させ、来年度にはブレークイーブンを目指します。

統合報告書の37ページに示したように、半導体事業に関しては右図のインダストリアル、つまり産業機器市場と、オートモーティブ、つまり車載市場の成長率が高くなっています。当社はこれらに強いプロダクトをそろえて注力する戦略をとってきました。

先ほどのご質問でもお答えしたように、当社は豊富な商品ラインナップで他社を圧倒しています。スライド左側のグラフでは、当社のビジネスが実際にこの市場で急成長していることがご理解いただけるかと思います。

ネットワーク事業については統合報告書の39ページのグラフをご覧ください。過去10年間で年率20パーセントを超える成長を遂げてきました。

この成長は国内ビジネスの60パーセントを占めるセキュリティ関連商品の成長に支えられており、その中でも成長性が高い先端セキュリティ商品を中心に取り扱う戦略をとっています。スライド左側の図に記載している市場ごとの成長戦略を実行していくことで、今後も年率10パーセント以上の成長ができると考えています。

また、海外セキュリティ市場はさらに成長率が高いために、M&Aを通じて成長を取り込んでいきたいと考えています。

CPSソリューション事業に関しては、事業の確立と拡大が今後の利益成長のための重要な戦略と位置づけています。現在、CPSソリューション事業では6つの事業テーマを掲げています。市場規模やステージ、成長のドライバーはそれぞれ異なりますが、社会課題としての緊急性の高さや解決する意義の大きさは共通しています。

これらは当社の既存事業の知識を活かして応用できる領域であり、特にデータの利活用を重視しています。本格的に規模が拡大する時期はテーマごとに異なりますが、スマートマニュファクチュアリングとスマートシティ/モビリティが、最も立ち上がりが早く、来年度の事業拡大のドライバーになると考えています。各テーマの具体的な事例は、統合報告書の44ページでご確認ください。

CPSソリューション事業の拡大にあたり、段階を踏む戦略をとっています。まずは最先端テクノロジーを持つ仕入れ先、パートナーと契約し、いち早く市場に参入することで、市場における専門性やパートナーを獲得し、最終的には自社開発の製品サービスを提供していくステップで取り組んでいきます。

統合報告書の43ページには昨年度における進捗を記載していますが、総じて計画どおりに進んでいると考えています。

質疑応答:自動運転プログラムの進展状況について

司会者:「自動運転プログラムの進展状況はいかがでしょうか?」というご質問です。

:CPSソリューション事業の1つである、スマートモビリティ関連ビジネスの進捗状況についてご説明します。2020年3月に、自動運転EVバスのフランスのNavya社と契約しました。その後、茨城県境町での実証実験をはじめとして、日本での販売活動を拡大させています。

2021年にはアプトポッド社との資本提携を締結し、自動運転EVバスの提供だけでなく、自社開発の運行管理システムを提供できるようになりました。今年4月にはNavya社の資産を引き継いでフランスのGaussin社と新会社を設立し、当社が提供する価値の拡大に成功しています。

日本国内では、今年4月の自動運転車両レベル4の解禁を踏まえ、自治体での検討がこれまで以上に加速しています。当社と具体的な商談を進めている自治体も2022年度だけで20ヶ所と非常に増加しており、いよいよ社会実装が始まりつつあるという実感があります。

統合報告書の18ページにはスマートモビリティの状況を記載していますので、ご確認いただければと思います。

質疑応答:株主還元策・株主優待についてについて

司会者:「株主還元策・株主優待について教えてください」というご質問です。

:2021年度から始まる中期経営計画期間において、総還元性向は30パーセントから50パーセント、配当はDOE4パーセント以上を目安に株主還元する方針です。統合報告書の50ページでは、これまで累進的に配当してきた実績と、自社株買いの推移がご覧いただけます。

株主優待はより多くの方々に中長期的に当社株式を保有いただくことを目的として、保有株数に応じて「QUOカード」、カタログギフト、優待サービスを提供する優待制度を設けています。こちらについては統合報告書には記載していませんので、当社のWebページより定時株主総会招集ご通知をご確認いただければと思います。

質疑応答:海外展開の状況について

司会者:「海外展開の状況について教えてください」というご質問です。

:半導体事業は、2008年に香港を拠点するCytech社に始まり、継続的に海外の有力な半導体のディストリビューターを買収し、現在では17の国と地域で展開しています。

海外のM&Aについても、物流を中心とする商社ではなく、当社と同じような技術力があり、技術に付加価値をつけるビジネスモデルを持つ技術商社を獲得してきました。当社と文化が近いため、現在でも創業メンバーが数多く残って事業を拡大してくれています。

スライドは、日本と海外とを分けた売上推移を記載しています。日系の海外工場向けのビジネスのみならず、海外ローカル顧客向けのビジネスも大幅に伸びているのがおわかりいただけるかと思います。

ネットワーク事業においても、2017年にアジア太平洋地域を拠点に持つNetpoleon Solutions(以下、Netpoleon社)を買収し、海外セキュリティ市場においての高い成長を取り込むことに成功しました。Netpoleon社は当社によるM&A後も進出地域を増やし、現在はオーストラリア、ニュージーランド、インドも含めた11の国と地域に進出しています。

今年に入ってからは、中東地域の6ヶ国に拠点を持つCyberKnight Technologies(以下、CyberKnight社)の買収に合意しました。中東地域のサイバーセキュリティ市場はまだ大きくありませんが、今後の高い成長を期待して早期に参入し、さらにはトルコ、アフリカなどの新興市場を見据えた取り組みと位置づけています。

Netpoleon社については、統合報告書の41ページ、CyberKnight社については40ページをご覧いただければと思います。

質疑応答:国内の半導体工場の建設および各国政府が主導する生産能力増強支援による影響について

司会者:「熊本・北海道・広島の半導体工場の建設や、各国で進む政府主導の半導体生産能力増強に対する支援の動きは、マクニカにどのような影響があるのでしょうか?」というご質問です。

:当社のビジネスモデル上、生産国にかかわらず、半導体メーカーから半導体を仕入れてお客さまに販売します。したがって、国内外の生産拠点の建設されることによる直接的な影響はありません。

ただし、当社のお客さまには、競争力のある半導体製造装置や産業機器メーカーが多く、半導体工場が増加するにつれて、半導体製造装置をはじめとする生産設備への投資が増加し、産業機器に強みがある当社にはプラスの影響があると考えており、今後も期待できる材料です。

原氏からのご挨拶

:最後に統合報告書のタイトルについて、触れさせてください。今回、統合報告書を制作するにあたり、日々挑戦し限界を突破し続けるというマクニカの強い想いを込めて、タイトルを「LIMITLESS」としました。

今後は毎年統合報告書を発行することになりますが、これからもマクニカの「LIMITLESS」をさらにアップデートしたいと思いますので、ご期待いただければと思います。ご清聴いただきありがとうございました。