ベステラはプラント解体工事の会社です
本田豊氏(以下、本田):ベステラ株式会社代表取締役社長の本田です。本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。
当社はプラントの解体を行っている会社です。スライド一番左側の写真は、製鉄所の溶鉱炉で、中央の上段が風力発電、下段が石油精製設備です。そして、右側の上段が球形のガスタンク、下段が焼却炉です。このような少し複雑な設備の解体を行っています。
会社概要
本田:会社概要についてです。「ベステラ」という社名は、英語のBESTとラテン語のTERRAを組み合わせた造語です。2024年で創業50年になります。
50年前からこのような名前をつけて、地球環境に貢献する会社として取り組んできました。従業員数は単体で105名、グループ全体では約200名と、少数精鋭です。
ビジネス コンセプト、沿革
本田:ビジネスコンセプトと沿革についてです。少し生意気なことを言っていますが「つくった人には壊せない」というコンセプトを掲げています。プラントを壊す際に「つくった方は造ったときの逆をたどる」傾向がありますが、当社は解体用の工法で行います。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):作る順番と逆に解体するのではなく、効率よく解体するということですね。
本田:そのとおりです。そのほうが、安全性も高まることがあります。後ほど映像とあわせてご説明します。
また、「プラント解体に特化したオンリーワン企業」というコンセプトも掲げています。プラント解体を行う会社は他にもありますが、製鉄所だけを扱うといった専門の会社が多いです。当社はいろいろなプラントを扱っています。
坂本:3回目のご登壇ですので、沿革についてうかがうのは失礼かもしれませんが、現在扱っているようなプラントの仕事は、昔からしていたのでしょうか? 他の解体の仕事も行っていたのか、そのあたりについてお聞かせください。
本田:スライドには記載していませんが、現会長の吉野がスクラップを扱う仕事をしていたところから始まりました。できれば高価なものを手に入れたいという思いがあり、一般のビルの解体よりもプラントを扱うようになりました。そうすると、スクラップの目利きの力がとても重要になってきます。
坂本:効率よく分割したり、有用な貴金属を取り出したりするということですか?
本田:おっしゃるとおりです。解体する際には、建設した方もどこにどのような金属が使われているか把握していないケースが多いです。例えば変圧器であれば、中がどのようになっているのか、他の金属を使っているのかは、メーカーや年式によって異なります。
そのようなことを勉強して、当社では分別・再販できる分を工事代金から引くようにしています。通常はスクラップを取り扱う会社がその分の利益を得ますが、当社は工事代金から差し引いて、利益を得ています。
荒井沙織氏(以下、荒井):スクラップをよい金属などに振り分けず、そのまますべて処分してしまう会社もあるのでしょうか?
本田:すべて処分する会社はありません。非鉄金属を使う会社は、そこで利益を上げようと考えるため、分別・再販を徹底的に行うと思います。
荒井:御社のように目利きの力があると、そこでの収益が大きく変わるということですね。
本田:そのとおりです。工事代金の値引きに転嫁しています。
ビジネス モデル(事業系統図)
坂本:解体を始めた時は、自社で行うのではなく作業を他社に割り振っていたのですか?
本田:「持たざる経営」ということで、当社は実働部隊を持たない経営を行っています。
坂本:おそらく勘違いされている方が多いと思いますので、その部分についてお話ししていただけますか?
本田:当社は解体工事現場の管理監督に特化しています。グループ会社のオダコーポレーションや矢澤には職人がいますが、職長という少し特殊なところがあります。
基本的に管理監督に特化していますので、働く方が重いものを持つ必要はありません。そのため、女性の方も安心して求人に応募できます。
坂本:視聴している方もイメージが沸いたと思います。
本田:当社は実働部隊を持たず、管理監督に特化しているため、技術力に依拠しなければなりません。
スライド右側のビジネスモデルをご覧ください。基本的には、施主から元請会社が発注を受けて、当社に発注される流れです。例えば製鉄所の場合、日本製鉄さまが施主であれば子会社である日鉄テックスエンジさまが元請になり、当社のような解体工事会社に外注します。
ただし最近では、元請での受注を増やしています。当社の売上は、電力、製鉄、石油・石油化学関連がそれぞれ30パーセントを占め、残り10パーセントがガスなどのイメージです。現在、増やしている元請工事は化学の分野がほとんどで、電力が少しずつ増えています。
坂本:プラント会社が下にいないようなところから始めているかたちでしょうか?
