2018年3月期 決算概要
澤井光郎氏(以下、澤井):今日は2018年3月期決算概要、ならびに中期経営計画のご説明をさせていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
まず2018年3月期の決算概要でございます。資料の1ページ目をご覧ください。
日本国内におきましては、ジェネリック市場の伸びが当初想定していたよりも増加いたしましたものの、昨年(2017年)5月に買収いたしましたUSL(Upsher-Smith Laboratories)の業績が、当初計画よりも上振れしたことによりまして、売上収益はほぼ予想どおりとなります。
全体では前期比26.9パーセント増、1,680億6,800万円となります。
営業利益ですけれども、買収などの非経常的な一時的要因などを除きましたコアベースではUSLが上振れいたしまして、フルベースでは減損損失が発生したこともあり、前期比3.2パーセント減の222億900万円となりました。
また、当期利益につきましては、前期比22パーセント減の140億1,700万円となりました。
営業利益の増減要因分析
次に2ページ目、営業利益の増減要因分析でございます。
国内では販管費の抑制となりましたものの、固定費等の原価や研究開発費が増加し、10億円減少いたしました。
海外では、USL(Upsher-Smith Laboratories)が無形資産償却・減損前で68億円の営業利益を確保しましたが、無形資産償却・減損で50億円、一過性の費用でありますM&A関連費用15億円を計上したことから、USLの買収初年度の営業利益への寄与は3億円にとどまり、全体では7億円の減少となりました。
2018年3月期 通期実績(フルベースからコアベースへの調整)
続きまして3ページ目、通期実績のフルベースからコアベースへの調整項目でございます。
ともにUSL(Upsher-Smith Laboratories)の買収に伴う在庫のステップアップにより、売上原価が16億円増加したことや、製品やパイプラインに関わる無形資産の償却や減損などによりまして73億円、合わせて89億円の調整を行っております。
USL買収に係るPPAの影響
4ページ目は、USL買収に係るPPAの影響の内容です。
PPA前ののれん代9億1,840万ドルを、ご覧のように各資産項目に再評価し直しているところでございます。
2019年3月期 業績予想
5ページ目、2019年3月期の業績予想でございます。
国内事業は、薬価改定の影響に伴う販売単価の下落はあるものの、ジェネリックの使用促進策の影響から一定の伸びを予定しております。
USL(Upsher-Smith Laboratories)は、既存品の厳しい環境は継続するものの、12ヶ月分の業績がフルに連結されることや、新製品発売等によりましてカバーし、全体の売上収益は1,725億円、営業利益はコアベースで297億円、フルベースで240億円、当期利益は174億円の増収増益を見込んでおります。
剰余金の配当に関して
6ページ目は剰余金の配当に関してでございます。
期末配当金は予定どおり1株当たり65円、年間配当金は130円を予定しております。
2019年3月期の配当に関しましては、短信に記載のとおり同額の年間130円を予定しているところです。
前中計の振り返り 「M1 TRUST 2018」の結果概要①
ここからは、新中期経営計画「M1 TRUST 2021」の概要をご説明させていただきます。
2ページ目をご覧ください。ここは前中計「M1 TRUST 2018」の結果概要をお示ししたものでございます。
当社は「市場環境激変の中で成長を続けられる企業体質」への変革をテーマに、数値の目標、そして実現することを3項目掲げて取り組んだわけでございます。
中でも、さらなる成長に向けた新規領域の事業基盤の構築で、米国Upsher-Smith Laboratories(USL)を昨年5月に買収し、その売上10ヶ月分が乗っかるということによりまして、売上実績は計画1,570億円に対し1,681億円、営業利益については計画260億円に対し実績222億円と、未達の結果となりました。
その他の定量的な目標は、お示ししたとおりでございます。
前中計の振り返り 「M1 TRUST 2018」の結果概要②
3ページ目、同じく前中計を振り返っております。
USL(Upsher-Smith Laboratories)の買収によりまして、売上高は想定を上回る結果となりましたが、国内市場の苦戦によりまして、営業利益は計画を下回る結果となったわけでございます。
前中計の振り返り Upsher-Smith Laboratories買収に関して
4ページ目、当社が実施しましたUpsher-Smith Laboratoriesの買収について記載をしてございます。
2017年5月末に米国市場での基盤構築を目的に、総額1,165億円でUSLを買収し、その後米州住友商事にも20パーセントの資本参加をいただくかたちで、現在は戦略レベルでの統合を実行しているところでございます。
こちらについては、のちほど今後の計画をご説明させていただきます。
