本日のテーマ概要
宗幸一郎氏(以下、宗):本日のテーマ概要は、大きく3つあります。1つ目が当社ダスキンについて、2つ目が中期経営方針2022について、3つ目が株主還元についてというコンテンツで進めます。
ダスキンの原点
宗:まず、私たちの原点についてお話しします。スライドの左下にある写真の人物は、創業者の鈴木清一です。
どの会社もそうだと思いますが、創業者が会社を作る際には、さまざまな想いや願いを込めて作っていると思います。鈴木清一は、「人に、社会に、『喜びのタネまき』を」など、いろいろな言葉を私たちに残しました。その中には、企業目的もあります。企業目的は4つあり、1つ目は「『道と経済の合一』を目指します。」です。「『道』とは何か?」、これは人によって解釈が異なると思いますが、例えば「人の道」など、世の中における正しいことを指します。
また、「経済」は商いそのものも指しています。世の中の仕組みが大きくつながっていくことで会社が発展し、みなさまの経済にも活きてきますように、ということも表しています。そのような強い想いを込めて会社を設立しています。
2つ目の「人を愛し、人を育てます」、3つ目の「責任をもって、”めい・あい・へるぷ・ゆう?”と言えるように研鑽しつづけます。」、そして最後に「『喜びのタネまき』をいたします。」、この4つを企業目的と掲げています。
ダスキンのフランチャイズシステム
宗:私たちの会社は、モップやマットなどをレンタルしているお掃除の会社であるということと、フランチャイズビジネスを展開していることが大きな特徴だと思っています。
スライドには、左側に本部、中央に加盟店、右側にお客様とあります。本部は加盟店とフランチャイズ契約を結ぶことによって、加盟店に対して商標の供与やノウハウ、システムの提供をしたり、商品や資機材、原材料などを提供しています。
加盟店は、自分たちでお金を出して店舗を建て、人を雇って会社を作り、お客さまにさまざまな商品やサービスを提供しています。
スライド下部に2つの数字が並んでいますが、フランチャイズ展開の特徴がこちらの数字に現れていますので、ご説明します。
まず、右側の青い部分はお客様売上高で、2023年3月期は4,117億円となっています。こちらは私たちのお客さまから商品やサービスに対する対価として支払っていただいたものですので、市場規模を見る時は、こちらの数字を見てもらうと良いと思っています。
一方で、実際の私たちの売上は、フランチャイズ契約に基づく加盟店への売上が主になってきます。左側の1,704億円がダスキン本部の売上となります。このような2つの数字があるということをご理解いただければと思います。
増井麻里子氏(以下、増井):いつもおうかがいしていることで恐縮ですが、直営店と子会社の店舗はどのくらいあるのでしょうか?
宗:今は6,742拠点ありますが、昨年はこのうち直営店が145店、子会社は415店でしたので、ほとんどがフランチャイズということになります。フランチャイズの会社として60年ほど経過しているということもあり、フランチャイズの加盟店が圧倒的に多いことをご理解いただければと思います。
セグメント別売上構成
宗:1,704億円の売上があるとお話ししましたが、売上の内容についてご説明します。
スライドに構成比が記載されていますが、だいたい3分の2が訪販グループ、残りがフードグループとその他という割合になっています。
約63パーセントを占める訪販グループの中で一番大きい売上高を占めているのはクリーンサービスです。マットやモップのレンタルサービスをクリーンサービス事業と呼んでおり、一番大きな割合を占めています。加えて、ケアサービス、シニアケアの事業も含まれています。
フードグループは、ほぼ「ミスタードーナツ事業」が占めています。
その他には、ダスキンヘルスケアという子会社や、海外事業が入っています。
訪販グループ主な事業内容
宗:訪販グループの主な事業内容です。スライド左上は、クリーンサービス事業です。モップやマットの交換をしているイメージの写真で、レンタルサービスの拠点が1,838拠点あります。こちらが私たちの事業の一番大きなところです。クリーンサービス事業には家庭用と事業所用がありますが、これについては後ほどご説明します。
スライド下段にケアサービスというものがありますが、これは役務提供サービスです。私たちが直接出向いて何かサービスを提供するものをそのように呼んでおり、メニューは、大きく5つあります。
左端の「サービスマスター」はエアコンのお掃除といったプロの掃除、その隣の「メリーメイド」は家事代行です。「ターミニックス」というのは害虫獣の駆除や予防を行い、「トータルグリーン」は庭木の手入れをします。最後に、住まいのピンポイントの補修をする「ホームリペア」の5つの事業を展開しています。私たちが出向いてサービスを行い、その対価として料金を支払っていただきます。
スライド右上にはシニアケアと記載されています。2つの事業があり、1つは「ダスキンヘルスレント」です。
介護ベッドや車椅子などは、急に必要になっても買うとなると負担が大きいです。また、いつまで使うかわからないため、借りたいというニーズがあります。
コロナ禍前からニーズは増えてきていたのですが、少子高齢化の流れにより、ご家庭で対応されるケースも増えている中で、ダスキンヘルスレントの売上も伸びています。
もう1つは、「ダスキンライフケア」というものがあります。こちらは介護保険の適用外のサービスになります。介護保険の適用外のサービスを展開していこうとしています。以上が訪販グループの主な内容です。
増井:シニアケアの拠点数が276拠点とありますが、こちらもほとんどフランチャイズなのでしょうか?