本田:そのとおりです。
解体市場の拡大
本田:スライドのグラフをご覧ください。高度経済成長期に建設投資が進みましたが、50年から60年経つと建物の寿命を迎えて、解体するものが今後さらに増えていきます。
プラント業界に対する各種政策
本田:さらには、どの会社も脱炭素化に向けた動きが加速しています。例えば製鉄所であれば、二酸化炭素を大量に出す高炉を電炉に変えていく動きがあります。そのため、高炉を止める・解体するという需要が非常に増えています。
石油会社も、石油精製で化学製品などを作るよりも自然エネルギーに変えていく動きがあり、そのような背景から解体需要が増えています。
また火力発電所では、原子力発電所の稼働や自然エネルギーへの代替に伴い解体が増えています。
プラント業界の動向(電力、製鉄)
本田:スライドは、電力、製鉄の動向についてまとめたものです。
プラント業界の動向(石油・石油化学、その他)
本田:石油・石油化学、その他の動向についても記載しています。
プラント業界の変化に対する当社の強み
本田:事業環境(業界)について、分離発注の増大が1つの傾向としてあります。以前は、解体したら同じ設備を同じ場所に作るケースが多く、作る側の会社に建設工事と解体工事をまとめて発注していました。
作る会社は作ることがメインのため、解体工事に関しては赤字を覚悟の上、非常に低価格で受注することがありましたが、現在は建設と解体を分離して発注するので、そのようにはいかなくなりました。
坂本:作る会社は作ったところで収益が乗ってきますので、分離発注されると平準化ができなくなるということですね。
本田:作る会社が間に入るよりは、解体工事会社に直接発注したほうが安くて済みますので、利益が出ます。また、さまざまな法規制により解体工事の難易度が上がっていることもあり、解体専門会社に直接発注するケースが増えてきています
当社がお客さまとしている発注元の会社は、重厚長大で堅実なところが多いです。そのため、できれば信用力のある会社に発注したいと考えています。
解体工事会社の中で上場している会社は、当社と田中建設工業さまの2社しかありませんので、そのあたりは信用力を持って受注できています。
基本方針
本田:スライドに「脱炭素経営」と記載しているように、当社も脱炭素に対応するべく、いろいろな取り組みを行っています。こちらは後ほどご説明します。
脱炭素解体ソリューション
本田:工事本体についてご説明します。
ベステラの脱炭素解体
本田:スライドには「ベステラの脱炭素解体」とあります。まずは動画をご覧ください。
これはリンゴ皮むき工法という、球形のタンクを解体する工法です。リンゴの皮をむくように鉄板を切断し、重力を利用して下に落としていきます。
こちらの球形タンクは四角い鉄板を貼り合わせて作られているため、作る方が解体するとなると、周りに足場を組んで、四角い鉄板ごとに切ってからクレーンで吊り上げて降ろすことになり、非常に時間がかかります。
坂本:工期はどのくらい短縮されたのですか?
本田:タンクの大きさにもよりますが、約3分の1です。切るだけであれば、主要な部分では3ヶ月が1ヶ月に、また6ヶ月のところが2ヶ月に短縮されました。
坂本:動画では早送りで切られていましたが、作業はゆっくりなのですね。
本田:さすがにあの速さでは切れません。
ご説明したとおり、「足場を組まない。安全性が高まる」ということで、燃料を使わないため、今後の脱炭素社会という観点においても評価されると感じています。
実際にディベロッパーからは、「高炉で作られた鋼材か、電炉で作られた鋼材か。木の枠を作る時には再生材を使ったのか」といったことを求められると思います。当社の場合は、解体で効率化を図り、燃料を使わないようにしています。
大きなテーマとしては、解体業者であるだけでなく、どれだけ循環型社会に貢献できるか、再資源化率を上げられるか、それを提示できるかが今後の課題だと考えています。
技術特許一覧
本田:基本的な技術力を証明するものとして、当社はさまざまな特許を持っています。リンゴ皮むき工法も特許を取っていますが、タンク、ボイラー、煙突などの特許を持っています。
坂本:たくさん特許がありますが、特許使用料を得ているものもあるのでしょうか? それとも技術を守るための特許なのでしょうか?
