第22回 個人投資家向けIRセミナー
永山亨氏(以下、永山):本日はお忙しい中、ご興味を持って視聴いただいてありがとうございます。株式会社アピリッツ、取締役CFOの永山と申します。今日はよろしくお願いします。
まず、自己紹介をします。上場企業で経理部長・経営企画室長を歴任して、スタートアップのCFOを経て、今、当社でCFOをさせていただいています。
目次
永山:本日のコンテンツです。まずは我々の事業を知っていただくために、事業内容をご説明します。その次に、先週終えたばかりの第1四半期の業績ハイライト、そしておそらくみなさまの注目ポイントである、今後の成長戦略に関するトピックスの3点で進めます。
会社概要①
永山:まず事業内容からお話しします。我々は、「セカイに愛されるインターネットサービスをつくり続ける」というMissionの下で事業を行っています。
会社概要②
永山:大きく2つのセグメントがあります。1つはWEB BUSINESS SOLUTIONで、簡単にご説明すると、ECサイトやデジタル化、DXなどが世の中進んでいますが、その構築のお手伝いをしているWebセグメントです。
もう1つは、ONLINE GAME SOLUTIONで、オンラインゲーム(スマホゲーム)の開発・運営を行っているゲームセグメントです。両方とも特徴があるので後段でそれぞれご説明しますが、この大きな2つのセグメントで事業運営しています。
会社概要③
永山:会社概要です。2000年に設立し、従業員数は今年の4月末で448名となりました。昨年度の売上は38.8億円で純利益は1.2億円となっています。
事業内容・Webソリューション事業①
永山:Webソリューション事業についてご説明します。単なるSIerなのではないかというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、toC向けの専業でWebの開発を行っており、戦略・企画のコンサルティングから設計、開発、そしてリリースした後の運用・保守も行っているのが特徴です。
詳しくご説明すると、サービス後のマーケティングまで一貫して対応することで、お客さまのビジネスの成長をお手伝いする開発会社です。よく「どこか尖った特徴はないのですか?」と聞かれますが、平たく言うと何でも屋だと思っていただければよいです。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):特徴は、上流から下流までを一貫して行っているところとご説明されていましたが、具体的にはどのようなことですか?
永山:わかりやすくご説明すると、サービスをリリースする際に、UI・UXはグッドパッチに、AWSを使ってクラウドでサーバー管理をするならサーバーワークスに、サービスリリース後にマーケティングをするなら広告代理店に、などのようにさまざまな外注を使ってプロジェクトマネジメントを行うのは、非常にハードルが高いです。
ここにお客さまのニーズがあり、窓口を我々の1つにしていただくことで、企画の設計から開発、運用、マーケティングまでを一貫して行うことができます。
坂本:「一貫して内製化する」という話もありましたが、内製化することによる強みはどのようなものなのか教えてください。
永山:これは端的に言うと、品質に跳ね返ってくると思います。多くの開発会社があるため、投資家からは「どれも一緒じゃないか」と思われるかもしれませんが、複数の外注を使う場合、サービスの意図やこれからのビジネスプランをきちんと伝えて作るというのはハードルが高いです。
表にはあまり出ませんが、その場合、実は開発途中に炎上したり、お客さまのニーズをキャッチしきれず、リリース後に手直しが必要になったりなどでコスト的にも時間的にも跳ね返ってきます。
ですが我々は全部自社で行うため、認識の齟齬やお客さまのニーズを間違って把握してしまうことが発生しません。これが内製化の特徴であり、一貫して請負を行っている理由です。
事業内容・Webソリューション事業②
永山:定性的な内製化にはどのようなメリットがあるかについてですが、数字でいうと、顧客の継続率が昨年度では80パーセントほどでした。1度請け負ったお客さまが、次に何かしらの開発や仕掛けをする時に再度ご発注されているため、品質として認めていただけているのだと自負しています。
SIerは基本的に1度作って終わりですが、我々はお客さまのビジネスが成長すればするほど、長くお付き合いをしていける、いわゆるロイヤリティループが発生していることが、他のSIerと違うところだと思っています。
坂本:前年度に比べ継続率が上がっており、これには信頼なども当然あると思いますが、他に行った施策があれば教えてください。
