業績ハイライト

中川祥太氏:株式会社キャスター代表取締役の中川です。よろしくお願いします。それでは2024年8月期第2四半期決算説明を始めます。

はじめに業績ハイライトです。売上高は堅調に推移しました。コストコントロールにより赤字幅も縮小し、増収増益を達成しています。その他各種数字はスライドのとおりです。内訳については以降のページで個別にご説明します。

業績概要

業績概要です。売上高は、上半期終了時点で46.2パーセントの進捗率です。当社の特徴として、前半に契約いただいたお客さまの売上は後半に100パーセント反映され、下半期に向けて伸びる傾向にあるため、計画どおりの進捗となっています。

業績概要(セグメント別)

セグメント別に簡単にご説明します。メインのWaaS事業は順調に推移しました。一方で、その他事業では海外領域が大変苦戦しています。

スライドの数字の内訳については次ページ以降で個別にご説明します。

セグメント別業績概要(WaaS事業)

WaaS事業については、価格改定の影響でARPUの拡大などにより売上が増加しています。特に、年末調整や確定申告に関連した経理・労務領域が堅調に伸びており、領域ごとに成長が加速しています。

また株式上場効果で、昨年10月以降、大手のお客さまからの引き合いが非常に増えている状況です。これらのニーズに応えていけるよう、さらに体制を強化しています。

営業利益に関しては、先ほどお伝えしたように、上半期は顧客を獲得する時期であるため、どのように広告を投下していくか試行錯誤を重ねていましたが、アドフラウドと呼ばれる広告へのスパム行為の影響を強く受け、広告の投下額を多少調整しています。その結果、広告費を想定ほど使わずに着地してしまったこともあり、営業利益が予定より多く出ているという状況になっています。

この件に関しては、広告に関する知見を持つエグゼクティブクラスの人材を追加で獲得できたことにより、広告再投下の最適なアロケーションを検証できる体制に切り替わってきています。

セグメント別業績概要(その他事業)

次に、肝心の海外サービスについて触れたいと思います。国内サービスは堅調に推移する一方で、海外は大変苦戦しています。

その他事業は、派遣事業の「在宅派遣」、紹介事業の「Reworker」、海外事業などがすべて含まれたセグメントです。中でも海外事業に関しては、顧客獲得に苦戦している状況です。

海外の非常に不安定な採用環境により採用が計画どおりに進まず、顧客獲得にかけるコストやリソースがなかなか確保できない状況で、総合的に苦戦を強いられています。

顧客獲得に苦戦している状況自体は変えられないため、コストコントロールを確実に行いながら、今後の進捗を追っていければと考えています。

営業利益増加要因

営業利益の増加要因についてスライドに記載しています。こちらも繰り返しになりますが、ARPUの向上とオペレーション見直しによる生産性改善により、利益率は改善しています。

KPIの状況

スライドは、各種KPIの状況として、稼働社数・解約率・ARPU・MRRの4つを取り出したものです。稼働社数は右肩上がりで、再度成長傾向です。解約率も、昨年は価格改定により少し高くなっていましたが、かなり落ち着きを見せており、このまま一定の安定傾向もしくは下降傾向になるだろうと見立てています。

それらの要因が組み合わさってARPU自体は非常に強く成長しているため、引き続き伸ばしていければと思っています。結果として、MRRも上昇している状況です。

KPIの状況

ユニットエコノミクスの観点でも、広告投下余地が残っています。スライド右上のLTV(ライフタイムバリュー)は大幅に伸びていますが、その主要因は、右下のCACと呼ばれる顧客の獲得コストが効率化してしまっていることです。

左側のグラフを見ていただくと、本来であればLTVがCACの300パーセントから500パーセントの範囲に収めたいところですが、今回も640パーセントとなっており、まだ広告投下余地が残っています。

さまざまな要因が障壁となってなかなか適正水準に持っていけず、もったいない状況が続いています。

貸借対照表

貸借対照表です。自己資本比率は65パーセントを超えており、何の問題もありません。しばらくは安定的に経営できると考えています。

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローも同様です。利益率の改善が行われているため、営業キャッシュ・フローも大きく改善しています。

上半期+直近トピックス一覧

次に、2024年8月期のトピックスをお伝えします。昨年10月の上場後にトライしたさまざまな取り組みの中から、トピックスとしていくつかご紹介します。

トピックス① (リモートワーク×障がい者雇用で働きたいと考える誰もが就業できる環境を創出)

