シンギュラリティがやってくるなかで、欲が出てきた
孫正義氏(以下、孫):先ほど冒頭にニケシュ(アローラ氏)に挨拶してもらって、昨日記者発表しましたけれども。私はまだもう少しやり残したことがあるんだと。
このシンギュラリティを迎えるにおいて、もう少しソフトバンクの社長を続けていたいと。本当は彼に声をかけた時は、まだ56歳? 55歳? でしたっけ。4~5年あるから、そしたらそろそろ彼にバトン渡さなきゃいけないなと。
僕は毎月のようにシリコンバレー行くんですけどね、シリコンバレーで60歳って言ったら化石のような年寄りですよ。
だって、Googleのセルゲイ・ブリンやラリー・ペイジとか、若くて賢くて、かっこいいんですよね!
Facebookのマーク・ザッカーバーグもみんな僕の友人で親しいんですけど、これまたかっこよくて、若くて、知恵も抜群にあって。
そういう彼らは30代です。30代・40代の彼らといつも触れていて、僕のような近々60になろうかというのが、ソフトバンクの社長をいつまでもやっていたら、僕がソフトバンクの成長のボトルネックになってしまうなと。
僕自身の年齢が、体力が、ソフトバンクの将来の成長の妨げになってはいけない。
やっぱできるだけ早く、自分がボトルネックになる前に、老害だとか言われる前に、できるだけ若いものに早くバトンを渡していかなければいけないと真剣に思いました。
みなさんに、ソフトバンクの社員にもあんまり言ってなかったんですけど、実は僕は60歳の誕生日のときに、誕生パーティーをして、そこでみんなを驚かそうと。
誕生パーティーにソフトバンクの幹部と、僕の人生で知り合ったいろんな友人とかを呼んで、乾杯をしたときに突然「実は明日からニケシュが僕の後任で社長になる」とバトンを渡そうと本当に思っていたんです。
だけど、(60歳まで)あと1年になっちゃった。「ちょっと待てよ」と考えてみると「俺は十分枯れたかな」と、まだ欲が出てきまして。“シンギュラリティ”がやってくるというなかで、もうちょっとやり残したことがあるなと。もうちょっと社長を続けていたいなという妙な欲が出てきてしまいまして。それでニケシュに「申し訳ない」と話をして、今日の発表にいたったんです。
あとでみなさんからたくさん質問が出ると思いましたので、先に言っちゃいました。
後継者は誰になるのか?
それでは、ただいまから報告事項及び決議事項に関して、みなさまからのご意見・ご質問をお受けいたしたいと思います。
この審議に関する一切の発言をいただいて、その後に決議を行っていきたいと思います。
この発言におきましては、手を挙げていただきまして、私から指名を受けた後に、インターネットで生放送されているのでみなさんのプライバシーのためにみなさんのお名前はけっこうですが、自分の受付番号だけおっしゃっていただいて、みなさんの質問、あるいは「社長引っ込め!」「増配しろー!」などなんでもけっこうですから(笑)、忌憚(きたん)のないご意見・ご質問をいただきたいと思います。
これだけ多くのみなさまに来ていただいておりますので、できるだけ多くのみなさまにご質問をいただきたいと思いますので、だいたいこういう時1人で2問とか30問とか言う方がおられますけども、申し訳ないのですが、今日はルールとして1人1問だけに、ご理解いただきたいと思います。
それでは、ご発言いただきますでしょうか。
どうぞ。B列の前から2列目の黒い方。手を挙げたままで。
質問者1:番号104でございます。実はこの総会の後で、株はもう売ろうかと思っておりましたけども、今日の社長の話を聞きまして、連日40パーセントで乗るんだったらいいなと思いまして、持たしていただこうかと思っております。
それから、実は議決権行使書は、2週間前にお送りさせていただきましたが、そのなかで第2号議案の役員については、「賛成であるが、2番のアローラさんについては反対」と書かせていただきました。
それは、ご本人に対してどうという気持ちはまったくありませんが、孫さんの後継者はありえないと思っております。もうちょっと正確に言うと、人類のなかではいないと思っております。