永山:そこに特化しているわけではないですが、我々としては今リードが好調に伸びているため、これから具体的に作っていこうとされているお客さまを優先して請け負い、あえてゼロから作り上げていくお客さまと一緒に歩むことで、さらに継続率を上げていく仕組みにしています。
事業内容・Webソリューション事業③
永山:AWSのパートナーにも認定されており、当然そのあたりのノウハウも持っています。また、サイト内検索やユーザー属性にあわせたプッシュ通知機能などのSaaSのプロダクトも持っています。
これ自体で儲けようと考えているのではなく、これをタッチポイントにしてお客さまの開発をすべて請け負いたいと考えています。
例えば、サーバーを持っているお客さまがAWSへの切り替えを考えた時に、それを入口として、その後のお客さまのサービス自体の開発にも携わったり、サイト内検索のECサイト機能をSaaSとして使用されたいお客さまには、その後のタッチポイントを増やす意味で、我々のプロダクトを使ったコスト低減の提案をするなど、お客さまとの付き合いを深めていけるサービスラインナップがあるのも特徴です。
事業内容・Webソリューション事業 22期トピックス①
永山:今期のトピックスです。みなさまもご存知のとおりデジタル化の波が来ており、百貨店やアパレルなどのリアルの店舗で商売ができなくなってしまったお客さまは、デジタル化をする必要があります。しかし、社内にノウハウもなく、なんとなく持っていたECサイトに急にシフトすることは難しいため、スライドの事例にもあるとおり、クラウド環境化での文書デジタル化などのご依頼が非常に増えています。
事業内容・Webソリューション事業 22期トピックス②
永山:リアル店舗サービスのオンライン診断やサブスクモデルのEC化、また、ライブ音源をオンデマンドで配信するEC化など、リアルで立ち行かなくなってしまったお客さまに駆け込みでご依頼いただき、我々もいろいろな業態を扱うことでノウハウがたまったため、今期は事例が特に多く増えています。
坂本:御社はいろいろなシステムの開発などに携わられていますが、一から携わるものや途中を携わるものなど、さまざまだと思います。ご説明いただいた文書のデジタル化などのプロダクトは流用が可能であり、そこがおそらく利益率の源泉になっているのではないかと思っています。
旬のものがあるだけ儲かるという言い方はよくないですが、利益率が高い商売だと思います。これは御社の開発部門でも偏りがあるのか教えてください。
永山:金融系に特化したアクシスなど、最近はさまざまな特徴をもつSIerが多くあります。我々はお客さまの業界や事業を限定していませんが、それが可能なのはまさにおっしゃったとおり、事例をこなすことにより社内にノウハウがたまったからです。
その時に使った技術を似たようなお客さまの場合に流用することで、コストの低減が図れ、さらにノウハウがたまるという好ループをしている状態です。
坂本:開発と営業がうまくこなし、「これが旬だから」などのやり取りがあるということですか?
永山:あります。また、最初にお客さまのお話をうかがった時に、「このような事例がありますよ」と提案が多くできることで実績があるという信頼を得られます。目には見えませんが社内で開発を行う時に、エンジニア間で使った技術などがどんどんたまっていくのは、1つの強みになっています。
事業内容・オンラインゲーム事業①
永山:続いてオンラインゲーム事業です。オンラインゲームというと、自社で開発し、サービスをリリースするというイメージですが、我々はオンラインゲーム事業の中で3つのセグメントを持っています。「自社ゲーム開発」、他社のゲームを請け負って開発する「パートナーゲーム開発」には運営移管も入っています。最後にゲーム開発の「クリエイター人材派遣」です。
この3つのセグメントを持つことにより、みなさまがイメージする自社ゲームだけではないのが他社と違うところです。
事業内容・オンラインゲーム事業②
永山:このようなことをしている理由は、個人投資家のみなさまはご承知のとおりだと思います。ゲームはボラティリティが高く、ヒットしたらすごいのですが、ヒットしないと業績にインパクトしてしまうなどハードルも高いです。
我々も当初はそうでしたが、それでは事業をうまく行っていけないため、自社で開発した時に企画や開発、運営のノウハウを持っていたので、それを使って他社のゲーム開発をすることにしました。
また、これは開発会社の宿命で、他社のゲーム会社も同じだと思いますが、プロジェクトには緩急があるため、どうしても稼働が低くなる時があります。開発コストがかさみ、プロジェクトの緩急もありボラが高いため、ゲーム会社は正社員をあまり抱えたくないという悩みがあり、我々はそれを理解しています。
そこをあえて逆手に取り、我々の空き稼働があれば、そのニーズに当てはめ収益化もでき、空き稼働もなくせるということで、クリエイターの人材派遣も始めています。これにより、売上高の比率もパートナーゲーム開発とクリエイター人材派遣で安定化しています。