1点目に、「リモートワーク×障がい者雇用」で、働きたい障がい者の方々の雇用機会の可能性をより広げていきたいと考えています。

これまでも社内で障がい者の方の活躍機会は数多くあったのですが、さらに「リモートワーク×障がい者雇用」として、派遣事業と紹介事業で選択肢を提案し、障がい者雇用の法改正などの動きにも合わせて働く機会の拡大を進めています。

企業からも非常に注目を集めており、我々もどのようなかたちで進められるか挑戦していきたいと考えています。

トピックス② (「CASTER BIZ assistant」が24時間365日対応をスタート)

2点目は、我々がメイン事業としている「CASTER BIZ assistant」において、初めて24時間365日対応を開始しました。サービス提供開始から10年間できなかったことが、今回海外チームなどの協力により実現可能となり、今後お客さまからの引き合いが期待できる内容となっています。

内容自体は地味に聞こえるかと思いますが、お客さまからいただく業務には、24時間365日対応できないために受注できないものが一定数含まれています。このような領域が徐々に拡大していけば、ポジティブな影響があるだろうと考えています。

トピックス③ (資金の借入)

3点目に、りそな銀行と総額5億円のコミットメントライン契約を締結しました。財務基盤の強化を図り、今後も積極的な事業投資を行い成長スピードをより加速できればと考えています。

トピックス④ (資本業務提携の検討に係る基本合意書の締結、当社株式の売出し)

4点目に、株式会社マネーフォワードと資本業務提携に向けた基本合意書を締結しました。提携の概要についてすでにご覧になられた方もいらっしゃるかと思われますが、あらためてお伝えします。

マネーフォワード社は、当社発行済株式総数の20.3パーセントにあたる39万8,000株を取得し、我々と資本業務提携に向けた基本合意をすでに締結しています。2024年4月中を目処に、資本業務提携契約の締結を目指して、現在検討を進めています。

提携の目的は2つです。

1つ目は、我々は世界中からあらゆるスキルセットを持った多様な人材を潤沢に集めることができます。そのため国内の人手不足に対し人材価値を発揮し、事業基盤の拡大を両社ともに行っていけると考えています。

2つ目は、すでに両社ともに取り組んでいるクラウドソフトウェアの提供や、リモートでのリソース提供といったDX支援をさらに強化させ、お互いの顧客基盤拡大を図ることです。

こちらは足元でさまざまな内容を精査しながら検討を進めているため、しかるべきタイミングで公開したいと考えています。

トピックス⑤ (コクヨとの業務提携概要)

5点目に、コクヨ社と業務提携を行いました。コクヨ社はオフィス・事務用品のイメージが強いため意外に思われるかもしれませんが、コクヨ社の提供するサービス領域に我々のリソースを活用できる部分があり、非常に良いシナジーが生みだせるという考えから事業提携を開始しています。

具体的にお伝えしますと、コクヨ社の既存事業で、社内に専任のインフォメーションデスクを置き、書類整理や資料作成・印刷等を代行する「ビジネスコンシェルジュ」というサービスがあります。

こちらのサービスでは、担当者がお客さまのオフィスに出向く形態をとっているため、数名以上でないとサービス提供ができませんでした。

コクヨ社と協議したところ、我々の「CASTER BIZ アシスタント」などのサービス領域と非常に近く、なおかつ我々は1人以下、極端に言えば0.5人、0.3人のリソースでもクライアントにサービスを提供できます。

コクヨ社の目安では、おおよそ2人以下の領域に関しては、人を送り出してしまうと損益的には非常に厳しくなります。そのような理由でサービス提供できない機会に対し、我々の強みを組み合わせた「オンラインコンシェルジュ」というサービスをコクヨ社から提供する事業提携内容となっています。

お互いに従来のサービスからかけ離れたものを提供するわけではないため、すでにテスト的に提供を開始しています。こちらも今後、着実に進めていきたいと考えている領域です。

※ご参考(コクヨ×キャスター業務提携の裏側、スペシャルインタビュー

BPOからBPaaSへ

中期経営計画の概要です。足元ではスライドに記載している内容を固めている状況です。今後の展開や、先ほどお伝えしたコクヨ社、マネーフォワード社との関係性のヒントになる部分をご説明します。

