2024年3月期第2四半期の概況
斉藤雅也氏:2024年3月期第2四半期の実績についてご説明します。当第2四半期は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い、行動制限が緩和し、経済活動が緩やかに回復しました。
お客さまのニーズに合った商品提案に加えて、インバウンド需要に回復の兆しが見られ、円安の影響もあって大幅な増収となりました。利益面でも、大幅な増収に加えて、原価率の改善や販管費の効率的な活用に努めた結果、すべての利益段階で大幅な増益となっています。
売上・各利益段階で、第2四半期では過去最高を更新しました。国内においては、経済活動の緩やかな回復に加え、お客さまのニーズに合った付加価値の高い商品提案とターゲットに合ったマーケティングにより増収となっています。
「メラノCC」や「肌ラボ」、サプリメントの「ロートV5」などが好調を持続し、コロナ禍前を上回る売上を記録しました。マスク着用習慣により落ち込んでいたリップクリームも回復傾向にあります。さらに、「ボラギノール」で知られる子会社の天藤製薬も売上・利益に貢献しています。
海外事業についても、各地域ともに大幅な増収増益となりました。
また、第2四半期の実績が好調に推移したことにより、通期業績予想を上方修正しています。業績好調に伴い、配当予想も増配に修正しました。
連結損益
連結の損益計算書です。売上高は1,278億6,900万円、前年同期比15.9パーセントの大幅な増収となりました。売上原価率は、原料費やエネルギーコスト、物流費の高騰などの影響を受けたものの、増収による操業度の改善効果などにより、42.2パーセントと1.2ポイント低減しています。
営業利益は209億6,600万円です。広告販促費や研究開発費などが増加したものの、大幅な増収により販管費率が減少した結果、前年同期比28.9パーセントの大幅な増益となりました。
経常利益は226億7,800万円、前年同期比26.2パーセントの増益、親会社株主に帰属する四半期純利益は165億9,400万円、前年同期比25.8パーセントの増益となり、いずれも第2四半期における過去最高を更新しました。
為替レートは、前期の1USドル129.88円に対して、当期は138.69円と6.8パーセントの円安に、中国元は前期の1中国元18.94円に対して、当期は19.45円と2.7パーセントの円安となっています。これらの為替レートの変動によって、売上高は約22億円、営業利益は約2.5億円増加しました。
連結営業利益の増減
スライドのグラフは、営業利益への寄与を表したものです。広告販促費、研究開発費、人件費などの販管費が合計約67億円増加しましたが、大幅な増収効果が約99億円あり、さらには売上原価率の改善インパクト約15億円の効果が上回り、増益となりました。
報告セグメント別売上
エリア別では、各地域とも前期から引き続き好調を持続しており、スライドに記載のとおりすべての地域で大幅な増収となりました。
報告セグメント別営業利益
営業利益についても、各地域とも前期から引き続き好調を持続しており、すべての地域で増益となっています。
日本 大幅な増収増益
報告セグメント別にご説明します。日本においては、売上高764億1,100万円、前年同期比16.5パーセントの大幅な増収となりました。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う行動制限の緩和により消費活動が回復したことと、お客さまのニーズをいち早くキャッチした製品の投入やマーケティング効果により、多くのブランドがコロナ禍前を上回り、さらに大きく伸びています。
剤種別では、新型コロナウイルス抗原迅速検査キットの落ち込みにより、その他カテゴリーは減収となりましたが、アイケア、スキンケア、内服セグメントはいずれも増収となりました。また、ロート製薬単体だけでなく、子会社の天藤製薬も業績に貢献しています。
日本セグメントは、国内市場の大幅な増収に加えて、原価率の改善、販管費の効率的な活用に努めたことにより、セグメント利益は132億3,300万円、前年同期比26.9パーセント増の大幅な増益となりました。
ロートスキンサイエンス始動!
