創業の背景と当社のMission
中野智哉氏(以下、中野):株式会社i-plugの代表の中野智哉と申します。今日はよろしくお願いします。まずは、あらためて私から会社概要を説明させていただきます。
弊社は2012年4月に創業しました。あらためて、創業当初の当社の想いをご説明します。現在、日本の就職活動の市場は「3年後に3割離職する」「3年後活躍実感が25パーセントしかない」という大きなミスマッチが存在する時代と考えています。その中で、10年前に、自分たちの子どもの世代によりよいサービスを残したいという想いで、i-plugを創業しました。
弊社のミッションは「つながりで世界をワクワクさせる」です。
会社概要
会社概要はご覧のとおりです。大阪で創業し、現在、東京と名古屋の3拠点で事業を運営しています。現在、従業員数は連結で205名となっており、子会社に株式会社イー・ファルコン、株式会社paceboxがあります。
時代認識のアップデート①
まず、時代認識のアップデートについてご説明します。現在、日本の労働人口は7,300万人ですが、2050年には5,000万人に減少すると言われています。また、事業の寿命と一生涯で働く期間も逆転すると言われています。
そのような中、昨今は人生100年時代と言われており、健康寿命が長くなることにより、今までの教育・労働・引退という「3ステージ」モデルから「マルチ・ステージモデル」へ、一人ひとりのキャリアのあり方が変わっていくと言われています。
日本、企業、個人にとっても、仕事と求職者や個人と社会のつながりが非常に重要になる時代になっていると考えています。
OfferBoxの概要 事業概要
そのような中、弊社が主力事業として提供しているのが「OfferBox」です。「OfferBox」は、ご覧のとおり、学生が登録して企業からオファーを送る仕組みになっています。
現在、就活生の3人に1人が使っており、学生一人ひとりの豊富なプロフィールや行動データを用いた機械学習、イー・ファルコンが提供しているアセスメントを使った多様な検索軸など、マッチングの精度を上げることに特化したサービスになっています。
OfferBoxの特徴 サービス構成
こちらが、提供している料金プランになります。成功報酬型と早期定額型という2つのサービスがございます。
2022年3月期 実績サマリー
ここからは、決算の概要をご説明します。現在、新卒市場においては積極的に採用が継続されています。新型コロナウイルス感染拡大後、かなりオンライン就活に切り替わっており、市場のルールはかなり変わりましたが、採用はどんどん過熱している状況になっています。
そのような中、売上高は前年同期比で41.4パーセント増と、高成長を記録しています。また、売上高の成長を維持するためにも、積極的に投資を実行しています。結果として、「OfferBox」の利用は拡大しています。
2022年3月期 業績ハイライト 対前年実績
詳細をご説明します。まず、財務ハイライトです。先ほどお伝えしたとおり、売上高は前年同期比41.4パーセント増の30億4,100万円で着地しています。そのうち「OfferBox」の売上高は同49.6パーセント増の27億4,000万円となり、経常利益も27.1パーセント増の3億7,000万円の着地となっています。
売上原価および販管費の推移
売上原価と販管費に関してです。積極的に投資していますが、開発人材の採用は厳しいところがあり、アウトソースも使いながら積極的に投資してきました。また、プロモーション投資も積極的に行った結果、販管費に関しては前年同期比55.7パーセント増となっています。
2022年3月期 対前年比較
前年対比の営業利益と売上の関係です。売上高は前期から8億9,000万円伸び、そこからHR関連費用、プロモーション関連費用等に投資し、営業利益は3億6,700万円の着地になっています。
各種KPI実績⑥:決定人数の増加
弊社のKGIである採用決定人数も、前卒業年度比で41.7パーセント増の5,027名での着地となっています。創業から考えると、10年間の累積で約1万5,000人の採用決定を実現するに至っています。
エグゼクティブサマリー
では、ここから中期経営計画についてご説明します。i-plugを創業して10年が経ち、今期が11期目になります。弊社としてもこれまでの10年、さらにここからの10年、20年を作っていく上で非常に重要な期になると考えています。