まず、我々のビジネスドメインとしては、BPOと呼ばれる領域でサービスを提供しています。その中でも特に特殊性が高いビジネスモデルであり、これまでWaaSと言っていたものが、直近では一般的にBPaaSと呼ばれ、徐々に定着しつつあります。我々としてもサービス内容は従来とまったく変わりませんが、BPaaSという定義でサービスを拡大していきたいと考えています。

BPaaSは、スライド右上に記載のように「BPaaS=BPO+SaaS」でGartner社の定義とされています。「クラウド経由で調達され、マルチテナンシー向けに構築されるBPOサービス」と言われています。

我々の認識でお伝えすると、BPOとして提供する人的リソースにSaaSサービスを組み合わせて構築し、バックオフィス業務のすべてをオンラインで提供することをBPaaSと定義しています。

今後のビジネススケールが非常に期待される領域であるため、スライド中央に記載のとおり、サードパーティとしてサービスの提供をさらに深めることで、BPaaS業界全体の成長にレバレッジをかけることができると考えています。

具体的には、マネーフォワード社とコクヨ社、どちらの企業もすでにお客さまに対してSaaSのサービスで価値提供をされています。しかしながら人手が不足しているため、例えばお客さまが「会計をお願いしたい」「マネーフォワードのSaaSソフトウェアやシステムを使いたい」といっても、運用する人が欠損しているという状況が発生しています。

我々はそのような企業に対して、ツールを使用できるリソースを提供することで、サードパーティとして業界を下支えし、業界全体の成長にレバレッジをかけることが可能だと考えています。

労働供給不足が現実化する社会

今後、労働供給不足はさらに加速していくことが見込まれます。スライドに記載している労働需給シミュレーションによると、2040年には、近畿全体の労働者数に匹敵する1,100万人ほどの人員が不足することが予想されています。

そのような中、我々は社会に労働力を提供するインフラの需要がより増加していくと考えています。BPaaSのサードパーティや、リモートワークと相性の良い自動化や機械化も取り入れながら、1人で行える業務を圧倒的に高い生産性で多くこなしていけるようなニーズが顕在化していくであろうと考えています。

職業別の最適マッチ数からみる会計領域の人材不足

職業別の最適マッチから見る会計領域の人材不足についてです。スライドだけでは若干わかりにくいと思いますので、端的にまとめてご説明します。

我々は、次に最も注目するべき領域は会計労務領域だと考えています。例えば、統計によると一般事務員は2040年まで不足しないと言われているのに対し、会計事務のような専門領域については、すでに足元でも人材のリソースが非常に不足しています。

我々としてはこの領域にフォーカスし、お客さまのニーズに対して応えていくことをメイン路線として考えています。

社会に労働力を提供するインフラとして

先ほどお話ししたように、今後何年もかけて人口が減少していくことが見込まれるため、将来的な労働人口減少の限界を突破するテクノロジーの活用がより重要になってくると考えています。

AIだけでなく、人とAIのハイブリッド化により、高度な業務をこなせる労働力を安心して社会に供給し続けるインフラになっていくことを、我々のメインストーリーとしています。

詳細についてはスライドをご覧ください。決算説明は以上となります。

質疑応答:新卒のフルリモートワークについて

「大手企業でほぼフルリモートワークで勤務しています。状況はよく承知していますが、御社では新卒の方でもフルリモートで勤務されているのでしょうか?」というご質問です。

我々は新卒採用はまだ行っていません。現在は主に中途採用を進めています。今後は新卒採用についても何かしらのアクションを取る可能性はありますが、現時点では、すでに社会人経験を積まれた方に即戦力として活躍していただいています。

質疑応答:マネーフォワード社との資本業務提携の中身について

「マネーフォワード社との資本業務提携の中身について教えてください」というご質問です。

足元でさまざまな協議を進めています。細かい内容についてはお話しできませんが、それほど難しい内容で考えているわけではなく、シンプルな内容になると思います。

先ほどお話ししたように、すでにマネーフォワード社のクラウドソフトウェアを使われていたり、もしくはこれから導入してDX化したいと思われているお客さまがいらっしゃいます。しかしながら、そのようなお客さまの中には、経理会計人員が欠損していても人員を増強する体力がなかったり、そうした機会が得られないような状況が発生している企業があります。

