目次
北野泰男氏(以下、北野):代表取締役社長の北野です。本日はご多忙の中、決算説明会にご参加いただき誠にありがとうございます。
それでは、決算内容について目次に沿ってご説明します。
上期業績サマリーと下期に向けて
エグゼクティブサマリーです。
グループ連結業績
グループ連結業績です。売上収益は、前期比102パーセントの125億8,600万円と堅調に推移しました。営業利益は前期比56.1パーセントの7億2,300万円、当期利益は前期比49.4パーセントの4億1,700万円と、前期比で減益となりました。
減益の主な要因については、前期の特殊要因によるものが大きく、次いで一時的な投資負担や天候要因の影響で、期初計画に対してやや出遅れています。
国内の価格改定を2ヶ月前倒ししたことにより収益の底上げを図るとともに、「ツキイチ割引キャンペーン」の対象を65歳以上から全年齢に拡大することで、お客さまの来店頻度を高め、売上収益の拡大を図ります。さらに、計画どおり新規出店を進めることで、通期の目標達成は可能と考えています。
セグメント情報(国内・海外事業の利益)
セグメントごとの上期の業績です。
【国内】営業利益の増減内訳
国内事業における営業利益の前期実績と今期実績の差異要因についてです。前期は、コロナ禍が明けてお客さまのご利用が急回復する中、疲労等の理由で退職者が増え、深刻な人財不足に陥りました。
この状況を打開すべく、2023年4月に国内のサービス価格を1,200円から1,350円に改定しました。顧客の大きな離脱がなかったことや人財不足による人件費の低下、さらに価格改定の主目的であるスタイリストの待遇改善を2023年10月から実施したことにより、収入増と支出増のタイムラグが発生しました。
前々期第4四半期及び前期第1四半期に、一時的に利益が拡大したことが減益の最大の要因となります。
また、コロナ禍から3年間は新規出店を抑制し、人財不足への対応策として店舗の統廃合を進めたことから、既存店の絶対数が前期に比べて大幅に減少しました。この影響を受け、前期実績と今期計画の差異は2億8,800万円発生しています。
次に、今期計画と今期実績の差異要因についてご説明します。
1つ目の要因は、第1四半期の天候要因と経験者採用の計画未達、そして12月の繁忙期におけるインフルエンザの流行による一時的な人財不足により、売上収益が計画比98.9パーセントと未達になったことが挙げられます。
2つ目の要因として、費用面で、新券売機の早期導入により費用が増加したこと、旧券売機の破棄費用が計画より超過したこと、オペレーションの改善目的で全店導入に踏み切った防犯カメラの設置費用が増えたことが挙げられます。
これらの要因により、営業利益は7億1,500万円となり、計画比で2億2,300万円の未達となりました。
【国内】売上収益
スライドは、国内事業の売上収益の状況について、前年実績及び今期計画、そして今期実績のそれぞれの数値を棒グラフ、計画達成率を折れ線グラフで表したものです。
【国内】採用・退職の状況(計画比)
国内事業の人財状況についてです。
スライド左側の棒グラフは、新規採用した人財の内訳について、2023年6月期の上期から今期2025年6月期の上期までの実績を表したものです。
当社の最大の強みであり最重要の取り組みである育成人財の採用については、引き続き好調を維持しており、前期比・計画比ともに上回る結果となっています。
一方、経験者採用については、価格改定による待遇改善を大きく打ち出した前期と比較すると、そのインパクトは減少しています。また、競合他社も当社の水準に追随した給与水準の引き上げを行い、上期においては応募者数が減少し、前期比・計画比ともに下回る結果となりました。
スライド右側のグラフは退職者数と退職率の推移を表したものです。
前期に待遇改善や営業時間短縮による負担軽減の施策を行いました。前期比・計画比ともに退職率の水準は下回り、一定の効果が表れてきていると考えています。
【国内】人財増加計画と実績(店舗人財)
店舗の稼働人財状況について、さらに詳しくご説明します。
採用①の経験者は、カット経験があることから、短い方で1週間、長い方で2ヶ月程度の研修で店舗に配属されます。そのため、店舗の席稼働率向上に比較的短期間で寄与しやすい人財となります。
一方、採用②の未経験者は、ヘアカット経験がない方や長期のブランクがある方です。社内育成機関であるロジスカットスクールに所属し、最短6ヶ月の研修が必要です。そのため、店舗稼働率の向上への寄与は、実際には期末もしくは翌期に稼働する人財となります。
なお、③の育成人財の店舗配属は計画を10名ほど下回っていますが、これは早期離職回避の施策として、今期より配属準備期間として2ヶ月程度所属変更時期を延ばしたことによるものです。実際には研修店舗で勤務していることから、席稼働率の低減につながるものではありません。