宗:フランチャイズと直営店がありますが、両方の事業ともフランチャイズがメインです。
増井:そうすると、消毒したり、器具を入れ替えたりする際は、御社のセンターのような場所へ運んで作業するのでしょうか?
宗:例えば「ダスキンヘルスレント」で介護ベッドをレンタルした場合は、私たちの一定の厳しい基準がありますので、それに従って基本的にはお店できちんとチェックして、もう一度しっかり組み立ててから次の方にレンタルします。
当社の場合、これが大事な部分だと思っています。見た目ではわからないところに重さがかかるため、器具の痛みなどはどうしてもその部分に多くなります。そこをきっちりとメンテナンスしないと、外見は大丈夫そうに見えてもけっこうガタガタしてしまいますし、それは消費者の不安や不満に直接つながってしまいます。
そのため、厳しい基準をきちんと設けて、しっかりとメンテナンスしたものをレンタルすることがポリシーです。それを全国展開できるような仕組みをしっかり構築した上で、加盟店を展開しているため、おかげさまで少しずつ売上が増えてきています。
クリーンサービス事業(モップ・マット商品)
宗:クリーンサービス事業についてご説明します。先ほどレンタルとお伝えしましたが、このレンタルの仕組みが少しわかりにくいため、スライドで図に示しています。
左側の総合工場は、全国に45ヶ所あり、そこからモップやマットを加盟店に配送しています。
全国に1,838拠点があり、そこから訪問販売員がお客さまに届けて、レンタルをしています。当然ながら届けた物は返してもらわなければなりません。
家庭用の場合ですと、415万世帯に対して4週間に1度のレンタルを行っています。4週間経つとまたダスキンの訪問販売員が新しいものを持ってきて、古い(汚れた)ものを回収します。古い(汚れた)ものは加盟店に集められ、総合工場に戻されます。
汚れたモップやマットを洗って、吸着剤加工をして、キレイになったものをレンタルしていく仕組みです。
ちなみに、事業所では103万事業所にレンタルされているのですが、こちらは2週間に1回の交換となります。
なぜ2週間かというと、例えばマットの場合、家庭と事業所ではその上を通る(マットを踏む)回数が違います。どうしても汚れるのが早いため、2週間に1回のレンタルとなります。創業時から、フランチャイズとレンタルの仕組みを続けていることが大きな特徴です。
創業当初から使い捨てではなく、くり返し使うビジネスモデルとフランチャイズの仕組みで大きくなってきたという経緯があります。
競争優位性は、フランチャイズの大きなメリットとして、地域のことをよく知っている方々が地域に密着して、自分たちの商売として一生懸命取り組んでいただいたことが成果につながり、大きく伸びてきたと考えています。
今の訪販グループでは、シナジー効果も出てきています。例えば、クリーンサービスをご利用のお客さまに「エアコンが汚れてきたのですが、ダスキンにサービスはありますか?」と聞かれ、「ありますよ」と答えられるなど、このようなかたちのクロスセリングも可能です。
ブランドを保つということは、訪問販売をする人たちの教育が非常に大事になります。フランチャイズだからサービスの質が下がって良いかというと、絶対にそのようなことはありません。フランチャイズであるが故に、教育には当初から力を入れています。
ブランドを作っていくということは、やはり最初も最後も人が肝心です。先人の方々が作ったしっかりとしたカリキュラムを私たちも踏襲し、改良していきながら受け継いでいます。
フードグループの事業内容
宗:フードグループには、「ミスタードーナツ」と「かつアンドかつ」があります。「ミスタードーナツ」はご存じの方も多いと思います。ちょうど1年ぐらい前の数字ですが、スライドには998店舗と記載しています。足元では1,000店を超えてきていますが、「ミスタードーナツ」の概要については後ほど少しご説明します。
「かつアンドかつ」は、近畿地方で直営店のみ運営しています。
飯村美樹氏(以下、飯村):「かつアンドかつ」を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