このタイミングで、この先どのようなことを行っていくかをご説明したいと思い、今回は中期戦略の発表に重点的に時間を使いたいと考えています。今後のi-plugグループが考えていること、成し遂げたいことをぜひ聞いていただきたいと思っています。
まず、時代認識をアップデートし、Purposeを新設しました。また、Visionに「2030」と数字を振っていますが、これは2030年までに成し遂げたい途中のゴールと考えています。これをより具体化して実現するため、「OfferBox」を通じて作った弊社の強み、そして今後の中心となる戦略の話をさせていただきます。
また、3年後の2025年3月期の数値は、連結で売上高97億2,000万円、営業利益19億8,000万円を計画しており、今後積極的に事業を拡大していきたいと考えています。
創業の背景と当社のMission
ここからの10年をお話しするにあたり、あらためて創業からの10年についてお話ししたいと思います。先ほどお伝えしたとおり、なんとかこの先の時代を変えていきたいという想いで、2012年4月にi-plugを創業しました。
OfferBox誕生の背景
実はi-plugがスタートしたときは、「OfferBox」ではなく、新卒に特化した人材紹介事業でした。ただ、まったくうまくいかず、営業日20日目でこれは難しいと思い撤退したのがスタートになります。
その時、「会社が倒産するのではないか」と思いながら、私が参加していたピッチイベントで思いついたのが「OfferBox」です。そこから、思いつきではうまくいかないと思い、学生200名、企業100社にインタビューし、いろいろなアイデアをいただき、2012年10月に誕生したのが「OfferBox」です。先ほどお伝えしたとおり、「OfferBox」の仕組みは200名の学生と100社の声を用い、そこからずっといろいろな声を聴きながら今まで成長させてきました。
創業からの10年の歩み
この10年間の数値のサマリーです。前期は売上高30億となり、決定人数も5,000人となったのですが、1期目は売上は数百万円、決定人数も数十人くらいでした。マッチングは簡単にうまくいくものではなく、その中でずっと試行錯誤しながらやっとここまで来れたのではないかと思っています。
5Values
この10年間の歩みの中で、弊社の中でもいろいろな文化や強みが生まれてきたと思っています。特に、その中で生まれた価値観が「5 Values」です。弊社の中で大事にしている価値観は、「変化を楽しむ」「全てのステークホルダーに対してフェアである」「共創しながら価値を出す」「創造的な意思を尊重する」「主体的に取り組み、成果創出にこだわる」です。10年間で生まれた、この5つの価値観をこれからも大事にしながら成長していきたいと思っています。
時代認識のアップデート②
先ほどお伝えしたとおり、10年経てば時代認識も大きく変わっていると思います。私は43歳になりましたが、33歳の時から比べると大きく変わってきています。やはり、今後の新しい世界にとってもマッチングは非常に重要だと思いますし、新たな時代に適したマッチングを支援するサービスを実現していきたいと思います。今後の10年はさらに積極的に投資し、成長していきたいと考えています。
Purpose
その中で、新たにPurposeを明文化しました。i-plugのPurposeは「一人ひとりが持つ、“キャリア・ポテンシャル”を引き出す。」です。「キャリア・ポテンシャル」は、当社の造語です。
簡単に説明すると、冒頭お伝えしたとおり、現状、日本だけではなく世界は日々テクノロジーの変化・進化と社会情勢の変化を受け、変わっています。そこに求められる事業、働く人が提供する価値の発揮もどんどん変化していると考えています。
働く一人ひとりの仕事に対する価値観やワークライフバランスへの考え方も変化している中で、一人ひとりが生きがいや働きがいとなる、人と社会・人と仕事の出会いが必要になってくると思っています。
自分らしく活躍することとは、「一人ひとりが持つ多様な可能性の発揮」「100年の生涯にわたる成長」「新しい選択肢の獲得」を指し、これらを実現すること自体を「キャリア・ポテンシャル」と定義しています。
これを引き出す新たなプラットフォームは「OfferBox」だけではできないと思います。広い定義のプラットフォームを作っていくことが、私たちが今後チャレンジして成しえることであり、それを行うことにより、日本の労働市場の課題の一部を解決し、社会に対して価値を提供できると思っています。