前中計の振り返り ジェネリック医薬品市場の推移
5ページ目、ジェネリック医薬品の市場がどのように推移したかをお示ししたものでございます。
ジェネリック医薬品の置き換え率はほぼ70パーセントに近いところまでは来ました。市場錠数換算では、この3年間で200億錠ほど伸びると計画しておりましたが、実際のところは190億錠程度というところになったと我々は理解しております。
前中計の振り返り 「M1 TRUST 2018」重点施策の達成状況
続きまして6ページ目、重点施策の達成状況でございます。
(スライド項目①の)ジェネリック市場におけるNo.1シェアの堅持についてです。
今般、日医工さまが会計基準をIFRSに変えることにより、国内の売上1,286億円になるという説明がなされております。
当初、我々は「沢井が国内ではNo.1」とご説明しておりましたけれども、今回それが実態、数値として表れました。当社が1,366億円に対して(日医工は)1,286億円ということで、国内において当社が80億円上回っており、No.1シェアは維持はできていたと考える次第です。
一方、AG等の増加によって価格競争も厳しくなったということから、利益面でも少し未達のところが出てきたというところです。
また、さらなる成長機会の確保として、米国市場展開の足掛かりを確保することができたということから、一定の成果はあったのではないかと考えているところでございます。
市場環境の認識 ミクロ・マクロ環境の変化
8ページ目は市場環境の認識として、ミクロ・マクロ環境の変化についてでございます。
国内医薬品市場は、最近では消費税増税、その際の薬価改定に始まり、薬価抜本改革、流通適正化の影響等々、今まさに環境は大きく変化しようとしております。
また、ジェネリック置き換え率が、いよいよ80パーセントを達成することもあり市場の伸びは相対的に鈍化が予想されること、加えて薬価制度の改定により、経営環境が悪化することで、ジェネリック業界でも再編に向けたさまざまな動きが始まるのではないかと考えています。
市場環境の認識 ジェネリック市場数量予測
今後のジェネリック市場の成長は、医薬品市場の適正化の影響もあり、前回より増加し2021年3月期には、総数で850億錠程度と見ています。
前3ヶ年の伸びが190億錠であったのに対し、今後3年間で(伸びは)150億錠程度に縮小するのではないかという、我々の見方をしています。
中⻑期ビジョン 当社が中⻑期に目指す姿
11ページ目、当社が中長期的に目指す姿を示しています。
日本では、圧倒的地位を確立し、外来市場でも一定のプレゼンスを発揮することを目指して、「国内GE市場での圧倒的地位の確立と、USLの成⻑加速による、世界をリードするジェネリック医薬品企業への変⾰」を中長期ビジョンとして定めました。
その実現に向け、これからの3年間を、連携強化による効率的な成長の実現の時期と位置付け、将来的には、グローバル企業への変革を遂げるべく、取り組んでまいりたいと考えています。
中⻑期ビジョン 今中計期間の位置づけ
12ページ目は、中長期ビジョンの実現のための、この3ヶ年で重点的に取り組むテーマでございます。
日本市場の環境変化については、(GE)シェア80パーセントの到達と、適正処方の推進による成長鈍化、また、連続薬価改定・価格競争の激化による収益性の低下、ジェネリックの原則1価格帯化など薬価制度の不確実性の増加、こういった市場変化が予測されます。
その中で、当社の強みを活かした上で、国内ジェネリック市場をリードする立場として、これまでの自前主義にこだわらず、目的を同じくする他社と積極的に協調することも考え、戦略的提携も視野に入れた業界ネットワークの構築として、アライアンスの強化にも取り組んでまいりたいと考えています。
また、USLの一層の成長により、今後米国でのプレゼンスを固めていくことで、USLを基盤としたグローバル企業化の加速に取り組んでまいりたいと考えています。
中⻑期ビジョン 今中計期間における重点課題
13ページは、今後3年で、国内外で取り組む具体的な内容になります。
日本市場では薬価の抜本改革などの影響により、業界としての収益環境は悪化することが見込まれ、また、業界再編も起こりうる中で、迅速に対応できるような体制を構築するために、業界構造の変化に対応できる体制構築と、コスト競争力強化を重点テーマといたしました。
もう一方、米国市場では、USLと双方の強みを活かした連携を行うことで、米国市場でのプレゼンスを高めていく計画でございます。
中期経営計画 営業関連の取り組み
14ページ目からは、そのための具体的な実施事項になります。
こちらにつきましては、詳細の説明は割愛させていただき、後ほどご覧いただければと思います。
計数計画 単年度損益計画
22ページに移らせていただきます。
ここからは、今後の計数計画となります。市場環境の認識でも先ほどご説明しましたとおり、今後は消費税増税の有無、その際の薬価改定のあり方をはじめ、薬価抜本改革と流通適正化ガイドラインなど、これらの影響により、当面は不透明な環境が続くと考えています。従って、今後3年間の係数計画をお示しするためには、さまざまな前提を置かざるを得ません。