自社のゲームがヒットするかヒットしないかに振り回されず、オンラインゲーム事業の1つのセグメントとして、安定した収益を獲得できる構造です。
坂本:パートナーゲーム開発の受託・運営は固定費で行っていますか? それとも、売上に応じた従量課金のようなかたちで行っているのでしょうか? 契約上の問題もあるかもしれませんので、ざっくりと教えてください。
永山:まさにおっしゃったとおり、パートナーゲーム開発は、単純に「このようなゲームを作りたいので企画を一緒に考えて開発してください」という、Webソリューション事業と同じかたちの開発の売上があるものと、その後の運営も行うことで、運営後の売上に応じてフィーが入るレベニューシェアの2つがあります。
ただ、我々としては、事業に大きくインパクトを与えるようなレベニューシェアは一部を除き行っていません。
坂本:ゲーム事業は一般的にボラティリティが高いというのは同感ですが、御社は少し違う構造だと思っています。そのあたりをもう少し教えてください。
永山:先ほどお話しした3つのセグメントの自社ゲーム開発、パートナーゲーム開発、クリエイター人材派遣ですが、我々は社内にノウハウがたまっているので、なんとなく単発で作るSIerよりもその質を認めていただき、安定的に開発を依頼されています。
クリエイター人材派遣も同様です。クリエイター人材派遣とパートナーゲーム開発を合わせると、昨年度はセグメント売上高の74パーセントになりました。実は自社ゲーム開発は売上に占める割合は低いのですが、そのような構造になっているため、安定的に回せています。
坂本:安定していることは理解しましたが、逆に成長ドライバーはどのようなところでしょうか?
永山:これは個人投資家のみなさまが一番聞きたいところだと思います。実は、先ほどお話ししたとおりで、ノウハウをためるであるとか、企画・運営スキルを上げるという意味での研究開発的な立ち位置で、自社ゲームを行っているという側面があります。
それをもとに、今お伝えしたとおり74パーセントを占める割合で、受託の開発と人材派遣が伸びています。逆に、研究開発的な側面だけではなく、その中からヒット作が生まれれば、この事業、ひいては全社の収益にインパクトするため、我々としてはそこが成長ドライバーと見ています。
個人投資家のみなさまもご承知のとおり、派遣と請負の開発だけでは、安定していても開発する人員のキャパにより成長のキャップがあります。そのため、安定しているけど株式投資として考えると、成長ドライバーが見たいと思われていると思います。
我々としても夢を見たいと思っており、機関投資家や個人投資家のみなさまと対話する中でも賛否両論あります。「成長ドライバーがなければもっと利益率がよいのではないか」、また逆に「成長ドライバーがないとつまらないし、企業の成長に寄与しないのでよいと思う」など、さまざまな意見があります。
これは一長一短で正解がないと思っていますので、現時点ではそこを成長ドライバーと研究開発の立ち位置にして事業を運営しています。
事業内容・オンラインゲーム事業 22期トピックス
永山:スライドに記載のとおり、22期のゲーム開発パイプラインは、自社ゲームとパートナーゲームの2つです。ゲーム運営パイプラインは、自社ゲームの運営を2つ、パートナーゲームの運営を3つ、そして後ほど詳しくお話ししますが、運営主体を他社から我々に移管する、運営移管プロジェクトを2つ行っています。今期は、自社ゲームをリリースしたことと、大きな運営移管が走っていることがトピックスになります。
坂本:運営移管のリリースが出たというのは、おそらくセガの『けものフレンズ3』だと思いますが、このような運営移管プロジェクトは今後増えるのでしょうか?
永山:軸足をどこに置くのかは、みなさまも気になるところだと思いますが、実は運営移管プロジェクトは一昨年から小さいものや中規模のものが始まっており、ノウハウをためたことで、ゲームを知らない方でも名前くらいは知っている、今回のIPのタイトルを請け負うことができました。 これにより、大規模のものを回せるノウハウも蓄積されますが、ただ大きければよいのかというのは、利益率の兼ね合いや開発パイプラインのその時の状況によって違うため、我々としては、小さくても中規模でも大規模でも対応可能なノウハウをためた中で、その事業年度の中で、どこに注力するのかを決めていきます。
そのため、これから拡大の一途をたどるということではなく、事業状態により扱うものを変えていくという方針になります。
坂本:パートナー運営を行っている先から移管されるのは、どのような状況の時に起こるのかを教えてください。パターンはさまざまだと思いますが、移管の働きかけはパートナーからでしょうか? それとも御社からでしょうか?
