2021年3月期決算説明会
秋好陽介氏:ランサーズ株式会社、代表取締役社長の秋好でございます。本日は決算説明会にご参加いただきまして、誠にありがとうございます。2021年3月期の通期の決算を説明させていただきます。
サマリーに記載していますように、本日は3つのお話をしたいと思っています。1つ目は、前期の最新の業績の状況についてです。新型コロナウイルスによるプラスとマイナスの両方の影響を受けた1年でした。
2つ目に、そのような市場変化を受けて、経営チームとして意志を持って、非連続な成長にコミットしていくという3カ年の経営方針についてお話しします。3つ目は、2022年3月期にどのような経営方針で進めていくのかです。この3つの柱について発表したいと思っています。
会社概要
まず、会社概要です。2008年に創業して、今期で13周年を迎えることができました。創業以来のミッションは「個のエンパワーメント」、ビジョンとして「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」を掲げて、全社一丸となって邁進しています。
社員は200名で、特徴的なのは社員以外に2,000人くらいのフリーランスの方と一緒に働いていることです。例えば、このIR資料もフリーランスの方と一緒に作っていたり、我々が提供しているオンラインサービスのフリーランスの方と一緒に働くことを経営に取り入れて、率先して推進しています。
ランサーズの流通総額推移
昨年度はコロナ影響がありましたが、創業以来12年連続で流通金額が増収している状況です。
サービスの概要
我々のサービスの特徴は、基本的にオンラインだけで完結する、個人と法人をマッチングする受発注プラットフォームを運営していることです。
このコロナ禍にあって、特に企業側の利用が非常に変化しています。例えば、ランサーズを活用いただいている関西軽金属工業の取り組みです。広島でキッチン用品や鍋を扱っている会社ですが、コロナ禍でなかなか店舗だけで売上を立てるのが難しい中で、フリーランスの方と複数のキッチン用品を売るECサイトを構築して、地方にいながら、社員ではなくフリーランスとともに、オンラインで売上を上げています。このような企業が、今まさに増えている状況になっています。
サービスのモデル・特徴
オンラインでのマッチングのマーケットプレイスは他にもありますが、我々の特徴はクラウドソーシングとして匿名ではなく、スキルをしっかりと持っている個人の方に高単価で発注できるオンラインスタッフィングのモデルであることです。
サービスの内容
特に今、開発・運用やマーケティングの仕事、そして昨今、YouTuberなどもたくさん出てきていますが、動画の仕事がカテゴリとしては非常に伸びている状況になっています。
サービスのターゲットと提供価値
前回の四半期でも説明させていただいた資料ですが、このコロナ禍によって、特に中小企業がオンラインでデジタル化するというニーズが非常に高まっています。ランサーズとしては、中小企業のDXの運用、かつ、単発利用ではなく継続して発注いただくような企業側のターゲットを最優先に、下半期から邁進している状況になっています。
市場の変化
ランサーズ単体ではなく市場に目を向けると、国による兼業や副業の推進というトレンドもあり、フリーランス人口は、ずっと950万人くらいだったものが、毎年毎年、1,000万人、1,050万人、1,100万人、1,200万人というかたちで増えてきていました。
しかし、今期に入って、今までとはまったく違う成長角度となり、2020年にはだいたい1,100万人くらいだったところが、一気に600万人増えました。結果として、フリーランスの経済規模も10兆円増えたという状況になっています。
これはなにも日本だけの状況ではありません。例えばグローバルに目を向けたときに、このような仕事のマーケットプレイスという視点で見ると、海外でも、中には前期比で100パーセント伸びるようなプラットフォーマーも出ています。日本だけではなく世界的に、オンラインで仕事をするというマーケットが、新型コロナウイルスによってデジタル化が推進されたことによって急拡大していると捉えています。
ランサーズの市場ポテンシャル
ランサーズが提供している「オンラインで仕事をする」というところに絞ると、現状では数百億円程度のマーケットですが、2030年頃には1兆円の市場ポテンシャルがあると見込んでいます。以上が、ランサーズの会社概要および昨今の市場の状況になっています。