我々はそのような企業に対して、リモートワークというかたちで当社の社員をリソースとして供給することで、オペレーションが止まらないようにサポートすることができます。

このような部分については、マネーフォワード社からのニーズを非常に強くいただけそうな状況だと考えています。

最終的にアウトソーシングとして我々の社員をリソースとして提供するパターンや、紹介や派遣といった契約形態のバリエーションもご用意しています。お客さまのニーズに応じて、さまざまな内容でのリソース供給を行うといった、非常にシンプルな提携になると考えています。

質疑応答:資本業務提携が今後の業績に与える影響について

「マネーフォワード社との資本業務提携が今後の業績に与える影響について教えてください」というご質問です。

まだ一概に何とも言えない状況です。足元で絶賛協議していますので、我々としてはなるべく早く業績にポジティブな影響が出るようなかたちで、鋭意がんばってお話ししていきたいと考えています。

おそらく来期には一定程度の数字の影響は見えてくるかと思いますが、今期に関しては言及を避けたいと思います。

質疑応答:セキュリティ対策について

「仕事柄、顧客の機密情報に触れる機会も多いと思います。セキュリティ対策はどのように行っているのでしょうか?」というご質問です。

これもお客さまによります。まず基礎的なところでお話ししますと、当社の社員は全員が貸与のPCで業務を行っており、パスワード管理なども特定のソフトウェアで完了できる仕組みになっています。

加えて、業務の内容によってはVPNを経由したり、IPアドレスを固定したり、バーチャル環境のVDIを利用することもあります。

より制限が多いお客さまには、お客さまから貸与された物理PCを使用して業務するなど、いくつかのセキュリティ段階を用意し、お客さまのニーズに合わせてご提供しています。

一部の特殊な業務については、作業する部屋や物理環境にまで手を入れるような案件もありますが、ほとんどはそこまでいきませんので、そのような内容で調整しています。

当社のセキュリティ水準自体は、外部のISMSやPマーク水準に準拠しています。リモート環境では珍しいのですが、我々はセキュリティの管理は非常に重要なポイントだと考えているため、常に更新できる状態をキープしています。

質疑応答:今後の経営効率の向上について

「自己資本比率が65パーセント超と非常に高く、ROEが非常に低くなっています。今後、経営効率を上げていくことはお考えですか?」というご質問です。

自己資本比率が高いと安定はするのですが、我々としては、まだまだ事業成長に向けてさらに投資をしていきたいと考えています。「どのような内容で、どのような成長に対して、どのようなタイミングで投資を行うか?」という部分については、適宜開示していきます。

質疑応答:配当開始時期について

「配当を開始する時期の目処についてご教示ください」というご質問です。

配当時期は未定のため、現段階では株主還元についてお話しできる状況にありません。今後、内容が見えてきたら適宜みなさまにお知らせしていきます。

質疑応答:AIに対する見解について

「BPOの場合、業務によってはAIによる置き換えも、近い将来に実現できるようにも感じます。AIについての貴社の見解をご教示ください」というご質問です。

まず我々が現在活用している中では、今後、我々の行っている業務がAIにすべてリプレースされることはなさそうだと強く感じています。

我々の会社の中では、仕事の階層をコミュニケーションライン・ディレクションライン・オペレーションラインの3つに定義しています。

AIというと、昨今出てきているChatGPTを中心とした、自然言語系を解釈できるLLMのようなものをイメージされていると思います。これによりコミュニケーション領域に可能性が出てきたことが特徴です。ディレクション領域やオペレーション領域でもすでに自動化が一定程度は進んでいるものの、現在は止まっているような状況です。

これにはさまざまな要因があるため詳しくは言及しませんが、同じような理屈で、我々もコミュニケーション領域でAIを活用しているものの、現時点では100パーセントの稼働には至っていません。

ただし、どこかで必ずブレイクスルーが起きます。どちらかというと私自身は、AIの可能性は非常に高いと思っています。今後は人間とAIがハイブリットしていけるような状態を目指していくことが重要であると考えています。

したがってAIによって業務がなくなるというよりは、ビジネスチャンスが大幅に拡大していくと捉えています。

質疑応答:海外事業の利益創出について

「海外事業で利益が出るのはいつ頃を見込んでいますか?」というご質問です。

海外事業については、先行きをどのように進めていくかを考えている状況であり、先行投資フェーズになっていることは間違いありません。国内サービス同様、売上のスケールがある程度出てきたり、顧客獲得効率が非常に高い領域が見つかってきたタイミングで考えていくことになると思います。