そして、それを行うには今が大きなチャンスではないかと思っています。それを信じ、ここからも事業を成長させていきたいと考えています。
Vision2030
実際に私たちがこの10年間で作ってきた強みは、Core modelのところです。後ほども説明しますが、情報の非対称性を解消する企業視点でのサービス設計や、オファーの送受信を制限することやデータの活用によるオファーの分散、また、今までの規模の経済に頼った大規模マッチングではないマイクロマッチングを積み重ねたマネタイズが弊社のCore modelだと思っています。
それにより獲得したCustomer assetsと、それを実現する会社の文化のすべてが私たちの強みだと思っています。これをもとに「OfferBox」だけではなく、イー・ファルコンが提供している「eF-1G」、若手の転職向けサービスである「PaceBox」、学生向けの事業と、どんどん新たなチャレンジをしていくことにより、あらゆる人の「キャリア・ポテンシャル」を最大化するためのプラットフォームを実現していきたいと考えています。
OfferBoxが構築したモデル①
「OfferBox」が構築したモデルが強みになります。簡単に言うと従来のモデルとは3つの違いがあります。まず、起点の違いです。エントリーからオファーに変えたことにより、そもそものマッチングの構造が変わりました。
大規模のマッチングではなく、個別最適化な出会いを実現するマイクロマッチングの構造になっています。これを行う上では、どんどん規模を上げていくのではなく、小規模でもマッチングする、つまり集めるのではなく、個々を動かすところが非常に重要となります。
これに対し、弊社は成功報酬というマネタイズモデルをとり、より良いマッチングを生み出すために常に考えていろいろな創意工夫を実行し、それにより生まれた価値観が文化になり、私たちの強みになっています。
TAMの広がり
実際にこの強みをいろいろな市場に打って出ることができると思っており、現在、連結の売上高は30億円ですが、新卒市場の市場規模の約800億円から、転職、ミドル以上、さらに学びなおしの市場と、どんどんチャレンジする市場を拡大していきたいと考えています。このために積極的に投資していこうと考えています。
中期経営計画の位置付けと考え方
ここから、中期経営計画の話をします。中期経営計画の位置付けは、先ほどお伝えしたPurpose、Vision2030、そこに向けたここから3年間の計画となります。今後の数値をしっかりと発表しながら、1年ごとに見直していきたいと考えています。
基本戦略
基本戦略はこの3つです。まず1つ目の戦略が、「新卒のミスマッチ解消に向けたOfferBoxのさらなる成長」です。
2つ目が、「“HRtech✕People Analytics”領域における新規事業投資の加速」です。今回は代表的にpaceboxになりますが、ここに対し積極的に投資していこうと思っています。
3つ目は、全般的な「エコシステム構築に向けた規律あるM&Aの実行」です。これを加速させていこうと考えています。
中期経営計画
中期経営計画は、年平均成長率(CAGR)47.3パーセントの計画を考えています。3年後の売上高97億2,000万円、営業利益19億8,000万円を実行するために、もちろん来期も再来期も積極的に投資していきますが、今期は相当積極的に投資する必要性があると考えており、43.6億円の売上高に対し営業損失が2.9億円の計画となります。
2023年3月期 業績見通し
業績の見通しの詳細です。連結の売上高は前期比43.5パーセント増、うち「OfferBox」の売上高は42.6パーセント増の成長を実現したいと考えています。
また、2本目の事業の柱を立ち上げるために、各段階利益は赤字となる見通しですが、最終的に営業損失は2億9,300万円の計画です。
営業損益の前年比較
具体的な投資はご覧のようになっています。売上高は昨年対比で13億2,500万円増、中途事業である「PaceBox」への投資は5億9,500万円です。「OfferBox」では、営業体制の強化に3億6,800万円、開発体制の強化に5億5,700万円、管理体制の強化に2億5,100万円、M&Aを含む新たな投資で2億1,300万円と計画しており、最終的に営業損失が2億9,300万円となります。
しっかりと投資することによって、来期、再来期、さらにその先のVision 2030を実現するための重要な1年間だと考えています。