また、今期は体力や家族の介護、そして育児などを理由に働く時間の短縮を希望する社員が31名、育児や介護を終えて働く時間を延ばすことを希望する社員が8名、差し引きして正社員数はマイナス23名となっています。
今後の見通しとして、2024年12月末時点で育成中の人財は72名と過去最多となっています。当該人財が店舗に配属される今期第4四半期から来期第1四半期には、席稼働率のさらなる向上に寄与し、売上収益の底上げにつながると予想しています。
【海外】営業利益の増減内訳(前期比・計画比)
海外事業における営業利益の増減内訳です。
まず、営業利益の前期実績と今期計画の差異要因についてです。今期は新たに進出したカナダとベトナムの会社設立費用や、それぞれの国での1号店のオープンに向けた人財育成費用、そして立ち上げ時の初期的な赤字期間となることから、前期実績と比較しマイナス4,000万円の計画となっています。
次に、今期計画と今期実績の差異要因についてです。計画に対し実績はマイナス1,500万円となりました。
主な要因として、既存海外事業で最も規模の大きい香港事業の回復の遅れが挙げられます。香港市民の深圳での北上消費が定着し、当社が入居している香港国内の商業施設の集客力が予想を上回らず、特に平日の営業が苦戦したことから、売上収益は未達となりました。
また、好調を維持している台湾事業においても、デベロッパー都合による出店時期の遅れなどにより、売上収益の計画と実績にずれが生じました。これらの要因により、海外事業の営業利益は800万円となっています。
海外事業は引き続き新規進出国への投資を継続する一方で、下期に向けた施策を確実に実行に移し、通期計画の達成を目指していきます。
【海外】既存主要国の状況(香港)
香港事業について詳細にご説明します。
香港事業は、香港国内の消費低迷の影響を受け、売上収益は苦戦を強いられています。前期比で99.6パーセント、計画比においても出店計画の遅れにより96.4パーセントの実績となりました。
前期から延期していた価格改定は2025年1月に再設定し、1店舗あたりの配属人員を前期比で10パーセント増加し、機会ロス削減などのオペレーション改善に努めた結果、旧正月前の繁忙期には確実にその効果が表れてきています。
また、付加価値向上を目指した新店舗デザインのリニューアルや新アプリの開発にも注力しています。価格改定への準備に万全を期すことで、下期における売上収益、営業利益の回復を図っていきます。
【海外】既存主要国の状況(台湾)
台湾事業について詳細にご説明します。
台湾事業は順調に出店を重ね、35店舗となりました。売上収益は前期比109.5パーセントと好調に推移しています。一方、施設側の都合による出店時期の遅れや、計画外の店舗移転が発生し、2店舗で46日間の休業を余儀なくされた影響から、計画比で97.4パーセントの実績となりました。
下期には、出遅れていた1店舗を含め3店舗の出店を予定しており、うち2店舗は2024年5月から台北地下鉄公団駅構内プロジェクトとして取り組み始めた物件となる予定です。
人財採用については、海外事業の中では最も好調に推移しています。今後、台中、台南、高雄へ店舗網を広げていく予定です。
【海外】既存主要国の状況(シンガポール)
シンガポール事業について詳細にご説明します。
2022年10月に価格改定を実施して以降、失客が続いていましたが、ほぼ下げ止まり、第2四半期においては回復の兆しが見えてきています。
また、営業利益については、前期は4,110万円の営業損失でしたが、店舗の統廃合及び人財の適正配置などを行った結果、営業損失は1,570万円まで縮小しています。
下期はプロモーション活動に注力することで、さらなる売上収益の回復に努めます。一層の経費削減により通期の黒字化の達成を目指していきます。
【国内】売上収益向上
ここからは下期のアクションプランについてご説明します。まず、日本国内の価格改定と新たに拡大したキャンペーンについてです。
当社は、2025年2月1日に日本国内における全ブランドの価格改定を実施しました。
当初、2025年4月の改定を計画していましたが、最優先課題であった新券売機の導入が計画より早く終わったことから、2ヶ月前倒しでの実施を決定しました。
加えて、従来65歳以上のお客さまを対象としていた「ツキイチ割引キャンペーン」については、全年齢層へと拡大しました。本キャンペーンは、前回のご利用から翌月末までに再来店されたお客さまにカット料金100円割引を適用します。リピート率の向上とカットサイクルの短縮化を促進することで、客数の増加と売上収益の向上を目指します。
この一連の施策は、店舗オペレーションの効率化と顧客満足度の向上を両立させ、持続的な成長を実現するための重要な戦略の一環として進めていきます。
今後も、デジタル技術を活用した業務改善や新たな顧客層の開拓に取り組み、企業価値の向上に努めていきます。
【国内】今後の人財見通し
下期の店舗人財についてです。