宗:フードグループは現在2つの事業しかないのですが、「かつアンドかつ」を始めたのが1999年ごろだったと思います。私たちもいろいろなフードビジネスにチャレンジしては、うまくいったり、いかなかったりしていました。その頃に揚げ物の分野にチャレンジしていこうということで、取り組んできました。「ミスタードーナツ」も油で揚げるという意味では同じです。
飯村:確かにそうですね。
宗:仮に将来、加盟店オーナーが「ミスタードーナツ」の隣に「かつアンドかつ」を建てたとしても、それによって「ミスタードーナツ」のお客さまが減るということはありません。そのようなかたちも含めて第2のフードの柱を育てていきたいという願いは常にあります。
「かつアンドかつ」は子会社化も完了してきちんと運営できる状態になっています。近畿のみ、直営店のみとは言いながらも、着実に足固めをしているような状況です。大阪のほうへお越しの際には、ご利用いただければと思います。
飯村:ぜひ食べてみたいと思うのですが、現在は近畿のみということで、今後出店を増やして、東京のほうにも展開されるのでしょうか?
宗:最初の頃はいろいろ手広く出店もしたのですが、やはりなかなか難しい面もあって、運営体制を見直した結果、近畿のみ直営店のみで展開するということになりました。出店するとなると形態にもよるのですが、それなりに投資もかかります。
近畿のみ直営のみでノウハウをしっかりと貯めて、ビジネスモデルをしっかり作った上で展開できる事業になった際には、また加盟店展開も含め、地域を広げたいと考えています。
飯村:食に厳しい近畿圏で人気になって、また東京でも事業展開をということですね。
宗:そうですね、そのようなかたちになれば良いと思っています。
ミスタードーナツ事業
宗:「ミスタードーナツ」についてです。スライドは、フランチャイズの仕組みを示した図になっています。左側が株式会社ダスキン、中央が加盟店、右側がお客さまになります。
先ほどのレンタル事業の仕組みとは違い、加盟店がショップを構えて、そのお店を通じてお客さまにドーナツやドリンクなどの商品を提供し、代金を支払っていただきます。したがって、私たちの収入源は原材料の売上とロイヤルティになります。レンタル事業と違って、わかりやすい仕組みになっていると思います。
優位性は、「ミスタードーナツ」は日本に上陸してから50年ほどが経ち、いろいろあったものの、おかげさまで今ではお客さまに大変支持されるブランドに成長しています。
また、特にコロナ禍では、巣ごもり需要が高まる中でテイクアウトへの対応にみなさまから大きな支持をいただいたこともあり、売上や収益の急回復につながることができました。
長期戦略「ONE DUSKIN」の実現に向けて
宗:長期戦略「ONE DUSKIN」についてです。みなさまの会社にも、長期戦略や中期戦略があるように、当社も長期戦略「ONE DUSKIN」があります。
スライド左側の「中期経営方針2015」から始まり、今は中期経営方針の第3フェーズで、いよいよ来年度が最終年度の総仕上げの年になります。
中期経営方針2022
宗:基本方針に基づく3つのテーマは、大きく3つあります。
1つ目は、事業ポートフォリオの変革です。具体的な内容としては、事業環境の変化に対応し、社会課題解決に向けた事業ポートフォリオに変えていかなければなりません。加えて、新しい成長機会への投資もしていきたいと思っています。
2つ目は、経営基盤の構築ということで、企業価値向上のための経営基盤の強化をしていきます。
3つ目は、社会との共生です。それぞれの詳細に関しては、後ほどご説明します。
訪販グループ 既存事業の変革と発展
宗:訪販グループにおける情報と流通の改革についてご説明します。大きく4つのコンテンツがあります。
まず1つ目に、スライド左上にある「洗浄・物流戦略」についてです。RFID(電子タグ)を付けて、スマートファクトリー化による効率化を図ります。こちらについては後ほど詳しくご説明します。