キャピタルアロケーションの方針
キャピタルアロケーションの方針です。高い成長性の維持と資本効率の改善という前提をもって取り組んでいきたいと考えています。成長投資の優先順位は、既存事業のさらなる成長を実現する投資、新規事業の開発及び成長を実現する投資、エコシステム構築に向けた戦略的M&Aの実行、と考えています。
日本国内における労働市場の課題
具体的に事業ごとに説明します。先ほどお伝えしたとおり、日本の労働生産性の向上は非常に重要になっていると考えています。その中で、新卒市場の特徴は大きく2点あります。
新卒市場の実態
学生と企業の組み合わせは、年間で最大140億通り発生します。学生と企業の情報の非対称性がまだ多く存在している中で、最短6ヶ月くらいでマッチングしていく構造が実態であり、こちらを解決していくことが重要になると思っています。
OfferBoxが構築したモデル②
それを解決するのが、先ほどお伝えした「OfferBox」をもとに構築した、弊社のコアモデルです。ダイレクトリクルーティングのキードライバーについて説明します。「OfferBox」が構築した3つのモデルの中で、スライドの下部に記載している「要所の違い」の部分について学生と企業を動かすと申し上げましたが、具体的にどれくらい動かすのかということです。
ダイレクトリクルーティングのキードライバー
スライドの左下をご覧ください。OfferBox内での決定人数0名から1名の間に活動量の壁があります。こちらを、社内では「採用決定の壁」と呼んでいます。0名採用の場合のオファー送信量を1とすると、その約2倍のオファーを送れば1名採用できます。まずこちらの壁を超えることが、動かす要所になります。
さらに決定人数が2名、3名、4名、5名と増えていくと、1名の採用にかかる工数がどんどん減少していく構造になっています。したがって、「OfferBox」の成長戦略で重要なのは、オファー送信量の増加とオファーの承認率の改善、そしてそれらを掛け合わせることによるオファー承認件数の増加です。こちらを各利用企業ごとに実行していくことが、非常に重要なキードライバーになっています。
OfferBox事業戦略の方針
決定人数を生み出すための基本戦略は、企業と学生の相互の魅力を引き出す機能改善と、企業と学生の出会いの機会損失を解消する機能強化、データ活用によるマッチング向上です。2022年卒で5,027人の決定が出ていますが、4年後の2026年卒では2万人の決定を目指していきます。
Step1 企業と学生相互の魅力をさらに引き出す機能改善
1つ目の戦略は、企業と学生の魅力をさらに引き出すための機能改善です。現在、企業から見る学生の情報はかなりリッチになっていますが、さらに新たな情報を付け加えていこうと思っています。
企業の情報も、学生からもっと求められている情報があるため、機能を強化していきます。これらにより、企業と学生が出会う前からわかることが増えます。
以上により、企業が学生に会いたいという想いを醸成しオファー送信数を増加させるとともに、学生が企業の魅力をより理解することでオファー承認率も上げ、結果、承認件数の増加を実現したいと思います。
Step2 企業と学生の出会いの機会を増加させる機能強化
2つ目の戦略は、企業と学生の出会いの機会を増加させる機能強化です。
就職ナビの学生起点からお互い知る機能、人材紹介のキャリアアドバイザーを介した質の高い出会い、新型コロナウイルスの影響でかなり減少しましたが、イベントによる偶発的な出会いと、知る機会はさまざまに存在しています。
それらの機能を「OfferBox」に掛け合わせて、企業のオファー送信量をさらに増加させる仕組みを実装させていきたいと考えています。
Step3 データ活用によるマッチング効率のさらなる向上
1つ目と2つ目の戦略を実行していくと、より取得できる行動データが豊富になり、かつ多様化します。3つ目の戦略としては、前述の戦略を実行していきながら、新たに取得した行動データを用いてさらにマッチング効率の改善を行うことです。
これら3つの戦略により、「OfferBox」の成長を実現させたいと考えています。
利用継続企業の増加に伴う収益性の向上
次に、収益性についてです。先ほどお伝えした活動量の壁を越えると、1名当たりの採用工数は軽減していくため、トップラインはアップセルする一方で、顧客フォローなどのコストは軽減していきます。この差分で収益性をしっかり上げていく見立てです。この点は過去の戦略と同じですが、実現することで収益性も改善していくと考えています。