マーケットプレイス事業の構造変化
3つのトピックのうち、前期のトピックについてご説明します。前四半期から、セグメントを3つに分けて開示しています。マーケットプレイスという我々の最も大きな流通金額を占める事業については、第3四半期は流通総額が前年比プラス25パーセントと成長が加速していたのですが、第4四半期にはさらに加速して、前年比プラス33パーセントの成長となっています。
このマーケットプレイスは、上場以前からずっと順調に成長しており、新型コロナウイルスの影響があった冒頭には、一部マイナスの影響はあったのですが、特に下半期に関しては、先ほどお話しした中小企業のデジタル化のトレンドをしっかりと掴んだことによって、新規のクライアント数が32パーセント拡大しています。
マーケットプレイス事業
次のスライドでご説明しますが、新規だけが増えたわけではなく、既存のクライアントの長期の継続率も大きく加速してきています。
「長期の継続率が100パーセントを超えた」ということがどのようなことかと言うと、スライド下部の注釈にも記載していますが、過去のランサーズでは、12ヶ月以上連続で利用するコアな優良クライアントの方は、どうしても年月が経てば経つだけ、流通金額が100万円だったものが99万円になって、95万円になって、というように、平均を取るとだんだん減っていく傾向にありました。
昨年度の10月頃以降になりますが、平均を取ると、100万円使っていたクライアントの方が、その翌月は101万円というように、より使っていただけるようになっています。
新規が増えて、なおかつリピートしているクライアントの利用継続率・流通金額のストックも増えているという掛け算の効果が、成長率33パーセントと加速している背景になっています。
セグメント別サマリー
結果として、マーケットプレイス事業は33パーセント成長になり、2021年度以降もこの成長を加速していきたいと思っています。
他の2つの事業については、新型コロナウイルスの影響で非常に苦しんだ1年でしたが、前回共有させていただいたとおり、両事業とも予想どおり第4四半期が底となっています。
マネージドサービス事業
マネージドサービス事業に関しては、年度末需要があり、昨年対比プラス2パーセントの成長に沈んではいるのですが、定額サービスに関しては、成長性・収益性ともに高いと思っているため、新しいプランを検討しています。
テックエージェント事業
一方、テックエージェント事業に関しては、事業の構造上、新規で成約して、その成約したフリーランスの方に10ヶ月から1年くらい継続してご利用いただくモデルになっているため、新型コロナウイルスによって面談ができない、または実際に会社に行けないことなどにより、新規の成約数が非常に落ち込んでいました。
対前期比でずっと流通金額が下がっていたのですが、第4四半期に底を打ち、第4四半期以降は、日本の課題でもあるIT人材不足に対して、ランサーズとしてしっかりと価値提供していけるのではないかと考えています。
業績サマリー
結果として、通期に関しては、以前の決算発表で業績予想を公表していますが、おおむね想定どおりの着地となっています。上場時のガイダンスで「翌年は通期で黒字化していく」としていましたが、予定どおり、そちらも少し上振れて着地しています。
2021年3月期B/S(連結)
B/Sも簡単にご説明したいと思います。手元資金に関しては現金約20億円、純資産は約18億円、自己資本比率も約55パーセントと、財務基盤は盤石な状況をしっかりと確保しています。
上場後は、今のところ特に大きな借入はしていませんが、銀行等とも継続してしっかりコミュニケーションを行っており、当座貸越枠も、借りてはいませんが7億円は確保している状況になっています。以上が、2021年度の業績の状況になっています。
3カ年(2024年3月期)の目指す姿及び経営方針
冒頭ご説明したように、我々は2008年に創業してから12年になりますが、その間には東日本大震災があって働き方が変化したり、2017年くらいには副業・兼業の推進というトレンドによって追い風が吹いたりしました。
それ以上に、大きなフリーランスマーケット、そして何より企業にオンライン文化が根付いたことによって、今まではオンラインだけで仕事をすることに大きな抵抗があったものが、今は非常になめらかになっています。