本田:一番は技術力の証明です。そのため、壁飾りと言ってしまえばそのようなことになります。
坂本:それでも特許があるということは信頼に値しますし、技術を守ることにもなると思います。
本田:守っているのは実際に使っている特許で、リンゴ皮むき工法や、この後ご紹介する転倒工法などです。
ベステラの転倒工法
本田:転倒工法について記載しています。スライドでは煙突を倒しています。
風力発電設備解体①
本田:現在、転倒工法を風力発電の解体に使っています。
風力発電設備解体②
本田:スライドに記載しているマトリョーシカ式工法、転倒工法、タワークレーン工法について映像でご紹介します。
こちらは転倒工法で、基礎の部分を削り取って建造物を倒します。
坂本:周囲の木に当たらないように倒れていますね。
本田:横にずれて倒れると大変なことになります。風車解体はクレーンを横に置いて吊って降ろすことが基本ですが、倒せない場合は中にタワークレーンを置いて降ろしていきます。
坂本:その場合は時間とコストがかかりますね。
本田:おっしゃるとおりです。マトリョーシカ式工法も少し似ています。マトリョーシカ式工法では釣竿を縮めるかたちで降ろしていきます。
転倒工法は、他にも特許を取っている会社がありますが、それは筒身の部分の特許です。筒状になっているところを切って倒すのですが、金属が丸くなっているため支点が安定しなくなり、どちらに倒れるかわからないところがあります。
風力発電の風車や煙突などの筒状のものは必ず基礎がありますので、その部分のコンクリートを削り取れば、センチメートル単位で倒す位置を正確に算出できます。
当社はこのような技術を持っているため、「ここに倒すしかない」という工事では強みになります。
坂本:この工法がコスト的には一番安いのですか?
本田:そのとおりです。安全とコストは比例するところがあります。
災害で一番多いのは高所作業です。あらゆる工事業、特に解体では墜落が一番多いです。死亡事故にもつながりますので、なるべく減らす方法をとっています。倒してしまえば高所作業はないため、安全性が高まりますし、作業も早くできます。
脱炭素解体への取り組み
本田:先ほど少し触れましたが、当社の解体技術は脱炭素社会にも貢献しています。
ベステラの無火気工法
本田:プラントの中の解体では、火を使わないことが基本です。
スライド左側の写真に、大型変圧器(トランス)と記載しています。当社は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質が入っている時に、それを気化させないよう解体することを得意としています。
PCB含有塗膜の市場規模(推計)
本田:最近では、PCBが塗料の中にも含まれていることがわかってきました。
ブラストマシンによるPCB含有塗膜剥離
本田:PCBを含む塗料は機械を使って剥がしますが、これから需要が出てくると思います。
荒井:ここで、ご質問です。なぜPCB含有塗膜の除去が必要になってくるのでしょうか?
本田:PCB特措法という法律があります。PCBは有害物質であるため吸い込むと人体に影響が出ます。アスベストなどを規制しているのと同じ類だとお考えください。
坂本:PCBをしっかり除去する工法で解体していかなければなりませんね。
アスベスト除去技術と市場の取り込み
本田:以前からお話が出ていますので、ご存じの方も多いと思いますが、アスベストが含まれた建造物はまだ残っています。
2022年4月に法律が改正され、解体するものに関しては、ほぼすべてにおいて、先に調査を入れることが必要になりました。そのため、除去しなければならないものが増えています。
グループ会社の矢澤は、アスベスト除去を専門としています。
土壌汚染対策工事
本田:土壌汚染対策工事についてです。先ほど、「プラントの中で解体して、その後同じ設備は作らない」とお話ししました。そうすると、外部に売却することも増えるため、土壌汚染対策までしなければならなくなってきています。
拠点の充実
本田:工事は以前から全国で行っていますが、今は特に西日本を拡充しています。スライドに記載のとおり、倉敷に作業所を新設し、北九州市に事務所を開設しました。倉敷は2月1日に開設、九州事務所はすでにスタッフを常駐させています。
スライドに「フロー型からストック型へ」と記載があります。当社は大規模工事を一気に獲得しに行くわけではありません。各プラント・現場で細かい工事を受注した結果、大きな工事の受注獲得につながっています。
大きな工事を失注するケースとして、地方に入り込んでいないことがあります。解体する時に東京の会社が出てきて「解体しますよ」と言っても、「なんで東京の会社がするのか?」となってしまいますので、そこは事前に拠点を立てています。
坂本:事前に営業所があることを知っていただくということですね。
本田:そのとおりです。細かい工事の構成比が増え、結果的に大きな工事の受注も獲得できるようになってきています。
協業先企業との連携強化
本田:業務提携先についてです。スライドに記載されていない会社もありますが、原子力発電関連は日立プラントコンストラクションさま、実際に切る作業は上場企業の第一カッター興業さまと業務提携しています。
またスライドの右下に「REVER」とありますが、現在はリバーホールディングス社とタケエイさまが経営統合し、「TREホールディングス」という社名になっています。こちらはスクラップや産業廃棄物処理などを行っており、当社もかなり出資しています。
オダコーポレーション(株)の子会社化について
本田:最近子会社化したオダコーポレーションとTOKENは、プラントの建設とメンテナンス工事を主力事業としています。
解体する前にメンテナンスを行う時期があるため、メンテナンスの段階から入っていきたいというのが1つです。また、西日本の拠点をさらに強くしたい考えもあります。
工場の設備移転時に中に装置があった場合、それを使ってくれる工場があれば、そのまま移転するケースが出てきています。その時にメンテナンス会社がいればやりやすいということです。
坂本:協業先と子会社を増やしているとのことですが、そこからの紹介案件もあるのでしょうか?