新卒事業計画
新卒事業は、売上高年平均成長率39.6パーセント、3年後の売上高75億7,000万円、営業利益14億5,000万円をしっかり実現していきたいと考えています。
適性検査事業の概要
適性検査事業です。適性検査eF-1Gは、イー・ファルコンが提供しているサービスです。当初から一人ひとりの価値観を可視化していくことに特化し、創業23期を迎えました。
考えられる測定領域の全てを網羅
eF-1Gは他の適性検査と違い、多様な角度から可視化できます。実際に受検して得られる測定項目は194項目もあり、これが今後の多様な時代にマッチすると考えています。
採用決定率アップに貢献
実際にこちらのデータを使って、いろいろな角度でクラスター分けを行い、面接官や会社のカルチャーに合わせた運用を行い、採用決定率を改善することに取り組んできました。
活用事例
内定辞退率や役員面接後の辞退率を改善するなど、昨今のオンライン選考で生じている課題にマッチした活用事例も出てきています。
課金モデル
提供価格はスライドに記載のとおりです。小ロットから申し込みが可能なため、さまざまな企業の利用を実現しています。
適性検査事業の成長戦略
今後は、デジタルマーケティングの強化や顧客開拓に関するグループ間連携、顧客への提供価値向上のためのプロダクト開発の3つに3年間しっかり取り組むことによって、適性検査事業も成長させていきたいと考えています。
M&A戦略の概要
M&Aの戦略です。先ほどお伝えしたとおり、エコシステム構築のため、規律ある戦略的なM&Aに取り組みたいと考えています。全方位で案件を探していこうと思っており、方向性としては、働き方がどんどん変わっていく世界において、法人向けサービス領域と個人のキャリア領域の2つの軸で展開していこうと思っています。
HRtechおよびPeople Analytics領域におけるM&Aを着実に実行していく上で投資ポリシーを明確にし規律を持って実行していきます。
日本の労働人口減少の問題解決に向けた重点テーマ
中途事業については、4月に株式会社paceboxの代表取締役に就任した秋澤から説明します。
秋澤大樹氏(以下、秋澤):まず、日本の労働人口減少の問題解決に向けた重点テーマです。こちらは、就業者に対してどれだけ退職者が出るのか、そしてどれだけ参入者が入ってくるのかという部分が課題です。加えて、就業者のキャリアチェンジやジョブチェンジも課題になっています。
一般的に、60歳以上はミドル・シニアの採用・就業における「年齢の壁」の克服が提唱されています。参入者については、日本の人口が減っていくため、基本的にはグローバル人材の採用をどのようにするかが課題です。
転職者は、異なる産業や職業へのキャリアチェンジの必要性が言われています。特に、i-plugの新卒事業ともシナジーがある、3つ目のテーマ「異なる産業や職業へのキャリアチェンジ」に着目して考えています。
転職市場の推移
転職の市況観で言いますと、新型コロナウイルスの影響下において、2020年から2022年は落ち込んでいましたが、人材の流動性の高まりは依然高い状態です。新型コロナウイルスが収束する、もしくはWithコロナの状況になると、市場はコロナ以前の水準を上回ってくると考えています。
若手層の転職市場のポテンシャル(1)市場規模と年齢別入社経路
弊社は今回のターゲットは若手層としております。スライドに記載のグラフの横軸が年齢で、縦軸が転職者のセグメントのボリュームとなっています。
昨今、転職に成功しているのは35歳以上のミドル層です。しかし、スライドに記載のグラフを見ると、依然としてやはり25歳から34歳の若手層は、ネット情報系のサイトや人材紹介を介した転職のボリュームが最も高く、こちらのセグメントだけ合わせると、26.1万人程度のボリュームがあります。
縁故やその他、ハローワークも若手層においてのシェアは当然低い状況ではありますが、ほかのセグメントと比べてもボリュームがかなり多い部分のため、ターゲットになってくると捉えています。
若手層の転職市場のポテンシャル(2)転職希望者と転職者との乖離
スライドの左側が、転職希望者層の人数ボリュームのグラフです。青い部分が25歳から34歳の若手層で残りが35歳以上となっており、いずれの層でも基本的には転職希望者数が年々増えている状況です。