また、事前に御社がそれを検討する時は、「ユーザー数や利益が発生した時に移管しますよ」というのがもともと決まっているのかなど、いろいろなパターンがあると思いますが、話せる範囲で教えてください。
永山:今回の移管プロジェクトは契約上の縛りで、どのケースかについては言及できませんが、一般論でお話しすると、有名なIPタイトルをなぜ移管するのか不思議に思われていると思います。
ただ、各ゲーム会社もある一定の規模で売れているものがあっても、次の新作や社の方針で「もっとこのようなことをしたい」となった場合に、「売上は上がっていて収益も確保できるけれど、開発のリソースは動かしたい」などの理由があれば移管が発生します。
ライバルであるゲーム会社同士は、実は常に情報交換をしているため、いろいろな状況の中で条件が合致した場合にこのようなケースが発生します。外から見ると、「儲からないために手放したのではないか」と思われると思いますが、決してそのようなことはなく、大丈夫な状況でも移管することは往々にしてあります。その点はご心配なさらないでください。
坂本:上場企業の中にも、たくさん買うことで再生する会社があると思いますが、その場合、どちらかというと人員も一緒に受けることが多いです。御社の移管は、開発リソースを割くために、もともとの会社にいてもらうことが前提になると思いますが、人員の移管は最小限ですか?
永山:今回は移管はないです。
坂本:ゲームのみで、御社が実際のところ作業を行っていたからということですか?
永山:そうです。前段で社員の中にノウハウがたまっており、運営、企画ができるため、人員は必要なく我々でできます。
さらに、我々がより効率的にうまくできる要素も模索することができるため、単に運営主体を移すというよりは、いわゆるIPものなので、製作委員会などで一緒に協議しながら、さらによくしていくことを考えています。
IPものでコアユーザーがいるため、世界観を壊さないようにしますが、それと同時にユーザーと我々の収益がプラスになっていく仕掛けをしたいと思っています。
2022年1月期第1四半期 業績ハイライト
永山:業績のハイライトです。第1四半期のため、トピックスが多くあるわけではありませんが、前年同期で比べても売上高は10億円の106.9パーセントで、営業利益は5,500万円の114.6パーセントです。
経常利益が昨対で減少しているのは、2月25日に上場したため、上場関連費用が営業外で入っているためです。
当期純利益は2,900万円です。まだ第1四半期で今期の予算は下期に上がるため、この数字だけ見ると少ないと思われますが、通期でご覧ください。上期の業績予想発表をしましたが、進捗率は売上高に関しては約50パーセントです。
坂本:かなり早いですね。
永山:それ以外はすでにほぼ50パーセント以上を確立しているため、おおむね問題なく進捗していると読み取ってください。
2022年1月期第1四半期 業績ハイライト Webソリューション事業
永山:事業ごとの売上高の分析です。まずWebソリューション事業は、先ほどご説明したとおり、DXの追い風やコロナ禍で事業運営をデジタル化にシフトしなければいけないお客さま、政府の指針が出たことで、予算を確保するお客さまも増えたことにより、前年同期比でも約120パーセント増です。
昨年度の第4四半期から比べても、およそ108パーセント伸びているため、この追い風を案件を炎上せずにきちんと収めることにより、十分に伸ばせる余地がある状態で進んでいます。
2022年1月期第1四半期 業績ハイライト オンラインゲーム事業
永山:ゲームに関しても一緒です。我々が安定的な事業と位置付けている、クリエイター派遣と受託開発の2つの事業に関しては、前年同期比で122パーセントと順調に進んでいます。自社ゲームに関しては、比率を減らしているため、昨年に比べると少なくなっています。
『けものフレンズ3』の運営移管は第2四半期から始まったため、第2四半期にも一部売上に寄与します。正式には、8月1日から運営主体が我々に完璧に移るため、下期からはそれが売上に寄与していく予算になっています。
坂本:『けものフレンズ3』に関する質問になってしまうのですが、受託費をいただいていたところが運営に変わると利益率は伸びるのですか? これは『けものフレンズ3』以外を交えてお話ししていただいて大丈夫です。