本田:おっしゃるとおり、紹介し合っています。
坂本:それが受注につながっているわけですね。
本田:そのとおりです。もちろん、業務提携先からも紹介してもらいますが、金額よりも、今後有意義な工事を行うためのきっかけを作っていく部分が大きいです。
元請案件の受注拡大
本田:先ほどご説明したとおり、元請案件の受注が拡大しています。
DXプラントソリューション
本田:スライドをご覧のとおり、DXプラントソリューションに取り組んでいます。
3D計測、モデリング(設計・施工業務の変革)
本田:当社は3D計測、モデリングを行っています。図面がない設備など、改修・補修が必要な老朽化が起きている設備に対して最初から3D計測を行い、どのようなところが変化しているかを把握してから解体しています。また、必要があればモデリングを行っています。
最近は三次元で計画書を作るケースが非常に増えており、現場の若いスタッフも慣れてきています。
遠隔・無人化施工
本田:遠隔・無人化施工なども、将来的なものとして考えています。
配管・プラント設計システム AUSE/V3の拡販
本田:3Dビジュアルという、当社の子会社があります。そのソフトウェアのさらなる拡充を考えています。
クレーンレール検査ロボット(検査手法の変革)
本田:クレーンレール検査ロボットについてです。こちらも派生した事業で、プラントにある天井クレーンの定期検査は高所作業で危ないため、ロボットを使って行っています。
(株)クラッソーネとの資本業務提携
本田:当社はクラッソーネさまと資本業務提携しています。こちらは一般の家屋、空き家解体の需要に応えるためです。
HRトランスフォーメーション
本田:人事戦略、HRトランスメーションについてです。当社は人材で勝負している会社です。
教育プログラムの確立
本田:さまざまな教育プログラムを導入し、人材育成にも力を入れています。
ナレッジマネジメント
本田:解体は建築や土木などと違い、建設業界の中でもあまり体系化されていないところがあります。そのため、ノウハウを形式知化していきたいと考えています。
株主還元
本田:株主還元についてです。当社は以前から配当性向40パーセントを目安としています。しかし、そこにとらわれず安定配当を基本としています。
株主還元
本田:当社には「ベステラ・プレミアム優待倶楽部」というサイトがあります。以前は100株から総合利回りを出していたのですが、現在は1,000株からとしています。
坂本:最低株数は一番利回りが高いことが多いため、こちらは珍しいですね。
本田:株を購入すると100万円程度かかってしまいますが、総合利回りが5.10パーセントになりますので、かなり高くなります。
決算のポイント
本田:決算のポイントです。第3四半期の決算ですので、スライドは年度ではなく9ヶ月間での数字ですが、売上高・受注残高ともに過去最高となっています。 前年同期よりも、はるかに増加しています。
損益計算書
本田:損益計算書についてです。売上総利益は工事の粗利に相当します。例年よりも少し低くなっており、営業利益を途中で下方修正したことにリンクしています。
急激に人材を増やしていくと、いろいろな成長痛があります。見積りのミスや、新人のため時間がかかってしまうなどです。
業界別 完成工事高構成比率
本田:完成工事高構成比率についてです。製鉄、石油・石油化学の比率が高くなっています。環境カテゴリにはアスベスト関連工事が含まれています。
坂本:製鉄の比率が少し大きいのは、大きい受注があるからでしょうか?
本田:おっしゃるとおりです。
坂本:こちらは来期まで続くのでしょうか?