スライドの中央に記載しているグラフは、実際に転職できた人数を表しています。基本的にどちらのセグメントでも同じような状況で、25歳から34歳も、35歳以上も転職者のボリュームが下がり、昨今実現難易度が上がってきています。
スライドの一番右のグラフは、転職実現率を表しています。こちらを見ると、コロナ禍においてドラスティックに状況が変化しているのは若手層だとわかります。
これから新型コロナウイルスの影響が減り、リカバリーしてくるだろうと考えられますが、同時にほかの層と同じような課題が出てきています。なかなか転職が実現できないという状態だと捉えています。
若手層の転職市場における構造的課題
スライドには、若手層の転職市場における構造的課題をまとめています。こちらが、今回弊社が踏み込んでいく道筋になってくると捉えています。
転職メディアは、いわゆる転職サイトと呼ばれるサービスが主になります。こちらは、まず求職者サイドは広告モデルという特性上、不人気大量採用系求人が上位表示され、よい求人や自分が求めている求人が埋もれてしまい、探すのが難しいという課題があります。
企業サイドにおいては、同じく広告モデルのため、お金をかけられる企業がどうしても上位表示される構造になり得ます。認知度が低く募集人数が少ない企業は、サイト上では劣後される状況があります。
エージェントや斡旋サービスにおいては、求職者サイドは、どうしても売上優先の采配が起こらざるを得ず、職務経歴が充実していない若手層の優先順位は下がる傾向があります。また、初回の転職への不安や挫折感が生じ、再度サービスを使おうとはならないという課題があります。
企業サイドとしては、エージェントは手厚くサービスしてもらえるためニーズはありますが、採用費自体が年収の30パーセントから50パーセントほどかかります。昨今はどんどん上がっており非常に高いため、企業によっては選択しづらい状況になっています。
ダイレクトリクルーティングサービスは、転職マーケットでは競合が数多くサービスを展開しています。特に求職者サイドは、ほとんどが高年収・ハイクラス向けとうたわれているため、ハードルが高いのではないかと見送られるところがポイントだと思っています。
企業サイドで言いますと、実際にダイレクトリクルーティングサービスを登録して使うとなっても、実際には企業が直接オファーを送るより、斡旋エージェントが代わりに登録して、タレントプールとして集めるために使われている状況がかなり多く見られます。ダイレクトリクルーティングとしての本質的なUXは、まだ十分提供されていない状況ではないかと考えています。このような求職者や企業の課題からも、まだまだ我々が介入できる余地があるだろうと捉えています。
中途事業の概要
ここで中途事業の概要をお話しします。サービス名は「PaceBox」といいます。先ほど中野からご説明したとおり、このサービスは「OfferBox」で培ったノウハウ、技術、思想を引き継ぎ、それらを3つの特徴として組み込んでいます。基本的には若手向けのダイレクトリクルーティングサービスです。さらに、「定着保証」という新たな概念を料金体系に取り込んでいるのですが、詳しくは後ほどご説明します。
PaceBoxの特徴(1)求職者と企業の可能性を引き出すプロのアドバイザーによるサポート
一つひとつの特徴を詳しくお話しします。まず1つ目は「求職者と企業の可能性を引き出すプロのアドバイザーによるサポート」です。先ほども、集めるより動かすことが我々の価値だとお話ししました。その部分を本サービスへ反映しています。つまり、ダイレクトリクルーティングでありながら、キャリアアドバイザーやリクルーティングアドバイザーの機能を内包しています。
キャリアアドバイザーは求職者をサポートし、リクルーティングアドバイザーは企業をサポートする役目であり、本サービスに実装します。ただ、それらが一つひとつの求人や求職者をマッチングさせるためのエージェント機能ではなく、あくまでも利用者を「動かす」ための機能としてプラットフォームに存在している点が大きな特徴となっています。
PaceBoxの特徴(2)求職者のMUST条件をクリアしなければオファーが送れないオファー制御
続いて2つ目です。「OfferBox」は、オファーの送受信数制限などをはじめとするオファーのクオリティーを管理する機能があります。「PaceBox」にも同様に備わっていますが、さらにオファーを制御する機能が搭載されています。