永山:運営移管はもともと運営していた先でも原価をかけながら行っているため、爆発的によいわけではありませんが、今まで自社でゲーム運営をしてきたことと、運営移管のノウハウをためてきたことで、我々に移管した後に、そのあたりの工夫で利益率を伸ばしていくべきだと思っています。
工夫と効率化を行い、さらに伸ばしていくということで、現時点では未来で増やすと断言できませんが、そのような方向で進んでいます。
2022年1月期第1四半期・貸借対照表
永山:次にB/Sです。2月に上場し、すでにキャッシュが入ってきたところ、新作ゲームのソフトウェアの勘定が固定資産に上がっているところ、また、後段にも出てきますが、オフィスを増床しているため固定資産が増えているところがありますが、それ以外に大きな動きはないです。
2022年1月期第1四半期・社員数推移
永山:開発を旨としている会社のキャパシティですが、昨年度末から第1四半期末で新卒も入社し、現在は508名に伸びました。臨時雇用が多いのは先ほどもご説明しましたが、自社ゲーム開発やパートナ-ゲーム開発を行っているのでクリエイターを多く抱えているためです。
事業拡大・従業員増・アフターコロナを見据えたオフィス増床
永山:今後の成長です。コロナ禍にオフィスを増やしている理由ですが、お客さまのプロジェクトを請け負っているため、我々も昨年緊急事態宣言が出た時に、リモートワークを実施しました。上場審査中だったため9割は無理でしたが、政府の指針に沿い7割程度を基準に実施しました。
その中で大きな事故もなく、リモートワークが可能な検証はできましたが、一部従業員からコミュニケーションを取ることに手間がかかるとの声が上がりました。話せば早いのにSlackやメールを使用しなければならず、また、そのレスポンスが遅い時にストレスを感じるようです。1件だけならば小さなストレスですが、それが積み重なると大きなストレスになるとのことでした。
お客さまのサービス設計にはチームで携わっていますが、チーム内のディスカッションの機会がどうしても減ってしまい、特にプロジェクトマネージャーからはやりづらいとの声が上がりました。
高井ひろえ氏(以下、高井):確かに大変そうですね。
坂本:お客さまからも怒られますよね。
永山:お客さまはリモート勤務されていますが、品質を緩めてくれるわけではないため、ここが非常に悩みどころでした。従業員からの意見は、「環境を整えてくれたら出社しても問題ないので環境を整えてくれ」ということだったため、毎年社員数を増やしていることもあり、それに合わせてオフィスを作りました。
今回のオフィスは新型コロナウイルス対策を行い、また従業員が働きやすい環境にするため、従業員にデザインしてもらいました。
高井:おしゃれですね。
永山:要望を取り入れ、「来てください」という方針を出す以上は、新型コロナウイルス対策をしっかりと行い、また、従業員が来たいと思えないとよくないため、プロジェクトチームを作りました。このような時には、男性よりも女性が動いてくれるのですよね。
高井:ナチュラルな雰囲気ですてきです。
永山:これからのために増床もしました。今時、増床してコストを使うなと怒られてしまうかもしれませんが、背景にはこのようなことがあり、この環境下でプロジェクトを炎上させずに、きちんと収益を伸ばしていくことを進めています。
今後の成長戦略に関するトピックス・Webソリューション事業①
永山:Webソリューション事業です。今期の大きな3つの柱は、1つ目がロイヤリティループを継続すること、それにより安定的収益をきちんと確保することです。2つ目は先ほど前段でご説明しましたが、DX化が進んでいる中で、サービスラインナップを強化し、タッチポイント(お客さまとの接点、お客さまになり得る方たちとの接点)を増やすことで案件数を増やすことです。
そして最後に、DX化の波とコロナ禍によりコストをデジタル化に割くお客さまが増えてきたことで、この単価を大きくアップさせること、この3つを柱にWebソリューション事業を進めています。この結果、第1四半期の決算は、先ほどご報告したとおり順調に進んでいますので、うまくいっていると思っていただいて大丈夫です。
今後の成長戦略に関するトピックス・Webソリューション事業②
永山:先ほどもお伝えしたとおり、四半期ごとの問い合わせ数が伸びていますし、通期で見ても順調に増えています。さらに、サービスラインナップの強化という意味で、いろいろな業種のDX化を行うことで、順調にノウハウをためています。
坂本:このお問い合わせは、新規のお客さまからですか? それとも御社を利用している既存のユーザーですか?