その結果として、今マーケットプレイス事業が非常に伸びていて好調です。海外の類似の企業が大きく成長していることも考慮して、ランサーズとしてもぜひ、ここで新規のカテゴリを拡大していきたいと考えています。企業サイド・個人サイドの価値観の変化に対応し、しっかりとマッチングできるサービスを、今まで以上に提供することが成長率の加速につながると考えています。
ご覧のような経営方針で、この3カ年、着実にコミットして取り組んでいきたいと考えています。新型コロナウイルス前は、オンラインだけで仕事を提供することは、特に大手企業に関しては難しいところもあり、我々が間に入って管理するような事業をいろいろと行っていました。しかし、この変化に対応して、オンラインでマッチングが完全に完結するような事業に集中投資していきます。
1年を通すと、マーケットプレイス事業に関しては成長率15パーセントくらいだったものが、今は30パーセントくらいに引き上がっています。まずは30パーセントという成長率の土台をしっかりと作って、その上で「3年以内に成長率を40パーセントの大台に乗せる」ことを目指したいと思っています。
後ほどお話ししますが、新規のカテゴリが増えていくこと、そして今、長期継続率が100パーセントを超える状況を作ることができましたが、この新規と既存の積み上がりをしっかりと提供することができれば、決して無謀な挑戦ではないと考えています。
マーケットプレイス事業の成長率を40パーセント水準に持っていく一方で、全社の流通総額に関しては「この3年の年平均成長率で30パーセント」を目指し、結果として流通金額で200億円、売上総利益では40億円の規模に拡大していきたいと考えています。
後ほど今期の業績予想について説明しますが、特にマーケットプレイス事業に投資することによって、今期に関しては一時的に営業損失というかたちになるものの、「3年以内にしっかり黒字」を目指して投資を継続し、営業利益が着実に拡大していく状態にしていきたいと目論んでいます。
今まではいろいろな事業を行っていましたが、マーケットプレイス事業は今もセグメントの利益率は非常に高い状況です。今期に関しては投資するため、短期的に少しセグメント利益率が下がりますが、40パーセント成長した上で、セグメント利益率は今と同じような水準を目指せると考えています。
マーケットプレイス事業の成長が、結果としてスライド3つ目に記載の「高成長・高収益」を確立することにつながってくると考えています。
マーケットプレイス事業の成長目標イメージ(流通総額)
こちらのグラフは、今ご説明した内容を見える化したものですので、説明は割愛します。
2022年3月期の各事業の方針
3カ年の方針の中、今期に関しては、マーケットプレイス事業には5億円を投資し、まずは前年比30パーセント成長の土台を作り、来期以降は40パーセント成長が見えるような仕込みをしっかりと行っていきたいと考えています。
マネージドサービス事業については、我々がすべてフルサポートで受託して管理するものと、定額のサービスで、主にフリーランスの方がマネージメントするモデルがありますが、受託については基本的には今期で撤退し、定額サービスにリソースを集中して、収益性を重視していきたいと思っています。
一方で、企業側からは、ランサーズ社に間に入って受託管理してほしいというニーズがありますが、これはマーケットプレイスや定額のサービスで代行することが可能だと思っています。
テックエージェント事業については、前期の説明会でお話ししたとおり、まずはコロナ前の成長基調にしっかりと回復させ、再成長の状況に持っていきたいという方針で考えています。
2022年3月期通期業績予想サマリー
セグメント別で見ていきます。マーケットプレイスは30パーセントの成長を見込み、マネージドサービスは受託を撤退するため前年同期比マイナス28パーセントの予想です。テックエージェントについては、上期では昨年の新規クライアントの減退の影響はあるものの、しっかりと元の成長率に戻すことにより、通期では12パーセントの成長に戻します。受託を除いて、流通総額でプラス23パーセントをしっかりと目指していきたいと思っています。
今期5億円を投資して、今のサービスモデル以外のものを含めて、このコロナ禍で変わった価値観に対して、ランサーズとしての価値提供の優位性をさらに強めていきたいと考えています。