そのような精度の低い係数計画を公表することは、マーケットに対して適切な情報開示とは言えないと判断し、連結の数字は、今期見通しのみにとどめましたことを、ご理解いただければと思います。
計数計画 USL損益計画①
ただし、23ページには、米国市場の計画をお示ししています。
米国市場においても、現在まさに処方箋薬の価格抑制について議論されてはいますが、日本と比較して予見性は高いと判断しまして、5ヶ年の利益計画を掲載しています。
(スライド表中の)一番下にEBITDAを記載していますけれども、現状の100億円程度から、3年後には150億円程度まで引き上げることになっています。
米国市場では、今後3年間で25の新製品の発売を予定しており、既存売上の落ち込みをカバーするかたちになっています。また、今後5年間は、毎年5品目から10品目の製品の発売を見込んでいるところです。
計数計画 USL損益計②
24ページは、売上高およびEBITDAをグラフ化したものです。
それぞれ売上高20パーセント以上、EBITDAで20パーセント以上の成長を実現し、当社の第2の柱にすべく、取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
以上で、簡単でございますけれども、中計の発表も併せて行わせていただきました。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:「戦略的提携」の内容、販売戦略、米国市場での売上利益
質問者1 :大和証券のハシグチと申します。
1つ目が戦略的提携についての考えをお聞かせいただければと思います。
(戦略的提携を)「視野に入れて」ということですが、今までの自前主義からどの程度修正を考えているのか教えてください。
つまり、話があれば考えるというニュアンスなのか、御社から積極的にポテンシャルがある方に声をかけてらっしゃる状況なのか。
いろんな選択肢が当然あろうかと思うんですけれど、(中期経営計画で)お示ししていただいた「圧倒的地位の確立」に向けて足りないところなど、どういうところを提携によって補って、その相手はどういった会社が候補になり得るとお考えなのかを、お聞かせいただければと思います。
澤井光郎氏(以下、澤井):これまで沢井という会社は、研究開発・製造に多額の投資を行い、ほぼすべて開発品目も自前で、設備生産のための増産設備も自前でやってまいりました。
これからの経営環境を考えれば、ここから手を打つべきだろうと考えております。開発品目においても、これから 特許切れ製品もブロックバスターではなくて、割と小型化をしてまいります。
これらすべてを自分たちで開発するのか、やはりパートナーを見つけるのか、こういったところは積極的に自ら動いていく必要があるかと思います。
また生産におきましても、155億錠体制は、すでに構築しました。先ほど申し上げたように、(今後、市場全体でさらに)3年間で150億錠の増加(見込み)です。このうちの20パーセント(のシェア)を取ると30億錠です。
現状、(沢井製薬は)100億錠の販売ですから、(現有の生産設備で対応可能な)155億錠に30億錠の増加があっても、なんとか大丈夫です。
しかし、その先を考えれば、今のうちから一部外注し、余裕のある状況を作っておくのも1つの手であろうというところで、生産においても、 生産委託も含めて積極的に提携を求めていくことも1つの手段だろうと思います。
その他、今回のエルメットエーザイさんさんのようなケースが出てくれば、我々もそういう再編の中心的立場に立っていきたい。
そういう買収案件の話があれば、手を挙げていきたいというところでございます。
質問者1:ありがとうございます。
あと、今、何が起こってるのかということを確認したいんですけれども、薬価制度抜本改革ですとか、流通適性化のガイドラインの話をされましたが、それによって御社の販売戦略が変わっているのかを教えてください。
(薬価は)20年ぐらいで一価格帯になることも多いと思うんですけれども、それを視野に入れたときに、価格戦略等で攻めに出ている会社と守りに入っている会社と、両方あってもいいのかなと思っています。
そういった他社の動きが、これまでと比べて変化があるのかないのか、ジェネリックメーカーのほか、競合する長期収載品メーカー等含めて、御社の戦略と競合他社の戦略についてお聞かせください。
澤井:厳しい価格競争が起きた要因の1つが、やはりAGにあると思います。AGが出たから、営業力のない会社は、やはり値段に訴えるしかないというところで価格競争が起きました。
当社は、そこに一線を置いてやってきました。価格政策は会社の方針であり会社の姿勢なのですが、一度安くしてしまうと、次からも安くしないと取引が続かない。
そういう状況になってしまっているというか、安くしたらその次も同じように安い価格でないと取引が続かない。せっかく沢井がここまでブランド化し、価格に関しては譲らないという方針をずっと掲げてきて、大きな値引きもせずやってきました。
この方針は1価格帯への集約を含めどんな環境になっても沢井ブランドとして、適正価格をしていきたいということでございます。