ロート製薬は、2001年に「オバジ」を発売して以来、「本当の美しさは健康の先にある」を皮膚研究の信念として化粧品開発に取り組んできました。まだ機能性化粧品という言葉が一般的ではなかった時代から、たとえ化粧品であったとしても、製薬会社としてエビデンスにこだわったものづくりを行ってきました。
「オバジ」「肌ラボ」「メラノCC」などの当社の化粧品がお客さまにご支持いただいているのも、エビデンスにこだわった機能性化粧品の効果を実感していただいているためだと自負しています。そこで、今期から「ロートスキンサイエンス」をテーマに、当社が注力して研究開発を行ってきた3つの戦略成分であるビタミンC、ヒアルロン酸、セラミドを軸にした商品・ブランドの価値開発の取り組みを開始しました。
今はおかげさまで、ロート製薬がドラッグストアでの基礎化粧品メーカー売上個数NO.1を獲得しています。引き続き「ロート製薬だから」と選んでいただけるように、チャレンジを続けていきたいと考えています。
好調持続の商品群
前期から好調な商品群も引き続き順調に推移しており、コロナ禍前の売上を上回って、さらに伸ばしています。特に「メラノCC」は、昨年3月に発売した酵素洗顔が今も大人気で、同ブランドの新規顧客が増加しています。
また、今年3月にマツモトキヨシとココカラファイン、オンラインで先行発売した日やけ止め効果のある「メラノCC朝用乳液」も9月から全国展開を行っており、好調に推移しています。国内需要とともにインバウンド需要もあり、前年同期比54パーセント増の大幅な伸びとなりました。
美白ラインとアンチエイジングラインが好調な「肌ラボ」は、「極潤プレミアム」のリニューアルもあったことから前年同期比24パーセント増と好調に推移し、前期から引き続きドラッグストアにおいて個数ベースで売上NO.1になりました。「メラノCC」は第2位となっています。
サプリメントの「ロートV5」は、通販での定期購買が伸びており、前年同期比41パーセント増となりました。また、マスク着用習慣により伸び悩んでいたリップクリームも、薬用リップに加えてカラーリップが復調して、前年同期比30パーセント増と好調に推移しました。
インバウンド需要回復傾向に
インバウンド需要については、中国からの旅行客はまだ本格的には戻っていませんが、韓国、台湾、ベトナム、フィリピン、タイなどの国からの旅行客が増加し、回復傾向にあります。商品別では、これまでの「エピステームステムサイエンスドリンク」「メラノCC」や目薬などから、さらに幅広い品目がインバウンドで伸びています。
アジア 大幅な増収増益
海外事業で最大のアジアについては、売上高342億2,300万円、前年同期比15.3パーセント増の大幅な増収となりました。香港とマレーシア、台湾が現地通貨ベースで2桁増収と、引き続き好調に推移しています。一方、中国は非常に厳しい市場環境ですが、コロナ禍から回復して増収に貢献しています。
ベトナムは、2021年度にコロナ禍のロックダウンなどで大きく落ち込みました。2022年は経済再開により大きく増収となっていた反動から、第1四半期の伸び率は低くなりましたが、第2四半期以降は回復傾向にあります。
インドネシアは、ローカルブランドによる「肌ラボ」の類似品が増加していることなどにより、第1四半期は減収となりました。しかし、第2四半期ではフケ抑制シャンプーの「セルサン」など他のブランドが好調だったため、増収に転じています。
利益面については、積極的な広告販促投資を行いましたが、増収効果と原価率の改善によって58億4,700万円、前年同期比17.8パーセント増の大幅な増益となりました。ブランド別に見ると、日本同様にリップクリームと日やけ止めが大きく伸びました。また、「セルサン」が、東南アジア市場での成長に加えて、中国で新製品を投入したこともあり高成長を続けています。
アメリカ 大幅な増収増益
アメリカでは、売上高87億6,500万円、前年同期比14.6パーセント増の大幅な増収となりました。主な要因として、医療機関向けの消毒薬等を製造・販売するハイドロックス・ラボラトリーズ社が、値上げとともに工場の増産体制を整えたことなどにより、増収に大きく貢献しました。
営業利益に関しては、大幅な増収と原価率の改善に加え、販管費の効率的な活用によって、セグメント利益は5億6,400万円、前年同期比487.3パーセント増の大幅な増益となりました。
ヨーロッパ 大幅な増収増益
ヨーロッパでは、売上高70億4,700万円、前年同期比13.1パーセント増の大幅な増収となりました。これは原材料やエネルギーコストの高騰が続く厳しい環境下においても、引き続き主力の外用消炎鎮痛剤を伸ばしたことによるものです。
「Hadalabo Tokyo」は、前期に『コスモポリタン』でビューティアワードを受賞するなど、成長を続けています。現在は、イギリス、東欧および中東主要国で発売するなど育成を進めており、ドバイではワトソンズの定番ブランドとして定着しています。