まずは売上の向上とコスト削減のバランスを着実に取っていくことが重要だと考えています。

質疑応答:今後見込まれる特需について

「第2四半期は経理や労務管理の特需があったかと思います。第3四半期については同様の特需はあるのでしょうか?」というご質問です。

経理や労務関係は特需ではなく、インボイス制度が開始したから増えているわけではまったくありません。法律の変更は一瞬で終わるわけではありませんし、かえって経理部門の業務量が爆発的に増えています。

そもそも経理部門の人員がほとんど市場からいなくなっていたこともあり、「人員が欠損してしまったらもう終わり」という状況が起きてしまったことによる加速度的な崩壊と見ています。したがって、今後もおそらくすぐに解消されることはないと見込んでいます。

オペレーションとしてより良いものが出てくる可能性はありますが、この領域の特需というよりも、需要の増加が継続的に続いていくと考えています。

質疑応答:新たな成長投資について

「新たな成長投資のために、自己資本比率を50パーセントにしてもよいのではないかと思います。お考えをお聞かせください」というご質問です。

自己資本比率が何パーセントであるべきかということはまったく考えていません。先ほどお話ししたとおり、事業成長に向けたさまざまな投資を、タイミングを見て検討していきたいと考えています。

「どこに対して、いつ、どのように投資を行うのか」について、十分に精査できたタイミングで開示していきたいと思います。

質疑応答:マネーフォワード社との資本業務提携に至った背景と狙いについて

「マネーフォワード社と資本業務提携に至った背景や狙いについて教えてください」というご質問です。

我々としては、マネーフォワード社に対して特にアクションを取ったということはありません。もともとSaaSと呼ばれるサービスを提供しているさまざまな事業者と、いろいろな領域で比較的強いリレーションがありました。

我々としては上場したこともあり、今後も非連続的な事業成長をしていくため、そのようなシナジーの強い会社とさまざまなリレーションを図ってきました。その中で、まず業務提携という策を取っていたというのが基本的な内容になっています。

先ほどもお話ししたBPaaSと呼ばれる領域は、事業者とお話ししていても、やはりニーズが強いと感じていたところでした。そのタイミングでマネーフォワード社との接点がより強くなり、このような領域での事業シナジーがお互いにあると確信したため、今回の資本業務提携の検討という話につながりました。

質疑応答:海外事業が苦戦している原因について

「海外事業はかなり苦戦しているように見えます。何が原因でしょうか?」というご質問です。

率直に顧客獲得に苦戦しています。我々は「人員を潤沢に確保できるからこそ、さまざまなサービスが提供できる」ということでクライアントを獲得していくのが基本構造になっています。

この人員の獲得について、どんどん難易度が上がっている環境の中で、顧客が求めるニーズに対してお応えできるだけの内容を揃えきれないという状況が発生してしまっています。

ここはもう一度バランス取り直さなければならないと考えており、再度コスト削減などの施策を行っていこうと考えています。

質疑応答:成長するための課題と取り組みについて

「成長するための課題と取り組みについて詳しく教えてください」というご質問です。

先ほど中期経営計画の概要でもお話ししたように、誰がなんと言おうと、日本全体で人が足りなくなります。これは現時点で足りているところでも足りなくなります。

なぜなら、足りなくなったところが、より良い条件で人材を吸収しようとするからです。その結果、「こちらが足りなくなれば、あちらも足りない」というように、全体的にどんどん人が足りなくなります。

このように、確実に社会課題化してしまったものに対して新しい選択肢を示していくことが、まず我々の成長の力の源泉であり、そして今後も必ず取り組んでいくべきことだと考えています。

いろいろと抽象的にお伝えしましたが、我々は「リモートワークを当たり前にするための会社」です。リモートワークを働く人たちに提供し、クライアントの「どうしても人が足りない」という状況を解決するための手段として、働いてくれる人たちの協力を得られる状況にすることが、当社の成長のためのストーリーの基本軸だと考えています。そして、これを今後も繰り返していくことが重要だと理解しています。

質疑応答:経理・労務領域における人員確保について

「労働人口が減り続ける中で、これから注力する経理・労務領域で人員を確保できるとする強みを、リモートワーク以外で教えてください」というご質問です。

まず日本全国で、リモートワークでこれほど統一的かつ継続的に求人を出しているプレイヤーはそれほどいません。当社も全体で1,000名弱の社員を抱えていますが、これだけの人員をリモートで確実にマネージできるプレイヤーは、国内にはほとんどいないと考えています。