本田:来期、再来期まで続きます。高炉3基の受注があったことが大きいです。
坂本:高炉は時間がかかりますからね。
完成工事高の推移
本田:四半期ごとの売上高も伸びてきています。従来、第1四半期と第4四半期に集中していましたが、現在は季節性関係なく第3四半期もかなり伸びています。
受注状況
本田:受注の状況です。受注工事高は100億円を超えており、過去最高となっています。製鉄だけでなく、電力や石油関連でも多くの受注がありましたので、このような数字になっています。
いつ受注残高が安定するかをお伝えするのは難しいですが、正常時の受注残高は記載の数字よりも少ないと思います。
坂本:御社は人材を増やしているため、今後は工事が増えていきますよね。
本田:おっしゃるとおりです。今は成長段階にありますので、利益も重要ですが、まずは売上を伸ばしていくことを重視しています。
また、先ほど「フロー型からストック型へ」のところで、細かい工事を取っていかなければならないとお伝えしました。そうすると直前での受注になるため、受注残高が少し減ります。
業界別 受注残高構成比率
本田:受注残高構成比率は、製鉄が増えています。
受注状況の推移
本田:受注状況の推移も過去最高となっており、全体的に増えています。
数値目標
本田:数値目標です。3ヶ年計画の数字として、売上高80億円、100億円、120億円としています。
今期は利益が少し減ったため、売上をさらに伸ばすことで、営業利益も確保していきたいと考えています。
人員計画
本田:人員計画についてです。ボトルネックでもあり、一番キーとなるのは人員です。工事監督者数が肝になると考えています。
建設業界の他の会社も、現場監督が足りていないのが実情です。したがって、もし投資家のみなさまが「この会社、計画どおりに進んでいるかな」と思うのであれば、人員を見れば良いと思います。
坂本:今期は順調でしたか?
本田:順調でした。68名の採用予定で、67名くらいを採用しています。監督はかなりの数を採用しましたが、営業に異動した社員や、工事計画を立てる部署に異動した社員もいます。
坂本:工事計画は、小さい現場では施工管理者が立てるものですよね。現場が大きいため、部署で行っているということですね。
本田:現場も関係しますが、現場と協力して本社の社員が行うということです。
坂本:2月から来期が始まります。大卒は採用活動がスタートしている時期かと思いますが、手応えはいかがですか? 大学3年生の早い時期からインターンを実施して、内定を出しているのでしょうか?
本田:実施していますが、多くは採らず、よい人材を採用するようにしています。何度も本社に足を運び、ゲームのようなことをしながら建設業の中身を知ってもらうようにしています。
坂本:現場も見せているのですか?
本田:現場は入構が大変ですので、内定者にだけ見てもらっています。
坂本:映像で見てもらうということですね。そうするとイメージが湧きますね。
本田:イメージしてもらわなければなりません。
坂本:投資家もそうですよね。
本田:そうですね。実際に現場に行くと、プラントの設備がいかに大きいかがわかります。
坂本:大きいですよね。私の父もメーカーにいましたので、小さい頃に何回も見に行ったことがあります。
本田:感動する部分がありますね。
長期ビジョン ~当社の目指す目標~
本田:長期ビジョンとして、売上1,000億円を掲げています。実はこの数字は、上場時に会長が言っていたものです。今は上場時よりかなり現実的な数字になってきていると思います。
以前から、「プラント解体の市場は1兆円くらいで、シェア10パーセントは獲得したい」とお話ししています。先ほどお伝えしたとおり、少し加速している部分もあるため、このくらいは目指さなければならないと思っています。
人件費もどんどん上がっています。業界の人数が多い建設業、特に解体の部分の発言力を高めていくためにも、できればリーディングカンパニーとして、当社だけでなく他の会社と一緒になるかもしれませんが、目標達成に向けて取り組んでいきたいと思います。
社内でも、「50億円ベースのところから利益100億円なんて達成できるの?」といった声がありました。しかし今はかなり現実的な数字を出していますので、達成できると思っています。
質疑応答:新規参入の競合について
坂本:「かなり特殊な業種だと思いますが、新規参入の競合についてはどのような状況なのでしょうか?」というご質問です。
本田:当社とまったく同じ立ち位置の会社はありません。
坂本:田中建設工業さまは違いますものね。
本田:田中建設工業さまは壊す対象物が違いますが、立ち位置としては似ています。解体業で管理・監督だけを行う会社は珍しいため、非常に似ています。
今後、競合相手となってくるのは、現在当社がお客さまとしている会社です。要はプラントのエンジニアリング会社は、メンテナンスを行ってきています。実際に元請を増やしている部分では競合しているのが実情です。
質疑応答:解体部隊の必要性について
坂本:私からの質問です。工事はある程度安定してあるため、「解体部隊を作ってもよいのではないか?」という質問を受けると思います。そのあたりはいかがですか?