2つ目に、スライド右上の「CX(顧客体験)の戦略」です。今までお客さまとの接点の多くは訪問販売で対面でお話をしてきました。しかし、それ以外でも直接的にお客さまと接点を増やすために、情報発信を行ったり、会員サイトを運用しています。
3つ目は、スライド左下にある「家庭用営業専任組織の構築」です。コロナ禍では、人と会うことが難しくなり、私たちの強みを活かしきれない時期が続きました。私たちは訪問販売の会社ですので、まずは営業力を強化するための一環として営業を専門的に行う組織を作り、もう一度、私たちの良さをお伝えするための取り組みをしています。
4つ目は、スライド右下の「拠点戦略」です。ケアサービスの事業は、エアコン掃除や家事代行といった、私たちが実際にお客さまのところに出向いてサービスを提供するものになります。
ニーズはたくさんあるのですが、ピーク時にはお客さまからの依頼を受けきれない状況になります。このことを解消するためには、拠点数や人材を増やし、サービスをより充実したものにしていく必要があります。
昨今、社会環境が大きく変わったことで、さまざまなニーズが生まれています。私たちが訪問して行っているサービスの中でも、さまざまなことをお客さまから要求されることがあります。対応するためには、拠点をしっかり確保し、ニーズに応えられるようになる必要があると考えおります。
訪販グループ 既存事業の変革と発展
宗:RFID(電子タグ)についてです。みなさまもよく「電子タグ」という言葉を耳にしていると思います。
例えば、大手のアパレル製造小売業の企業のブランドでは、セルフレジの右側にあるトレイに商品を置くとICタグが自動的に商品の情報を読み取ることができるため、すぐに会計をすることができます。
当社はこれからRFID(電子タグ)を導入するのですが、「ダスキンさん、やっていることが遅くないですか?」と見えてしまうかもしれません。
実は、私たちの商品にRFID(電子タグ)を入れるには、扱う商品がモップやマットになりますので、何回も洗ったり高温の乾燥機に入れることになります。それに数十回耐えられる設計にする必要がありました。
さらに、スライドの左側のAfterの図にあるように、マットやモップを一括読み取り機の中に入れていくのですが、大きなカゴに入れたものでもきちんと読み取ることができなければならないため、技術的にさまざまな課題がありました。課題を検証した結果、解決することができました。
それにより、今まで検品にかかっていた大変な作業が電子化されたことで、その分のコストを下げることが可能となります。また、モップやマット、特にマットに関しては重たいため、電子化することによって重労働作業の軽減にもつながりました。今後の私たちの担い手のことを考えると、そのあたりも課題になっていたのです。
このRFID(電子タグ)は、導入は投資になるのですが、原価にかかってしまいます。「原価にかかる投資というのはどのようなことだ?」と疑問に思われるかもしれません。
普通の「投資」の考え方として、利益を見込んで何かの設備にお金を出す際は減価償却の対象となります。しかし、RFID(電子タグ)自体は少額のため、加工賃のようにすべてが原価になるため、損益計算書の利益に影響します。
中期経営方針2022の1年目と2年目に集中してRFID(電子タグ)を取り付け、3年目から利益を上げていくことが、訪販グループの大きなポイントになります。
増井:これは、フランチャイズ加盟店のほうにもメリットがあるのですね?
宗:良い質問をありがとうございます。スライド下部の図に「ハンディ型リーダー読取」とあります。
訪問販売員が現場から持って帰ってきたマットやモップはすべて手作業で検品していましたが、RFID(電子タグ)を取り入れることで、カゴに入れると商品情報を瞬時に読み取り把握することができるため、作業時間を大幅に短縮させることができます。このことは、加盟店側にも大きなメリットとなっています。
フードグループ 既存事業の変革と発展
宗:フードグループにおける既存事業の変革と発展についてご説明します。「100円セール廃止」とスライドにもありますが、みなさまは100円セールが廃止された時期を覚えていますでしょうか?