点眼剤の「ロートドライエイド」は、イギリス、ポーランド、トルコの他に、アラブ首長国連邦やサウジアラビアにも販路を拡大しています。容器の使い勝手が評価され、ベストOTCパッケージ賞を受賞したことなどを販促活動に活かしながら市場に定着させるとともに、販売エリアを拡大しています。
利益面では、増収効果と販管費の効率的な活用により、セグメント利益は8億8,100万円、前年同期比47.8パーセント増の大幅な増益となりました。
私からは以上です。ありがとうございました。
ポイント
杉本雅史氏:こんにちは、杉本です。平素はみなさまに大変お世話になっております。また、本日は決算説明会にお集まりいただきありがとうございます。私からは、通期の業績見通しの修正と持続的成長の取り組みについてご説明します。
第2四半期の業績については、経済活動が再開したことや、お客さまからの弊社製品に関するご支持が拡大したことによって、大幅な増収増益となっています。海外、日本ともに期初予想を上回るかたちで業績が好調に推移しているため、その状況を通期業績予想に反映して、売上・利益ともに上方修正しました。
費用に関しては、広告費の予算は当初から変更していませんが、海外において若干円安の影響を受けており、費用が増加してきています。また、研究開発費については、治験の進捗や人件費の増加によって、当初予算から増額となる見込みです。
通期業績見通しを上方修正
第1四半期の修正予想よりも売上高は70億円増の2,700億円、前年同期比13.1パーセント増としています。営業利益は15億円増の385億円、前年同期比13.4パーセント増、経常利益も20億円増の400億円、前年同期比12.5パーセント増、当期純利益は15億円増の290億円、前年同期比9.9パーセントの増益を見込んでいます。大幅な増収増益で、いずれの項目も過去最高を更新する見込みです。
なお、通期の連結業績予想に用いた為替レートについては、1USドル130円から140円に変更しています。大きな売上を占める中国についても、1中国元19.48円から19.7円に若干変更して算出しています。
報告セグメント別売上予想
地域別においては、日本は主要ブランドが下期も好調を持続すると見込んでいます。また、インバウンド需要も増加傾向にあることを織り込み、売上高は第1四半期修正予算よりも39億円増の1,564億円、前期比14.4パーセント増の2桁成長となる見込みです。
アジアは足元の状況も加味して、売上高は13億円増の789億円、前期比11.5パーセント増に上方修正しました。アメリカは9億円増の184億円、ヨーロッパは9億円増の138億円、前期比12.8パーセント増を見込んでいます。
報告セグメント別営業利益予想
営業利益においては、日本は研究開発費や人件費が増加することも加味して、9億円増の236億円、前期比11.6パーセント増としました。アジアは2億円増の117億円、アメリカは3億円増の12億円、ヨーロッパは1億円増の11億円と増益を見込んでいます。
Well-being経営について
今後も中長期の持続的成長を実現していくために、収益性と有望な種まきも含めた投資のバランスを考慮した上で事業運営を行っていきたいと考えています。そこで、私どもの成長の源泉と考えている「Well-being経営」について少しご紹介します。
ロート製薬が持続的に成長しているのは、このWell-beingを経営の柱に据えていることが源泉であると思っています。Well-beingは、2019年の「経営ビジョン2030」で、ビジョンとして「Connect for Wellbeing」を明文化しています。
Well-beingとは、フィジカルな健康だけでなく、メンタルの健康と、社会的にも健康な状態であること、それを取り巻く環境面の健康のすべてにおいて満たされる幸福な状況を総合的に言い表す言葉です。当社のミッションは「世界の人々の美と健康に貢献する」ということから変わりませんが、「経営ビジョン2030」を策定した際に、ミッションから派生するかたちでこの概念を採用しています。
当社は事業領域の幅を広げていますが、それぞれの事業をWell-beingの中で位置づけ、つなげることで、社会に貢献していくことを明確に打ち出しました。
企業経営において、「選択」と「集中」はよく行われますが、当社の場合は「選択」と「分散」を大切にしています。Well-beingという事業スコープは「選択」していきます。
一方で、実際に事業を展開する際には、OTC医薬品やスキンケア、食事業、医療用もあります。現在は再生医療にもチャレンジしていますし、コンパニオンアニマル事業も始めました。Well-beingにつながるかどうかを見極めながら、事業領域は緩やかに「分散」させていくことを基本としています。
さらに、それぞれの事業が独立して広がるのではなく、事業をつなげながらカバーしていくことが大きな目標です。挑戦する事業の成長だけではなく、それぞれの事業をつないで、ブレイクスルーする商品を開発していき、事業同士の相乗効果を図ることが何よりも重要だと考えています。