本田:それも一理あります。実働部隊がいれば早く対応できますし、無理をすることもできます。
坂本:利益が10パーセント以上出れば、目標に近づけますよね。
本田:もちろん理にかなっていますが、根本的な考えとして、当社は技術力で勝負している会社です。例えば重機をたくさん持てば、いかに稼働させるかに頭が行ってしまいます。職人がたくさんいたら、待機させないよう、いかに動いてもらうかに発想が移ってしまいます。
当社は重機のハンドリングではなく、あくまでも解体の工法で勝負しています。そのため、根本的な部分が変わってしまうことを避けるために、「持たざる経営」を行っています。
坂本:発注先や元請として、「自社で一気通貫できますよ」というのはPRにならないのですか?
本田:当社の場合は、協力会社が潤沢にいます。
坂本:技術も高いですよね。
本田:そのとおりです。そのため、そこは特に問題ないと思います。
質疑応答:解体の難易度について
坂本:解体の難易度についてです。難易度がある程度高いものが固まっているのでしょうか? それとも、危険なものや大きいものなど、難易度が極端に高いものもあるのですか?
本田:あります。解体の順番を決めるのが難しいこともありますし、「この場合にはこのような安全対策をしたほうが良い」ということもあります。
例えば、水に触れたら爆発してしまう物質があり、それを持っている会社が「どのように処分すればよいかわからない」というケースもあります。
その場合、当社の社員が危険な作業をするわけではありません。当社のネットワークを使って、「日本に1社しかありませんが、この会社ならできますよ」と紹介をします。
坂本:「叡智の結晶」ではありませんが、補完し合って解体しているということですね。
本田:そのとおりです。さまざまなプラントで作業していますので、そこが当社の強みかと思います。
坂本:「このパターンはこうだよね」ということですね。壊す作業はできるものの、導線を引くのは難しいということでしょうか。
本田:おっしゃるとおりです。
質疑応答:協力会社について
坂本:今後、受注が増えるというお話でした。人材不足の問題はあるものの、協力会社が潤沢にいるということですが、協力会社が手一杯で進まないこともあるのでしょうか?
本田:今のところ、協力会社に関する問題はまったく起きていません。もしかしたら、金払いがよすぎるのかもしれません。
坂本:おそらく単価が高い部分もあると思います。「マージンが取れるから優先したい」というのもあるかもしれませんね。
本田:そのとおりです。先ほど下方修正したとお話ししましたが、「利益率をより確保したほうが良いのではないか」という部分があります。
真っ先に出てくるのは、「うちもそれほど利益が出ていないから協力会社も下げよう」というお話だと思います。しかし当社は単価を下げず、きちんと支払っています。
また、当社も人員を増やしていますが、新人が現場に就く場合には、以前から工事を行なっている協力会社の方から逆に教えていただくこともあります。したがって、単価の部分は厳しくしていません。
坂本:ある意味、何度もOJTを実施してもらえるということですね。
本田:噂では、「ベステラの仕事はおいしい」と言われているようです。
坂本:それは良いことですね。御社は支払いサイトが短いですが、それは普通ですか?
本田:支払サイトは短いですね。お客さまからの支払いサイトは非常に長いため、その部分は当社が持っています。
坂本:それは非常に好評な会社だと思います。
本田:ありがたいことに、当社のお客さまは本当に信用力が高いです。貸倒実績などもありません。
坂本:発注元は問題ないということですね。
質疑応答:人材不足や人件費高騰などへの対応について
坂本:人件費を含め、工事代金などが上がっていると思いますが、さまざまなものの費用が少しずつ上がっているのでしょうか?
