イー・ガーディアン、26年度の最重要課題は売上高再成長と収益性改善 AI開発投資を積極推進し労働集約型ビジネス脱却へ
目次

佐藤伸氏:イー・ガーディアン常務取締役の佐藤です。本日は、2025年9月期の決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。本日の流れとして、まずエグゼクティブサマリー、前期と通期の業績をご説明します。その後、今期の取り組みについてお話しします。
エグゼクティブサマリー

エグゼクティブサマリーです。2025年9月期通期の業績は、売上高が113億2,100万円で前期比99.4パーセント、営業利益が15億400万円で前期比88.2パーセントでした。2期連続の減収および減益という結果になっています。
2期連続の減収・減益を受け、2026年9月期通期は最重要課題として、経営体制および営業体制の刷新による売上高増加に取り組みます。また、売上高の減少に伴って収益性が悪化していることから、収益性の向上も目指していきます。さらに、AI開発への投資を積極的に行います。短期的には収益性の回復への寄与を見込み、中長期的には当社の成長エンジンとすることを目指しています。
株主還元については、今期の業績見通しに基づき、前期の35円から38円へ増配する予定です。また、これまで株主優待として「QUOカード」の現物をお渡ししていましたが、「デジタルギフト」に変更しています。
通期業績予想修正要因

通期業績についてご説明します。先月、売上高と営業利益の業績予想を修正しました。
売上高の業績予想修正の要因は、ソーシャルサポートの大型案件の減収幅が想定を上回ったことと、家庭用ゲーム向けカスタマーサポートの大型案件の売上高が当社見込みを下回ったことが要因です。
ソーシャルサポートの大型案件の減収幅が想定を上回った点についてご説明します。スライド下のグラフをご覧ください。当社の取引は、案件開始後に取引規模が徐々に拡大しますが、お客さまの運営が安定してくることや、問い合わせや取り扱い件数が減少するとともに、当社の売上も縮小していく構造となっています。今回、もともとある程度の売上縮小は予測していましたが、その幅が想定を上回りました。
加えて、家庭用ゲーム向けカスタマーサポートの大型案件の売上高についても、当社の見込みを下回ったため、売上高の修正を行いました。
営業利益の修正については、売上の減少と労務費調整の時間的なずれが影響しています。これは、労務費を削減するには一定の時間が必要なためです。当月の売上が想定を上回って減少してもすぐに労務費を調整することは難しいため、利益を圧迫する要因となりました。
2025年通期業績サマリー

業績のサマリーです。売上高は前期比99.4パーセント、各利益は前期比9割弱となっています。
売上高・営業利益 四半期推移

四半期ごとの推移です。2025年9月期上期は売上高・営業利益ともに順調に推移していました。しかし、下期は売上高の減少幅が大きく影響したことに加え、大型の新規案件開始に向けた人材獲得と育成コストの発生により、利益が悪化しました。
通常、新規案件を開始する際には、先行してスタッフを採用し、トレーニングを実施します。大型案件の場合、運用中のセンターだけでは対応しきれないため、新たに対応する大型のセンターを決め、先行して多くの人員を採用・トレーニングし、立ち上げ準備を進める必要があります。2025年9月期下期はこれらのコストが発生し、収益に影響を与えました。
加えて、人員確保を進めるために、下期に一部熊本センターの移転を行いました。この移転に伴い、家賃の二重支払いや人件費の重複といったコストが発生したことも、収益性悪化の要因となりました。
業務区分別売上高 四半期推移

業務区分別の売上高です。スライドグラフのグレー色で示しているその他には、テストやデバッグを含んでいます。ゲームサポートとその他は、2023年9月期から減少傾向が続いています。一方、主要事業であるソーシャルサポートやサイバーセキュリティは、2025年9月期に過去最高売上高を更新しました。
ソーシャルサポートは、フリマやフィンテックが堅調に伸びました。サイバーセキュリティは、2025年9月期上期は苦戦し、前年同期比で減収が続いていましたが、下期にコンサルティングサービスおよびクラウド型WAFが伸びたことで、売上高が前期比約4パーセント増加しました。
配当について

配当についてです。2025年9月期は、配当方針を据え置きにしつつ、株主還元の重要性を考慮して増配しました。今期の業績予想に基づいて配当額を増やしています。
株主優待内容の変更について

先ほどご説明したとおり、株主優待を現物の「QUOカード」から「デジタルギフト」に変更しました。これは、株主のみなさまからの「いろいろなかたちで使えるようにしてほしい」というご要望を受けての対応です。「Amazonギフトカード」や「すかいらーくご優待券」など、さまざまな用途で使えるように変更しました。
以上が2025年9月期の業績説明となります。
業績予想達成に向けた取り組み

2025年9月期の業績を踏まえた、今期2026年9月期の取り組みをお話しします。今期は、売上高を再成長の軌道に乗せることと、収益性の改善を通じて利益を確保することを必達項目としています。
これらの達成に向けて、具体的な施策として次の4つを考えています。1つ目は、業務執行体制および営業体制を刷新します。2つ目は、BPO領域およびサイバーセキュリティ領域で新しい戦略を実施します。3つ目は、労働集約型ビジネスの脱却に向けてAI開発投資を積極的に推進します。4つ目は、事業規模拡大に向けてM&Aを推進します。
執行役員制度について