永山:このスライドに記載しているのは新規のお客さまです。
坂本:タッチポイント増加のために行っている施策があると思いますが、どちらかというと既存ユーザーのほうがビジネスに直結するのではないかと思うのですが、実際に行っている施策があれば教えてください。
永山:まずは、既存のロイヤリティループのお客さまを大事にしていく基本路線は、このまま続けます。お客さまのサービスが大きくなるにつれ、我々が役に立てるところも増え、事業的にも安定します。
ですが、事業の売上の構造的にも、すべて既存に寄ってしまうと、仮に何かあった時に事業インパクトが出てしまうため、毎年2割程度の新規のお客さまを取っています。その中で先ほどお伝えした、新しい取り組みで開発した事例を活かし、AWS乗り換えへの営業をします。
また、SaaSのサイト内検索の組み込みなど、さまざまな点でも営業できますので、お客さまのソリューションとして最適なものを提案し、新規のお客さまを獲得することを進めています。
今後の成長戦略に関するトピックス・Webソリューション事業③
永山:先ほどお伝えした3つの柱のうちの3つ目の施策についてです。単価はアップしています。
今後の成長戦略に関するトピックス・オンラインゲーム事業
永山:ゲーム事業の今期のトピックスです。先ほどお伝えしたとおり『けものフレンズ3』のIPを、8月に我々に移管します。また、5月に新作を出しました。ゲーム事業に関しては、受託の開発は安定的に行っていますが、今後の大きなトピックスとしては、この2つが第2四半期・下期に影響すると思っています。
今後の成長戦略に関するトピックス①
永山:最後です。時価総額は大きくないのですが、我々もESGに取り組む必要があると思っています。これは投資家・従業員・周囲の環境、また、みなさまのために取り組んでおかなければいけないという本質を忘れがちですが、一朝一夕ですぐにできるものではないため、今期から着手しました。
今後の成長戦略に関するトピックス②
実は上場準備をする中で整理されてきたこともあり、特にガバナンスができていないと上場できないため、ESGで定められた取り組みの中で、すでに達成できているものもありますし、特にソーシャルに関しては、エンジニアは売り手市場で、労働環境などを整える必要があるため積極的に行っています。
また、ダイバーシティですが、これだけダイバーシティが叫ばれている中、外国人の雇用や障害者の雇用も基準を満たして達成しているため、まずは上期の取り組みに関してみなさまに開示するようにしていきます。
その後、できていないことに関しては、年度を通じて行い、近い将来的、評価機関の評価の認証を得て時価総額が大きくなってきた時に、機関投資家にESGではねられない環境や働くみなさまと地域など、さまざまなステークホルダーに認められている会社になろうと 進めています。
質疑応答:開発のメインについて
坂本:それでは、会場の個人投資家に事前にいただいた質問です。開発に関しては、自社サービス開発・受託両方、または、受託は上流工程・下流工程、どちらがメインでしょうか?
永山:単なるゲーム会社がこれを作っているのではなく、企画段階から我々が入っています。企画のノウハウを活かし企画フェーズから参画して、ディレクターやプランナー、我々も参加し、お客さまと協議しながら作るため、上流から参加していると思っていただいて大丈夫です。
質疑応答:『オーバーエクリプス』の売上やアクティブユーザー数などについて
坂本:5月27日に正式にサービスを開始した『オーバーエクリプス』は、現状の売上やアクティブユーザー数などは想定どおりでしょうか? また、前期決算終了後に感触や特徴を聞きますか?
永山:リリースしたばかりですが、簡単に言うと失敗しているわけではないのですが、我々が期待していたところまではまだ届いていません。ただ、それは失敗ではないため、そこだけ勘違いしないでいただきたいと思います。
坂本:これはどのようなゲームですか?
永山:ロールプレイングゲームです。我々はどちらかというと、ライトユーザーに遍く遊んでいただくよりは、世界観を好きになっていただいたコアユーザーをターゲットにして作っています。
質疑応答:DX周辺サービスのラインナップ強化について
高井:DX周辺サービスのラインナップを強化するとのことですが、お話しいただける範囲で、何か新しい施策などございますか?