Well-beingを横串にして、さまざまな分野でソリューションを提供していくことで、たくさんの方々の健康に貢献することを目指していきます。結果として、複数の強い事業の柱を形成し、安定した経営基盤を構築していきたいと考えています。
また、当社の基本的な考え方は長期安定成長志向です。何年で売上を何倍にするなどの目標設定は考えておらず、「社会の公器たる企業」としてWell-beingに貢献することで、毎年着実に、長期的に安定して成長させていく方向で、経営の舵取りを行っていきたいと考えています。お客さま、取引先、株主、社員、そしてロート製薬を取り巻く社会全体をステークホルダーと捉えて、ステークホルダーのみなさまが健康で、幸福であり続けるために貢献していきます。
また、各地域での開発から販売まで一気通貫した「自前のものづくり」を大切にしていきます。それぞれの地域や社会に必要な目線と品質へのこだわりを追求することが、世界中の方にWell-beingを届けることにつながると考えています。グループ各社が自走できる経営体制を構築することで、グループ全体のサプライチェーンリスクを最小限にできると考えています。
様々な分野で健康ソリューションを提供
当社は、さまざまな分野で健康ソリューションを提供しています。この半期で行った事例を少しご紹介します。
海外に対しては、国内の取引先10社と共同で、目薬の売上の一部をアジア、アフリカ等での白内障治療等の眼科医療の支援活動に寄付する活動を、2016年から開始しています。地域連携としては、泉大津市や松山市、愛媛大学の地域薬局などと、地域の健康づくりの実現に向けて連携を開始しました。
また、当社では現在活用しきれていない海藻を有効活用できれば、水産業の新たな戦略の1つになり得るという思いから、海藻の探索を行っていきます。鳥取大学とクロメという海藻の研究を進める中で、鳥取県産のクロメを用いた食品の共同開発を行い、販売も開始しました。
次世代支援については、東北大学COI-NEXT 「Vision to Connect」の拠点監修のもと、子どもの目の健康に関する啓発アニメーション動画を開発し、宮城県において小学生の授業教材として活用を始めました。さらに、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所と、株式会社プランテックスとともに、国内での薬用植物の安定栽培、およびそれを活用した事業化に向けて共同研究を始めています。
個人と会社の共成長を目指す ロート流働き方改革
当社のパーパスであるWell-beingな社会の実現に貢献し続けていくためには、持続的な企業価値の創造が必要です。その担い手となるのはもちろん社員一人ひとりであり、社員の成長なくして会社の成長はありえません。
当社では、社員は会社の持ち物ではなく、会社と社員はともに成長する関係であるという考え方を、人的資本や人事制度の基本にしています。つまり社員が主体的に事業活動に参画して、社会に向けて価値を創出することで会社も成長でき、会社が成長することで多様な活躍機会を社員個人に提供できるという好循環により、会社と社員の共成長を目指しているということです。
当社が求める個人の自律的キャリアとは、当社のパーパスに共感して主体的に事業に参画し、プロの仕事人として常に社会に価値を創出できるよう継続して学び続ける人材になることです。個人の意思でキャリアを切り拓いていけるよう、2016年からは「社内ダブルジョブ(兼務)」や「社外チャレンジワーク(複業)」などもできるだけ社員を尊重して可能性を信じ、ポテンシャルを引き出す取り組みとして実施しています。
先進技術力に裏付けされた知的財産
当社では、新たな価値創造を進めるために、知的財産がますます重要になると考えています。知的財産を重要な経営資源と位置づけて、新たな価値を創り、当社グループを持続的成長に導くため、またそれを通じて持続可能な社会の実現に貢献するために、グローバルな知財力の強化に取り組んでいます。
アイケアを中心としたヘルスケア事業の確立から、近年では機能性化粧品の成長を経て、さらに多くの柱を持つに伴い、当社の知的財産活動も幅広く進化し、特許出願件数も増加してきています。スライドに記載のとおり、特許の質と量から総合的に見たランキングにおいて、当社は眼科薬関連技術特許総合力で1位になっています。
先進技術力に裏付けされた知的財産
また、当社の注力開発成分であるビタミンC、ヒアルロン酸においても、高い特許の保有数を誇っています。
先進技術力に裏付けされた知的財産
ビタミンCやヒアルロン酸の特許を活かして、新商品も発売しました。スライド左側の「オバジインナーリポショット」は、ご好評のため発売後に在庫がなくなってしまい、一度は受注をストップしていましたが、増産体制を整えて販売を再開しています。