当社は持続的な成長の実現に向け、人財育成と採用戦略の強化に取り組んでいます。2024年度上期に研修期間中の育成人財のうち約3分の2が、下期より店舗に正式に配属される予定です。
これにより、今後計画している新規出店を含めた人財配置に目途が立ちつつあります。また、既存店舗のパフォーマンス向上を図るため、経験者採用の強化にも注力します。
具体的には、リクルート媒体の見直しや、より明確なターゲティングによる募集内容への変更を進め、優秀な人材の確保を推進していきます。
さらに、今期より育成人財のフォローアップ体制を強化し、働きやすい環境作りを一層充実させることで、退職率のさらなる低減を目指していきます。
この変更は、足元1月においては効果が出始めており、応募者数はコロナ禍後で最大となっています。
【国内】短時間営業店舗の開発
当社の新たな施策です。当社においてスタイリストとは、企業価値の源泉であり、最も重要な存在です。そのため、多様なスタイリストが長く働き続けられる環境作りに注力してきました。15年前に定年制度を撤廃し、生涯現役で活躍できる環境を整えました。
また、指名制度を導入していないため、介護や育児などのライフイベントに合わせて柔軟に働ける環境が提供でき、女性スタイリストの増加も進んでいます。
さらに、短時間勤務や価値観の変化に対応するため、現場の意見を吸い上げた短時間営業店舗の開発をスタートさせました。第1弾として、2025年1月に「QB HOUSE」清瀬駅北口店をオープンさせました。
平日の営業時間は夕方5時までに短縮したことにより、フルタイム勤務が難しいスタイリストの方でも活躍しやすい環境となります。
今後も多様なライフステージに応じた柔軟な働き方を支援し、すべてのスタイリストが安心して働ける環境作りを進めていきます。
【国内】今後の出店見通し
下期における国内の出店見通しについてです。
第2四半期までの実績は、新規出店は6店舗、閉店は計画どおり3店舗実施しました。下期においては、新規出店は22店舗、閉店は5店舗計画しており、年間累計で20店舗の純増を見込んでいます。
現在、一部の大型商業施設において工事の遅延が発生しており、出店時期に変動が生じる可能性があります。新たな開発案件の積極的な推進を行い、通期計画の達成に向けて全力で開発を進めていきます。
【国内】新規出店の強化による成長基盤の構築
スライドのグラフは、国内事業における店舗の成長基盤作りを表したものです。
コロナ禍以前は、開業3年未満の新規店舗の比率が全体の10パーセントを超えていましたが、コロナ禍で出店を抑制した影響により、直近では4パーセントまで低減していました。
その結果、成長を牽引する新規店舗数が減少し、今後の事業成長に向けた1つの課題となっています。この期間において、当社は単に新規出店を抑えるだけでなく、未経験者を含む人財育成の基盤整備に注力し、将来の出店拡大に備えていました。
具体的には、未経験者向けの教育プログラムの拡充や、既存スタッフのスキル向上による店舗運営の安定化、退職率の抑制など、さまざまな施策を講じてきました。その結果、一定のレベルまで人財確保ができるようになったことから、2025年6月期下期より新規出店を本格的に加速します。
中期経営計画の最終年度にあたる2029年6月期に開業3年未満の店舗比率を13パーセントまで引き上げることを目標に、新規出店と人財確保のバランスを図りながら成長投資を加速していきます。
【海外】売上収益向上
海外事業における下期施策についてご説明します。当社は海外事業における成長戦略の一環として、価格改定と顧客体験価値向上の施策を推進しています。
香港では、2025年1月よりサービス価格を70香港ドルから80香港ドルへ14.2パーセントの値上げを計画どおり実施しました。
これは、香港事業において5年ぶりの価格改定となります。価格改定に伴い、顧客体験価値の向上を目的としたデジタル施策を強化しています。具体的には、日本でも実績のある待ち時間情報の提供サービスを開始し、さらにはアプリを通じた事前チケット購入機能を実装することで店舗外からの順番待ちが可能となりました。
これらの施策により、利便性の向上を通じて顧客満足度を高め、リピート率向上及び新規顧客の増加を促進していきます。
米国事業についても、2025年1月より基本サービス価格を30ドルから35ドルとする、16.7パーセントの値上げを実施しました。
これは当初の計画には含まれていませんでしたが、物価高騰の影響を踏まえた適正価格への見直しの一環として決定しました。なお、前回2023年1月の価格改定では、来店客数の大幅な減少はなく、価格改定の影響は限定的であることが確認されています。
このように、香港・米国事業ともに、価格改定を単なる値上げではなく、ターゲット層に向けたプロモーションの強化、付加価値向上とセットで実施することで、顧客満足度向上と収益性向上の両立を目指していきます。
【海外】今後の出店見通し
海外事業の出店見通しについてです。海外事業の展開を、今後の事業成長に欠かすことのできない重要な基盤と位置付け、事業拡大を積極的に推進していきます。