その上で、当社は賃金も統一しています。東京でも北海道でも、沖縄でも、どこに住んでいる方でも同じ賃金です。そしてさらにこれを引き上げていけるよう、現在積極的に注力しています。

さらに、当社では当たり前となっているフルリモートや、当社社員の90パーセント以上を占める女性の方々に働きやすいと思っていただけるような要素、例えば時間のフレキシブルさや就業の安定度といったさまざまなニーズの組み合わせによって、「キャスターで働きたい」と言ってくれる方が非常に多く存在しているのが現状です。そのため、このような声に応えていくこと自体が強みになると考えています。

我々としては、すでに「その声に応えると決めている」ことが、最大の強みになると思っています。

質疑応答:同業他社の買収について

「同業他社を買収して成長していく、または事業領域を拡大するといったことは考えておられるでしょうか?」というご質問です。

当然、スコープに入っています。以前は「オンライン秘書」「オンラインアシスタント」など、さまざまな呼び方をしてきた当社の「リモートアシスタント」という領域は、我々が日本で初めて作ったビジネスです。そのため、どの領域のプレイヤーがどのような内容を展開しているかについて、ほぼ把握しています。

このようなプレイヤーの中には、状況によっては途中で規模拡大が難しくなってしまったり、もしくは赤字を掘りすぎて「これ以上は無理だ」というような方など、いろいろなパターンが存在します。

その中で我々は、無理な展開をしなかった方々、もしくは我々とケイパビリティやアセットをともにすることでお互いに価値を高めやすいプレーヤーの方々と一緒に取り組んでいくことは、ウェルカムだと考えています。

そのような部分に関しては、昔からこの業界をほぼ知っていることもあり、実際に個別でいろいろな相談をさせていただいています。引き続き同様のスタンスで挑戦させていただければと考えています。

質疑応答:コクヨ社との業務提携について

「コクヨ社との業務提携についてお話がありました。この場合はコクヨ社からキャストに業務指示がいくのでしょうか? この業務提携ではフロントが不要になるのでしょうか?」というご質問です。

「フロント」という言葉を知っていただいているということで、我々の会社をよく見ていただき、理解していただいていると感じています。大変ありがたく思っています。

こちらについては、フロントは不要になりません。コクヨ社がもともと提供されているサービスにもお客さまとコミュニケーションする担当者がおり、その人が業務を他の人に渡したり、自分自身で手掛けたりという差配を行っています。

我々の「CASTER BIZ」というサービスは、基本的にフロントと呼ばれる人たちがクライアントとコミュニケーションをさせていただくかたちになっています。今回のコクヨ社との業務提携に関しては、「CASTER BIZ assistant」などと同様にフロントも引き続き残った状態でコミュニケーションを行います。

そこに必要があれば、我々がまたキャストと呼ばれるような人たちに業務を渡していくという可能性もありえます。このように、既存のサービスとほぼ変わらない建て付けを作っていく予定になっています。

質疑応答:顧客獲得方法について

「顧客獲得方法について教えてください。広告投資以外にはどのような方策をお考えですか?」というご質問です。

比較的わかりやすいチャンネルとして、コクヨ社やマネーフォワード社のようなクライアントとアライアンスを組ませていただくことが、そこのサービスを使われているお客さまと我々との接点を持たせていただける機会になっています。

そのため、このような提携などの機会をさらに作っていくことで、広告を展開していなくても、お客さまとの接点を広げていくことができるというところは、非常にシンプルかつ明確な1つのルートだと考えています。

ありがたいことに、「多くの人手のリソースがあれば、もっとお客さまに価値を提供できるのに」と考えられている事業者は非常に多くいらっしゃいます。そのようなところに我々はアプローチして、そこでいいお話をお互いにできるのであれば進めていくというようなことが、まだまだできると考えています。

質疑応答:人材獲得の戦略について

「各社で人材が不足しているとのことでした。貴社で人材を集めるための戦略を教えてください」というご質問です。

まず大前提として、我々はリモートワークを撤回しません。他の会社でよくあるのが、「フルリモートワークOKです」と言いながら、入社してもらって1ヶ月経ったら、「オフィスに来てもらわないと困るから、週に1回は出社してくれない?」というケースです。我々はこのような嘘は絶対に言いません。