永山:先ほどお伝えしたとおりで、まずはいろいろなお客さまのいろいろなDXを開発することにより、ためたノウハウを他社に流用できるように準備します。SaaSはもともといくつか持っていますが、今後、それが地盤になり得るものを作っていってもよいのではないかと進めています。
質疑応答:Webソリューションとオンラインゲームのシナジーについて
坂本:Webソリューションとオンラインゲームのシナジーを教えてください。
永山:2つありますが、1つは人材の流動性があることです。比率は大きくないですが、Webにいた方がゲームに行くなど、同じ会社の中でいろいろなことに携わり、スキルを上げていくことができます。
もう1つは、ゲームで培ったUI・UXのデザイン技術を、Webサイト構築などに流用できることです。特にUI・UXは、グッドパッチが上場したことでみなさまにも周知されましたが、それまでは軽視されていました。ですが、UI・UXは、サービスを使う時に我々が無意識にとても気にしていることであり、ゲームではとても重要なポイントになっています。
坂本:使い勝手に直結しますからね。
永山:そうですね。そして、それはWebのECサイトやいろいろなものに流用できます。ですので、以前からあえて行っておりますが、そのようなことがお客さまからも認められ、ゲーム事業とWeb事業のシナジー効果につながっています。
坂本:両方できる従業員も多くいらっしゃるので、プロジェクトによっては双方にアサインすることもありますか?
永山:そうですね。Web事業の中でも、受託開発とパートナーとおり、もちろん仕切りとしてプロジェクトごとに分かれていますが、何かあった際には枠なく対応していますし、今まで培ってきたもので横串を通すのは、我々の特徴でもあります。
質疑応答:若い世代の採用について
高井:会場からの質問です。「若い世代を積極的に採用されていますか? デジタルネイティブ世代から生まれる新しい発想などがポジティブに働くことは多いですか?」という質問です。
永山:多いです。我々が新卒採用に舵を切ったのは、エンジニアが売り手市場になったことからです。中途採用も当然行っていますが、事業の継続性を考えると、我々も学びからのインプットはできるものの、感覚やトレンドキャッチなどについては若い人の方が力を発揮しますし、事業を10年、20年単位で考えるなら、若い人を入れないと継続的に運営できないため、そのような意味で若い人たちの効果は非常にあります。
質疑応答:伸ばす領域について
坂本:次に、今後はAWSに特化したインフラ領域と自社オリジナルゲームを含めたシステム開発領域では、どちらの領域を伸ばす方向か教えください。
永山:市場環境的にはAWSのインフラ周りも伸びてきているため、現時点でどこかに特化することはありません。どの分野も非常に活況で引き合いも強い中、冒頭にお伝えしたとおり、我々の特徴は何でも屋だというところを突き詰めていきたいと思っています。
どこかに特化することは、サービスが尖っていたり、そのようなことで非常に強みはあると思いますが、我々は逆に言うと何でも屋であることが強みのため、サーバーワークスもAWSがすごく伸びて東証一部に上場されましたが、我々もパートナー認定されているため、そこをうまく使いながら、両軸を伸ばしていきたいと思っています。
質疑応答:既存顧客の継続率について
高井:既存顧客の継続率が引き続き伸びていますが、何が要因になっていると思われますか?
永山:既存顧客が伸びているのは、冒頭でご説明したとおり、企画・設計から携わっているからだと思っています。いろいろな要素はありますが、お客さまが世に出したいサービスの企画・設計段階から携わり、ディスカッションやマーケティングをしながら、一緒にサービス設計を行うと、お客さまのビジネスを一番理解しているのは我々ということになります。
一緒にもの作りをした後に、わざわざ他社に発注して、ゼロから我々と同程度のビジネス理解をさせる労力を費やすことはしないです。ですので、我々の強みはまさにそこにあり、他のSIerと違って、言われたものを作るのではないことが、今になってロイヤリティループの1つの理由になって好循環できています。
私も管理系の仕事をしているため、いろいろなシステムを入れてきましたが、発注者側の立場になると、理解してくれる先ではないと難しいです。コストだけではないとか、見えないリソースで割くとか、考えなければいけないとか、アイデアが欲しいのに出してくれないなど、お客さまはそれで商売をしていく覚悟で開発しているため、そこに最初から入り込むことは既存顧客の継続率が伸びている大きな要因であると思います。