具体的な機能についてお話ししますと、従来は、求職者が希望条件を出しても、それが無視されてオファーが飛んできてしまうことが頻繁に起こり得ました。一方、今回のサービスは希望条件から「MUST条件」を決めることが可能です。これにより、求職者自身の「この絶対条件を満たしていなければオファーを受け取りません」という意思からオファーをコントロールできるようになっています。
オファーが希望条件に即していない場合、企業側にはスライド右側の画面のようなかたちで表示されます。求職者側の「MUST条件」を満たしていない場合、オファーが希望条件に即していないので送ることはできません。ただ、それで終わりではなく、「この方とはこのような条件が乖離しているので、このあたりについて求人票を修正すれば、再度オファーを送ることができるのでご検討ください」というレコメンドも表示される仕組みになっています。
PaceBoxの特徴(3)成功報酬型×低価格×定着保証で導入企業のリスクを最小化
3つ目は、先ほどもお話しした「定着保証」についてです。本サービス利用にあたり、最初に利用料をお支払いいただきます。金額は15万円を設定していますが、初期段階は0円キャンペーンを実施しようと思っています。メインのマネタイズは成功報酬のみです。しかも、業界でも一番安い水準であろう「1名につき50万円」で提供します。
さらに、2年間の定着保証を設定します。つまり、途中で退職された場合、その分返金します。このようなかたちをとる理由は、単純に採用の「決定」だけではなく「定着」を目指すことにより、先のKPIを見据えたビジネス形態にするためです。「定着」から「活躍」まで到達することが望ましいと考えており、データとして保持しつつ、より「定着」へ向かえるような我々の改善点を実装するためでもあります。
中途事業計画
中途事業計画についてです。先ほどのi-plugグループ全体の計画達成の大きな基軸になるために、売上高年平均成長率は239.1パーセントを目標にしています。しかし、初年度は開発およびマーケティングに大きな投資を必要とするため、営業利益はマイナス4.6億円を見込んでいます。そして、売上高は、2年目には10億円、3年目には17億円を目指します。
運営体制
「PaceBox」の運営会社として、4月1日に株式会社paceboxを設立しています。こちらは資本金1,000万円、i-plugの100パーセント子会社として運営しています。スライドの右側にpaceboxの企業理念を記載しました。このサービスを通じ、HRtechおよびPeople Analyticsを活用し、SDGsでも掲げられている「働きがいと経済成長」を両立させることが非常に重要だと捉えています。これを実現させるためにも、サステナブルな人材プラットフォームを作っていきたいと考えています。
質疑応答:ダイレクトリクルーティングへの代替と「OfferBox」の市場シェアの限界点について
田中伸明氏(以下、田中):「新卒市場において、ダイレクトリクルーティングという手法は、今のエントリー型のスタイルをどの程度代替していくとお考えでしょうか? 逆に、『OfferBox』の市場シェアの限界点について、どのようにお考えでしょうか?」という質問をいただいています。
中野:こちらの2点に関しては、非常に予測が難しくなっています。私が見ている現状の数字よりお話ししますと、就活生が年間約45万人いる一方、採用する企業は約3万5,000社あるといわれています。さらに、人事採用の担当者を1社あたり平均2人と考えた場合、人事採用の担当者は約7万人となります。そのバランスに応じ、どちらからコミュニケーションをとればよいかは、大学の就活生45万人に対し、人事採用の担当者が7万人という数字が参考になると考えています。
また、シェアについてですが、ダイレクトリクルーティングの市場規模は、矢野経済研究所、弊社の数字、そして個社が出している数字などから、50パーセント以上のシェアを維持することは可能だと考えています。
質疑応答:新規事業の迅速な収益化の根拠について
田中:続いて、中途事業関連のご質問です。新規事業立ち上げから収益貢献まで3期程度を要することについて、先ほどグラフを用いて、2年目に単年度黒字化する計画としてご説明しました。そこで、「収益貢献まで3期程度しかかからないように見えますが、『OfferBox』の収益化と比べるとロケットスタートの印象があります。なぜ、それほど早く収益化できるのですか?」というご質問をいただいています。