とくに今回国による流通の適正化が行われることになりました。現状、薬価改正後の価格提示は皆無と言っても良いと思います。まったく価格交渉は進んでおりません。そういう中で、AGからジェネリックへ、ジェネリックからAGへ、長期収載からジェネリックへ、こういった現象はまだ起きています。
やはり価格が出てきて、初めてシェアの変化が起きたりするわけです。その中で、当社としてはやはり沢井の価格を維持したままでやっていこうという方針を、変えずにやっていこうと考えているところです。
質問者1:最後に、米国事業なんですけど、1年前にお示しいただいた見通しと比べると、上向いてくるタイミングが少し後ろに遅れるような見通しになっていると思います。
以前、既存品とパイプラインで売上を分けてご開示いただいていたんですが、今回ページが変わってるようなので、比較ができないようになっています。今後上市する品目数だけ見ると、あまり変わってないのですが、従来よりも売上利益の伸びるタイミングが遅れる理由について、どこが想定と違っているのか、コメントをいただけませんでしょうか。
澤井健造氏(以下、澤井健造):既存の品目「クロルプロマジン」と「 クロルコン」の競合状況が想定と少し違って、参入が少し遅れてきたり、あるいは想定してなかったところが参入してきたこともありました。
既存品が大きく下がってしまうのは、年度がズレてしまったのが原因です。パイプラインには、そんなに変化はないはずです。
質問者1:ありがとうございました。以上です。
質疑応答:4Q営業利益、今期通期の業績予想、バイオシミラーについて
質問者2:東海東京証券のアカバネです。私も何点があるんですが、まず1点目は終わった決算なんですけれども、第4四半期で、第3四半期までは日本基準で売上の15パーセント増でした。
IFRSになって、Coreの営業利益で言うと、Coreの営業利益は6億円のプラス。
もちろん薬価改定があったので買い控えもあったと思いますが、そのへんを含めて第4四半期はどんな感じになっているのか、定量的じゃなくて結構なので、定性的にどんな感じなのか、まずお伺いできますか。
澤井:今回、薬価改定では新薬創出加算品が大きく下がり、また、長期収載品においても最大55パーセント下がる品目が出てきました。
医療機関や薬局側からしたら、ジェネリックだけ通常どおり買うとか、買い控えを抑えるとか、そういうことはほとんど起きませんでした。
一斉に通常の在庫を例年よりも相当厳しく抑え込まれたところで、2月・3月の売上は、クレコンのデータでも出ておりますように、非常に厳しい状況になりました。これが、当初の第4四半期の売上が下振れた大きな要因です。
当社に限らず、おそらく新薬メーカーさんも、他のジェネリックメーカーさんも同じような状況であったのではないかと思います。
末吉一彦氏(以下、末吉):私から若干補足させていただきます。
第3四半期までは日本基準で、通期がIFRSです。
その両方を比べますと、第4四半期だけ切り出して数字を見るのは、なかなか理解していただきにくいかと思います。
日本基準での通期の業績も、これは監査は終了しておりませんが、(決算説明資料の)17ページに数字を開示しております。こちらでしたら第3四半期までの数字を、みなさまご存知ということですし、第4四半期までの累計の数字も書いてございますので、より理解していただきやすいのではないかと思います。
確かに、日本事業については、先ほど社長の澤井から申しましたとおり、売上高は結果的に11月に公表していたものよりも23億円ほど下振れております。しかしながら、収益は比較的堅調に推移しまして、結果的に通期でも、日本事業での利益は対前年で5億円ほどプラスを維持できたところでございます。
米国事業については、売上高も上振れ、若干減損が発生した関係で最終的な利益はそう大きくは変わっておりませんものの、実態としては悪くなかったのではないかと思っております。
質問者2:よくわかりました。
それと裏腹に、(中期経営計画資料22ページに記載の)今期の売上収益の予想は2.6パーセント(前年比増)です。(2018年)4月の御社の売上は21パーセントなので、他のメーカーに比べても相当反動が出ているイメージを持ちます。
スタートは非常にいいという感じを持っているんですけど、いかがでしょうか?
澤井:これは、先ほど申し上げたように、買い控えの反動がけっこう大きく出ているのではないかと思っています。
実際、先ほど申し上げたように、他社のジェネリックが下がり切り替わったり、長収載品から切り替わりが進んだり、こういったことが起きているのではないわけです。やはり冷静に見ると、3月までの買い控えの反動が4月の実績に出てきていると考えています。
質問者2:わかりました。
澤井社長さんは以前、「バイオシミラーはある状況において動かなければいけないんじゃないか」とずっとおっしゃっていましたが、まさにそういう時期に来ているのではないかと個人的に思います。
ここから売上を上げていくためには、販売提携も含めて、それを取り組む時期に来たのかなと僕は思うんですけど、それは間違ってますか?