1つ目については、経営と営業の体制を刷新します。経営面においては、各事業の責任者を明確にし、権限を委譲することで、市場の変化に迅速に対応できる体制を整えました。BPOやテスト、デバッグ、セキュリティの分野において、市場環境の変化は非常に早いです。このため、意思決定のスピードを向上させることで、市場変化に即座に対応していきます。
BPOやテスト分野、AI分野では、AIを活用するための投資を実施しています。また、それぞれの事業が連携し、新規顧客の拡大を図る方針です。さらに、チェンジホールディングスグループのアライアンス担当として、同グループの上席執行役員で、株式会社チェンジの代表取締役社長である野田氏を招へいしています。
チェンジホールディングスとの連携について補足します。チェンジホールディングスと資本業務提携を締結して2年余りが経過しました。最初の1年は、チェンジグループが外部委託しているBPO案件の当社移管に注力しました。2年目は、チェンジグループと連携し、新規顧客を対象に国やエンタープライズ系の案件の獲得に取り組み、2025年9月期第4四半期にはエンタープライズ系案件を成約しました。
しかしながら、当初期待していたスピードや案件規模とは、やや乖離があると感じています。このため、さらなる連携の加速を狙いとして、株式会社チェンジの代表取締役である野田氏を招へいしました。
BPO戦略

BPO事業における今後の展開です。顧客およびサービスを既存と新規に分け、それぞれに対して取り組みを進めていく考えです。今期はスライドの赤色で囲んだ部分に、確実に取り組んでいきます。
既存のお客さまに対して既存のサービスを提供する分野では、より正確でスピード感のあるサービスを提供できる体制を整えます。具体的には、カスタマーサポートや監視業務のAI化をさらに加速させ、提供するサービスの価値を高めていきます。また、広告審査のツールを開発し、業務の効率化を進めます。
既存のお客さまに対する新しいサービスにおいても、AIを活用していきます。グルメサイトや旅行サイトをはじめとした小売りや地方自治体においては、在日外国人の増加やインバウンド需要に関連したニーズがあると考えています。これらの分野にサービスを展開していく方針です。また、後ほど詳しくお話ししますが、自社業務の効率化のために開発したAIツールを外販することも検討していきたいと考えています。
新規顧客に対して既存のサービスを提供する分野では、特にリスク管理対策に注力します。風評被害や風評調査、炎上防止や炎上後の対策・対応といったサービスを、政党や芸能事務所などに提供していきたいと考えています。この他、DXが遅れているといわれている業界に、当社が開発したAIツールを提供していく方針です。
スライド右下の黄色い部分は、新規顧客に対して新しいサービスを提供します。当社がこれまで約20年間培ってきたノウハウやデータを活用可能な領域でのサービスを検討しています。
具体的には、犯罪防止を目的とした取り組みを考えています。例えば、犯罪予告や最近話題の闇バイトやオンラインカジノといった違法なコンテンツを検知する仕組みやシステムの構築などを想定しています。その他、当社の監視スタッフを活用して、防災や安全を常時監視する仕組みやシステムの提供も模索していきたいと考えています。これについては、河川の氾濫や農作物の盗難被害、さらには自然や動物による人への被害を防ぐサービスを想定しています。
BPO戦略

今お話しした自社開発AIツールについてご説明します。収益性改善を目的としたAI開発投資を引き続き進めています。具体的には、AIエージェント型のカスタマーサポートツールの開発に取り組んでおり、今期中に開発が完了する予定です。
このツールは、お客さまからのお問い合わせに対して、AIが瞬時に回答を作成し、担当者やオペレーターが添削して回答する仕組みとなっています。AIが作成した回答と添削内容をAIに学習させることで、AIが作成する回答の精度をさらに向上させることができます。
この他にも、さまざまな監視業務などでも同様のシステム開発を進めています。メール対応の分野だけでなく、自社開発システムを活用した外販を検討していきたいと考えています。
BPO戦略

AIを活用したシステムの開発を進めるにあたっては、当社が20年近く積み重ねてきた強みを活かせると考えています。当社内に蓄積された膨大な情報を活用して、違法コンテンツの調査、犯罪の可能性の検知、防災や安全のサポートを常時監視する仕組み・システムを構築し、提供していきたいと考えています。
膨大なデータのサービス化については、AIを活用して日本の文化やネットスラングに対応した高度な監視システムを構築できると考えています。当社が蓄積してきたSNSやプラットフォーム特有の炎上や誹謗中傷、差別的な表現・文脈を学習させることで、日本語特有の曖昧な表現にも対応した、誤検知の少ないシステムの構築を目指します。
現在、投稿監視や違法画像の検知、カスタマーサポートの分野で、AIを活用したオペレーションを行っています。これをモジュールとして提供できるように、システム化を検討していきたいと思います。
なお、当社が現在提供しているサービスは、お客さまからの依頼に基づくかたちとなっていますが、仕組みの提供を通じてサブスクリプション型の安定的な収益源とすることを目指したいと考えています。
サイバーセキュリティ戦略