「昔は100円セールをしていたのに、最近はやっていないよね」という声を聞くことがありますが、実は2016年の10月に100円セールを廃止しました。
100円セールを行うことで売上が取れていたという側面はありました。しかし、お客さまがたまたま店を訪れた際に100円セールが行われていて、次に店を訪れた時は定価で販売されているということが本当に良いことなのか、疑問に感じるようになりました。
当時は売上が厳しく苦労した時期でしたが、100円セールという売り方はやめようということになりました。
100円の商品であればいつでも100円にしなければいけないということで、セールで売られていたその当時の商品は、値段をすべて100円にしました。
その代わりに、商品に新しい価値、高付加価値を付けました。その代表例としてスライドにもありますが、「misdo meets」「ミスドゴハン」が挙げられます。利用動機拡大のため、商品に魅力を持たせてお客さまに来ていただく取り組みに変え、戦略の効果で売上が回復してきています。
今年の例をご説明します。スライド左下にある定番ドーナツ周年企画として「ポン・デ・リング」が20周年ということもあり、「白いポン・デ・リング」を販売しました。また、「フレンチクルーラー」が50周年ということで、「生フレンチクルーラー」を発売しました。「白いポン・デ・リング」に関しては非常に人気があり、おかげさまで売上を伸ばすことができました。
スライド中央にある「misdo meets」に関しては、2017年の春から宇治茶専門店の祇󠄀園辻󠄀利さまと共同開発した商品を販売しており、長い間好評をいただいています。このシリーズも改良を重ねて春に販売しています。
スライド右下にある「ミスドゴハン」については、「『ミスドゴハン』って何ですか?」と思うかもしれませんが、「ミスタードーナツでご飯も食べられますよ」というメニューです。
「ミスタードーナツ・ゴハン」を私たちは「ミスドゴハン」と呼んでいます。惣菜系や軽食のようなメニューを用意し、イートイン席で召しあがっていただけます。このように店内で食事をとっていただくきっかけになればということで、こちらを提供しています。
スライド右上の「新業態・新サービスの展開」については、お客さまとの接点を強化するという目的で、郊外のドライブスルー、駅ナカのキッチンレスショップ、ミスドネットオーダー、デリバリーサービス、ピックアップドア等を展開し、戦略を立てながら商品・サービスを提供することを進めています。
増井:1年前にご登壇いただいたときに、「コロナ禍ではこうしたテイクアウトやデリバリーが重要だ」ということで注力されており、このことが売上の伸びにつながったということでしたが、その後も需要はあるのでしょうか?
宗:新型コロナウイルスが流行し始めた時に何が起こったかと言うと、緊急事態宣言が出されて私たちは買い物へ行けなくなりました。ほとんどの店が閉まっているといった状況の中で、「よく見ると『ミスタードーナツ』は開いているじゃないか」ということで、定番商品や新商品を買い、帰宅後に家族のみなさまと食べていただくことができました。
私たちはもともとテイクアウトビジネスで大きく成長した企業ですので、業態転換をする必要もなく、スムーズにビジネスをすることができました。
また、「ケーキほど高価でなく、少しボリュームがあっておやつ代わりになる」というメニュー構成になっていますので、ちょっとした楽しみを家族のみなさまにご提供できるということも需要拡大につながった点だと思います。
コロナ禍が明けると、私たちは「さすがにもう飽きられたかも?」と思う部分もあったのですが、実際はこの流れは止まることなく、ましてやイートインの需要まで回復してきており、おかげさまで売上も伸びています。
飯村:「久々に食べたら、やはりすごくおいしいね」という声がリアルに想像できますね。
宗:そうですね。ドーナツは朝食、昼食、夕食のいずれにも入りません。なくても生活には困らないものだと私たちは思っています。