澤井:前から申し上げているように、我々はバイオシミラーからは、避けては通れません。
ただ、自分たちで開発することは、現時点でも行っておりませんし、提携という道を模索しているのが現状でございます。
こういう状況であるのは、まだバイオシミラーが本格的に使われる状況だと思えないからでございまして、1つはレミケードにおいても、高額療養費を含めて、ジェネリックを使ったメリットが出てきません。
一方、ユーザーの先生方の意見を聞いても、ヒヤヒヤドキドキで使う思いを、医者としてはしたくない。そういうご意見もよく耳にします。
そういう意味では、まだまだ時間がかかるのではないのかなという感じはしております。やっぱり、錠剤と比較してバイオシミラーの普及が進むのは、未だに大きな差があるのではないのかという気はしております。
質問者2:ありがとうございました。
質疑応答:日本事業の効率化、新中計期間のCF
質問者3:メリルリンチのワタナベでございます。ご説明ありがとうございました。
まずは日本市場についてお伺いしたいと思います。
前中計の振り返りの中で、ナンバーワンシェアの堅持という話もございましたが、これから新しい中計において、どう日本事業をより効率的にしていくかについて教えてください。
今までは全方位的なジェネリックのビジネスだったと理解しておりますが、例えばこれから先は、効率性より収益性を高めるために注力する領域とか、顧客のセグメントとか、選択と集中をするビジネスの変換があるのかということ、および、始まった期については、コアにしても財務ベースの営業利益にしても、マージンが下がる状況になって、お見通しは難しいとは思うんですけれども、日本事業の営業利益率を上げていくことはまだ可能であるとお考えなのか。
これをまず、日本関連として合わせてお伺いいたします。
澤井:ジェネリックは、いろんな領域で品揃えをすることが、ユーザーにとっては大きな魅力でございます。
それをわざわざ自ら絞っていく考えは基本的にはありませんが、会社として取り組むのは、やはり5円、6円の低薬価品ではなくて、新しいものです。
それから、以前からお話ししているように、沢井製薬は1社ないし2社で承認を取っている品目がけっこうございます。これは、まだ100パーセントジェネリックに置き換わっているわけではなく、1社、2社で販売している関係もあるんでしょうが、置き換え率もまだ65パーセントから70パーセントと、まだまだマーケットが残っているわけです。
こういったものが沢井の独占的なマーケットになるように、取り組むべきことはまだたくさんあります。それをやるには、卸さんの協力なくしてあり得ないと思います。
今まさに、薬局さまも、できるだけ大手に絞り込みたいと考えています。卸さんも、やはり利益の伴うメーカーに絞り込みたい。
こういった考えのもとに推奨品目を挙げたり、推奨メーカーを挙げておられます。やはり、そういう卸さんの協力を得れば、売上を増加できるのではないのかなと考えております。
あと、利益率が高まる局面はあるのかというお話は、これは薬価改正のタイミングとやり方次第だと考えます。
来年(2019年)10月の消費税に伴う薬価改正については、「来年4月に前倒しでやれ」という意見があったり、「わかりやすくするためには4月はどうだ」と業界紙に出たりもしてます。
そんな4月の説もあれば、「10月に(消費税引き上げを)やった後の価格調査はどうやって、その6ヶ月後に反映するのか」と(いう意見もあります)。
その引き下げ率の影響もありますし、今やっている流通適正化ガイドラインでどれだけ薬価差が圧縮されるのかも読みきれません。
少なくとも、1パーセント超は圧縮しないとダメだという思いで取り組んでおられると思います。
これがその通りになれば、ある意味利益率は高くなる可能性もあるし、そこらへんが、制度の詳細がわからない限り、なかなかこうですとは申し上げにくいので、中計の数字をなかなか出せなかった要因の1つでもあります。
お答えになったかならないかわかりませんが、そう考えてるところです。
質問者3:ありがとうございます。
2つ目については、新しく発表された中計の期間における資金、キャッシュフローの考え方について教えてください。
いろいろ体制構築もあるし、提携などもあると思いますし、お金は使っていかなければいけないように見えます。今後3年ぐらい見たときに、フリーキャッシュフローの水準を、どの程度にしていくのか、どういう目算でいらっしゃるのか、それについての考え方を教えてください。
末吉一彦氏(以下、末吉):それでは私からご説明いたします。
まずその前に、前期の実績でございますが、営業キャッシュフローで約280億円。それからEBITAで約400億円を1年間で確保できております。
そう言う意味ではキャッシュ 創出力は確実に高まってきているというのが、今の状況でございます。
これが2019年3月期につきましても、ほぼ変わらないぐらいの水準を確保できるのではないかと思っています。
一方ではどのようなお金がいるのかということでございますが、まずこれまで、いちばん私どもの会社、沢井製薬本体でお金がかかっていたのは設備投資です。
こちらは150億錠以上の生産体制が構築でき、今後につきましては、どちらかというと、自前で設備増強することは、できるだけ回避していきたいということでございます。
2019年3月期も、設備投資は基本的には償却の範囲内で更新投資にとどめております。向こう3年間、国内での設備投資の水準は非常に低く抑えられるのではないかと思っております。