当社には、すでに全国に社員がいます。どこかにオフィスを作って「そこに出勤できる人たちだけが、社員として働いてください」というようなことも絶対に言いません。

この「絶対に言わない」という信頼感は、働く人にとって非常に重要なポイントではないかと思います。

表面的なことを言っておいて、「後で切り替えればいい」という事業者は非常に多いです。そして就業機会を探している方で、そのようなものに巻き込まれて困った思いをされた方も非常に多くおられます。「我々は、絶対にそのようなことをしない」これが大前提として、非常に重要なことだと考えています。

その上で、我々はさらにリモートワークを当たり前にして提供していき、さらに可能であれば、「日本における最高の働き方にしよう」と考えています。

したがって、給与や待遇、業務領域、業務機会など、他社とはまったく違うレベルまで持っていくことが、我々の使命だと思っています。そこに関しての差別化も、人材を集めるための競争力の源泉という意味で、非常に重要になってきていると考えています。

このようなことを真剣に考えているため、これができない会社、もしくは他のおまけにしている会社には、絶対に負けません。

質疑応答:業績予想に対する第2四半期の進捗について

「業績予想に対する第2四半期の売上進捗が45パーセント程度と高くありません。下半期に売上を伸ばすために何か対策を実施するのでしょうか?」というご質問です。

ここはご指摘のとおりです。先ほども触れましたが、1年という区切りで見ると、売上が成長しやすいのは下半期です。

なぜなら、期初に獲得したお客さまが1年の間で契約が切れることほとんどなく、売上がマックスで反映されていく期間は、1年間の積み上がりが一番高くなる最後の月という構造になっているからです。

したがって、上半期が45パーセントから50パーセント未満、そして下半期で50パーセントから50パーセント以上程度となっているのが現状です。もちろん多少の波はあるものの、我々としてはそれほど低い進捗状況ではないと考えています。

対策としては、引き続き顧客獲得を進めながら、どのようにバランスをとっていくか調整していくことが基本方針になると思っています。

質疑応答:中長期的なアプローチを考えている領域について

「これから経理・労務領域に注力していくということですが、現在貴社がアプローチできていない領域で、中長期的にアプローチしていこうと考えている領域はありますでしょうか?」というご質問です。

もうすでにトライはしているものの、なかなか登録がかかっていない領域として、例えばエンジニア領域やマーケティング領域というような専門職領域がひとつあります。また別の業界では、医療や介護といったクリティカルな領域、もしくは建築といった領域があります。このようなところに対しては、我々としても「どうしたらその領域に対して価値提供できるか」を常に調査しており、実験も行っています。

このような中で、より価値提供の度合いが深いものを探していきながら、積極的にサービス提供を展開していきたいと考えています。

質疑応答:技術開発投資の強化について

「スライド24ページに『将来的なテクノロジーの活用に向けて、技術開発投資を強化し、自動化を推進する』と記載がありました。もう少し具体的な内容をお聞かせください」というご質問です。

我々のサービスは表面上、人的リソースを提供しているだけに見えると思います。例えば「CASTER BIZ assistant」にはフロントと呼ばれるお客さまと対面する担当がおり、この後ろに何十人もの人員がいます。この人たちが業務を回してくれているわけです。

このフロントと人員の間にシステムがあり、これによって業務を振り分けています。そして生産管理され、またフロントに戻っていくという仕組みになっています。

ただしこのシステムは、お客さまからは見えません。大変緻密に開発していますが、その内容はまったく見えないものになっています。

この領域に関しては、AIやそのようなものとの親和性が多分にあり、このシステムをより良くしていくために、技術開発投資を行うというものです。またフロントのオペレーションやコミュニケーションなどはすべて記録されており、そのような蓄積を使いながら、どこまで自動化やオペレーション改善自体をスムーズにしていけるかどうか、このようなところに対して積極的に投資していきたいと考えています。

質疑応答:社員研修について

「リモートワークは働き手にとっても向き不向きがあると思います。不向きだった場合、社内研修などで補っているのでしょうか?」というご質問です。

我々としては、「このような人はリモートワークできるよ」「このような人はリモートワークできないよ」というようなことは一切言いません。そのため、誰でも馴染めるように研修やフォローアップなど、いろいろとご用意しています。

どうしても全員が全員、100パーセントリモートワークに合致するわけではありません。しかしながら、できるだけ多くの人、できればすべての人にこのような機会を確実に提供し、この環境に馴染んでいただきたいと考えています。したがって、このアップデートも継続的に行っていく予定です。