上期においては、シンガポール、香港、米国、台湾の各市場で1店舗ずつ、計4店舗の新規出店を実施し、さらなる市場浸透を図ってきました。また、競争力を高めるため、3店舗の移転を実施し、より優れた立地への事業展開を進めています。
下期においては、4店舗の新規出店を計画しており、すでに3店舗については出店が確定しています。残る1店舗の開発についても注力し、計画達成に向けて尽力していきます。
【海外】新規国の出店及び進捗状況
新規国の出店及び進捗状況についてご説明します。まず、カナダ事業の進捗については、2024年8月にトロントで1号店を開業しました。当初、開発許可の取得や店舗工事の遅れにより、予定より3ヶ月遅れてのオープンとなりましたが、SNSを活用したプロモーションが功を奏し、来店客数は順調に伸長しています。
これを受けて、すでにトロントのオフィス街の地下に2号店の契約を締結し、2025年5月のオープンを予定しています。今後はトロント市内でのドミナント戦略を優先し、ブランド認知を強化しながら、カナダ国内の他都市への展開も視野に入れて調査を進めていきます。
ベトナム事業についてです。2025年1月にホーチミンのイオンモール・タンフーセラドン店内に1号店を開業しました。ベトナム市場においては、市場環境に適した価格設定の検証、ターゲット顧客層のニーズ分析、多店舗展開に向けた人財育成体制の整備といった戦略の精度を高めながら、早期の事業拡大を目指していきます。
マレーシア市場についてです。マレーシアは2004年のFC事業撤退以来、約20年ぶりの再進出となる重要な市場です。まずはシンガポールに隣接するジョホールバルにおいて、2025年4月のオープンを目指し具体的な準備を進行中です。その後、首都クアラルンプールでの展開を計画し、事業拡大を目指していきます。
IT・DX化に向けた進捗状況
IT・DX化に向けた進捗状況についてご説明します。当社は、中期経営計画の重要戦略として、IT・DX化の推進による顧客体験価値の向上と企業価値の向上を最重要の取り組みとして定めています。
現在、国内外においてデジタル技術を活用した新たな顧客サービスの開発が順調に進んでいます。香港においては、待ち時間情報のリアルタイム提供や、事前チケット購入による店舗外からの順番待ちを可能とする機能が実装され、顧客の待ち時間によるストレス軽減と来店促進につながる新たなサービスをスタートしています。
一方、日本国内におけるDX化の進捗状況については、新アプリ開発のプロジェクトを昨年10月に立ち上げ、計画どおり開発が進んでいます。
これまでに、機能要件の定義や画面デザインの作成、モックアップの開発を進めてきており、今後は開発フェーズに入り、ユーザーテストへ移行していきます。早ければ2025年9月には小規模エリアでの試験的な導入を行い、さまざまなフィードバックを踏まえた最適化を経て、2026年初頭に首都圏での正式リリースを目指して準備を進めていきます。
当社のDX戦略は、単なる業務効率化にとどまらず、顧客利便性の向上を通じてブランド価値向上と収益性を高めることを目的としています。今後も、IT・DXを積極的に推進し、業界のリーディングカンパニーとして、さらなる進化を目指していきます。
株主優待制度の新設
株主優待制度の導入についてご説明します。株主のみなさまからは、かねてより株主優待の導入を期待されるご要望を多くいただいていました。日頃のご支援への感謝をお伝えするとともに、当社事業へのご理解をより一層深めていただく機会を設けたいと常々考えていました。
そこで、QBファン株主として中長期的に株式を保有していただける株主のみなさまに対し、保有株式数に応じて国内の「QB HOUSE」でご利用いただける無料ヘアカット券を付与する株主優待制度を新設することとしました。
また、次年度からは本年度の付与基準に加えて、保有期間に応じて追加で付与することも予定しています。今後も長期的な成長を見据えた戦略的な投資を実施しつつ、安定した収益成長を目指していきます。引き続きご支援のほど、どうぞよろしくお願いします。
以上が2025年6月期第2四半期の実績の説明となります。ご清聴ありがとうございました。
質疑応答:上期の計画未達の要因について
質問者:スライド8ページの会社計画との比較について、第1四半期は天候要因とご説明いただきましたが、第2四半期も総じて、10月、11月、12月といずれも少しずつ計画対比で弱かった印象です。12月は特にインフルエンザの流行と記載されていますが、このような外部環境の影響が大きいのでしょうか? それとも、12月のオープンについては機会損失もかなり発生していたのでしょうか?
採用の部分で、経験者採用が遅れていたなどの内的要因を挙げられていましたが、内的要因と外的要因のどちらが大きかったと考えていますか?
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