ドーナツを通じた家族団らんの時間を設けるなど、どちらかといえばライトなかたちで食べていただけますので、今のニーズにはまることができました。たまたま私たちは、そのようなシナジーを持ち合わせていたため、そこを上手く訴求できたことも大きかったと思っています。おかげさまで今も好調を維持できています。
フードグループ 既存事業の変革と発展
宗:出店戦略についてです。足元での店舗数は増えています。
お客さまとの接点に関しては、お店で直接注文をするスタイル以外にも、現在の外食産業では当たり前になりつつあるスマートフォンやネットを使ったさまざまな注文の取り方を用意しています。
私たちもネットオーダーの仕組みを設けました。このことにより、決済があらかじめ済んでいるため、商品を店舗で受け取るだけでよくなりました。
また、デリバリーの導入ということで、出前館さまから始まり、2023年7月からはUber EatsさまやWoltさまとも提携しています。
ミスタードーナツでは、現在20ブランドのキャッシュレス決済が可能です。このようなデジタル技術なども取り入れ、よりみなさまとの接点を増やし、ニーズのあるところへドーナツをしっかりと提供できる仕組みを構築しています。
海外展開(拠点)
宗:海外展開について簡単にご説明します。スライドの地図はアジア圏で、右上が日本、左側に中国大陸、下側にはインドネシアなどの地域が広がっています。それぞれの出店形態と、それぞれの店舗数を記載しています。
細かな説明は割愛しますが、台湾は合弁会社、フィリピンはマスターフランチャイズ契約に基づく出店、上海はダスキンと書いてありますが、こちらは私たちの子会社になります。
スライド左側のカンボジアとマレーシアについては、「ミスタードーナツ」のマークではなく、「ビッグアップル」というマレーシア最大のドーナツチェーンのマークになっています。こちらは私たちがM&Aを行った会社になります。
現在の海外事業は「ミスタードーナツ」と「ビッグアップル」、お掃除関連ではダスキンを、アジア圏を中心として展開しています。
増井:海外事業に関して、売上高の海外事業比率などの目標のようなものは設定されているのでしょうか?
宗:当然、社内での目標数値はありますが、みなさまにお伝えするために外向きで掲示しているものはありません。
コロナ禍では、出店の計画が上手く進まなかったり、需要が落ち込んだりと事業が非常に厳しい状況にありました。今はコロナ禍も明け、人流が回復してニーズが増えてきているため、状況を見極めながら進めていきます。
数字の出し方などについては検討課題だと思っていますが、シンガポールなどに新しく進出する計画などもあります。今の強みをしっかりと活かしながら、アジア圏で店舗を増やしていく戦略です。
新しい成長機会への投資
宗:新しい成長機会への投資としては、まずM&AとR&Dの投資の積極化です。今回の中期経営方針の2年間で実施したM&Aは3つあります。
1つ目がクラシアンとの業務提携、2つ目がJPホールディングスとの業務提携、3つ目がイタリアンレストランをはじめとする健康菜園の子会社化です。
海外戦略については、先ほどもお話ししたシンガポールへの進出と2号店の出店についてスライドに記載しています。
新しい成長機会への投資
宗:子育て支援のリーディングカンパニーであるJPホールディングスの株式を31.70パーセント取得し、業務提携を結んでいます。
私たちには、子育て領域において商品やサービスを広め、生涯にわたって自社製品使っていただきたいという願いがあります。これまでレンタルなどでは、どちらかというとミドルからハイクラスの年齢層向けのサービスが多くなっていました。今後は「子育て領域」でも商品やサービスを使っていただく機会を作るために、このような取り組みを進めています。
新しい成長機会への投資
宗:クラシアンとの業務提携は関西方面でスタートしています。現在、検証店での顧客の相互送客検証なども始まっています。
サステナブルな社会と経営の実現に向けた取り組み
宗:サステナブルへの取り組みについては、私たちの本業にすでにレンタルで循環させる仕組みが入っていますので、今後もこのようなかたちの取り組みを継続していきます。