本田:上がってきているのは人件費です。例えば現場監督の派遣や警備など、全体的に少しずつ上がってきていますので、価格転嫁していかなければならないと思っています。それは当社の役目だと思います。
坂本:とはいえ、「コンペだったら」というお話ですよね。
本田:おっしゃるとおりです。「2024年問題」と言われていますが、労働基準法の「建設業だけは良いですよ」といった部分がなくなるため、休日出勤すれば費用が増えます。
従来、建設業では土曜日出勤の現場が多いですが、それでは今の若い方たちが働いてくれません。そのため、「土日は休みにしましょう」というのが業界全体の考えです。それに対して当社は早めに取り組んでおり、週休2日制にもしています。
だからこそ、私も各工事部員に「1人あたり工事売上高は1億円以下にします」と約束しています。実際は2億円くらいにできるのですが、限界まではさせません。「人さえ入れば売上が伸びますよ」と言われていますが、現場の方たちは、安全を脅かす状態になってまでさらなる受注をしようとは思いません。
営業が取ってくる仕事が半分くらいありますが、あとの半分は工事現場の方たちが、そこでよい関係を築いて「続きの工事をやってください。隣の設備をやってください」というケースが多いです。現場監督に受注意欲を持ってもらうことが大切ですので、人員確保は非常に重要です。
坂本:人材を選びますよね。コミュニケーション力があることも大事だと思います。
本田:おっしゃるとおりです。選り好みしている場合ではないのかもしれませんが、今入社してくる社員は、結果的に全員コミュニケーション能力が高いです。
坂本:今は御社も採用の拡大で人員を増やしています。しかし以前は採用できない時期があったと思います。それは厳選しすぎていたからですか?
本田:厳選しすぎていたわけではなく、採用に対しての力の入れ具合がまったく違っていたと思います。
質疑応答:需給の関係による工事単価上昇の有無について
荒井:「受注が積み上がっていますが、需給の関係から工事単価が上昇することはあるのでしょうか?」というご質問です。
本田:そのようにしたいと思っていますが、そこまでできていないのが実情です。やはり業界は、お客さまより下の立場です。
プラントの解体は難しいですが、一見楽に見えるところがあります。それを知らない会社が解体を行うのは危険です。建物の中に立派な設備が入っている場合、解体が大変なのですが、「建物だからできるんじゃない?」といったかたちで受注してしまう会社があります。
坂本:「作ったのだから、逆に壊せば良いんじゃない?」というお話ですね。
本田:そのとおりです。そのため、「実際に大変なのですよ」としっかり主張して、当社のような会社が率先して価格転嫁していかなければならないと思っています。
実際には元請工事を増やして、その位置に行こうとしています。しかし元請工事ですので、最初は利益率を低くしてしまいます。きちんとした会社と競合するケースも出てきていますので、エンジニアリング会社と対抗しなければなりません。
坂本:労務管理もきちんとしなければならないというのは、建設業は土曜日出勤だからだと思います。
しかしながら、雨では作業ができない現場があるため、代替日に工事を行うこともあると思います。御社の工事は、「雨だからできない」というのが基本的にはないのですか?
本田:解体工事は雨の日のほうが良いと言われています。工事中はコンクリートが飛散しないように水撒きをします。逆に雨が降っているほうが、飛散しなくて済みます。
坂本:では、土日が休みでも大丈夫ですね。
質疑応答:プラントによる単価変動の有無について
坂本:「プラントによって単価は変わるのですか? 面積比の大小もあると思いますが、『このプラントは難しいから高い』といったことはあるのでしょうか? それとも、『貴重な重金属がたくさん入っている場合は値引きします』ということがあって変わってくるのでしょうか?」というご質問です。
本田:基本的に工事代金を決めるのは、物量単価か人工(にんく)です。
大まかな数字を出すのであれば、「物量がおよそ何トンの設備なので単価はこれくらい」とします。ただし、解体の方法によっていろいろ変わってくるわけです。「このように解体しなければならないから何人工かかる」と計算するため、人工の単価は同じでも、解体するシチュエーションによって価格がまったく変わってきます。
坂本:積算するのは非常に難しいため、新卒の方はできないと思います。一般的には、どのくらい経験すれば数字が出せるようになるのですか?
本田:設備によります。「複雑な配管があって、この部分を活かして」など、いろいろなケースがあります。逆にリンゴ皮むき工法では、同じようなケースが多いです。
当社では、およそ3年と言っていますが、複雑な設備や大きな設備では経験の一番長い社員も携わります。社内のエースが計画をしっかり見るということです。
坂本:赤字になったらよくないですからね。
本田:最近のお話で言えば、新人がミスをしてしまい、人を補充したり会議体を作ったりもしましたが、それに加えてAIを導入しました。
図面を読む際には、机の上に図面を広げ、その中から該当する設備の図面を引っ張り出します。それが非常に大変で、間違えてしまうこともあります。最終的にそこから物量を読み取るのですが、その作業にAIを導入し始めています。今後は解体の見積もりにつなげ、物量計算もできるようにしたいと考えています。
質疑応答:協力会社が他社に引き抜かれる可能性について
荒井:「強力な協力会社が他社に引き抜かれてしまうケースはないのでしょうか?」というご質問です。
本田:他社に引き抜かれるというより、強力な協力会社が、当社のような安全性の高い内容を必要としない、重機でただ壊してしまえばよいケースで、当社を飛び越して直接受注することがあるかもしれません。「そのようなケースであればどうぞ」と思いますが、現状ではあまりありません。
質疑応答:スクラップの利益について
坂本:「スクラップで得られる収益を工事費用から差し引くというお話ですが、スクラップの市況がぶれてしまった場合に、利益が減ってしまうことがあると思います。現場によって違うと思いますが、スクラップの収益は工事費用全体でどのくらいになりますか? また、長期的にはスクラップの価格が下がることがあると思いますが、長い現場では何年くらいですか?」というご質問です。
本田:一番長い現場では3年です。
坂本:かなり影響を受けますが、対策はどのように行っていますか?