食(機能性食品)事業の成長を目指して
新規事業である食事業の取り組みについてご説明します。コロナ禍を経て、健康な方の健康意識や免疫意識が高まりました。特に機能性サプリメントの需要が高まったため、市場は1兆円を超えるまでに成長してきています。
食(機能性食品)事業の成長を目指して
そのような中で、当社は健康寿命の延伸にフォーカスした食品のスピード開発を行っています。「リコニン」や「グロビンペプチド」といった当社オリジナルの素材を使って、効果実感にこだわり、食品でも効果がある製品を開発していきたいと考えています。
美容分野に関しても、スキンケアだけでは実現できないことを、内服で叶えられるように製品ラインを充実させています。主に「みる」「たべる」「うごく」という領域、美容ではビタミンC、フェムケア、アンチエイジングという領域において、機能性食品等に注力していきます。
スライドは各領域の商品の一部です。前期、今期と多くの新商品を上市してきています。中でもスライド1番左側にある「ロートV5」は、すでに売上50億円を超えるブランドに成長していますが、今後はシリーズ化して、ブランド売上100億円を早期に実現していきたいと考えています。
医療用眼科治療薬の進捗
もう1つの新規事業である医療用眼科治療薬についてご説明します。上期の進捗として、スライドの1番下にある近視進行抑制剤「ROH-001」が国内第1相臨床試験を開始します。
近年、スマートフォンの普及やデジタル機器への接触の増加など、さまざまなライフスタイルの変化が見られる中、若年層の近視が深刻な社会課題となっています。そのような状況の中、近視の進行抑制を目指した薬剤の開発を坪田ラボと共同で進めてきました。これまでの非臨床試験の結果により、本剤の非臨床フェーズにおける有効性と安全性が確認されたことから、本試験において人での安全性、薬物動態について確認を進めていきます。
再生医療の進捗
再生医療のパイプラインに関しては、従来と変更はありません。「ADR-001」の肝硬変に関しては、今期第1四半期に最終症例の最終観察が終了しており、現在はデータの解析中です。データの解析後に総括を行い、次相試験の実施も含め検討していきます。
「ADR-002」の重症心不全と「ADR-001」の腎疾患についても、第1相試験が完了し、安全性に問題はありませんでした。現在、有効性を確認する次相試験を準備しているところです。
「ADR-001」の新型コロナウイルスによる肺炎については、2023年の第1四半期でエントリーを終了しています。現在、キーオープンを行い、データの解析中です。
幹細胞の受託加工と培地ビジネス
薬機法に基づく保険診療の対象となる再生医療等製品の上市は、先ほどご説明したとおり、まだ先となります。ただし、再生医療をより身近に誰もが利用できるように、当社では2022年から医療機関が自由診療で行う特定細胞加工物の受託加工を開始しました。
日本で再生医療を受けるインバウンド旅行客、いわゆる医療ツーリズムのお客さまが増加している背景もあり、今後ますますこの需要が増加すると見込まれています。需要の増加に合わせて、今年9月には東京・錦糸町に「セルファクトリー東京」を設立しました。これにより、「セルファクトリー京都」「セルラボラトリー東京」「インターステム」と4ヶ所で特定細胞加工物の受託加工が可能となっています。
また、培地ビジネスに関しては、当社の強みである無血清AOF培地を用いて、日本および中国で培地の販売を開始しています。
次世代医療・研究拠点「藤田医科大学東京 先端医療研究センター」へ参画
上期のトピックスとして、10月2日に開所した次世代医療・研究の拠点「藤田医科大学東京 先端医療研究センター」へ参画しました。共同研究講座「再生・細胞医療開発講座」を開設し、間葉系幹細胞の基礎研究を推進していきます。
また、藤田医科大学やセンター内に併設される藤田医科大学羽田クリニックと連携することで、本講座で得られる成果をよりスムーズに臨床応用することが可能です。藤田医科大学羽田クリニックは羽田空港に隣接しているため、医療ツーリズムで来日するお客さまが多く見込まれます。
このクリニックでは、整形外科、眼科、産科、婦人科の各領域において、エビデンスに基づく再生医療の提供が行われます。当社は、特定細胞加工物の受託加工サービスを通じて、同クリニックでの再生医療等に貢献していきます。
また、生命寿命と健康寿命にある10年間のギャップを短縮し、幸福な期間にする活動である「長寿プログラム」の一環として、食生活・生活リズムに寄与する独自技術のサプリメントや入浴剤の提供を行います。このように世界中の人々のWell-beingに貢献していきたいと考えています。
20期連続増配予定
配当についてです。業績を上方修正したため、期末配当は3円増の15円として、年間配当を27円に見直しました。これにより、20期連続の増配となる予定です。
私からは以上です。ありがとうございました。