一方、米国子会社であるUSLも設備投資という意味では、従前から低い水準ですし、向こう3年間でも大きく変わるとは想定しておりませんので、設備投資は向こう3年でさほど変わらないのであろうと思います。
それ以外で何のお金がいるのかというと、これが先ほどの提携の話になりますが、何か良いお話やご縁があれば、そういったものにある程度の資金を投じていくことは考えられます。
それとて、十分厚いキャッシュフロー創出力を、今この時点で確保できておりますので、その中である程度の規模感のものであれば、吸収していけるのではないかと考えています。
質問者3:ありがとうございます。
今のお話で確認なんですけれども、今期始まった期の米国の設備投資は16億円という数字でございますが、これはUSLの平時の年間の設備投資はこのぐらいで、これからも可能であろう、という理解をしていいということですか。
末吉:今でも生産能力という意味では、かなり余裕を持っておりますし、数量が大きく伸びるというよりも、比較的競争力のあるもの、低価格品ではないものを 追っていくというようなことで、新しい工場を作るとか、そういったことをすぐさま想定しているわけではございません。
質問者3:ありがとうございました。
質疑応答:USLの減損理由、PPA無形資産の内訳
質問者4:ご説明ありがとうございました。SMBC日興証券のナカザワと申します。
USLの関連でいくつかお伺いしたいんですけど、まず決算の説明スライドの3のところの減損の数字は、開発中心にともなう減損17億円は、いわゆるパイプライン30品目の見直しをされた結果、出てきた減損と捉えてよろしいでしょうか。
末吉:1つはご指摘の通りでございます。やはりアメリカも市場はご承知の通り変わってきていることでもございます。あるいは中には開発の技術的な理由で、総合的な判断から早めに中止を決断するようなこともございます。そういった中での数字とご理解いただけると思います。
質問者4:その関連で(決算説明資料)4ページ、PPAの無形資産でございますけども、その中で既存品とパイプラインのだいたいの内訳はどうなっているか教えてください。
末吉:無形資産、これPPAでございますので増加と表現しておりますが、残高的には若干ののせたぐらいの金額となります。これはドル建てで公表していますが、円建ててだいたい100億円を切るぐらいがパイプラインの無形資産の金額ということです。
質問者4:無形資産の中の100億円弱?
末吉:100億円弱ということです。このPPAは昨年の5月末に買収したときの、その時点の評価に基づいて算出しているわけなんですが、そのあと一部減損がありました。
いわゆる製品化しますと、既存品に振り替わっており、3月末の時点で100億円を切るぐらいの水準まで縮小しております。
おそらくご質問されている意図は、そういったリスクがあるのかというご質問だと思いますが、さほど大きなものではないと理解しております。
質問者4:ありがとうございます。
あと中計のプレゼン資料の23ページ、USLの中計の数字は、23年3月期に営業利益は上がる想定になっていますけども、これはどういう要素でグッと上がるのか、25製品投入されていて、そのへんが貢献するというのもあると思うんですけど、ひょっとしたら沢井製薬の自前のやってきたものが、このへんで本格的に寄与してくるのかなと想定していますけど、確認させてください。
澤井健造氏(以下、澤井健造):パラグラフⅣもそうですし、沢井製品のアメリカの市場に おいて、というところで、いくつかの品目は選定しているわけです。
それらが実際に開発して 承認を得て上市するタイミング、それらを合わせたときにパイプラインのなかから、この年に結構大きな新製品というか、売上が上がってくることが、いちばん大きな要因です。
逆に22年に下がっている部分は、USLの既存品のうち唯一の先発品があるんですけれども、この先発品に ちょうどジェネリックが、おそらくこれぐらいのタイミングで参入してくるだろうということで、その前年が少し下がっているかたちになっております。
質問者4:ありがとうございました。
質疑応答:今期計画の策定方法、米国の計画、AGについての方向性
質問者5:ゴールドマンサックス証券のウエダでございます。
最初に国内の今期の計画についてお伺いしたいんですけれども、従来の促進策のときと比べると、かなり伸びとしては小さいのかなという印象はあります。
これまで前回の中計のときは、かなり売上については下振れることも多かったと思うんですが、このあたりを踏まえて、何か計画策定方法を変えられたところもあるのかというところと、前提の数値として、例えば、マーケットでのシェアですとか、あとは製品ミックスで変動費比率のようなものもいただけるでしたら、お願いできればと思います。
末吉:これは3年間のマーケットの予想を前提していますが、前中計でマーケットシェアを高めていくというようなことは、結果としてはできなかったことは、先ほど社長の澤井がご説明した通りでございます。
実際、日本市場での売上は、前中計はかなりの未達に終わっているということもあって、そういった反省のもと、今期はかなり慎重な市場シェアの確保ですとか、あるいは数量の伸びを考えており慎重な計画を立てさせていただいたということでございます。
質問者5:製品構成の変化ってどういうふうに見ていますか?