この1年間、経営チームとしては、マーケットプレイス事業がしっかりとその成長基調に乗っているのかを重視して経営していきたいと考えています。
マーケットプレイス事業の方針
5億円を投資して、具体的にどのようなKPIを伸ばしていくかについてです。新規のクライアントが伸びていますが、ランサーズが提供しているカテゴリのみでしか、まだ受託できていないと思っています。
1つ目は、まだ我々が提供していない領域や、新しく出てきたデジタル化ツールの運用で、非常に市場ニーズが高い新ジャンルがたくさん出てきていると思っており、そこにしっかりと対応し、新規クライアントを伸ばしていくことです。
今までのランサーズは、どうしてもスポットの利用が前提でサービスを提供しています。先ほどお話しした、社員と仕事をするようにフリーランスの人と複数人でECの構築を行う仕組みのように、ランサーズをハックするといいますか、我々も想像していないかたちで創意工夫して利用いただいている例もあります。
2つ目は、そのような継続利用を促進する仕組みやマッチングを簡単にする仕組み、簡単に報酬を支払う仕組みを多様化することで、継続クライアントにさらにランサーズの利用を掛け算で増やしていけると考えており、その仕組み作りのプロダクト開発です。
この2本柱で、今期は30パーセント成長の土台を目指していきます。
参考:2022年3月期の営業利益増減推移
費用について、前期は黒字の一方で、今期はマイナス3億円としている内訳になります。基本的には、マーケットプレイスに5億円を投資したいと考えています。
内訳として、一番大きいのはエンジニア・プロダクト・デザイナーに対しての人件費と外注費です。もう1つは、新規のカテゴリを増やすために、広告宣伝費を通常よりもさらに踏み込んだかたちで増やしていくことです。そして、採用、教育等です。採用を増やすために必要な費用となっています。この5億円の内訳としては、3億円がおおよその変動費で、2億円については主に来期以降の人件費等にかかってくる費用です。
一方で、マーケットプレイスが順当に成長することにより、今期は3億円のプラスですが、受託等の撤退により1.5億円のマイナスがあることをすべて織り込み、3.7億円の営業損失としています。
今期は、この5億円を投資して2億円のセグメント利益をしっかりと確保することで、翌々期に8億円以上の利益とすることに寄与できると思っています。投資して機会を逸するということではなく、マーケットの変化やグローバルで見た時のマーケットプレイスのこの仕事に対する大きな期待に応えて、しっかりと成長率を上げることでコミットしていきたいと考えています。
人員構成(連結)
人員構成についてです。マーケットプレイスについては、現在32パーセントですが、マネージドサービス等からの社内異動や、エンジニアの採用を大きくすることにより、今期は47パーセントくらいに増やし、来期以降はさらに人員比率を増やしていく予定です。
その結果、先ほども説明させていただきましたが、今期はしっかりと投資して仕組みを作り、新規や継続クライアントを獲得することで、来期、再来期以降のセグメント利益率の貢献につなげていきたいと考えています。
あくまでも成長のイメージですが、今期投資させていただく分、来期、再来期以降についてはそれがセグメント利益としてしっかりと向上していき、全社の営業利益についても、3年以内にしっかりと黒字が拡大していく状況に持っていきたいと考えています。
いろいろと説明させていただきましたが、まとめると、昨年は予定どおり着地できました。
マーケットプレイスに対してこの3年しっかりと投資し、かつ新規と既存のクライアントの流通を増やすことが、中長期のランサーズ全体の価値になると思っており、我々のサービスで働くオンラインのフリーランスの方に報酬を届けることができる最短距離だと考えています。
基本的には自社で、そこに対してプラットフォームをしっかりと拡張していきます。ただし場合によっては、M&A等も検討していきます。昨年にM&Aを行った「MENTA」というサービスで教育を受けて、そのままランサーズで仕事を得るというエコシステムが小さいながらもできつつあるため、そのようなかたちも含めて成長を加速していく3年にしたいと強く思っている次第です。
私の説明については、以上となります。ありがとうございました。