また、スライド右側に「ダスキン環境目標2030」と掲げているとおり、いろいろな目標値も掲げています。2030年度までに掲げている目標がありますので、取り組みを強化しています。
中期経営方針2022 数値目標(連結)
宗:スライドには中期経営方針の数値目標を掲げています。利益は下がっているように見えると思いますが、これはRFID(電子タグ)への投資が直接的に原価へ反映されることによるものです。昨年は11億円、今年は42億円の投資を予定していたため、計画上はこのような数字になっています。
それらの投資予定分がなくなり、かつ効率化を図ることによって、売上の伸びや粗利益の増加など、諸々を踏まえた結果、これだけの利益を生む計画を立てています。
2024年3月期予想(連結)
宗:スライドの表は2024年3月期の着地予想を項目別にまとめたものです。
株主還元
宗:株主還元については、中期経営方針の3年間は、連結配当性向60パーセント、あるいは自己資本配当率(DOE)2.5パーセントのいずれか高い額で配当を決定します。
なぜこのような基準が入っているかと言いますと、今期は42億円をかけてRFID(電子タグ)を導入しているためです。投資が原価に反映されるため、配当性向を出した場合、配当額が大幅に下がってしまいます。そのため、自己資本配当率(DOE)を入れることで底上げを行い、この期間も継続して持っていただきたいと考えました。
加えて、大事なこととしては「中期経営方針2022」の3年間は総還元性向100パーセント以上を目標に利益還元することです。これは自社株買い等で株主のみなさまに還元することをお示ししているものです。
株主還元
宗:グラフは配当の実績と予想を具体的に示したものです。昨年の配当実績は88円で、今年の予想は98円となっています。利益的には下がっているため、自己資本配当率(DOE)で算出すると78円でしたが、60周年の記念配当として20円足すことによって増配を実現しています。
総還元性向は足元で146.6パーセントとなっています。自己株式取得については、すでに前期と今期で50億円の上限規模の自社株買いを終了しています。
株主還元株主優待
宗:株主優待の内容は、100株以上300株未満の方と300株以上の方で分かれています。300株未満の方についてはご優待券1,000円分、300株以上の方についてはご優待券2,000円分です。こちらはモスバーガーさまでも使えることが大きなポイントになっています。
また、長く保有していただくために、3年以上継続保有している方には、半年ごとにご優待券500円を追加でお渡しします。ぜひ有効的にご活用いただき、お近くのショップで、「ミスタードーナツ」や「モスバーガー」を買っていただければと思います。
以上でご説明を終わります。ありがとうございました。
質疑応答:為替感応度について
増井:「為替感応度を教えてください」というご質問です。
宗:日銀の決定後に円安に振れるなど、なにか為替の動く要素があった場合、日本企業にとって円安がよいのか、円高がよいのかは一概に語れない面があります。
私たちは海外展開をしていますが、基本的には国内の需要が圧倒的に多くなっています。為替という意味において原油を例に挙げると、私たちの工場ではモップやマットを洗うときにボイラーを動かすために原油を使っています。また、モップやマットを作る際にはナイロンなどの糸を使います。この場合は海外のものを持ってきているケースが多くなっています。
原材料を考えると為替的には円安のほうが良いかもしれませんが、為替だけではなく、コスト自体も上がっています。そのため、円高か円安かと為替だけでは一概に言えない面があります。
ただし、為替感応度的に大きく変動する要因があるとすれば、国内や海外の連結子会社としてグループに入っている部分で少し影響があるぐらいです。それ以外のところではあまり影響はありません。今は為替以上に原材料が高くなっていることなどの影響のほうがはるかに大きいと思います。
質疑応答:価格転嫁について
増井:価格転嫁については順調でしょうか?