末吉氏:もちろん製品構成につきましては、私どもが売上、利益を確保できる製品を中心に販売していくというところでの考え方は従前と変わっておりません。
その結果として、薬価改定による単価下落は見込むものの、原価率の悪化は2パーセントに留まっておりますのは、そういう製品構成の変化が反映されたものでございます。
変動につきましては、これさまざまな要素で決まっていくところでございまして、なかなか分解してご説明するのは、とくに計画値を説明するのは難しゅうございます。従前より開示させていただいていないので、ご容赦いただければと思います。
質問者5:2点目が、米国の計画です。
今回の計画を立てられた中で、前回の見通しと比べると既存品が落ちたというところがあったという話でしたけれども、計画におけるリスク要因をどういうふうに見ていらっしゃるかと、あとはアメリカの計画に今、パラグラフⅣの品目がどの程度入っているのかというところについて教えていだだけますでしょうか?
澤井健造氏:リスク要因については、やはり価格競争です。日本とは違って米国市場の価格は市場が形成していくものなので、当然、競合が増えれば価格競争激しくなるし、逆に競合が減れば価格は上がるといったところです。もちろんリスクでもあり、それはチャンスでもあるとは思うんですけれども。
実際にパラグラフⅣのような大型なものというのは、ある種ちょっと博打的なところがあって、勝つプレイヤーも非常に巨大なプレイヤーとかが多いといったところで、USLの場合は、それよりもむしろ競合の少ない、高い利益率を確保できるような品目というのを選んでいってるところがあります。
だからこそ、余計に、そういったちょっと想定外の競争が激しくなったりとかそういうことが起こったりすると、それはすごくリスク要因にはなってくると思います。
今後は、そういったところはパイプラインをどんどん増やしていって、少しでもリスクを減らすということと、常にやっぱりフレキシブルに状況を見ながらパイプラインを選んでいくことは継続していかないといけないかなと思います。
パラグラフⅣに関しては、今3品目を申請しているわけですけれども、2019年、2020年、2021年あたりに、どれかの品目は上市できるんじゃないかなと考えています。そのあたりから少しずつ影響を加味しています。
質問者5:そうしますと、じゃあ確率調整などもしながら書いていて、仮に全部うまくいけば上振れのかたちでもある、というふうなかたちになる?
澤井健造氏:可能性があるかって聞かれば、あると思います。
質問者5:わかりました。ありがとうございます。それから最後に、AG(Authorized Generics)についての今のスタンスをおうかがいしたいんですけれども。
先ほどの提携も積極的にやられているというお話で、今まではAGは将来的には、やはりジェネリックメーカーさんのジェネリックには勝てないだろう、というお話だったと思いますが、今はどのようにお考えになっていらっしゃって、今後どのような方針でいくかというところを最後教えていただけますでしょうか?
澤井光郎氏:その考え方に基本的に変わりはありません。
他社さんの決算を見ていると当社のジェネリック医薬品は原価を下げられますけど、AGというのはなかなか下がりにくい。
しかも毎年薬価改定とかなってくると、在庫分がもろに効いてくるわけですね。我々はもうピュアなジェネリックですから、薬価改正前にグッと在庫を落としたり、そういうところで利益の増減をコントロールできるんですが、やはり3ヶ月前、4ヶ月前の発注をしなければならない。
こういったところはリスクになります。2年、3年、4年は利益あがるのかもしれませんが、その先長く使われていくのは、最終的にはジェネリック医薬品になるんじゃないかと思っています。その考え方には変わりはございません。
質問者5:どうもありがとうございます。
質疑応答:米国でのパラグラフⅣの動向
質問者6:クレディ・スイスのサカイと申します。最後の質問ともちょっと絡むのですが、澤井健造さんにお聞きします。
アメリカで先週、トランプ大統領が薬価について言及されたと思いますが、それ以前にFDAのゴットリーブ長官がジェネリックについて「競争を激化させるために、FDAとしてはジェネリックの承認増やしていくんだ」ということをおっしゃったと思います。
そのへんUSLを買収されてから、なにか雰囲気がアメリカで変わってきているのかどうかを教えてください。
それからみなさん、パラグラフⅣでチャレンジして、価格を維持されるということをおっしゃるんですけれども。
FDAとしては、はたしてそれを今後も容認していくのかどうかって非常に疑問に思う部分がかなり出てきているんですけど、そのへんいかがですか?