秋澤:ロケットスタートの要因ですが、1つに、実績がある外部パートナーにご協力いただきながら開発体制などを推進していることがあります。このこともあり、通常は約1年半くらいかかるマーケティングや開発が、半年くらいで実現できました。
さらに、今回は動かすところがポイントになっています。プラットフォームのボリュームで勝負していくパターンではないため、決定が早い時期に出てくると想定しています。
田中:先ほどもご説明しましたが、「OfferBox」で培ってきたモデルも「PaceBox」の垂直立ち上げに貢献できると考えています。
質疑応答:他社との競合におけるi-plugの優位性について
田中:「すでに株式会社ワンキャリアやスローガン株式会社なども、新卒領域から中途領域への拡張を始めています。また、将来的に中途領域に特化している企業が新卒領域に入ってくることもないとはいえないと思います。そのような中、当社の展開面における優位性は何かを教えてください」ということです。
中野:過去の実績からお話しします。この10年間、中途市場から新卒、またダイレクトリクルーティングサービスに対する新規参入は常にありましたが、冒頭お伝えしたように、結局は動かす要素がすべて揃わないと実現しづらいだろうと考えています。つまり弊社でいえば、マネタイズモデル、そこに対する企業への啓蒙活動、プロダクトの機能改善、さらにそれを実行する組織文化を作っていくといった要素のことです。
私の知る限り、すでに十数回ほど参入がありましたが、事業に対するマイナス影響はほぼなく、プラス影響のほうが大きい結果でした。それを考えると、今後も参入はあると思いますが、自社のプロダクトをどれほど磨いていくかが重要になると考えます。弊社の「OfferBox」を通じ、作り上げてきたモデルの強みを維持、強化しながら運営していくことにより、競合と戦っていけるのではないかと考えています。
質疑応答:3ヶ年計画におけるM&Aの寄与について
田中:「2025年3月期の営業利益の目標が19億8,000万円ということですが、新卒14.5億円、中途1.3億円を見込んでいるようです。残りは適性検査事業と考えてよろしいのでしょうか? あるいはM&Aの寄与を織り込んでいますか?」というご質問です。
残りの部分は適性検査となります。M&Aについては、今後、案件を収集し取り組んでいきますので、現状の3ヶ年計画にM&Aの寄与は織り込んでいない状況です。
質疑応答:「PaceBox」のキラー機能と中途事業に影響した要素について
田中:中途事業に関してご質問をいただきました。「『PaceBox』のキラー機能は何になりますか?」とのことです。
また、先ほどご質問があった中途事業におけるロケットスタートについて、「先ほど、よい業者と組めた要素についてご説明いただきましたが、『OfferBox』のベースがあったという要素も考えられるとのことでした。影響度としてはどちらが大きいですか?」というご質問もいただいています。
秋澤:まず「PaceBox」キラー機能についてお答えします。先ほど3つのポイントとしてご説明したとおり、ダイレクトリクルーティングサービスに内包するかたちでのキャリアアドバイザー機能、リクルーティングアドバイザー機能となっています。「OfferBox」でも、リクルーティングアドバイザー機能は、CS(カスタマーサクセス)というかたちで内包していますが、求職者向けのキャリアアドバイス機能はおそらく業界初になりますので、これがキラー機能になってくると思います。
また、「OfferBox」の影響としましては、実際の機能面においてリクルーティングアドバイザー・キャリアアドバイザー機能という「動かす」ところ、マネタイズのポイント、オファーコントロールの3点に反映されている部分が一番大きいです。
開発面においては、開発のQCDを守った状態でスピードアップすることがポイントでしたので、「OfferBox」の有効活用できたポイントは中身になります。
田中:中野からもご説明がありましたように、「OfferBox」は、現在1万社を超える企業のご利用があります。そのようなグループ間における連携を強めていきつつ、顧客開拓にも取り組めることも間違いなくプラスになると考えています。
また、これまでも多くの学生の方々に「OfferBox」を使っていただいているため、当社調べで「OfferBox」の認知は20代の方々で7割くらいあると分かっています。そのようなところも貢献できるのではないかと考えています。