宗:本日はそのお話ができていませんでしたが、訪販グループのレンタル事業では2022年7月に価格改定を行っています。加えて、役務提供サービスの「サービスマスター」「メリーメイド」などでも今年の4月1日から少し値上げを行うことになっています。「ミスタードーナツ」については、2022年3月と11月、2023年10月にドーナツとドリンクの価格の改定も行っています。
値上げ幅はそれほど大きくありませんが、そのときの状況を見て消費者の方々に理解していただける素地がないと、便乗値上げのように映ってしまい、決してよくないことだと思っています。
あくまでも原材料などの高騰によって収益的に好影響が出てきたものについて、少し負担していただくという意味で、少しずつ値上げをさせていただいた経緯があります。
質疑応答:「ミスタードーナツ」が好調な理由について
飯村:「コロナ禍が明けてもフードが順調だということでした。ファーストフードやコーヒーショップのチェーン店など競争相手が数多くひしめく中で、『ミスタードーナツ』が好調なのはなぜですか? どのような点が消費者を引きつけているのでしょうか?」というご質問です。
宗:私がお答えするのも少し気が引けるところがありますが、今「ミスタードーナツ」がお客さまに支持されている理由があるとすれば、コロナ禍に始まったと思います。
当時を思い出していただければと思うのですが、楽しみが制限されて、旅行には行けず、あれもこれもすることができませんでした。また、コロナ禍での巣ごもり需要だとしても、いつもケーキを買って帰るわけにはいきません。
そのような時に、「よく見るとドーナツがあるよね」と気軽に買うことができ、また、持ち帰るときにもあまり気を使う必要がありません。ちょっと食卓などに置いておいたり、それぞれ好きなものを買って帰ったりすることができます。
また、これは私の私見が多分に入っていますが、男性はどちらかというと定番ドーナツが大好きですよね?
増井:それは私も店内で観察していて感じました。
宗:私も定番ドーナツが大好きです。一方で、女性はどちらかというと「misdo meets」などになります。以前、ゴディバとコラボしたドーナツがありましたが、そちらが食べたくなるわけです。
例えばゴディバとのコラボドーナツだけが売れればよいのかと言うと、そうではありません。一番良いのはメニューミックスで売れることです。来店のきっかけとしては「misdo meets」などをはじめとする限定ものであっても、「misdo meets」だけでなく、定番も合わせて買っていただくのが一番良いわけです。
期間限定のものは原材料が限られていますので、そればかりが売れてしまい他の商品が売れなければショップの負担が大きくなります。ミスタードーナツは、メニューミックスとテイクアウトによって、お客さまの回転ができ、結果的によい循環が築けました。
新しい商品を出す度に「新しいドーナツが出ていたから買ってきたよ」「お兄ちゃんにはポン・デ・リング」というように、限定ドーナツと定番ドーナツをメニューミックスで買って帰る循環ができていると思います。
これはライバルがどうというわけではなく、私たちが持っているシナジーを最大限に活かして、お客さまと向き合ってきた結果、このような環境ができたことが大きかったのではないかと思います。
もう1点、実はコロナ禍でショーケースに扉をつけました。昔のミスタードーナツはオープンスペースの中でドーナツを取る仕組みでしたが、衛生の意識が高まったコロナ禍の初年度に、本部費用で1年間をかけてショップのショーケースに扉をつける投資をしました。その後に巣ごもり需要が来たのです。
世の中に求められているものや変化にきちんと対応し、その時に行ったことが結果的に後から活きたと感じています。
質疑応答:フランチャイズ運営について
増井:「フランチャイズが多いため、品質を一定保つための取り組みが、直営より難しいと思うのですが、どのようにして統率を図っているのでしょうか?」というご質問です。
宗:実は私自身も、昔「ミスタードーナツ」で店長やエリアマネージャーをしていたことがあります。先ほどもお話ししたとおり、技術は人につくものです。それでは、その技術の担保はどうするのかというと、やはりフランチャイズ本部の教育にかかっています。
技術を担保していくためにライセンス制度がありますが、試験に受からなければライセンス更新ができない仕組みになっています。
また、新しい商品が出てきた際にはエリアマネージャーが中心となって、店舗で作り方の指導などもしています。全国できちんと商品を提供するために、さまざまな取り組みを通じた、見えない努力はものすごくたくさんあります。
このようなことを守ることが私たちの誇りや信念であり、大事なことだといろいろなところで伝えていくことで、文化を作ってきています。なかなか目に見えないところですが、手間とお金をかけて仕組みを入れていることが大きいのではないかと思います。
宗氏からのご挨拶
飯村:「お話を聞いていて、久々にダスキンで掃除がしたくなりました」など、たくさんのコメントをいただいています。最後に、視聴者の方々へ一言お願いします。
宗:本日は投資判断という基準でお話しさせていただきましたが、私たちは商品を扱っていますので、株ではなく、商品を買っていただき、ユーザーになっていただくことも非常に大事なことだと思っています。引き続き、いろいろなかたちで応援していただければと思います。本日は本当にありがとうございました。