本田:まず差し引く金額は、保守的に出しています。スクラップがそのままの価格であれば、利益が出るレベルで差し引きます。もちろん価格が下がるケースもありますので、工事契約時にその旨を伝えていますし、お客さまによっては上がった場合に返金しています。
坂本:両方すれば、納得してもらえますよね。
本田:そのとおりです。また解体工事の特性として、基礎が後のため、スクラップがあれば先に出てきます。
坂本:早めに壊して売ってしまったほうがリスクヘッジになり、利益が確保できるということですね。
質疑応答:自己資本比率について
坂本:「私の投資は自己資本比率38パーセントが基本ですので、御社のシェアには入りません。その点について、考えがあれば教えてください」というご質問です。
御社の業態を考えると、私はそこまで積まなくても良いと思います。支払いサイトがずれる部分の支払いが十分担保できるのであれば、そのレベルで良いと思いますし、10パーセント代でも良いのではないかと思っています。そこは金融機関にコミットメントを入れておけば対応できると考えていますが、いかがでしょうか?
本田:銀行の方とも同じことをお話ししていました。私は以前から、「自己資本比率50パーセントを目安にしています」とお伝えしています。
最近、社内では「33パーセントを目安にする」と言っていて、そこは死守したいと思っています。例えば、工事を広げていくと運転資金が必要になります。利益で得る部分もありますが、債権の流動化など、売掛債権の部分を調整することが必要だと考えています。
ただし銀行の方は、今出ている内容と債権元の信用力が高いため、坂本さんがおっしゃったように、「貸しますので、そこまで気にしなくても良いのではないですか」とのことでした。
坂本:コロナ禍でも工事を行っていましたので、私も大丈夫かと思います。
当日に寄せられたその他の質問と回答
当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。
<質問1>
質問:有利子負債が多いですが、今後の解消の見込みについて教えてください。
回答:当社は支払いサイトが約35日であるのに対し、入金サイトが約105日と差がありますが、工事規模の大型化に伴うサイト差の拡大や工事量の増加に伴い、運転資金確保のための短期借入が増加しております。今後もますます工事受注量の増加が予想されるため、有利子負債の解消にはしばらく時間がかかる見込みです。
<質問2>
質問:着工から完工後のキャッシュインまでの期間が長く、自己資本比率の低下からも資金繰りの大変さをうかがえるのですが、現在の受注残をこなす過程で自己資本比率の推移についてのお考えを聞かせていただけますでしょうか。増資なども選択肢になりますでしょうか。
回答:自己資本比率の推移については、質疑応答「自己資本比率について」でお答えした内容を参照していただければと思います。借入金の増加により自己資本比率が低下しておりますが、事業拡大に向けた運転資金確保のためであることや、債券元が大手の信用力のある会社さまであることから、健全性は保たれていると判断しております。今後事業を拡大していく中で、最適な資本構成を考慮しつつ、増資も含め適宜判断していきたいと考えております。
<質問3>
質問:2024年問題によるコストアップや工期延長などの影響について教えてください。
回答:2024年問題により週休2日制が基本となるため工期が延長し、それに伴い人件費や現場管理費が増加する可能性があります。
<質問4>
質問:会社予想の業績を下方修正されることが多いと感じています。この原因と今後の改善についてご説明いただけますでしょうか。
回答:特定の大型工事の受注時期に影響を受けやすいことや大型工事については工期が長く、売上計上時期のずれが発生することなどが要因としてあります。また、今期については業績予想時に想定していなかった低利益率工事の受注や赤字工事も影響しております。このような事案を改善すべく、見積時のAIの活用や原価管理の徹底等、個別工事の業績管理の精度向上に取り組んでおります。