孫:これは困りましたね(笑)。
質問者1:それについてもTwitterでもずいぶんコメントさせていただきました。
それで今日、シンギュラリティの話がでました。あと5年10年ではまだシンギュラリティは達成しないと思いますので、本音で教えていただきたいんですが、おそらくは30年、場合によっては40年の99歳までやっていただくんじゃないかと。
孫:(笑)。
質問者1:後継者としては、ロボットである可能性がもっとも高いと今日高らかに宣言していただきますと、株価が上がるんじゃないかと。
現在、日経平均(株価)は下がっておりますけれども、ソフトバンクは2.5パーセント上がっております。今宣言されますと、インターネットで配信されて、一気に2倍だと思います。となれば、みなさんのなかでも「売ろう」という方も出てくるんじゃないかと思います。いかがでございましょう。
(会場拍手)
彼には本当に申し訳ないことをした
孫:いつまでも社長となると、私が成長の妨げになってはいけませんので。
19歳の時に決めてたんですよね。50代までにある程度ビジネスモデルを完成させて、60代で後継者にバトンタッチすると。ただ60代と言っても60歳から69歳まであるから。その60歳から69歳のなかで、「あいつ、いつまでしがみついてんだ」とあんまり言われたくないので、60歳のその日の誕生日で潔く渡そうと思ってたんですけれども。
69歳までっていうのは僕の19歳の時に決めていたので、少なくともそれまでには、社長というタイトル、CEOというタイトルは譲らなきゃいけないんじゃないかなというのは、今日現在は今でもそう思っています。これは19歳の時から1回も変わってません。
ただですね、今言っていただいたように、今回のニケシュの件ではずいぶん僕考えて、さらに毛が本当に抜けたんですよね。こないだ飛行機でトイレで鏡見たら急に真っ白くなって、「あちゃー俺ずいぶん今回悩んだな」と思ったんですけどね。本当に今回悩みましたけど。
というのは、彼が一番の被害者なんですね。本当に僕、申し訳なかったと思ってるんです。
なかには、彼が高給を取りすぎてるとか、そういう声をいただく方もいますけどね。
でもちょっと考えてみてください。ちょっと話長くなるけどいいですか? 彼はGoogleにそのままいれば、ソフトバンクから今回もらってるぐらいの報酬はそのままもらってたんです。で、彼はストックオプションが溜まってましたから、そのストックオプションをそのまま持ってれば、実はこの2年間でGoogleの株価は上がってるんですね。で、2年前から比べると彼が買った時の株価より下がってるんですね、今ちょっと。
そのストックオプションを肩代わりするための額が最初の契約金でありました。
それからのボーナスがあったんですけれども、Googleで彼は、創業者の2人と会長がいて、役職は4番目でしたけれども、実質的な経営は彼がやっていて、報酬はGoogle全社員のなかで一番高かったんですね。
ですからGoogleにいればそのまんまソフトバンクが今払ってる程度の報酬は得れたわけだし、なにも自分の身をリスクに冒してうちに来る必要なかったんですね。
そういう状況のなかで来てくれて、しかも彼の人生賭けて来てくれてですね。
それを僕が自分のわがままと言いますか……。60歳の誕生日で渡すというつもりが、彼には絶対そうだっていう確約はしてませんでしたけれども、僕は心から実はそう思っていた。
そういうなかで今回、もうちょっとやっぱり社長を続けようということで、彼には本当に申し訳ないことをしてしまったんですけどね。
ただ、今のようなご意見で、もっと長く「99歳までやったらいいんじゃないか」と言う声が一部の人にはありますけれども。僕はあんまり老害になってもいけませんから、その辺は十分に見極めながら、毎日自問自答しながらやっていきますが、少なくとも最低5年、おそらく10年近くは社長のままいきたい、というのが、今回の決意でございます。
(会場拍手)