もう1つの成長エンジンであるサイバーセキュリティ分野についてご説明します。サイバーセキュリティは、2025年9月期上期に非常に苦戦しました。安価なツールが世の中に出回り、当社が提供しているセキュリティ人材を使ったサービスとの競争が激化したためです。
セキュリティエンジニアを活用した脆弱性診断の分野では、安価なツールに流れる傾向があり、2025年9月期は苦戦を強いられました。しかしながら、下期にはお客さまのニーズに合った価格やサービス内容を提案し、第4四半期から回復基調に転じました。現在も力強く回復しています。
サイバーセキュリティに対する社会の認識は非常に高まっていますが、市場の裾野の拡大に対し、まだ十分に対応しきれていないと認識しています。特に、これまで対策を講じていなかった企業に対して、何百万円もかかる脆弱性診断やWAFの導入を提案することは、ややハードルが高いと感じています。
まずは取り組みやすいセキュリティ教育をドアノックツールとして活用し、サイバーセキュリティの重要性や対策への理解の深化を支援します。その上で、脆弱性診断やWAF、コンサルティングといったサービスの販売拡大を目指していきたいと考えています。
サイバーセキュリティ戦略

今後の成長についてです。既存事業の拡大を進める一方で、サイバーセキュリティ分野においてまだカバーし切れていない分野については、M&Aを活用した新たな事業の展開を考えています。
M&A戦略

M&A戦略についてです。まずは、同業他社を買収することでスケールメリットを期待しています。BPOについては、現在当社が積極的に活用しているAIシステムを、M&A先企業にも実装していくことを想定しています。具体的には、AI活用への投資余力がない企業や、AIの活用が進んでいない企業を買収し、当社が開発したAIシステムをその企業に実装することで、収益性を改善させていく方針です。
この他、アウトバウンドなど、当社が現在提供できていないサービスを展開している企業をM&Aすることで、お互いの強みを活かし、双方にメリットのあるかたちで成長を続けられるパートナーを探し、M&Aを推進していきたいと考えています。具体的には、サイバーセキュリティ分野での新規事業創出を想定しています。
さらに、オペレーションの効率化やAIを活用した自社システムの開発という観点から、AI開発を行っている企業もM&Aの対象としています。当社グループの技術力向上および競争力強化につなげていきたいと考えています。
なお、2025年9月期にM&Aに関する専門部隊を立ち上げています。これまでは仲介会社や金融機関から紹介いただいた案件を個別に判断する体制でしたが、自らソーシング活動を行い、対象会社に直接声を掛ける活動を積極的に始めています。この結果、検討案件数は立ち上げ前と比べて2桁、つまり10倍以上に増加しています。今期は成約を目指したいと考えています。
これまでのご説明をまとめると、2026年9月期の取り組みとして4つ挙げられます。1つ目は、既存顧客への新規サービスの提供により、売上高を伸ばしていきます。
2つ目は、AIを実装した付加価値の高いサービスや新規サービス、新規事業の開発にもリソースを投入していきます。
3つ目は、収益性の改善です。短期的には売上の減少に伴い労務費の調整を行いますが、最終的にはAIを現場のオペレーションに実装し、効率化を図ることで収益性を向上させたいと考えています。
4つ目は、2025年9月期第4四半期から成長軌道にのっているサイバーセキュリティ分野を伸ばしていくことに注力します。
総括

最後に総括です。未解決の社会課題を解決するAI活用サービスを創出し、AIを積極的に活用することで、労働集約型ビジネスからの脱却を目指します。
2026年9月期の取り組みの方向性としては、3つあります。1つ目は、収益性の改善です。これは当社の内部的な取り組みになりますが、本部と現場の収益性をともに改善していきます。当社は労務費が非常に高い状態です。これは業態柄、現時点ではやむを得ないことではあるのですが、その一方で数パーセントの改善を図ることで利益が増加する収益構造になっています。そのため、AIへの投資とその活用を通じて収益性をさらに向上させていきたいと考えています。
2つ目は、競争力強化です。お客さまに提供するサービスにAIを実装することで、正確かつ迅速な高付加価値なサービスを提供し、他社が追随できない競争力をつけていきたいと考えています。
3つ目は、AIを活用した新サービスの提供や新規事業の創出です。当社サービスにより、お客さまの労働生産性の大幅な向上を目指しています。
2026年9月期は、労働集約型ビジネスからAIを活用したBPO企業へと変革を遂げる転換点となる期にしたいと考えています。今期の売上高を再び成長軌道に乗せ、収益性を回復するとともに、AI人材とAI開発に積極的に投資を行い、継続的に成長できる仕組みやシステムを構築していきます。
これにより、単なるアウトソーシングの事業者ではなく、お客さまのビジネスの安全と成長をAIの力で解決するパートナーになることを目指します。当社のサービスを通じて、人手不足やコスト高といった社会的な課題を解決し、企業価値を向上させていきたいと考えています。引き続き、みなさまのご支援を賜れればと思います。
私からの説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。
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