澤井健造氏:おっしゃるとおりだと思います。
今FDAの承認数というのはもうピークに多いですし。例えばパラグラフⅣに関しても、例えば大きい品目であると十数社とかですね、そういうかたちでfirst filer目指してやってくるわけですけれども。
結局、もうそれぐらいになってきて、その中にインドの会社さんが入っていると、もういったらあっという間に価格なんて10分の1以下ぐらいになっちゃうんですよね。
なので、もうそもそもパラグラフⅣを申請してても、もう発売しない会社もいっぱいあります。十何社とかあれば半分ぐらいしか発売しないケースもあります。それぐらいもうみんなこれは価格的にダメだなと思ったらすぐにやめるようなところもあります。
だから、そういう意味でも、我々もパラグラフⅣにそれほど期待しすぎるのはよくないなと思います。うまくいけば、とくに訴訟の部分でうまく例えば他社を出し抜いて先に出せるとか、そういったことが戦略的にできれば非常に大きなメリットがあると思うんですけれども。同じタイミングで発売するとなると、そういうことっていうのはもう必ずつきまとってくるので、過度な期待はしないようにはしています。
USLのCEOとお話をしてても、FDAがどんどん承認を出してずっと増えていくのかというと、ここ1~2年ぐらいまででそういった傾向も収まってくるんじゃないかというふうな見立てではおられます。 質問者6:ありがとうございます。
質疑応答:国内の再編についての考え方、国内での経費削減について
質問者7:モルガン・スタンレーのムラオカです。よろしくお願いします。
提携とか再編とかに、従来より積極的にっておっしゃってたと思うんですが、ちょっとspecificな質問で恐縮なのですが、今回のエーザイの件について教えてください。
あれすごい魅力的なシナジーの出しやすい、良い案件だと思うのですが、あれは御社取りにいかなかったのか、取れなかったのか? 取れなかったとすれば、なにがボトルネックだったのか教えてください。
澤井光郎氏:まぁ我々は、ニュースを見て知りました。
(会場笑)
ということは、我々もそういう考え方が起きたときに沢井が外されないようにしておくということが重要であって、今回みなさん方のご協力も得て、沢井もそのなか手を挙げてるんですよという宣伝をしているので、ぜひご協力いただければ(笑)。
(会場笑)
質問者7: 今後また魅力的な案件が出た時に取り逃がさないようにするためには、バジェット的にもかなり柔軟に考えなきゃいけないと思うんですよね。
例えばUSLを買った時ぐらいの、踏み込んでいくぐらいの覚悟が、思いが今あるのかないのか教えてください。
澤井:アメリカは、(薬の)価格を上げることが可能なマーケットなわけです。日本はそれができないんですね。だからUSLみたいな魅力のある会社というのはなかなかないんじゃないかなとは思っています。やはり弊社の取締役がしっかりしてますので、だめなものはだめと言われます。
質問者7:従来は澤井社長、国内の再編についてはなかなかシナジーとかのマイナスなどが大きいみたいなことをおっしゃっていました。
しかし、たぶん従来よりシナジーを出しやすくなってきた、けっこう固定費をがんと落とすような決断をすればシナジーがかなり出るようになってきたと思ってらっしゃるんじゃないかなと思うんですけど、そこまでの意識ですか。
澤井:頭の中にはジェネリック医薬品メーカー同志のMAだけではないわけです。要は長期収載品の撤退はあるわけですね。ですからそこも我々の視野の中に入っています。
ジェネリックが良いのか、長期収載品の承継が良いのか、残ったマーケットをお金を出して全部もらうのが良いのか。
そのへんも含めてのことですので、金額ありきというよりも、沢井の成長にとってプラスとなるものについては積極的にやりたいという考え方です。
質問者7:ありがとうございました。
あと最後なんですけど、この3年間の新しい中計の期間中に、日本において、大きな固定費の削減というのは実行する可能性はあるのか、そこまで見込むのはまだ先だと思っていらっしゃいるのか。どうでしょうか。
澤井:経費的に大きいのは研究開発費になります。これはやはり特許切れの品目の数が減るということ、それから小粒になるということ。これを考えると、全部自前でやるのが良いのか、50億円、100億円を下回るようなものについてはやはり協力したほうが良いんじゃないかと。
経費というのは、コストというのは積み重ねだと思います。そういう意味でいろんな提携を、ありとあらゆるものを使ってコストを削減するんですということでお金をフルに有効活用してこれからはやっていくと。そういう方針転換の中計なんですというところをご理解いただけたらというところですね。
質問者7:わかりました。ありがとうございます。
<続きは近日公開>